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2013/03/31

私事ながら先日、junkStageアワード2012で賞をいただいた。
新しいライターさんが次々と受賞される中、光栄にも2度目の受賞。
正直予想をしていなかったのでとても驚いた。

2010年のアワードではスタッフ特別賞をいただき『初心』を思い出した。
今回の受賞では、『継続』ということを思う。

私の更新は決して多くない。
コラムを開始した当初、タイトル通りに毎回映画のことを書きたい、と思ったけれど、
書き始めてすぐに、次々と書いて行ったら、
私の映画の倉庫はすぐに空っぽになってしまうと気がついた。

何とない映画の感想は書けるけれど、
意味のあると感じる言葉を含めた映画に出会うことは少なく、
更にそれを自分の身体の一部として書きモノにするスピードが
思うより時間がかかると分かった。

面倒であるけれど、自分の納得いくペースなのだから付き合うしかない。

それからは映画のことと、昔アメリカで生活したことを織り交ぜて書くことにした。
意外にそのペースが自分に合い、更に昔の生活を思い出すことで
以前見た映画の記憶が呼び覚まされ、思い出と共に次の映画へ繋がったり、と
今日ここまで続けることができた、と思う。

月1回の更新もままならない時期もあり、
それでも励ましここにいる場所を作ってくれたJunkStageスタッフの方に感謝したい。

先日、ひょんなところで村上春樹訳マーク・ストランドの言葉に再会した。

In a field
I am the absence of field
…………. 野原の中で僕の分だけ野原が欠けている。
This is always the case
…………. いつだってそうなんだ。
Wherever I am
I am what is missing.
…………. どこにいても僕はその欠けた部分

(Keeping Things Whole (物事を崩さぬために) 全文こちら)

『I am what is missing.』
欠けている、といことは自分の居場所があるということ。

そしてその居場所はずっと、という継続の賜物であり
不思議なコトに ‘継続’ と ‘同じ’ はイコールではない。

keep going、とよく言うけれど
変化をし続け、前へ前へと進むからこそ継続が生まれる。

自分が『欠けたもの』になれるよう、
少しばかりの誰かが読むのを楽しみにしてくれるよう、
引き続き色々な映画を自分の感じる言葉で書き綴っていきたいと思う。

08:50 | masaki | 継続の賜物/欠けたモノになること はコメントを受け付けていません
2013/03/26

たまにホテルに泊まると思い出す出来事がある。

日本に帰国して3年だったか、5年だったか、
とにかくまだグリーンカード(GC)を持っていて、
何年かに一度『長期国外滞在届け』の手続きにアメリカに通っていた頃。

つまり、GCを持っているのに何が理由でアメリカ国外にいるのさ?
という問いに、私の場合は ‘ちょっと日本の職歴を積みたくてね’ という申請で
GCを失うことなく日本に長期滞在ができる、という手続き。

以前コラム 『good luck』にも書いたが、
手続き自体は難しいものではないが、通るか通らないかは最後まで分からない、
非常に手厳しいモノでもある。

さて、どこにいても同じだが、住んでいる街のホテルに泊まる、という機会は少ない。
家があるのに高い宿泊費を払って休暇をすごす、かなり贅沢である。

NYで泊まることがあるならば、あそこにしよう、と決めてたホテルがあった。
住んでいた西54丁目から少し北に上がったリンカーンセンター付近にあるHUDSON。
看板もなく一度も中に入ったこともないのに、散歩で前を通るたびに気になっていた。

初めてNYに戻ってきた時は迷わずそのホテルを予約。
部屋の感じもホテルの中庭も思った通りで、スッキリと無駄のないでも清潔感のある、
ヨーロッパを思わせるおしゃれなホテルだった。

ホテルに到着してチェックインした後、部屋に上がるエレベーターで
ゲイのカップルと乗り合わせる。
一人は背が高く、もう一人が背が低く、そして明らかなオネエ英語での会話。

