こんにちは。根本齒科室の根本です。
まだクビになっていないようなので、今年もぼちぼちですがよろしくお願いいたします。
先週の1月22日夜、久しぶりに大雪が降りました。
大雪といえば、2014年2月8日と14日の、ひざまでつかるような大雪を思い出します。
8日の日は、常磐線が止まってしまい、佐貫から取手駅まで約8キロを「歩いて」行ったのですが、ひざから下がびしょびしょになってしまいました。
14日は朝方に急きょ三島に向かうことになり、何とか常磐線が動いていたので間に合いましたが、昼からドカ雪になりました。
あのときはちょうど父の逝去と重なったのでよく覚えています。
(あっ雪だるまを作り忘れた)と気がついたとき、ふと先般の痛ましいニュースを思い出しました。
◆「2歳児死亡」more
去年7月、福岡県内の小児歯科医院で、虫歯を治療した2歳の女の子が低酸素脳症に陥り、2日後に死亡していたことが、関係者への取材でわかりました。
警察が業務上過失致死の疑いがあるとみて、慎重に捜査しています。
死亡したのは当時2歳だった(中略)去年7月、福岡県内の小児歯科医院で局所麻酔を使用した虫歯の治療を受けた後、唇が紫色になり、目の焦点が合わない状態になりました。
関係者によりますと、異変を訴える両親に対し男性院長は「よくあることだ」と説明して何の医療的措置もとらず、およそ45分後に(中略)近くの病院に(中略)その後大学病院に救急搬送されましたが、低酸素脳症に陥り、2日後に亡くなりました。
大学病院から通報を受けた警察は、業務上過失致死の疑いがあるとみて捜査しています。
小児歯科医院の院長は、「必要な措置は取ったと考えている」とコメントしています。
引用元:http://newsplusalpha.net/archives/6381398.html
◆ 局所麻酔について
これは見ていて、いろいろな意味でやるせないものでした。
報道では、術後の症状について、院長が「よくあること」と言って、いかにも蛮勇を奮って突き進んだかのように見えます。
また、2歳児への局所麻酔ですが、私は経験がありません。(最小で3歳後半のおりこうさんに1~2度)
一般歯科の先生の大半は、まぁそんなもんだと思います。子供のむし歯で訪れても、進行止め(サホライド)を塗って様子をみましょう、ということが大半なのではないでしょうか。
そこで、以前からお世話になっている、小児歯科の認定医でもある師匠の先生に聞いてみました。
やはり、専門医(小児歯科認定医)でもあり、当院ばかりでなく多方面から依頼されたり行き着いたりした非協力児の治療を数多く手掛けておいでのようです。
いわゆる「●●最後の砦」救助におけるMedic(航空救難員)のような存在、俳句における夏井いつきのような存在、といえば、それ以上説明はいらないでしょう。
2歳児は何度か経験があり、3歳児は頻繁に行っているとのことですが、生まれて初めての麻酔は非常に神経を使うとのこと。微量を入れて様子を見ながらだとのことです。
児の非協力的な点よりも、まず麻酔のアレルギー反応などに気が向くということは、弟子の私(凡人)が言うのも難ですが、「才能アリ」が遠く感じます。
私あたりのレベルでは、どうしても子供が動かないように、とか、手早く処置するには、とか、ナメられないように、とかのほうに注意の大多数が向いてしまい、僭越ながらレベルの差を痛感する、などと傲岸不遜なことを思ってしまいます。
一般的には、歯科の麻酔カートリッジ(2%キシロカイン1.8ml)で極量の目安が成人男性で12~13本と言われていますが、これは麻酔薬よりは止血のためのエピネフリン(=アドレナリン。1/8万)による制約だといわれています。とはいえ、局所麻酔未経験の児は、やはり怖いです。
エピネフリンは、時折動悸などの不快症状(β反応)を引き起こします。交感神経と副交感神経で言うところの交感神経の方が興奮してしまいます。
私も何回か経験していますが、無理せず頭を低くしてしばらく横になって休むと回復します。
そういう人の麻酔は次から、高齢者用などの違う種類のものに変更します。
ただ、麻酔が初めてという人では、幸いにもβ反応を経験したことがありません。
「今まではこんなことはなかったんだけど、今日は・・・」
幼児でもまだ幸いなことに事故はありません。
◆ 小児歯科の先生の話~衝撃の事実
そんな師匠の先生なので、今でもしばしばお世話になっています。
先日も、あるお子様に治療台の上で号泣&大暴れされて、手も足も出なくなってしまったので、またお世話になることに。
後日メールで返信が届き、無事治療が済んだようです。
ところが、先生からの返信は、目を疑うような内容でした。
何とも説明しようがないので、当該部位を引用します。
先日の、●●ちゃんのおかあさんは、●●ちゃんに
「お願いだからちゃんとやって。」
「お願いします!」
と何度も子供に頼んでいました。
「何するの?」
という子供の質問に対しては
「何にもしないから。見せるだけだから。」
私は思わず、
「お母さん、本当に見るだけにしますけどいいんですか?」
と言いましたもん。
・・・お、お願いしますかよ(‘A`)
ちなみに私が修行中のころは、非協力児の子を抑えたりレストレイナー(簀巻き?!)に入れたりするのをよく手伝ったものです。その辺の態勢は非常によく整っており、しばしばスタッフの皆さんと数人がかりでやっていました。
今にして思うと、その辺の、抑え込むか抑え込まないかなどの判断は、慣れていないと難しいかもしれません。
あまり無理やり押さえつけてインシデントになるのも避けたいですし、かといって通常の方法では困難とはいっても、自分が下手なだけかもしれないと思うと、つい道具に頼りたくなるだろうし。。
とにかく、押さえつけられて治療される羽目「になってしまう」2歳児3歳児が一番気の毒でなりません。誰のせいだ?
◆ 後日談ですが、むし歯8本・・・
改めてネットで引き直したところ、なんと2歳にしてむし歯8本という口腔崩壊状態にあることが分かりました。
http://matomame.jp/user/marifx1800/cab265884f719869a6c9
ツイッターなどでは、親が悪い派と歯が弱い派に分かれているようですが、エナメル質減形成などの分かりやすい先天異常があれば必ずニュースなどで言及するはずです。そこで報道しない自由を駆使するようならそいつは人間ではありません。
また、「よくあること」がどのあたりを指しているのかは分かりませんが、
この辺りを見ると、「拘束されて」「ラバー」などの単語が出てくることや、報道でも「小児歯科医院」という特徴的な表記になっていることから、院長は一般歯科医に比べて幼児の治療に一定レベル以上の自信を持っていたことが容易に見て取れます。おそらく師匠の先生ではありませんが、院長も、周囲の歯医者でダメで流れ着いてくるようなレベルであったと思います。
これは決して同業だから彼をかばって言っているのではありません。幼児に対して「拘束」「ラバー」は相当慣れていないとスムーズに利用できない道具です。私などもラバーのかわりにZOOで代用してしまうことが多く、むしろ感心します。
しかし、やはり気になるのが、「むし歯8本」です。
ご案内のように、1歳6か月になると自治体の保健センターで必ずイチロク検診があり、歯科も必須になっています。
その前に、小児科で何度も予防接種を行うと思いますが、必ず先生がのどちんこなど口腔内を観察します。
むし歯8本といったら、要観察歯や成りかけも含めてほぼ全滅に近い状態です。小児科の先生が気がつかないはずがありません。
この年齢でむし歯8本ということ自体がきわめてまれな異常事態です。
難病でもないのにどうやったらむし歯を8本も作れるのか、不思議でなりません。
しかし、このくらい簡単にできるとして、一番考えられるのが、「ボトルカリエス」でしょうか(最近はあまり聞きませんが)。
1歳くらいになると、自分で哺乳瓶やスパウトマグ、ストローマグから飲料を飲めるようになります。我が家は麦茶とルイボスティーしか与えていませんが子供がよく飲むからと、スポーツドリンクやジュースをボトルに入れたまま子供に任せてしまう例が時々あるようです。
そのまま放置状態でいると、ボトルの吸い口に当たる上下左右の前歯数本づつ、特に上顎があっという間に酸蝕してしまいます。
これがボトルカリエスです。Google画像検索で結構キツイのが出てきます。
院長はおそらく、そのあたりの環境面における何らかの異常性を敏感に察知して、「これはいけない!」と、スイッチが入りすぎてしまったのでは、と「忖度」します。
その院長のキツイ思いはどこに向かうかというと、100%、いや、200%親です。これはもう、ストレートに親です。
「コイツを何とかしないと、この子は救えない」
院長もプロです。1秒かからないで直観で全てを悟ると思います。
ここまでは、ほぼすべての歯科医が、特にストレートに親に気持ちが向かう所などは「うんうん」と納得するところだと思います。
しかし、そのキツイ思いが親に向いてしまった結果「よくあること」などという敵対的な言葉になってしまったり、その言葉で逆に自分に引っ込みがつかなくなってしまったりしたところはないでしょうか?
