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2012/06/30

アーティスト
【The Artist】2011年

話題になっていて少し気になっていたけれど、
近年、映画は気晴らしで、難しいことを考えたくない時に見る、コトが多く
モノクロのポスターとその昔風の雰囲気からなんとなく
『めんどくさそう』と、しばらくタイミングを逃した感じだった。

ところが、仕事で一緒となった映像カメラマンの方が
『いいよー、ぜひ見たらいい』と言うものだから、
よし!と思ったものの最寄りの映画館ではその日が最終日。
結局見たい気持ちがあれど撮影でヘトヘト、やむをえず見送りとなっていた。

それから1ヶ月のついこの間、まだいくつかの映画館で上映をしていることを知り
よし!今度こそはと行ってきた。

素敵でした。

サイレントからトーキーと呼ばれる音のある映画へ移り変わる時代を
サイレントムービーで描いた映画。

見始める前には、セリフがなくて、画面の字を読んで、
確かに昔はそれで楽しかっただろうけど
果たして今のこの時代で、映画一本分間がもつのかなんて半信半疑だった。

そんなことは全く心配なく、あっと言う間に見終えた。

音もない、色もない、故、シーンひとつひとつが吟味され意味を持ち
結果完成度がすごく高いものになったのだろう。

そして英語のハナシ。
今回は劇場だったので、メモを取れるわけも巻き戻せるわけでもなく
ぱっ、と通り過ぎた、私の記憶からのセリフなので、少し違うかもしれないが
感じたコトを。

サイレントのスター俳優ジョージが、トーキーの登場で
その座を追われ、酒浸りになり文字通り落ちぶれていく。
方や、デビュー時にジョージに後押しされ、
トーキーの流れに乗ってスターとなった女優ペピー。

彼女は昔の恩を返そうと影ながらジョージを見守り、
ついにはトーキーへの出演を段取る。

もちろんジョージはそんなオファーにはのらないと断る。
誰がサイレントの俳優の声なんかをききたがるんだと。
その通りであるがそうも言ってられる訳がない。

その昔はジョージの運転手で、今はペピーに仕えるクリフトンが言う。

Be aware of your pride.
誇りを捨てなさい

日本語ではよく、誇りを捨てろ、という言葉が出てくる。
おごり高ぶるな、いらぬ誇りはヒトの判断を曇らせる、というのが真意であって
実際は誇りを捨てることをすすめているわけではない。
そもそも誇りを捨てて選択することに何の意味が残されているのだろうかと思う。

でもこの映画に限らず、どうして、誇りを『捨てる』と、
さも、丸ごと捨ててしまえというコトバになるのかいつも不思議に思う。

英語のセリフの Be aware は、直訳は『気がつけ』、意訳であれば『注意しろ』となり
pride には、too muchとか、more than enoughとか余計なコトバもつかず
ただ、あなたの(持つ)プライドに注意なさい、
と、捨てろ、ともどうしろとも言っておらず、
つまりはプライドの持ち方を今一度考え直せと。

そこには“捨てる”という一線を飛び越えたコトバは生じていない。

わびさびの良さから、
言葉にすることの大事さを重視するようになってきている今の日本、
どれだけ『誇りを捨てろ』というコトバから
芯となる誇りは持ち続け、いらぬプライドは捨てろとというその真意が伝わるのか、
という不安を持っているのは私だけだろうか。

2012/06/30 10:48 | movies, things | No Comments