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2013/12/21

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こんばんは、酒井孝祥です。

ジャンクステージ7周年おめでとうございます。

僕が参加させていただいてからはまだ1年ちょっとしか経っておらず、ジャンクステージ7年の歴史からすれば、まだまだ若輩者ですが、今後ともよろしくお願いいたします。

さて、先日のパーティーへ参加する意思表示を行ったところ、担当プロデューサーのS氏より、
「何かやって下さいね。」
というコメントが届きました。

というわけで、日本舞踊「越後獅子」の花道部分を踊ることにしました。

軽快な感じの踊りなので、パーティーで盛り上がっている雰囲気に合っており、花道の踊りだけなら5分もかからずに収まるので、余興でお食事歓談の時間を遮ってしまうのも最小限で済むかと思い、この曲を選びました。

丁度パーティーの前日が日舞のお稽古日だったため、今習っている曲の稽古を一回パスして、この「越後獅子」を稽古していただきます。

そして、師匠から思いもかけないありがたいお言葉をいただきました。

パーティーで「越後獅子」を踊ることを伝えたところ、こちらからお願いしたわけでもないのに、
「それなら太鼓を持っていけば。」
と、お稽古場にある小道具の前太鼓を持ち出すことを許可していただけたのです。

前太鼓とは、お腹の前につける太鼓で、今回踊るところで用いる小道具ですが、それを叩く振りはあっても、別に音を出すわけでもないので、それがある体で踊るつもりでいました。

ところが、思いもよらず、れっきとした小道具を用いて皆様の前で踊れることになり、テンションが上がりました。

パーティー当日、着物に着替える必要があるので、皆が来る前に早めに会場に入るつもりでいました。

ところが、その前の用事が長引いてしまったのと、渋谷駅を降りてから会場に辿り着くまでに散々迷ってしまったため、僕が到着した時点では、既にパーティーは始まり、皆盛り上がっております。

仕方がないので、会場の隅で皆の目線も省みずに堂々と着替えました。

師匠からどういうところで踊るのか尋ねられて、詳しくは分からないけれど、カフェと名のつくところと答えたところ、それならお客様との段差もなくて、椅子に座っているお客様からは、テーブルが遮ることもあって、下の方はあまり目に入らないだろうから、袴はつけずに着流しで良いと言われておりました。

ところが、会場の様子を見たところ、フロア内で段差があったり、座席がほりごたつの様になっていて、下の方も十分目に入る構造だったので、がっつり袴もつけることにしました。

そして、前太鼓をつけるのは人の手を借りないと難しいので、誰かに頼まなければいけないと思っていたところ、丁度日本舞踊を習っているというM氏の姿が目に入ったので、M氏の手を借りて、準備も万端です。

S氏からの紹介の後、曲がスタートして、花道から出るかのごとくに皆の前に飛び出して行きました。

踊り初めて嬉しい誤算に気がついたのですが、会場の床面が板張りだったため、足を踏んだときに、舞台で踊るのとそれほど変わらないくらいに音が鳴りました。

日本舞踊の特徴の一つに、舞台面を踏んで「トン」と音をたてるというものがあるので、それを皆の前で実演出来て良かったです。

プロ写真家の古賀さんにも撮影していただき、ありがとうございました。

終わった後、お客様の中から、
「何か吹いていたんですか?」
と質問がありました。

曲の中に「飯(まま)も炊いたり水仕事」という歌詞があって、その箇所で、釜戸の火を吹く動きがあり、その動きへの質問です。

日本舞踊の振りは、曲の歌詞に当てられているものが多く、歌詞の内容そのままをパントマイムの様に表現することがあります。

前述した、飯を炊いて火を吹く動きの後には、その煙が目に染みて、袖で涙を拭く動きが続きます。

さらに面白いのが、その後で「朝夜」という歌詞が続くのですが、その「あさよる」という音にかけて、「麻をよる」動きが続きます。

日本舞踊において、こういう洒落の様なことはいくらでもあります。

そんなことを解説したところ、皆様が興味深く聞いて下さって、何よりです。

質問されて気がついたのですが、踊りの動きが歌詞に当てられるというのが、我々にとっては当たり前の様な感覚になっておりますが、他のジャンルの踊りでは、ここまであからさまに歌詞通りの動きをすることはあまりないかもしれませんね。

さて、次回のジャンクステージの集まりでは何をしましょうか…?