傍目八目とは申しますが、チアノーゼ様状態など、急性症状を示している状況では、深入りしすぎだった感を禁じえません。
ある意味、泣き叫んで抵抗する児(とその親)をいかにコントロールするかが小児歯科の腕の見せ所の一つだったりもします。腕に自信があればあるほど(俺はその辺の藪医者共とは違うんだ)と思って頑なになってしまうのかも知れませんが、最後には謙虚な部分を残しておきたいものです。
◆ 1歳2歳の対応が大事~人間に生まれた以上
小さい子供が泣くと、やはり親としては心配になるものです。
2歳になると、子供の「イヤイヤ期」というのが訪れるのはご案内の通りです。
育児サイトなどを見ると、おしなべて
「ある程度子供のわがままは受け止めましょう」
等と書いてあるのを見るにつけ、今からうちの1歳2ヵ月を見ながら暗澹とした気持ちになってしまうのですが。
しかし、私は思います。
人間に生まれた以上、「好き嫌い」を超えた「理性的な努力」が必要です。
いやだけど頑張る
好きだけど我慢する
これは動物にはできない、知的にタフな作業です。
(種によってはある程度芸として仕込むことができる)
これができることは、進歩と成長のための必要条件だと思います。
当然と言えば当然ですが、大人の立場から子供を見ていて思うのは、基本的に
自分のことしか考えない。自分中心
好き嫌いでしか判断しない。
です。週末のモールのフードコートにでも行けば、そんな親子連れが掃いて捨てるほどいます。
まずいなぁ、と思うのは、親までが、子供の好き嫌いに振り回されてしまっているところです。
「これいや」
「じゃぁ、これこれ」
「これこれもいや」
「じゃぁ、あれ」
「あれもいや」
「もー、いいかげんにしなさい」
こんな感じで会話が進んでしまうんです。。
これが究極まで進むと、子供に「お願いします」になっちゃうんだろうと思います。
人間は基本的に、自分の都合ばかりではなくある程度周囲のことも考えて行動しないといけないし、自分の好き嫌い以外の基準で動かないといけないものです。
だから、物事の判断や行動基準は、好き嫌いと切り離して検討できる知的にタフな作業が必要なんです。
そこは少しづつ子供にはわかってもらわないと、と思います。
ただ、まずは好き嫌いの感情をしっかり学ぶ必要があり、その意味でイヤイヤ期は必要悪な時期かと思われます。
この辺については、もう少し書く機会があれば書いてみたいと思います。
【今回のまとめ】
小児歯科。幼児にむし歯を作ってしまう人的・環境要因の闇は深い
こんにちは。根本齒科室の根本です。
当院では目下、急きょスタッフ募集中です。
ところで、今回の知覚過敏については、臨床においてずっと気になってはいましたが、JunkStageのシステムに発生した不具合も修正され「財務ラオ」さんも復活したようですので、改めて自分なりに少し書いてみようと思います。
知覚過敏。
最近CMでも気になるキーワードですね。
いろいろ原因があるわけですが
歯周病でScしたら一次的にしみるようになった
むし歯がしみた
歯にひびが入ってしみた
パティシエ、化学工場勤務、酢が好きetc環境因子によるToothWear等
などのまれな例や直接的でない例は今回は除外して、狭義の知覚過敏について私なりに説明します。
◆ 知覚過敏の原因
知覚過敏の歯の多くは歯の生え際がすり減ったように見えます。
以前は歯ブラシが雑だから歯がすり減るといわれていましたが、研究の結果、ほとんどの場合はそうではなく、歯ぎしり食いしばりなどの過剰な咬合圧が中心になって歯がたわみ、その影響で歯の生え際が欠けるということがわかりました。
まれですが、酸による浸食や、雑な歯ブラシによる摩耗もあることはあります。
◆ 歯がたわむと
この手袋のように伸びたり
縮んだり
しようとします。
しかし歯はゴムのようなわけにはいきません。
そのような伸び縮みの力に耐えられるはずもなく、このように表面がボロッと逝きます。
しかも、内部応力はへこんでいる部分に集中しますから、全ての力は生え際に、まさに「しわ寄せ」が行き、結果、ボロッと取れるわけです。
そこで絵をご覧ください。
神経がしみている部分が横ですね。
矢印の長さを比較してください。
横は非常に神経に近いので、ちょっとしたことですぐしみやすいのです。
いっぽう、歯のてっぺんは神経からの距離が遠いので、相当大きな穴にならないとなかなか症状として出にくいものです。
◆ なぜ歯が欠けるとしみるのか
歯の断面をもう一度見てください。
他の図でもそうですが、歯の断面を描くと、一般的に「旭日旗」のような放射状の模様になることが多いです。
歯の中心の部分は、太陽ではなく、神経(歯髄)です。
そしてこの旭日旗のような部分は「象牙細管」といい、多くの細かい穴です。
この穴は象牙質の部分に放射状にびっしり開いており、それぞれの穴の中に神経のセンサーがあります。
絵では一部だけ極端にパイプのように書いていますが、これは見て分かりやすくするためのものです。赤腺のような部分は省略した部分ですが、要は同じです。
これが先ほどのようにたわんで、伸縮できない外面がばきっと割れます。
エナメル質という殻の部分にはこのようなセンサーや管はありませんが、欠損が象牙質まで至ると
この穴が露出することになります。
そうするとセンサーがいきなり外界と交通して、象牙細管の中を満たしていた水分が流れ出します。
この水分の動きや温度変化で歯がしみるわけです。
◆ 知覚過敏になるとどうなるか
このような状態になると、一部のセンサーが常に露出して刺激に晒される形になります。
一部のセンサーが常に刺激に晒されるのは
歯周病でScしたら一次的にしみるようになった
むし歯がしみた
歯にひびが入ってしみた
パティシエ、化学工場勤務、酢が好きetc環境因子によるToothWear等
の場合でも基本的に同じです。
◆ 知覚過敏を抑えるには
まずはこの晒された一部のセンサーを外界の刺激から守ってあげることです。
◆ 表面的な作用
最初にやることは、露出したセンサーをふさぐことです。
歯科医院で塗布する薬はこのような機序です。
当院で塗布する薬物「ティースメイト ディセンシタイザー」の中には「象牙細管」の直径よりも細かい粒子(ハイドロキシアパタイト)がたくさん入っており、塗布すると、粒子が穴に詰まり、センサーへの直接的な刺激が遮断されます。
この写真をご覧ください。汚い手で恐縮ですが、よく見るとパウダーがたくさんこびりついて毛「穴に詰まって」います。
そうです、こんな感じで歯の「穴に詰まって」いるんです。
図にするとこの灰色のような感じです。
そして、最近コマーシャルで目立つ「シュミテクト」などの知覚過敏用の歯磨き粉も同様な作用機序で症状を抑えます。
市販の歯磨き粉で知覚過敏に作用するおもな薬効成分は2種類あります。
①硝酸カリウム
②乳酸アルミニウム
①硝酸カリウム
知覚過敏用のものには基本的硝酸カリウムにが入っています。
ただ、ハイドロキシアパタイトのような実際の粒子で詰めるのではなく、カリウムイオンによってセンサーの神経を脱分極させて刺激を抑制するというマイルドなもののようです。
ですので、院で塗る薬よりは切れ味は劣ります。
ただし、硝酸カリウム入り歯磨剤による知覚過敏の症状緩和には2~3週間を要します。
ジーシー社の説明でもこのようになっています。
②乳酸アルミニウム
現状、私が推奨するのはこの「乳酸アルミニウム」入りです。
作用機序は、唾液中のリン酸イオンと反応してコロイドを形成し、この粒子が象牙細管に詰まって刺激が直接遮断されます。
(鶴見大学歯周病学教室(PDF))
歯磨き粉の効能書きはウソばかりが多くて辟易すると常日頃から言っている私ですが、知覚過敏系だけは別です。
とくに市販品でも「②乳酸アルミニウム」が含まれているものはより効果が期待できますので私からもオススメです。
残念ながら、もっともメジャーな「シュミテクト」には乳酸アルミニウムは含まれておらず、中等度~重度の知覚過敏には無力だと思われます。
◇ライオン デントヘルス薬用ハミガキ しみるブロック
◇生葉(しょうよう) 知覚過敏症状予防タイプ
◇ライオン システマセンシティブ
◇松風(しょうふう) メルサージュヒスケア
◇小林製薬 薬用シュミナインW
だいたいこの辺りでしょうか。
とくに薬用シュミナインWがあった場合はラッキーです。
シュミナインW、意外とネットで出てきません。
NID PBの検索で茨城で出てきたのは一軒だけでした。
ドラッグストアセキ 荒川沖店