背の低い彼がふっと私に視線を送り、言った。

その鞄、素敵ねぇ。

びっくりするものの、ちょっとこだわりあって手に入れた鞄だっただけに
なんだ嬉しくて、ありがとうを言って、エレベーターを降りた。

あんな密室で、あの距離で、明らかに見た目が外国人の私にその言葉を投げるとは。

久しぶりのアメリカ、ああ、こういう国だった、と再確認。

今でもホテルのエレベーターに乗ると、
あの時の出来事を思い出す。

09:55 | masaki | エレベーターの中での出来事 はコメントを受け付けていません
2013/02/28

ロズウェル ー星の恋人たち
【ROSWELL】
1999〜2002年

最近よく見るのは映画よりドラマの方が多い。
それもアメリカの、いわゆる海外ドラマ。

平日の帰宅が遅い仕事なので、家に帰ってから、
2時間かけ眠い目をこすり頑張って映画を見るのもいいけれど、
1時間で見れるドラマは楽ちんで、メリハリがあり気分転換にもなる。

今までに結構な数を見たんじゃないかと思う。

『アメリカに住んでいた』と言うと次から次へとドラマの名前を上げ、
オンタイムで見れるなんて羨ましい、と言われることがあるが
実はアメリカにいた頃はほとんど見ていない。

そもそも私にはテレビを見る習慣がない。

そして、毎週この時間このドラマを見る、というのが苦手だったのか、
単にドラマをよく知らなかっただけなのか、つまりは全然興味がなかった。

そんな最近『あの時オンタイムで見てたら、また何かが違ったかも』
と訳もなく思ったりするドラマに、日本に戻ってきてからよく出会う。

人生はそうそうドラマぐらいでは変わるもんでもないが
少なくとも、ドラマのテーマはその時世の中で起きていることが詰まっていたりして
今見て時代の経過を懐かしく思うことができたんじゃないかと。

ロズウェルは、2002年にアメリカでの放送が終わっている。
ちょうどその頃、日本に帰国したばかりでやることもなく、
テレビをつけたらシーズン1が始まったばかりのところだった。

ドラマが面白い、というより最初のきっかけは、
DIDOが歌うオープニング曲、Here With Me。

それがすっかりストーリーにはまり、途中からだったので結局最初から借り直し
3シーズン一気に見た。

後半になるに連れ物語はラブストーリー色が濃くなり、
誰がだれと、、と若干もういいです、状態になるが、
シーズン1あたりはすごくテンポがよく、哲学的でも、詩的でもある。

エピソード6のワンシーン。
主人公リズは自分の命を助けたことで
マックスの立場を危うくさせてしまった事を謝ると、彼が答える。

君を助けた日にー
僕の人生が始まったってそう思うよ

It feels like,
my life didn’t start yet til I told you the truth on that day.

字幕はわりとありきたりなセリフなのだけれど
オリジナルの英語のセリフにはもうちょっと気持ちが入る。

マックスがリズを助けた日に『真実』を言えたから
ずっと’truth’(ここでは彼の正体のことだけれど)を秘密にしていたそれまでが
まるで生ではなかったと感じるほど、今、人生を感じ、
そして後悔をしていない、と。

そんな感じのことを not 〜 till 〜 に感じる。

この関係が逆の時もある。
字幕が、今までが嘘のよう! と言えば
Now I start to see the real life!
のような。

自分でも訳してみようと思うと、不思議な事に
長い時間をかけた末、同じように日本語と英語では
立ち位置が真逆な表現になることが多々ある。

残念ながらこれを『どうして』と説明し切れない。
それは単なる文化の違いなのか、言語の仕組みの違いなのか
感覚的な事で、そう、としか言えない。
いつか、はっ、と悟る日が来るだろうか。

=====

このドラマでキャサリン・ハイグル【KATHERINE HEIGL】を知る。
とても印象的で力強い、と思っていたら、今ではすっかり注目の若手女優。
以前コラムに書いた 27 Dresses の彼女は
このロズウェルの時のイザベラに近いかもしれない。

02:46 | masaki | ロズウェル/海外ドラマを見るようになったきっかけ はコメントを受け付けていません
2013/02/25

先日家族で上海に駐在する親戚を訪ねた。今回で2度目の訪問。
1度目は“上海”という土地も“中国”に入国することも初めてで、
とりあえず言われるがままに観光をし、ごはんを食べ帰ってきた。

2度目の今回は、少しまわりのことを見る余裕があり
改めて海外で外国人として暮らすことの注意深さ、を思い出す。

例えば、守衛付きのマンションに住んでいる、
とか
あまり目立つような服装をしない、
とか
常にスリには気を付けバッグはチャック部分を内側で前に肩がけ
とか
道端でお財布を開けない
とか、
細かなことだけれど重要で、書き上げたらキリがない。

