私の先生が日本に帰った次の日の話です。
『来週から授業開始です』と授業のスケジュール表をもらいました。
すでに私が担当する科目が決まっている上に、スケジュールをもらった時はすでに金曜日。
おっつ!
優雅にコーヒーなんて飲んでる場合じゃないと慌てて準備を開始します。
しかし、もうここに来て1年。
大体の雰囲気掴んでるわっ、舐めんなよっ、ばりの勢いでまずは紙とペンを取り出します。
『私が受け持つ全授業は24日の週から開始します。時間厳守。』
つまり、スケジュールをもらって2週間の余裕が出来たことになるんです(笑)
以前のコラムにも書きましたが、先生が突然知らされる=生徒に情報がいっていない、なのです。
非常に残念です。
実際にまだ帰省している生徒も多く、この事は先生方も周知しています。
私は生徒全員に来てほしいので、情報を掲示します。
そして肝心の24日からの週。
掲示した情報の効果か、全授業でほとんどの生徒が初日から参加してくれました。
参加して“くれました”というのも違う気がしますが(笑)
他の先生方はすでに開始されているので、どうしているかとも思いますが…
初回の授業では、全科目共通の私の授業ならではのルールの説明と各授業の目的・内容を説明します。
ルールと言っても当たり前の事しかないんです。
1.遅刻・欠席しない(合計5回で期末テストを受ける資格なし)
2.筆記用具を持ってくる(ノートを取る習慣がない)
3.辞書持参(理学部長命により英語で授業するため)
これだけ守ってくれたら言う事なしです。
こちらの大学では授業の単位によって授業時間が決まっています。
長い授業は150分と日本の90分授業に比べて気が遠くなります。
ですので、日本のようにチャイムがないのです。
そして教室に時計もない。
以前から設置をお願いしていましたが、もう半年以上経ったので業を煮やしてしまい自ら購入・設置。
そして今回の授業はもう固いこと抜きでいこうと決めました。
ガチガチの数学などを取り込んだ内容ではなく、実験をたくさんやって外に出て生徒にダイレクトに身に付く授業。
これが目標です。
そしたら、何と嬉しいことでしょう。
授業を登録していなかった生徒が情報を聞いて“参加したい”と言ってきてくれるではないですか。
非常に嬉しいです。
そして『地質学科英語学習チーム』までも誕生したらしいのです。
ありがとう、皆!
切磋琢磨し、新しい学期を盛り上げていきたいと思います。
17日から22日まで、卒業式ウィークでした。
『卒業式・入学式=桜の季節』のイメージは日本だけですね。
やはり、私には4月始まり3月終了の感覚が抜けておらず、少し変な気持ちで卒業式を迎えました。
卒業生はそれぞれ最高のオシャレをして登場。
晴れ晴れとした顔で、誇らしさすら感じました。
たくさんのご家族も同席しており、会場は華やかさ一色。
先生方も皆さんお揃いの色の洋服・デザインでこの日のために用意したとか。
すでにカラオケも開始されていて、ステージ上ではダンスのパフォーマンスも!
私の大学ではこのようなパーティー形式の卒業式はありませんでした。
日本なら大体同じだとは思いますが…
あったとしても、式終了後の謝恩会くらい。
各式典で、全員の学科内での順位を発表します。
席順は順位順になっていて、誰が首席なのか一目瞭然。
学科を越えた各学部での上位10名も発表されます。
数学科から何人入った、など先生方の盛り上がりもひとしお。
私が所属する地質学科は第一期生が来年卒業なのでこの輪には加われず。
でも、ひそかに上位10名に1人でも!と競争心を燃やしてみたりしました(笑)
1人1人に卒業証書やトロフィー・メダルが授与されます。
約2500人全員に!