〒300-0874 茨城県土浦市荒川沖西1-18-26
6号を下って学園東通り(県道25号)の交差点に向かう700m手前進行方向右です。
近所のドラッグストアなどで発見できなかったらさっそくamazonなどでポチってみましょう。
ピンポイント買いの場合はやはり実店舗よりもネットです。
ではどうすればよいか。
少なくとも夜寝る前に磨くときは、なるべく5分以上は粘って、歯の曝露時間をながく稼いでください。
そしてゆすぐ時もがっつりゆすがずに軽くゆすぐ程度にとどめてください。
これが短期的な方策です。
今お手持ちの歯磨き粉はひとまずおいといて、目安としては1本使い切るくらいまでそのまま使用してみましょう。
◆ 力学的な作用
当然ですが、歯が欠けたのは歯がたわんだからです。
歯がたわんだのは歯ぎしり食いしばりが旺盛だったからです。
ですから、歯ぎしり食いしばりをしない、という方向になります。
夜にお困りの場合は、夜用マウスピースの作成も有効です。直接歯ぎしり食いしばりをなくすわけではありませんが、その暴力的な咬合圧を分散して歯を保護してくれます。
昼間は、自分で注意します。
何かを食べるとき、そして、重いものを持つなど踏ん張るとき、これらのときはどうしても歯をかみしめざるを得ません。
しかし、そうでないとき、たとえば運動強度の低い家事をしているときや本を見ている、テレビを見ているetcなときは、意識的に歯を休めなければいけません。
つまり1ミリくらい浮かせて、歯と歯が触れないようにしておくのです。
歯も道具です。道具は使い終わったら手入れしてしまって(休めて)おくものです。
ここで歯ぎしり食いしばりについて語ると長くなるので、患者様用のパンフレッドを置いておきます。
<夏目漱石>。
ご自由にお持ちいただき、目を通しておいてください。
◆ 生物学的な作用
そんなこんなで数ヵ月たつとどうなるでしょうか。
神経もやられっぱなしではありません。何とかしないと、と内側に防御壁を構築します。
これを「修復象牙質」といいます。
これにより、内側から象牙細管をかなりの程度詰まらせ、歯隙を遮断していくわけです。
この絵の、緑色の部分がそれに当たります。
このころにはもう知覚過敏自体は収まっています。
しかし、くぼみ自体は残るので、必要に応じて補修したりします。
これが知覚過敏が収まる理屈であり、中期的な方策です。
このような作用は、日常から大なり小なり歯の中で起こっています。
たとえば萌出直後の子供の象牙質は神経の管が太いのですが、中高年の象牙質は神経の管が全体的に詰まって狭窄しています。
これは外部の刺激を受けて、ゆっくりゆっくり、図の緑色の部分が内部から形成されて厚みを増している証拠です。
しかし、刺激の方が強過ぎると、神経が耐えかねて壊死を起こし、最終的には神経が感染して腐ります。
◆ なぜ再発するか
それは、治りかけなのにまた「歯ぎしり食いしばり」をするからです。
だからまた歯がたわむ。
だからまた歯が欠ける。
だからまた歯がしみる。
簡単なことです。
つい最近までこのようなことが広まっていなかったので、歯ぎしり食いしばりなどで歯の圧が強い人が知覚過敏を繰り返すたびに歯の欠け・へこみがどんどん大きくなり、「楔状欠損」と呼ばれる歯の生え際の欠けが多く存在しましたし、現在も日常的に見ます。
欠けたなら埋めればよい、ということで、当座はコンポジットレジンを充填して様子をみることも多いのですが、詰め物は歯よりも軟かい材料ですし、「しわ寄せ」は一番弱いところに向かいます。
ですからいくら詰めても「詰め物がぽろぽろとれてくる」とか「詰め物がへこむ」「詰め物に接した上下がへこむ」などの二次被害が生じるわけです。
これらのほとんどは歯ぎしり食いしばりなどの過剰な咬合圧によるものであり、何とか歯を休める方策を考えることが第一選択になります。
これが長期的な方策です。
また、知覚過敏以外にも、骨が弱い人は外傷性の歯周病、歯が弱かったり横の動きが大きい人は咬耗、関節が弱い人は顎関節症など、過剰な咬合圧のしわよせは、どこかしらに行くものです。
過剰な咬合圧によるさまざまな害悪は、書き出すと煩雑になります。PDFにまとめたものがありますのでご査収ください(画像をクリック)。
【今回のまとめ】
知覚過敏の対処には短期的・中期的・長期的な方策がある。
こんにちは、根本齒科室の根本です。
歯ブラシの話の続きでしたが、ちょっと置いて、今回は別の話です。
3-4年くらい前かな。初めてガラケーからスマホに変えました。
XPERIA SO-04E って奴です。
ご多分に漏れず、はじめてLINEを知り、すごいなぁ!と思いました。
ICQやチャットとは全然違います。
しかもFacebook垢でもログインできるではありませんか!
まさかLINEが欧米で独壇場のWhatsAppのパクリだなんてその時は知らなかったし
そこで、調べてみると、月5000円くらいで商売用のアカウントも取れるようです。
それはLINE(ライン)ではなくLINE@(ラインアット)と呼ぶようです。
よく分からないまま、とりあえず浮かれて登録してしまいました。
(まあ、国政政党も浮かれて結構垢を取ったりしてたし、いいか)
それが、これです。
じゃーん(クリック)
↓
当時の院内新聞『種Vol.15』です。
ラインアットどころか、どこで調べてきたんだか、「紹介カード」なるものも当時始めたようです。
(裏に名前を書くとか、そんな奴)
何だか、院内新聞が備忘録のようです。
Vol.17の一面トップが「院長が禁煙」の記事なので、まだこのころはタバコを吸っていたんですね。それだけでも時代を感じます。
当時は、LINEのスタンプのコニーがリラックマ、サリーがキイロイトリのパクリにしか見えませんでした。
しかし集客に悩んでいた上に調子に乗っていた私は、こういうのをチャラチャラちらつかせておけば、若い層や女子の層などに少しはウケるのではないか、などと思っていました。
浅はかですね。実に浅はかです。
で早速初めて見たのですが、何も書くことがありません。
そりゃそうです。
◆
何しろ我々は保険医療機関です。
キャンペーンやクーポンなどを打ち出したら、療養担当規則違反になって、地方厚生局の鬼より怖い個別指導が待っています。
必然的に「『種』を出します」とか「『ジャンクステージ』にコラムをageました」とか、そんなのばっかになってしまいます。
◆
また、こんなシステムで集客ができると思った私が愚かでした。
何しろ「医院の待合室のQRコードを読み込んで友だち登録をしてくださった方」という非常に狭き門を潜り抜けて見えた方にしかメッセージを送信できません。
メッセージが途切れがちになるたびに、株式相場のちょうちん落としのように、ばらばらと登録者数が減少していくのは当然で、ついに100を超えることはありませんでした。
少し考えたら、分かりますよね。
LINE(とかWhatsAppとかカカオトークとか微信とか)って、基本、仲間内でやり取りするものですよね。悪い例では、学校裏サイトなんかに近いですよね。
ですからリピーターのメンテナンスはともかく、新規の集客には一番向いていない形です。
FacebookとかTwitterとかインスタのように、不特定多数の方は向いていないんです。
それにあのツイ民同士の大ゲンカみたいなのは、上念司さんや渡邉哲也さんの所のを見ていても、面倒くさいな、と感じていました。
◆
ここでも誤解があるんですが、政治や経済って日本や世界相手の話題ですから、だからこそあんな大ゲンカが起こり得るんです。
一方、歯の話なんて、ぶっちゃけどうでもいいですよね。
むしろない方がいい話題ですし、ローカルな話題です。
だからこんなローカルな話題で炎上したりするわけがないんです。
って思ったら、Twitterなんかやる気が失せてしまいました。
「@ジェリーロール・ネ・モートン」なんてキザな垢までつくったのに。。
◆
そうこうするうちに半年たち、一年たち、更新のないまま毎月5000円の引き落としが続いていきました。
何とかしないと、とは思っていたのですが。。
そこで先日、意を決して、サポートにメールを送ってみることにしました。
といってももう1ヶ月くらいたってしまった話ですが。。
「解約したいのでご高配ください」
ほどなく帰ってきたメールは、とんでもない物でした!
噂に違うことなく、びっしりと並ぶハングルの羅列!
何かこう、えも言われぬ不安感というか、ぞわぞわした変な感覚に襲われ、思わず息をのみました。
こんなに露骨だなんて!