次回は、「何気ない一言」(古典芸能)をテーマにしたコラムをお届けします。

12:47 | sakai | 7周年記念パーティー! はコメントを受け付けていません
2013/12/07

こんばんは、酒井孝祥です。

酒井が初めて古典芸能を学んだといえるのは、研究生として入った劇団で一番最初に行われた、狂言のレッスンです。

そのとき一番最初に教わったのは、立ち座りの方法でした。

立った状態から正座をする、正座の状態から立ち上がるときに怪我をしない方法です。

一番最初に教わったことは後々まで印象に残っているためか、僕も、人から着物を来たときの動きを教えて欲しいと頼まれたときには、その時のことを思い出して、安全な立ち座りの方法を最初に教えるようにしています。

そして、完全に口移しで先生の台詞回しを真似て反復する、狂言の稽古方法はとても斬新でした。

狂言に限らず、古典芸能の稽古の基本は、師匠の芸をそっくりそのままに真似ることの様です。

理屈云々はさておき、師匠がやったことと全く同じことをやろうと試みます。

よく、演劇の台本を受け取ったら、安易に声に出して読むなと言われます。

その台本に書かれている内容をよく読んで理解しないままに、状況もイメージ出来ないままに口に出したとしても、文字の上っ面をなぞるに過ぎないからです。

ですから、きちんと書かれていることの内容を理解して、初めて声に出す。

ところが、狂言の稽古は全く異なるアプローチでした。

作品のストーリー概要なども説明されないままに、台詞ほぼ一文節づつの口移し稽古が始まります。

耳に入ってくる師匠の言葉を、頭の中で文字に置き換えようとせずに、耳に入ったそのままにリピートすることが求められました。

狂言に限らず、古典のものの稽古においては、長い年月をかけて検証されて完成された形があるのですから、その受け継がれてきたものをそっくり真似ることから始まり、自分の個性などを出そうとするのは先の話です。

初めてのレッスンで習ったのは「魚説教」という作品で、お坊さんになったばかりの元漁師が、お経を唱え様にもよく分からないので、知っている魚の名前をお経の様に連呼していくというものです。

事前情報がないままに、稽古をしながらストーリーの内容を初めて知ることになったので、内容の可笑しさのあまり、レッスン参加者の中より、途中から笑い声も起こりました。

そしてその年に、アマチュアの狂言サークルの発表会で「文蔵」という狂言の中の“語り”の部分をやらせていただきました。

「文蔵」という作品は、大名が家来の太郎冠者に、合戦の物語を語って聞かせる劇中劇の様な要素を含んでいますが、その劇中劇である「石橋山の合戦物語」の部分のみを抜粋して上演するスタイルでした。

“語り”とは言うものの、ただ言葉で物語るだけでなく、身振り手振りで戦の様子を語る、舞の様な要素も含まれており、扇を太刀に見立てて降り下ろしたり、激しく組み合っている様子を身体表現したりと、上手く出来れば凄く格好良い動きがついています。

まだ日舞の稽古でもお扇子を使った踊りを習っていなかったそのとき、扇を手の中に握りこむ様に持っている状態と、親指と手の平で挟む様に持っている状態の判別すらも出来ず、動きを覚えるのに本当に苦労しました。

ある稽古の日、あまりにも出来なくて情けなくて、稽古の後に悔しさのあまりに号泣したことを覚えています。

今ではほとんど狂言と遠ざかってしまっておりますが、事ある度に思い出す、狂言の師の言葉があります。

それは、一番最初の稽古の帰り道で言われたことで、

「人はみなそれぞれに自分の時計を持っている。」

ということでした。

その時計の動き方が早い人もいれば、遅い人もいる。

止まっている時計がいつ動き出すかも分からない。

だから、自分から諦めてその時計を捨てる様なことをするのも勿体ないです。

その想いが、今でも自分の大きな支えになっております。

次回は、「7周年記念パーティー!」(古典芸能)をテーマにしたコラムをお届けします。

11:50 | sakai | 狂言の思い出 はコメントを受け付けていません
2013/11/22

こんばんは、酒井孝祥です。

久しぶりのブライダルの話題です。

めでたく結婚が決まり、式・披露宴をどこの会場で行おうかと考えたとき、まず何をするでしょうか?