タクシーに乗れば、日本語で会話していても
端々に走っているエリアの名前を中国語で挟み込む。
ちゃんと自分がどこにいるか知っている、とアピールするわけだ。

更に幼稚園と小学1年生がいる家族だったので、
子供立ちは“さらわれないよう”母親から常に注意を受ける。

外を歩くときはスリにも気を付け誘拐に気を付け、襲われることないよう
テンションを張り続ける。

アメリカで生活していた頃の緊張感を思い出した。

大学時代にボストンにいた頃、ひったくりにあったことがある。
確か3年生の冬だったと思う。

自分の人生の中でも10本の指に入る出来事なので
その内コラムに書きたいなと思っているが、
とにかく幸いだったのは、けがもせず何も盗られなかったこと。

けれどそのひったくりタチは捕まることもなく逃げて行き
だからその後がとても怖かったことも覚えている。

相手が自分を覚えているんじゃないか、
でも私は相手を見てもきっと分からない。
瞬時の事でましてや在米年数も浅く、外国人の顔はみんな同じに見える頃。

だからすぐ、髪を切って髪型を変えた。
その時来ていたジャケットやズボンは、しばらく着なかった。
向こうに見つけられないように。

そして、後から考えれば考えるほど、ひったくりは明らかに待ち伏せだった。

だからNYに引っ越し就職し、会社に歩いて通うことになった時、
通勤経路をよく変えていた。

一度狙われたら襲われることは避けられない。
日常パターンがあると襲いやすくなるから狙われる。

日本に帰って来て10年ほどたった今、
あれは妄想を掻き立てすぎで、注意深すぎだったんじゃないかと思ったりもする。

けれど今回上海を訪れその家族を見た時に
土地勘のない外国人はやっぱり狙われやすいものなのだな、と。

もちろん日本だからと言って安全、ということではなく、
やはり生活パターンが分かると、悪事を働く人にとっては
計画が立てやすく、リスクヘッジがしやすくなる、ということはきっと同じ。

けれど、外国人でいる限りまず目立つことが避けられず、
日本人の場合は明らかにその土地より豊かな生活力があることが多く
普通に生活しているだけなのに、それが見えてしまう。

盗まれるものが何もなくても、日本人は全て裕福、と思っている
ステレオタイプな外国人タチが、日本人、というだけで襲う事だってある。
盗むものがなければ、その変わりとして命が怪しくなる。

ふと思ったが、日本に在住している外国人たちは、
同じような緊張感を持って生活しているのだろうか。

===

おもしろかったのは、一番下のちびっこが
最初の夜に歯磨きをする時に得意そうに教えてくれた。

歯を磨いて口をゆすぐ時は、
まずコップに飲料水タンクからの水を入れ、それに歯ブラシを入れてかき混ぜるんだよ
それかから水で口をゆすぐのも飲料水で!

なるほど、怖いのは外での出来事だけじゃない。
少なくともアメリカでは、蛇口の水でも大丈夫だったけど
中国では慣れるまでは歯ブラシさえも水道水で洗わない方がいいらしい。

05:30 | masaki | 海外在住者の注意深さ はコメントを受け付けていません
2013/01/31

モンスターズ・インク
【MONSTERS, INC.】
2001年、日本に帰国することを決めた年

最近姪っ子甥っ子がひとつの場所にじっと座れる歳になり、
去年何度か一緒に映画を見に行った。

ドリームワークスアニメーションの『マダガスカル3』に
ユニバーサルスタジオの『ロラックスおじさんの秘密の種』。

もちろん普段からディズニーとかピクサーとか、アニメーション映画は見にいく。

大きな違いは子供タチとは“日本語吹き替えで見る”こと。
以前コラム『日本語吹き替え版で見るコト』でも書いたが
子供時代に見る外国映画は知らず知らずのうちに吹き替えで見ることになる。

そしていつの間にか大人になって、映画を字幕で見るようになっていて
子供向け、というより、子供も楽しめる映画であればあるほど、翻訳が大変だ!
ということに今更気が付く。

なぜなら、わー、とかきゃーとか
とにかく意味不明な言葉が次々とキャラクター達から発せられる。

そういう意味では、日頃固いおとな会話ばかりの英語に接していると、すごく楽しい。

大人になって見たハリウッド映画のアニメーションの中で
一番好きなものは!と言われれば、即答でモンスターズ・インク。
この映画も冒頭からわけのわからない会話がぽんぽんと進行する。