(毎月5000円、どうしよう…)
悩んだすえに、いろいろ探してみました。
「LINE@(ラインアット)」って、なかなか検索にヒットしないんですよね。
「LINE(ライン)」が出てきちゃう。
大変でしたが、どうやら、調べたら、無料コースができたようで、そちらに変更することにしました。
各コースの違い(Click)はこちらから見ると分かりますが、今まではベーシックとプロしかなかったのですが、どうもフリーが出来たようですので、ひとまずそちらに移行しました。
じつは、やめ方とか、今でもわかりません。
何か聞いて返信がハングルだったりしたら…
正直、今でもちょっとビビってます。
…でもどうしよう。
読者の皆さんに、6月いっぱいでおしまい、とか書いて送っちゃった(笑)
【今回のまとめ】
LINE@は、始めやすいけどやめにくいニダ。スカパーみたい。
こんにちは、根本齒科室の根本です。
まだ小学校に入るか入らないかの頃です。
母との入浴後は、風呂上りに歯みがきをするのが常でした。
母「歯をきちんとみがけていると、べろで舐めると
表面がツルツルになるんだよ。みがけてないとザラザラ」
よく横で言われていたものです。
しかし私はいつも、(それは反対じゃないか)と思っていました 。
私はまだ5~6歳でしたが、、歯ブラシ前に舌で舐めるとツルツル(というか今思うとヌルヌル)していて、磨き終わると舌触りがザラザラに変わるように感じていました。
当時は、今と違って、仕上げ磨きという概念がまだなかったと思います。
私もやられた記憶は一切ありません。
また、乳歯がボコボコむし歯になっても「大人の歯になったらむし歯にならないように頑張ろう」みたいなのどかな感覚の時代でした。
歯ブラシ方法なんかも当然(私の記憶が確かなら)自己流です。
高度成長期なんて、そんなもんです。
おかげで休み期間になると歯医者は子供で大盛況。
歯医者の30分待ち1時間待ちは当たり前でした。
◆
その後、大学に入るまでは、あまりその辺の舌の感覚がどうとかは意識せずに過ごしてきました。
そして、だいたい上記の話から20年後、仮面浪人や留年など回り道もしながら進学して、大学5回生のときです。「予防歯科学」と称する科目の、とある実習がありました。
それは、いくつかの数人のグループに分かれて行うのですが、グループ内で決められた人が
▲1週間、歯を磨くな
▲カールとか歯にこびりつきやすいものを積極的に食べろ
という指示を受け、我慢して1週間後に「磨き残しの染め出し」や歯肉の炎症の評価などをやる、というものです。
残念ながら私はその「決められた人」に当たってしまいました。
実習の内容の詳細は忘れましたが、とにかく期間中には、歯肉から血の味がするので閉口したのを覚えています。
実習期間が終わり、やっと歯を磨いてもよいことになりました。
そのとき、あることが判明したのです。
汚れがべっとりついてヌルヌルの歯を一生懸命ブラッシングしてゆすぎます。
すると、ところどころ、ザラザラというかボツボツしています。
「あっ、これが固着して取りにくくなった層状のプラークの一部か!」
汚れ、というか「菌」は、最初のうちはふわふわしていて軟かいんです。食品にたとえると「イクラ」です。これが、何日もたって熟成してくると、まず表面、次に中がザラザラ硬化してきます。食品にたとえると「スジコ」です。
で、ひどいのになるとスジコのスジが凶悪化してきたり、あまつさえ石灰化したりして(=歯石)ゴワゴワ・バリバリしてきます。
その上の表面にさらにヌルヌル層が乗っかって、全体として雑菌の複合体(=バイオフィルム)のようになってしまいます。
この辺を、なんと6年も前の過去記事でAA(アスキーアート)で説明していました。
手前味噌ではありませんが、今見ても直感的にわかりやすい点で有益と思われますので、ぜひリンクをたどってください!
「AAで見る、歯の汚れと音波歯ブラシ」←クリック!
過去記事では、歯の汚れの雑菌の状態を
(1)歯をみがいた直後の状態
(2)何時間かたった状態
(3)こびりつき始め
(4)腰の入ったこびりつき
(5)カルシウムを吸って歯石化
の5段階に分けて説明しています。
(5)については、歯周病になりやすい傾向の人(=歯周病菌の(数というよりも)比率が高い人)は早くこうなりますが、むし歯傾向の人(歯周病菌の比率が低い人)は、部位にもよりますが(4)どまりのことも多いです。
これでいう(4)や(5)まで行ってしまった人が大雑把に歯をみがくと、表面のヌルヌルだけが取れて、奥のザラザラした熟成部分がかなり残ることになります。
そうです、これが幼少時の私が体感していた感覚です。
(そうか、まだ下の硬いヤツが磨き残しになってたんだ)
思いっきり気合を入れて磨きなおし(プラス、(単なる思い付きのことですが)ある特殊な方法[註]で仕上げ磨きして)舌の先端で舐めてみました。
今までのモヤモヤが心理的にも実際の感覚的にも、一気に除去されたような、気持ちの良いスベスベな表面が現れました。
私は思いました。
プラークって、意外と取れない。
なかなか難敵だなぁ…
まとめます。
①熟成して上がヌルヌルに((4)や(5))
↓
[A]大雑把に歯ブラシ
↓
②上のヌルヌルを取って、下のザラザラが残る
↓
[B]ていねいに歯ブラシ
↓
③下のザラザラも取れてスベスベ((1)や(2))
ここから
ヌルヌル<ザラザラ<スベスベ
の関係性が見て取れます。
ひとつ注意ですが、プラークが積もるときは、7年前のコラムでいうところの(1)→(2)→(3)→(4)→(5)の順に進行しますが、これは層状のプラークの最深部の状態を表したものです。
ですから最深部を除去するときは(3)のような緩やかな状況を経由せず(4)のような硬い状態のまま除去する形になります((5)は歯石なので歯科医院で取る必要がある)。
また、ブラッシングの[A][B]については、[A]が子供レベル(幼少時の私)の歯ブラシ、[B]が大人レベル(幼少時の母)の歯ブラシとご理解ください。
言語の表現は難しい。
幼少時の自分を思い出しながら、そんなふうに感じました。
【今回のまとめ】
プラークは、ザラザラ→ゴワゴワ+ヌルヌル と層状に進化する。
[註]ある特殊な方法 については、全く大したことはありませんが、次回書きます。
こんにちは、根本歯科室の根本です。
前回は思い切って、手抜き(時短)について書いてみました。
私も現在は院長と乳児の父の掛け持ちですのでつくづく思いますが、今ほど
『時は金なり(Time is MONEY)』
を実感することはありません。
生活していて、つねに一分一秒が惜しまれます。
スーパーのレジでトロいのがいると、イライラします。
銀行の窓口で不必要に待たされると、イライラします。
空いた時間は、つねに全て子供や家族に充てたいと考えています。
だからこそ、10秒チャージ(ウィダーインゼリー)的な考えには共感します。
しかし、入れ歯については、気になるCMがあります。
今回の話題は、解釈的にちょっと微妙な線引きを感じます。
そこで、”意図的に”シンプルに理解していくことにします。
若林先生。
ぼけーっとテレビを見ていると、、何気なくちょこちょこ出てきますね。
ポリデントの宣伝です。
個人的には直接存じ上げませんが、Yahoo!ジャパンのヘッドラインのPRのところにもしばしば出てきますので、有名な先生なのではと思います。
なんでも、入れ歯を水を張ったコップに入れて、『これ』をドボンと入れておけば、翌朝には入れ歯はきれいになっている、ということのようです。。。
知覚過敏のシュミテクトの大塚寧々よりも、CMの頻度的には上なんじゃないかしら。。
◆
そういえば昔、ホンマでっかに出ている武田邦彦先生がネット音声ファイルで言っていたと記憶しているのですが(どのMP3かは忘れました)、えてして専門家というものは、実に巧妙に嘘をつくものなんだそうです。
説明の最初の方の分析や総論などは、だいたい正しいことを言うのですが、最後の結論付けに大きな影響を及ぼす後半部分で、ちょこっとだけウソを混ぜて、そのまま素直に読める論旨とは反対の結論に持って行ってしまうんだそうです。
そのたびに武田先生は奥様に「ほら、今コイツ嘘ついた」と説明しているそうなんです。。
この話は、まあ先生ご専門の理学や工学に関係する分野の話だとは思いますが、この話は分野をとわず枚挙にいとまがないですね。
私はそこまでして反対の方向に結論を持っていくのが専門家の仕事とは思いたくありませんので、彼らの思考回路に共感はできませんし、そういう仕事はしたくありませんけどね。
一番分かりやすいのは政治、なかんづく日本共産党です。
多くの保守系論客の方が指摘するのですが、説明の前半部分の分析はきわめて正確かつ精緻で、それは見事でありながら、そこからなぜか反対方向に議論が導かれてしまい、後半部分の結論付けはまた見事に反対になってしまう、とのことです。
次に分かりやすいのは、日テレのZERO(23時)のMCを務める「財務ラオ(ざいむらお)」です。
この財務ラオは、ほのぼのした社会面的ニュースや当たり障りない部分では無難にMC役をこなすのですが、こと経済に関しては、政府債務ならぬ「『国』の借金」などというおためごかしを多用し、とにかく『消費税増税による財政再建』という完了的大本営発表をあの虫も殺さないような微笑で説くので性質が悪いです。
もう、名前からして出自が丸わかりなので、ダメですね。この辺に固執する頑固さは、読売テレビの「辛『抱』死”労?!」と相通ずるものがあります。
でもこの間、例のごとく「『国』の借金」800兆とか財務ラオがドヤ顔で言ってるのを見てて、思ったんです。
つい数年前までは「『国』の借金」1000兆直前、日本は破たんとか言っていたくせに、もう200兆も「『国』の借金」が減ってるじゃん、それでねぇ、いつ破綻するのかねぇ…
あの史上最低レベルの金利、安定しきったCDSを、素人にも分かりやすいように説明してほしいもんです。頭の中でクマが3匹ぐらいドンドンと踊ってます。
あと侍ジャパンの「韓国慕(かんこくぼ)」監督もひどかったですね、とくにプレミア12w
この、何とか相手国を勝たせるための好調大谷の硬板、則本の回跨ぎは野球ファンの記憶にも鮮明な所でもあります。
そうでなくても、大人にはみんなポジションがあり、政治家に限らず、党利党略や派閥の理論でしか物を語れないから、だから「オトナ」なんだとは思います。
でもそれが結果として誤解を生む形での金儲けの一助を担ってしまうのは、どうかと思います。
◆
さて、ポリデント。
「入れ歯は毎日除菌してください。
入れ歯洗浄剤 ポリデント」
もうこの文章だけで、噴飯ものなんです。
どこがおかしいでしょうか?