きっと、本屋でブライダル情報誌を購入したり、インターネットでウェディング情報のサイトを覗いてみたりするかと思います。

そして、結婚式を挙げる会場の種類があまりにも多くて、面食らってしまうかもしれません。

どの地域で挙げるかによって、だいぶ絞れてくるとはいえ、それでも沢山の会場があります。

さらに候補を絞り込むにあたって、どんなタイプの会場を選ぶことが挙げられるかと思います。

会場の分類の基準には色々あると思いますが、僕は大きく3つに分類出来るかな…と思っております。

以下は、あくまでも僕の分類基準での話ですが、単純に言うと、ホテル・宴会場、ゲストハウス、レストランの3種類です。

■ホテル・宴会場■

ホテルに併設された宴会場。

ホテル(宿泊施設)のない、会館系の宴会場などもこちらに含めます。

結婚披露宴だけではなく、各種パーティーや企業の総会など、一つの部屋が様々な用途に利用されます。

<メリット>

・雰囲気が豪勢で、結婚式場としてだけでなく知名度が高く、他の催しで利用される会場も多いので、その会場を利用することが、ある種のステータスにもなり得る。

・日頃から多くの人が集まる場所なので、アクセスが便利であったり、そのまま宿泊も出来たりで、遠方からのゲストにも親切。

・部屋の数と種類が多いため、数十名から数百名まで、ゲストの人数に対応した部屋を利用出来る。

・同会場の中にレストランが併設されていることが多く、観光目的の施設であることも多いため、結婚後も思い出の場所として訪問出来る。

<デメリット>

・格式ばったところがある分、アットホームな雰囲気は出にくいところがある。

・結婚披露宴以外の多様な目的で用いられ、会場の作り替え作業が頻繁に行われるため、機能性を重視する分、装飾がシンプルになっていることがある。

・ゲストが、別の披露宴の新郎新婦やゲストに遭遇したり、他の目的で来場している一般客ともすれ違うことがある。

■ゲストハウス■

ゲストを二人の邸宅に招いたかの様な雰囲気のアットホームな会場で、会場によっては、ガーデンパーティーも出来る。

基本的に結婚式専用の会場なので、平日に一般の宴会が行われることはほとんどない。

邸宅をコンセプトにしていなくとも、ほぼ土日祝日にしか稼働しない結婚式専用の会場であれば、雰囲気は近いので、こちらに含めます。

<メリット>

・結婚式、結婚披露宴を行うことのみを目的とした会場であり、それに特化した装飾もなされ、非日常的な雰囲気が味わえる。

・演出やアイテムのバリエーションが多く、オリジナル性を出すことが出来る。

・ゲストが建物内で非関係者と遭遇することがほとんどなく、二人だけのためにお招きした様な雰囲気を出すことが出来る。

・会場および会場専属の提携会社に、ほぼ一通りのことを任せやすい。

<デメリット>

・小さい部屋が多いため、ゲストの人数が多いと、かなり窮屈になることがある。

・建物内の導線が複雑で移動が多かったりすることもあったり、一昔前の披露宴と雰囲気が違ったりで、ご年配のゲストなどに喜ばれない要素もある。

・レストランなどが併設されている会場もあるものの、基本的には、披露宴の後、思い出の場所として中まで入るのは難しい。

■レストラン■

レストランを貸し切りで披露宴を行う。

式を別の場所で済ませて移動することもあれば、店舗の中にチャペルに見立てたスペースをつくることもある。

<メリット>

・平常は食事を目的としている会場であるため、料理のクオリティは高い。

・ホテルやゲストハウスに比べると、費用はかなり安い。
少人数ウェディングに適している。

・ゲストとの距離が近く、食事を取りながらの歓談を楽しむことが出来る。
ホテルやゲストハウスの場合、新郎新婦はほとんど料理に手をつけられないことも多い。

・後々も、記念日等に訪れやすい場所である。

<デメリット>

・演出のバリエーションが少ない。

・結婚式場であれば、普通は用意されていると思われるものが、備わっていないこともある。

・自分達で手配、準備しなければならないことが多い。

こんな風に、それぞれに特徴がありますので、自分達の理想に合わせたタイプの会場に的を絞ってみるのも良いかもしれません。

次回は、「狂言の思い出」(古典芸能)をテーマにしたコラムをお届けします。

10:49 | sakai | ☆結婚式場の選び方 はコメントを受け付けていません
2013/11/19

こんばんは、酒井孝祥です。

最近、急激に寒くなってきました。

寒くなってくると、夜中に拍子木をチョンチョンと叩きながら、「火の用心」と声を張り上げるのを耳にすることがあると思います。

囲炉裏も火鉢もなく、エアコンやファンヒーターで暖を取り、オール電化の住戸ともなれば、煙草とバースデーケーキくらいしか部屋で火器を使う機会のない昨今において、火の用心とはいいながらも、

「一体何をどう用心したらよいのか…?」

という疑問も残りますが、江戸から続く風物を、博物館などに行ったわけでもないのに、現代でも体感出来るのは、なかなか貴重なことではないでしょうか?

