2017/01/09

少々遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

昨年の1月に開始した本コラムですが、不定期ながら1年間続けることができました。今後もネタだけは豊富にありますので、鋭意続行する所存でございます。
今後とも、変わらぬご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

さて、1月。
プロレスファン的には、1月と言えば1月4日に毎年開催される新日本プロレスの東京ドームを連想する向きも多いことでしょう。メインのオカダ・カズチカ×ケニー・オメガの試合は確かに素晴らしかったと思います。
しかし!我々WWEファンにとっては、何と言っても1月は「ロイヤルランブル」です!

「ロイヤルランブル」とは、ペイ・パー・ビュー(PPV)大会の名称でありつつ、非常に特徴ある試合形式の名称でもあります。
イベントとしては、レッスルマニア、サマースラム、サバイバーシリーズと並び、WWEの“4大PPV”のひとつです。
例年1月下旬に開催され、今年2017年は30回目の記念すべき大会となります。そして、例年は1万〜2万人キャパの会場が選ばれるところ、今回は7万人を収容するテキサスのアラモドームでの開催。これはプロレス界最大のイベントであるレッスルマニアに匹敵する規模です。

最大の呼び物になるのが、そのまんま「ロイヤル・ランブル・マッチ」。30人(2011年だけ40人でした)のスーパースターが参加する一種のバトルロイヤルなのですが、ちょっとしたアレンジで、単なるバトルロイヤルとは一線を画しているのです。

ご存知の方も多いでしょうが、バトルロイヤルはプロレスの試合形式のひとつです。自分以外は全員が敵で、最後に勝ち残ったレスラーが優勝者となる形式です。
アメリカでのバトルロイヤルは、通常“オーバー・ザ・トップロープ・ルール”が適用され、トップロープ越しに場外に落ちて、床に足がついたら負けになります。うっかり落ちても負けは負けです。
これにより、格上のレスラーが勝つとは限らない展開が可能になり、最後まで展開が読めない試合形式になるのです。

これに加え、ロイヤルランブルでは“時間差入場”という工夫がされています。これが最大の特徴となっています。最初は2人のレスラーで試合が開始され、以後、2分間隔で1人ずつ入場して試合に加わっていくのです。

▼WWEによるロイヤルランブル2017の予告編

「時間差で入場する」たったこれだけの工夫で、多くの盛り上がりが演出できるんです。
たとえば……

次に誰が出てくるかというワクワク感を演出

出場者は、試合開始まで全員は発表されません。また、原則として入場順も非公開です。会場のスクリーンには次のレスラーが出てくるまでのタイマーが表示されますので、会場はカウントダウンの大合唱となり、テーマ曲がかかった時にはドカーンと盛り上がるわけです。

サプライズ登場の舞台に

長期欠場していたレスラーの復帰や、新しいレスラーの初登場などの舞台として使われることが多く、これまた爆発的に盛り上がります。
2010年には、負傷欠場していたエッジが終盤で突然復帰した挙げ句、優勝をかっさらい、爆発的な盛り上がりでした。
昨年2016年には、つい21日前に新日本プロレスの東京ドーム大会に出ていたAJスタイルズが登場、ファンを驚かせています。

試合がダレない

ロイヤルランブルは、2分おきに30人が登場するわけなので、試合時間は確実に1時間を超えます。入場が28回で、それだけで56分ですからね。
それだけの長丁場を、同じメンバーでダレずに試合をするには、それはそれは高いスキルが必要になります。
しかし、2分ずつ時間差入場すれば、2分に1回は必ず見せ場が作れますので、レスラーのスキルに頼らなくでも、長尺の試合が成立するわけです。

参戦する人の幅が広げられる

前項のように出番が短時間で済むので、プロレスラーでなくても参加できる余地があります。
過去には、フットボーラーやバスケットボール選手が参戦したこともありますし、引退した元レスラーや、女子プロレスラーも出てきました。
当然そういう人は、体力的・技術的に普通のプロレスの試合をすることができません。しかし、ちょっと出て行ってすぐに落とされてしまう分には、何とかなるわけです。
そうしたアトラクションも可能な試合形式なのです。

 

さて、そんなロイヤルランブル、かつてはWWE王座が賭けられたりしてたのですが、ここしばらくは優勝者に与えられる権利は統一されています。
すなわち、春の大祭典レッスルマニアのメインイベントの出る権利です。ロイヤルランブルの優勝者は、無条件にレッスルマニアの最後の試合に出ることができるのです。
ほとんどの場合、レッスルマニアのメインイベントは最高峰王座のタイトルマッチですから、WWE世界王座あるいはWWEユニバーサル王座に挑戦することになります。
プロレス業界最大のイベントで、主人公のひとりになる者が、ここで決まるんですよ、これが!

ロイヤルランブルは1月30日(現地時間29日)です。下の動画をご覧いただくとわかるように、初めての人が何となく見ても、メチャクチャ楽しめるのがロイヤルランブルです。
日本でも、WWEネットワークでご覧になれます。初月無料ですので、ご興味のある方はぜひお仲間に(勝手ステマ。お金はもらってません。何ならください)。

▼ロイヤルランブル転落シーン100連続

2017/01/09 06:22 | 全般, 見方 | No Comments
2016/11/30

日本のプロレス団体は、ほとんどが自前でレスラーを育てます。
実績あるアスリートを入れる場合もありますが、基本的には体力テストをパスした素人を、団体が育てて一人前にするのが一般的です。
新卒の学生を採用して、研修やOJTで一人前に育てる日本企業と同じですね。
プロレス団体の場合は、素質ある若者をスカウトして育てる、相撲部屋のあり方を継承しているわけですが、日本企業も職人の徒弟制度や商店の丁稚のやり方を引き継いでいるのかもしれませんね。

一方アメリカでは、学校で専門教育を受けて、そのスキルを背景に企業に就職すると言われています。いや、ホントはよく知りませんけど。
そういう社会だからか、アメリカのプロレス団体のほとんどは、レスラーを育成しません
1950年代あたりまでは、学校や町のレスリングジムで技術を身につけた人が、それ以降は主に引退したプロレスラーが経営するレスリングスクールでプロレスを教わった人がプロレスラーになっていました。
前座で経験を積むのはOJTみたいなものですが、「仕事に就く前に基礎は学んでくる」というのが基本的なスタンスです。

このコラムで毎度取り上げているWWEも、原則としてプロレスラーとしてのスキルを持った者が上がるリングです。
スクール上がり以外にも、他団体で名を上げたレスラーを好条件で引き抜いて、完成品のレスラーによるショーを構成しています。
ショー全体の構成が重要なので、第1試合にデビューしたての無名の若手が試合をすることはなく、最初の試合からメインイベントまで、プロによる完成したショーを目指すのです。
第1試合に世界王座戦が行われることさえ珍しくありません。

しかし、WWEが少し変わっているのは、地方の小さな団体と提携して、「ディペロップメント団体」と位置づけ、スカウトした素人の若者を預けて実践させ、育ったところでWWEのリングに上げるシステムを採用していたところです。
今のベテラン勢の多くは、そうして育成されたレスラー達です。
1980年代半ばからWWEは全米に進出し、各地の弱小団体を次々と解散に追い込んでいましたので、将来の引き抜き元を自ら潰していたわけですよね。
もしそのまま全米を制覇してしまうと、新しいレスラーの供給ルートがなくなってしまいます。
ディペロップメント団体は、そうならないための制度だったのでしょう。

時代は下り、WWEはガッツリ提携していたディペロップメント団体「FCW(フロリダ・チャンピオンシップ・レスリング)」を2012年から完全に自社に組み込み、nextを意味する「NXT」という社内の事業部門としました。

そして、フロリダ州オーランドに自社のトレーニング施設「WWEパフォーマンス・センター」を設立、自社による選手の育成に着手したのです。

パフォーマンスセンターは、世界最高峰のプロレスラー養成施設です。
ありとあらゆるトレーニング器具が完備され、コーチの指導の下に実に豊富なトレーニングができるようになっています。
練習用リングは何と7つ。柔らかいスポンジのマットを詰めた、空中技の練習専用のリングもあります。
しゃべくりの練習ができるブースも複数あり、しゃべる姿を録画してその場で確認できるようになっています。登場でインパクトを与える訓練のため、小型のステージとエントランスまで備えられているのです。

WWE Performance Center

▲WWEパフォーマンスセンター。ローリング・ストーンズを見に行った時、見に行きました!

