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こんにちは。根本齒科室の根本です。
9月12日のことです。当院HPのメールフォームを通じて一通のメールを受信しました。
その名前をみて私は、心の底からビックリしました。
…な、なつかすぃ
それは、医局のペーペー時代にすごく仲良くしていた友人の名前でした。
なんと1997年の頃です!
こんど前橋で開業するとのことでした。
彼と最後にあったのは、もう15年も前でしょうか。
【1】
最初は、私が母校の第一口腔外科の院生だったときに、彼が研修医でウチの病棟に回ってきたのが始まりです。
それまで部活以外は横の関係だった学生時代から一転、卒業後は急に縦社会になりました。
私が進んだ口腔外科とは、ほとんど歯医者らしい仕事はしません。
さすがに外来では親知らずを抜いたり、顎関節症のマウスピースを作ったりするのはかろうじて開業医でもやる内容ですが、メインは手術です。
病棟になったら、それこそ、がんの手術とか顎変形症とか唇顎口蓋裂の手術とか、そんなのばかりです。
ですから必然的に下っ端がやる雑用系の仕事と言えば…
私は4~5個ある病棟グループの一つに配属されました。半年間はこのメンツです。
しかし初日から訳の分からないことだらけです。卒然教育など全く役に立ちません。
いきなり手術の介助とか点滴とか回診とかカテーテル除去とか尿検査とかゲフリールとかetc
そのたびに「全然できてない」「ヘラヘラしてんじゃねえ」などと上の先生に怒られっぱなしです。
ひとつのグループはだいたい5~6人で構成されています。そこに研修医が2人くらいローテーションで入ってくる形になります。
うちのグループは、斉藤グループ(仮)と呼ばれており、オーベンの斉藤裕之先生は医師免許も持っているダブルドクターでした。
手術の腕には自信がある、臨床的に石北会計の御仁だったようで、低空飛行で行きたかった自分は怒られっぱなしで散々な思いをしたものです。
縦割りグループ内でしょんぼり過ごしていた私のもとに、回ってきた研修医が、彼(ともう一人女性研修医がいましたが)でした。
彼の名前は、増田晃一郎君といいます。
同学年だし研修医なので、必然的に、いろいろリラックスしてお話しできます。
他大学出身の彼が何と呼ばれていたかは分かりませんが、勝手に晃ちゃん晃ちゃんと呼んで、むしろこちらが親しくさせていただきました。
彼ら研修医のDutyは、今まで私がやっていたような下っ端の仕事(点滴、介助etc)です。
ほとんど記憶にはないのですが、どうやらいろいろ私がていねいに教えていたらしいんです。
これは、卒然の6年生で実習で回ってきた1学年下の八木君も同じことを言っていて、ずいぶん懇切丁重に指導していたようなのですが、したはずの私は全然、というか学生時代の八木君の顔すら覚えていないんです。
八木先生にはたまたまバイト先で一緒になった時に、さんざん感謝されて、こちらがずいぶん申し訳なく思ったのを覚えています。
私にはそんな指導なんて意識はこれっポッチもなく、復習兼、怒られない人との束の間のリラックスタイムみたいな感覚でした。
そんないけずな私を、晃ちゃんはいろいろ連れ回してくれました。
口腔外科の医局は6階にあったのですが、研修医の医局「総診」は1階にありました。
私も、病棟の頃なんて、空き時間のほとんどを晃ちゃんたちと1階で一服して過ごしていたかもしれません。
知らないメンツも含めて、なぜか「ねもちゃん」などと親しげに呼んでくる奴も多く、とても楽しくてもくもく煙たい総診の医局でした。
その中でも、晃ちゃん以外に、陳君とジッキーという2人とはかなり親しくなり、4人+陳君の彼女とみんなでキャンプに行ったりもしました。
六本木とか渋谷で行われていた、医療系ねるとんパーティーなどにも、何回か突撃しては討死していました。
【2】
三河島の晃ちゃんのアパートに遊びに行くと、子犬とキーボードとギターが置いてありました。
何曲か、渋めのギターを披露してもらったのを覚えています。
そこではじめて、根音(ルート)という単語を教えてもらいました。
ああそうか、C(ハ長調)やCm(ハ短調)のときの「ド」のことか…w
お礼に、キーボードで映画「ピアノレッスン」の主題歌を弾いたら、かなり驚いていました。
絶対音感(ではなくてソルフェージュレベルの大体音感ですが)があるって話したら、さらに驚いていました。
子犬のテリーは、相当小さな犬で、腕くらいしかなかったので、たぶんチワワだったのではと思います。
当時は犬に興味がなかったので正確な犬種までは覚えていません。
その後だいぶたってから、付き合っていた彼女に子犬を譲ったという話を聞きました。
ウイスキーは割らずにロックで飲むもんだと教えてくれました。
そのために「チェイサー」があるんだよ、って。
ああそうか、チェイサーって、あの水のことか…w
デニムは裾を詰めないで穿くもんだとも教えてくれました。
「いやー晃ちゃん、俺足短いからさぁ」
俺もそんなに長くないけど、いいんだよ。
いつしか、こんな自分の分際で、デニムの裾を詰めなくなりました…w
ポン引きについて行ったらどうなるか試してみようと提案もしてくれました。
まぁ良い目には遭いませんでしたが、詳細は割愛します…w
なぜ彼が、こんな俺みたいなシケた奴にいろいろよくしてくれたのか、今も真相は分かりません。
【3】
私も医局を出て、業平(今のソラマチ近辺)で分院長をしていた2001年の時のことです。
急に電話で連絡が来て、今から飲もうみたいな話になりました。
「俺は柏のK歯科で働いてんだよ」いろいろ話も盛り上がりました。
そのときに何軒目かで「おねえちゃんの店に行こう」みたいな話になりかかりました。
ただ、そのときは自分がそちら方面に全然気が向いてなかったので、なしになりました。
晃ちゃんは、久しぶりだったのに、少しつまらなそうでした…
悪いことしたかなぁ
◆
その後しばらくは連絡を取るようなこともありませんでした。
開業して、しばらくして、歯科助手をしているという患者さんが見えました。
「どこで働いてるんですか?龍ヶ崎市内ですか?」
「いえいえ、柏市のK歯科です」
…
あー、それ、俺の知り合いがいたとこ!今もいるんですか?
