「海の幸」は日本人の食に欠かせないものです。夏になると毎週のように海に通うフリーダイバーにとっては、さらに身近なもの。
こんな風に集中している様子でも・・・
「今日の練習終ったら、シメサバか・・それともアジの叩きか・・」
頭の中ではたいてい、そんな思考が渦巻いています。海に通う楽しみの一つは美味しい海の幸を食べることですからね!
普段、都会生活を行っていると、食べ物とは「料理」「食品」の姿していますが、海に入ると「今目の前を泳いでいる魚」「目の前に生えている海藻」これが食べ物なのだ、という当たり前のことを実感します。
「魚」は刺身や切り身ではなくて、ウロコに覆われて海を泳ぎ回る生物。
「私たちは生き物を食べて生きている」という現実を実感することが出来ます。
●「第4回Marineトークショー」
さて、先日参加した「第4回Marineトークショー」のテーマは
「海のいきもの。食べる。食べられる。」
まさにこのことがテーマでした。トークショーを主催した「Marin Action(マリンアクション)」は「いつまでも生命溢れる美しい海で潜りたい」というフリーダイバーみみずんこと岡本美鈴選手の一アスリートとしての強い思いから生まれた活動。海洋生物や海洋保全に向けた調査研究等を行う「エバーラスティング・ネイチャー(ELNA)」さんと様々な海洋保全活動を行っています。
さて、今回のトークショーでは3名の講師がそれぞれの海との関わりから、「海」と「食べる」ことについてのお話。
まずはELNA小野澤さんより「ウミガメが食べる。そして食べられる。」
ウミガメは種によってどんなものを食べているのか、そしてどんな生き物に食べられているのか、というお話。周りを取り巻く様々な条件によって食べられるかはたまた生き残れるのか変わってくる、という壮絶なウミガメと生態系のお話。小野澤さんは、おっとりとチャーミングな語り口で解説して下さいました。
続いて、美鈴選手・・・「潜水チャンピオンが見た海の中の生態系」
フリーダイビングの競技の話をする機会が多い美鈴選手ですが、今回は「御蔵島でイワシの補食シーンを素潜りで間近で見た(間近どころか群れに巻かれながら)」という激レアな話をこれまた超レア映像と共に!!海がざわざわとうごめく様子、本当にゾクゾクしました!!(残念ながら映像も写真も著作権の関係で転載が出来ません・・)イワシの群れに巻かれる美鈴選手、一瞬でカツオに食べ尽されてしまったイワシの大群・・・何十回と御蔵島に通っている私でも、こんなシーンには出くわしたことがありません。みみずん、やっぱり「持って」ますね。ともあれ、いつも食べているカツオのタタキ定食がとてもドラマティックなものに思えました。
※写真:ダイブショップテール、千々松政昭氏:2013年6月マクタン島(今回のお話とは関連しないのですが、イワシの大群がどんなにスゴいか!!という光景をお伝えしたくてプロ海中カメラマン千々松さんに許可頂き写真を掲載しています。この群れが全て食べ尽されてしまうのです・・!千々松さん、ありがとうございます!)
○そして最後はメイントーク!全日本さば連合会会長、小林崇亮氏による
「サバニストが語る“さば”の世界」
その名も「サバニスト」である小林さん。あくまで「一消費者」として鯖(鯖缶含む)を愛する視点から鯖づくしのお話を粛々と語って頂きました!私も「シメサバ」をこよなく愛する一人ですが、期待以上の最高にユニークな、サバとサバを巡る日本文化のお話の数々!特別高級魚ではない鯖という魚。正に日本の魚の代表格と行っても良いのでは??とすっかり、「サバ」に洗脳された私でした。
●魚尽くしの懇親会
さて、「海の生き物を食べる」ことについて様々な確度から勉強した後は実践「魚を食べる」懇親会。
漁業関連、海洋保全関連、魚料理人、サバニスト、フリーダイバー・・・海と魚と食に関する様々なプロフェッショナルたちが集結!!
サバニスト小林さんと、富戸沖の極上の真サバ(市場には出回らない上物)の
サバショット!
一見普通のお寿司ですが、「サメ」のような珍しいネタもあります。
いとう漁港の日吉船長さんからは、こんなに大きな鰤を贈呈!
(料理人の森山さんが持つと大きさが際立たないのですが・・^^;;)
目の前で薄く捌く技、見惚れます!お刺身って芸術です!
凄腕料理人の森山さん、日吉船長さん、仲買人長谷川さん。穫って買い付けて捌く、
カッコいい魚男子三人衆!
そして、サバニスト小林さんとロッキー松尾さんによる「サバンド」の熱唱で夜は更けて行きました♪
●「生き物を食べる」「命をいだたく」ということ
こんな楽しい会でしたが、海産資源、漁業、捕鯨、自然保護、などが自然に話題になり時に真面目にも語り合いました。
「魚を食べる」ということ。「生き物をいただく」ということ。
高級なお寿司であっても、サバ缶であっても、それは同じです。
私は、自分で初めて素潜りで銛で魚を突いて穫った時の強烈な感覚を思い出しました。
それは、体調20センチ程度の小さなカワハギでした。さっきまで、目の前で泳いでいたおさかな。
目玉からしっぽの先まで、全て全部を残さずに、美味しく頂きました。
そんなことを思い出しながら「海の恵み」というものを改めて考えながら、
改めて、海に囲まれて、海が大好きな人たちと繋がって、
これからもずっと海と関わって行きたいなあ・・・と思った夜なのでした。
photo by Masaaki Chijimatsu, kosuke okamoto
今年も「流氷フリーダイビング」の季節がやって参りました。
というわけで行って参りました、遥々世界遺産知床・ウトロまで!