ゴロンタロ大学ではこのお祝いムードが1週間も続きます。
大学全体・学部別・学科別・個人などなど…
大学全体の場合は場所の都合上3回に分けて行われます。
学部・学科もホテルや結婚式場を借りて行う。
ゴロンタロの方はお祝い事が大好きです。
何かあればすぐにカラオケ、そしてパーティー。
大学を卒業出来るということは大変名誉なことです。
でずか、私にはやはり何回もパーティーを開催する“意味”が見出せません。
新学期の授業も始まっているので、回数が増えるごとに私のイライラも比例の一途です。
各式典・パーティーが終わるたびにゴロンタロ大学の学長や各学部長が私に尋ねます。
『盛大な式典を何回も開催出来てすごいだろう』と。
この質問はさらに私のイライラを加速させます。
大学全体の式典時には、愛想よく返事していました。
しかし、最後の方になってくるとチクッと言ってやりたい衝動に駆られてしまいました。
『何回もパーティーが開けるなら、そのお金で教科書を買って下さい、その時間で授業させて下さい』と。
今は大人気ない発言だったと反省しています。
もっと、柔軟に生きていけないかと反省した一週間でした。
マナドに引き続き先生とのフィールドは鉱山です。
以前、お伝えした医療地質学のためです。
『エリン・ブロコビッチ』という映画をご存知でしょうか?
2000年にアメリカでジュリア・ロバーツ主演で制作された映画です。
この映画の中で、実際に工場周辺の水を採取したり、蛙の 死骸を拾ったりするシーンがあります。
今回訪問した鉱山で、蛙がため池の中で死んでいる姿を発見したのです。
この瞬間、ジュリア・ロバーツが蛙を採取しているシーンが頭をよぎりました。
初めに、鉱山がある北ゴロンタロ県の県長さんにご挨拶します。
※インドネシアにおける県とは、日本で言う市のこと。
そして、研究内容などを説明。
県として、鉱山周辺の水質調査を行っていることが分かった。
しかし、その結果から何を行っているという具体的な策などはないようで、県としても非常に困っているということも分かった。
鉱山には職員の方も同行したいただき、いつも通りの試料採取。
土壌・植物・人毛(髪の毛) に加え、鶏の羽や稲、水も採取します。
今回もお医者さんに同行していただいたので、労働者の健康状態のチェックも行います。
さらには、鉱山周辺にあるという浄水場の見学も行いました。
鉱山周辺の川の水も一緒に処理をしていることが分かりました。
WHOの定める飲料水の基準値を大きく上回る結果が得られているそうで、私たちも水を採取します。
二カ所目の鉱山を訪れた際、私の先生がポツリと言いました。
“この現状は今まで見たこともない状況だ”と。
私はゴロンタロの状況しか知らなかったので、この現実が普通なんだと思っていました。
しかし、そうですよね。
“普通”なはずはありません。
鉱山で働いている人は悪くない。
生活しないといけないから。
家族もいる。
もちろん、資源はなくなります。
しかし、ここで金が取れなくなったら次を探すだけだ、と人々は言います。
何か方法を見つけなければ、何世代にもわたり続いていく。
だからこそ、私たちがいるのではないかと私は強く感じました。
研究は論文を書くだけではない。
もちろん、発表することは大切です。
しかし、それをどのように伝えていくか、が鍵だと思います。
今回の調査で採取したすべての試料は日本で分析されます。
分析結果から何が分かったのかを、直接政府や住民の方に伝える。
来年はまた各地の鉱山に戻り、小さくてもいいのでセミナーを開催したいと考えています。
水処理をせずに排水を流すことの恐ろしさ。
どのように今の状況をよくするか。
この子供たちが、今よりもいい環境で働けるように・・・
今回の滞在は以前もお伝えしたように、フィールドが中心です。
と言う、フィールドだけです(笑)
前回の記事の最後に“虫や虫や虫や食べ物に気を付ける”と宣言しましたが…
植物を忘れておりました。
両腕に大量のできものが!
