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突然ですが、
「ネイルのモデルをお願いできますか」
と、もしネイリストから言われたらどうなさいますか?
きっと、ご自分の体の一部を褒められたことは嬉しいですよね。
モデル、という響きも何やら素敵な感じです。
綺麗にしてもらえるのかも…という期待も生じるかもしれません。
でも。
ちょっと待ってください!というお話を今回はいたします。
ネイリストにとって現役である以上つきまとうのは「モデルの確保」です。
日々の練習、検定試験、コンテストなど、自分の技術を披露できるのはモデルさんの爪あってこそ。
ちょっと驚かれる事実なんですが、ネイリストは自分でモデル確保をするんです。
ネイリストの目線で見る‘綺麗な爪’というのは一般のそれとはちょっとズレがあるかもしれません。
単に指がスラッと長く、色白で爪が長めに伸びている、
というパッと見の印象に加え細かいチェック点があります。
爪自体が細長く大きい、ということは大前提ですがそのカーブ具合や甘皮周りの様子、皮膚感を含めのバランス、10本が揃っているかなどなどかなり細かいものです。
そのような条件を満たしている方はなかなかいらっしゃらないので、
モデル確保を狙うネイリストは常に周囲の手先指先爪を探っています。
すでにモデルさんがいたとしても、初対面の方に会うとまず爪に目がいってしまうのは職業病ですね。
運よくそういったお爪をお持ちの方に出会えたとします。
がしかし。これで、めでたしめでたし、とはいきません。
むしろここからが難関ともいえます。
本番への同伴はもちろん、それまでの日々の練習にもスケジュールを空けて付き合っていただけるか。
試験やコンテストには爪の長さの指定もあるため、それに合わせて長く伸ばし保つことが可能か。
練習も本番近くなると、少なくとも週1回はお会いすることになります。
また1回の練習時間も数時間はかかります。半日~1日一緒にいる、なんてこともざらです。
本番前日には仕込みと呼ぶ前準備があり、さらには本番当日の拘束時間はほぼ1日とみていただきます。
モデルさんは着席のまま数時間、テーブルに手を出したまま過ごすことになります。
結構過酷ですよね。
私たちもそう思います。ネイリストは技術を必死でこなしますが、モデルさんはジッと座っているだけ。これは相当に退屈で疲れるものです。
ネイリストはこのモデルさんの協力なしでは成り立たないため、良好な関係を築くことを心がけなければなりません。
私も自分のモデルさん(数年来のお付き合いです)には足を向けて眠れません。
交通費やお手当てなどいくらかのお気持ちを渡すことが多いと思いますが、これもネイリスト次第です。
最悪(と言っていいのかどうか)完全なボランティアになることもあるようです。
ここまでの条件でもかなり「モデル」のイメージが変わってしまったのではないでしょうか。
「でも常に綺麗にしてもらえるでしょ?」というお声が聞こえそうです。
残念ながら、それは当日本番のみ、もしくは本番終了までは皆無かもしれません。
もちろん練習や本番が終わった後日お礼でサービスをすることは多いのですが。
コンテストはある程度高い技術のネイリストを期待できますから、爪を大切にされることが多いです。
しかし問題は検定試験。まだお勉強中のネイリストなのでその技術も当然拙いものになります。
練習は文字通り‘練習’で、むしろ爪がダメージを受けてしまう失敗があることも事実です。
試験内容によっては、色々な技法を取り混ぜるためバラバラな出来上がりになってしまうことも。
決してサロン帰りのような仕上がりではありません。
こういった厳しい現実を、ネイリストのために受け入れ我慢し付き合ってくれるモデルさん。
私のモデルさんをはじめ、生徒さんが連れてくるモデルさんのほとんどはそんな下げても下げても下げる頭が足りないような有難い方ばかりです。
もっと嬉しいのは、
時に励ましてくれたり、冷静に(モデルさんは目が肥えていきます)アドバイスしてくれたり、
一緒になって本番を緊張して迎えてくれたり、
良い結果が出たときには自分のことのように喜んでくれたりと、
そんな素敵な関係が築けることです。
私もめげそうになるとき、コンテスト直前の緊張で気分が悪いとき、
モデルさんの顔を見るとホッとします。
と同時に、もっとこの綺麗な手を美しく仕上げて評価されたいとも思います。
冒頭に戻ります。
モデルへのお誘い、
「ちょっと待ってください!」の意図をわかっていただけたでしょうか。
もしこの先そんな局面に遭遇したら、思い出して参考にしていただけたら嬉しいです。