このパフォーマンスセンターで、他ジャンルの経験を持つアスリートや体力テストをクリアした若者が、元プロレスラーのトレーナー達によって訓練されるのです。
「プロレスのリングで求められるスキル」を徹底的に叩き込まれ、リングに上がるに足るレベルに達したと判断されると、まずはNXTでデビューとなります。
言わば、NXTはWWEの二軍という位置付けです。

サラッと「二軍」と書きましたが、このNXT、いわゆる二軍の域をいささか逸脱しています。

NXTは、基本的にWWEと提携するフルセイル大学のホールでショーが行われ、番組を収録してWWEネットワークのウィークリー番組として放送される形でスタート。今でも基本的なフォーマットは同じです。
しかし、番組の人気が上がってくると、フルセイル大学から飛び出して全米をサーキットするようになり、万単位の観客を集めるペイ・パー・ビューの大会を何度も開くようになっていきました。
そして、米国内にとどまらず、海外にまで遠征するようになり、2016年12月3日には、ついに大阪で来日公演が実現します。

結果的に、WWEが小規模な団体をもう1つ作ったも同然。そうなると、純粋に将来のスターを育成するためだけでなく、団体としての集客力が問われてくるわけです。
やがて、他団体のトップスターを引き抜き、NXTのスターとするのが常態化してきます。

そのスカウト網は世界中に拡がり、当然、日本にもその手は伸びてきます。
プロレスリング・ノアKENTAが、何とハルク・ホーガンがWWE代理人として契約、ヒデオ・イタミとしてデビューしたのを皮切りに、日本人レスラーが特別待遇で招かれます。

フリーの女子プロレスラー華名がASUKA(notシャブ)としてデビュー、破竹の快進撃でNXT女子王者に上り詰めました。
2016年12月1日現在、未だに負けなしの完全別格扱いです。

そして、新日本プロレス中邑真輔は、本名のままデビュー、前王者フィン・ベイラーを破って王座挑戦権を獲得、初挑戦でサモア・ジョーを倒してNXT王座を奪取しました。
デビューからわずか4カ月半での快挙です。
残念ながら11月19日にサモア・ジョーに奪回されましたが、12月上旬の日本→オセアニアのツアーで再度取り戻す予定だとか何とかいうもあります。
いや、だったら12月3日の大阪しかないでしょ!

さて、NXTが特殊な「二軍」というのには、もう1つの理由があります。

それは、「多くの場合、NXT王者が一軍(RAW、SMACK DOWN)に上がると、いきなりトップスター扱い」ということです。
野球なんかだと、よほどの才能がないと、二軍上がりは一軍の下っ端からスタートですよね? が、NXTの場合、スタートからトップなのです。

それは、歴代の王者の現在を見ると、明らかです。

  • 初代 セス・ロリンズ
    レッスルマニアでWWE世界ヘビー級王座奪取。押しも押されもせぬトップスターの1人に。
  • 第2代 ビッグ・E・ラングストン
    一時期NXTとWWE本隊を兼務。NXTではベビーフェイス(善玉)、WWEではヒール(悪役)というユニークな地位にいた。「ビッグE」に改名後、現在ではタッグ王者New Dayのリーダーとしてトークの才能が開花、大人気スターに。
  • 第3代 ボー・ダラス
    “うざい自己啓発系ヒール”としてトップグループに食い込むかに見えたが、イマイチ伸びず。現在では下位グループに。
  • 第4代 エイドリアン・ネヴィル
    日本では「PAC」の名前でジュニアヘビー級の頂点に君臨。IWGPジュニアヘビー級王座にも就く。「ネヴィル」と改名してWWEデビュー後、トップスター中のトップスター、ジョン・シナと互角の勝負をするも、怪我をして以来、中堅どころに落ち着いてしまったか。
    ※「IWGPジュニアヘビー級王座に就いたことはない」というご指摘をいただきました。申し訳ありません。謹んで訂正いたします。
  • 第5代 サミ・ゼイン
    かつては「エル・ジェネリコ」の名前で来日の経験もある、独立系団体のスター。ジョン・シナとの好勝負を演じるも負傷、王座を狙う第2グループあたりで活躍中。
  • 第6代 ケビン・オーエンズ
    WWEデビュー戦でジョン・シナを破るという異例の大抜擢を受け、その後も常にトップグループで活躍、12月1日現在はRAWのトップを意味するWWEユニバーサル王者を保持している。
  • 第7代 フィン・ベイラー
    日本では「プリンス・デヴィット」として、ネヴィルとのライバル関係で人気を博す。IWGPジュニアヘビー級王座も保持していた。
    日本公演でオーエンズを破ってNXT王座を奪取するという異例(PPVやテレビ放送のない興行での王座移動は異例)の王座獲得を果たす。
    WWE一軍デビューからわずか2戦目でセス・ロリンズを撃破してWWEユニバーサル王者になるという破格の扱いを受けるものの、その一戦で肩を負傷して王座を返上、現在欠場中。

以下は現在もNXTに所属しています。

  • 第8代 サモア・ジョー
  • 第9代 中邑真輔
  • 第10代 サモア・ジョー

これで明らかなように、NXT王者経験者は、かなりの確率ですぐに一軍のトップグループに入っています。
我らが中邑真輔は、ベイラーを倒して挑戦権を得ただけでなく、ハウスショー(テレビ放送のない興行)ではオーエンズにも勝っています。
ということは、WWEでの設定上、中邑は「初代と第2代のユニバーサル王者より強い」ということなのです。
であれば、一軍入りしたら、中邑はいきなりトップグループで始まる可能性が高いのです!

※念のためですが、「中邑真輔」ですからね。中村俊輔じゃありませんよ。
ちなみにGoogleで検索すると、「shinsuke nakamura」の方が、「shunsuke nakamura」よりも桁違いに検索結果が多いです。
世界(というかアメリカか)では、中邑真輔の方が上なんです!

「いきなりトップ」なのは、女子も同じです。
現在のRAWおよびSmackdownの女子王者、シャーロットとベッキー・リンチは、2人ともNXTから昇格してすぐにトップグループに入り、語り継がれるような名勝負を何度も繰り返し、頂点を極めたのです。
ということは!現王者ASUKAが昇格したら、いきなりトップグループ間違いありません!

このように、NXTのトップどころは、ほぼそのまま1年後のWWEのトップグループなのです。
単なる二軍ではない、ということはおわかりいただけると思います。

そんなNXT、ついに日本初上陸を果たします。
12月3日、大阪のエディオンアリーナ。私も東京から見に行きます。
まだいい席がちょっと余ってるようなので、ちょろっと買って、見てみませんか?

君たち、エディオンアリーナでボクと握手!

2016/11/30 10:41 | 全般, 見方 | No Comments
2016/09/19
1980年代の半ば、現在オッサンの私にも、大学生だった時代がありました。
ご多分に漏れずアルバイトなんかもしていたのですが、その中で最も強く記憶しているのが、“リング屋”さんでした。
そう、プロレスのリングの運搬と組み立て、撤収を請け負う仕事です。
今はなき「UWF」という団体、それも「第1次」の方で、何度か手伝わせていただきました。
新日本プロレスとUWFのリング屋を請け負っていた某社の社長の息子が、たまたま大学の同級生だった関係で、声がかかったのです。
リング屋アルバイトを通じて見聞した話だけで何本か書けるのですが、今回はリングの構造について、書きたいと思います。知らないですよね、リングの構造?
フッフッフ、私は知ってます! 何せ荷下しから撤収までの各工程をすべて、少なくとも一度はやりましたからね。
なお、あくまで私が知っているのは「新日本プロレスとUWF」のリングだけです。他団体のリングについては、知ってる範囲で注記します。

リングのつくりかた

リング設営は、まず四隅の鉄柱を置くところから始まります。
この鉄柱、クッソ重いのですが、1人で担がされます。
最近、インディ団体のリング設営の写真を見て、若手レスラーが2人がかりで担いでるのを見たのですが、嘆かわしいことです。レスラーのくせに何と軟弱な……1人で担げよ!
床を傷つけたり全体がずれたりするのを防ぐため、頑丈なゴムのシートを敷き、その上に置かれることになります。
01_steel_post
次に、各辺の真ん中に1つずつと、全体のど真ん中に1つ、マットまでの高さの支柱を計5本立て、それぞれの間を鉄骨で繋ぎます。全体としては田の字型になりますね。
ちなみに全日本プロレスでは、鉄骨ではなく木材を使っているそうです。
柱どうしはケーブルでしっかり固定されます。
02_flames
続いて、厚くて固いを、骨組みの上に並べて敷き詰めます。
03_bourds
この上からマットを敷くのですが、まずは厚いゴム(恐らく鉄柱の下に敷いたのと同じ材質)を敷きます。
04_rubber
その上から2センチ厚くらいのフェルトを敷き詰めます。
何と、マットはこれだけ。敷きながら、「こんなもんで衝撃を吸収できんのかよ?」と思ってました。
推定ですが、投げ技でレスラーがマットに叩きつけられた時の「バン!」という音は、演出的にけっこう重要ですから、分厚いマットで音が消えてしまわないようにしたのではないかと思います。
なお、全日本は板の上に普通の体操で使うマットを敷いていました。まあ、ないよりはいいのでしょう。
05_felt
マット類を弛みなく敷き詰めたら、キャンバスのシートを掛け、下図のようにロープで鉄骨に固定していきます。
シワがよってしまうと、足を取られて負傷する可能性がありますから、この作業はとても重要。
手の空いている者が全員で、1つずつキツく締めていくため、けっこうな時間がかかるのです。
下図の要領で、鉄骨に溶接されたフックにロープで締めていきます。
06_cambus
ロープを3Dで再現するのはめんどうくさいので、省略。
07_cambus
お次はロープです。
ロープといっても、ワイヤーにゴムを被せたものです。WWEでは、ワイヤーは絶対に使わず、繊維のロープだけを使うそうです。
全体が輪のようにつながっているため、1人1本ずつ、肩にかけて運搬するのですが、何せワイヤーですから、とにかく重い!
バイト翌日は肩に食い込んだロープの形にアザになるほどです。
金具で鉄柱にロープを固定して、申し訳程度のカバーを付けます。
なお、ロープがピーンと張るように金具を締めるのは、試合直前。それまでは、やや緩い状態にしておきます。
4つのコーナーにコーナーポストをくくりつけます。
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最後に、エプロンに垂れ幕を掛け、その裏に備品(階段、ビニールテープで補強したビール瓶に水を入れたのをまとめたバケツなど)をしまい、完成です!
ちなみにビール瓶の水を使っているところを見たことがありません。
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この後は売店の設営です。
シリーズ共通パンフに対戦カードのスタンプを押したり、グッズや釣り銭箱を並べたり。
開場後は売店の売り子仕事がありますが、設営が終わったらしばし休憩。
仕出しの弁当を食べて、後は選手が会場入りするまでは自由時間なのです。
本当はいけないらしいのですが、目の前にモノホンのリングがあるのに、大人しくしているわけがありません!
もちろん、プロレスごっこon the本物のリングとなるわけですよ。
さて、それでは、本物のリングに上がったことがないとわからない、プロレスのリングの秘密をお話ししましょう!