いますよ。増田先生。
うわー、世の中狭いもんですね。
俺じゃなくて晃ちゃんにやってもらえばよかったのに?
えー、でも、そういうの、ちょっと気が引けるんで…
本当にびっくりしました。
治療しながら、少し緊張しました。
◆
それから、何年かが過ぎました。
その患者さんも終わってしばらく経ったころ、財布を落としました。
財布の中にはセゾンカードがあるので、止めなければいけません。
何の理由かは忘れましたが、再発行手続きをすることになりました。
お客様センターみたいなところに電話をした私は、一瞬ドキッとしました。
電話口に出た人の声が、晃ちゃんとウリ二つなんです。
(懐かしい声だ、久しぶりに聞くなぁ。そういや晃ちゃん元気かな)
電話口の人は、言いました。
「根本啓行様、お電話ありがとうございます。カスタマーサポートの『マスダ』でございます」
私は、それこそ心臓が止まりそうなくらい驚き、しばしフリーズしてしまいました。
(まさか晃ちゃん、昔釣具屋をやりたいとか言ってたけど、何でこんな所に?!)
もう、会話の内容などほとんどどうでもよかったです。
私の興味は『マスダ』さんの正体の一点のみに絞られていました。
(だって晃ちゃんが根本啓行とか見て知らない訳がないのに!横に上司でもいるのかな)
会話中、何度私は、『マスダ』さんに下の名前を訊ねようという衝動と闘ったことでしょう?
…
しかし、チキンな私は、結局『マスダ』さんに下の名前を訊ねられませんでした。
すごく後悔しながら電話を切ったのを今でもよく覚えています。
(いやーさすがにクレカのサポートよりも歯医者の方が実入りがいいだろうに)
働けど働けど猶わがが生活楽にならざりじっと手を見てばかりいるわが身を棚に上げて、少し心配したりもしました。
(後で本人に確認したら、そのような仕事はしておらず、それは別人だとのことでした。)
◆
その後、おみちょりやテオとの出逢いや別れを経験しました。
結婚し、家内が妊娠したのを機に、思い切って転居しました。
そんな、ばたばたしているときに、一通のメールが届きます。
その名前をみて私は、心の底からビックリしました。
さっそく、メール上ですが昔話に花が咲き、私も借りた参考書を亡くしたことを詫びたりもしました。
どうやら、今は前橋にいるようです。
開業前からドメインは押さえていたようで、どうやらかなりタイトなスケジュールで開業プランを練っていたようです。
彼にしては遅めの開業だなぁ。
10年前の開業前のドタバタを思い出しながら、晃ちゃんなら大丈夫だと思いました。
そして開業祝いにと、ネットで適当に胡蝶蘭を探して送りつけました。
俺がそんなでしゃばっても、と思い、中くらいのサイズで送りました。
そしたら返信メールが来て、お前の花が一番大きかったとお褒めの言葉をいただきました。
(この写真の中のどれかが、私が送った花です)
なーんだ、だったら、パチンコ屋の開店のときみたいな花輪にしとけばよかったw
そのころにちょうど、家内が出産、男児に恵まれました。
メールで報告したら、なんと高級今治タオルのペアのバスタオルをいただきました。
これは今でも本当に重宝していて助かっています。
彼も今は開業直後でバタバタしているころだと思いますが、こんど時間が出来たら飲みにでも行こうかと思っています。
なんと、晃ちゃんもタバコはやめたとのことです。
私(のような元「歩く工業地帯」な人間)が言うのも失礼な話ですが、大変驚きました。
そうだよな、歯医者って肉体労働だから、体が資本だもんね。
ぜひこれからも、患者様もスタッフも増えて、院が益益発展していってほしい。
いろいろと、他人事とは思えないので。
【今回のまとめ】
前橋市界隈の方々は、アイリス歯科をぜひよろしくお願いいたします。