ちなみに、CM中では若林先生ご自身はギリギリのところで「洗浄」という表現を避けておられます。
上記については当然ご案内なのはいうまでもないことの傍証です。
分かりにくい人は、こちらをごらんください。
うちの院内新聞でも紹介したのですが、「ひよこクラブ」の一ページです。
「ベビーグッズは除菌前に
きちんと洗浄、がマスト」
そうです、これが正解です。
今我が家にも乳児がいて、哺乳瓶などの管理をしているのでよくわかります。
①見える食べかすやプラークを取る
②見えないヌルヌルを取る
③水(や○○)につける
これが正しい順番です。
そして、①②が洗浄、③が除菌です。
哺乳瓶は、完全に①と②が分かれています。
哺乳瓶の除菌の液は一般に「哺乳瓶『除菌料』」という特殊な名前です。
西松屋とかバースデイなどに赴くとわかります。
まぁ、ほぼほぼハイターと同じ成分(次亜塩素酸ナトリウム)でしょうけど。
で、ポリデントのCMのどこが悪いか。
若林先生「私たちが市販の洗浄剤をお薦めするのは、洗 浄 だ け で な く 同時にしっかり除菌もできるからなんです」
…あれっ、先生『洗浄』って、言っちゃってましたねぇw みいつけた!
もうお分かりですね。
これは哺乳瓶にたとえたら、乳首とかを洗わずに、軽く水でちょちょって流して、そのままドボンと除菌料入れに入れるのと同じです。
絶対にありえない絵です。
入れ歯も同じです。
年寄りのだから雑でいいや、というわけにはいきません。
そう、このCMをうのみにしたら、入れ歯とかを洗わずに軽く水でちょちょって流して、ベトベトとかヌルヌルがザックリそのまま残っている状態でドボンとポリデント入れに入れるのと同じです。
これで明日の朝にはきれいさっぱり、と消費者は誤解してしまいます。
まったく効果のない方法ですが、「これは手間がかからなくていい」と。
あのバブみたいに出てくる泡になど、洗浄効果など実質皆無です。
ですので、入れ歯はまず手でしっかり洗う必要があります。
きれいに見えてもヌルヌルが結構ついていたりしますし、茶渋やヤニ、入れ歯についた歯石などは基本的に専門的な道具でとる必要がありますが、そうでない①食べかす や②ヌルヌル はしっかり手で取る必要があります。
ですから①②洗浄 と、③除菌 を分けなければいけません。
それでなくても哺乳瓶よりも汚染度合いが高い入れ歯。
③除菌 の前に、①②洗浄 を、哺乳瓶以上にしっかりやるのは当然ですね。
それには、義歯用ブラシを1本用意しておくのがベターです。
スニーカーブラシでもいいのですが、あのような硬い毛足は、意外と頑固なヌルヌルに効果的なんです。
時短は時代の要請でもあるし、さまざまな分野で積極的に検討されるべきだと思いますが、手を抜いてはいけないところは抜いてはいけません。
その辺の塩梅や判断にこそ、専門的知識が求められると思います。
それを、プロや専門家がミスリードを助長してしまっているように思えた一件なので気になりまして、在野の一街医者ですがひとことコメントいたしました。
【今回のまとめ】
洗浄と除菌は別。物理的に洗浄した後に化学的に除菌。
こんにちは、根本歯科室の根本です。
だいぶ間が空いてしまいましたが、今回のエントリーは少し悩みました。
(実際はさぼっていただけですが)
内容は、あくまで一般論ですが、歯ブラシを手抜きしてさぼる話だからです。
忙しい現代人が、どこまでなら歯ブラシの手を抜けるか?
通常歯医者さんはそういう発想に手を貸さないことになっていますが、あえて逆説的なことを考えてみました。
手抜き。
よい言葉で言い換えると、「~の効率化」「~の生産性向上」なのかもしれません
(かなり牽強付会ですが)
でも慣れた職人さんと新人さんの違いのように、こういった手抜きの話ほど専門的な深い知見のバックグラウンドが必要なのかもしれません。
考えるからにはプロとしてその辺をフル回転して、より少ない労力で最大限の効率を求めていきます。
◆ 汚れの質~物理的接触は不可欠
そんな面倒なことをしなくても、効率化なら、たとえば歯磨き粉を良いのに変えればいいじゃないか、と思うかもしれません。
しかし「歯磨き粉を変えれば」は無理です。
落とす汚れの質が質なので、物理的に接触する必要があるのです。
孤立した汚ればかりなら、界面活性の高い歯磨き粉でいいのかもしれません。
しかし、歯磨きで落とすべき汚れは(食べかすなどを除いては)おもに「プラーク」です。
「プラーク」とは、ばい菌がスジコのように固まっていて、スジならぬ「プロテオグリカン(ムコ多糖)」というヌルヌル成分に包まれている物を指します。
このヌルヌルが、歯磨き粉に含まれる界面活性剤その他の成分からばい菌を守ってしまうのです。
またこのヌルヌルは、親水性ですが水溶性はほとんどありません。だからうがいしただけではとれません。
ですからヌルヌルを直接何とかするためには、つまり「物理的に接触」する必要があるのです。
◆ブラシを当てるポイントを絞れ
ですから、ブラッシングの効率化を考えると、これが多い所や取り忘れ安いところを重点的に取り、汚れが少ないところや割と着きにくいところを正確に見極めて、「捨てて」いくことが求められます。
そこさえしっかり判断できれば、歯磨き粉などはむしろガードハローとか安いのに変更した方が財布にも良いくらいです。
ひとつ、有利な事実があります。
「表面はもやしとか(の食物繊維)で割ときれいになる」
じつはそうなんですよね。
「相手(対合)のいない歯は汚れやすい」こともその傍証です。
相手の歯とかみ合っていない歯は、比較にならないくらい汚れがつきやすいものです。
ただたしかに、もやしなど食物線維の多い食事をすると、歯がこすられ、表面の中心部分などは割ときれいになっていたりします。
しかし一番肝心なのは、そこではなく、歯と歯の間、歯と歯肉の間などの「すみずみ」です。
そしてもやしレベルでは、すみずみはノーマークです。
ここを手で徹底的にフォローする必要があります。
むしろもやしが当たる場所は大胆にスルーでも構いません。
ではどうやってすみずみを磨くか?磨く場所はどうでしょうか?
歯ブラシでいつも思うのは、「どこを重点的に磨くか」「磨かないか」です。
浪人生の受験勉強も(自分の場合はそうだった)そうですが、普通に勉強していると覚えすぎてしまうので、本番前になると赤本(過去問)とか見ながら、勉強の内容を絞って、いらないものは「捨てて」いきます。
「磨かない」という選択肢は、まじめに考えれば考えるほど勇気が要ります。
◆省略できるところは省略
しっかり手でフォローしたい場所として、候補に挙がってくるのが、上図で太く書いた部分です。
①下の奥歯の内側
②上の奥歯の外側
③下の前歯の裏とか
です。
①は「オエッ」となってしまう人が多いと思います。
しかしその「オエッ」は往々にして、今までサボってきた証だったりします。
まず3秒、次に5秒。少しづつ当てられるようにしましょう。
大丈夫です、みんなできるようになります。
②気がつかない人も多いのですが、上の外は、口を小さくして横(口角)を伸ばして磨くとよく磨けます。
じつは口を大きくあけると、上の外は口角や関節(下顎骨筋突起)が邪魔して磨けないのです。
口を小さくして横を伸ばしてコーナーまでしっかり磨きましょう。
もちろん内側を磨くときは大きく口を開けます。
③意外でしょうが、普通に磨いてはいけない場所です。
とくに下あごが出気味(=下顎前歯が舌側傾斜気味)だったり、叢生(歯並びが前後)がある歯列は、踵(かかと)磨きが必須です。
ここを整理して考えるだけで、大幅に効率がアップします。
◆動かし方~急ぐ時ほど、細かく!早く!