フリーダイバーはそもそもマニアックな人が多いのですが、その中でも特に流氷ダイバーは「トップクラスのモノ好き」です。ここから先はどうぞ、良い子は真似せずへぇーよくやるねぇ・・、というスタンスでお読み下ください。
私は昨年に引き続き2度目のチャレンジとなります。
昨年は女満別空港到着時から終始吹雪いていて日帰りを余儀なくされたのですが、
今年は快晴。青空と、雪の積もった真っ白な大地のコントラストも鮮やかな
ピカピカの世界でした。太陽の力は偉大です!
一面の流氷を見ながら海岸線を快調にドライブ!とはいえ外気温は氷点下。この後のダイブに備えてしっかり唐揚げを食べて防寒対策も万全です。
●いざ、ウトロ港へ
ここは、湾内なのです。何度見ても不思議な光景です。
てくてく、、てくてく。沢山の機材やウェイトを橇に乗せて。
そしてやっと辿り着きました。大会会場の「アイス・ブルーホール」
今回は2つの穴が会場となります。既に氷がはっていたので、掻き出しているところです。
これは前日の写真。積もった雪の上からポイントを見つけ出し、ツルハシとスコップで、穴を掘ります。たいへんな作業なのです。前乗りして作業してくれた皆さん、ありがとう!
さて、これが今回のメンバーです。フリーダイバー7名、スキューバーダイバー3名、カメラマン1名、陸上サポート2名の総勢13名です!去年よりだいぶ仲間が増えています。
皆モノ好きすぎる・・・。
そして何と今年ははるばる台湾からJAYさんも参加!実は彼は昨年秋に「流氷フリーダイビングに参加したいのだけど・・」と密かにメールをくれたのですが。私は全くおススメしないどころかむしろこんな風に脅していました。
「言っておくけど本当にクレイジーな人しか集まらないし、ハッキリ言って極寒で全然楽しくない。だいたい寒いって、どういうことか知ってるの?君これまで潜った最低水温何度?」
などなど。。が、にも関わらず、彼は、やって来ました。本物の雪を見たことすらなかったのに。このために、台湾では全く必要無い分厚い7mmウェットスーツをオーダーメイドし、湯船に氷を張って準備して。
彼もトップクラスのCrazyダイバーですね・・・
さて、いよいよダイブ開始。外気温は0℃〜2℃、無風。水温は-1〜2℃ほど。
「海水が液体でいられるギリギリの温度」です。
●コンスタント・ウェイト(垂直潜水)
今年は2種目を実施。まずは縦に潜るコンスタントウェイト。
昨年と同じく、水深20m程の海底にロープを垂らします。スキューバダイバーが待機する中を順番にフリーダイバーが潜って行きます。
水中は真っ暗、頭を下にして潜行すると・・ほぼ何も見えません。
でも浮上時には・・ぼんやりとした青い光に包まれた不思議な世界。
●ダイナミック(平行潜水)
ほの暗い氷の真下を1つの穴から別の穴へ、平行移動します。通常はプールで行う種目なのでいつでも好きな時に水面に上がることが出来る種目ですが、流氷下のダイナミックは「途中で水面に上がれない」という点が特徴的です。初の試みであったため、距離は20m弱。厳重なセキュリティ体制で実施します。
こんな風にずっと水面近くを移動するため、氷と光の不思議な世界を終始観察しながら泳ぐことが出来ます。
実は私の順番で、少しトラブルがありました。安全上、選手は自分の身体と繋がった「ラニヤードケーブル」という安全綱と水中のロープを繋いで潜水します。が、私が潜水し、もうすぐ出口、という一歩手前で、ラニヤードがたわんだロープに絡まってそれ以上進めなくなってしまったのです。
ラニヤードトラブルは私は通常の練習で何度か経験していたので落ち着いて「クイックリリース」(ラニヤード自体を自分から切り離す)で対処しようとしたところ、、・・・これが何故か外れなかったのです。
氷点下で手がかじかんでいたせいか、または機材の一部が凍って外れにくくなっていたのか不明です。幸いすぐにセーフティダイバーが飛んで来て、無事に外して貰うことが出来ました。
そして何事もなく「アイムOK!」と顔を出すことが出来ましたが・・・ほんの1分にも満たない時間とはいえ、5分にも思える時間でした。
氷点下のダイビングは本当に、通常のダイビングとは大違いだ、ということを改めて肝に銘じた一件でした。ともあれ、これ以外は何事も無く、競技は無事終了しました。
13時すぎから開始して、もう日が傾いてきました。流氷の上に長い影が出来始める中、撤収。
お疲れさまでした!
そのあとは、昨年のように東京にトンボ帰り、ということもなく皆で知床の海の幸を堪能しながら、夜中まで語り合ったのでした。
●知床の森へ
翌日は森に繰り出しました。
森の中をどんどん進みます!
エゾジカにも沢山会いました!
エゾジカの群れの向こうは崖、その向こうは一面の流氷です。
エゾジカに大感動している私たちを見て、ウトロ生まれウトロ育ちのフリーダイバー唯ちゃんは「このへんでは犬より多いんですけどね、エゾジカ・・・」とポツリ。。
●流氷とオホーツクの生態系
今年は、海だけでなく山にも少しだけ行くことが出来ました。そしてこの知床は本当に豊かな豊かな大自然に囲まれているのだなあ、と改めて五感で感じたのです。
海が豊かな場所は陸も豊かです。オホーツク海にやってくる流氷は、酸素やミネラルなど沢山の栄養分を運びます。やがて春になるとそれは海水に溶け出し、プランクトンが増え、それを餌にする小魚が増え、小魚は大きな魚の餌になり、魚は鳥の餌になり・・と食物連鎖を起こします。そして豊かな生態系を育んでいるのです。( 詳しくはこちら:オホーツク流氷振興局)
近年の温暖化で流氷にもだいぶ変化が出ているとのことです。北海道に到達しても氷が僅かであったり、期間が短かったり、 と・・そしてそれは少なからず生態系に影響を与えているとのこと。
流氷と、流氷が育む生態系がいつまでも豊かでありますように。
ともあれ・・今度は緑溢れる夏の知床に来たいと思っています^^)
photo by Tomohiro Noguchi, Tetsuo Hara, Jay huang, Yuko Noguchi , M.Kawamura.
