Home > 新着記事 > makiko

2012/09/06

突然ですが、
「ネイルのモデルをお願いできますか」
と、もしネイリストから言われたらどうなさいますか?

きっと、ご自分の体の一部を褒められたことは嬉しいですよね。
モデル、という響きも何やら素敵な感じです。
綺麗にしてもらえるのかも…という期待も生じるかもしれません。

でも。
ちょっと待ってください!というお話を今回はいたします。

ネイリストにとって現役である以上つきまとうのは「モデルの確保」です。
日々の練習、検定試験、コンテストなど、自分の技術を披露できるのはモデルさんの爪あってこそ。
ちょっと驚かれる事実なんですが、ネイリストは自分でモデル確保をするんです。

ネイリストの目線で見る‘綺麗な爪’というのは一般のそれとはちょっとズレがあるかもしれません。
単に指がスラッと長く、色白で爪が長めに伸びている、
というパッと見の印象に加え細かいチェック点があります。
爪自体が細長く大きい、ということは大前提ですがそのカーブ具合や甘皮周りの様子、皮膚感を含めのバランス、10本が揃っているかなどなどかなり細かいものです。

そのような条件を満たしている方はなかなかいらっしゃらないので、
モデル確保を狙うネイリストは常に周囲の手先指先爪を探っています。
すでにモデルさんがいたとしても、初対面の方に会うとまず爪に目がいってしまうのは職業病ですね。

運よくそういったお爪をお持ちの方に出会えたとします。
がしかし。これで、めでたしめでたし、とはいきません。
むしろここからが難関ともいえます。

本番への同伴はもちろん、それまでの日々の練習にもスケジュールを空けて付き合っていただけるか。
試験やコンテストには爪の長さの指定もあるため、それに合わせて長く伸ばし保つことが可能か。

練習も本番近くなると、少なくとも週1回はお会いすることになります。
また1回の練習時間も数時間はかかります。半日~1日一緒にいる、なんてこともざらです。
本番前日には仕込みと呼ぶ前準備があり、さらには本番当日の拘束時間はほぼ1日とみていただきます。
モデルさんは着席のまま数時間、テーブルに手を出したまま過ごすことになります。

結構過酷ですよね。
私たちもそう思います。ネイリストは技術を必死でこなしますが、モデルさんはジッと座っているだけ。これは相当に退屈で疲れるものです。
ネイリストはこのモデルさんの協力なしでは成り立たないため、良好な関係を築くことを心がけなければなりません。
私も自分のモデルさん(数年来のお付き合いです)には足を向けて眠れません。

交通費やお手当てなどいくらかのお気持ちを渡すことが多いと思いますが、これもネイリスト次第です。
最悪(と言っていいのかどうか)完全なボランティアになることもあるようです。

ここまでの条件でもかなり「モデル」のイメージが変わってしまったのではないでしょうか。

「でも常に綺麗にしてもらえるでしょ?」というお声が聞こえそうです。
残念ながら、それは当日本番のみ、もしくは本番終了までは皆無かもしれません。
もちろん練習や本番が終わった後日お礼でサービスをすることは多いのですが。

コンテストはある程度高い技術のネイリストを期待できますから、爪を大切にされることが多いです。
しかし問題は検定試験。まだお勉強中のネイリストなのでその技術も当然拙いものになります。
練習は文字通り‘練習’で、むしろ爪がダメージを受けてしまう失敗があることも事実です。
試験内容によっては、色々な技法を取り混ぜるためバラバラな出来上がりになってしまうことも。
決してサロン帰りのような仕上がりではありません。

こういった厳しい現実を、ネイリストのために受け入れ我慢し付き合ってくれるモデルさん。
私のモデルさんをはじめ、生徒さんが連れてくるモデルさんのほとんどはそんな下げても下げても下げる頭が足りないような有難い方ばかりです。
もっと嬉しいのは、
時に励ましてくれたり、冷静に(モデルさんは目が肥えていきます)アドバイスしてくれたり、
一緒になって本番を緊張して迎えてくれたり、
良い結果が出たときには自分のことのように喜んでくれたりと、
そんな素敵な関係が築けることです。

私もめげそうになるとき、コンテスト直前の緊張で気分が悪いとき、
モデルさんの顔を見るとホッとします。
と同時に、もっとこの綺麗な手を美しく仕上げて評価されたいとも思います。

冒頭に戻ります。
モデルへのお誘い、
「ちょっと待ってください!」の意図をわかっていただけたでしょうか。
もしこの先そんな局面に遭遇したら、思い出して参考にしていただけたら嬉しいです。

09:56 | makiko | ネイルのモデルさんについて はコメントを受け付けていません
2012/08/23

今回は、メンズネイリスト 石井さんのインタビューをお伝えします!

メンズネイリストとして多くの男性ネイリストが活躍しています。
石井さんもそのお一人ですが、特筆すべきは「イクメンネイリスト」であるということ。
もちろん「ク」を「ケ」に変えた、イケメンネイリストでもいらっしゃいます。

つくば市内のサロンに7月のある日、お訪ねしました。

サロンは元々奥様のご家族が化粧品販売およびエステコーナーをご経営で
その中でネイルサービスを展開するにあたり、
石井さんがネイリストになるべくお勉強を始められたそうです。

都内の大手スクール・プロコースに1年ほど通い見事JNE検定1級を取得、
現在はネイリストとしてネイルをご担当です。
お子さんがまだ幼稚園に通う前であるため、育児をしながらのネイリスト活動です。
外に出てしまうのでなく、常にお子さんと一緒にいながらのお仕事は
ご家族経営ならではのメリットですね。

星野(以下、星):ネイルを始めるきっかけはサロンでの展開とお聞きしました。
ではなぜ、他の方ではなく男性であるご自身がネイリストになろうと思われたのでしょうか?

