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こんにちは。根本齒科室の根本です。
むし歯は、みがきにくい所にできます。
もちろんそこが、歯ブラシが入りにくいとか窮屈だからなんですが。
当然ですが、同じように治療道具も入りにくいです。
先生によってもちがいますが、私の場合はなるべくスペースを確保したいので、とくに奥歯などは、なるべく太いバキュームパイプを使わないで細い排唾管(はいだかん)で水を吸うようにしています。
しかし排唾管は張り付くので使いにくいという声を多く聞きます。
とはいっても、何のことか分からないと思いますので、まず、これが何か、簡単に説明します。
◆ 排唾管
これが排唾管です。
太さが5ミリくらい、長さが10センチくらいです。
中には針金の芯が入っていますので、これをハテナ「?」型に曲げて、青い方の側が治療と反対側の口角に入るように引っかけておきます。
青くない側の端を機械の吸引チューブに接続しておくと、唾液や水が吸引されるしくみです。
もともとハテナ型になった金属製のモノもありますが、最近は自由に曲げられるこのようなものが一般的です。
じつは左側は少し細工をしてあるのですが、その話は後回しにします。
右側の先端部分を拡大してみます。
この青い部分に、吸い上げる穴が開いています。
黒い溝のようなものがそうです。
しかし、柔らかい頬粘膜(きょうねんまく)にすぐに張り付いてしまいます。
それは穴が本当に尖端にしかついていないからです。
こんな感じです。
黄色い所に穴があるのですが、同じく黄色く書いた頬粘膜がピタッと張り付いてしまっています。
頬粘膜にペタッと張り付くと、もう何も吸い上げてくれないのですぐ口の中が洪水になってしまいます。
でも、バキュームは、とくに臼歯部では邪魔なことが多いですね。
下の奥歯の治療時に舌を押さえておくのに役立つこともありますが、たいていはない方が楽です。
◆ バキューム
そういえば以前、みどり小児歯科(横浜市青葉区)で勤務医で少し働いていた時に、院長先生が好んで排唾管をバキュームのように使用していたことが思い出されます。
口角に引掛けるのではなく、自分の左手に持って使用するのです。
若かりし勤務医根本はそういうスタイルの先生を初めて見ましたので、非常に印象的でした。
今の自分の場合は、常に左手にミラーを持っていたいと思っています。
かといって助手のバキュームを持たせると、自分的にはスペースがきつかったり、動きが制約されるような気持ちがすることが多く、特定の場合を除いてはあまり使わないことが多いです。
◆ ZOO
ZOOという特殊なパイプがあります。
そう多くは出回っていないと思いますが、使っている先生は使っています。
下顎の臼歯部に使うのですが、このループ状のパイプに穴がたくさん開いています。
奥歯に引掛ける金具のあたりの内側外側両方に、ずらーっと穴が並んでいるんです。
このように歯にループをかけておくと、唾液や舌がよけられるので、歯が清潔で乾燥した状態に置かれます。
また、歯にかけた水が口の中に流れ出ないので、やられる方も意外と楽なんです。
これのキモは、穴がたくさん開いているということです。
だから頬粘膜に張りつかないのでとても使いやすいんです。
◆ 改造
これをヒントに、ほんの少しだけ改造しました。
一番上の写真の左側の方を拡大してみます。
青い部分の下部に小さな穴があるのが分かると思います。
直径1ミリのラウンドバーとタービンで4か所チョンチョンと開けただけです。
だから何だって思う方も多いかもしれません。
ところが、この効果はてきめんでした!
全くと言っていいほど張り付かず、吸引効率がけた違いに上昇したんです。
図のように、上の部分が頬粘膜に張りついても、下の穴から水が吸引されます。
また、下に穴があることによって、過度な陰圧がかからず、安定的に水や唾液が吸引されます。
今はほとんど、アシスタントがバキュームにつかないで回している(小児と外科は別)状態です。
コロンブスの卵って言葉があります。
ほんの一工夫で、劇的に変わる。
こういう製品を売り出せばいいのに、と本当に思いました。
(もしかして誰かが特許とか押さえてるのかもしれませんが、よく分かりません)
【今回のまとめ】
ほんのちょっとした工夫で、効果が劇的に変わることもある。