映画「ゼロ・グラビティ(原題:Gravitiy)」はダイバーにとっては、とても興味惹かれる映画なのでは無いかと思います。私ももちろん、真っ先に観ました^^;
「ゼロ・グラビティ」オフィシャルトレーラー
宇宙と深海はよく、似たものに例えられます。
共通点は「暗くて、広くて、重力もない」ということ。
宇宙への憧れと深海への憧れはどこか似てますね。
「重力からの解放」
これは水中で得られる大きな喜び一つなのでは、と思います。
重力から解放されたいからと言って「よし、週末宇宙でも行くか〜」というのはなかなか出来ませんが、プールや海ならだいぶお手軽に無重力体験が出来ますからね。
陸上では人間は基本「横移動」しか出来ないという、もう物理的法則に従うしかないわけですが・・・そんな常識をぶち破る「縦横斜め移動」が自由自在に出来る世界が水中には広がっている。だから一度水の世界に足を踏み入れると、もう抜け出せなくなるんですね〜
とはいえ、重力の無い世界には酸素も無い。音もない。自由なようでいながら、実は全く自由ではないんだなあ、と。邦題は「ゼロ・グラビティ」ですが、原題の意味は深いです。私は見終わった後、やたら「Gravitiy」が愛しく思えました。ああ、重力って素晴らしい!
・・・と、そんな重力を噛み締めながら、東京を「横移動」しているある日、私が釘付けになった生物が。
橋の上から眺めた、飛びまわる鳥です。
飛ぶ、という世界には、上も下もしっかり存在します。
ふわふわしているわけではなくて、スピードの要素があります。
重力がありながら「縦横斜め」に動き回れる世界。
・・これだ!
と気づきました。「重力からの解放」というより、究極的な憧れは「3Dな世界」。ということです。重力があるかどうかというより、むしろ「360度」動き回れる世界というものに人は(少なくともワタシは)憧れるのでは・・ということです。
で、だいぶまた話が飛びますが、「3Dな世界」といえば私の中でピカイチ憧れの存在が映画「アバター」に出てくる原住民ナヴィの身体能力です。あの青い人たちです。
彼らの生きる3Dの世界は圧倒的。鳥みたいなものに乗り空を飛び、木から木を飛びついて渡り、一気に跳び降りたり、よじ登ったり、上下左右に動き回る。平面ではなく立体を生きる。まさに”3D”な感覚!!
「アバター」オフィシャルトレーラー
映像が立体的に見える「3D」の視覚効果のことではなくて、重力の中を立体的に360度自由に動き回れる世界感。私は2Dのスクリーンでも何度も観ましたが、それでも3Dな世界をしっかり体感しました。ナヴィはジェームス・キャメロン監督の完全なるイマジネーションの産物ですが、海の中ではこんなことも少し現実味を帯びる気もして、たまに観たくなります。
・・・「そうだ、海行こう!」ではなくて
「そうだ、TSUT○Y○」に行こう」になってしまいましたが・・
ひたすら3Dの世界を妄想する冬のフリーダイバーの戯言ってことで、お許しを^^;;
photo by Bernard @ sharm el shake 2012
さて、私は今年は陸上での運動には全く無縁だったのですが、年末にいくつか武道を学ぶ機会(しかもちょっとマニアックな^^;;)がありました。
インド古武術カラリパヤット:
日本ではあまり聞き慣れませんが、ヨーガと同じルーツを持ち、様々な武術の起源になったとても歴史がある武術です。私はご縁あって今回が二回目のワークショップ参加となりました。様々な動物のポーズが基礎の基礎の基本形になっており、それが繋がって一連の動作になりますが簡単にお伝えすると
「え、それはないでしょ、その次にこれっていうのはむ・・むりむりむり〜〜あ””ーーーーーー!!!」
という感じで・・腰を痛めている方にはお勧めしません。私は想定通り、翌日ありえないほど全身筋肉痛になりました・・。ともかく、相当身体の鍛錬をしないと基本の動きすらままならない、奥が深い武術です。何より身体の軸がしっかりしていることが基本中の基本。勢いで騙すことも出来ません。取得するのは時間がかかるかもしれませんが、時間をかけて得たものは簡単に失われない。難しいというのには意味があるのだと思います。
「まずはバランス。強さはあとからついてきます」
という言葉が印象的でした。そしてさらにその先にはやはり「美しさ」があります。稽古の最初と最後には必ず祈りと感謝をもって神様に捧げる演武が行われます。ニディーシュ先生の演武は全ての動きが曲線的で、とても美しいけれど、底知れぬ強さがあり、不思議と見ていて穏やかな気持ちになります。「柔らかくて、強いこと」これは私が憧れる理想なのだということを、思い出しました。
(※ちなみに、カラリの稽古では、一つ一つの動作の意味といったものは一切説明しないそうです。あくまで私の個人的感想です。)
法螺貝の稽古:
法螺貝とフリーダイビングって何が繋がるんだよ!って思うかもしれませんが、まあ貝というのは海のものなので・・。これは武道というより、修験僧の方が行う”行”だと思うので、とても貴重な経験です。貝好きな私ですがもちろん法螺貝は初めてです。ずしりとした貝を渡され、最初は音を出そうと一生懸命になっていました。ひとりで鳴らしてみるとふっと音が出たのに、修験者である先生が目の前にくるだけで、なんとも弱々しい情けないスカスカした音しか出なくなるのです・・。
そして、途中から貝のことは忘れて、しばし身体をほぐすワーク。
そしてもう一度貝を持つ。
音というのは結果として出るもの。
出る、と言うか、空気の震えで響くものということが少しだけわかってきました。
