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2013/04/20

JunkStageをご覧の皆さん、こんばんは。
4月も下旬に差しかかり、早くも大型連休がスタート目前となってきましたね!
GWにはご旅行へ行く予定の方も多いと思いますが、今回ご紹介するライターさんも筋金入りのトラベラー。年に1・2回旅行をされているのですが、その行先がまたすごい。
コラムで読むたびに「なぜまたそこへ……」と慄かされる、今日は稀有なこのツーリストをご紹介したいと思います。

■vol.19 僻地トラベラー・ユウさん

― 人(=個人的交流)と、国(=政治的云々)と、自分の思い(=折り合い)とが、
まるで交差しないから、こそ、そのことに学ぶのである。
そして、それこそがわたしを惹きつけてやまない、旅というものなのだ。(ユウ)


北朝鮮、バルカン半島など、世界の僻地を旅する。19歳のときにキューバのナルシソ・メディナ舞踊団に留学し、居住。
http://www.junkstage.com/yuu/

*   *  *

北朝鮮イスラエルネパールブータンカナダチベットインドイエメン
ぽろぽろと挙げてみましたが、これは全てユウさんが自身で足を運び、旅の記録や思いをコラムで綴ってきた国々です。2013年現在20カ国を超える国々を、しかもその殆どが日本人旅行者には馴染みのない場所ばかり、ユウさんは彷徨うように訪れてきました。

そのきっかけは、高校生の時に修学旅行で訪れたニューヨーク
がちがちに行動を縛られた異国で17歳の女子高校生が「もっと広い世界を見たい」と思ったこと。それがユウさんのキューバへの留学、そしてその後の旅の行先を決めるうえで大きな指針となったことは想像に難くありません。

ユウさんのコラムの大きな特徴は、「行く前に考えたこと」「現地で思ったこと」が、帰国してからの感想と共に丁寧な筆致で綴られていくところです。
そして、その中で最もウエイトを置かれているのが、現地の人々との会話や見聞きした風景。
海外に出れば「だって私は一人の日本人のオンナノコだもん」とは言えないことも多々あると思うのですが、それでもユウさんは果敢に会話をし、彼らと交流をしてくるのです。

―別れ際の私の最後の質問に、彼はやはり私にはわからない答えを言った。
「どうして統一を望むのですか?」
「同じ民族だからです」(北朝鮮にて http://www.junkstage.com/yuu/?p=16

――ユニセフで働く日本人のTさんは、何カ国をも巡ってきており外国人との子どもを日本に残してきている方。そのTさんが自らの経験を語りつつ、つぶやいたことがある。
「やっぱり、死体は見たくないよ…」
当たり前すぎるその言葉は、あまりに現実味を帯びていて、そしてあまりに、深かった。(イエメンにて http://www.junkstage.com/yuu/?p=520

―― 一番印象的というか、この街を顕著に表していると自分でも思ったのが、わたしが「国会議事堂かなにかですか?」と聞いた大きな建物に、彼が答えた 「金持ちの“家”です」という台詞だったろう。(インドにて http://www.junkstage.com/yuu/?p=344

上記にピックアップしたのは私が印象に残っている部分ですが、政治的・宗教的、そして物理的にも日本と隔たった場所で、異なる価値観に触れた体験を、ユウさんはあくまで自分一個人のものとして消化し、消化できない部分をコラムに書いているのかなと思います。

その、“一個人感”こそが、私はユウさんのもっとも得難い部分なのだと思うのです。

*  * *

旅に出る、それはつまり、あくまでも余所者としてその場所にお邪魔するという立場です。
けれどこのことを、旅行中は割合に忘れてしまいがち。あるいは覚えていたとしても、第三者におおっぴらに云うことまではしない、そういう方は私を含め多いのではないかと思います。

だから、基本的にユウさんは謙虚なのだと思うのです。

その姿勢は旅先での様子を綴ったコラムでも勿論充分に伝わってくるのですが、端的にそれを示しているのは自衛の姿勢。宿も取らずに旅行している場所もあるようですが、蚊取り線香、虫よけスプレーなどの感染症対策を怠らないという姿勢は「何が何でも戻ってくる」という気概を感じさせます。

そして、帰国した後にコラムを書く。
旅自体を消化するように、自分が掴んで来た違和感や不思議さや嬉しかったことを反芻するように、書く。

この書くという行為に置いて、ユウさんの文章は基本的に「ひとりごと」なのです。
私はこう思った。私はこう感じた。
一般化せず、日本人だから分かるだろうと言う共感も求めず、それでもユウさんは、書く。
その文章の端々に感じられる、ユウさんの目線、ものの見かた、考え方。
それらは水のように、読む私たちに一人の「ユウ」さんという女の子の目線を教えてくれます。このひとの発言なら信じられる。そんな意識を、いつのまにか持たせられているのです。
だからこそ読む私たちは、ユウさんの目を通して、訪れたことのない異国の気配を感じるのではないでしょうか。

2013/04/20 12:00 | sp | No Comments