子供達を驚かせ、
恐怖であげる叫び声が生活エネルギーになっているモンスターたちの世界。
稼ぎ頭のサリバン【Sullivan】とその友達マイク【Mike】が今日も仲良く会社に出勤。

最近車を買ったばかりのマイキー(マイク)が車で出勤するというのを
いやいや、省エネで、と歩いてい行こうとサリバン。
車を買ったのは走る為さ、とジェスチャー交えマイクが不満げに言う。

With the honk-honk and the vroom-vroom
道をブッブー ブルルンと

vroom-vroomはそのままブルルンなのに、
honk-honkとクラクションを鳴らす音は字幕にはない、
と思ったが、ああ、フォンフォンじゃなくて日本語はブッブーね!と。

合間に通りがかるモンスターがくしゃみと一緒に火を吹いて、
目の前に広げた読みかけの新聞が燃えてしまう。

Ah, nuts.
やれやれ

“nuts”、これはとにかくナッツのように細々としたものがばらまかれて
どうにもこうにも面倒、みたいな時に良く使う。
確かに“やれやれ”だ。

歩き続けるサリバンとマイキー、途中で八百屋の兄さんと陽気に挨拶。

Tony, Ba-da-bing!
Pow, pow, pow, pow, pow!

マイキーが打ち真似をしながら発するこのセリフ、
訳されてないし。

Ba-da-bingは辞書を引いてもなかなか出てこないが、
じゃじゃーんとか、そんな意味らしい。
ドラマ“ソプラノス”のお店の名前しか思いつかなかった。

Pow, pow, pow, pow, powはジェスチャーから想像するに、
パン、パン、という軽い銃声の音。

そしてこの会話シーンは、八百屋のあんちゃんの投げる野菜と
これまた通りがかりの液体モンスターのセリフで締めくくられる。

Hey! On the house!
おごりだ

とあんちゃん。

そこを液体状のモンスターがうっかり排水溝の網の目の上を横切る。
当然液体だから網の間からざばざばっと体が排水溝へと落ちていく。

ただし網目より大きかった目玉と入れ歯は上に残り、
その残ったパーツがため息混じりにつぶやく。

Oh, great
参ったな

この短いシーンだけでも意訳がもりだくさん!

これは吹き替えで見た方が落ち着いて楽しめるかも、と改めて思ったが、
音が楽しいのでやっぱり頑張って英語で見ようかと。

11:09 | masaki | モンスターズ・インク/Ba-da-bingってじゃじゃーん? はコメントを受け付けていません
2013/01/21

最近映画館へ見に行く映画の自分の選択が、
振り返るとあまりに何も残ってないものばかりで唖然とする。

一昨年の年末に『2011年の映画館』のコラムを書いた時は
もう少しマシだったように思う。

ジョン・カーター【John Carter】
期待してなかっただけに割と好きでした。
さすがディズニー、良質。ぱっと華やかではなかったけれど話が上手にできてた。

タイタンの逆襲【Wrath of The Titans】
前作があまりに良くなかったのをすっかり忘れて見てしまう。
これは久々の“しまった”でした。このあたりから迷走。

バトルシップ【Battleship】
歌手リアーナが出演していて、おぉ、と思ったものの、まあ普通でした。
CGは見事だったけど、話にもう少し重みが欲しかった。

幸せの教室【Larry Crowne】
トム・ハンクスとジュリア・ロバーツ、という組み合わせですでに不安感があった。
中年男性の第2の人生として大学に通いスキルアップする、という題材がすごく良いのに
何故か恋愛話で終わらせ、しかもおさまりが悪かったのは、役者の組み合わせだと思う。

ダーク・シャドウ【Dark Shadows】
いつも通りクレージーで楽しかったけれど
ティム・バートンとジョニー・ディップのコンビの限界を感じてきたなぁ。

メン・イン・ブラック3【Men in Black III】
これはもう、安定感ある展開。シリーズ3でも飽きさせない動きと
意外なストーリーの展開も。

そして友よ、静かに死ね【LES LYONNAIS/A GANG STORY】
フランス映画。ふらりと見ただけなのに、役者の日本来日舞台挨拶に遭遇。
仁義、なストーリーに安定感と共感。