そのためには呼吸が大切で、深い呼吸はしっかりと大地を踏みしめるこの自分の身体を通して出てくる。そして面白いくらい、呼吸と言うのは気持ちと連動しているんですね。法螺貝稽古の最後の全員での法螺の掛け合いは凄くて、もはや音が聞こえるというより空気が震えてました。出そうと思って無理矢理出す音と、結果として響くものの違い。自分から出ているのか、周りから出ているのかもはやわからない。身体と空気と貝が共鳴していた空間、忘れられません。
(※法螺貝の稽古でも、言葉を使った説明は殆どなかったので、あくまで私の個人的な感想です)
カラリパヤットや法螺貝の稽古はクロストレーニング、というにはちょっと次元が違うのですが、思わぬところでフリーダイビングとの共通項を発見したり、フリーダイビングでは感じなかった沢山のことを気づかせてくれました。
年間通してわりと真剣にやっているはずのフリーダイビングでは何故かこうした気づきを得にくくなっている、ということがあります。私はオリンピックを目指すようなアスリートではありませんが、それでも競技結果にフォーカスしすぎて、気がつくと数字やテクニックばかり追っていた、ということがままあるからだと思います。
もっと深く、もっと長くと数字を追いかけて、数字の先に何かあると思ったら、数字以外何も見つからなくて、なのでまたその先にある数字ばかりを追いかけてしまう、という悪循環。結果を急ぐことによって、沢山の、もっと豊かなことを見落としてしまいます。もしかしたら数字の先ではなくて、その途中に欲しいものは、あるのかもしれません。
クロストレーニングというのは、ある意味でとても良い寄り道になるのでは、と思います。結果ではなくて、理想を目指すとか、何かを手に入れることより、もう持っている何かに気づくとか、そんな簡単なことを教えてくれます。
人間は陸上で、酸素を吸って太陽の光を浴びて生きる生物です。でも細胞のどこかでは海を覚えていてそれでフリーダイビングに魅せられてしまう。でも、とても深いけれど、やはりフリーダイビングは、陸上生物にとってとても魅力的なひとつの「寄り道」に過ぎないのかも・・などとふと、思います。普段気がつかない自分の心や身体や空気、そういったものに気づくことが出来る、人生を豊かにする寄り道、私にとっては、フリーダイビングはそんな風に思えているのです。
フリーダイビングのために武者修行をしているのではなくて、フリーダイビングが何かの修行になっているのかも・・?
などと思う大晦日です。「人魚の武者修行」はまだ2013年のことも書ききれていないのですが、まもなく2013年も終わりなので・・・ここでいったん〆ます。
今年一年の海に、空気に、身体に、そして周りの皆様に、感謝します。
良いお年を!
photo by Mayuko higuchi
大晦日なので私もこの一年を振り返っております。
思い返せば、運動といえばひたすら泳ぐか潜るかでした。(思い返すのそこかよ・・?)
限られた時間で効率よくフリーダイバーとしての身体をつくるために、泳ぎや潜り以外の陸上での「運動」を止めていました。これ以上無駄な筋肉を脚につけないようにと、走ることも。(電車に乗り遅れないようにダッシュする以外は・・)
たしかにスポーツ選手やプロフェッショナルの身体というのは、それに適した動きの中で出来上がると思います。
ランナーは走ることで
スイマーは泳ぐことで
格闘家は闘うことで
バレエダンサーは踊ることで
そしてフリーダイバーは潜ることで
(営業マンは歩くことで?)
その活動にとって必要な部分が自然と鍛えられ無駄の無い身体が出来上がるのだと思います。
とはいえ、オフシーズンには全く別の種目の運動を積極的に取り入れる「クロストレーニング」も良いかな、と思っています。クロストレーニングには身体のバランスを整えたり、精神的にリフレッシュされたり、新しい気づきをえられたりと様々な効能があるそうです。
フリーダイバーがクロストレーニングとしてよく取り入れる運動と言えば・・ヨーガ、水泳ですが、私の場合は、長年空手を嗜んでいたことから武道に関心が行きます。陸上と水中の違いはあれど、実は武道とフリーダイビングは、通じる部分がたくさんあります。例えば・・・
足の力で蹴ろうとしないで
体全体の力を抜いてやわらかく”しなり”をつくるように
空手の師匠からは回し蹴りの指導で、潜りの師匠からはドルフィンキックの指導で、全く同じことを言われたことがあります!
それから・・
動きに呼吸を合わせるのではなく、呼吸に動きを合わせる。
ということをひたすら基礎練習として行うという、別の武術を学んだこともあります。フリーダイビングは無呼吸だからこそ呼吸を意識することがとても大事で、陸上でのこの訓練は目からウロコでした。
美しさを追求しても強さにはならない。
強さを追求すると結果として美しい動きが生まれる。
これも武道の師匠の言葉です。フィンワークに置き換えると「ひたすら泳ぎ込むことにより、結果として無駄のない美しい動きが出来る」ということかな、とも解釈しています。
一つ一つの動きを理屈で理解して頭で考えながらゆっくり練習するというのも大事ですが、頭を空っぽにして、ひたすら反復するとそのうち身体が勝手に動き出すというようなことがあります。頭ではなくて身体が勝手に覚えてくれる、ということなのだと思います。
何だかストイックな話になってきましたがまだまだ続きます・・・
長くなるので、その2へ。
photo by Kosuke Okamoto
Mitsuhiro Kojima
クリスマスツリーやイルミネーションがキラキラしている季節になりました。
私は別のキラキラを求めて・・海へ!
