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こんにちは、根本歯科室の根本です。
だいぶ間が空いてしまいましたが、今回のエントリーは少し悩みました。
(実際はさぼっていただけですが)
内容は、あくまで一般論ですが、歯ブラシを手抜きしてさぼる話だからです。
忙しい現代人が、どこまでなら歯ブラシの手を抜けるか?
通常歯医者さんはそういう発想に手を貸さないことになっていますが、あえて逆説的なことを考えてみました。
手抜き。
よい言葉で言い換えると、「~の効率化」「~の生産性向上」なのかもしれません
(かなり牽強付会ですが)
でも慣れた職人さんと新人さんの違いのように、こういった手抜きの話ほど専門的な深い知見のバックグラウンドが必要なのかもしれません。
考えるからにはプロとしてその辺をフル回転して、より少ない労力で最大限の効率を求めていきます。
◆ 汚れの質~物理的接触は不可欠
そんな面倒なことをしなくても、効率化なら、たとえば歯磨き粉を良いのに変えればいいじゃないか、と思うかもしれません。
しかし「歯磨き粉を変えれば」は無理です。
落とす汚れの質が質なので、物理的に接触する必要があるのです。
孤立した汚ればかりなら、界面活性の高い歯磨き粉でいいのかもしれません。
しかし、歯磨きで落とすべき汚れは(食べかすなどを除いては)おもに「プラーク」です。
「プラーク」とは、ばい菌がスジコのように固まっていて、スジならぬ「プロテオグリカン(ムコ多糖)」というヌルヌル成分に包まれている物を指します。
このヌルヌルが、歯磨き粉に含まれる界面活性剤その他の成分からばい菌を守ってしまうのです。
またこのヌルヌルは、親水性ですが水溶性はほとんどありません。だからうがいしただけではとれません。
ですからヌルヌルを直接何とかするためには、つまり「物理的に接触」する必要があるのです。
◆ブラシを当てるポイントを絞れ
ですから、ブラッシングの効率化を考えると、これが多い所や取り忘れ安いところを重点的に取り、汚れが少ないところや割と着きにくいところを正確に見極めて、「捨てて」いくことが求められます。
そこさえしっかり判断できれば、歯磨き粉などはむしろガードハローとか安いのに変更した方が財布にも良いくらいです。
ひとつ、有利な事実があります。
「表面はもやしとか(の食物繊維)で割ときれいになる」
じつはそうなんですよね。
「相手(対合)のいない歯は汚れやすい」こともその傍証です。
相手の歯とかみ合っていない歯は、比較にならないくらい汚れがつきやすいものです。
ただたしかに、もやしなど食物線維の多い食事をすると、歯がこすられ、表面の中心部分などは割ときれいになっていたりします。
しかし一番肝心なのは、そこではなく、歯と歯の間、歯と歯肉の間などの「すみずみ」です。
そしてもやしレベルでは、すみずみはノーマークです。
ここを手で徹底的にフォローする必要があります。
むしろもやしが当たる場所は大胆にスルーでも構いません。
ではどうやってすみずみを磨くか?磨く場所はどうでしょうか?
歯ブラシでいつも思うのは、「どこを重点的に磨くか」「磨かないか」です。
浪人生の受験勉強も(自分の場合はそうだった)そうですが、普通に勉強していると覚えすぎてしまうので、本番前になると赤本(過去問)とか見ながら、勉強の内容を絞って、いらないものは「捨てて」いきます。
「磨かない」という選択肢は、まじめに考えれば考えるほど勇気が要ります。
◆省略できるところは省略
しっかり手でフォローしたい場所として、候補に挙がってくるのが、上図で太く書いた部分です。
①下の奥歯の内側
②上の奥歯の外側
③下の前歯の裏とか
です。
①は「オエッ」となってしまう人が多いと思います。
しかしその「オエッ」は往々にして、今までサボってきた証だったりします。
まず3秒、次に5秒。少しづつ当てられるようにしましょう。
大丈夫です、みんなできるようになります。
②気がつかない人も多いのですが、上の外は、口を小さくして横(口角)を伸ばして磨くとよく磨けます。
じつは口を大きくあけると、上の外は口角や関節(下顎骨筋突起)が邪魔して磨けないのです。
口を小さくして横を伸ばしてコーナーまでしっかり磨きましょう。
もちろん内側を磨くときは大きく口を開けます。
③意外でしょうが、普通に磨いてはいけない場所です。
とくに下あごが出気味(=下顎前歯が舌側傾斜気味)だったり、叢生(歯並びが前後)がある歯列は、踵(かかと)磨きが必須です。
ここを整理して考えるだけで、大幅に効率がアップします。
◆動かし方~急ぐ時ほど、細かく!早く!
ポイントは、ブラシのふり幅です。急ぐとつい振り幅が大きくなりがちですが、逆効果です。
Vol24で紹介したとおりです。図を再掲します。
大事なのは
◎急ぐ時ほど細かく早く
です。毛先でこするのではなく、毛先を支点にしてゆするのです。
これは個人的なコツですが、前腕や手首では一切動かさず、力こぶや肘付近を痙攣させるように振動させると、イイ感じで歯ブラシが細かく動きます。
ためしに、「前腕や手首では一切動かさず」というのをやってみてください。コツをつかめると、驚くほど細かく早く動かすことができるようになります。
以上になります。
忙しい現代人。そうしょっちゅうむし歯や歯周病なんかになんかなっていられません。
限りある短時間のうちに、より効率的に歯ブラシをできることが、わが身と歯列を守る(すべてではありませんが)一助になると思います。
【今回のまとめ】
振り幅、重点箇所、毛先の接触の仕方の工夫で、効率的な歯ブラシの時短に。