石井(以下、石):もともとアクセサリー作りをしていたこともあり細かい作業が好きでした。まだネイルを知らない10年前頃に書店でカリスマネイリストのネイルアート写真集を買って、実際に自分でチップを作成したりもしたんです。それで、僕かなあ、と(笑)

星:ネイルを知らないのにネイル本を買われたんですか?

石:好きなタレントさんがその本でモデルをしていたので(笑)

星:なるほど、それなら納得です。それでも実際購入までされたのは驚きです(笑)。
ネイルチップ作成はいかがでしたか?

石:全然ダメでした。難しいし…。それきりでネイルとは無縁にしばらくなりました

星:ご結婚後、いよいよネイリストへ転身とのきっかけが訪れますが、ネイルスクールに入りお勉強を始めた時の周囲、特にご自身のご実家の反応は?

石:実家の母は「やっぱりね」と納得していました。父や友人は懐疑的でした。ネイリストなんて仕事になるのか、と

星:お母様は本来の細かな作業好きなどを理解されていたのでしょうね。
お父様達の懐疑的な反応はよくわかる気がします。今でこそ職業として認識されていますが、男性で数年前で、となると理解を求めるのも厳しかったのかも。
では、実際に「女子」の世界に入ってみていかがでしたか?

石:特になにも…。女子はもちろん、同じメンズとも知り合いになりましたよ。メンズのメリットは、覚えてもらいやすいことと紹介などをしてもらうことが多いことでしょうか

星:ご卒業後、晴れてネイリストという職業についたわけですが、実際の業界の印象は?

石:まだまだ伸びる市場だと感じています。職場環境としては、家族経営なので、複雑な人間関係とは無縁です

星:ネイルを始めて何か変わったことなどはありますか?

石:人の爪先が気になるようになりました。アートなどがあると、どんな材料を使ったのかな?と気になります。
ネイルを通じて、目標があることは素晴らしいと実感しました。スクール時代も含め、楽しい思い出の方が多いです

星:得意なアートは?

石:特にありませんが…。ジェルベースなら幅広く何でも。雑誌などからのリクエストにも出来るだけ対応してます

星:今後の目標は?

石:ジェルメーカーのエデュケーターライセンスの取得と、ネイリスト協会認定講師の取得を目指したいです。今はサロンですが、将来的にはスクーリングに展開したいと考えています。サロン自体では、お客様を飽きさせないサロン作りをしていきたいです

星:では、最後に「ネイリスト」からのメッセージをお願いします!

石:もっと爪先を大切に意識をしてほしいです!どうしても年齢層が絞られる傾向にありますが、もっと幅広く楽しんでもらいたいです

石井さんは、外見の男性らしさとは対照的に非常に細やかな印象を受けました。
作成されたアートサンプルを見ても、柔らかさを兼ね備えた感性の持ち主であることがわかります。

まだ小さなお子さんが石井さんのそばで甘えたりして、パパとしてのお顔も拝見できました。
お子さんはお嬢さんなので、物心がついた頃にパパのネイリストとしてのお仕事をどう捉えるのか非常に楽しみです。

石井さん、お忙しいなかありがとうございました!
今後のますますのご活躍、期待しております!!

06:15 | makiko | イクメン・ネイリストを訪ねて はコメントを受け付けていません
2012/08/09

YAHOO!のニューストピックで気になるものがありました。

タレントのネイルについて、「家事が出来るのか?」云々と話題になったそうです。

曰く、そんな爪じゃ米は研げないだろう!
曰く、キラキラしたものが混ざりそう!
曰く、そんな爪の人が作った料理は食べたくない!

とまあ、言われ放題のご様子。
そりゃ、私だってキラキラホログラム入りご飯は食べたくないですが。

このテーマ、ネイリストおよびネイル好きの方々には避けて通れないものです。
私も常々声を大にして主張したいところであります。
ということで、今回のお題は「家事とネイル」です。

まず結論。
家事とネイルの両立は可能です。
米は研げます。現に私も研いでます。
キラキラしたものは混ざりません。
落ちて混ざらないよう、要するに実用性の邪魔をしないよう普通のネイリストはちゃんと仕上げます。
むしろ取ろうと思っても取れません。

実際にネイルを楽しまれる方で「ネイルのために家事をしない」というお話は聞いたことがないです。
家事炊事は手先や指先を酷使する作業のため、ネイルの持ちはどうしても悪くなります。そのため美しく保つためメンテナンスを心がける方がほとんどです。

ネイリストに至っては、本来の器用さが幸いするのかどうか
家事炊事がむしろ得意という方が多いように思います。
効率よく物事を進めるというのは、ネイルサービスにおいての基本であり、
これは家事炊事にも共通して言えることです。

自爪だから清潔とか、家事に向いているとかという決め付けは個人的にはナンセンスだと思っています。

爪が短くても、家事が出来ない人も多くいますし、
逆にネイルを華やかに楽しまれていてもしっかり家事をこなしている人も多くいます。
何をかいわんや、です。
長い爪は危ない、と思われるでしょうが、実は自爪で少しでも長さがある方が危ないことも多いのです。
爪の薄い鋭さは引っ掻いた際に凶器になります。
今ネイルの主流であるジェルネイルなどは、厚みを爪の上に作るので、
むしろ肌あたりは柔らかくなります。

短くした爪の間にゴミや垢が入り込んだままの方も多く見かけます。
短くもせず伸ばしたままの爪の状態もよく見かけます。
ネイルを意識しない方は、そのメンテナンスも甘いためネイルブラシなどは持っていないことが多いようです。こまめに手指を洗浄する意識にもかけます。
不衛生なままの爪を立てて炊事や料理をする。
これって、家事炊事に向いていると言えますか?

