窓のカーテンを開けたとたんに、
彼女の表情は一変した、
瞬きもしなければ、
まったく身動きすることも出来なくなったらしい、
窓の外一面に広がる初夏の森、
小鳥のさえずり、
しかも2階の窓から森を見下ろす景色、
彼女が生まれて始めて味わった光景かもしれない、
いつまでも森に見とれていた彼女、
『ロッティ』、
ママが呼ぶ声でやっと気がついたのだろうか、
彼女はやっと一つ瞬きをした、
これが今自分がいる世界、
そんな事を考えているのだろうか、
彼女は生まれてからというもの、
狭い部屋と、
冷たい檻の中、
そして歩道に咲く草花、
そんな世界だけを見て育った彼女、
今、自分の目の前に広がっている世界、
どこまでも森が続く世界、
自分がこんな世界に生まれていた事を、
あらためて気がついたような、
顔つきだった、
ロッティが私たちの家に引き取られてから3週間が経ち、
ロッティの正式譲渡も終わり、
晴れてロッティが我が家の家族となり、
彼女の週末の森の生活が始まった、
昨夜は車に乗せられて夜の街を走り、
眠りについた暗い森をの中を走り、
いつもとは違う小屋に連れて来られた、
ドアを開けて小屋に入るなり、
しばらくの間小屋の中の隅々まで臭いを嗅いで、
ここが自分に取って安全な場所なのか、
身体全体で感じ取ろうとしていた、
ここがどこでどんな場所なのかも知らないまま、
新しい家族の布団の上をジャンプしながら遊んで、
そして皆と一緒に眠りについた、
朝日が部屋の仲に射込むと、
ママが窓の方にロッティを呼ぶと、
彼女の目は窓の外の世界に釘付けになった、
あまりにも感動的な森が目の前に広がっていた、
ママと一緒に森の中を散歩してみた、
草は朝露に練れて足元を濡らしたが、
フカフカの土の感触、
朽ち果てた古木の臭い、
気のほこらには今まで嗅いだ事のない獣の臭い、
空からは今まで聞いた事のない鳥の鳴き声、
食べれそうな草を見つけては、
口でちぎって食べてみた、
小さな虫が足元を歩いているので、
前足で叩いてみた、虫は動かなくなった、
なんだろう、ここは、
私の中で沸き上がってくるこの感情はなんなんだろう、
食事を済ませると、
今度はママが芝生のある広い場所に連れて行ってくれた、
私は力の限り走ってみた、
自分の足がどこまで動くのか知りたくて、
ただひたすら走ってみた、
誰にも怒られる事のない場所、
自分が自由になれる場所、
草の臭いが身体中に絡み付いて来た、
とても心地良い臭い、
とても楽しくて私は走り続けた、
立ち止まって空を見上げると、
蝉の声が聞こえていた
ママの顔を見上げると、
『リッティ、これは春蝉の声えよ!!』と、
ママが教えてくれた、
ママの笑顔を見ていると、
私は自分が今、
とても幸せになれた事に、
気ずき始めていた。
庭の端まで来ると林道の向こうの笹薮のほうから、
1,2,3,4,5,6,・・・・
川の流れる音と一緒に、
数を数える声が聞こえます。
森に中で作業をしていると、
突然管理人が、
『電源コードを貸してくれや』と、
足下をビショビショに濡らしながら現れ、
電源コードを掴むと再び林道の向こう側の、
笹薮の中に消えて行きます、
林道の際の凹んだ部分に軽トラを残したまま、
2時間程過ぎた頃でしょうか、
林道の向こうの笹薮の中から、
管理人の悲壮な声、
『引っ張ってくれんか、オオ〜〜〜イ』
『オオ〜〜〜〜イ、ダレカイルカ』
私がビックリして笹薮の中に踏み入ると、
そこは背丈以上の笹薮の為、
まったく管理人の姿が見えず、
それでも声のする方に笹薮を踏み分けて行くと、
電源コードを持った管理人が力つきて笹薮の中に座り込んでいます、
まるでその様子は熊に教われたのか、
