« 夜明けの時 | Home | 花粉と本と整理術…… »
たまにホテルに泊まると思い出す出来事がある。
日本に帰国して3年だったか、5年だったか、
とにかくまだグリーンカード(GC)を持っていて、
何年かに一度『長期国外滞在届け』の手続きにアメリカに通っていた頃。
つまり、GCを持っているのに何が理由でアメリカ国外にいるのさ?
という問いに、私の場合は ‘ちょっと日本の職歴を積みたくてね’ という申請で
GCを失うことなく日本に長期滞在ができる、という手続き。
以前コラム 『good luck』にも書いたが、
手続き自体は難しいものではないが、通るか通らないかは最後まで分からない、
非常に手厳しいモノでもある。
さて、どこにいても同じだが、住んでいる街のホテルに泊まる、という機会は少ない。
家があるのに高い宿泊費を払って休暇をすごす、かなり贅沢である。
NYで泊まることがあるならば、あそこにしよう、と決めてたホテルがあった。
住んでいた西54丁目から少し北に上がったリンカーンセンター付近にあるHUDSON。
看板もなく一度も中に入ったこともないのに、散歩で前を通るたびに気になっていた。
初めてNYに戻ってきた時は迷わずそのホテルを予約。
部屋の感じもホテルの中庭も思った通りで、スッキリと無駄のないでも清潔感のある、
ヨーロッパを思わせるおしゃれなホテルだった。
ホテルに到着してチェックインした後、部屋に上がるエレベーターで
ゲイのカップルと乗り合わせる。
一人は背が高く、もう一人が背が低く、そして明らかなオネエ英語での会話。
背の低い彼がふっと私に視線を送り、言った。
その鞄、素敵ねぇ。
びっくりするものの、ちょっとこだわりあって手に入れた鞄だっただけに
なんだ嬉しくて、ありがとうを言って、エレベーターを降りた。
あんな密室で、あの距離で、明らかに見た目が外国人の私にその言葉を投げるとは。
久しぶりのアメリカ、ああ、こういう国だった、と再確認。
今でもホテルのエレベーターに乗ると、
あの時の出来事を思い出す。