ネイルはされているけど、不衛生になりやすいことを意識してこまめに手洗いをし、
ゴミが溜まりやすい爪先はネイルブラシを使用するなど気をつけている。
これって、家事炊事に向いていないと言えますか?

確かに、長すぎる人工爪は危険を伴います。
爪の上から飛び出ているようなネイルアートは、引っ掛けてしまったりと実用性にかけます。
付けたままの人工爪をメンテナンスせず放置することはもちろん不衛生です。
そういった一部の方が、ネイル好きにはいることも事実です。
短い自爪のほうが楽に安全に出来る作業もあることも事実です。
しかし指先の扱いになれてしまえば、大抵のことは不自由なくこなせます。

私がネイリストになってこのかた、何度も何度も聞かれる質問にはうんざりするのです。
「そんなにキレイな爪だと、家事なんて出来ないんでしょ?」

この質問者の爪は例外なく手入れがされていません。
ネイルのお洒落が何なのか自体も気にされないのでしょう。美意識と価値観の違いです。

私は主婦ですし、やや神経質な性質からか家事炊事全般が苦にならないので粗末にしたことがありません。
そんな事情を釈明に使う気すら起こりません。
ネイルに限らず、自身の了見の狭さを露呈させるような偏見を押し付けてくること自体に激しい嫌悪を感じます。

社会にはTPOがあります。
その最低限のルールを守ることが大切で、それはネイルに限らずといったものです。
そこを踏まえてこその美意識、これを大切にしている人が本当に美しいと私は思うのです。

ブラック星野を降臨させているような記事になりましたが、最後にもう一度。
「ネイルと家事は両立するのだ!!」

10:46 | makiko | そんな爪で家事って出来るの? はコメントを受け付けていません
2012/07/26

「自分でジェルネイルは出来るでしょうか?」

よくこんなお問い合わせがあります。
これだけジェルネイルが流行っていて、
(もはや流行ではなく定番な存在かもですね)
探せば簡単にそのスターターキットも手に入ります。

価格競争がすすみ、手ごろな値段に落ち着いたとはいえ
やはりサロンに定期的に通うとなれば出費も気になるところ。

ならば、自分でやってみようかしら!と思い立つのも自然なことかもしれません。

私がネイリストでなかったらやっぱりそう思うかも。

サロンでネイリストさんがするほど上手にはいかないだろうけど、
簡単シンプルなデザインならどうにか出来そうな気がする…。
といったところです。

そんなお問い合わせに対する答えは、
「Yes」であり「No」です。
ファジーで申し訳ありません。でも本音です。

なぜか。
その理由を今回は説明いたします。
セルフネイルの上級編とも思われるジェルネイル、
検討されているならぜひご参考になさってみてくださいね。

まず、必要な道具と材料。
これを入手するのは問題ありません。
比較的お手ごろな値段で手に入ります。場合によってはプロが使うものと同じものも購入可能です。
最初にフルセットで揃えたとしたら、おおよそ2~3万円くらいでしょうか。
サロンに数ヶ月通うと考えれば元は取れる計算です。

次に手順。
こちらもほぼ無問題です。
昨今では写真つきで親切丁寧に手順やワンポイントアドバイスを掲載しているネイル雑誌が多数あります。
ネットで検索すれば動画も見られます。
セルフネイル用の書籍だってあります。

道具が揃い手順もわかれば、始められますね。
答えの「Yes」です。

水を差すようで気が進みませんが、では、「No」の理由を。

まず、利き手じゃない手で行なえますか?
右利きの人は、ご自分の左手は良しとしても
反対の左手で右手を同じように仕上げることでつまずくでしょう。
はみ出してしまったり、上手に仕上げられなかったり。
こうなると見た目はもちろんのこと、持ちも悪くなります。
ネイルってちょっとしたコツがその明暗を分けるものなのです。
慣れない左手での作業はストレスがたまり時間もかかるでしょう。
それに見合った仕上がりでなければ気分が下がってしまうのは当然です。
「やらないほうがまし」となることも。

次に、とても大切な衛生面です。
ジェルは自爪に被せ物をしてしまうことです。
そこに雑菌などが入っていたとすれば、たちまち菌の温床になりかねません。
そういったことに注意を払うのも、サロンの基本なのです。

さらには数週間は付けていられるよう、持ちを良くさせなければ
自爪へダメージを与えてしまう結果になります。
そのためのコツを、前準備としてネイリストは丁寧に行なっています。

ネイルはお洒落ですから、同じデザインパターンでは当然飽きが来てしまいます。
ご自分でやりたいと思う方ならきっとネイルがお好きなはずですから、なおさらです。

最後に、ジェルは付けっぱなしではありません。
そのうち必ず外すべきタイミングがやってきます。
その際に必要な材料などはまた別に揃える必要があります。
初期費用と手間はあくまで「付ける」ためだけのもの。
ジェルネイルを維持し楽しみ続ける費用と手間はまた別にかかってしまいます。