 ロープは痛い

プロレスをあまりご存知ない方でも、レスラーがロープに走って、反動で戻る動きには覚えがあると思います。
あれ、プロレスラーは顔色ひとつ変えずにやってますが、ロープに当たるとメッチャ痛いです。
うっかり強めに当たりに行ったら、その場でうずくまりました。
鍛えてるとはいえ、プロレスラーだって本当は痛いはずです。我慢してるんですよ、あれはきっと。

トップロープから見下ろしたリング

リングに上がったら、やはりトップロープに上ってみたくなるのは人情というものです。当然ながら私も上りました。
あのー、スキーなんかで、下から見ると大した斜面に見えなくても、いざ上がって滑ろうとすると、すんごく急な斜面に見えたりすることがありますよね? 大げさでなく、垂直に近いような錯覚をする場合さえあります。
類似の現象は、トップロープの上でも起きました。
もんのすごく高い所に立ってるような印象を受け、リング全体が節分の豆まきの枡くらいに見えるのです。
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誇張抜きで、こんな感じに見えます。
トップロープで立ち上がると、目の高さはマットから3mくらいの高さになりますから、確かに結構な高さではあるのですが、想定を大きく超える恐怖感がありました。
上った時は華麗にダイブしようと思っていましたが、そのままスゴスゴとコーナーから下りましたとさ。

カウントはつらいよ

プロレスごっこのレフェリー役をさせられた時、当然フォールの際にはマットを叩いてカウントするわけですが、あれがね、大変なんですよ。
軽く叩いてると、ゴッツイ先輩たちから「音がちっちぇえ! ちゃんと叩け!」と怒られたので、大きい音がするように叩くと……
叩くと……
痛え! 痛えよ!
薄いとはいえマットがあるので、叩く音は弱まります。その上で、大会場の後ろの席でも聞こえるような音量でマットを叩くのは、なかなかハードルが高いアクションです。
リング屋さんは肉体的にハードなアルバイトなので、バイト翌日は身体のあちこちが痛みました。
全身の筋肉痛、鉄柱やロープが食い込んだ肩のアザ……
確実に言えるのは、レフェリー役による右手の痛みは、全体の2割は占めていました。
あのジョー樋口さんの右手は、厚みが左手の倍近くあり、箸も使えないほどだったと聞いたことがありますが、実感をもって理解できます。

レスラーだけを最低限保護する仕組み

さて、そんな痛みの根源のようなリングではありますが、杉下右京ばりに細かいところが気になる私は、それでも「ダメージを軽減する仕組み」を発見しました。
これは、新日本プロレスと同じリングを使っている場合の話で、他の団体についてはわかりません。
四隅にある鉄柱には、骨組みになる鉄骨をはめるための枠が一体化しています。
ここのところですね。
11_spring
アップにすると、細かい部分の粗が見えますね。実際の鉄柱とちょっと形状が違うのですが、めんどうなのでこのままで。
実は、この中にスプリングがあるのです。
ただし、バネ鋼の直径が5mm以上ありそうな、ものゴッツイやつです。
試しに鉄骨をはめて上から押してみたんですが、ピクリとも動きませんでした。体感で1mm押し込めなかったと思います。
つまり、マット全体が一体化した状態で、鉄柱のバネが衝撃を吸収するようになっているのです。
実際問題、あんな固いバネで、どのくらいの効果があるのかはわかりませんけどね。
なお、こうした整ったリングは日本とアメリカくらいで、ヨーロッパやメキシコなどでは、カチカチだったり、逆にフカフカでジャンプしづらかったり、マットが平らでなかったりと、レスラーがその力を存分に発揮できない場合もあるようです。
プロレスをご覧になるとき、“リングそのもの”に着目してみるのも、また一興です。
今度見るとき、よーく見てみてください。
2016/09/19 04:32 | 全般, 見方 | No Comments
2016/09/04
えー、少し間が空いてしまいました。お待たせしてしまった皆様、たいへん申し訳ありません。あ、待ってない?
ちょっといろいろありまして(悪いことではありませんが、いいことでもありません)、しばらく書くことができませんでした。
その間も、ただ漫然と休んでいたのではありません! プロレスは3回ばかり生観戦に行きましたし、WWEの番組は毎週5時間欠かさず見て、PPVもすべて見ておりました。
観戦して思ったこと考えたことを全部書いていたらきりがありませんので、今回は「プロレス技の謎」について考察してみようかなと、思ったりなんかしました。
念のために書いておきますが、謎は完全には解けておりません。そんなに底の浅いものではありませんでしたよ、案の定。

かけた方が痛い技

RKOというプロレス技があります。
ランディ・オートンという、祖父の代からプロレスラーという家系のレスラーの技です。
「相手に背を向けつつ首を抱え、ジャンプして……」とか書いてもわからないでしょうから、動画をご覧ください。

本名のランダル・キース・オートンのイニシャルと“KO”をかけたネーミングが秀逸なこの技、どこが素晴らしいかを言い出したらキリがないくらい素晴らしい技です。
無理矢理まとめると、オートンのセンスの良さで、思いもよらないタイミングで突然繰り出して観客を驚かせ、試合を一気に終わらせる、当代でも出色のフィニッシャー(決め技)と言えるでしょう。
さて、この技を初めてご覧になった方、そこはかとない違和感を感じませんか?
大学生の頃までプロレスごっこをやめられなかった私のような人間にとって、プロレス技を見ると、つい“自分でかける場合”“かけられる場合”を脳内でシミュレーションするのは、「布団に入ったら寝る」「とりあえずビール」と同レベルのルーティンなのですが、この技を脳内シミュレーションしてみると……
「RKOの実際のダメージは、やられる方よりも、技をかける方が大きいのではないか」
としか思えないのです。
もちろん、プロレスラーの受け身の技術は非常に高度ですので、背中からマットに落ちるダメージは、見た目ほどではないでしょう。リングも多少は衝撃を吸収する(※)ようにはなっています。
※学生時代、リング屋さんのアルバイトを経験したので、リングの構造はよ〜く知ってます。あれはレスラーにしか機能しません。素人の場合、あんなの板の間同然です。
それでも、相手の胸の高さくらいまでジャンプして、背中から落ちるわけですよ。痛いでしょ、普通。
一方、相手はぶっちゃけ手をマットにつけるし、顔はオートンの肩の上です。余程のことがなければ、ちょっとすっ転んだくらいのダメージのはずです。実際には。
しかしそれでも、RKOはプロレス技としてとてつもなく素晴らしいのです。無理矢理こじつけたわけではなく、実際の観客がドッカンドッカン湧くのを見れば明白です。
さて、なぜそういうことが起きるのか。
段階を踏んで考察したりなんかしようと思います。

ダメージと説得力の関係

 かつてプロレス技に求められたのは、“本当にかかった時のダメージ”だったのではないか思われます。
プロレス技の多くは、かける方とかけられる方の呼吸が合うことで成立しますが、もしも本当にかかった場合や受身をちゃんと取れなかった場合、物凄いダメージになるものでした。
プロレスごっこ経験者ならおわかりのように、ヘッドロックでさえ本当に締めると頭が割れそうに痛みます。
ブレーンバスターを食らうと何秒か呼吸できませんし、4の字固めは脚が折れるんじゃないかと思います。
バックドロップなんか食らった日には、生命の危険さえあります。
痛くなさそうなコブラツイストでさえ、ちゃんとかけるとメッチャ痛いんです。元祖ディック・ハットンやダニー・ホッジの写真を見ながら研究しました。
少なくとも、エンターテインメント宣言する前のプロレス技は、基本的に「かかった時のダメージは大きいもの」だったのです。
アメリカでも、“決まればダメージがでかい”という基本線は同じでした。
ハルク・ホーガンのレッグドロップ(日本で言うギロチンドロップ。アックス・ボンバーは日本向けの技です)、リック・フレアーの4の字固め、ランディ・サベージのエルボー・ドロップ……みんな、ガッツリ決まれば死ぬほど痛いです。
そして、決め技ではない技に比べると、とても効きそうに見える技が決め技となっていました。

プロレスの決め技の本質をさらけ出す、革命的な技

 ところが、ある技が、状況を一変させたのです。
いや、正確にはわからないし、何の検証もしていませんが、私の中ではそうなんです。
この技は、ダメージ追求から呆気なく離れたばかりか、それによってプロレスの決め技の本質をむき出しにしたと考えています。
その技とは、ピープルズ・エルボー、という技です。
ザ・ロック、今やハリウッドのトップ俳優の一人、ドゥエイン・ジョンソンの技でした。
まあ、こちらをご覧ください。

