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ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
【Extremely Loud and Incredibly Close】
2011年
その題名とポスタービジュアルだけで『見たい』と思い、劇場では見れず
あらすじも見ないまま9.11のコトとは知らずDVDで見た。
以前、2011年3月の 東北地方太平洋沖地震 についてのコラムを書いた時に
思い出し少し綴ったが
9.11の時私がなによりも衝撃を受けたことが映像化されていた。
自分の身近な友人、家族がそこに含まれていなかった故、
理屈でこれはとても酷いことなんだ、分からないけど胸が痛む。。。
その理由を改めて感じた。
テレビでは木の葉のようにWTCから落ちる人たちの映像が流れ….
教会には敷地の外のフェンスにまで行方不明者を探すメモが覆いつくしていた….
あの木の葉のような点には生命が溢れているんじゃないのか?
その家族たちが今、わずかな希望を持ち貼り続ける探し人のちらしには
諦めなくてはいけない状況との葛藤と悲しみなんじゃないのか?
そしてその当事者同士の会話はそれまでになかった9.11という出来事で
今も尚つながっている
私には見えなかった当事者の気持ち、
理解しようとしてもすぐにはできない気持ちが
主人公の少年の葛藤を通じて丁寧に描かれている。
ストーリー後半、かなり話が局面に達するのでネタバレを避け
部分的に簡略化して、抜粋する。
少年は以前一度訪れたブラック夫人【Mrs.Black】に連絡し会いに行くと、
車で出掛けようと言われる。
『知らない人の車には乗っちゃいけないんだ』と少年が答えると
『私たちは知り合いよ』とブラック夫人は答える。
確かに一度会っている以上、全く知らない人ではない。
その『知り合いよ』に該当する言葉として
not ‘entirely’ strangers という表現が使われている。
=====
Oskar: It’s Oskar Schell! I’m here!
Mrs. Black: Oskar, you’ve grown. Let’s go.
Oskar: Where are we going? I don’t take rides from strangers.
Mrs. Black: That’s a good rule, but we’re not entirely strangers. Get in.
オスカー: オスカーだよ 着いた!
ブラック夫人: オスカー 大きくなって… 行きましょう
オスカー: どこへ? 知らない人の車には乗らないよ
ブラック夫人: 賢明だけど私たちは知り合いでしょ 乗って
=====
全くの他人【entirely strangers】をnotで否定することで
知り合い、という意味になっているが
このentirelyという単語、どこまでを全体かと定義するならば
その範囲は無限極まりない。
家族なんだから
友達なんだから
ご近所なんだから
同じ状況を分かち合う境遇ならば
同じ近隣に住んでいれば
同じ町にいるんだったら
同じ国民じゃないの、
同じ人間同士、
そして同じ地球上の生物ならば、と繋がっていく。
このシーンで、知り合いなんだから、と言うなら
何もentirelyなんて大げさな言葉じゃなくても
We’re not stranger now.
など、もっとシンプルで良かったのではと思う。
深読みすぎるかもしれないが
だからこそここで entirely と言った
同じ9.11の当事者じゃないの、というメッセージ、
そして、同じ人として世界の人々に9.11をどう受け止めて欲しいのか
というメッセージを感じる。
***
そしてブラック夫人が、確固たる感じで
『全くの他人じゃない』と言うにはもう一つの理由があるのだが、
それはぜひ映画で見て欲しい。