この「Yes」と「No」を天秤にかけ、セルフジェルネイルを判断されると良いと思います。
手間は覚悟と決めて始めた結果、案外上手にそのままセルフを楽しまれる方もいらっしゃいますし、
お金を出してサロンに通う意義をあらためて再確認したとおっしゃる方もいます。

質の良いセルフジェルネイルをご希望なら、せめてメーカーやプロ指導の講習を受けるべきです。
もちろんこちらは安くはないお値段がかかります。

ネイルを広く楽しんでもらうという意味では大賛成ですが、
安全に美しく、という意味ではやはりプロに任せていただきたいと思う私です。

09:42 | makiko | セルフジェルネイルって出来ますか? はコメントを受け付けていません
2012/07/12

スクールには様々な年齢層の方がいます。
でも、主体はやはり20代です。

色んな方のお話はそれぞれ楽しく、興味深いのですが、
特に20代あたりの生徒さんの話を聞いていると本当に楽しくなります。
自分にもこんな時代があったんだな…とつくづく懐かしいような。
時代は変われど関心事の種類はあまり変わらないようです。

先生、どうしたら太らないようにできますか?
どうやって彼氏を作ったらいいと思います?

こんな質問をよくされます。
世代を超えての関心事といえなくもないですが、
若く独身の身であるお嬢さん達の頭を占めている割合は相当なもののようです。

妹と呼ぶには離れすぎた年齢の彼女達、
私から見ればそれだけで初々しく可愛らしいのですが
同年代に(無理やり頑張って)目線を移して答えようとしてみます。
が!
かなり至難の業。
人間は忘れる生き物です。

「彼女はいますか?って聞いてみれば?」
とか。
「自分だったらその誘い方、どう思ってしてるんだと思う?」
とか。

それが分かれば簡単なんだけど、というなんとも外から的なアドバイスしか出てきません。
太らない秘訣なんて私が知りたいくらいです。

自分はどうだったかな…。
やはり人間は忘れる生き物。
出来事は鮮明に思い返せても、その答えになるような発想は思い浮かびもしません。
偉そうなアドバイスを出来るほどの経験もないので
失敗談を披露しているだけで終わってしまいます。

そんなやり取りや、うまくいきそうな進展報告を聞くと
こちらもなんだかドキドキして楽しくなります。
これ、この感覚、きっと思い切り蚊帳の外な人の感想です。
自分がこんな立場になったとは。
微笑ましくもあり若干淋しくもあり。

年齢や経験を重ねるって、美食と似ていると思っています。
舌が肥えてくると世の中の美味しいものはどんどん減っていきます。
もちろん追いつくほどには程遠いのですが
自分を取り巻く環境を世の中とするならば、という範囲のお話です。
昔は美味しいと食べていたあれもこれも、
これとそれには敵わないななんて少し物足りなくなります。
当たり前になった途端、未知が既知になった途端、
それは感動やドキドキの色を失い始めます。

知らないことがあるって素晴らしい。
感動があちこちに転がっているということなのですから。

歳をとって始めた手習いははまる、ということを聞いたことがあります。
簡単にはゴールが見えない経験の面白さと尊さは、
それが少なくなった身の上だからこそ切実に実感するのかもしれません。

私にとってのネイルも然り。
ネイルを通じて、こんな風に新しいコミュニケーションや挑戦をさせてもらえることも
思いがけない素敵な副産物です。
スクールの場は、私にとって刺激に満ち溢れた場所なのです。

05:50 | makiko | 刺激の源 はコメントを受け付けていません
2012/06/28

前回では、私が自宅サロンを開くにあたりの経緯をお話しました。
今回はもっと具体的に、自宅サロンを開くための準備や要点などをまとめてみたいと思います。

まずは何より、サロンにするお部屋の用意です。
我が家では2階の1室をまるまる使用していなかったのでそこに決めました。
クローゼットの中には、洋服などがあるものの目に見える場所にいっさい生活用品もない部屋です。
出入り口は廊下にちゃんとありますが、隣の部屋とは扉で繋がってはいるのでしっかり閉めてソファを置くことでサロン中には独立したスペースを保つことが可能です。

お客さんの動線と自分の作業動線が混乱しないよう、テーブルの配置を決めます。
実際に配置してみて、双方の立場を想定して何度か位置の調整もしました。
身内など気の置けない第三者の意見も積極的に取り入れるように心がけました。

必要な物をリストアップしたら、いよいよ部屋作りです。
サロンの雰囲気をイメージして物を揃えていきます。
フローリングなので、カーペットを敷き作業スペースを分けました。
目に見える区切りの意味と、材料類を落としたりした際のためです。
カーペットやメインの作業テーブルはイメージの中心になりますので、色柄選びは慎重に。
ホームセンターや通販をチェックし、サイズを確認しながら選ぶ作業は楽しくもありなかなか思うとおりにいかない面倒な部分でもあります。
予算とも相談ですが、あまり安っぽいものでももちろん良くなく、かといって部屋に似合わない豪華な雰囲気も落ち着かないので納得のいく物を探すのは想像以上に大変かもしれません。
私の場合は、「清潔感があり明るくリラックスできる」というテーマがあったのでなるべく明るくシンプルで飽きのこないデザインを求めました。
自分の好みや主張よりも、来ていただく不特定多数のお客さんを選ばない無難な雰囲気が大切だと思ったからです。
「自宅サロン」の枠を良くも悪くも超えないようにしました。

