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こんにちは。根本齒科室の根本です。
今回は、初診時のチェックポイント~どこを見るかの続編のような内容です。
なかなか″店側″からは言いにくい内容かもしれません。
初診時のいろいろなポイントは、前掲ページを参照してください。
そこで、ひとまずは患者様がおおまかに(こんな系統の人だ)と『分類』したりします。
しかし数回通ううちに、初診時の目測が大きく外れることもしばしばあり、人を見る目の育成はなかなか奥が深いです。。
たとえは、最初はあまり歯科に関心がなさそうに見えて、「今困っている所だけ」に近いような感じで見ていたのが、回を重ねるうちに関係性が向上したり、歯に対する興味関心を抱くようになったり、気がついたらたくさんインプラント治療に取り組んだり、成人でも矯正に挑戦したり、などということもある訳です
いっぽう、最初はていねいな感じに見えたのが、回が進むにつれて無断キャンセルが頻発したり、こちらの説明が右から左だったり、指導をしたりすると面倒くさそうだったりと、若干期待外れになることも、全然なくはない話なので困るんです。
なるべく早い段階で、どのような方かを見極め、『分類』したくなってしまうのも、人ならではの習わしなのかもしれませんね。
その中でもとくに、松竹梅とか上中下などのような、ランキング的なものは、患者様(お客様)サイドには絶対に口外できない内容ながらも、それがある種スタッフが間にコンセンサスとして存在していないと、医院(店舗)が円滑に回らない、いわば「諸刃の剣」的なものなのかもしれませんね。
◆ 衛生士に配当するとき、しないとき
いちばん基本的な考えとしては、定期検診に応じたり、指導を熱心に聞いてオーラルケアを改善しようとしている人。これは無条件に「上客」です。
原則、そのような上客は、メンテナンスには歯科衛生士を担当に付けるようにしています。
もちろんそうでない人もいます。
定期検診についてですが、院長が直々に診ているパターンもある。たとえば、
清潔過ぎて、指導するような瑕疵が存在しない
基礎疾患その他で、衛生士に丸投げしにくい
あまり他人の指導を好まないタイプ
こんな場合だったりすることもあります。
これは上客である場合も、そうでない場合も、「見込み客」の場合も、いろいろあります。
一例ですが、B型C型肝炎の既往がある場合は、院長以外には触らせないようにしています。
3番目の場合は、中高年男性や忙しく生活している方、刹那的な生き方をしている方などに多いですが、「たかが歯に」と、面倒なんでしょうね。
でも、ある段階から、何かと理由(難癖?イイガカリ?)をつけて思い切って衛生士に回したりすると、意外と相性よくメンテナンスを継続してくれることも多い(全員ではない)。
このような「引き継ぎ待ち」的な「見込み客」を、院長側で、正直何人か抱えている現状もあります。
基本的に歯科衛生士とは、歯の衛生指導をする専門家であり、この部分では歯科医師よりも慣れているものです。
しかしそういうことに興味のない人には馬耳東風ということになってしまいます。「こんな面倒な歯医者、他に変えよう」困っている所々と違うことばかり言われたら、やられる方もいい気がしません。
だからいきなり衛生士に回せないこともあります。
たとえば上下総入れ歯などと言う場合は別ですが、通常は治療後もメンテナンスに来てほしい。
しかし、取れたり痛みが出たりした時だけ来院して、終わった後も「何かあったら来てください」で終了してしまうような患者様も、残念ながら一定数います。。
その中には、初診時から(あ~この人、うちに合わなそうだ)ということが多いんですが、中には、最初は良さそうと思っても、だんだん検診に来なくなったりして脱落していくパターンも少なくないんです。
もちろん、そのような方々は、上記の方々に比べると『分類』的には一段下がる訳です。
逆に、初診時に素直そうな性格の方や心配りのできそうな方に思えたりしたら、何とかして上客になって欲しい訳で、何とか衛生士に付けようと、鵜の目鷹の目根本の目で、どんな小さな瑕疵でも無理やり見つけて
「●●ですので、せっかくの機械ですし、ご興味があればぜひ一度専門の者に診せてみてはいかがでしょうか」とつなげたくなるのも人情です。しかし、基本的に歯科衛生士とは、歯の衛生指導をする専門家であり、あまりにも非の打ちどころのない口では、衛生士に配当する理由がなくなってしまうのも、ツラいところです。
なぜ衛生士をつけるのかということですが、当院の衛生士の手腕に自信があるというのも大きな理由ですが、簡単に翻訳すると、これは
「あなたは院長が上客認定しました。ぜひ今後とも末永くお大事に」
というのと同じ意味です。