とんでもない事件にでも巻き込まれたかのように顔面は蒼白、
管理人の口から出て来た言葉は、
『悪いけど歩けなくなったから、引っ張ってくれや』
水中ポンプを横に置いて、
電源コードを持ったまま私の方に手を伸ばしています、
土の上に座り込んだ管理の話しをよく聞くと、
どうも自分の造園業の職人と2人で、
毎年この笹薮の下の川にイワナ取りをする場所があり、
いつもは素手でイワナを生け捕りにしていたのに、
今年は水量が少ないという事でその周辺を岩で囲い、
水中ポンプで水をくみ出し、
イワナを一網打尽にしたそうです、
水中ポンプを動かすのにどうしても電源コードが欲しかったそうです、
ところが川から戻る事となると、
川から林道までは笹薮の上り坂、
70後半の太り過ぎの管理人の身体には、
顔面を蒼白にするには十分な道のりだったようで、
泣いているんだか喜んでいるんだか、
見分けのつかないような様子、
太った管理人を笹薮から連れ出し道まで出て来ると、
回り道を通って来た職人がバケツに入ったイワナを見せてくれます、
全部で15匹、
一番大きい奴は35センチの大物、
『それにしても今回はやっかいだったな』と一言、
そう言えば毎年この季節になると、
他県のナンバーの車がこの林道に入って来て、
ゴム長を履きフライの疑似餌をいっぱい胸に付けたチョッキを着た、
まるでビーパルから抜け出て来たような釣り人が、
川に入ってく光景を良く目にしますが、
70後半を過ぎた太り過ぎの管理人、
60後半を過ぎた身軽な職人、
どうも毎年2人でイワナ取りをやっているそうで、
今年は思い切って水中ポンプを使う事にしたらしいようです、
この2人のイワナ取りは、
何十年も前から続いているそうで、
実に骨太の遊びのようです、
それにしても、
2人の表情を見ていると、
まるで子供のようにはしゃいでいるようにしか見えません、
ただ、体力だけは年相応に衰えている事を覗けば、
山間に住む老人たちの遊びは過激で、
いつも子供の時のように遊ぼうとするから厄介ですが、
私もこれから先、
この山間に住む事になれば、
こんな遊びを毎日出来るのかと思うと、
どこからともなく笑みが、
こぼれそうになっている自分が、
子供の時に戻って行くようです。
久々の森にきてみると、
すでに春の風は去り初夏の風に変わっておりました、
森の木々は萌葱色から色鮮やかな新緑色、
ホウの木の下を通りかかるとほのかに甘い魅力的な香り、
空を見上げるとすでに今年もホウの花が、
青い空と緑の葉の間に白い花を咲かせています、
庭に出てみるとジャーマンアイリスが私たちを待っていたかのように、
いっせいに一番花を朝陽に花びらの美しさを見せつけるように咲いています、
植物はまるで季節の順番を待つように、
花を咲かせているもの、
莟を膨らませているもの、
やっと土の上に新芽を送り出したもの、
総ての生き物が、
季節の順番待ちをしているかのようです、
森では、
テラスを作る私と、
庭の手入れをするママと、
飛び始めた虫たちだけが、
初夏の森の風を独占しております、
ほとんど出来上がったテラスでママとお茶をしていると、
どうも作り付けの鳥の巣箱のあたりが騒がしいようです、
じっと巣箱を見ていると、
なんと、シジュウカラが出入りしています、
巣箱を取り付けて5年目にしてやっと鳥が、
子育てをしているようです、
『パパ、やったね、
それにパパ、今日は鳥の巣立ちの日みたいよ、
さっきから鳥が巣箱の入り口でパタパタしたり、
変な飛びかたで地面に降りたり、
又飛び上がったり、
鳥の巣立ちの日に立ち会えるなんて、
なんてラッキーなんだろう!!』
ママが鳥たちを驚かさないようにと、
巣箱の周りの庭の手入れをしていると、