アイボリーの壁紙とフローリングの雰囲気をいかし、グリーンやイエローといった優しく明るい色を選び時計やキャビネットもそれに合うもので揃えました。

大切な作業テーブルは、実際にお客さんが手を出した時の位置、必要な材料道具類を置いたスペースを踏まえサイズを確認しました。
椅子は、回転するタイプで立ち座りの動作をスムースにするように。
荷物を置いたりお会計やカウンセリングに使えるよう、またアクセントになるように二人がけサイズのゆったりしたソファを入り口近くに配置。
フットサービス用のリクライニングチェアは安定感のあるしっかりした物で、お客さんの姿勢に不安定さが出ないことを優先させました。
BGMは不可欠ですが、ラジカセ丸見えは避けたかったので主人の協力で小さなスピーカーを死角になる位置に設置しました。

エアコンや新たに用意したネイル商材なども含め、諸費用は50万円かからなかったと思います。

光熱費も家賃もないので、初期準備以外にかかる経費は消耗品類など最小限に抑えられるのも自宅サロンの魅力です。

それから、サロンスペース以外にも大切なポイントがあります。
自宅ではありますが、お客さんをお迎えするわけですから生活感を感じさせないことが重要です。
玄関を入って階段を上がりサロンルームまでは、掃除はもちろん、私物をつい置いたままにしないよう気をつけています。
お客さんまが使用するであろう2階のトイレ・洗面についてもそれは同様です。
臭いにも注意を払い、アロマを焚くなどして生活臭には極力の注意を払います。

メニュー設定は慎重に行なうべきです。
自分の技術レベル、地域性、ターゲットになるであろう客層などを基本にプラス利益が出るよう決定していきます。
価格は下げることは簡単に出来ても、上げることは難しいので、当初の集客目当ての低価格には気をつけるべきと考えます。
他サロンなどを参考にしましょう。
公的に申告申請が必要かどうかはよく調べておきましょう。収入や経営形態によって異なりますので専門家に相談してみるのも安心です。

私の場合は、本当に自宅の一室をサロンにした典型的な「自宅サロン」です。
ネイリスト仲間にも自宅サロンをオープンしている方もたくさんいますが、その形はさまざまで中には本格的にサロン仕様に設計し、路面店と変わりないレベルを実現させている方もいます。
フリーとして自宅サロンはなかなかのメリットがある形ですが、工夫することでネイリストにもお客さんにも程よい距離を保つことが成功に繋がるのではと考えています。

10:00 | makiko | 自宅サロンの始めかた はコメントを受け付けていません
2012/06/14

私は講師業の他に、自宅の一室をサロンとして開放しています。
いわゆる「ホームサロン」です。
開業してもうかれこれ5年ほどにはなるでしょうか。
途中お休みした時期もありますが、ありがたいことにリピートされる方に支えられてここまできました。
今回は、そんな自宅サロンについてのお話をします。

先日、このコラムを読んでくださっているお客様からこんな質問をされました。
「どこか大きなサロンでも働けるだろうに、なぜ自宅サロンを?」

それをきっかけに、自宅サロンを開こうと思った当時を振り返りました。

当時はまだ本格的には講師業に携わっていなかった頃です。
級は取得しているものの、いわゆる普通のネイリストです。
すごく上手でもなければすごく下手なわけでもない、といった感じです。
もともと結婚してからも仕事をバリバリと続ける前提ではなかったので
ネイリストとしての自覚にも乏しかったのかもしれません。
専業主婦への憧れのようなものもあり、家事に専念するのが私の仕事と思っていました。
とはいえ主婦業だけでは時間を持て余し、お小遣い稼ぎ程度のアルバイトが出来ればと
考えついたのが自宅サロン。
通勤を要しないということが一番の魅力でした。

もともと会社員時代から時間拘束されることが嫌でたまりませんでした。
仕事が終わればそれで終わり、というスタンスが自分には向いていると感じていたので
ネイルサービスが終われば仕事は終わり、という形は理想だったのです。
自宅にいるので家事の妨げも最小限で済むと考えました。

好きなネイルの仕事をして、数千円でもお金になるというのも大きな魅力です。
生活費を求めての仕事ではないので気楽に趣味の延長という気持ちでした。

どこかの主婦向けの広告そのままみたいな発想です。

今こうして文字にあらためると、なんとも恥ずかしいです。
こういった仕事への甘いスタンス、今の私がもっとも嫌いなものかもしれません。
もちろん「私にとっての価値観では」という範疇です。
主婦の方のアルバイト云々に対して批評する気はありません。

当時は当時なりに真剣でした。
「お金をいただくからには」と開放する部屋をサロンと呼べる雰囲気に改装したり
メニューに見合うお勉強会に出席したり、ホームページを作り、
チラシを作り近所にポスティングしたり、とそれなりに準備をしました。
その甲斐があってかどうか、決して目立たない田舎の住宅街にも関わらず
お客様がいらしてもらえるようになりました。

いざ初めて見ると、想像しなかったことが起こるものです。
特に自宅ということからプライバシー管理には気を使いました。
ホームページやチラシに載せられるのは、メールアドレスのみ。
住所や電話番号はメールでのやり取りをして予約成立後と決めました。
それでも、悪意を感じる男性からのいたずらな問い合わせもありました。
また、住所を公表しないことで場所の見当がつけ難いというお声も多数ありました。
他のネイルサロンに行かれていて目の肥えたお客様からの、
明らかに不満の表情を目にすることもありました。