夏はTシャツとビーサンでフラッと繰り出す海ですが
冬はまだ暗いうちに目覚ましをかけて起きて、
モゾモゾとフリースやダウンを重ね着して、ギョさんの代わりに長靴を履いて、
「これでもか」という防寒対策をして、いざ出発。
冬の海に向かうこの特別感はけっこう良いものです。
半年間毎週のように通っていた海から、少し私も遠ざかり。
たったの2週間(半月)間が空いただけで、半世紀ぶりに来た気がしました。
「わーー海だーーー」
何十回、もしかしたら何百回と見ているこの景色ですが
必ずいちいち、ワクワクする瞬間です。生まれて初めて海を見た人のように。
晴れていれば海に太陽の光が反射してキラキラするのは当たり前、のはずですが。
「普通にキラキラしている日」
「ものすごくキラキラしている日」
というのが、海には明らかにあるようです・・これは何故でしょうね??
ともあれ、明らかにそんな「特別にキラキラ」した海でした。
一年間お世話になった、国分ボートハウスでの東京フリーダイビング倶楽部練習会ももう今年はこれが最終。
参加者はたった4人なので、のんびりとボートを出して海に繰り出しました。
水温は17-18℃。外気よりあたたかい海です。
まだ3mmのウェットでも十分潜れる水温ですが、
私は風邪から病み上がりだったので暖かい6半の分厚いウェットで。
サイナスも全く抜けず、この日の潜れた深度は-5mほど。
大きなモノフィンはほとんど意味がありませんでした^^;;
キラキラな海でただプカプカただよいました。
そして、バブルリングの練習など。
シーズン〆の練習なのですが、深く潜らなくてはいけない
というような練習目標もプレッシャーもこの日の私には皆無。
ただ「キラキラした海」に漂うことを満喫しました。
こんなにリラックスした真鶴は今シーズン初めてだったかも知れません。
他の皆はそれぞれ自己ベストを出したりとなかなか充実した練習でした。
アンカーを引き上げた後は、特別に海を回り道して三石までクルーズ。
そしてこれにて、2013年の東京フリーダイビング倶楽部の海洋練習は終了。
この真鶴の海は、風が吹いたり、雨が降ったりとちょっとしたことで船が出せなくなる、気まぐれで、表情豊かな海です。いつもキラキラ青いわけではなくて、緑に濁っていたり、赤潮が来たり、灰色の日もあります。
プールと違い、予定通りにいつでも練習が出来るわけではもちろんありません。毎日この海を見ているボートハウス管理人のしんちゃんはとても厳しくて、午後から風が吹きそうな日は一歩も譲らず船を出させてくれません。
たとえ海況がよくても毎回重い機材を積み込み、背筋を鍛えながらロープを結んだりヘトヘトになってやっと潜れる海です。そんな思いまでしても、耳抜きやサイナスの調子が悪ければこの日の私のように-5mしか潜れなかったりもします。
でも、こんな色々な表情があるから
ここに来ると海に対する謙虚な気持ちを忘れずにいられます。
そんな真鶴の海に、とても感謝しています。
ここがホームゲレンデであることは誇りです。
今年もずいぶんお世話になりました。安全に、事故もなく一年間を終えました。
ありがとう真鶴。また来年、よろしくお願いします!
photo by hiroki hori, reiko oda
私のギリシア世界大会はラニヤードを千切られてしまったところで止まっていますが、こちらまだ続くのでしばしお待ちを・・・
さて、今日は、今が旬の『バーチカル・ブルー2013』速報です。
現在、フリーダイバーの聖地と言われるDean’s Blue Hole(ディーンズ・ブルーホール)にてフリーダイビングの世界大会の最高峰のひとつ”Sunnto Vertical Blue2013”が開催されています。世界中の精鋭が集まり11日間に渡ってハイレベルな競技が繰り広げられるこの大会。いよいよ3クール目、最終戦となります。昨年は私も参加しましたが、今年は日本から応援中です。いよいよ大会もクライマックス。手に汗握る展開となってきました〜!
・・・が、例によってサッカーのように生中継が放映されるわけでもなく速報がスポーツニュースで流れるわけでもないため、その状況が非常にわかりずらいのが現状。
この大会はメディアチームがかなりの気合いでSNSやサイトでほぼリアルタイムに速報を出してくれるのですが(昨年はネットラジオで中継)。11日間にわたって一選手が6回出場するため、速報だけだと「全体の流れ」を把握するのがなかなか難しいのです。
「次はどうなの?え、なぜその申告を?」と、断片的な情報にやきもき、遠い日本から勝手な憶測をしている岸壁の母のような状況に陥っているのは私だけではないはず。
少なくとも数人はいるはず・・
・・・いるよね・・?
と、いうわけで。ここで私、ひとはだ脱ぎまして。ここまでの日本選手のリザルトの統計を取り纏めるとともに、今から観戦を始める方もすぐに手に汗握り、応援出来るように独断と偏見によるダイジェスト解説、いきます。
【大会の概要と特徴】
・開催地Dean’s Blue Holeは海況が安定しており、年間通して一定のコンディションで競技が可能。
・ひとりの選手が9日間(レスト含め11日間)のうち6回競技出来る。出場種目はCWT、FIM、CNFのいづれかの深度競技から自由に選択。競技前日に種目と深度を申告する。(これまでの競技結果や前日の体調など様子を見て申告が可能)
・これらの条件に加えて、開催時期が11月であるためシーズン最後にあたり、多くの選手がここに照準をあわせてトレーングを積んでいる。世界記録、ナショナル記録が出易い。
しかし、潜るチャンスが多いため好記録が出易い反面、連日の競技により心身の負担も大きくなります。申告種目や深度など、選手は毎回慎重に戦略を練って提出することになります。また、「中止」は有り得ないはずのブルーホールですが、なんと今回は嵐の影響を受け、安全面から「まさかの競技中止」がありました。その後競技は開催されていますが、透明度・流れなどの影響はあり、ベストな海況ではないようです。(それでも選手達は好記録を出しているので流石!)