木の根元でか細い鳥の声、
梢では雛を心配するように親鳥の鳴き声、
『パパ、パパ、
どうも鳥の巣立ちではなくて、
雛が巣箱から落ちて、
親鳥が心配でその周りを飛び回っているみたい』
巣箱の木の根元を覗くと、
笹の葉の影には、
全身産毛ではげ頭のシジュウカラの雛が、
梢の上では親鳥が大きな声で鳴いています、
そっと匂いがつかないようにタオルで雛をくるみ、
梯子に上ってシジュウカラ雛を巣箱の中に、
私たちがその場を離れても、
親鳥は今まで雛がいた地面の側を飛んだり、
梢から大きな声で雛を呼んでいます、
夕方温泉から帰ってベランダに出てみると、
明るい月で照らされた森の中の庭は、
静かな眠りについています、
きっと親鳥は巣箱の中で、
雛と一緒に安心して眠りについているようです、
初夏の森では、
生き物たちが命の支度を、
今年も始めたようです、
満たされた生活の中で、
満たされないと思う事があったら、
初夏の風の香る、
森の中を歩くのもいいようです。
心配しないでいいんだよ、
君に見つめられていると、
君の瞳の中の悲しみが見える気がするよ、
君は君のママと別れ兄弟とも別れ、
そんな君に見つめられると、
もう大丈夫だからと声を出してしまいそうになる、
この家に来てから一週間が過ぎ、
私たちの家族には慣れましたか、
階段の上り下りは怖くなくなりましたか、
誰もいない場所が寂しいと、
君はママが家のどこにいても離れないそうですね、
もう大丈夫だから、
ただ寂しいのが嫌いなだけなんだよね、
又、いつの日か哀しい日々が訪れるのが怖いだけなんだよね、
私の言葉が聞こえますか、
もう大丈夫だから、
君の忘れたい思い出、
出来るなら君の瞳から総て消してあげる事が出来たら、
君の声が聞こえる事が出来たら、
私の声が聞こえる事が出来たら、
もう大丈夫だから、
それを君に伝えたい、
君の周りにいる人は、
もう君を傷つけたりしないから、
君はもう大丈夫だから、
これからは何があっても笑い飛ばしていいんだから、
君はもう大丈夫だから、
来週は皆でお山に行くよ、
それはそれは素晴らしい森に君も出会えるはず、
朝は小鳥の声で目を覚まし、
自由に草の上を走り、
野ネズミだって追っかけ回す事が出来るよ、
どんなとこだって君がやりたい事が有れば、
やってみるといいよ、
そう、君はもう大丈夫だから。
私は震えながら鉄格子の中にいる、
どのくらい時間が経ったのだろうか、
床の濡れたコンクリートは冷たくないはずなのに、
隣の鉄格子の中にいる泥だらけで痩せた老犬が臭いわけでもない、
ただこれから自分がどうなって行くのかが不安で、
心が震えている、
そして身体全体が震えている、
自分ではどうする事も出来ないこの震え、
私が生まれたときは確か兄弟は5匹いたはずだった、
母親犬の乳房を毎日兄弟と争ってむしゃぶりついていた、
毎日母親犬の甘い香りのする暖かな乳房を兄弟と争っていたのが、
今ではとても幸せだった日々のように思える、
ある日のこと、
私たち兄弟の3匹が車でこの施設に連れて来られた、
部屋は総て鉄格子で仕切られて、
オシッコもウンコもこの部屋の中でしなければならない、
毎日白い長靴を履いたいかつい人が、
部屋に白い霧をまき散らすのだが、
その鼻に付くつんとした匂いはどうにも我慢出来ない、
それからというものずっと私は不安で震えが止まらなくなってしまった、
ときおり鉄格子の外を人が通りかかるが、
私は恐怖で顔を上げてその人を見ることが出来なかった、
昨日、私の兄弟の2匹が檻から出されて、
お母さんの一緒に来た子供たちに抱かれてどこかえ連れて行かれてしまった、
私は兄弟と別れてこの檻の中で震えている、