現代でも風習が残っているおかげで、浄瑠璃などで、

「火の用心~さっしゃりましょう~」

という文句が聞こえてきたら、その場面は夜遅い時間なのだとすぐにイメージが沸きます。

さて、今回の話題は、火の用心のことではなく、そのときに叩かれる木のことです。

この拍子木の音は、歌舞伎や文楽が上演される劇場や寄席、日本舞踊や邦楽演奏の会などで、よく耳にします。

相撲の興行などでも耳にしますね。

古典ではあっても、能や狂言などが行われる能舞台では、基本的には耳にしません。

この拍子木を、楽器のカテゴリーの中に含めるとすれば、2本の木を打ち合わせるだけで、特別音階などもなく、非常にシンプルなものです。

しかし、簡単そうに思って実際に打ってみると、なかなか良い音が出ないもので、上手くいかなかったときの乾いたような音は、なかなか虚しいものです。

気持ち良く響く音を出すには、それなりの技術が必要です。

歌舞伎などの公演で劇場を訪れて、1つの演目の上演時間が近くなると、一定間隔を置いて、拍子木の音が、チョンと1回づつ鳴らされます。

これを「回し」などと呼びますが、この木の音が聞こえてきたら、上演開始が近付いているということです。

そろそろ座席に戻らなければならないという合図です。

そして、いよいよ幕が開き出すと、それに合わせて、チョン、チョン、チョンチョンチョンチョン…と木の音が細かく刻まれていきます。

木の音の刻みが速くなっていくのに合わせるかのように、お客は徐々にその舞台に引き込まれていきます。

幕の開ききりと同時に、締めでチョンと一本鳴ったら、そこはもう、先ほどまでのざわざわした客席とは別次元の空間に変わっております。

拍子木の音は、単に上演開始をアナウンスするツールにとどまらず、お客を現実世界からお芝居の中へと引き込んでいく調べともなります。

そして、劇中でも、拍子木に近い形状の2本の木が、演出効果として使用されることがあります。

ツケと呼ばれるのですが、2本の木を、舞台面に置いた木の板に打ち付けます。

バタバタと音を鳴らして役者が走る様子を表現したり、見得でポーズを決めるときにアクセントになるような音を鳴らします。

拍子木を打つ人は、お客から見えない舞台袖などで打ちますが、ツケを打つ人は、敢えてなのか、お客からはっきり見える、舞台の上手(客席から見て右側)の手前で打ちます。

ツケを打つには、役者の芝居の呼吸が分かっていないと無理で、役者の様子をじっと見ながらツケを打つ姿は、まさに職人の姿です。

作品によっては、舞台の一番のクライマックスのシーンで、役者がポーズを決めた瞬間に、チョンと一本、拍子木が鳴らされ、その瞬間が際立てられることがあります。

そして、幕が閉まるときには、最初と同じ様にチョンチョン…と刻まれていき、幕が閉まりきると同時に鳴らされるチョンで、お客は再び現実世界に戻って来るのです。

この木の音には、お客の心を動かす魔力があるかのようです。

次回は、「結婚式場の選び方」(ブライダル)をテーマにしたコラムをお届けします。

10:33 | sakai | 木 はコメントを受け付けていません
2013/10/28

こんばんは、酒井孝祥です。

いきなり余談から始まりますが、酒井がこのジャンクステージの連載コラムの中で、一番楽しみにしているのは、笠原さんの「風嬢だって人である。」です。

笠原さんのコラムが更新されたら必ず読みます。

そして、内容に共感出来たり、目からウロコのような気持ちになることが一番多いのは、北沢さんの「声の力」です。

酒井はもともと、古典芸能や演劇などとは縁がなく、ひたすら声優に憧れていました。

だから声優として仕事をされている北沢さんは羨ましい存在でもあり、北沢さんのコラムを読んでいると、自分も同じことを考えたと思ったり、自分も知っているつもりであったことが、そういう解釈も出来るのかと驚かされることがあります。