 とても装飾されたエルボー・ドロップです。
で、この技は、あらゆる説明を拒否する、ひたすらかっこよさだけを追求した技なのですよ、これが。
名前も、ピープルズ・チャンピオンの技だからピープルズ・エルボー!
※悪役転向して会社側の手先になった時は“コーポレイト・エルボー”に名称変更!
エルボー・ドロップは、ダウンした相手にジャンプして肘を落とす技です。
ということは、重さとスピードで、威力は決まってしまいます。強いて言えば、肘の骨の硬さとか、当たるところの面積とかもあるでしょうが、基本はでかい人がやった方が効くんです。
でかい人でなくても、スピードがあれば威力は増します。
そのくらいのことは、物理の成績が極悪だった私でもわかるんですよ。
でもこの技は、ロープに走って勢いをつけてはいますが、当てる時に止まっちゃうわけですから、率直に言って走ることに何の意味もありません。
サポーターを外して客席に投げ入れる、相手の両腕を蹴る、ポーズを取る、ロープに走る、止まる、肘を落とす。この一連の流れこそがピープルズ・エルボーという技であり、単なるエルボー・ドロップとは異なる点なのです。
恐らく、これを見て「凄い威力だ!」と思う人は、子供も含めて1人もいないと思います。
が、見ていて楽しいではありませんか。
ロック様はカッコイイではありませんか。
何となく真似をしたくなるではありませんか。
むやみに盛り上がるし、カウント3つ入った時にカタルシスがあるではありませんか。
であれば、これぞプロレス技!なのです。
ピープルズ・エルボーという技が認知された時期は、公式にWWEがプロレスがエンターテインメントであると表明した時期に(おおむね)一致します。
その後から、決め技は必ずしもダメージを追求しなくなっていったと記憶しています。私の中では。
恐らくどんなにガッツリ決めても(レスラーには)効かない技、得意技の中では比較的ダメージが少ないけどカッコイイ技、そして、冒頭のRKOのように、かける方が痛い技。
こういう技が増えてきます。
でも、何の問題もないですし、むしろそれこそが、プロレスというものの特異性を引き立たせるのです。

プロレスの決め技には何が必要なのか?

プロレスの決め技に必要なものとは、いったい何なのか?
威力でもない。いかにも痛そうな説得力でもない。
カッコイイ技ならたくさんありますし、決まった時の綺麗さなんて、決め技以外でもあるものはあります。決め技よりもカッコイイつなぎ技なんてのも、珍しくありません。
では、何なのか?
それは、“これが出たら試合が終わり”という雰囲気があるかどうか、ではないかと思うのです。
雑駁な言い方ですが、記号としての機能の強さというか。
この技が決まったら、普通なら試合は終わる、ということが観客に伝わるかどうか。これこそが、プロレスの決め技に必要なことなのだと思います。
見得の切り方や出す時の表情なのか。いや、何の前触れもなく、突然出る技もあります。
受けた相手の反応なのか。いや、つなぎ技でも、ものすごいダメージを演じるレスラーも多いです。
様々な理由はあると思いますが、すぐれた決め技は、出ると「これで決まった!」ということが、見ていてわかるのです。
結局、ここで考察はおしまい。というのは、なぜ「決まった!」とわかるのかが、説明できないんですよ。何らかの“特別感”があるということくらいしか。
そして、それを伝えられるのは、やはり上手いレスラーであり、すぐれた決め技なのです。
プロレスの技というのは、しみじみ考えると非常に面白いものです。
人間が、あんな形でぶつかりあうという場面自体、プロレス以外では見ることができません。
技をかける方とかけられる方の呼吸がピッタリ合った時の、えも言われぬ様式美というのは、ガチンコの競技では滅多に見られないものです。
フィニッシュ・ホールド(現代アメリカ式の言い方だとフィニッシャー)がバッチリ決まり、1、2、3とカウントが入った瞬間のカタルシスも、他では味わえない気持ちの良さがあります。
 あなたもぜひ、機会があったら“決め技”に注目してみてください。
むずかしく考える必要はありません。見てればわかります。
すぐれたレスラーは、ここで試合が終わるぞ、と伝えることができるのです。
そして、その裏をかいて試合が続いたりすると、これまたものすごい盛り上がりにつながるんですが、それはまた次の機会に!
2016/09/04 05:44 | 見方 | No Comments
2016/06/22

プロレスラーの仕事は“闘うこと”ではなく、“闘いを見せること”であるのは、本コラムで再三強調してきたことではあります。

しかし、時にはプロレスラーは“闘うこと”になる場合もあるのです。
伝統的には、この回で書いたように、プロレスの試合の中で身を守るために闘う技術が必要でしたし、実際に身につけたレスラーもいます。
そして、レスリングや柔道を経験しているレスラーも数多くいるのが現実です。
普段は闘ってはいなくても、いざとなったら闘うことができる、と。
そんな背景もあり、今でもプロレスラーが闘う機会はなくなっていないのです。

個人的には、プロレスラーの“本当の強さ”は、あまり重要とは思っていません。
今もWWEのトップクラスで活躍するあるレスラーが、日本人レスラーと揉めてボコボコにされたなんて話を知っても、日本のレスラーはガチンコの練習してるしなあ、程度の感想しかありません。
プロレスのリングでの価値は、残念ながら、やられた方のレスラーの方が上なのです。
彼は今でもトップスターの1人であり、やった方の日本人レスラーは、この事件とは関係なく解雇されています。

しかし、因果なものだと思うのですが、プロレスラーが他の競技の選手と闘うとなると、プロレスラーを応援せずにいられないのですよ、心から!
来たる7/10、WWEのブロック・レスナーが、UFC200に出場して、マーク・ハントと闘います。
もうね、当然レスナー応援ですよ!

ハッキリ言って、私はレスナーはプロレスラーとしては大根役者だと思ってます。ストーリーでお膳立てされた“無敵キャラ”しかできないし。

一方、UFCでハントが出るときは、だいたいハントを応援しています。
実際、キックしかできなかったハントが、K-1を離れて総合格闘技に挑戦して、歳も若くないのに、剛腕を武器に生き残ってるのは、尊敬に値すると思っています。

……でもね、そんなことは関係ないんだよ!
俺はプロレスが好きなんだよ!
プロレスも総合格闘技も好きだけど、図にするとこんな位置関係なわけですよ、俺の中では!

プロレスと格闘技の個人的序列

そんな俺にとって、ハントがこんなことほざいてるのを読むとね、応援する気には到底なれないんですよ!
真剣勝負じゃないからって無条件に下に見ている、この田舎のヤンキーみたいな感性が許せない!
じゃあてめえ、プロレスやってみろ。絶対できねえから。

レスナーには、キッチリ勝って「プロレスもできるし、MMAでも力を発揮できた。じゃあ俺はWWEに戻るよ。じゃあな」とか、試合後に堂々と語ってもらいたい!

そして、颯爽とサマースラムに現れて、マネジャー役のポール・ヘイマンには、こう言ってほしい!
Ladies and gentlemen, my name is Paul Hayman. I feel so honor to introduce you my client. He beat Mark Hunt comletely in very first round and proved he is one of the best MMA fighter in the world. He is the beast! conqueror of UFC! Brrrroooock Lesnar!!!!!

2016/06/22 06:36 | 見方 | No Comments
2016/04/20

前々回、WWE殿堂に「レガシー部門」が設けられた意味について、「感慨深い」と書きました。
プロレスの成り立ちと、WWEのこれまでを考えると、非常に感慨深いのですよ。
今回は、その辺について掘り下げてみようと思います。

Money In The Bank 2015

再三書いているように、プロレスの試合の目的は、対戦相手に勝つことではありません。その試合を通じて、観客を楽しませることです。

するとここに、いささか疑問が生じます。
だとしたら、演劇でもいいではありませんか。肉体的なパフォーマンスなら、シルク・ドゥ・ソレイユみたいなのでも十分に楽しいものです。
アクション映画だって、ストーリーも闘いも見ることができます。

“最初から”そういうものであったとしたら、何も表現としてのハードルが高いプロレスリングである必要はなかったはずです。

プロレスラーに要求されるスキルはたいへんなものです。
頑強な肉体、受け身の技術、レスリング・ムーブ、運動能力、カンペなしで15分以上しゃべれるトーク力、アドリブ能力……これらをすべて身につけて、初めて一流になれるのがプロレスラーです。
アスリート、俳優、司会者などに必要なスキルを、一通り持っていないといけないのです。

もうおわかりでしょうが、プロレスは最初から現在のようなエンターテインメントだったわけではありません。
競技から出発して、非常に特異な進化を遂げてきたため、今のユニークなエンターテインメントの形を作ることができたのではないかと思われます。

※以下、すっげえ大雑把にプロレスの成り立ちを語ります。マニアックな視点からは物足りない部分もありますが、本コラムの目的は歴史検証ではありませんので、ご了承ください。もっとマニアックに知りたい方には、もっと適したサイトや文献を末尾でご紹介いたします。

プロレスの起源については、ネット上では概ね2つの説を巡って論争があります。まあ、論争っつっても、ネットでよくある単なる主張のぶつけ合いですが。

ひとつは、アメリカやヨーロッパの各地で行われていたレスリングがプロ化したものという説。つまり、元々は競技だったものがエンターテインメント化していったという説です。

もうひとつは、“ATショー”と言われる、動物なしのサーカスみたいな旅芸人一座の出し物のひとつであるレスリングショーが進化したものという説です。レスリングのできる旅芸人が、楽しめる試合を見せるショーです。