アーティスト【Artist】
2012年で観た映画ナンバーワン。無声、白黒、なのに新しい。
コラムも書きました。

ワンデイ【One Day】
ラブストーリーとしてはありきたりだけれど、
アン・ハサウェイの女優としての着々とした成長を感じる映画。

スノーホワイト【SNOW WHITE AND THE HUNTSMAN】
コラムにも書きましたが、とにかくシャーリーズ・セロンがうまい!
主演のクリステンの演技にもっと幅があれば傑作になっていたのにと、残念。

アメイジング・スパイダーマン【THE AMAZING SPIDER-MAN】
今までの3部作が全くなかったかのような新シリーズ。でもありだと思うな。
トビー・マグワイアとはまた違う味があって、今っぽい面白さで。

崖っぷちの男【MAN ON A LEDGE】
発想は良かったけれど、もう少しひねりが欲しかった。

マダガスカル3【MADAGASCAR 3: EUROPE’S MOST WANTED】
久々に、というより初めてキッズ映画をキッズと一緒に日本語吹き替え版で観たけれど、
意外に楽しめるもの。見方が変わりそう!

プロメテウス【PROMETHEUS】
前半が良い感じだったのに、後半すっかりエイリアンに。
ルーツは感じさせても、話はちゃんと組み立てて欲しかったなぁ。
着眼点がいいだけに残念。

ダークナイト ライジング【THE DARK KNIGHT RISES】
クリストファー・ノーランのバットマン。美しい映像、綺麗だった。
いろんな演出が派手すぎでもっとアンダーグラウンド的なバットマンが好きですが、
これはこれで。

ロラックスおじさんの秘密の種【DR. SEUSS’ THE LORAX】
これも吹き替え版で。まあまあでしたが子供達は楽しんだよう。

リンカーン/秘密の書【ABRAHAM LINCOLN: VAMPIRE HUNTER】
リンカーンとヴァンパイアという接点になんの脈絡もなく、
果たしてリンカーンである必要があったのか?
映像的なエンターテイメント性は抜群でした。

砂漠でサーモン・フィッシング【SALMON FISHING IN THE YEMEN】
アーティストに次ぐ今年のいい映画!
馬鹿馬鹿しさの中にある真実。イギリス映画っぽいです。

カラスの親指
なかなか面白かった、が最後のどんでんからがちょっと長かった。
阿部 寛が日本映画界の役所広司や中井貴一的なポジションに
近づきつつあるのかなと思う。

シルク・ドゥ・ソレイユ 彼方からの物語【CIRQUE DU SOLEIL: WORLDS AWAY】
実際のシルク・ドゥ・ソレイユが見たくなった。
映像ならではの美しさもありつつ、映像では見せ切れない部分もあるのだろうけれど、
芸術とはこういうものかと、ぼんやり思う。

さて、こう並べてみると、そんな悪くなかったのでは?
とは思うものの、コラムに書きたくなるほど良質、という意味では
やはりパンチに欠ける一年でした。

若干『何も考えなくても“楽しく”観れる』映画に偏りすぎたなぁ、と。
今年は少し頑張って、ストレス解消だけじゃない映画も数多く見ねば、と。

12:41 | masaki | 2012年の映画館/ザ・エンタテイメント映画に偏りすぎた年 はコメントを受け付けていません
2012/12/31

めぐり逢えたら
【Sleepless in Seattle】
1993年

メグ・ライアンとトム・ハンクスと言えば
文字通り一世をフウビした王道ラブ・コメのコンビ。

でも調べると実際に共演しているのはこの『めぐり逢えたら』と
以前コラムに書いた『ユー・ガット・メール(1998)』、
それと私も見たことないが邦題が「ジョー、満月の島へ行く(1990)」の3本。

不思議なことに私の頭の中ではかなり多数の作品で共演してることになっている。

しばらく見ていなかったので忘れていたけれど、
この『めぐり逢えたら』のそもそものストーリーの始まりは、
奥さんを病で亡くした父親サムを心配した息子ジョナが、父親には新しい奥さんが必要、
(つまりは自分にとっては新しい母親になるわけで)
と、精神科ドクターがナビゲートするラジオ番組に電話する。

不思議なことだ。ジョナにとっても実の母親を亡くしたことになり、
父親と同じくらいに母親を失ったことは辛いはず。

それを打ち消すほどに父親の状態を心配したのだろう。

心配して気遣う周りの人から解放されようと思ったのか
主人公サムは妻との思い出の土地シカゴを離れシアトルへ引っ越しを決意する。
旅立ちの日に『そのうち きっと すてきな女性に出会うわ』という友人の女性に
サムは自嘲気味に相打ちを打ちつつ、結局は妻の代わりはいない、と言う。