私より背の高い草をかき分けた時に、きっと負けてしまったのですね。
さて、マナドとは、ゴロンタロ州の東隣の州・北スラウェシ州の州都です。
ゴロンタロ州は北スラウェシ州の一部でしたが、2000年に独立しました。
マナドはスラウェシ島の中で2番目に大きな都市です。
ダイビングスポットとしても有名で、たくさんのダイバーが訪れる場所です。
インドネシアでは珍しく、人口の70%がキリスト教です。
私にとって興味があることと言えば、現在も活動している火山が北スラウェシ州だけでも10以上あること。
そして、数年前にシーラカンスが発見された場所ということです。
ゴロンタロからマナドまで休憩を含め、車で10時間の道のり。
突然、教会が増えてきたので“州をまたいだな~”とすぐに分かるほどです。
ゴロンタロでは、日本でのコンビニ並みにモスクがありますが、北スラウェシ州ではコンビニ並みに教会でした。
宗教が違うと、すべてが違います。
まず、屋台にビールなどのアルコール類が置いてある、
豚肉や犬肉を用いた料理がある、
学生(小・中・高)の制服の色がシャレオツである、などなど。
やはり1番目を引いたのは、女性の服装でした。
ノースリーブにミニスカート。
上記した制服も、ノースリーブではないですが、スカート丈は膝でしたし爽やかな紫や緑、青色です。
ついつい、“足、隠してっ!”と思ってしまったほどです。
今回のフィールドが1人ならば、優雅(?)に豚肉をつまみにビールでも…と思っていましたが、ゴロンタロ大学の先生も同行されていましたし、ドライバーさんもムスリムだったので、なかなか思ったようにはいきません(笑)
大変だったことは、毎回食事が出来るレストランを探さなければいけないということでした。
レストランはたくさんあります。
しかし、イスラム教の方が口にできるハラール(ハラル)食品を用いてない店が多いのです。
ゴロンタロであれば、店頭に表記していなくてもすべてのレストランがハラールです。
しかしマナドでは、“あえて”表記しているのです。
ご飯の時間になる頃には、この表記があるお店を探すのです。
レストランだけでなく、モスクも探します。
多くのモスクは市内にあるため、市内から離れているとお祈りの時間に間に合うように市内に帰ります。
ゴロンタロでは想像も出来ないほどの交通渋滞も考慮します。
マナドとゴロンタロの違いを少しは分かっていただけたかと思います。
日が出ている時間をフィールドのために全投入出来ないのは非常につらくはありましたが、これも仕方ありません。
今回のフィールドの目的はロコン火山です。
市内から10kmほどの場所にある、現在も活動中の火山です。
ロコン火山を中心として、さらに3つの火山があります。
すべてが活動中です。
何回も言ってしまいますね…“現在も活動中”と(笑)
初めての訪問で、露頭(試料が採取できる場所(崖など)のこと)の場所や状況が全くなかったので、本格的な目的を決めずに現地入りしたのです。
現在も活動中なら現在の火山灰を採取するのもいいな~
いい露頭があれば数万年前の火山灰を採取しちゃおうかな~
もちろん、目的が違えば採取する対象も変わります。
最初の数日は市内や火山周辺の露頭を徹底的に調査します。
徹底的と言っても、地域が広いので車で流すだけなのですが(笑)
そして、目に付いた露頭に片っ端から登っていくという方法です。
露頭は雨で上部が削られている場所もあり、はっきりしませんでしたが、20m超の大露頭が数々ありました。
先生がマナド入りされる前に、どこに調査に行くか決めなければいけない分、責任重大な任務であります。
先生が現地入りされてからと言うもの、“すげぇ~”の言わざる負えない彼の頭の回転の速さに圧倒されるばかり。
私は4日も前にマナドに来て何をしていたんだろう…と思う隙も与えてもらえないほどの速さです。
すげぇ~!!
このような調子で続いた先生との2日間のフィールド。
マナドでのフィールドは火山が対象のフィールドでした。
次回は、先生とのゴロンタロでのフィールドについて書きたいと思います。
こちらはやっとレバラン休暇を終え、徐々に仕事開始になりました。
日本では夏が終わろうとしていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
さて、26日から約2週間の滞在で愛媛大学から先生方がお越しになっています。
と言っても、現在は1人です(笑)
他の先生は提携している他の大学を訪問してゴロンタロ入りする予定です。
今回の訪問はいつもとちょっと違います。
今までは、私の教授(地質)だけの訪問でした。
しかし今回は生物学科の先生もご一緒なのです!