ポイントは、ブラシのふり幅です。急ぐとつい振り幅が大きくなりがちですが、逆効果です。
Vol24で紹介したとおりです。図を再掲します。
大事なのは
◎急ぐ時ほど細かく早く
です。毛先でこするのではなく、毛先を支点にしてゆするのです。
これは個人的なコツですが、前腕や手首では一切動かさず、力こぶや肘付近を痙攣させるように振動させると、イイ感じで歯ブラシが細かく動きます。
ためしに、「前腕や手首では一切動かさず」というのをやってみてください。コツをつかめると、驚くほど細かく早く動かすことができるようになります。
以上になります。
忙しい現代人。そうしょっちゅうむし歯や歯周病なんかになんかなっていられません。
限りある短時間のうちに、より効率的に歯ブラシをできることが、わが身と歯列を守る(すべてではありませんが)一助になると思います。
【今回のまとめ】
振り幅、重点箇所、毛先の接触の仕方の工夫で、効率的な歯ブラシの時短に。
こんにちは。根本齒科室の根本です。
むし歯は、みがきにくい所にできます。
もちろんそこが、歯ブラシが入りにくいとか窮屈だからなんですが。
当然ですが、同じように治療道具も入りにくいです。
先生によってもちがいますが、私の場合はなるべくスペースを確保したいので、とくに奥歯などは、なるべく太いバキュームパイプを使わないで細い排唾管(はいだかん)で水を吸うようにしています。
しかし排唾管は張り付くので使いにくいという声を多く聞きます。
とはいっても、何のことか分からないと思いますので、まず、これが何か、簡単に説明します。
◆ 排唾管
これが排唾管です。
太さが5ミリくらい、長さが10センチくらいです。
中には針金の芯が入っていますので、これをハテナ「?」型に曲げて、青い方の側が治療と反対側の口角に入るように引っかけておきます。
青くない側の端を機械の吸引チューブに接続しておくと、唾液や水が吸引されるしくみです。
もともとハテナ型になった金属製のモノもありますが、最近は自由に曲げられるこのようなものが一般的です。
じつは左側は少し細工をしてあるのですが、その話は後回しにします。
右側の先端部分を拡大してみます。
この青い部分に、吸い上げる穴が開いています。
黒い溝のようなものがそうです。
しかし、柔らかい頬粘膜(きょうねんまく)にすぐに張り付いてしまいます。
それは穴が本当に尖端にしかついていないからです。
こんな感じです。
黄色い所に穴があるのですが、同じく黄色く書いた頬粘膜がピタッと張り付いてしまっています。
頬粘膜にペタッと張り付くと、もう何も吸い上げてくれないのですぐ口の中が洪水になってしまいます。
でも、バキュームは、とくに臼歯部では邪魔なことが多いですね。
下の奥歯の治療時に舌を押さえておくのに役立つこともありますが、たいていはない方が楽です。
◆ バキューム
そういえば以前、みどり小児歯科(横浜市青葉区)で勤務医で少し働いていた時に、院長先生が好んで排唾管をバキュームのように使用していたことが思い出されます。
口角に引掛けるのではなく、自分の左手に持って使用するのです。
若かりし勤務医根本はそういうスタイルの先生を初めて見ましたので、非常に印象的でした。
今の自分の場合は、常に左手にミラーを持っていたいと思っています。
かといって助手のバキュームを持たせると、自分的にはスペースがきつかったり、動きが制約されるような気持ちがすることが多く、特定の場合を除いてはあまり使わないことが多いです。
◆ ZOO
ZOOという特殊なパイプがあります。
そう多くは出回っていないと思いますが、使っている先生は使っています。
下顎の臼歯部に使うのですが、このループ状のパイプに穴がたくさん開いています。
奥歯に引掛ける金具のあたりの内側外側両方に、ずらーっと穴が並んでいるんです。
このように歯にループをかけておくと、唾液や舌がよけられるので、歯が清潔で乾燥した状態に置かれます。
また、歯にかけた水が口の中に流れ出ないので、やられる方も意外と楽なんです。
これのキモは、穴がたくさん開いているということです。
だから頬粘膜に張りつかないのでとても使いやすいんです。
◆ 改造
これをヒントに、ほんの少しだけ改造しました。
一番上の写真の左側の方を拡大してみます。
青い部分の下部に小さな穴があるのが分かると思います。
直径1ミリのラウンドバーとタービンで4か所チョンチョンと開けただけです。
だから何だって思う方も多いかもしれません。
ところが、この効果はてきめんでした!
全くと言っていいほど張り付かず、吸引効率がけた違いに上昇したんです。
図のように、上の部分が頬粘膜に張りついても、下の穴から水が吸引されます。
また、下に穴があることによって、過度な陰圧がかからず、安定的に水や唾液が吸引されます。
今はほとんど、アシスタントがバキュームにつかないで回している(小児と外科は別)状態です。
コロンブスの卵って言葉があります。
ほんの一工夫で、劇的に変わる。
こういう製品を売り出せばいいのに、と本当に思いました。
(もしかして誰かが特許とか押さえてるのかもしれませんが、よく分かりません)
【今回のまとめ】
ほんのちょっとした工夫で、効果が劇的に変わることもある。
こんにちは。根本齒科室の根本です。
9月12日のことです。当院HPのメールフォームを通じて一通のメールを受信しました。
その名前をみて私は、心の底からビックリしました。
…な、なつかすぃ
それは、医局のペーペー時代にすごく仲良くしていた友人の名前でした。
なんと1997年の頃です!
こんど前橋で開業するとのことでした。
彼と最後にあったのは、もう15年も前でしょうか。
【1】
最初は、私が母校の第一口腔外科の院生だったときに、彼が研修医でウチの病棟に回ってきたのが始まりです。
それまで部活以外は横の関係だった学生時代から一転、卒業後は急に縦社会になりました。
私が進んだ口腔外科とは、ほとんど歯医者らしい仕事はしません。
さすがに外来では親知らずを抜いたり、顎関節症のマウスピースを作ったりするのはかろうじて開業医でもやる内容ですが、メインは手術です。
病棟になったら、それこそ、がんの手術とか顎変形症とか唇顎口蓋裂の手術とか、そんなのばかりです。
ですから必然的に下っ端がやる雑用系の仕事と言えば…
私は4~5個ある病棟グループの一つに配属されました。半年間はこのメンツです。
しかし初日から訳の分からないことだらけです。卒然教育など全く役に立ちません。
いきなり手術の介助とか点滴とか回診とかカテーテル除去とか尿検査とかゲフリールとかetc
そのたびに「全然できてない」「ヘラヘラしてんじゃねえ」などと上の先生に怒られっぱなしです。
ひとつのグループはだいたい5~6人で構成されています。そこに研修医が2人くらいローテーションで入ってくる形になります。
うちのグループは、斉藤グループ(仮)と呼ばれており、オーベンの斉藤裕之先生は医師免許も持っているダブルドクターでした。
手術の腕には自信がある、臨床的に石北会計の御仁だったようで、低空飛行で行きたかった自分は怒られっぱなしで散々な思いをしたものです。
縦割りグループ内でしょんぼり過ごしていた私のもとに、回ってきた研修医が、彼(ともう一人女性研修医がいましたが)でした。
彼の名前は、増田晃一郎君といいます。
同学年だし研修医なので、必然的に、いろいろリラックスしてお話しできます。
他大学出身の彼が何と呼ばれていたかは分かりませんが、勝手に晃ちゃん晃ちゃんと呼んで、むしろこちらが親しくさせていただきました。
彼ら研修医のDutyは、今まで私がやっていたような下っ端の仕事(点滴、介助etc)です。
ほとんど記憶にはないのですが、どうやらいろいろ私がていねいに教えていたらしいんです。
これは、卒然の6年生で実習で回ってきた1学年下の八木君も同じことを言っていて、ずいぶん懇切丁重に指導していたようなのですが、したはずの私は全然、というか学生時代の八木君の顔すら覚えていないんです。
八木先生にはたまたまバイト先で一緒になった時に、さんざん感謝されて、こちらがずいぶん申し訳なく思ったのを覚えています。
私にはそんな指導なんて意識はこれっポッチもなく、復習兼、怒られない人との束の間のリラックスタイムみたいな感覚でした。
そんないけずな私を、晃ちゃんはいろいろ連れ回してくれました。
口腔外科の医局は6階にあったのですが、研修医の医局「総診」は1階にありました。
私も、病棟の頃なんて、空き時間のほとんどを晃ちゃんたちと1階で一服して過ごしていたかもしれません。
知らないメンツも含めて、なぜか「ねもちゃん」などと親しげに呼んでくる奴も多く、とても楽しくてもくもく煙たい総診の医局でした。
その中でも、晃ちゃん以外に、陳君とジッキーという2人とはかなり親しくなり、4人+陳君の彼女とみんなでキャンプに行ったりもしました。
六本木とか渋谷で行われていた、医療系ねるとんパーティーなどにも、何回か突撃しては討死していました。
【2】
三河島の晃ちゃんのアパートに遊びに行くと、子犬とキーボードとギターが置いてありました。
何曲か、渋めのギターを披露してもらったのを覚えています。
そこではじめて、根音(ルート)という単語を教えてもらいました。
ああそうか、C(ハ長調)やCm(ハ短調)のときの「ド」のことか…w
お礼に、キーボードで映画「ピアノレッスン」の主題歌を弾いたら、かなり驚いていました。
絶対音感(ではなくてソルフェージュレベルの大体音感ですが)があるって話したら、さらに驚いていました。
子犬のテリーは、相当小さな犬で、腕くらいしかなかったので、たぶんチワワだったのではと思います。
当時は犬に興味がなかったので正確な犬種までは覚えていません。
その後だいぶたってから、付き合っていた彼女に子犬を譲ったという話を聞きました。
ウイスキーは割らずにロックで飲むもんだと教えてくれました。
そのために「チェイサー」があるんだよ、って。
ああそうか、チェイサーって、あの水のことか…w
デニムは裾を詰めないで穿くもんだとも教えてくれました。
「いやー晃ちゃん、俺足短いからさぁ」
俺もそんなに長くないけど、いいんだよ。
いつしか、こんな自分の分際で、デニムの裾を詰めなくなりました…w
ポン引きについて行ったらどうなるか試してみようと提案もしてくれました。
まぁ良い目には遭いませんでしたが、詳細は割愛します…w
なぜ彼が、こんな俺みたいなシケた奴にいろいろよくしてくれたのか、今も真相は分かりません。
【3】
私も医局を出て、業平(今のソラマチ近辺)で分院長をしていた2001年の時のことです。
急に電話で連絡が来て、今から飲もうみたいな話になりました。
「俺は柏のK歯科で働いてんだよ」いろいろ話も盛り上がりました。
そのときに何軒目かで「おねえちゃんの店に行こう」みたいな話になりかかりました。
ただ、そのときは自分がそちら方面に全然気が向いてなかったので、なしになりました。
晃ちゃんは、久しぶりだったのに、少しつまらなそうでした…
悪いことしたかなぁ
◆
その後しばらくは連絡を取るようなこともありませんでした。
開業して、しばらくして、歯科助手をしているという患者さんが見えました。
「どこで働いてるんですか?龍ヶ崎市内ですか?」
「いえいえ、柏市のK歯科です」
…
あー、それ、俺の知り合いがいたとこ!今もいるんですか?