それどころが原文だと、そんな出会いは金輪際2度目なんてないんだ、と
出会いの可能性すら否定してしまっている。

そうだな 前向きに生きよう
ハートを入れ替えりゃ いいのさ
(女性とその夫が慌てる)
分かってる 代わりは いない

Right… right. Move on. Right. That’s what I’m gonna do.
And then in a few months, boom, I’ll be fine. I’ll just grow a new heart.
(Woman: Sam I’m sorry.)
(Her husband: She didn’t mean that.)
I know, I know. Look, it just doesn’t happen twice.

そしてジョナが心配するにはもっと深刻な訳があり
サムの傷心はもっと内面深いものである。

ラジオ番組での会話で、ドクターが『夜は寝ているのか』とサムに聞く。
すると息子が割り込み『全然寝てない』と即答する。
何でそんなことを知っているのか?と聞くサムに、
字幕では『分かるさ』と息子が答えるが
原文にはその“なぜ”がちゃんと言及されている。

ジョナ: 全然寝てない
サム: なぜかそれを?
ジョナ: 分かるさ

Johna: He doesn’t sleep at all.
Sam: How do you know that?
Johna: I live here, Dad.

分かるさ、だって同じ家に住んでるんだよ、父さん、と。

この会話はドクターに電話口に呼び出されたサムと
同じ家にいながら、直接話しができないからと、
子機で同じくラジオ番組に参加するジョナ、という具合に行われる。

それほどデリケートな話で、それほどジョナにとっては深刻で
そして同じ家に住みながらサムにはそれが見えていなかった、ということ。

子供にとっての親とは、を感じる重みのある一節である。

ちなみに原題の『Sleepless in Seattle』はこの一節から、
サムのラジオ上で付けられたニックネーム。
和訳だと“シアトルの眠れぬ男性”としているが、英語に男とも女とも言っていないのが、
サムとジョナのそしてラジオ視聴者の皆の共有する気持ちっぽくて尚更いい。

11:58 | masaki | めぐり逢えたら/同じ屋根の下で はコメントを受け付けていません
2012/12/06

小さい頃からアメリカに行きたいと思っていたわけではない。
高校2年生と3年生の間の春休みに、西海岸カルフォルニア州サンフランシスコ近くの
ヘイワードという大学に1ヶ月間英会話学校に短期留学に行ったことがきっかけ。

ずっと昔の事なのであまり細かいことは覚えていないけれど
ここで今でも忘れられない衝撃的だった出来事、
マック(マクドナルド)ストロベリーシェイク事件、に遭遇する。

当時は徐々にクレジットカードの利用が一般的になってきた頃で、
まだまだ、旅行にはトラベラーズチェック、という時代だった。

トラベラーズチェックは現金と同じ扱いなので
使えない所はほぼないぐらいに便利なものだけれど、そんなことは全然知らず、
しかも身分証明書としてパスポートを提示しなくてはならず少々めんどう。

だから少額の買い物でも、せっせと20ドルのチェックを使い現金化する。

お店に入ればまず聞くことは
Can I use the traveler’s checks?

ある日マクドナルドへ行った。
メニューを見て、よし、ストロベリーシェイクを頼もうと決める。
列に並んで私の番。あの時は、黒人のおばさん、と思ったけど
今思えば、多分若い黒人のお姉さんだったんだと思う。

いつもの通り、まずはトラベラーズチェックが使えるかを聞かねば。

Can I use the travelers checks?

お姉さんはハテナな顔つき。
なにしろ私の発音はカタカナ英語の棒読み状態である。

キャヌアイ ユーズ トラベラーズチェック?

もう一度繰り返す。

すると、お、オッケイ、という具合にお姉さんが笑い、ちょっと奥に行く

大丈夫らしい。使えるっぽい。

少し待つとお姉さんがカップを片手に戻ってきて、
『ストロベリーシェイク』をカウターに置く。
ここの会話は記憶が曖昧で、でもそれがストロベリーシェイクであることが私に伝わる。

おや?いつの間に注文したっけ? とは思うが、目的は達成されている。
後はお金を払うだけ。

キャヌアイ ユーズ トラベラーズチェック?
今度はチェックを見せつつ尋ねる。

そこでお姉さんも私も気がつく。
ああ、トラベラーズチェックね、ストロベリーシェイクじゃなくて!