なぜ、別々にゴロンタロ入りしたかと言うと、調査をするためです。
私の教授も今年は調査がメインです。
皆さんゴロンタロ大学として、大きな1歩だと皆さん大変大喜びです。
さて、先に現地入りされた先生は簡単に言うと魚が専門です。
魚だけではないですが…
ゴロンタロにはたくさんの固有種がいますが、まだ調査・研究はさけていません。
どこから来てどこに行くのか、
成長したらどのような姿になるのか、
季節が限定されているものはあるか、などです。
先生は今年は初めての訪問なので、現地の雰囲気を掴むことやどのような魚がいるかを知ることが大きな目的です。
ですので、川や海、市場に行って現状を確認します。
時には、漁師さんや地元の方に直接インタビューもします。
こうやって調査をしていると、大変面白い現象(?)が起こります。
何だ何だと言って、たくさんの人が会話の輪に入ってくるのです。
最初は1人の漁師の方にお話を聞いていても、最終的には何十人にもなることがあります。
“それだったら、ここがいいよ”
“もう少し、待った方がいいんじゃないか”
“あそこに行ってみなよ”
様々な意見が交わされます。
時には間違っていることもあるので、要注意ではあるのですが(笑)
しかし、このインドネシア人の親切と言いますか・・・おせっかい(笑)ぶりには毎度のこと脱帽です。
このおじいちゃんは、急にネットを持ち出しジャブジャブと川の中へ。
そして、直接魚を捕まえて見せてくれました!
本当に、おじいちゃんありがとうございます。
先生の調査はまだまだ続きますが、私も調査が待っています。
1週間の山籠もりの開始です!
虫や虫や虫や食べ物に気を付けて、火山灰採取を行いたいと思います。
先日、レバランの様子をお届けしました。
レバランが始まる前にゴロンタロでは“Tumbilotohe”という灯りの祭典が行われます。
正確には、ラマダンが終了する3日前から行われます。
なので、先日の記事とは時間が多少前後します。
Tumbilotohe(トゥンビロトへ)はゴロンタロ語でTumbiloが“灯す”、toheが“明かり”の意味を持っています。
これは、市内だけではなくゴロンタロの全州で行われます。
正直なところ、Tumbilotoheの由来についてはあまり分かっていないのです。
誰に目的を聞いても“うぅ~ん、伝統だからね、前からの”という返答です。
ランプと言っても、ドリンクの空き瓶に入れた灯油に火を灯します。
道や玄関先、畑など様々な場所で灯します。
大変幻想的な3日間です。
長かった一ケ月のラマダン。
去る、18日に無事ラマダンが終了しました。
ラマダンが終了すると、19日からレバランに入ります。
このレバランは日本で言うところの正月とお盆が一緒になった!くらいのお祭り騒ぎです。
さて、最近ネットの回線がいいのか。
はたまた私がやっと覚えたからかは定かではありませんが…
写真をアップできるようになったので、写真と共にレバランの様子をお伝えしたいと思います。
今年のラマダン終了直後にインドネシアの独立記念日(17日)もあり、この日から休日に入りました。
この休日に入ると、レストランやその他のお店も閉まりますので、すべての用事をこの日までに終わらせないといけません。
レバランに向けての買い物やお金(新札)の準備です。
家中のカーテンやテーブルクロスなどを新調したり、レバランに向けての食糧(訪問者に出すお菓子や飲み物)を買います。
また、レバランの第一日目は家族に挨拶周りです。
その際に着る洋服も新調します。
さて、レバラン当日。
朝早くからたくさんの方の訪問があります。
と言ってももちろん私に会いに来るのではなく、ホストファミリーに会いに来るのですが(笑)
この際に先ほど準備したお菓子と飲み物の出番です。
さて、挨拶も目的の1つですが、真の目的は別にあります。
少し言葉は悪いですが、お金をもらうためです。
お金がある人がない人にお金を渡すという訓えがあるのです。
子供だけではなく、すべての人に渡します。
子供には日本で言うところお年玉的な意味もあります。
さて、訪問者の流れが一段落すると次は私たちが親戚の家に向かいます。
レバラン第一日目は出会う人すべてと握手します。
これは“昨年のお互いの罪を許します”という意味が込められています。
昨年の罪か…
先生からの電話を数回無視したこととか、自炊を怠ったこととかでしょうか(笑)
さて、家族の家に行くと綺麗な衣装でホストファミリーの親族の方たちが待っていました。
家族や親族で新年の衣装を統一しています。
去年はお揃いの色・デザインでしたが、今年はデザインを統一し家族で色違いにしていたようです。
にしても、美しいっ!