隣の檻では白い長靴を履いたいかつい人達が、
何十匹もいる犬たちを足で追い立てながらどこかえ連れ去って行った、
きっと外に散歩に行ったのだろうと思っていたが、
星の降る夜になっても一匹も戻って来る犬はいなかった、
翌日の朝早く見慣れない2匹の子犬が隣の檻に入れられた、
彼らも身体が震えていた、
私には彼らが床のコンクリートが冷たくて震えているのではなく、
彼らも不安でたまらなく心が震えている事が手に取るように分かっていた、
『そんなに不安がらなくても大丈夫だよ、
ほら私を見てごらん、
今日で7日目だけど、
私はやっと身体の震えが止まったよ』と、
隣の檻の中で震えている子犬に声をかけた、
その時、私の檻の前で立ち止まった人がいた、
私は勇気を振り絞って顔を上げてその人を見上げてみた、
檻の外にいる人は私に向かって優しく微笑んでくれた、
私の尻尾は思わず私の意志とは関係なく揺れていた、
それから10分後、私は再びさっきの人に抱かれて、
檻から出る事が出来た、
暗い廊下をしっかりした強い手で抱かれて外に繋がる扉に向かう途中、
今まで私がいた檻を振り返ると、
白い長靴を履いたいかつい人達が、
わたしがいた檻の中に残っていた何十匹もの犬たちを足で追い立てて、
どこかに移動させようとしていた、
ちょうど私がここに連れられて来てから7日目の事だった、
今ではここに一緒に連れて来られた私の2匹の兄弟も、
私の檻にいた犬たちもどこに行ってしまったのかは分からない、
とにかく私は7日ぶりに外に出る事が出来た、
事務所で書類を書いている人達の話しを聞いていると、
私はどうもこの保健所に兄弟3匹で連れて来られたらしい、
どういう理由か分からないけど5匹いた兄弟のうち、
私たち3匹だけが連れて来られたらしい、
優しい目をした人に抱かれて私はこの保健所を出る事が出来た、
私は檻の中にいた他の犬たちの事を聞こうと思ったが、
その事を考えるだけで又身体が震えだしたので、
とうとう私はその事を聞く事が出来なかった、
それから数日後、
私は今度は優しそうなお姉さんに抱かれていた、
私に優しく微笑んでくれた人は私を抱き上げてくれているお姉さんの事を、
『預かりさん』と呼んでいた、
私は預かりさんの家に連れて行かれた、
預かりさんが家のドアを開けるとそこには、
違う大きさの犬が4匹ちょこんと座ったまま、
預かりさんに向かって尻尾を振っていた、
私はやっと自分の心の震えが次第に弱まって行くのを感じていた、
それからの日々は毎日が幸せだった、
柔らかな毛布に包まって寝る事が出来たし、
野菜もお肉もたっぷり入った食事も貰う事が出来た、
でも一番嬉しかった事は、
毎日、2回、外に連れ出してもらい、
オシッコもウンコも土の上にする事が出来た事だった、
預かりのお姉さんの家には家族が何人もいて、
皆、私に優しく微笑んでくれる、
私は生まれて始めて幸せな日々をおくる事が出来た、
そして、明日の事を心配する事なく眠る事が出来た、
生まれて来て良かったと思わない日はないほど、
毎日が幸せに包まれていた、
それから5ヶ月程過ぎたある日の事、
私は預かりのお姉さんとコーディネータのお姉さんと、
今まで入った事のないコーヒーの香りのするお店に連れて行かれた、
そこにはすでに3人の家族らしき人がテーブルに付いていた、
預かりのお姉さんに抱かれた私を見るなり、
その家族のママらしい人が涙を浮かべていた、
そして女の子がジュースを飲みながら私に向かって微笑んでくれた、
預かりのお姉さんとその家族がお話ししている間中、
私はずっとジュースを飲んでいた女の子の膝の上に抱かれていた、
女の子は私に向かって誰にも聞こえないように、
『あなたビッケにそっくりね、