【現在の日本人選手の結果一覧】(つい・・作ってしまいました)
VB2013日本選手経過表1116 経過表(PDF66KB)
【日本人選手の見所と解説】
・岡本美鈴選手:
CWTでの日本記録91mに挑戦。今回のVBでは80mオーバーの連続whiteと卓越した安定感を見せているのは流石「世界のMISUZU」。昨年この大会で達成した自身の日本記録90mを超えるベストダイブを期待、そして昨年以上にクリアな「I’m OK!」を聞きたい!(https://www.facebook.com/freedivermisuzu)
・福田朋夏選手:
昨年のVBで日本女子2人目の80mを達成しマルチ種目で活躍する才能抜群のともか選手、今回はノーフィンでの日本記録達成に期待です。ギリシアで惜しくもコンマ1秒以下の差異で逃した日本記録、ブルーホールでの再チャレンジ!(https://www.facebook.com/freedivertomoka)
・米田哲也選手:
初日の92mを見事達成後、小刻みな記録更新をせず、ただただ、目標である100mに向けて、粛々と淡々と集中を高めている様子です。日本人2人目となる100m超えというエポックメイキングな瞬間、リアルタイムで共有しましょう!!
・鈴木克彰選手:
スピアフィッシャー上がりの細身のダイバー。今回早速大物クエを仕留めたという情報も。初の海外戦ながら、もちろん競技も絶好調。いよいよ-50mの大台に、迷彩ウェットで挑みます。
・原哲雄選手:
昨年のVBではオールホワイトでCWT70mを達成した「ミスターホワイト」。この大会のために一年間着々とテクニックを磨き続け、今年もすでに78mまでクリアに達成。9気圧超え達成への期待が高まります。(http://ameblo.jp/direkt/entry-11696256119.html)
・廣瀬花子選手:
プール競技ではダントツの才能で日本記録を更新し続けて来た彼女が、海洋競技でどこまでブレイクするか?前半は耳の調子が悪かったそうですがday6から連日ホワイトで追い上げてきました。この天然ガールは、どこまで行くか全く予測がつきません!(https://www.facebook.com/FreeDiverHANAKO)
・北濱淳子選手:
全種目日本記録更新という経歴を持つ彼女、今回はCWT/FIMとも8気圧え達成に向けて着々と駒を進めています。既に5回のダイブを終えています。ラスト1ダイブでの気圧超え、応援しましょう。(http://www.athleteyell.jp/kitahama_junko/)
・岡本耕輔選手:
美鈴選手の夫でもある耕輔選手は、国内大会ではジャッジや船長など縁の下の力持ち的な活躍が印象的ですが、VBでは昨年大幅な記録更新で大躍進したひとりです。今回は一気に+7mの自己記録更新となる60mダイブへ、2度目の挑戦です!
・飯伏教文選手:
今回初の海外戦に挑戦した飯伏選手。すでに競技を終え帰途についた様子ですが、CWTで見事公式自己記録+10mのPBを達成しています。
と、ざっくり現在の経過と申告からみた選手別解説でした。地球の裏側から、日本選手全員から気迫とも言えるオーラを感じます。
この他世界記録を狙うWilliam Trubridge (豪)やAlexey Molchanov(露)の-120m超え対決など本当にもう凄いことになっているVBですが、今回はもう日本選手だけで胸がいっぱいですので割愛いたします。
【VB関連おすすめブックマーク】
速報(AIDA公式FB)https://www.facebook.com/groups/aida.freediving/
公式/申告&リザルト(VB公式サイト)http://2013.verticalblue.net/results/?action=days
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それではみなさん、今夜23時過ぎから、観戦をお忘れなく!
–>>チャンネルはこちら。今日の競技表(-14時間)と結果速報開いてスタンバイ!
日本との時差が-14時間あるので、完全に昼夜逆転しますので寝不足ご注意です。。
最後に、VB観戦ダイジェスト作成にあたって多大なる協力をしてもらったフリーダイビングマニア米山(自身も選手)に謝辞をお伝えします。笑。
VB2013はこんな感じ。かなり透明度悪いですね・・・イタリア記録101m Davideさんの映像より。
データ集計&分析 by Miyako Yoneyama & Yuki Muto
初日の練習を終えて・・・「さあ昼寝だー!」というわけにはいかず・・この日は
選手登録、イベントコミッティ、開会式と怒濤のようにイベントが続きました。
●選手登録
既に殆どの選手が済ませていた選手登録。私は到着したばかりだったので、練習後にレジストレーションに行きました。診断書、パスポートコピー、誓約書などを渡して、そして恒例の「ラニヤードチェック」。
ラニヤードは競技ロープと選手をつなぐ命綱のようなものです。もし深い深度で選手がロープから離れてしまった場合・・・恐ろしい事故に繋がります。(2年前のカラマタ大会では、こんなことがありました。詳細は北濱選手のブログにて・http://freediving.blog.so-net.ne.jp/2011-10-30)なので、ラニヤードは選手登録時に毎回ジャッジが必ず強度や安全性をチェックすることになっています。
強度チェックは・・・こんな感じで。とてもシンプルな方法で・・・
ジャッジの中でも体格の良い力自慢が・・・
ふんぬーーー!!!
