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今年も「流氷フリーダイビング」の季節がやって参りました。
というわけで行って参りました、遥々世界遺産知床・ウトロまで!
フリーダイバーはそもそもマニアックな人が多いのですが、その中でも特に流氷ダイバーは「トップクラスのモノ好き」です。ここから先はどうぞ、良い子は真似せずへぇーよくやるねぇ・・、というスタンスでお読み下ください。
私は昨年に引き続き2度目のチャレンジとなります。
昨年は女満別空港到着時から終始吹雪いていて日帰りを余儀なくされたのですが、
今年は快晴。青空と、雪の積もった真っ白な大地のコントラストも鮮やかな
ピカピカの世界でした。太陽の力は偉大です!
一面の流氷を見ながら海岸線を快調にドライブ!とはいえ外気温は氷点下。この後のダイブに備えてしっかり唐揚げを食べて防寒対策も万全です。
●いざ、ウトロ港へ
ここは、湾内なのです。何度見ても不思議な光景です。
てくてく、、てくてく。沢山の機材やウェイトを橇に乗せて。
そしてやっと辿り着きました。大会会場の「アイス・ブルーホール」
今回は2つの穴が会場となります。既に氷がはっていたので、掻き出しているところです。
これは前日の写真。積もった雪の上からポイントを見つけ出し、ツルハシとスコップで、穴を掘ります。たいへんな作業なのです。前乗りして作業してくれた皆さん、ありがとう!
さて、これが今回のメンバーです。フリーダイバー7名、スキューバーダイバー3名、カメラマン1名、陸上サポート2名の総勢13名です!去年よりだいぶ仲間が増えています。
皆モノ好きすぎる・・・。
そして何と今年ははるばる台湾からJAYさんも参加!実は彼は昨年秋に「流氷フリーダイビングに参加したいのだけど・・」と密かにメールをくれたのですが。私は全くおススメしないどころかむしろこんな風に脅していました。
「言っておくけど本当にクレイジーな人しか集まらないし、ハッキリ言って極寒で全然楽しくない。だいたい寒いって、どういうことか知ってるの?君これまで潜った最低水温何度?」
などなど。。が、にも関わらず、彼は、やって来ました。本物の雪を見たことすらなかったのに。このために、台湾では全く必要無い分厚い7mmウェットスーツをオーダーメイドし、湯船に氷を張って準備して。
彼もトップクラスのCrazyダイバーですね・・・
さて、いよいよダイブ開始。外気温は0℃〜2℃、無風。水温は-1〜2℃ほど。
「海水が液体でいられるギリギリの温度」です。
●コンスタント・ウェイト(垂直潜水)
今年は2種目を実施。まずは縦に潜るコンスタントウェイト。
昨年と同じく、水深20m程の海底にロープを垂らします。スキューバダイバーが待機する中を順番にフリーダイバーが潜って行きます。
水中は真っ暗、頭を下にして潜行すると・・ほぼ何も見えません。
でも浮上時には・・ぼんやりとした青い光に包まれた不思議な世界。
●ダイナミック(平行潜水)
ほの暗い氷の真下を1つの穴から別の穴へ、平行移動します。通常はプールで行う種目なのでいつでも好きな時に水面に上がることが出来る種目ですが、流氷下のダイナミックは「途中で水面に上がれない」という点が特徴的です。初の試みであったため、距離は20m弱。厳重なセキュリティ体制で実施します。
こんな風にずっと水面近くを移動するため、氷と光の不思議な世界を終始観察しながら泳ぐことが出来ます。
実は私の順番で、少しトラブルがありました。安全上、選手は自分の身体と繋がった「ラニヤードケーブル」という安全綱と水中のロープを繋いで潜水します。が、私が潜水し、もうすぐ出口、という一歩手前で、ラニヤードがたわんだロープに絡まってそれ以上進めなくなってしまったのです。
ラニヤードトラブルは私は通常の練習で何度か経験していたので落ち着いて「クイックリリース」(ラニヤード自体を自分から切り離す)で対処しようとしたところ、、・・・これが何故か外れなかったのです。
氷点下で手がかじかんでいたせいか、または機材の一部が凍って外れにくくなっていたのか不明です。幸いすぐにセーフティダイバーが飛んで来て、無事に外して貰うことが出来ました。
そして何事もなく「アイムOK!」と顔を出すことが出来ましたが・・・ほんの1分にも満たない時間とはいえ、5分にも思える時間でした。
氷点下のダイビングは本当に、通常のダイビングとは大違いだ、ということを改めて肝に銘じた一件でした。ともあれ、これ以外は何事も無く、競技は無事終了しました。
13時すぎから開始して、もう日が傾いてきました。流氷の上に長い影が出来始める中、撤収。
お疲れさまでした!
そのあとは、昨年のように東京にトンボ帰り、ということもなく皆で知床の海の幸を堪能しながら、夜中まで語り合ったのでした。
●知床の森へ
翌日は森に繰り出しました。
森の中をどんどん進みます!
エゾジカにも沢山会いました!
エゾジカの群れの向こうは崖、その向こうは一面の流氷です。
エゾジカに大感動している私たちを見て、ウトロ生まれウトロ育ちのフリーダイバー唯ちゃんは「このへんでは犬より多いんですけどね、エゾジカ・・・」とポツリ。。
●流氷とオホーツクの生態系
今年は、海だけでなく山にも少しだけ行くことが出来ました。そしてこの知床は本当に豊かな豊かな大自然に囲まれているのだなあ、と改めて五感で感じたのです。
海が豊かな場所は陸も豊かです。オホーツク海にやってくる流氷は、酸素やミネラルなど沢山の栄養分を運びます。やがて春になるとそれは海水に溶け出し、プランクトンが増え、それを餌にする小魚が増え、小魚は大きな魚の餌になり、魚は鳥の餌になり・・と食物連鎖を起こします。そして豊かな生態系を育んでいるのです。( 詳しくはこちら:オホーツク流氷振興局)
近年の温暖化で流氷にもだいぶ変化が出ているとのことです。北海道に到達しても氷が僅かであったり、期間が短かったり、 と・・そしてそれは少なからず生態系に影響を与えているとのこと。
流氷と、流氷が育む生態系がいつまでも豊かでありますように。
ともあれ・・今度は緑溢れる夏の知床に来たいと思っています^^)
photo by Tomohiro Noguchi, Tetsuo Hara, Jay huang, Yuko Noguchi , M.Kawamura.