私がずっと飼っていた犬なんだけど、
心臓の病気で去年死んじゃったの、
あなた、私とお友達になってくれるかな』と、
少女が私に話しかけてくれたので、
私は軽く目をつぶって合図した、
女の子はジュースのストローをくわえたまま、
ビックリしたように隣にいたママらしき人に耳打ちしていた、
長いお話が終わると私はさっき会ったばかりの家族と、
一緒に写真を撮ってもらった、
そのコーヒーの香りがするお店を出ると、
私は再び預かりのお姉さんに抱きかかえられた、
外はいつのまにか小雨が降り出していた、
それから2週間後に、
私と預かりのお姉さんはコーディネーターの車に乗せられた、
建物の上を走る道を車が小雨の霞の中を走っていた、
今日もあの日と同じように小雨が降る肌寒い日だった、
車のワイパーがゆっくりとウインドーにまとわりつく小雨を、
かき集めて私の目の前を良く見えるようにしてくれている、
小一時間程過ぎてうとうとと私が眠くなり始めた頃、
車は下町の住宅地の一角で止まった、
車の前には2週間前にあのコーヒーの香りのするお店で会った家族の、
パパらしき人が傘を持って小雨の中に立っていた、
白いドアを開けるとやはりあのお店で会った泣き虫ママと、
ジュースを飲んでいた女の子が立っていた、
リビングに案内されると、
預かりのお姉さんとコーディネーターのお姉さんと、
泣き虫ママがお話しを始め出した、
私はリビングの隅から臭う微かな犬の香りを探していた、
確かにこのリビングには犬の香りが微かに漂っているのに、
犬の姿を見つけ出す事が出来なかった、
この扉の向こうにはきっといるはずと思って、
神経を集中しても扉の向こう側にいるはずの犬を感じる取る事は出来なかった、
ただ微かな犬の香りしか感じる事しか出来なかった、
3時間程過ぎた頃、
テーブルの上では預かりのお姉さんと、
この家族の人が書類らしきものにサインをしていた、
そしてコーディネーターのお姉さんがカメラを構え、
女の子に抱かれて私はこの家族と一緒にソファーに座って、
写真を撮られた、
そろそろ帰る時間が迫っている事に気がついた、
それにしてもこの家に微かに残る犬の香りが気になってしかたがなかった、
幸せに包まれた香りが気になってしかたがなかった、
突然預かりのお姉さんが私に近づくなり、
私を抱きしめて頬ずりを始めた、
私は驚いて身動きすら出来なくなっていた、
預かりのお姉さんの顔を見上げると涙が光っていた、
昨夜は何だか眠る事が出来なかった、
うとうとすると目が覚めた、
聞き慣れない声と聞き慣れない物音で何度も目が覚めた、
朝になった、皆が起きたと言うのに、
いつもの預かりのお姉さんも今日はもういない、
コーディネータのお姉さんさんもいない、
白い長靴を履いたいかつい人達も今日はもういなかった、
ただ微かな幸せの香りのするリビングで、
新しい家族の人達が、
私に向かって何度も、
『ロッティ』呼んでいる事に気がついた、
始まりは、
泣き虫ママさんがインターネットの保護犬サイトの写真を見ていた時に、
私の写真を見てママの目が釘付けになったときから、
私の運命は動き出した、
そのサイトの中には800匹以上の保護犬の写真がUPされていたらしいのに、
その中のたった1枚の私の写真をママが見つけてくれ、
そして私は今日この場所にいる事が出来た、
あの保健所に連れて来られた兄弟の2匹はどこに行ったんだろう、
私と一緒に檻の中にいた何十匹もの犬はどこに行ったんだろう、
雨上がりの日曜日、
道はまだ雨に濡れているけれど、
私は暖かな朝陽を浴びながら、
幸せな気持ちがこみ上げて来るのを感じていた。
春の柔らかい空では山桜が満開、