昔は基本的に前者(競技派)のみが語られており、後者(ATショー派)は比較的近年に言われるようになった印象です。
恐らく、大仁田厚が「プロレスの起源はレスリングじゃなくてサーカスの芸人なんじゃあああ!」的な発言をしたことが、後者の意見が出るきっかけになったように思います。根拠は私の印象です。

ところで、この度レガシー部門受賞者の1人である“鉄人”ルー・テーズは、自伝「Hooker」で、あっけなく両方に起源があるような書き方をしています。

※日本でも「鉄人ルー・テーズ自伝」として流智美氏の訳による本が出ていますが、原著「Hooker」にふんだんに織り込まれた“本当のプロレス”に関する記述が丁寧に除去された、「プロのレスラーとして闘い続けた男の物語」になっており、あまりお勧めできません。テーズ本人の記述に触れたい方は、原著をお勧めします。

テーズの自伝には、プロレスの始まりは概ね「ヨーロッパからの移民を中心に、アメリカ中西部を中心に行われていたレスリング興行が、ATショーと合流したもの」というような感じで書かれています。

※ただし、テーズ自身は「ATショー」という言葉を使っていません。また、キッチリと定義をすると言うより、「こんな感じだったんだよ」と淡々と綴っています。

実際、これがほぼ正解なのではないかと思います。
後述しますが、客前でレスリングショーをやるわけですから、ATショーはレスリング技術の裏付けなしにできるはずがありません。
実際、プロ競技としてレスリングをやっていたレスラーが食うためにATショーの巡業に入ることもあれば、ATショーから競技レスリングに入っていった人もいます。
つまり、両者のプレイヤーは同じだったわけです。

もちろん、レスリング興行の方は、当初は競技として行われていました。
あまり知られていませんが、20世紀の初期までのアメリカでは、レスリングとボクシングは密接な関係にありました。両方を手がけるプロモーターも多く、公的な組織も元々同じ組織だったのです。

※日本でも知られているNWA(National Wrestling Alliance)の前に、もっと公的な別のNWA(National Wrestling Association)があったのですが、それはNBA(National Boxing Association。後のWBA)の一部門だったのです。

そして、両者とも八百長が横行し、マフィアが幅を利かせる世界でした。
ボクシングは安全対策やルールの整備によってスポーツへと向かい、レスリングは真逆に見せる要素を高度化してエンターテインメントに向かったのです。

競技の性質上しかたないことですが、レスリングはコンスタントにおもしろい試合ができません
今のアマチュアレスリングを見ていても、おもしろい試合なんて滅多にありませんよね? あれでも、試合が膠着しないように、常にルールを改正してるんですが、それでもまあ、あんなもんです。

ましてや、膠着を防ぐルールのなかった時代のレスリングで、実力が近い者どうしの試合は、どうしても動きの少ないものになります。
たとえば、エド・“ストラングラー”・ルイス×ジョー・ステッカー(両者ともレガシー部門で殿堂入りしました)の試合は3回の真剣勝負があったそうですが、何とその3試合の合計は11時間にも及ぶとのことで、しかもその大半は“睨み合い”や“組んでからのチャンス伺い”に費やされたそうです。
最後の試合なんか、5時間もかかった挙げ句、引き分けになっちゃったそうで。いくら何でも、これでおもしろいわけがありません

そこで、だいたいの試合時間と結果をあらかじめ決めて、できるだけおもしろい試合をするようにした、ということなのです。
昔は、非公開で試合をして勝った方が客前でも勝つ、というようなこともあったそうです。競技としての建前がありますから、強い方が勝つ、という原則を保っていたんでしょうね。
テーズはその“工夫”を、野球でフェンスを低くして打者有利にしたり、アメフトで投げやすいボールに改良したりするのと同じで、“スポーツを面白くするための工夫”と考えていました。

その結果、プロレスは大衆の鑑賞にも耐えられるようになり、だんだんと人気を回復していきます。
試合を面白く見せるためのノウハウには、ATショーの貢献が無視できません。
現在のアメリカのプロレス界での隠語(レスラーはboys、試合中の合図がcall、見せ場がspot、負け役をまっとうすることをjob、試合地は大都市も田舎も関係なくtown、本当に攻撃することをshootなど)の多くは、ATショーの隠語から来ています
外部に聞かれたくないことを示す「kayfabe」(ケーフェイ)も同様です。観客を楽しませるノウハウが、ATショーからもたらされたことの証左ですね。

元々エンターテインメントであるATショーですが、レスラーどうしのエキシビジョンもやりつつ、観客から挑戦者を募っていました。
しかも、単に「俺に勝てば賞金やるよ」ではなく、「15分間フォールされなかった奴に賞金を払う」というようなやつです。
ほとんどは素人なので、手もなくひねられておしまいだったのですが、テーズの自伝にもあるように移民を中心にレスリング興行は盛んに行われていましたから、時々腕に覚えのある人も挑戦してきます。

そんな時、プロレスラーが使ったのが“hook”という、関節を極めたり首を締めたりするテクニックでした。hookを駆使して腕自慢を片付け、賞金を払うのを免れていたわけです。
実は、そのhookの技術の源流は、日本の柔術らしいのです。この頃すでに日本から柔道家や力士が腕だめしにアメリカに渡っていましたので、彼らからもたらされた技術なのではないかと言われています。
そして、そのhookの技術が受け継がれていたために、後々の歴史に複雑な陰が落ちるのですが、それはまた別の機会に。

人の交流、技術の交流を経て、レスリング興行とATショーは融合していったと考えられます。

そして完全に今のようなプロレスの形ができあがったのか、というと、コトはそんなに単純ではありません。極端な言い方をすれば、プロレスが完全に“スポーツの呪縛”から逃れたのは、1990年代になってからなのです。日本の場合、未だに逃れ切れていないと考えています。

100年くらい前までは、(言葉は悪いですが)“八百長まじりのレスリング”だったプロレスが、現在のような完成されたユニークなエンターテインメントになるまでには、長い年月がかかったのです。

テーズによれば、史上初の“レスラーではない純粋なパフォーマー”が世界王座に就いたのは、第10代王者ウェイン・マンとのことです。1925年のことでした。
あくまで“世界王座についた”のが初めてということですから、その頃にはすでにレスリングができないパフォーマーがリングに上がるようにはなっていたわけです。
しかし、本当に強い王者であるエド・ルイスが(もちろんわざと)パフォーマーに王座を譲ったのは、重い決断があったはずです。競技としての正統性より、業界が食べていけることの方が優先である、と決断したわけです。
これ以降、世界王座はレスラーとパフォーマーの間を行ったり来たりするようになります。

こうなると、純粋なレスリングには戻ることはありません。
当然、レスラーの主な努力はレスリング技術よりもパフォーマンスに注がれていきます。が、エンターテインメントと決めたなら、全部パフォーマーでいいや、とならなかったのが、プロレスのおもしろいところです。

その背景には、プロモーターどうしの争いがあります。その争いは、もちろんガチ、“shoot”です。人はお金が絡むと争うもんですからね。
スポーツの体裁があり、プロモーターとは別の組織が王者を認定している、という構造の中で、自分の子飼いのレスラーがチャンピオンである、ということは、利益の源泉になるわけです。
そうすると、

  • チャンピオンに子飼いのレスラーをぶつけ、真剣勝負で王座を強奪する
  • 子飼いの無名だけど強いレスラー(隠語でポリスマンと呼ばれています)からの制裁を拝見に言うことを聞かせる
  • ポリスマンを競合にスパイとして送り込み、スパーリングでチャンピオンを負傷させる

なんてことが行われたのです。

前述のエド・ルイスは、ある日の試合で負けることを承知してリングに上がったにも関わらず、リング上で相手を脅し、勝ってしまったことがあります。
それでもスポーツの体裁がある以上、プロモーターも対戦相手も、契約不履行で訴えるわけにもいきません。泣き寝入りするか、対抗手段に出るかしかないわけです。

その後、公的組織のNWA(Associationの方)とは別に、プロモーターの互助会である新NWAが結成され、王座の取扱にルールを決めたり、チャンピオンに保証金を課したりすることで、一応はそうした暗闘は収まりました。
NWAに逆らうと事実上の失業が待っていますので、そりゃ当然です。

しかし、大きな組織になると派閥争いが起きるのは必然ですから、やがて組織は分裂します。独禁法違反やらもあり、NWAの独占は破れ、全米のテリトリーは大きくは3〜5つに分割されました。

すると、トップどころのレスラーの意見は通りやすくなります。「俺、あんな奴に負けるの嫌だ。じゃあ俺、ここ辞めて○○に移籍するわ」と言えるわけですから。
スポーツの体裁が生きているので、勝ち負けの意味合いが今より重かったんですね。

実際の力のあるレスラーだと、承知した振りをしてリングに上がり、勝っちゃってから他団体に逃げるという手も使えます。
だからなのかはわかりませんが、AWAなんかでは、どんなに人気があっても弱いレスラーはチャンピオンにはなれなかったそうです。
その一方で、まだ互助会形式で維持されていたNWAでは、移籍云々の心配が薄いからか、プロモーター5人の多数決で決まっていたとか。リック・フレアーが、自身のDVDの中で「俺が王者になった時の投票は3対2だった」と証言しています。