遅ればせながらでお恥ずかしいことですが、
こうしてようやく自分の考えの甘さに気づいたものです。
自分の都合を優先にしてお金をいただく仕事をするなど
世の中には通用しないと実感したのです。

私とって「空いた時間でのお小遣い稼ぎ」感覚でも、
わざわざいらしてお金を出すお客様からしてみれば
それは「プロの仕事」を求めて当然です。

恥ずかしく、意気消沈した私は、サロンワーク自体がだんだんに面倒にもなり
「お休み」として退散することを選びました。

ああ、こうして振り返っていると申し訳ない気持ちになります。
特に、拙い当時の私の技術でも喜んでくださった方には本当に申し訳なく思います。

お休みしてからも、そんなモヤモヤとした気持ちは晴れることがなく、
好きだったはずのネイルに対しての思いが一層深くなるばかりでした。
その思いは徐々に形を変えていき、誰もが認めるほどの仕事をしたいと
思い直すようになりました。
講師アシスタントをしていたこともあり、まるっきりネイルから離れてしまったわけではなかったこともそう決意するに至った背景なのかもしれません。

それからは再度勉強をし直し、講師業のお話もいただき仕事の幅も広がりました。
技術と知識に自信がついたのをきっかけに、自宅サロンを再開させました。

今度も自宅サロンを選んだ理由は、以前とは少し異なります。
講師業でスケジュールを拘束されてしまう分、
それでもお日にちのご都合が良ければいらしてください、というスタンスです。
その分、お値段はかなり控えめに設定してありますし、
店舗サロンのように、他のお客様や時間都合にによる慌しさは皆無です。
技術に関してもご安心いただけるよう努めております。
といった具合にアナウンスしています。

お客様のほとんどが、ご自分だけの空間で落ち着いて施術を受けられるとおしゃっていただいてます。
何より、定期的にお会いする知人友人のようなおしゃべりを楽しまれる方が多いことに
私も感激しています。
着飾る必要もなく、リラックスしてビューティーメンテナンスを受けることが出来るともお声をいただきます。

私としても、やはり通勤のない仕事環境があることは有難いことです。
ただし変化したのは、主婦業優先ではなくなったということです。
お仕事の合間に家事を出来たらする、という感覚です。
それでも通勤がないぶんきっと楽をさせてもらっています。

自宅サロンは、魅力もいっぱいです。
その魅力を魅力として維持できるかどうかは、自分の覚悟にかかっているということも事実であると思います。

06:16 | makiko | 自宅サロンをする理由 はコメントを受け付けていません
2012/05/31

このコラムを読んでくださっている方から、
「本当にネイルがお好きなんですね!」とお褒めいただくことがままあります。

はい。大好きなんです。
ネイルもネイリストという職業も。

ですが、私も人の子。
時にはそうとも言えない気分に陥ることもあります。

「ネイルなんて…」と、妙にいじけてしまう時があります。
自分の爪がなんにも付いてない素の状態で、
普段ならまるで裸でいるような恥ずかしさを感じるであろうはずも
ちっとも気にならなくなります。

それはどんな時か。

自分としては、振って湧いたようにある日突然そうなる気がしていたのですが
この記事を書くにあたり分析してみました。
どうやら、大きなイベントがひと段落した時にそれはやって来ることが多いようです。
普段のサロンワークやスクール業務はあまりに日常密着型なので、
それほどのストレスを感じるわけではありません。
現在の私にとっての大きなイベントとは、
たとえば試験直前に定期的に行なわれる対策授業であったり、
半年に一度行なわれるネイルのコンテストであったり、といったところです。

試験もコンテストも、対・生徒さんか対・自分自身かの違いはあれど
どちらも結果が公にはっきり出るものです。
運やバイオリズムも含めすべてが実力としてジャッジされるイベントです。

本番を迎えるまではそれはそれは必死でがむしゃらで、
妙にハイテンションで疲れ知らずのようなモードです。
本番終了直後は、終わったという解放感があり(場合によっては達成感もあり)
体力を回復すべくひたすら休みを満喫します。

その後、です。
ソレがやって来ることが多いのは。
このコラムをもじれば、ソレはまさに「たかが爪」モード。
ネイルネイルでいっぱいだった毎日に、
保留にしてたまりたまった日常が流れ込んできます。
寸分の狂いも許さない完璧さを求めていたアタマの中が、
ポカッとスペースを空けてしまうみたいです。

細かいことはどうでも良くなり、呆けたようになってしまいます。
まさに燃え尽き症候群。
重箱の隅をつつくような発想は消え、たかが爪じゃん…と。
そこに追い討ちをかけるように、ダメだしな出来事(よろしくない結果報告があったり、ですね)があるともうだめ。
一気にいじけモード突入です。

「あーあ、私はなんて下手くそなんだろ」
「あーあ、教え方がまずいのかも知れないな、こんな私で生徒さんに悪いな」
「あーあ、ネイルなんて所詮…」

そういえばもう歳も歳だし、おとなしく家に入って主婦してようかな、
なんか全てが面倒だしな、
なんて普段は都合良く忘れていることを引き合いに出してみたり。

こんな記事、
いつも声高らかにネイル万歳!を叫んでいる手前と立場上
本当ならイケナイのかもしれませんがこれも実態の一つです。

とはいえこのモードは長く続きません。
日々のサロンワークやスクールでは、変わらずネイルを楽しむ方や
頑張る方に接するので自然と気分も戻っていきます。
リズム化した次の大きなイベントも控えています。
燃え尽き症候群で燃え尽きたので、新しい火種の場所は準備万端なのです。
その準備に腰を上げると、「たかが爪」は「されどネイル」に姿を変えます。
いつもの私、登場です!

