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2017/05/14

こんにちは、根本齒科室の根本です。

まだ小学校に入るか入らないかの頃です。
母との入浴後は、風呂上りに歯みがきをするのが常でした。

母「歯をきちんとみがけていると、べろで舐めると
  表面がツルツルになるんだよ。みがけてないとザラザラ」

よく横で言われていたものです。

しかし私はいつも、(それは反対じゃないか)と思っていました 。

私はまだ5~6歳でしたが、、歯ブラシ前に舌で舐めるとツルツル(というか今思うとヌルヌル)していて、磨き終わると舌触りがザラザラに変わるように感じていました。

当時は、今と違って、仕上げ磨きという概念がまだなかったと思います。
私もやられた記憶は一切ありません。
また、乳歯がボコボコむし歯になっても「大人の歯になったらむし歯にならないように頑張ろう」みたいなのどかな感覚の時代でした。

歯ブラシ方法なんかも当然(私の記憶が確かなら)自己流です。

高度成長期なんて、そんなもんです。
おかげで休み期間になると歯医者は子供で大盛況。
歯医者の30分待ち1時間待ちは当たり前でした。

その後、大学に入るまでは、あまりその辺の舌の感覚がどうとかは意識せずに過ごしてきました。
そして、だいたい上記の話から20年後、仮面浪人や留年など回り道もしながら進学して、大学5回生のときです。「予防歯科学」と称する科目の、とある実習がありました。

それは、いくつかの数人のグループに分かれて行うのですが、グループ内で決められた人が

 ▲1週間、歯を磨くな
 ▲カールとか歯にこびりつきやすいものを積極的に食べろ

という指示を受け、我慢して1週間後に「磨き残しの染め出し」や歯肉の炎症の評価などをやる、というものです。

残念ながら私はその「決められた人」に当たってしまいました。
実習の内容の詳細は忘れましたが、とにかく期間中には、歯肉から血の味がするので閉口したのを覚えています。

実習期間が終わり、やっと歯を磨いてもよいことになりました。
そのとき、あることが判明したのです。

汚れがべっとりついてヌルヌルの歯を一生懸命ブラッシングしてゆすぎます。
すると、ところどころ、ザラザラというかボツボツしています。

「あっ、これが固着して取りにくくなった層状のプラークの一部か!」

汚れ、というか「菌」は、最初のうちはふわふわしていて軟かいんです。食品にたとえると「イクラ」です。これが、何日もたって熟成してくると、まず表面、次に中がザラザラ硬化してきます。食品にたとえると「スジコ」です。
で、ひどいのになるとスジコのスジが凶悪化してきたり、あまつさえ石灰化したりして(=歯石)ゴワゴワ・バリバリしてきます。

その上の表面にさらにヌルヌル層が乗っかって、全体として雑菌の複合体(=バイオフィルム)のようになってしまいます。

この辺を、なんと6年も前の過去記事でAA(アスキーアート)で説明していました。
手前味噌ではありませんが、今見ても直感的にわかりやすい点で有益と思われますので、ぜひリンクをたどってください!

「AAで見る、歯の汚れと音波歯ブラシ」←クリック!

過去記事では、歯の汚れの雑菌の状態を

 (1)歯をみがいた直後の状態
 (2)何時間かたった状態
 (3)こびりつき始め
 (4)腰の入ったこびりつき
 (5)カルシウムを吸って歯石化

の5段階に分けて説明しています。
(5)については、歯周病になりやすい傾向の人(=歯周病菌の(数というよりも)比率が高い人)は早くこうなりますが、むし歯傾向の人(歯周病菌の比率が低い人)は、部位にもよりますが(4)どまりのことも多いです。

これでいう(4)や(5)まで行ってしまった人が大雑把に歯をみがくと、表面のヌルヌルだけが取れて、奥のザラザラした熟成部分がかなり残ることになります。

そうです、これが幼少時の私が体感していた感覚です。
(そうか、まだ下の硬いヤツが磨き残しになってたんだ)
思いっきり気合を入れて磨きなおし(プラス、(単なる思い付きのことですが)ある特殊な方法[註]で仕上げ磨きして)舌の先端で舐めてみました。

今までのモヤモヤが心理的にも実際の感覚的にも、一気に除去されたような、気持ちの良いスベスベな表面が現れました。

私は思いました。

 プラークって、意外と取れない。
 なかなか難敵だなぁ…

まとめます。

①熟成して上がヌルヌルに((4)や(5))
   ↓
 [A]大雑把に歯ブラシ
   ↓
②上のヌルヌルを取って、下のザラザラが残る
   ↓
 [B]ていねいに歯ブラシ
   ↓
③下のザラザラも取れてスベスベ((1)や(2))

ここから

ヌルヌル<ザラザラ<スベスベ

の関係性が見て取れます。

ひとつ注意ですが、プラークが積もるときは、7年前のコラムでいうところの(1)→(2)→(3)→(4)→(5)の順に進行しますが、これは層状のプラークの最深部の状態を表したものです。
ですから最深部を除去するときは(3)のような緩やかな状況を経由せず(4)のような硬い状態のまま除去する形になります((5)は歯石なので歯科医院で取る必要がある)。
また、ブラッシングの[A][B]については、[A]が子供レベル(幼少時の私)の歯ブラシ、[B]が大人レベル(幼少時の母)の歯ブラシとご理解ください。

言語の表現は難しい。
幼少時の自分を思い出しながら、そんなふうに感じました。

【今回のまとめ】

プラークは、ザラザラ→ゴワゴワ+ヌルヌル と層状に進化する。
[註]ある特殊な方法 については、全く大したことはありませんが、次回書きます。

2017/05/14 02:37 | nemoto | No Comments