ロード・ウォリアーズのDVDを見ていて驚いたのですが、アニマルが「ファビュラス・ワンズに負けろと言われたが断った。結論の出ないままリングに上がり、奴らに“負けるつもりはない”と告げた」と語っていたのです。
もし、ここでファビュラス・ワンズが譲らなかったら、公衆の面前でシュート・マッチになっていたかもしれません。

そんなことが80年代になっても起こっていたんです。
ウォリアーズのケースは、試合結果が決まらないまま本番を迎えてしまったので、ダブルクロス(プロレス界では、裏切りを意味する言葉のうち、これを使うのが一般的です)とまでは言えませんが、エド・ルイスのようなやり方でリングに上がってから結果を覆すのは、まま行われていたようです。

1990年代には、WWEとWCWの2大団体時代になったわけですが、その頃にはプロレスがエンターテインメントであることはかなり認知され、試合上でのダブルクロスはあまり意味がなくなっていました。
とはいえ、競合団体はあるわけなので、モントリオール事件のような事件の要因は常にあったのだと思います。

そしてWWEが自らエンターテインメント宣言を行うことで、プロレスの勝敗は“勝ち負け”ではなく“エンディング”であることが明確にされました。
勝ち負けがレスラーの実績に関係ないことが公になれば、1試合1試合の結果にはこだわる必要がありません。
事実の公表を受け、プロレスはついにエンターテインメントとして完成した。私はそう思っています。

一方で、プロレスはその起源の特異さから90年代までエンターテインメントとしての構造の歪みを抱えて来ました。その未完成さ加減も、プロレスの魅力の一部ではありました。
この時書いたように、WWEは「レスリング」「レスラー」という言葉を葬り去ろうとしました
その理由は定かではありませんが、プロレスの特異な歴史から離れ、完全に独自なエンターテインメント産業として歩んで行こうとしていたのではないかと私は思っています。

しかし今回、WWE Hall Of Fame 2016での“レガシー部門”で、多くの“レスラー”たちを称えました。
これは、“レスリングだった時代”を自らの起源として認め、プロレスの奇妙な歴史を受け入れたことだと解釈しています。
長年のファンとしては、これがWWEの長期的な展望にどう影響するか、注視していきたいと思います。


※参考資料
Hooker Lou Thesz, Kit Bauman 著、J Michael Kenyon, Scott Teal 編

リングサイド プロレスから見えるアメリカ文化の真実 スコット・M・ビークマン 著 鳥見真生 訳 早川書房

The Nature Boy Ric Flair The Definitive Collection

Road Warriors The Life and Death of the Most Dominant Tag-Team in Wrestling History

那嵯涼介の“This is Catch-as-Catch-Can

魔術とリアルが交差する「プロレス怪人伝」

2016/04/20 11:10 | 全般, 見方 | No Comments
2016/04/15

第5試合 WWE女子王座(新設)3ウェイ・マッチ

シャーロット(ディーバ王者)×サーシャ・バンクス×ベッキー・リンチ

この3人は本当に凄い。とくにサーシャ。
小柄な体格をものともせず、むしろ小さいから活きるような動きを、本当によく考えてます。そして、実行できる。
努力もムチャクチャしてるでしょうが、生来のセンスがかなりモノを言ってるように思います。
きっと、近いうちに女子王座はサーシャのものになるでしょう。王者サーシャ・バンクス、ニヤニヤするレベルで楽しみです。
ちなみに前述のスヌープ・ドッグはサーシャの従兄弟で、入場時に生でラップを披露してました。

新設女子王座に改めて就いたのは、ディーバ王者シャーロット。親父のリック・フレアーが介入して終わるという微妙な結果でしたが、攻防は3人の良さを遺憾なく見せてくれました。

そう言えばこの3人、いずれもサブミッション(関節技・絞め技)のフィニッシャー(決め技)を持っています。

王者シャーロットは父から受け継いだ4の字固め(フィギュア4)にブリッジを加えて2倍の効果になった“フィギュア8”。
サーシャは俯せの相手の首を後ろに締め上げる“バンク・ステイトメント”。
ベッキー(not センテンス・スプリング)は俯せの相手に極める十字固め“ディス・アーマー”。

昔は、「サブミッションは大きい会場では見えにくいのでウケない」と言われていたものですが、史上最大の観客であふれかえったレッスルマニアで、サブミッションは普通にウケてました。

そう言えば、けっこう何年も前からサブミッションはウケているのです。
これ、会場にデッカいモニターがあるのが大きいなと、長年WWEを見てるくせに今さら気づいたのです。
え? 気づいてた? 今頃そんなことに気づくのはお前だけ? 失礼いたしました。

第6試合 ヘル・イン・ア・セル

アンダーテイカー×シェイン・マクマホン

シェイン・マクマホン。お察しの通り、ビンスの息子です。
当然、かつては後継者と目されていたわけですが、7年前に突然WWEを辞めてしまいました。

正直に言うと、「滅多に試合をしなくなっちゃったアンダーテイカーの相手が、よりによってシェインかよ」と思ってました。
どこかで「素人」だと思ってたし。
もちろん、たまに試合に出ると無茶なことをやらかして、下手なレスラーより凄い試合はしてましたけど……レッスルマニアでアンダーテイカーの相手ってなあ……と。
辞める少し前から試合もやってなかったし。

しかし!いい意味で裏切られましたね。

舞台となる“ヘル・イン・ア・セル”とは、上のムービーでもわかるように、場外も含めたリング全体を、スッポリと包む金網のことです。
また、この形式だとノールールになるので、凶器なんかも使いたい放題。シェインの無鉄砲なスタイルが活きるんですよ、これが。

また、ヘンゾ・グレイシーとなぜか柔術の練習を積んでいたとのことで三角絞めなんかを繰り出してはいましたが、やはり白眉は、上のムービーで見られるセルのてっぺんからの実況席へのダイブです!
セルの途中からのダイブは何度かありましたが、てっぺんに立った状態からのダイブは、ミック・フォーリー以来ではないでしょうか?

フィニッシュ前にテイカーがシェインの頬をポンポンと優しく叩くシーンなんかも含め、期待を大きく超えましたね!

第7試合 アンドレ・ザ・ジャイアント・メモリアル・バトルロイヤル

R・トゥルース
アダム・ローズ
カーティス・アクセル
ケイン
ゴールダスト
コナー
シャキール・オニール(元NBAバスケ選手)
ジャック・スワガー
ダイヤモンド・ダラス・ペイジ
タイラー・ブリーズ
タタンカ
ダミアン・サンドウ
ダレン・ヤング
バロン・コービン
ヒース・スレーター
ビクター
ビッグ・ショー
ファンダンゴ
ボー・ダラス
マーク・ヘンリー
(五十音順)

率直に言って、ゆったり見物してました。つまらなくはなかったんですが、まあ、シャキール・オニールとビッグ・ショーの絡みが、概ね唯一の見せ場かな、と。
シャックは何年か前にRAWに出て、ビッグ・ショーと絡んだりしてたNBAのスターで、何となくこじつけた因縁をベースに無理矢理出した感じです。
でも、あの馬鹿でかいビッグ・ショーと並んで、身長が同じくらいでしたね。笑うレベルでデカイ。

第8試合(?)

ザ・ロック×エリック・ローワン

ロック様が登場し、いつものように名調子の演説を。
彼の口から、観客数がレッスルマニア史上最高の101,763人を記録したことが告げられました。

そこにワイアット・ファミリーが登場、例によってブレイが意味不明なスピーチを行うと、ロックから宣戦布告! 急遽()ローワンとのシングルマッチが組まれた!
……と思ったら、ロック・ボトム一発でローワン撃沈! あっという間に試合終了でした。

腹いせにワイアット・ファミリーがロックを取り囲み、襲撃せんとしたその瞬間、ジョン・シナ登場。

肩の怪我からの久々の復帰です。
例によって歓声とブーイングが相半ばする中、ロック様とシナはワイアット・ファミリーをリングから一掃、2人仲良く見得を切ります。
今やハリウッドで最も興行収入を上げる俳優になったロック様ほどの男と並んでも、シナは存在感でさほど引けを取りません。
何でこうまでブーイングを浴びるんだろ?