なんと、私のラニヤードは破壊されました。。AIDA公式ラニヤードなのでまさか・・と思っていましたが実は同じラニヤードは皆破れていました。。これはケーブルの製品不良ということでその日のうちにAIDA会長のKIMOが無償交換をして回るという自体になったのですが。まあ海の中で壊れる前に発覚して良かったのですが。
私にとってこれが後日の伏線になるとはつゆ知らず・・・
●イベントコミッティ
イベントコミッティは大会中毎日のように開催されます。運営、事務的な連絡を中心に行われる会合です。通常はコーチやキャプテンが参加し、自国の選手に連絡事項等を伝えるのですが、初日は選手全員集合!という連絡が流れたためとりあえずわらわらと、選手達が集まります。(日本チームとドイツチームは集まりが良いなど。お国柄、出ます。)
がやがや・・一体どこでやるの?
あれ。本当にあるの?
そもそも今日だっけ??
世界大会の基本「イベントコミッティが定刻通りに始まることは決して無い。」の図。
●開会式
ともあれ、レジストレーションとイベントコミッティが終わると、間髪入れず今度は開会式!のはずが・・・
がやがや・・(再)
しかし誰もイラッときたりはしません。15カ国200人以上の選手をオーガナイズするというのはとてつもなく大変なことなのです。競技が安全に行われることが第一なので、みんな陸上ではとても寛大。
とはいえ結局、何かの手違いでバスが来なかったため、ホテルから港まで、延々と歩くことになった時には・・
各国の選手はそれぞれの言葉で「まじかよ・・・」とつぶやいたのです・・(たぶん)
でも夕暮れ時の美しい海沿いの道を延々と歩きながら、色々な国の選手やスタッフがゆったりと話しながらそぞろ歩く、なかなか忘れがたい時間になりました。
カラマタ港に到着するころにはすっかり日が落ちていました。
海岸沿いには昔からある屋外のレストランや食堂がずらりと軒を連ねています。素朴で気取っていないけれど、とんでもなく素敵な港町なのです。
開会式は選手のパレード、カラマタの市長さんの挨拶、地元のフードフェスティバルやブラスバンドも出動。地元の人たちが集まってちょっとした一大イベントとなっていました。
夜中まで続くイベント・・練習以上に疲れ果てました。明日のトレーニングは大丈夫なのかな・・と思いつつホテルの部屋でバタンキュー。(全て恒例)
さあ「祭」らしくなってきました!
photo by Kohei Ishida, Ryuta Nakanishi
さて、カラマタまでやっと辿り着いたところで、だいぶ間が空いてしまいましたが・・
カラマタの海で最初のトレーニング。やっと水に入れる!というところから再開です。
●到着翌朝
ギリシア到着翌日。それほど疲れは感じず、意外にスッキリ目が覚めました。何と言っても、この青空ですからね!
それに私はともかく空腹で、少し早起きして朝食へ。潜る前は何も食べずに胃を空っぽにしておく選手も多いので、朝のダイニングは選手もまばらです。
朝食はもちろんギリシアヨーグルト!2年前の大会ですっかりファンになってしまったのですがこれが毎日食べられるだけでも来た価値ありです。ギリシアの乳製品と蜂蜜のレベルの高さは凄いです。ついでにカロリーも相当高いレベルなので要注意、と日本に帰ってから気がつきましたが・・。
●最初のトレーニングへ
さて、トレーニングはこんな風に時間割が決められています。
この日は殆どの選手がトレーニングに繰り出したようで、朝9時から午後14時まで30分刻みでボートの時間割が決められています。スタッフは本当に大変だと思うのですが選手側は基本的にはかなりノンビリしています。
Elite Resortという海沿いの綺麗なホテルが大会の本部となり、全選手がここに宿泊しています。
ホテルの敷地内のコテージから歩いて数分の目の前のビーチへ。ウェットに着替えて、そこから船に乗って5分ほどであっという間に沖合のポイントへ。
部屋からポイントまで所要数10分!日本の練習の過酷さとのこの違い・・。これに慣れてはいけない、いけない!などと思いつつ・・。
いざ、真っ青なカラマタの海へ。
初日はまずは様子見、-50mを申告して潜りました。
私にとって-50mというのはとてもリラックスしながらも独特の集中にも入れる良い練習深度です。もう何十回潜っているかわからない深度なのですが、飽きることはありません。海況、体調、自分のメンタル、いつでも違った感触が得られるのです。自分の調子を観察するバロメーターにもなります。
今回は長旅の疲れもあるので、どんな調子かな・・と思いつつでしたが面白いくらいに耳がすーっと抜けて、カラマタの海に「久しぶりだね!ようこそ」と言ってもらえた感じがしました。
数日前までのカラマタは「油を流したような穏やかさ」だったそうです。この日からだんだん海が荒れて来て、波は高く、とても穏やかとは言いがたい海況でした。
カラマタの海は荒れる時は荒れ、流れる時は流れ、色も毎日違いとても表情豊かです。バハマのブルーホールのような安定したコンディションではない代わりにとても生き生きした海です。
その点だけは、いつも練習している真鶴とどことなく似ている気がするのです。
それ以外はどこも似ていないのですけれど。(カラマタの海にはフナムシ一匹もいないし、磯の香りもしないし・・)
ともあれ、トレーニングを終えた私はすっかり元気になっていました。不思議に思うことですが、疲れている時に海に入るとその疲れの素が全てが融けて消えていくような気がします。
数日後の本番に備えて、あとはコンディションをキープするだけだ、と良い感触を得たカラマタでのファーストダイブでした。
Photo by Megumi Matsumoto
