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2008/11/10

地球の舳先から vol.98
世界の家族のこと vol.6
インド編

indiajunk.jpg

インドに行くときは、ホームステイで。なぜか、そう決めていた。
が、年とともに戦闘能力を失っていたわたしは(体力を要する旅は10代のうちにすべきである)、
日本でステイ先をさがしてから出国。

出国後の、デリーでの恐怖体験や、聖地ガンジス川沿いのバラナシでの戦いの記録は
またいつかにまわすとして、最後に訪れた西の地、コルカタでのこと。
コルカタは、英語名をカルカッタ。こちらの地名のほうが慣れ親しまれているかもしれない。
新興国、IT大国などと言われるインドだが、それは一部の都市。
コルカタでは、車線を無視して走る獰猛な車と、その人口、噴煙に驚かされた。

人口密度は東京の2倍。
人口の半分がスラム民、ハンセン患者などで占められ、街のいたるところで
観光客が落とした、水溜りに浮かぶポテトチップスを無我夢中で追う
もう死んでいるであろう赤子を背中にしょったまだ7~8歳の女の子の姿が見られる…
それが、わたしのコルカタの印象だった。
足が杖のようになった老人が、四つんばいの動物のような格好で飛びながら近づいてくる。
思わず後ずさりしてしまう、そんな光景があった街だった。

わたしが滞在させてもらったのは、とある中産階級の家だった。
毎日、バイトで都市部に勤める医師がわたしの部屋に通って英語を教えてくれた。
その先生から、いろんなことを教わった。一緒にドライブもしてもらった。
一番印象的というか、この街を顕著に表していると自分でも思ったのが、
わたしが「国会議事堂かなにかですか?」と聞いた大きな建物に、彼が答えた
「金持ちの“家”です」という台詞だったろう。

インドにはヒンドゥー教という古くから親しまれた宗教があるが
中流以上の貴族は自らの子どもをミッション系(=キリスト教)の学校に通わせ、
毎日お手伝いさんの車で送り迎えをさせている。
そのすぐ隣の道路では、前述の子どもが言葉もろくに喋れないまま観光客から
わずかな小銭や食べものを恵んでくれと訴えるのだった。

貧富の差がある国など、いくらでもある。
しかし、そういう国は住む場所、暮らすコミュニティからして貧富によって分かれていた。
これほどまでに、壁1枚を隔てただけで恐ろしいほどの差がある国は、見たことがなかった。

わたしのステイした中産階級の家庭は、とても平和だった、ように見えた。
ひとり息子は学校には行かず、毎日家庭教師が勉強を教えに来る。
お父さんは昼すぎに仕事から帰ってくるとすぐにシャワーを浴び、それからは
ふんどしがわりのバスタオル1枚。
お母さんは3食を手作りしてくれる。

…が。
否定も肯定もわたしはしないが、ひとり息子はヒトラー信奉者(苦笑)
未だに、毎年お正月になると「今年1年があなたにとって高貴で幸せな年でありますように」
というひとことつきの、しかしヒトラーの敬礼の姿を全面にあしらった
年賀状ならぬWebグリーティングカードを送ってくれる。
かならずそこには「I respect him」と添えられているのだった。

10歳のくせして(くせして、というのは勿論負け惜しみである)英語ぺらぺらの彼と語り
わたしはそれでも毎日、マザーテレサの施設に通っていた。
ボランティア登録をすると全員にもらえるマザーのペンダントを何度彼は馬鹿にしたことか。
しかし、霊的といってもいいほどの体験を多数マザーテレサの施設でしたわたしは
すっかりキリスト教というものに、感化はされないまでも怯えに近い感情を抱いていた。

ちなみに、食事は毎日カレーだった。いや、カレーだったというのは語弊がある。
日本人がいろんな料理に醤油を入れるような感覚で、インドの方々はカレーなのだ。
だから毎日、肉料理、魚料理、タマゴ料理…でも全部カレー味。というだけの話。
見方を変えれば、毎日毎食、献立は違うものを用意してくれていた、ともいえる。

加えて「ナン」はインド特有の伝統料理かと思っていたのだが、
実は高級品で、一般の家庭には食卓にのぼったりなどしないとのこと。
ナンは生地をねかせて発酵させてから作るので、パンのようにふわっふわ。
一方、これの代わりに毎日の食卓に上がるチャパティはクレープの生地のようにぺらぺら。
銀のアルミ容器に、カレー、いや、カレー味の料理が3品ほど。
それをチャパティで辛さを紛らわしながら食べるのである。

毎日サリー姿のお母さんといっしょに、チャパティをこね、
コンクリートのリビングにあぐらをかいて座る。
いろんなことがわからなくなるインド滞在であった。
いや、世界に出るたびに、世界をひとつ知るたびに、
わからないことがひとつずつ増えていく、そういう実感があった。

2008/11/10 02:03 | ■インド, 【世界の家族のこと】 | 1 Comment

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[…] も思ったのが、わたしが「国会議事堂かなにかですか?」と聞いた大きな建物に、彼が答えた 「金持ちの“家”です」という台詞だったろう。(インドにて http://www.junkstage.com/yuu/?p=344) […]

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