って、年に数度コレを繰り返すのって…。進歩もないですかね!?

03:35 | makiko | たかが爪、モード はコメントを受け付けていません
2012/05/17

こんにちは。
今回は、ネイルサロンという職場におけるネイリスト達の様子をお届けしたいと思います。

ネイリストの現場はとても忙しいです。
大きなサロンになると、引っ切り無しにお客様がいらっしゃいます。
指名を受けたネイリストはもちろん、その補佐をするネイリストも大忙しです。

大抵は予約時に受けたメニュー内容にそって、おおまかな時間枠が設けてあります。
その隙間を縫うようにお客様を入れていくので、場合によっては休憩が取れないことも珍しくありません。

サービス業でもあるので、お客様のリクエストは出来るだけ受けるようにします。
予約の時と話が違う…、ということもしばしば。
たとえば1時間半くらい見てれば大丈夫だったはずなのに、
「やっぱりこういうアートに変更したい」などとおっしゃった場合にそれが予めの時間枠をオーバーしてしまいそうなとき。
困惑を笑顔で隠しながら、必死で次の段取りの短縮はできないかを計算します。
自分が無理でも、手が空いて次のお客様のあの作業を代わりにしてくれるスタッフがいるかどうか、他のテーブルの様子をチェックしたり。
大丈夫そうなら、そのまま「わかりました」とお受けしますが、正直厳しいときもあります。
そんな時は「今回はお時間が厳しいので、こんな感じにするのはどうでしょう?」とやんわりお断りすることもあります。

いずれにしても、時間を目いっぱい押すことにはなるので合間の休憩などは消滅です。

笑顔でバタバタ、お腹が空いたりトイレに行くことを忘れてしまいます。
するとたいてい、妙な空元気が出てきたりします。不思議ですが、これ本当。
ネイリストって元気な人が多いのですが、テンション高いときはだいたい忙しくて大変な状況だったりします。
不機嫌にしていたり辛そうにしていたりする人は稀な気がします。
もう夕方なのに、「まだ朝から何も食べてないよ~」とかなぜか笑顔で言ったりしてます。

ですが、人間ですからもちろんサロン閉店後はドッと疲れと空腹感が押し寄せてきます。
メイクを直す間もなかったので顔もすっかりお疲れ。
でも、そのままみんなでご飯を食べに行って元気におしゃべりしたりしちゃうことも多いです。

また、喫煙率が高いのも特徴だと思います。
私は禁煙に成功してもう数年経ちますが、周りのネイリストさんはほとんど喫煙者。
バックヤードでは、少しの貴重な休憩にタバコを美味しそうに吸ったりしている姿をよく見かけました。
きっと気を使う仕事の表れなのかもしれません。

美容のお仕事なので、タバコはもちろん色々な臭いにも注意を払います。
ミントスなどのエチケットタブレット常用者も非常に多いです。
それから、チョコレート!
細かい作業で脳を使うせいか、本当にチョコレート携帯率が高い気がします。
一休み、のような状況では必ず誰かがテーブルに出してくれます。
サロンではお客様からの差し入れも多いので、お菓子が常備されている印象も強いですね。

お客様が退屈しないよう、手は止めずにおしゃべりにも気を使います。
とはいえあまり真剣に話し込んでしまうと時間が収まらないので、
上手にお客様を話させることが重要になってきます。
そのコツは、相槌。
お話に興味を持っていることが伝わるよう相槌を打って、話を広げてもらいます。
「マジですか?」
「え~、すごい」
「それは知らなかったです~」
「それで、それで?」
みたいに盛り上げるのが上手なネイリストは多いと思います。
すごく集中する作業のときも、ちゃんとその雰囲気は継続させます。
もともと器用な人がなる職業ですから、たぶん同時進行が得意なのではないでしょうかね?
あまり盛り上がりすぎると、隣の別テーブルに影響することがあるので
周囲の様子もさりげなくチェックしたりもします。

もちろん、いつもいつもこんな調子というわけではありません。
時には「暇だね~」というのんびりした日もあります。
そんな日も、空いた時間は雑用を済ませたりアートサンプルを作ったり。
意外にも自分のネイルを直したりするのはダメ、というサロンがほとんどのようです。
ネイリストのネイルは、いつもキレイな方も多いのですが、
同じくらいにあまりキレイじゃない方が多いのも意外な事実です。
これは、自分のネイルにかける時間と余裕がないという理由や、
常に練習をするのでまともなネイルをすることが出来ないといった理由です。
色がバラバラ、長さや形もバラバラで「へんてこ」なネイルをしたネイリストがいたら、
むしろそれはネイリストらしい毎日を送っているからなのかも、と暖かい目で見てもらえると嬉しいです。

04:46 | makiko | ネイリスト達のお仕事風景 はコメントを受け付けていません
2012/05/03

今回は、私の未熟さを露呈する暴露話をしたいと思います。
恥ずかしいし、自分一人だけでなく関わった方々もあることなので
なかなかお話できることではありません。
ただ、時効かな、という厚かましい気持ちも最近あったりして、
あと記事で残すことで戒めにもなるかな、なんて思いまして。
暴露話といえどあまり具体的かつ面白おかしいような内容ではないのですが、いざ。