今回のテーマは、そんな声優さんと、古典芸能との意外な(…と言う程でもないかもしれませんが)関係です。

本当なら、声優さんの実名を挙げて語りたいところなのですが、そうすると色々問題が出てくるかと思いますので、イニシャルを使わせていただきます。

さて、Wさんというベテランの声優さんがいます。

この声優さんは、台詞の節回しにとても特徴のある方で、言葉の語尾の伸ばし方などが独特です。

ある作品で、Wさんの声が機械を通して音声変換されたことがありますが、たとえ音声が変えられたとしても、それを喋っているのがWさんだと分かるほどに特徴的です。

同じ節回しを用いながらも、全く違う役を演じわけてしまうことは感動的ですらあります。

Wさんのこと自体はずっと昔から知っていましたが、自分が古典芸能に触れるようになってから、Wさんの台詞が歌舞伎の台詞の様に思えるようになりました。

古典的な歌舞伎の台詞そのものとは異なるため、古典でないお芝居の中に違和感なく溶け込んでいますが、語尾の伸ばし方、間の詰め方、息遣い、強弱のつけ方に、歌舞伎の台詞回しと同じ様な印象を受けるのです。

気になってWさんのことをネットで調べてみたところ、案の定、歌舞伎や能などの古典芸能を参考にしていたとのことで、一番ベースになっているのは浪曲の様でした。

それを知って、なるほど確かに浪曲だと思いました。

Wさんを一例としてまず挙げさせていただきましたが、酒井が気が付いた声優と古典芸能との関係というのは、“ベテランの声優さんに、日本の古典芸能に学ばれている方が多い”ということです。

酒井は昔、劇団のレッスンで狂言を習っていて、素人で狂言を習う人達の発表会に2度ほど参加させていただいたことがあります。

その後、かつて自分が出ていたその狂言発表会をお客として見に行ったことがあるのですが、そのプラグラムを見て驚きました。

素人の出演者の中に、ベテラン声優のCさんの名前が入っていたのです。

そう言えば、大御所声優のKさんも、同じ流派の狂言を習っていたと聞いたような…

他にも、渋い声が印象的なGさんは若い頃から謡曲を続けられていたり、女性声優のSさんやAさんの様に、講談師としても活躍する声優さんもいます。

テレビの顔出しでも大活躍しているYさんは、大学の落語研究会出身です。

考えてみれば、落語や浪曲、講談などは、一人の演者が声だけで何役も演じ分けて一つの作品を作っているのですから、声の表現力としてかなり高度なものが必要です。

人形浄瑠璃の浄瑠璃などは、人形の動きに合わせて言葉を喋るのですから、アテレコに近いものがあります。

古典芸能においては、日本語の語感による声の表現方法が長い年月をかけて研鑽されてきたのですから、それに学ぶことは、声優の演技にもきっと有効なのだと思います。

次回は、「木」(古典芸能)をテーマにしたコラムをお届けします。

11:14 | sakai | 声優と古典芸能 はコメントを受け付けていません
2013/10/28

こんばんは、酒井孝祥です。

山梨公演も終盤に入ったとき、共演者から何気なくこんなことを尋ねられました。

「今回の公演で楽しかったことは何か?」

しかし、その問いに対し、とっさには答えが出てきませんでした。

ようやく出てきた答えは、“東京公演の雨天会場での実施日の前説”でした。

物凄くギリギリな状況で本番を迎えようとする中、また、折角野外での公演を楽しみにしてきたのに残念な想いをしているかもしれないお客様がいる中で、努めて明るい表情で、出演者として一番最初にお客様の前に姿を現しました。

“野外にも劣らないクオリティの公演を届ける”という気持ちをを伝えたいという意志を持って出て行ったときに、客席から温かく迎えられた瞬間は、とても幸せなものでした。

しかしながら当然、

「前説じゃなくて、本編では何もないのか?」

というツッコミが返ってきます。

けれど、思い返してみても、こうやりたかったのに出来なかったという反省点や、あまりにも大変過ぎて、それをやり遂げることだけで頭がいっぱいだったことばかりです。

あまりもの不甲斐なさに、自己否定的な気持ちに支配されてしまったことも少なくありません。

もちろん、作品を観ていただいたお客様のほとんどには大喜びしていただいており、それは提供した側にとってもこの上なく喜ばしいことです。

しかし、自分は出演者の一人としてこの舞台に立つことを楽しめていたのかと問われれば、楽しむことは出来なかったとしか答えられません。

そうなると、散々な苦労をして、多くの時間を費やし、チケット販売の負担を負ってまで、なぜこの公演に参加したのか分からなくなってきます。

しかし、逆説的に考えてみて、この「今昔舞踊劇」のという公演の存在を知っていながら、何らかの事情でそれに出ることが出来なかったら、もどかしくて仕方のない自分が想像されます。

成さないで悶々としていたことを思えば、成し遂げたことは、何と価値のあることでしょう。

果たして、酒井にとってこの公演に出たことは何であったのだろうか…?

