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2012/05/02

こんにちは、根本齒科室の根本です。

前回、開業前後のことについて書いていたら、何かの偶然でしょうか
つい先日、開業時のオープニングスタッフだった歯科衛生士Dさん(仮名)が、
突然急患として来院しました。

この間の件といい、彼女の来院といい、6年前を思い出させる出来事が
頻発しています。

そこで、オープニングスタッフの募集とか開業スケジュール、の件について
もう少し慎重に思い出しながら続きを書いてみたいと思いました。

Dさんは、当時採用したスタッフの中で、一番最初に採用を決めた人です。
まだ、当時は歯科医院は工事中でしたので、面接はできません。
恥ずかしながら、そばの佐貫駅前マクドナルドで行っていました。

◆ 求人誌の掲載

最初は、ハローワークと、アイデムさんととらばーゆさんに出しました。

アイデムさんの掲載料は、初回なので、現金払いでした。
オフィスもない(建設中)のでアイデムの担当者の方と駅前で待ち合わせて、支払いました。
このときに、うっかり昼寝していて、少しお待たせしてしまったのを覚えています。
自宅から、徒歩5分の駅まで全力疾走してダッシュしました。

このとき以来、募集はほぼアイデム1本です。
他誌も試しましたが、集まり具合がちがいます。ここらはアイデムさんが強いです。
とくに、日曜日に新聞折込に入るチラシの威力が強力です。

とらばーゆさんは、現金ではなく振込みでした。
「常勤に強い」とのふれこみでしたが、当歯科室の場合はいまいちだったようです。

◆ スタッフ募集・面接

以前税理士のF先生に指摘されたのですが、有資格者なのだから24時間365日
コレ仕事と思わないといけない、とお話をいただいたことがあります。

F先生は、社労士のI先生に紹介していただいた先生です。
年齢は私の1つ上で、”永遠のサッカー部員”というか、モロに体育会系ですが
相当無理を聞いてくれるので、頭が下がりっぱなしです。

F先生の話に、なるほどと思いました。でも歯科医院は人がいないと回りません。
そこは士業とかに比べて不利です。

そう、Dさんといえば、履歴書に写真を貼り忘れてきたのが強く印象に残っています。
「でも感じのよさそうな人だったので、採用してからでいいか」
当時、歯科衛生士専門学校に通学中でもあり、これは青田買いイケルか?!
という期待もありました。

面接する場所が無い、というのは、本当に情けないことです。

マクドナルドでの面接は、一応無料ではありません。
ひとり行うごとにコーヒー1杯注文しないと追い出されてしまいます。
そのうち店員さんに顔を覚えられ
「お客様、さきほどと同じでよろしいですか?」
・・・
面接が終わる頃には、今にも黒人になりそうな勢いでカフェイン漬けでした。

悔しいので、面接の終わりしなには
「よろしければ、帰りに現場見ていってください。ローソン跡地です」
と必ず一言付け加えていました。

そんな感じで、極端にカフェイン摂取量の多い日々が続きました。

予防や定期健診の力になる歯科衛生士ですが、案外あっさりハロワ経由で
応募がありました。
ベテラン衛生士のKさん(仮名)は、15歳も年上でしたが、(そのときは)
謙虚な感じでした。

◆ ミーティング

デフレまっただ中(今もそうですが)だったせいか、多くの方に面接に来ていただき
概ねメンツの頭数は揃いました。

その次は、今後の予定とかシフトとか、ユニフォームを決めてもらったりとか
そういう相談をしなければならない。

まだ内装は完成していません。
大家の不動産屋さんに相談して、近所にある持ち物件のビジネスホテル
1階の食堂を借りることになったのです。

その日は朝から小雨でした。
ビジネスホテルと言えば聞こえがいいですが、要は長期滞在型の格安な宿坊にすぎず、
エレベーターも無い。あまつさえw食堂はまさに、昭和風カフェー(横棒がポイントです)
そのもの
の様相を呈していました。

歯科衛生士のKさんは、その日は来られないとのことで、お休みしました。
他の人たちと年齢が離れていたので、少し躊躇があったのかもしれない。
と私は思っていました。

◆ スタッフ募集・面接(受付編)