Ryuta Nakanishi
AIDA Depth World Championships 2013、世界大会が、終わりました。
残念ながら、目標のCWT-60mは達成出来ませんでした。
でも想定外の心境に至りました。
何と言うか、スッキリ燃え尽き心軽やか。
応援し、協力して下さったみなさま、改めて、本当にありがとうございます。
それにしても、2分にも満たないほんの一瞬、ただ潜るためだけに
多大なお金と時間をかけ、数ヶ月にわたり生活の優先順位を変え、
はるばるギリシアまで行って、そして白壁のエーゲ海の島々に渡ることも
遺跡を見ることもなく帰国。
つくづく、「本当ーーーに、モノ好きだよなあ・・・」
と、思います。
海に魅せられた最高のモノ好き達の最高の「祭り」。それがフリーダイビング世界大会。
私の武者修行の集大成、記憶がうすれないうちに、ポツポツと書き始めます。
●カラマタ
2011年に引き続き、今回も海洋競技の世界大会はギリシア・カラマタで開催されました。
「カラマタ」は日本人にはあまり知られていない場所ですが、一部のフリーダイバーとオリーブ通には馴染みのある地名です。ペロポネソス半島の中では2番目に大きな都市で静かな海沿いの町、古くからある素敵なリゾート地です。なんと言っても有名なものは・・・オリーブと、オリーブと、オリーブと・・オリーブ。
フリーダイビングの大会は日本から最低1回は飛行機を乗り継ぎ、20時間以上かけて辿り着くような場所で開催されますが、今回の開催地カラマタもご多分に漏れず、なかなかのロングジャーニー。今回私は2度目のカラマタなので、余裕かと思いきや、結局30時間ほどかけてやっとの思いで辿り着きました・・・
●羽田〜ドバイ
休暇前日、都内を駆け回り怒濤のように過ごした後、羽田にダッシュです。まずはエミレーツ航空の深夜便でドバイへ。飛行機に飛び乗った瞬間の頭の中は99%仕事でいっぱい、ドバイ空港ではちゃんとWiFiが入るだろうか、メールが取れるだろうか、などと心配しながら・・・しかし膝の上のMacbookは一度も開かれることなく、機内爆睡すること約10時間。
そして一瞬で砂漠の国ドバイ到着。空港中に溢れるラクダやツボ。
そして・・もう自分が何を心配していたか忘れていました。そう、忘れっぽい、というのはフリーダイバーの最大の美徳(?)でもあるのです。
●アテネ〜カラマタ
そして再び爆睡してアテネへ。どこでもドアのように何の問題も無く到着しました。しかしここからが遠い道程なのでです。アテネからカラマタまでは飛行機が飛んでいますが、これがとても本数が少なく、この日は確か一日一便のみでした。最短日数で大会に来ている身としては一日でも早く現地に辿り着きたいのでアテネで一泊すると言う選択肢はなく、当日中にカラマタ入り出来る方法として長距離バスをチョイスしました。
というわけで、まずは、空港から片道約1時間かけてキフィスウの長距離バスターミナルへ。日本国内でも長距離バスターミナルというのは私にとっては大抵「わかりにくい」場所なのですが・・
ましてや、ここはギリシア。そもそも文字が読めません。ハンパないアウェー感・・・しかもなんと、乗ろうとしていた1時間後のカラマタ行きバスはまさかの「満席」でした。
次のバスはそのさらに2時間後。
半べそをかきたくなりながら、大荷物と一緒に待合室でひたすら待ちます。前回は数人で移動したのでバスを待つ間も苦にもならず、かなりすんなり辿り着いたのですが、今回はもう殆どの選手が現地入りした後だったのでモノフィンを担いだ人などひとりも見かけませんでした。
ギリシアの演歌のような民謡が流れ、扇風機がぬるい風を運ぶ「昭和」な空間で、「次回カラマタに来ることがあったら・・絶対飛行機で来よう。」と固く決意したのです。東京からの出発便ではなく、カラマタへの到着便から逆算して東京発の便を取る、というのが賢明でしょう。フリーダイバーにとって、いかに遠征の長距離移動で疲労しないか、というのは本当に重要なので・・
やっと来た2時間後のバス、高速に入る手前でウンともすんとも動かなくなりました。
さすがに20分くらい停車したところで窓の外を見ると・・・周囲をパトカーに囲まれています・・
ぎょっとして周囲の人に「いったいどうしたんですか???」と聞いても
「さあ・・・Policeがいるねぇ〜」とノンビリ構え、とりあえずバスの外に出てタバコ等
ゆっくり吸って、談笑してみなさんゆったりと待っていました。
一体何があったのかわかりませんが1時間程停車したあと、何事もなく走り始めました。
本当に何だったんでしょう・・・
ともあれ、このあとバスは順調に走り出しました。夕暮れ時のペロポネソ半島をひたすら西へ、西へ。日本とは全く異なる風土、違う神様がいそうな神話の舞台をひた走りながら、旅情たっぷりの車窓の旅も悪くないなあ・・などと。大会で潜りに来たんだから!体力温存しなくては・・と思いつつ、眠るのも勿体ない程、美しく刻々と変わる風景。もはや自分が何をしに来たのかもわからなってきました・・・
そして4時間後、カラマタに到着。
抜け殻のように疲れ果ててホテルに到着したのはもう22時半過ぎ。
もう皆翌朝の練習に備えて寝静まっているかな・・・と
ヨロヨロチェックインをしていると・・・
「Yuuuuuuu—-ki-iiiiii————!」
よりによって、正真正銘ラテン系フリーダイバーのミゲールと、アプネアアカデミー仲間のパスカルの2人組に遭遇。いきなりハグの嵐でお出迎えしてもらいました。
すぐにはチューニングが合わないハイテンションの洗礼を受け、
「ああ。来たんだなあ、世界大会」
と、しっかりと噛み締めたカラマタ入りの夜でした。
一刻も早く部屋に入って静かに眠りたい・・と思いながら・・。