ふとこのコラムの画面を見ていたら、酒井の肩書きである“古典芸能修行中”の文字が目に入ってきました。

そして気が付きました。

そうか、酒井にとってこの「今昔舞踊劇」とは修行であったのだと。

そして酒井の修行はまだまだ続きます。

恐らく一生続くでしょう。

そんな締めで、“今昔舞踊劇への道”の連載を一旦終了させていただきます。

お読みいただきました皆様、本当にありがとうございました!

次回は、「声優と古典芸能」(古典芸能)をテーマにしたコラムをお届けします。

07:50 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その29 修行 はコメントを受け付けていません
2013/10/25

こんばんは、酒井孝祥です。

終演から既に日数が経過しておりますが、今昔舞踊劇の山梨公演にも無事に幕を降ろすことが出来ました。

ご観劇いただきました皆様、ご尽力いただきました皆様、本当にありがとうございました。

本番初日の前日に東京から山梨に車で移動しましたが、とても良い天気で、途中の談合坂の空は青く澄んでいました。

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お昼過ぎには公演会場であるお寺に到着し、ご挨拶を済ませたら、まずは必要機材や舞台装置の材料などの搬入です。

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東京公演の様に、専用の野外ステージがあるわけではなく、お寺の本堂の中で公演を行うため、昼間は一般のお客様が拝観に来ます。

そのため、本格的な舞台仕込みが出来るのは拝観客がいなくなる夕方以降で、1公演終る度にまたもとの状態に戻すことの繰り返しです。

なかなか大変な作業ではありますが、1700年代に建てられ、重要文化財としての認定も受けたお寺の中でお芝居をすることが出来るとは、なんと贅沢なことでしょう。

歴史の刻まれた木の床に柱、鳴き竜も響く天井、そして外に通じる鉄製の大きな扉。

それらを舞台空間の一部として利用し、野外で行われた東京公演とはまた異なる趣となります。

初日の前日に大道具の作成や場当たり等を行い、初日は昼間に稽古が入りますが、その翌日からの我々の一日の流れはだいたいパターン化しております。

午前中は自由時間のため、ホテルで朝食を食べた後、観光に行ったりします。

そして、お昼過ぎにお寺に着いたら、本堂の外回りの仕込みなどから開始します。

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途中、アイスを食べて一休みします。

お寺近くの売店で、山梨名物の信玄アイスや巨峰のソフトクリームを購入出来ます。

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最初の段階の仕込みが一段落したら、お寺近くのうどん屋で腹ごしらえです。

山梨の郷土料理である“吉田のうどん”で、尋常でなくコシがあって、ボリューム満点です。

夕方の段階で、これを食べると夜遅くまで腹持ちします。

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しかし残念ながら、今年はうどん屋のお休みが公演期間と重なってしまい、あまり食べられませんでした。

腹ごしらえを済ませた頃には、拝観客もほとんどいなくなっているので、本堂内のお賽銭箱やら何やらを隅に移動させてスペースを確保し、客席作りや音響・照明の仕込みにかかります。

小道具達もスタンバイします。

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暗くなると、昼間仕込んだ外回りの装飾が良い雰囲気を出してきます。

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そしていよいよ本番を迎え、それが終了したら、本堂を昼間と同じ状態にまで戻します。

言ってみれば、仕込みとバラシを公演期間中、毎日行うようなものです。

劇場でやる普通の公演だったら、小屋入りの日と最終日に1回づつで済む作業が毎日あるのはハードですが、それでも、野外で行った東京公演に比べるとだいぶ楽です。

そして、バラシが終ったら、公演のスポンサーにもなって下さっている温泉処へ向かいます。

参加者にとって、山梨公演の最大の魅力は、ハードな一日の締めで、毎日温泉に浸かれることかもしれません。

04:04 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その28 一日 はコメントを受け付けていません
2013/10/02