その時のお姉さんの笑顔が素敵だった。
ああ、そういう事ね、って笑い。
特に私の発音を責め立てるわけでもなく、苛ついているわけでもなく。
きっと私も同じ顔をしてたのだと思う。

このエピソード、事あるごとにいろんな人に話しているけれど
つい最近気付かされたことがある。

あの時、私が注文しようと思ったのがストロベリーシェイクで良かったな、と。

別のものを頼もうとしていたら、それはそれはややこしいことになっていただろう。

訳もわからずストロベリーシェイクを押し付けられ、
アメリカという国はどうなんだ、と
寂しくマックを後にした可能性も多いにあったな、と。

12:43 | masaki | ストロベリーシェイクとトラベラーズチェック はコメントを受け付けていません
2012/11/23

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
【Extremely Loud and Incredibly Close】
2011年

その題名とポスタービジュアルだけで『見たい』と思い、劇場では見れず
あらすじも見ないまま9.11のコトとは知らずDVDで見た。

以前、2011年3月の 東北地方太平洋沖地震 についてのコラムを書いた時に
思い出し少し綴ったが
9.11の時私がなによりも衝撃を受けたことが映像化されていた。

自分の身近な友人、家族がそこに含まれていなかった故、
理屈でこれはとても酷いことなんだ、分からないけど胸が痛む。。。
その理由を改めて感じた。

テレビでは木の葉のようにWTCから落ちる人たちの映像が流れ….
教会には敷地の外のフェンスにまで行方不明者を探すメモが覆いつくしていた….

あの木の葉のような点には生命が溢れているんじゃないのか?
その家族たちが今、わずかな希望を持ち貼り続ける探し人のちらしには
諦めなくてはいけない状況との葛藤と悲しみなんじゃないのか?

そしてその当事者同士の会話はそれまでになかった9.11という出来事で
今も尚つながっている

私には見えなかった当事者の気持ち、
理解しようとしてもすぐにはできない気持ちが
主人公の少年の葛藤を通じて丁寧に描かれている。

ストーリー後半、かなり話が局面に達するのでネタバレを避け
部分的に簡略化して、抜粋する。

少年は以前一度訪れたブラック夫人【Mrs.Black】に連絡し会いに行くと、
車で出掛けようと言われる。
『知らない人の車には乗っちゃいけないんだ』と少年が答えると
『私たちは知り合いよ』とブラック夫人は答える。
確かに一度会っている以上、全く知らない人ではない。

その『知り合いよ』に該当する言葉として
not ‘entirely’ strangers という表現が使われている。

=====
Oskar: It’s Oskar Schell! I’m here!
Mrs. Black: Oskar, you’ve grown. Let’s go.
Oskar: Where are we going? I don’t take rides from strangers.
Mrs. Black: That’s a good rule, but we’re not entirely strangers. Get in.

オスカー: オスカーだよ 着いた!
ブラック夫人: オスカー 大きくなって… 行きましょう
オスカー: どこへ? 知らない人の車には乗らないよ
ブラック夫人: 賢明だけど私たちは知り合いでしょ 乗って
=====

全くの他人【entirely strangers】をnotで否定することで
知り合い、という意味になっているが
このentirelyという単語、どこまでを全体かと定義するならば
その範囲は無限極まりない。

家族なんだから
友達なんだから
ご近所なんだから
同じ状況を分かち合う境遇ならば
同じ近隣に住んでいれば
同じ町にいるんだったら
同じ国民じゃないの、
同じ人間同士、
そして同じ地球上の生物ならば、と繋がっていく。

このシーンで、知り合いなんだから、と言うなら
何もentirelyなんて大げさな言葉じゃなくても
We’re not stranger now.
など、もっとシンプルで良かったのではと思う。

深読みすぎるかもしれないが
だからこそここで entirely と言った
同じ9.11の当事者じゃないの、というメッセージ、
そして、同じ人として世界の人々に9.11をどう受け止めて欲しいのか
というメッセージを感じる。

***

そしてブラック夫人が、確固たる感じで
『全くの他人じゃない』と言うにはもう一つの理由があるのだが、
それはぜひ映画で見て欲しい。

07:24 | masaki | ものすごくうるさくて、ありえないほど近い/木の葉のように舞い散る1片 はコメントを受け付けていません
2012/10/31

コラムに書く映画は、基本映画館で見て、良かったのでDVDで何度も見る、
またはレンタルDVDして、あまりに良くて購入し、これまた何度も見る、
そういう大好きな映画タチ。