いますよ。増田先生。
うわー、世の中狭いもんですね。
俺じゃなくて晃ちゃんにやってもらえばよかったのに?
えー、でも、そういうの、ちょっと気が引けるんで…
本当にびっくりしました。
治療しながら、少し緊張しました。
◆
それから、何年かが過ぎました。
その患者さんも終わってしばらく経ったころ、財布を落としました。
財布の中にはセゾンカードがあるので、止めなければいけません。
何の理由かは忘れましたが、再発行手続きをすることになりました。
お客様センターみたいなところに電話をした私は、一瞬ドキッとしました。
電話口に出た人の声が、晃ちゃんとウリ二つなんです。
(懐かしい声だ、久しぶりに聞くなぁ。そういや晃ちゃん元気かな)
電話口の人は、言いました。
「根本啓行様、お電話ありがとうございます。カスタマーサポートの『マスダ』でございます」
私は、それこそ心臓が止まりそうなくらい驚き、しばしフリーズしてしまいました。
(まさか晃ちゃん、昔釣具屋をやりたいとか言ってたけど、何でこんな所に?!)
もう、会話の内容などほとんどどうでもよかったです。
私の興味は『マスダ』さんの正体の一点のみに絞られていました。
(だって晃ちゃんが根本啓行とか見て知らない訳がないのに!横に上司でもいるのかな)
会話中、何度私は、『マスダ』さんに下の名前を訊ねようという衝動と闘ったことでしょう?
…
しかし、チキンな私は、結局『マスダ』さんに下の名前を訊ねられませんでした。
すごく後悔しながら電話を切ったのを今でもよく覚えています。
(いやーさすがにクレカのサポートよりも歯医者の方が実入りがいいだろうに)
働けど働けど猶わがが生活楽にならざりじっと手を見てばかりいるわが身を棚に上げて、少し心配したりもしました。
(後で本人に確認したら、そのような仕事はしておらず、それは別人だとのことでした。)
◆
その後、おみちょりやテオとの出逢いや別れを経験しました。
結婚し、家内が妊娠したのを機に、思い切って転居しました。
そんな、ばたばたしているときに、一通のメールが届きます。
その名前をみて私は、心の底からビックリしました。
さっそく、メール上ですが昔話に花が咲き、私も借りた参考書を亡くしたことを詫びたりもしました。
どうやら、今は前橋にいるようです。
開業前からドメインは押さえていたようで、どうやらかなりタイトなスケジュールで開業プランを練っていたようです。
彼にしては遅めの開業だなぁ。
10年前の開業前のドタバタを思い出しながら、晃ちゃんなら大丈夫だと思いました。
そして開業祝いにと、ネットで適当に胡蝶蘭を探して送りつけました。
俺がそんなでしゃばっても、と思い、中くらいのサイズで送りました。
そしたら返信メールが来て、お前の花が一番大きかったとお褒めの言葉をいただきました。
(この写真の中のどれかが、私が送った花です)
なーんだ、だったら、パチンコ屋の開店のときみたいな花輪にしとけばよかったw
そのころにちょうど、家内が出産、男児に恵まれました。
メールで報告したら、なんと高級今治タオルのペアのバスタオルをいただきました。
これは今でも本当に重宝していて助かっています。
彼も今は開業直後でバタバタしているころだと思いますが、こんど時間が出来たら飲みにでも行こうかと思っています。
なんと、晃ちゃんもタバコはやめたとのことです。
私(のような元「歩く工業地帯」な人間)が言うのも失礼な話ですが、大変驚きました。
そうだよな、歯医者って肉体労働だから、体が資本だもんね。
ぜひこれからも、患者様もスタッフも増えて、院が益益発展していってほしい。
いろいろと、他人事とは思えないので。
【今回のまとめ】
前橋市界隈の方々は、アイリス歯科をぜひよろしくお願いいたします。
こんにちは。根本齒科室の根本です。
以前「心境の変化を見つめなおしてみる」 「同Vol.2」という投稿をしたことがあります。
そのころから、開業以来肩肘張った石北会計なスタイルが影をひそめ、あれほど過去の自分が忌み嫌っていたはずの「ざっくばらん系」に徐々に様変わりしつつあります。
そして、皆保険の意義に照らし、より広く薄くとやっていくと、おのずと患者数が増え、治療時間枠は短くなっていきます。
そのアポの入り方が、微妙なんです。
そのスタイルにすればするほど、読めなくなるのです。
簡単に言うと、それは急患を割合素直に受け入れるようになったからということもありますが、
全く理由不明で突然増えたり減ったりする
それがかなり長い間続く
という、合理的な理解が到底及ばないミステリーに苦しむことがしばしば起こります。
最近は、ことしの7月20日にそれは起こりました。
その日を境に、ほんとうにぱったり客足が止まってしまったんです。
1日10人前後、急に少なくなって、1時間開きとかが突然毎日1~2個でき始めました。
焦りました。
(何か失礼な対応があって、悪い口コミがあるのか?)
(他の歯医者がうちの悪口を触れ回ってるのか?)
疑心暗鬼な日々が続きました。
スタッフにも聞きました。
根「最近患者さんに何か失礼なこととかありませんでしたかねぇ」
ス「いやーこれといって特にないですね」
そこでコラムを書いたりブログをやったりすると、何か少しだけご利益(やく)がありそうな気がして、大した内容もないのにどうぶつブログばかり更新したりもしました。
そのときに2~3人増えたような気がしたりするんですが、次の日にさらにもう2~3人減っていたりして、凹みっぱなしでした。
大きなブリッジや総義歯のセットなどがあったりすると、一見、点がそんなに伸び悩んでいるようには見えません。
しかし月のレセプトの件数がガクンと落ち得しまいました。
(俺は何を悪いことをやったんだろう)
…
7月にいなくなってしまった患者様。
これは特定の個人という訳ではなく、全体の数の推移を「患者様」というくくりで見てみると、ほんとうにどこかに「患者様」がいなくなってしまったようにでも見えるんです。
さみしいし、院として情けない思いもいたします。
ある店舗が来客数の変動を押さえつつ集客しようと思ったら、商圏内においてリピーターを積極的に開発し、ケアを手厚くすることです。
しかし「ざっくばらん系」では、それはできません。
以前歯科で流行した予防系は、定期メンテナンスのリピーター系の徹底した囲い込みというマーケティングスタイルでした。
うちは予防をやりながらもざっくばらん系もやっているので、急患や無断キャンセルの影響もあり、やはり変動の影響が大きく出てきます。
また、資料配りやアンケート、複雑な追客のような
それなのに、「低値安定」のようなことになってしまって、さらに追い打ちをかけるように、院内のパソコンや機械類を続けて交換するはめにもなり、踏んだり蹴ったりの夏~秋でした。
この「患者様」がいなくなる、というのは怖いです。
あたかも先天性疾患とか突発性疾患のように、予防や抑止の手立てがないですからね。
それが、つい数日前に、戻ってきたかもしれないんです。
急に忙しくなってきたり、急患が増えてきたりしています。
ひとつには市でやってる「後期高齢者無料検診」の影響です。
検診自体は無料なので、正直かなりのお年寄りが見えました。
検診は5分くらいで終わるので、ついでに少し治療したりすることも少なくありません。
あと、本当に理由は分からないのですが、前日まで大丈夫だと思っていたような枠が、必ず埋まってしまいます。
まあ
「前に当院でやった差し歯が取れた」
「前に当院でやった入れ歯が壊れた」
が多いっちゃんですけどね orz
(おー明日は暇だ、らくでいいや。内職内職)
内職とは、心霊?!治療における修復物の作成のことを意味します。おもにCRインレー、ファイバーコア、蝋堤、まれにTEKだったりします。
空きができたので内職に当てよう。
午前中くらいにそう思っていても、帰り際になったら、他の患者様で埋まってしまいます。
結局残業(‘A`)
ただ、原因不明とはいえ、せっかく「患者様」と「再来」できたのですから、このご縁を大事に、もう少しだけざっくばらん系を頑張ってみようかなと思っています。
【今回のまとめ】
客数を安定化させ、変化を押さえるには手間暇のコストがかかる。
こんにちは。根本齒科室の根本です。
今回は、初診時のチェックポイント~どこを見るかの続編のような内容です。
なかなか″店側″からは言いにくい内容かもしれません。
初診時のいろいろなポイントは、前掲ページを参照してください。
そこで、ひとまずは患者様がおおまかに(こんな系統の人だ)と『分類』したりします。
しかし数回通ううちに、初診時の目測が大きく外れることもしばしばあり、人を見る目の育成はなかなか奥が深いです。。