第9試合 WWE世界ヘビー級王座戦

トリプルH×ロマン・レインズ

メイン・イベントです。
ここまでで6時間以上経ってますから、いやはやWWEファンというのは物好きですなあ。

何気にこの試合、けっこうグレード高かったと思うんですよ。
でも、水を差したのがレインズへのブーイングと、トリプルHへの声援。

さっき、ジョン・シナについて“歓声とブーイングが相半ば”と書き、プロレス英語の解説の時もそれを書きましたが、それの悪化したバージョンがレインズなのです。
2人ともベビー・フェイス(善玉)で、トリプルH(WWEの本当のCOO)をはじめとする権力者側“The Authority”の悪だくみに逆らう立場です。
ところが実際には、当然ですが、COOたるトリプルHが自ら悪役となってまでプッシュをしているのがこの2人。

どうも、コアなマニアには、それが気に入らないようなのです。
だから、悪役チャンピオンのトリプルHに声援が飛び、正義の挑戦者レインズにブーイングが出てしまうのです。

個人的には、この2人はよくやってると思うんですよ。
たいへんな努力をしているのは身体を見れば一目瞭然だし、試合運びも(センスより頭脳先行型の印象ですが)うまいです。しゃべりだって非常に見事だと思います。
そして、子供と女性には大人気なんです。

でも、いかにもモテなさそうなコアなマニア層には受けが悪く、奴らもムキになってブーイングするもんだから、けっこうテレビからも聞こえてくるんですね。

それでも、今回のレッスルマニアで解消されるんじゃないかと期待をしていました。

トリプルHという人は、ヒールとして試合をして、対戦相手のベビーフェイスに声援が集まるように仕向けることに関して、驚異的な能力を持っているのです。
私はレッスルマニア28でのアンダーテイカーとの試合を目の当たりにして、それを実感しました。
そして、そんな斜に構えた見方をしている私でさえ、トリプルHにブーイングを送り、アンダーテイカーを心の底から応援していたのです。
ダニエル・ブライアンも、その自伝でレッスルマニア30でのトリプルHとの試合の中で、多くのことを学んだと書いています。そしてそれはレスラーでない人には説明が困難であるとも。

そんなトリプルHの超絶スキルをもってすれば、私はレインズは英雄になれると思っていましたし、ビンスもトリプルHもそう思っていたと思うのです。

果たして、試合ではトリプルHの名人芸が炸裂し、だんだんとレインズへのブーイングを声援が上回り出しました……が、ブーイングをかき消すところまでは行きません。
そして、レインズのフィニッシャーのスピアーがトリプルHを捉え、レインズが遂にWWE世界王座を奪取!……しても、モテなさそうな奴らがブーイングしてます

うーむ……
いや、そのモテないメンを非難しようとは思いません。そいつらにブーイングさせないだけの力がレインズにないといけませんから。
ただ、このままの形でプッシュを続けても、モテないメンはムキになってブーイングするだけのような気がするんです。

これはもう、レインズはヒールに転向して、全員からブーイングされるところから再出発するしかないのではないかと。
彼ならきっと、ヒール転向も、そこを耐えてからのベビーフェイス最転向も、できると思うんですよ。
元々、ヒールのチームで頭角を現してのし上がって来たのですから、またやってみればいいんです。


というわけで、何せ7時間もかかったイベントですから、1大会の観戦記としては異常に長いものになってしまいました。
全体として、やっぱりレッスルマニアは見ずに死んではいけないイベントだと確信しましたね。

見ていない皆様も、来年は必ずご覧になるよう、強く推奨いたします!

2016/04/15 12:34 | 観戦記 | No Comments
2016/04/15

前回は、観戦記なのに本編に入る前までという、何とも間抜けな展開でした。
本編の観戦記も、やはり2本に分かれております。
試合の概略および感想とちょっとした考察だけで、こんなになっちゃうほどのビッグ・イベントだとご理解ください。
これでも、本当に書きたいことの半分くらいなんです。動画が入れられるおかげで、試合そのものの描写なんかがずいぶんと短縮できてるんですよ。

レッスルマニア本編

第1試合 インターコンチネンタル王座戦 7ウェイ・ラダーマッチ

ケビン・オーエンズ(王者)
ザ・ミズ
ザック・ライダー
サミ・ゼイン
シン・カラ
スターダスト
ドルフ・ジグラー
(五十音順)

スタジアムでの試合では、ラダーマッチは欠かせません。

※上空にベルト等をつるし、ハシゴを登って取った者が勝者という試合形式

反則なしなので、当然ながらハシゴによる殴打とか、ハシゴへの激突とか、ハシゴから場外への落下とか、楽しいシーンの連続になります。
この試合も例外ではなく、「それ、やるの!?」的なシーンが続出でした。

個人的には、無名時代に来日してたオーエンズとゼインが、10万の大観衆の歓声を浴びながら殴り合うシーンに、感慨を禁じえませんでした。いやあ、2人とも立派になって……

そして、結末はまさかのザック・ライダーの王座奪取! ここ数年、ミスターかませ犬的ポジションだったので、驚いたのなんの。
ブレイクもしないままベテランの域に入りつつあるので、一花咲かせてほしいところではあります。

第2試合

AJスタイルズ×クリス・ジェリコ

職人肌の2人の見応えある折り目正しいプロレスの試合だったので、とくに“事件”なし。
ただ、このタイミングでジェリコの勝ちだったのは驚きました。

今年の頭まで新日本プロレスにいたAJ。日本での経験が長いジェリコなら、彼の良さを引き出せるでしょうから、この抗争をしばらく引っ張って、AJの良さを引き出して価値を上げる意図でしょうか?
AJを売り出そうというWWEの意図は明らかなだけに、この敗戦がどんな展開の伏線なのか、見極めたいところです。
もっともWWEの場合は、単なる思いつきである可能性が多々ありますが……

第3試合 3×4タッグマッチ

ニュー・デイ
(ビッグE、コフィ・キングストン、エグザビア・ウッズ)
×
リーグ・オブ・ネイションズ
(シェイマス、キング・バレット、アルベルト・デル・リオ、ルセフ)

アイルランド、イングランド、メキシコ、ブルガリアの4人を「League Of Nations」とするセンスはいいと思うんですが、J Sportsの字幕では「国際同盟」、オフィシャルサイトの訳では「多国籍同盟」なのが気になります。「League Of Nations」は「国際連盟」でしょうが……

なぜかドラゴンボールみたいな衣装を着たニュー・デイのトリオ漫才やなんかも面白かったのですが、いつもの試合とそんなに違わないような……と思っていたら、この後の展開の前振りでした。

国際連盟のニュー・デイへの暴行から救出するため、レジェンドかつWWE殿堂者、ストーン・コールド・スティーブ・オースチン、ショーン・マイケルズ、ミック・フォーリーが登場!

オチは、ついにストーン・コールドがニュー・デイに合わせて踊ったかと思いきや、エグザビアにスタナーを決めてビール大会でした。

いつかやってみたいんですよね、このビール大会。

いや、そりゃ風呂場でやればいつでもできるんですが、誰も見てないところでやっても虚しいですし……

第4試合 ノー・ホールズ・バード・ストリート・ファイト・マッチ

ディーン・アンブローズ×ブロック・レスナー

率直に言うと、有刺鉄線バットは使って欲しかった!(レッスルマニアに至るまでの番組中で、レジェンドたちが自分のトレードマークの凶器を持って、アンブローズを激励に来る小芝居があったんです。テリー・ファンクはチェーンソー、ミック・フォーリーが有刺鉄線バットを渡してました)
……けど、PG12の番組ではダメでしょうね。血ィ出ちゃうし。

それより、最近のブロック・レスナーの扱いが、“素手に闘ったら絶対に勝てない人”になりつつあり、どうもモヤモヤします。
ここ数年で普通に勝ったのはジョン・シナとトリプルHだけ。両方ともノールール系の試合で、リングに鉄階段を引っ張り上げて、その上での必殺技がフィニッシュでした。
アンダーテイカーも一度勝ったんですが、急所打ちを食らわせた挙げ句の疑惑の勝利でした。

アンブローズ戦もご多分に漏れず、素手で闘っている局面では、アンブローズは手も足も出ず、竹刀や椅子を手にした時だけ攻勢に出る展開でした。
そして、さんざん凶器攻撃を加えても、ラストはF5一発でピンフォールですから。

率直に言って、これからどうすんだろ?と。

Hall Of Fame Class 2016紹介

WWE殿堂入り式典は毎年レッスルマニアの前日に行われ、当日は殿堂者たちのお披露目があります。
今年2016年に殿堂入りしたのは……

日本のファンとしては、スタン・ハンセンの殿堂入りが嬉しいではありませんか! 10万人の前にハンセンが現れ、喝采を受けるなんて……感無量です。
紹介映像では、天龍源一郎がラリアットで吹っ飛ばされる映像が出てましたが、あんなの食らってたら、そりゃ喉も潰れてガラガラにもなりますわな。

セレブ部門はスヌープ・ドッグ。彼のこれまでのWWEへの貢献を考えると、まあ順当ですかね。

ウォリアー賞

ジョーン・ランデン

亡くなったアルティメット・ウォリアーに由来する賞で、精神力と忍耐を持って闘った人に贈られる賞です。
ランデン氏は著名なジャーナリストで、乳がんにかかったことを公表、その闘いを通じて多くの人の手本となったことを評価されました。

レガシー部門

“レガシー部門”の設立には、唸りましたね!

ファンが見れば、今回選ばれたレスラーたちは、モノホンの“レスラー”であることがわかると思います。ザックリ言うと、“本当に闘っても強い人たち”なのです。

社名をWW“E”に変えた頃から、「レスリング」という言葉がタブーになったようで、「レスリング」は「スポーツ・エンターテインメント」、「レスラー」は「スーパースター」「ディーバ」「コンペティター」などに言い換えられました。
実況でも、プロモでも、まず聞かれない言葉になっていたのです。

が、3年くらい前から、稀に聞かれるようになってきました。この1年は、2週間に1回くらいは聞かれるのです。
そして今回、プロレスが競技として行われていた時代、レスラーとしての強さが必要だった時代のレジェンドたちが、WWEの“レガシー”と定義されたのです。

これは、プロレスリングの歴史を思うと、非常に感慨深い事実なのです。
そのうち、こうしたことも書いていこうと思います。

(下)に続く!