受付を選ぶのには、結構二転三転がありました。

何人かの中で、Gさん(仮名)がいいな、と思っていました。

Gさんは30代前半の女性で、面接の時には事務能力が高そうで誠実そうでした。
いくつかの、非常に名の通った有名企業でも秘書をしていたとのことです。
そして、変な影と色気があった。細身なのに、胸も名前負けせずGくらいありそうです。
なんだか、愛人にぴったりそうな感じだ。

とりあえず、そのときは「やりぃ~!」と思った俺も、なんだかなぁ。

ミーティングのときには、後ろの方でおとなしくしていたが、終わったあとGさんに
「・・・院長、すいません」
と呼ばれました。

何を言われたかは忘れたが、(何だかコイツ面倒くせぇことばかり言うなあ)
と思ったことだけは覚えています。

案の定、そのあと、中身は忘れましたが、急にいろいろ要求を出してきたり、
電話で話す感じがぞんざいになってきたりしました。

とりあえず、「こりゃアウト」と思いました。だけど、何でだろう??
もしかしたら、折り目正しく対応せず、いっそベタなAVみたいな展開の方が良かったのか???
・・・や、それはないだろう。とにかく、きれいなバラにはトゲがあるんだなあ。

期待しすぎてしまった分、Gさんには、いや、自分自身にがっかりしたものです。
しかし、後々トラブルになるのも嫌なので、早めに断りの電話を入れた。
(ヨ、ヨリニヨッテ、コ、コノオレガ、【G●ッ●】ヲアキラメルナンテ・・・)
面倒な奴では仕方ない。電話でも結構こじれてしまったし、地雷だと思って諦めよう。

「店長(院長)って、嫌な仕事だなぁ・・・これが今後もあるのかガクッときました。

気の重い電話をした後、社労士のI先生に、とりあえず今まで採用した人の
履歴書をスキャナーで取り込んでメールしました。

I先生の返信内容は、驚くべきものでした。

「えっ、Gさんという人を採用しようとしたんですか、根本先生?
もう少し早くおっしゃっていただければ、こちらも情報を提供できたのに。
すみません。そのGさんは、他社の面接でも結構トラブルを起こしているんですよ。
受付は他の方がいいと思います」

ああ、こういうのを”授業料”っていうんだなぁ・・・
また募集を出すのは面倒くさかったが、出すより他にありません。

今度は、応募者の中ではIさん(仮名)という人が目にとまりました。
おっとりとしていて、とげがなく、いい感じの方です。
「この子でいいかな?」
ちょっと気に入ったので、面接もそこそこに、工事現場に連れて行きました。
「もうすぐ完成します」
Iさんを超える人材は、案の定、その後の面接ではあらわれませんでした。

以前のコラムに書いたように、大体少し話してみると、感じよさそうだな
とか、感じ悪そうだな、くらいは分かるものです。

いくら事務能力や知的能力が高くても、受付は院長の安心の拠り所でもあるので
使いづらい人材ではどうしようもない。
ことに大所帯でない個人商店なので、人事的な影響は甚大です。

「Iさんで決まりかな」と思いながらも、募集期間の間は待つしかありません。
何人かが急遽応募してきては、見ただけで「お疲れ様でした」が何件か続いた。

最終日の最終応募者はMさん(仮名)。
かなり遠くから、車で30分以上のところからの応募でした。
まず住所を聞いて、「はぃ?」って感じの距離。しかも自分よりも少し年上。
やる前からもう、結果は見えている「と思っていた」俺としたことが・・・。

その日の少し前に、裏口とスタッフルームは何とか完成していて、内装も
ほぼ終了、というところまで工事は進んでいました。
やっと、面接や応対を自分のオフィスの敷地内でできるようになっていました。

医院のすぐそばで道に迷い、遅れてやってきたMさんにはびっくりしました。

遅刻してきたにもかかわらず、とにかくニコニコ笑顔が絶えないのです。
「あぁすみません(2525)、ホントすみません(2525)
そして笑いの閾値がとにかく低い低い。
こちらのオヤジギャグがどんなに寒くても一切滑らず、とにかく笑う笑う
面接にありがちな気負いとか、張り詰めた緊張感が、微塵も感じられない。