この場合、意外な壁が2つ存在します。
◆ お子様の2つの壁
①10歳の壁
②15歳の壁
の2つになります。
10歳未満だと、当院の場合は「『つ』がつく年齢の方は、仕上げ磨きが必要ですよ」と自然にムンテラできてしまいます。
これは私の故郷の隣、田方郡函南町議会議員の植松和子先生のことば「『つ』がつく年齢の子は、ぎゅっと抱きしめて育てなさい」をお借りしてアレンジしたものです。
場合によってはそのような例を出しながらも、説明できます。
しかし「初診時」10歳を過ぎてしっかりしたプラークコントロールの習慣が出来ていない場合は、かなり面倒です。
まず、もう高学年なので親でなくその子供自身に指導しなければいけません。
しかしこれがかなりハードルが高く、素直な子や理解力の高い子ばかりではないので、衛生士への配当には苦労します。
もちろん、親の理解が低かったりした場合は絶望的です。
15歳の壁、というのは、茨城県の場合だけかもしれませんが、マル福(他県で働いているときはいろいろな呼称があった)といって、中学生までは月2回600円、3回目以降無料という公費の補助があります。
だから中学生までは「歯ブラシや予防も頑張りましょう」と、まだ言いやすい素地がある。
どうせ1回600円ですし。
しかしこれが高校に入ってしまうと、大人と同じ3割負担になってしまうんです。
ガチでやると、保険でも1回3000円コースみたいな話になってきます。600円とはえらい違いだよなぁ。
初診で高校生で本人だけ、なんて場合は、非常に心苦しい思いをすることもしばしばあります。
生徒さんの方はもう(早く帰りたい帰りたい)というオーラ丸出しですし・・・
◆ インプラント関係
なお、インプラントの場合は事情が異なります。
インプラントの清掃指導やメンテナンスは、これは必ず衛生士に付けることにしています。
◆ 一段下がる方々…
先ほどの一段下がるような方々の場合は、事情が異なります。
基本的にまず
さっさと終わらせたい
トラブルを避けたい
という気持ちが働くものです。
「お前にやられた所が痛くなった。どうしてくれる」
みたいなのは無いに越したことはないが、とくにそのカテゴリーの方々には極力触れたくありません(私も人の子です)。
結果として、(私も人の子なので)ややモチベーションに難がありながらも、むしろ高度な技が炸裂してしまったりして、耐久性のある治療がさっさと終わってしまう。
(もう来るなよ!)
と心の中で叫びたくなるような面々の治療に限って、本気出してしまったりして、あとでぐったり気疲れしてしまいます。人間修行がだいぶ足りていない証拠かと思われます。
実際にトラブルになってしまったら、残念ながらその方はランク的に一番下、というか、枠外に出てしまいます。
検診の手紙なんか絶対出さないし、さわらぬ神にたたりなし、みたいな感じで、非常に消極的な対応になってしまう。
でも、個人経営の歯科医院でもあるし、どなたにも100点が取れないのはもちろん、合格点レベルでも取れるわけでは決してありません。
しかし、当院で相性が悪くても他の医院さんで相性がいい所が見つかったりすることも結構多いものです。
歯医者ってホント、医院によって極端に違うものです。
そういうなかで適切なマッチングに恵まれる。
それこそが三者でWin-Win-Winの近道だと思います。
本当は上客だけでやっていければ、こんなに楽なことはないかもしれません。
少なくとも亡くなった私の叔父は生前何度もそう言っていました。
しかしそれにこだわり、一段下のランクに思える方をぞんざいに扱ったり、あまつさえ追い出したりするのは、さまざまな面から見てやはり好ましくない野は当然です。
当院も以前は「石北会計教」にそまりつつあって、何人も喧嘩して追い出したりしていた時期もありました。
一番酷い時には「保険の入れ歯は作らない」「インプラントしない人は他の歯科医院で」みたいなことを公然と言っていた時期もありました。今考えたらひどいものです。
必然的に患者層が薄まり、経営的にもだいぶ苦しい思いをしました。
初診時~でも言った通り、実際は私自身が、もし歯科医師でなければ定期検診なんか行かないような人種です。そのような「歩くものぐさ」が身に染みついているようなセコい人間が、偉そうにインプラントだのメンテナンスだの語っても、じつはあまり説得力がないんですね。
だから、ある程度患者層の中にクラス分けや『分類』のようなものが出来てしまうのは仕方ないのかもしれませんが、保険診療も取り扱っているわけだし、今はなるべく広く浅く門戸を広げて、療養の給付に偏りが生じないことを常に頭の片隅にはおいて毎日診療に当たっています。
【今回のまとめ】
客層を純化するか、広げて『分類』を受け入れるかは、店舗の悩みどころである