マナドに引き続き先生とのフィールドは鉱山です。
以前、お伝えした医療地質学のためです。
『エリン・ブロコビッチ』という映画をご存知でしょうか?
2000年にアメリカでジュリア・ロバーツ主演で制作された映画です。
この映画の中で、実際に工場周辺の水を採取したり、蛙の 死骸を拾ったりするシーンがあります。
今回訪問した鉱山で、蛙がため池の中で死んでいる姿を発見したのです。
この瞬間、ジュリア・ロバーツが蛙を採取しているシーンが頭をよぎりました。
初めに、鉱山がある北ゴロンタロ県の県長さんにご挨拶します。
※インドネシアにおける県とは、日本で言う市のこと。
そして、研究内容などを説明。
県として、鉱山周辺の水質調査を行っていることが分かった。
しかし、その結果から何を行っているという具体的な策などはないようで、県としても非常に困っているということも分かった。
鉱山には職員の方も同行したいただき、いつも通りの試料採取。
土壌・植物・人毛(髪の毛) に加え、鶏の羽や稲、水も採取します。
今回もお医者さんに同行していただいたので、労働者の健康状態のチェックも行います。
さらには、鉱山周辺にあるという浄水場の見学も行いました。
鉱山周辺の川の水も一緒に処理をしていることが分かりました。
WHOの定める飲料水の基準値を大きく上回る結果が得られているそうで、私たちも水を採取します。
二カ所目の鉱山を訪れた際、私の先生がポツリと言いました。
“この現状は今まで見たこともない状況だ”と。
私はゴロンタロの状況しか知らなかったので、この現実が普通なんだと思っていました。
しかし、そうですよね。
“普通”なはずはありません。
鉱山で働いている人は悪くない。
生活しないといけないから。
家族もいる。
もちろん、資源はなくなります。
しかし、ここで金が取れなくなったら次を探すだけだ、と人々は言います。
何か方法を見つけなければ、何世代にもわたり続いていく。
だからこそ、私たちがいるのではないかと私は強く感じました。
研究は論文を書くだけではない。
もちろん、発表することは大切です。
しかし、それをどのように伝えていくか、が鍵だと思います。
今回の調査で採取したすべての試料は日本で分析されます。
分析結果から何が分かったのかを、直接政府や住民の方に伝える。
来年はまた各地の鉱山に戻り、小さくてもいいのでセミナーを開催したいと考えています。
水処理をせずに排水を流すことの恐ろしさ。
どのように今の状況をよくするか。
この子供たちが、今よりもいい環境で働けるように・・・