こんばんは、酒井孝祥です。
今昔舞踊劇の東京公演は無事終了しましたが、次は山梨公演です。

演目は東京公演と何作品か入れ替わります。
ご興味ございましたら、酒井宛sakai.taka2013◆gmail.com(◆を@に変えて下さい)までご連絡下さい。

☆今昔舞踊劇「怪」其の九☆

◆作・演出:佐藤 伸之

◆出演:
佐藤 伸之
秋場 千鶴子
伊藤 貴子
荒井 典子
佐々木 夕里干
成田 みわ子
かなや たけゆき
北原 マヤ
太田 亜希
伊東 武志
竹中 美月
藤本 しの
河野 晴美
酒井 孝祥

◆パーカッション演奏:
大石 智紀

【日時】
2013年10月11日(金)~14日(月祝)
19:00開演
(18:00受付開始/18:30開場)

【会場】
山梨県 甲斐善光寺 金堂
(山梨県甲府市善光寺3-36-1)

【交通】※新宿から

●電車:約1時間40分

JR新宿駅
→中央線特急利用(約90分)
→JR甲府駅
→身延線orタクシー(約10分)
→善光寺

※JR中央線 酒折駅から徒歩も可

●高速バス:約2時間20分

新宿バスターミナル
→JR甲府駅バスターミナル(約130分)
→タクシー(約10分)
→善光寺

●自動車:約1時間50分

新宿
→中央道(約90分)
→甲府南I.C(約20分)
→善光寺

【料金】
一般:前売2500円/当日2800円
小中学生:前売1200円/1500円
(未就学児童無料、乳幼児不可)

【公演概要】
「今昔物語集」「宇治捨遺物語集」「御伽草子」等の収録作や、日本各地の民話・伝承から想を得て、身の毛もよだつ恐ろしい怪談話から、お腹を抱えて大笑いする笑い話まで、現代人の心に通じる古典作品の数々を、オムニバス形式で上演します。

パーカッションの生演奏をバックに、日本舞踊と殺陣、そしてイリュージョンの演出が盛り込まれ、早替えに次ぐ早替えにも定評のある、大人から子どもまで楽しめるエンターテインメント作品です。

そして演じる舞台は、国宝級の仏像も安置される甲斐善光寺の金堂。
天井では鳴き竜の声も響きます。

例年大好評をいただき、地元の方達にも毎年親子連れでお越しいただいております。
本年で9年連続上演です。

11:05 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その27 山梨 はコメントを受け付けていません
2013/10/02

こんばんは、酒井孝祥です。

今年の今昔舞踊劇東京公演の千秋楽は、まさに台風直撃の日でした。

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しかし、昼間のうちに通過して、夕方以降は晴れるという予報でしたので、我々は、台風通過後に舞台を復旧させて野外舞台で上演するという算段で千秋楽に臨みました。

何か先行して出来ることがないかと思い、当日は早めに舞台の様子を見に行きましたが、あまりにも風が強く、結局何も出来ることがありませんでした。

客席となるパイプ椅子を並べるだけでも先にやっておけば、後が楽になる…と思ったのですが、近くの木の枝が折れていたほどに、想像以上に風が強く、そんなことをしたら椅子が飛ばされてしまう様な状況でした。

周囲の木々が強風で大きく揺れ動き、まるで、「マクベス」で言うところの、バーナムの森が攻めてくるかの様な光景です。

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早く来ても何も出来なかったので、結局、神社内の博物館で時間を潰しました。

全員の集合時間になっても、風が収まらない限りは何も出来ることがなかったので、しばらくは待機。

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暴風が去ったタイミングで、昨日潰したテントの建て直しや、破損部分の復旧作業、そして何より、ブルーシートで覆っていてもずぶ濡れになってしまった舞台を雑巾やモップなどで徹底的に拭き取るという作業に時間を取られます。

またしても、ギリギリまで会場準備が行われての客入れ→本番。

連日蒸し暑い中での公演でしたが、千秋楽に関しては、台風の後で風も強く、少し寒いというお客様もいらっしゃいました。

舞台上で動きまわっている我々にとっては丁度良いくらいの涼しさでしたが、あまりにも風が強かったために、道具が倒れたり、布が流れたりで大変でした。

ともあれ、今昔舞踊劇の東京公演は、一人の怪我人を出すこともなく、無事に終了いたしました。

初めてご覧いただいたお客様のほとんどから、

「こんな舞台これまでに見たことがない。」
「ここまで面白いとは思わなかった。」

という感想を沢山いただきました。

何よりも僕が驚いたのは、僕の個人的なお客様で、全国で演劇のWSを行うことなどを生業とし、海外で演出の勉強をされたことがある様な人がいるのですが、その人にこの公演のことを大絶賛されたことです。

一番手厳しい評価をいただくかと思っていたお客様から、

「ここまで純粋に演劇を楽しめたのは久し振りです。」

とまで言われました。

なかなか大変な状況の中での東京公演でしたが、自分達のやったことに間違いはなかった…と思わされるほどの好評価に、これまでの苦労が報われました。

お越しいただきました皆様、本当にありがとうございました!