たとえは、最初はあまり歯科に関心がなさそうに見えて、「今困っている所だけ」に近いような感じで見ていたのが、回を重ねるうちに関係性が向上したり、歯に対する興味関心を抱くようになったり、気がついたらたくさんインプラント治療に取り組んだり、成人でも矯正に挑戦したり、などということもある訳です
いっぽう、最初はていねいな感じに見えたのが、回が進むにつれて無断キャンセルが頻発したり、こちらの説明が右から左だったり、指導をしたりすると面倒くさそうだったりと、若干期待外れになることも、全然なくはない話なので困るんです。
なるべく早い段階で、どのような方かを見極め、『分類』したくなってしまうのも、人ならではの習わしなのかもしれませんね。
その中でもとくに、松竹梅とか上中下などのような、ランキング的なものは、患者様(お客様)サイドには絶対に口外できない内容ながらも、それがある種スタッフが間にコンセンサスとして存在していないと、医院(店舗)が円滑に回らない、いわば「諸刃の剣」的なものなのかもしれませんね。
◆ 衛生士に配当するとき、しないとき
いちばん基本的な考えとしては、定期検診に応じたり、指導を熱心に聞いてオーラルケアを改善しようとしている人。これは無条件に「上客」です。
原則、そのような上客は、メンテナンスには歯科衛生士を担当に付けるようにしています。
もちろんそうでない人もいます。
定期検診についてですが、院長が直々に診ているパターンもある。たとえば、
清潔過ぎて、指導するような瑕疵が存在しない
基礎疾患その他で、衛生士に丸投げしにくい
あまり他人の指導を好まないタイプ
こんな場合だったりすることもあります。
これは上客である場合も、そうでない場合も、「見込み客」の場合も、いろいろあります。
一例ですが、B型C型肝炎の既往がある場合は、院長以外には触らせないようにしています。
3番目の場合は、中高年男性や忙しく生活している方、刹那的な生き方をしている方などに多いですが、「たかが歯に」と、面倒なんでしょうね。
でも、ある段階から、何かと理由(難癖?イイガカリ?)をつけて思い切って衛生士に回したりすると、意外と相性よくメンテナンスを継続してくれることも多い(全員ではない)。
このような「引き継ぎ待ち」的な「見込み客」を、院長側で、正直何人か抱えている現状もあります。
基本的に歯科衛生士とは、歯の衛生指導をする専門家であり、この部分では歯科医師よりも慣れているものです。
しかしそういうことに興味のない人には馬耳東風ということになってしまいます。「こんな面倒な歯医者、他に変えよう」困っている所々と違うことばかり言われたら、やられる方もいい気がしません。
だからいきなり衛生士に回せないこともあります。
たとえば上下総入れ歯などと言う場合は別ですが、通常は治療後もメンテナンスに来てほしい。
しかし、取れたり痛みが出たりした時だけ来院して、終わった後も「何かあったら来てください」で終了してしまうような患者様も、残念ながら一定数います。。
その中には、初診時から(あ~この人、うちに合わなそうだ)ということが多いんですが、中には、最初は良さそうと思っても、だんだん検診に来なくなったりして脱落していくパターンも少なくないんです。
もちろん、そのような方々は、上記の方々に比べると『分類』的には一段下がる訳です。
逆に、初診時に素直そうな性格の方や心配りのできそうな方に思えたりしたら、何とかして上客になって欲しい訳で、何とか衛生士に付けようと、鵜の目鷹の目根本の目で、どんな小さな瑕疵でも無理やり見つけて
「●●ですので、せっかくの機械ですし、ご興味があればぜひ一度専門の者に診せてみてはいかがでしょうか」とつなげたくなるのも人情です。しかし、基本的に歯科衛生士とは、歯の衛生指導をする専門家であり、あまりにも非の打ちどころのない口では、衛生士に配当する理由がなくなってしまうのも、ツラいところです。
なぜ衛生士をつけるのかということですが、当院の衛生士の手腕に自信があるというのも大きな理由ですが、簡単に翻訳すると、これは
「あなたは院長が上客認定しました。ぜひ今後とも末永くお大事に」
というのと同じ意味です。
この場合、意外な壁が2つ存在します。
◆ お子様の2つの壁
①10歳の壁
②15歳の壁
の2つになります。
10歳未満だと、当院の場合は「『つ』がつく年齢の方は、仕上げ磨きが必要ですよ」と自然にムンテラできてしまいます。
これは私の故郷の隣、田方郡函南町議会議員の植松和子先生のことば「『つ』がつく年齢の子は、ぎゅっと抱きしめて育てなさい」をお借りしてアレンジしたものです。
場合によってはそのような例を出しながらも、説明できます。
しかし「初診時」10歳を過ぎてしっかりしたプラークコントロールの習慣が出来ていない場合は、かなり面倒です。
まず、もう高学年なので親でなくその子供自身に指導しなければいけません。
しかしこれがかなりハードルが高く、素直な子や理解力の高い子ばかりではないので、衛生士への配当には苦労します。
もちろん、親の理解が低かったりした場合は絶望的です。
15歳の壁、というのは、茨城県の場合だけかもしれませんが、マル福(他県で働いているときはいろいろな呼称があった)といって、中学生までは月2回600円、3回目以降無料という公費の補助があります。
だから中学生までは「歯ブラシや予防も頑張りましょう」と、まだ言いやすい素地がある。
どうせ1回600円ですし。
しかしこれが高校に入ってしまうと、大人と同じ3割負担になってしまうんです。
ガチでやると、保険でも1回3000円コースみたいな話になってきます。600円とはえらい違いだよなぁ。
初診で高校生で本人だけ、なんて場合は、非常に心苦しい思いをすることもしばしばあります。
生徒さんの方はもう(早く帰りたい帰りたい)というオーラ丸出しですし・・・
◆ インプラント関係
なお、インプラントの場合は事情が異なります。
インプラントの清掃指導やメンテナンスは、これは必ず衛生士に付けることにしています。
◆ 一段下がる方々…
先ほどの一段下がるような方々の場合は、事情が異なります。
基本的にまず
さっさと終わらせたい
トラブルを避けたい
という気持ちが働くものです。
「お前にやられた所が痛くなった。どうしてくれる」
みたいなのは無いに越したことはないが、とくにそのカテゴリーの方々には極力触れたくありません(私も人の子です)。
結果として、(私も人の子なので)ややモチベーションに難がありながらも、むしろ高度な技が炸裂してしまったりして、耐久性のある治療がさっさと終わってしまう。
(もう来るなよ!)
と心の中で叫びたくなるような面々の治療に限って、本気出してしまったりして、あとでぐったり気疲れしてしまいます。人間修行がだいぶ足りていない証拠かと思われます。
実際にトラブルになってしまったら、残念ながらその方はランク的に一番下、というか、枠外に出てしまいます。
検診の手紙なんか絶対出さないし、さわらぬ神にたたりなし、みたいな感じで、非常に消極的な対応になってしまう。
でも、個人経営の歯科医院でもあるし、どなたにも100点が取れないのはもちろん、合格点レベルでも取れるわけでは決してありません。
しかし、当院で相性が悪くても他の医院さんで相性がいい所が見つかったりすることも結構多いものです。
歯医者ってホント、医院によって極端に違うものです。
そういうなかで適切なマッチングに恵まれる。
それこそが三者でWin-Win-Winの近道だと思います。
本当は上客だけでやっていければ、こんなに楽なことはないかもしれません。
少なくとも亡くなった私の叔父は生前何度もそう言っていました。
しかしそれにこだわり、一段下のランクに思える方をぞんざいに扱ったり、あまつさえ追い出したりするのは、さまざまな面から見てやはり好ましくない野は当然です。
当院も以前は「石北会計教」にそまりつつあって、何人も喧嘩して追い出したりしていた時期もありました。
一番酷い時には「保険の入れ歯は作らない」「インプラントしない人は他の歯科医院で」みたいなことを公然と言っていた時期もありました。今考えたらひどいものです。
必然的に患者層が薄まり、経営的にもだいぶ苦しい思いをしました。
初診時~でも言った通り、実際は私自身が、もし歯科医師でなければ定期検診なんか行かないような人種です。そのような「歩くものぐさ」が身に染みついているようなセコい人間が、偉そうにインプラントだのメンテナンスだの語っても、じつはあまり説得力がないんですね。
だから、ある程度患者層の中にクラス分けや『分類』のようなものが出来てしまうのは仕方ないのかもしれませんが、保険診療も取り扱っているわけだし、今はなるべく広く浅く門戸を広げて、療養の給付に偏りが生じないことを常に頭の片隅にはおいて毎日診療に当たっています。
【今回のまとめ】
客層を純化するか、広げて『分類』を受け入れるかは、店舗の悩みどころである