私として嬉しかったのは、私が日本からのお土産としてお渡ししたアクセサリーをこの日に使っていただいたことです。
ピアスやブレスレッドなど、この日に使うために今まで置いていた、ということでした。
ホストファミリーのママは私からのお土産のメガネをこの日のために調整していました。
※フレームだけをお渡ししたので(笑)
そして、ご家族に挨拶をして、記念撮影をします。
にしても・・・
家族が多すぎます。
正直、1年以上たった今も名前を覚えきれずにいます(笑)
そして、この写真に入れなかった家族も半分くらい外にいました。
日本で家族写真と言ったら、両親・子供・そして祖父母という程度でないでしょうか。
しかし、やっぱり大家族はいいですね!
この写真を撮りながら、日本の核家族について思いを巡らせたりもしました。
そして、私が最後に撮った家族写真はいつかな~
なんて、少しセンチな気分になったのはここだけの話です。
さて、家族構成を今年は覚えようと、様々な質問をします。
あの方は誰のご主人ですか?
誰と誰がご兄弟ですか?
などなど、今更です(笑)
その中で、大変興味を引く表現がありました。
“何人兄弟ですか?”と言う質問に対する回答です。
兄弟はいないと思っていた人から“5人兄弟だ”と返事があったのです。
よくよく聞くと“いとこ”だということが判明。
日本であれば、兄弟とは純粋に兄弟であっていとこは含めませんよね。
どんなに仲が良くても、兄弟の人数に含めることは稀だと思っていました。
しかしこちらでは、家族・親戚の家が大変近いという条件を差し置いても、“いとこ=兄弟”のようです。
ほぉ~、とまた違う感覚を学んだ私でありました。
家族・親族への挨拶を終えた後、夜からは挨拶回り第二段です。
ゴロンタロ大学学長・副学長・学部長など、そうそうたる方々のご自宅へ挨拶に伺います。
それぞれの方の家は、それはもう大きくて驚きの連続でした。
ホストファミリーの家も大きいな、と思っていましたが、上には上がいるのです。
初日だけで、何人の方と握手したでしょうか。
そして、これが数日間続くのです。
最後にホントファミリーの家族写真を。
ラマダンも折り返しに入った頃、フィールドワークに行ってきました。
先月からゴロンタロ中の様々な鉱山に行っています。
場所によって鉱山の規模やそこまでの交通手段が変わります。
今回の鉱山は今まで行った中で1番の規模で内心テンションが上がっていたのは、ここだけの話です。
そもそもなぜ鉱山ばっかり?
ここで、タイトルにある“医療地質学”との関係が出てきます。
“地学”や“地質”と聞くと何を、そしてどんな分野を想像しますか?
“地球”“石”“地震”“火山”など漠然とした単語・イメージをお持ちの方も、“構造地質学”“記載岩石学”など少し難しい内容でお答えになる方もいらっしゃると思います。
地質に限らずどんな学問にも共通して言えることだと思いますが、学問は単成分ではないと思います。
私の専門の火山学も火山や火山灰だけ研究すればいいというものではありません。
岩石学・結晶学など以外に、化学の知識や全く予定外(笑)の物理(例えば流体力学など)の知識など、さまざまな知識が合わさっていると思います。
さてここで“医療地質学”です。
医療と地質は、あまり縁がなさそうですが…改めて考えてみて下さい。
私たちは、長い間、特定の地質や土壌の上で生活してきました。
井戸水を飲み、その周辺でとれた作物や魚介、肉類等を食べてきました。
これらの水や土壌、食物の中には、その地域の特徴を反映したミネラルや様々な化合物を含んでいて、環境媒体内の含有成分と生物内の化学組成とは高い相関を持っています。
すごく極端な言い方をすると、人間の体や遺伝情報などは食物だけでなく、地圏環境情報に強く依存するということになります。
このような地質に深く関わる金属元素や無機・有機化合物の情報をもとに、健康や医療、公害のような社会的な課題について科学的な検討を行うのが医療地質(Medical Geology)の研究領域なのです。
日本国内では深刻な公害問題は少なくなっています。
しかし一方で、途上国や経済発展の著しい国々では、依然として土壌・水質汚染による深刻な環境・健康問題が山積しています。