2016/04/15 12:34 | 観戦記 | No Comments
2016/04/13

レッスルマニアを見ずに死んではいかん」まで言い切ったからには、当然ながら今年も見ましたよ、私は。
しかも今年は、WWEネットワーク開始のおかげで、完全にリアルタイムで見ることができました。
現地テキサスの日曜夜=日本では月曜の午前です。“副業”の会社は休みをもらいました。当然ですよ。どっちが大事だと言えば、明らかにレッスルマニアですから。

レッスルマニア本興行の前にキックオフ・ショーというのがあって、見所の解説やらその日までのご当地の様子なんかに加え、試合が行われるんですよ。それが、日本時間の朝6時開始なのです。
そういうわけで、休みだというのに朝5時に起床して、洗顔や朝食や洗濯物たたみなんかを済ませ、6時にはテレビの前に陣取りました。

※なお、Apple TVのアプリで見ると、どうもリアルタイムのストリーミング配信はやたらと再生が止まることに、前日の「WWE Hall Of Fame」の生中継で気づき、試験的にiPadからAirPlayでApple TVに送るようにしてみたところ、これがドンピシャ。途中で止まることなく楽しめました。
Apple TVでの再生にご不満の方は、ぜひお試しください。

キックオフ・ショー

何と、ほぼ全編がWWEのオフィシャルアカウントによってアップされていました。太っ腹ですな。

キックオフでは、例年1試合のところ、3試合が行われました。

カリスト×ライバック(US王座戦)

Team Total Divas × Team B.A.D. & Blonde
ブリー・ベラ、アリシア・フォックス、ペイジ、ナタリア、エヴァ・マリー
×
ナオミ、タミーナ、ラナ、サマー・レイ、エマ

ウーソズ×ダッドリーボーイズ

どの試合もなかなかのクオリティで、楽しめました。
女子の10人タッグマッチでは、この種の大人数試合にありがちなフィニッシャー(決め技)の連続競演も楽しめました。
試合を締めたのは、ブリー・ベラです。引退した夫ダニエル・ブライアンのフィニッシャー“イエス・ロック”を引き継いだだけでなく、これがまた見事な技の入り方でした。この入り方、ブライアンもやったのを見た記憶がありません。

▼そのシーンからの再生です。

そして、ブリーはこの試合が最後となるようです。ラストにそれを思わせるシーンも……

新WWE女子王座紹介

これは非常に重要なコーナーでした。
WWEでは、男性レスラーを「WWEスーパースター」といい、女性に関してはレスラーとそれ以外の登場人物をまとめて「WWEディーバ」と呼んで来ました。

イノベーターたるビンスCEOともあろう方が、女性タレントについては非常に保守的で、率直に言って、これまでは“セクシーな添え物”の扱いを受けていました。
セクシーなのはたいへん結構で喜ばしいのですが、才能ある女性が、それを存分に発揮できないのは問題です。

2つあった女子の王座が、“女子王座”ではなく、“ディーバ王座”に統一されたのが、象徴的な出来事でした。

しかしこの数年で、2軍であるNXTで奮闘していた若く才能ある女性“レスラー”達が、状況を変えたのです。
シャーロット、サーシャ・バンクス、ベッキー・リンチ、ベイリーの“4ホース・ウィメン”の功績です。

彼女たちは、“男みたいなプロレス”ではなく、ハードでスピーディながら、女性ならではのプロレスを作り上げて来たのです。
その過程は、心の底からリスペクトせずにはいられない道程でした。
彼女たちを中心にした、急速な女子の試合の地位向上は“ディーバ革命”と呼ばれ、これまでにない女子の試合の形ができあがっていく過程にあります。

「日本の女子プロレスも質が高いだろ!」とおっしゃる方、お気持ちはよく理解できます。
が、残念ながら、日本の女子にはレッスルマニアのような大舞台がないんですよね……
現在唯一の日本人ディーバASUKA(華名)がNXT女子王者に就いたことが状況を変えてくれるかも知れません。

そして、新しい女子王座のベルトのプレゼンターは、引退したディーバのリタが務めました。
リタと、そのライバルであるトリッシュ・ストラタスこそ、4ホース・ウィメンの先駆者とも言うべき人物です。危険を顧みないハードな試合スタイルで、命を削るような2人の攻防は、本当に凄かった……
まさに適役、心憎い演出です。

この段階で、まだ朝の8時。否応なく盛り上がってくるではありませんか!

つづく

2016/04/13 12:06 | 観戦記 | No Comments
2016/03/31

WWEの番組は、J sportsの日本語字幕版(10日後くらいに放送)にしても、WWEネットワークで見られる番組にせよ、番組中に聞こえてくる言葉は基本オール英語です。

※レッスルマニア32は日本語実況もあります。

私自身は、推定2歳児レベルの英会話力しかないので、WWEネットワークを見る時には、基本的に英語字幕をオンにして、それでも時々一時停止して辞書を引くレベルです。

※英語の字幕はあるので、“読めるけど聞こえない”あなたも安心ですよ。

そんなレベルの私でも、

  • 日本のプロレス的な和製英語と違う言葉
  • 一般的な言葉だけど、プロレス的文脈では意味が異なる言葉
  • ビジネス会話ではまず出てきそうにない言葉

がいくつかあることに気づきます。

このシリーズでは、そんな言葉をプロレス的“出る単として少しずつご紹介したいと思います(出る単だって。トシがバレバレですね)。
まあ、レッスルマニア32も近いし、いいタイミングなのではないかと!

ただし、英語力2歳児なので少しずつのご紹介となりますが、ご容赦いただければ幸いです。10年前は犬と同じくらいだったので、これでも進歩しているのです。
あ、なお、日本語でも音訳された同じ言葉(例:top rope→トップロープ)の場合は取り上げません。

基本用語

まず、日本人が番組を楽しむ上で、押さえておくべき言葉から紹介して参りましょう。

tag

タッグマッチで、リング内のレスラーがコーナーに待機する相棒と手をパチンと合わせて交代するシーンは、プロレスに縁のない方でも一度は見たことがあるでしょう。
あれ、日本では「タッチ」と言いますが、あちらでは「tag」と言います。「trying to tag」とか「Tagged!!」とか「Make a tag」とかいう形で使われてます。

promo

日本でいう“マイクアピール”は、あちらでは“promo”といいます。“宣伝”の意味のようですね。何というか、素直な用語ですね。

chant

「イノキ!イノキ!」という“猪木コール”はご存知だと思います。ああいうのを日本では“コール”と言いますが、英語だと“chant”です。
当たり前っちゃ当たり前なんですが、リズムの取り方も違ってます。
たとえばホーガンに声援を送る時、日本では「ホ・ー・ガン!(4分休符)ホ・ー・ガン!(4分休符)」となりますが、あちらでは「ホー・ガン!ホー・ガン!」と連続します。
レスラーの名前を呼ぶ以外にも、さまざまなチャントがあります。
例えば……

You suck!

悪役に対するチャントです。「おまえ最低!」の意味です。J Sportsの字幕では「最低野郎!」と当てられていますが、カート・アングルだけ「へなちょこ!」という表記です。何でだ。

This is awesome!

主にリングの上で秀逸な攻防が披露された場合に、称賛のチャントが発生します。
直訳すると「これはすごい」ですが、J Sportsの字幕では「これぞ名勝負!」「これぞ名場面!」など、状況に応じて字幕が当てられます。意訳しすぎの気もしますが。

Holy shit!

打って変わって、主に凶器や備品を使って凄いことをやっちゃった時——例えば相手を実況席(なぜか基本的にスペイン語実況席)に叩きつけて破壊したり、2mクラスのハシゴからダイブして攻撃したりと、“エクストリーム”な攻防が凄かった時に起きる称賛チャントです。
直訳すると「聖なるクソ」ですが、字幕では「クソすげえ!」となかなか趣のある訳し方です。

Let’s go xxxx

試合中に(主に)ベビーフェイス(善玉レスラー)を応援する時、単なる連呼では語呂が悪いような場合にLet’s goが付きます。一度チャントしてから、手拍子を“チャッチャッチャチャチャ”と入れるのが通常です。

Let’s go Cena! Cena sucks!

で、ジョン・シナという当代ナンバー1人気のレスラー(何でも年間13億稼ぐとか)は子供と女性に応援され、モテない感じの若い男性に嫌われています。
なので、上記のチャントの前半が黄色い声で、後半が野太い声になります。
会場では「Cena sucks!」と叫ぶ男を子供のファンが睨みつける場面もよく見られ、なかなか楽しめます。なお「Cena sucks」は前述の「You suck」と同意ですが、三人称単数なので「s」が付きます(蛇足)。

ロック様用語

レッスルマニア32では、ザ・ロックことドウェイン・ジョンソンの出番があるそうです。
彼のpromoは最低10分以上カンペなしでしゃべるのが当たり前なのですが、スラングを多用する上に造語を使います。
英語に堪能な方だと却ってわからない言葉があると思うので、ご紹介しましょう。上から目線ですが。

jabroni

元々は、プロレス業界の隠語だとのこと。ロック自身が「この隠語を堂々と番組で使ったのは俺が初めてだ」と語っています。
負け役を演じることをjobといい、負け役ばっかりのレスラーをjobberというのからイタリア語風(?)に転訛した言葉で、“ダメな奴”的な意味のようです。

smackdown

“お仕置き”の意味で、「lay the smackdown hotel!」という用法がもっとも多いです。
これはロックの造語で、その後番組名に採用され、今では辞書にも収録されるようになったという言葉なのです。

arse

assが放送禁止のようなので、代わりに使われる言葉です。
ロックだけが使う言葉ではありませんが、使用頻度は恐らく彼が一番です。

まだまだプロレス的な文脈で出てくる独自の英語はたくさんあります。
が、あんまり一気に紹介しちゃうとネタが切れてしまうので、このへんで。

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