5月の森は暖かく蜂さえ飛び交う季節、
柔らかな地面からは、
気をつけて見ていないと気がつかない、
新しい命がそこかしこに生まれています、
5月の連休は、
前半と後半共に山の生活、
私と言えば毎日必死になって作業したのも関わらず、
ベランダは完成する事が出来ずに、
思わず山友にメール、
『まことに残念な事ですが、
ベランダでバーベキューの件なんですけど、
毎朝5時に起きて作業しておりますが、
現時点でベランダでバーベキューの御約束が守れそうにも有りません、
つきましては、
我が家のベランダでバーベキューの件に関しては、
御盆休みまで延期していただけるよう御願い致します、
その代わりと言っては何なんですけど、
春の山菜天ぷらパーティーを行おうと思いますので、
宜しく御願いします。』
メールを出し終わると、
なぜか一気に気が楽になってしまい、
作業のスピードはみるみる遅くなってしまいます、
連休中は山友全員集合で、
昼に晩に御食事会、
ママと娘たちはは、
庭にはびこった笹と悪戦苦闘、
スコップにツルハシ、
考えられる小道具を総て持ち出し、
笹の根っ子堀り、
それにしても5月の山はまだ寒く、
早朝は霜さえ降りるほど、
日の出前の庭を散歩していると、
青い空気から次第にオレンジの空気に変わり、
森全体が柔らかな風に包まれるようです、
昨日から東京の仕事に戻りましたが、
昨日も今日も、
朝5時に目が覚めてしまうのは、
まだまだ体が山の生活をしているようです、
電車の窓から見える新緑が、
やたらと気になります。
5月の連休はベランダでバーベキューを!!
先日の中華街のお食事会での決定事項を守る為に、
霧の立ちこめる森の中で作業をしています、
いつでも雨が降ってもいいようにブルーシートを張り作業をしています、
ふと見上げると森は霧の中、
ちょこっと幻想的です、
森の中の霧は、
しだいに霧雨へ、
そのうちに春雨へ、
そして村時雨へと、
今回は一度も晴れ間を見ることが出来ませんでした、
ママと下の娘は森の中に花壇の増設、
土を耕し雑草を取り除き、
石で石組みをして新しい花壇を作っています、
霧の中の森では、
誰も喋る事なく静かです、
ときおり私の丸ノコの音が響き渡るか、
小鳥が向日葵の種をせがむ鳴き声しか聞こえません、
雨が止んだので、
皆で借りている畑に行ってみると、
気温が高くなったせいなのでしょうか、
広大な大地から蒸気が立ち上っています、
大地が命を吹き返したようです、
円高に円安そしてヨーロッパ危機、
100ショップの拡大にIT産業の崩壊、
成功報酬に大手企業の大リストラ、
総ての行為を正当化する言葉『国益の為に』、
社会に貢献する為にではなく保身の為に、
色々なニュースが駆け巡っていますが、
今、目の前の大地では、
いつでも命を育てる準備ができているようです、
何百年も前からずっと続いている春の光景のようです、
それにしても、
5月の連休までにはベランダは完成するのでしょうか、
その事が心配です!!
総勢8人で久々に中華街に繰り出しました、
山友2号の奥さんの退職祝い、
私のママの骨折快気祝い、
理由はともあれ、
久々の山友1号と2号とのお食事会、
一昨年好評だったオーダータイプの食べ放題『皇朝』へ、
店の前につくと店頭には長蛇の列その人数ざっと30人、
予約しといてよかった!!
一昨年はここまで混んでいなかったと思い店の人と話すと、
ネット検索No,1『皇朝』になったので、
急に人気が上がったという事でした、
恐ろしきネット検索社会のようです、
食事の注文は、人気No,1〜No,10まで四人分、
点心の注文も、人気No,1〜No,8まで四人分、
ン〜〜〜〜〜〜〜、
大人買い注文です!!