少し例を挙げます。
バングラディッシュやパキスタンでは、ヒ素やふっ素による飲料水汚染が深刻で、何万人という市民が皮膚がんや内臓疾患により亡くなっています。
作物中のカドミウム濃度が高い汚染米の問題も知られています。
これとは逆に、土壌中のセレンが極端に少ないセレン欠乏症のような医療問題も報告されています。
話を戻します。
私がフィールドの場所に選んでいる鉱山は、ほとんどが違法鉱山です。
ほとんどの鉱山で、金や銀・銅などを精錬しています。
これらの鉱山・精錬所では、精錬中に使用した水を薄めることなく川に直接流しています。
この精錬中に使用している物質が“水銀”なのです。
鉱山で働いている人やその家族は、この水が混ざった川にいる魚を食べたり、稲作に使用したりしています。
これらの水が井戸水にも混合している可能性もあります。
さらに、汚染は広がります。
大抵の鉱山は山の奥深くにあります。
したがって、川の上流で汚染された水は、中流・下流とその周囲の鉱山とは直接関係のない住民にも被害が広がります。
私が実際に鉱山に行って、“水銀使用を中止してください”とか“水の処分について考えて下さい”と言うことはありません。
実際のところ、本人たちも環境や人体に影響が出ることを知っているのです。
なぜならば、どこの鉱山の方も“ミナマタビョウ”について知っていたからです。
私たちが出来ることは、鉱山周辺の土壌や水・植物を採取して分析することです。
さらには、人毛(髪の毛)も採取します。
このフィールドには、医師にも同行していただいています。
さまざまな問診をしていただき、髪の毛の分析結果と合わせて症状を考えていきます。
少し、固い話が続いてしまいました。
こんなフィールドですが、サブタイトルにあるように絶賛ラマダン中の調査です。
私は、出来る限り断食をしようと心に誓って出発しました。
しかしフタを開けてみると、キリスト教だったり生理中だったり…という具合でした。
唯一、男子学生(手伝いとして同行)が断食を行うという状況でした。
さらには、重労働をする場合などは断食が免除されるので、鉱山で働いているほとんどの方は断食を行っていませんでした。
と言うことで、私の不安は必要のないものに終わり、男子学生には申し訳なかったが、昼食を摂ったり水分補給したりしました。
この学生は1日目こそ断食をしていましたが、2日目に行った鉱山のあまりの過酷さにとうとう断念してしまいました。
さて、ラマダンが始まって1週間が経とうとしています。
ラマダン開始の日にちは宗派みたいなものの違いで、少しずつ変わっているようでした。
20日~22日の間に始まりましたが、大半の方は21日の早朝から開始です。
今週はラマダンが開始して仕事も再開。
皆さん、開始直後とあって魚が死んだような目で過ごしています。
毎年やっているはずなのに、開始数日は皆きついんだな~と思ってみたりして。
やはり、日中水分補給できないのはつらいですな~
仕事再開と言ってもかなり短縮勤務です。
早い時は16時頃には帰宅しています。
なぜかと言うと、家に帰って断食明けの食事の用意をしなくてはいけないからです。
きついと言う理由もあると思いますが(笑)
本来は14時頃になると帰宅可能らしいです!
断食中の1日の過ごし方です。
もちろん日が昇る前に起床します。
お祈りと食事です。
時間で言うと朝の3時。
朝?夜中??
そしてまた寝ます。
それから、学校に行ったり仕事をこなして帰宅。
日没後にお祈りして食事。
断食明けの食事はお粥のようなものを食べます。
胃に優しい!
そして、時間があるたびに少しずついろいろ食べます。
夜中も(笑)
やはり、日没後しか口にできないので、1日分のご飯を食べます。
断食中は体重減るでしょ?
この質問はよくいただきます。
しかーーーーーーーーーし!
実は太ります。
理由は上記のように夜にたくさん食べて、すぐに寝るからですね。
なので、一切ダイエットになりません。
日中は極力体力を消耗しないように過ごすので、体も動かしません。
さて、こんなラマダン中にフィールド(野外調査)が入りました。
日曜日から泊りがけです。
何も口に出来ないのに、フィールドなんて!