意外に思われるかもしれませんが、ネイル講師に必ずしも講師資格は要りません(最近はその傾向も変わってきてます)。
現場経験のある者が優先となる傾向があり、資格がなくても経験年数が長い経歴で採用されることもあります。
事実私自身もそうして雇われた経験があります。
私の場合は、お世話になった方の推薦ということもありました。
基礎を教えるクラスの担当だったこともあり、資格がないこともさほど問題ありませんでした。

ある程度の経験と技術レベルに達しているとの自負があったので、この際に他のネイリストと技術を比べるという発想もありませんでした。
そんな中の講師業。アシスタントや代理を長くしていたこともあり授業の進め方などにも不安はありませんでした。
スタッフからも生徒さんからも、呼ばれる敬称は「せんせい(先生)」です。
基礎クラスということは、生徒さんは当然これから基礎を学ぶネイルに関してはいわば素人さんです。
少しは手慣れたネイリストの技術は感心するものばかりで当然です。
自分ではそれなりに勉強してきて、当時も勉強し続けていると思っていました。
そこにこの状況、恐縮する気持ちが強かったものの、しばらくすると慣れてしまいます
「私はまあ上手なネイリストなんだ。なにしろ講師だし」と。

振り返るとこれが罠の張られた分岐点だったのです。
名づけて「せんせい(先生)の罠」です。

技術の上手い下手を判断してくれる機会は、独立したフリーのプロになるとなかなかありません。
いえ、実はあるのですが(大会に出て順位を付けてもらうなど)それを意識することが少なくなるといいますか。
あえてする必要もないと思ってしまいます。
プロでもサロンワークで上司のいる場合は別です。
大抵のサロンでは定期的な技術チェックが行われますし、大会に出ることを推奨する環境も存在します。
しかしフリーということは一人であることが多いので、そういった仲間がいる環境ではないのです。

お客さんははっきり「あなた下手よね」とは言いませんし、
技術を比べることの出来る同僚だっていません。
スクールは卒業しているのでダメだししてくれる先生のような存在もいません。
ましてや職場では「せんせい」なので正しいと思われていることがいつのまにか前提になります。
それに胡坐をかいてしまうと(意図せずにせよ)裸の王様になり下がるのもすぐです。

いくら素人に近い生徒さんでも、そのうち疑問を持ちます。
それは多分、技術うんぬんというよりは本物かどうかという単純な疑問だと思います。
習う側は常に自分の得た知識なり技術なりを同士で比べます。
情報交換も行われるでしょう。そこでは講師側の技量も問われ始めます。
あまりにも酷くギャップのある場合は、スクールのスタッフに相談することもあるのでむしろ発露しやすいです。
そうなればいずれにせよの対処を求められることになるので、これはこれで解決に向くでしょう。
しかしそれすらも今ひとつ起こりえない場合、こちらこそが問題になるのです。

講師自身が自ら気づくかどうか。
さらには、
気付いた(気付いていた)のに気付かない振りをしてたことと向き合うかどうか。

ここで罠は分岐に変わります。

私もこの分岐を経て今現在に至ります。

一度教える側になってしまうと、なかなかこの現実に真っ向から向き合うのは厳しいです。
自分の技術をいったん否定するところまで落とすからです。
関係ないと思っていた、高いレベルの世界に目を向け足を踏み入れる覚悟を問われます。ネイルの場合、その高みとはもはやストイックな「職人」のような世界です。
キレイとか早いとか、そんなレベルではない価値観が存在する世界です。
資格試験はその始まりにしか過ぎず、そこからもこの分岐で進んだ道は続いていきます。
大小の様々な分岐があり、どこがゴールなのかは誰にもわかりません。
自分がゴールと決めたらそこがゴールになります。
しかしゴールは成長の終わりをも意味します。

切磋琢磨、日々研鑽、こんな言葉を実感として味わう日々の連続です。

私の場合、すべては講師としての技量を高め保つためです。
なぜなら、自らの限界を突破しようと足掻くうちに吸収していくものは多く、引き出しが増える分教えられることも増えていくからです。
失敗を経験することは、失敗したら乗り越える攻略法も身に付いているわけで、
まだまだ失敗することの多い生徒さんの目線を捉えることも出来ると思うからです。

技術を高めていくことで、自分自身にも自信がつきます。
(自信を無くすことも繰り返すわけですが)
自信のあるレクチャーは、伝わります。
一番嬉しいことは、生徒さんの技術レベルが上がることです。
ある方から言われた、「生徒は自分を映す鏡」という言葉を嬉しく実感するときです。

教えることは自分が教わること。
私は覚悟を決めて以来、本当に実感してきたことです。
「せんせい」の敬称は、習慣として耳に慣れたと思いますが、
本当の意味での先生になるためにまだまだ勉強中であると思えるようになったのもそれからです。

「せんせい(先生)の罠」に陥ったあの頃、
いま振り返れば辛いこともたくさんあったけれど、
あの罠がなければ今の私もなかったんだな、と感謝のような気持ちも湧いています。

嬉しく楽しいことが多いなか、辛く厳しく悲しいこともあります。
それに立ち向かうのも必要な講師力。
選んだこの道がかけがえのないものだと思えるからこそ、
どこまでこの力をつけることが出来るのかまだまだ頑張るつもりです。

10:21 | makiko | せんせい(先生)の罠 はコメントを受け付けていません

« Previous | Next »