食事はどれも作り立てで相変わらず美味しく、
ただ、皆さん歳のせいでしょうか、
1時間もすると食事のペースが急に遅くなり、
ビールを飲みながら山の話し、
程よい頃に店を出ると、
今度は店内の階段までお客が並んでおります、
これって副都心線の乗り入れも関係あるのでしょうか、
食事後は腹ごなしに中華街の散歩、
私の奥さんと山友1号の奥さんは、
どこの店に入っても騒ぎまくって楽しそう、
元町を抜けて外人墓地、
この日は特別な日という事で、
普段は入れない桜咲く外人墓地の中を散歩する事が出来ました、
手前には満開の桜、遠くには中華街、
頂いた資料をに目を通すと、
色々な面で日本に貢献した方が日本で亡くなり、
祖国には戻らずこの地に眠っているようです、
そんな時、
山の庭のどこに眠りたいかなと、
そんな考えがふと私の頭をよぎって行きました!
寒くもなく、
熱くもなく、
桜咲くお食事会は気持ちよかったです!!
今朝起きてリビングのドアを開けると、
『今日も気をつけてね、パパ』、
忘れないうちに言っておくと、
ママが泣きながら話しかけて来ます、
いつも思っていたけど、
今日からは言葉にする、
TVでは東北大震災特集。
週末の山は、
北側の斜面にはまだ雪が残っているものの、
3月の始めとは思えないほど暖かく、
雪の溶けた庭では、
土の中から新芽が顔を出しています、
あの震災から2年経が経ち、
今まであたりまえだった家族の笑顔が、
どことなく身に染みて感じるようになっています、
家族で山に来れる事が、
とても素晴らしい時間を過ごしている事に気がつき、
水と塩とお米が有り、
雨をしのげる場所さえ有れば何とか生きて行ける、
家族皆が元気なら、
いつのまにか、
そんなシンプルな考え方に辿りついいた感じです、
何にこだわっていたんだろう、
どんな生活を望んでいたんだろう、
水と塩とお米があり、
そして笑顔の家族さえいれば、
それで十分に幸せを感じる事が出来る、
そんな思いが身に染み込んで来たようです、
今回の山の生活は出来るだけシンプルに、
出来るだけ電気を使わず、
ここにある物で生活しようという事になり、
ママと娘が、
土鍋と薪ストイーブでお米を炊き、
炊きたての御飯に鮭カンをのせて少し蒸らし、
管理人から貰った少々の御漬け物、
山のシンプルな朝食は、
美味しい沢の水が、
お米の美味しさを、
一段と引き立てているようでした。
水と塩とお米があれば
雪の降る夜は天国の扉が見えるの、
天国の扉の前までは誰でも行けるけど、
天国の扉を開けるにはどうするか知ってる、
外は粉雪、
雪の降る夜に、
粉雪に呪文をかける君、
両手に抱えた総てのものに別れを告げて、
身に付けた総てのものに思い出を包んで脱いで、
素手で扉を叩くの、
そしたら誰にでも天国の扉を開けられるの、
簡単なことでしょ、
でもそのことに誰も気がつかないの、
ばかな話しでしょ、
扉の前で総て捨てるなんて、
何の為に一生懸命頑張ってきたかって思うわよね、
何の為に自分を捨ててきたかって思うわよね、
それでも最後に総てを捨てるだけの勇気がなければ、
その扉は死ぬまで開かないの、
死んでもその扉は開かないの、
だってよく考えてみて、
古代エジプトのミイラだって、
宝石だけは棺の中に置いてきぼりよ、
おかしな話しよね、
笑っちゃうわよね、
そんな簡単なことに気がつかないなんて、
しんと静かな日、
昨夜から振り続いた雪は、
私が両手にかかえていた総てのものを隠し、
昨日まで見ていた総てのものを隠し、
しんと静かな夜、
総ての音も、
総ての色も、
まだ捨てきれないものまで、
白い雪が隠して去って行く、
家の煙突からはパンを焼く白い香り、
長い冬は大切なことに気がつく季節、
雪の降る夜は、
夢を追いかけることを止めて、
大切な人を見つめる季節、
目を合わせる度に近ずく、
雪の降る夜は、
静かな季節。



