更にその映画が好きな理由が、監督だったり、
そのストーリーの中にいる“ある”役者が演じる“人物像”に胸打たれて、
と掛け合わせだったりする。

そしてDVDでみれば異なるが、その映画がいつ頃作られたのか、というのも
自分の人生のタイムラインと照らし合わせると面白い。

そんな理由から、コラムリストを製作年順に作成してみた。
気がついたら更新していこう。

=====

2011_コンテイジョン【Contagion】_スティーヴン・ソダーバーグ【Steven Soderbergh】

2010_トイレット_もたいまさこ

2009_マイケル・ジャクソン THIS IS IT【THIS IS IT】_マイケル・ジャクソン【Michael Jackson】

2008_幸せになるための27のドレス【27 Dresses】_キャサリン・ハイグル【KATHERINE HEIGL1】

2008_ハンコック【HANCOCK】_ウィル・スミス【Will Smith】

2007_ライラの冒険 黄金の羅針盤【THE GOLDEN COMPASS】

2007_アイム・ノット・ゼア【I’M NOT THERE】_ボブ・ディラン【Bob Dylan】

2007_ブレイブ ワン【THE BRAVE ONE】_ジョディーフォスター【Jodie Foster】

2006_レディ・イン・ザ・ウォーター【LADY IN THE WATER】】_ナイト・シャマラン【M. Night Shyamalan 】

2006_ペネロピ【PENELOPE】_クリスティーナ・リッチ【Christina Ricci】

2006_タロットカード殺人事件【SCOOP】

2001_バニラ・スカイ【VANILLA SKY】_アレハンドロ・アメナーバル【Alejandro Amenabar】

2001_アザーズ【the Others】_ニコール・キッドマン【Nicole Kidman】

2000_グラディエーター【GLADIATOR】_リドリー・スコット監督【Ridley Scott 】

2000_メメント【MEMENT】_クリストファー・ノーラン【Christopher Nolan】

2000_エリン・ブロコビッチ【ERIN BROCKOVICH】_ジュリア・ロバーツ【Julia Roberts】

1999_サイダーハウス・ルール【THE CIDER HOUSE RULES】_トビー・マグワイア【Tobey Maguire】

1998_ユー・ガット・メール【YOU’VE GOT MAIL】_メグ・ライアン【Meg Ryan】&トム・ハンクス【Tom Hanks】

1997_ボルケーノ【VOLCANO】_トミリー・ジョーンズ【Tommy Lee Jones】

1997_グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち【GOOD WILL HUNTING】_マット・デイモン【Matt Damon&ベン・アフレック【Ben Affleck】

1996_素晴らしき日【ONE FINE DAY】_ミシェル・ファイファー 【Michelle Pfeiffer】&ジョージ・クルーニー【George Clooney】

1996_ザ・エージェント【JERRY MAGUIRE】_トム・クルーズ【Tom Cruise】

1995_ユージュアル・サスペクツ【the Usual Suspects】

1995_クルーレス【CLUELESS】_アリシア・シルヴァーストーン【Alicia Silverstone】

1995_アウトブレイク【OUTBREAK】】_ダスティン・ホフマン【Dustin Hoffman】

1995_マディソン郡の橋【The Bridges of Madison County】_クリント・イーストウッド【Clint Eastwood】

1993_ボビー・フィッシャーを探して【SEARCHING FOR BOBBY FISCHER】

1993_ザ・シークレット・サービス【IN THE LINE OF FIRE】_クリント・イーストウッド【Clint Eastwood】

1992_セント・オブ・ウーマン【SCENT OF A WOMAN】_アル・パチーノ【Al Pacino】

1985_セント・エルモス・ファイアー【ST. ELMO’S FIRE】

1982_E.T.【E.T. THE EXTRA-TERRESTRIAL】_スティーヴン・スピルバーグ【Steven Allan Spielberg】

1982_トッツィー【tootsie】_ダスティン・ホフマン【Dustin Hoffman】

1982_トロン【TRON】

1952_雨に唄えば【SINGIN’ IN THE RAIN】

11:08 | masaki | 好きな映画タチ はコメントを受け付けていません

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