それから、千秋楽のその日、ジャンクステージから、優さんとジャン子さんにご来場いただきました。

そのときの感想をジャン子の部屋にも書いていただいておりますので、併せてご覧下さい。

ジャン子さんからはお花もいただきまして、ありがとうございます!

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10:53 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その26 台風 はコメントを受け付けていません
2013/09/26

こんばんは、酒井孝祥です。

今回の今昔舞踊劇東京公演の中で一番きつかった日は、本番4日目だったと思います。

野外公演にとっての最大の敵は天候です。

当然ながら、雨の日に野外ステージは使用出来ません。

なんともタイミングが悪いことに、本番期間の真最中に台風が迫っているというではありませんか。

暴風雨が最も激しくなるのは、4日目の深夜から5日目の昼間にかけてという予報。

それに伴い、4日目はほぼ一日雨マークがついていました。

その日の朝目を覚ますと、そとは雨でした。

今日は野外舞台の使用は無理だと腹をくくり、頭の中で屋内会場のシミュレーションをしながら会場に向かいました。

ところが、会場に到着したあたりから、空が晴れてきました。

見た感じ、野外でいけそうな雰囲気です。

しかし、天気予報の数値データ上、突然雨が降ってくる可能性は否定出来ません。

その時点において、屋内の会場は、数日前に1回、探り探りで通し稽古をした以外に使用しておらず、はっきり言って要領が掴みきれていない状態だあったため、その日は、屋内会場での段取りを再確認するための場当たり稽古から始まりました。

同じ作品であっても、舞台の構造が全く違うため、出ハケの段取りや小道具の置き場などがだいぶ変わってくるのです。

その稽古時間も決して十分に取れるものではなく、かなりの早回しで進められました。

場当たり稽古が終わったその段階では、空は晴れていましたが、まだ最終ジャッジは出来ませんでした。

ですから、どちらの会場でもいけるように、ダブルスタンバイをしなければなりません。

雨が降る心配が全くない天候であったり、逆にどうにもならないほどの大雨であれば、その時点で、衣装・小道具・楽器等をいずれかの会場にスタンバイしておき、本番までの時間はゆっくりとメイクなどの諸準備に費やせます。

しかし、その日に限っては、最終決断が下されない限り、それらの搬入が一切始められない状態でした。

急な雨の可能性が否定出来ず、屋内会場で実施するという決断が下されたのは、本番開始の2時間前です。

そこからが大騒ぎです。

衣装・小道具・楽器などを全て搬入することと同時に、雨から野外舞台を守るために、舞台全体をブルーシートで覆う作業、そして、台風で飛ばされることを防ぐために楽屋や受付として設置されたテントを潰す作業なども並行して実施されました。

女子の出演者の中には、メイクに時間がかかる人もいるので、その作業から途中離脱してスタンバイを開始します。

そして、慌ただしい状況の中、屋内会場への客入れが始まりました。

今回の公演、野外舞台を楽しみに来て下さった方達が圧倒的多数かと思います。

我々の想いは一つ…そのお客様達に対し、野外舞台に劣らないクオリティの公演をお届けするということです。

前説のアナウンスのときに気が付いたのですが、自分の声がよく響きます。

そりゃそうです、野外と違い、周りに壁や天井があるのですから。

当たり前のことですが、屋内会場のメリットとして、野外よりも役者の台詞が聞き取りやすく、その分お客様が芝居に入り込みやすいということに気が付きました。

特に怪談などでの静かな場面においては、虫の鳴き声もないために、本当にシーンとなります。

それに、鑑賞中に虫や風に悩まされることもなく、気温も快適です。

僕のお客様の中で、昨年は屋内の会場で鑑賞して、今年は野外の会場で鑑賞した方がいらっしゃいますが、「中の会場の雰囲気も結構好きだったよ」と仰っていました。

我々が一番お見せしたかったのは野外舞台での公演でしたが、それにも決してひけを取らない、一味違ったものをお届け出来たのではないでしょうか。

09:11 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その25 屋内 はコメントを受け付けていません

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