先生方や生徒さんは嫌がってしまい、メンバーも集まりません(笑)
昨年のラマダン期間に、フィールドはなかったので自身初挑戦となります。
どうなるか、正直不安です…
さて、明日(20日)からラマダンが始まります。
ラマダンと聞いて“断食”と思う方が多いと思いますが、これは少し間違いです。
ラマダンとはイスラム歴第9月のことをさします。
日本で言うところの、師走とか皐月に当たる感じですかね…
ちょっと、違うか!
まぁ、そんなことは置いといて…
少し、ラマダンについて説明します。
ラマダンとは上記したようにイスラム歴第9月の月の名前です。
つまりは、イスラム教あってこそのラマダンです。
具体的にどのようなことを行う・または行ってはいけないかについて書いていきたいと思います。
ラマダンって食べちゃいけないんでしょ?
大抵の友人はこの様に言います。
これは半分正解ですが、半分は不正解です。
日の出から日没まで断食です。
つまり、日没後から次の日の日の出までは飲食可能です。
この間に1日分の食事を摂ります。
ちなみに、唾液を飲み込むは禁止されていません。
※ストイックな方は唾液を飲み込むことにすらしません。
ただし、断食と言ってもある程度柔軟性もあります。
例えば、妊婦・病人・乳幼児・重労働者などは断食を免除されます。
また、女性の場合ですが、生理中も免除になります。
こういった理由でラマダンの時期に断食が出来なかった人は“振り替え断食”を行います。
次のラマダン開始までに、自分が断食できなかった分を行います。
ただ、『そう言えば今日は1日何も口にしなかったから振り替えにしよ~とっ』と言う軽いノリでは振り返れません(笑)
必ず、今日断食を行います宣言(礼拝)が必要となります。
また、断食中にうっかり飲み食いしても断食は無効になりません。
今、うっかり八兵衛がイスラム教だったら…と変な妄想をしてしまいました(笑)
あれだけ旅をしているから、断食は免除対象者なんではないか…とか!
さて、そもそも断食の目的です。
一言で言うと、宗教的な試練として課される、と言うことです。
また、食べ物・飲み物に対するありがたみを感じると言った意味合いも含まれています。
断食以外にも、禁止されている行為があります。
これも、時間は日の出から日没まで禁止です。
喫煙・性行為・故意に物を吐く・暴言を言うなどです。
実は今年のラマダンは2回目なんです。
断食は他宗教の人には、もちろん強制しません。
しかし、イスラム教90%のゴロンタロではやらないといけないのです。
なぜならば、ラマダンが開始すると生活リズムが劇的に変化するからです。
レストランは夜以降しか開かないです。
屋台などは早朝と夜。
娯楽施設の営業時間も変わります。
カラオケやジムなどは夜だけの営業です。
何が1番辛いかと言うと、水を飲めない事です。
食事はいい。
でも、30℃以上の冷房がない事務所では水分補給が出来ない事が1番辛いです。
生理中やイスラム教ではない先生は隠れて、食べたり飲んだりしています。
他の先生方に“飲んでもいいんだよ”と言われます。
しかし、私にはできないのです。
えぇ、少し意地になっている部分は否めませんが(笑)
先生や生徒さんの前で、食事を摂るなんて…めっそうもない。
こんなラマダンを見越して、私は先月インドネシアに到着してから断食の練習をしていたのであります。
ふふふ。
どうしてもお腹がすいた時や水を飲みたい時のために、部屋に浄水器を購入。
お湯も沸かせるので、インスタントを食べることが出来ます。
とうとう、私の練習の成果を見せる時が来ました!
さぁ、来い、ラマダン!
※他宗教の人には強制しない、と書きましたが、イスラム教圏内へラマダン期間に渡航する場合は、通常よりも周囲に対する配慮が必要だと思われます。
日中の飲食・喫煙などは、出来るだけ避け、どうしてもの場合には自身の部屋や人目につかない場所で行う事を強くお勧めします。
また、服装についても、女性の場合は出来るだけ露出の少ない恰好で出歩くようにしていただきたいです。