受け取った履歴書を見て、またまた驚かされました。
そこに写っているのは、あきらかに私にガンを飛ばしているかのような
茶髪の元レディース系の姐さんそのものです。
今目の前にいる、笑顔の素敵過ぎるMさんとは、とても同一人物には見えない。


 そういえばこの間、韓国では、3分間証明写真の機械にPhotoshopのように
 写真を修整する機能がついていて話題になっている、とニュースで見ました。

 これは、その逆のパターンです。

実物が履歴書に大きく劣る方は大勢いらっしゃったが、はありえない。

最初からすっかり狐につままれた心境ながらも、せっかくなので、
ほぼ完成した内装や受付周りでも見てもらうことにしました。


「うわぁ~!スゴーイ(゚∀゚ )!! スゴーイ( ゚∀゚)!! キレイ――(^O^)――!!」
「ここで座ってするわけですね。でも、キレイ―(^O^)―!! スゴーイ( ゚∀゚)!!」

Mさん、ひたすら感動しっぱなしのようすです。
口ぶりや雰囲気も、元ヤンとかDQN系ではないのは明らかです。

そんな彼女に、私は混乱しっぱなしでした。
しかし、ふと、今までのストレスがかなり癒されていたことに気付いたのです。

 面接は残念なことがとても多かった、
 なかなか思うようにことが運ばない、
 工期はやっぱり遅れた。

私はずいぶん疲れていました。だけど、何となく感じました。
「この笑顔に賭けてみよう」
だめなら試用期間で切って、また面接すればいいか。

まさか、最後の最後に、Iさんを超える人材が訪れるとは思っても見ませんでした。

じつは、採用後にMさんにたずねた所、近所の方からアイデムの新聞折込を
捨てる前にどうぞ」といただいて、それを見て電話してきた、と言っていました。

星霜遷変、今ではすっかり主力、というか、実質”M歯科医院”状態です。
Mさんに付いているリピーターの患者様も多く、まさに無くてはならない存在です。
私にはとても得手には思えない「女性陣のマネジメント」もMさんのおかげで安心です。

そんなMさんの現在の働きぶりに、私は非常に満足しています。

どこに何があるか分からない。
Mさんの件は、まさに神の采配としか言いようが無いと、今でも思います。

◆ 開業スケジュール

Mさんを採用したころは、もう開業予定日も押し迫っていました。

思えばこの半年はあっという間でした。
物件も見つからないのに大津支店に相談に行き、あしらわれたのが前年末。
あわてて物件を探し、運良く伊勢喜屋さんを見つけたのがその直後です。
もう、典型的な落下傘開業です。

なるべく早く開業したかったので、もう大体内装の図面案は書いておきました。
動線分離と個室、水場、トイレ、待合室など。

担当者から「ここまでできていれば早いですね」と言われたのも、そのころです。

本所から佐貫に引っ越してきたのは、年が明けてからです。
それまでは、柏での仕事が終わってから佐貫の工務店に打ち合わせに行き、
それから東京に帰宅という日々が続いていました。

しかし打ち合わせでいろいろこだわりが出てしまい、部材の輸入やら何やらで
賃料発生が結局3月になってしまいました。
そこから改めて内装の解体から始めるので、GWまでずっと工事になってしまいました。

4月ごろ開業できれば言いかと思っていた考えは、甘かったようです。

面接は、GW明けになってしまいました。
ミーティングが5月中旬、そこからさらに2回連続でアイデムに募集を出し・・・

その間、材料(ケーオーデンタル分)の

◇ 袋出し(袋から出す)
◇ 伝票合わせ(過不足がないかチェックする)

や、保健所への開業届け、社会保険事務局(現 関東信越厚生局)への保険医療機関届け、
ビジネスホンの説明、カルテソフトの説明etc

袋出しした材料は、歯科衛生士のKさんが「勝手に」バンバンしまっていました。
もう、それをとめる気力もありません。

◆ 内覧会

5月28日の内覧会が、もうすぐでした。

内覧会というのは、近所の方に、無料で開業直前のお店に入ってもらって
開業直前の院内をのぞいていただくイベントです。

しかし、もともと歯医者を好きなどという奇特な方はまずいらっしゃらないし、
近隣の競合医院では、絶対にスパイをよこすに決まっています。

そんな、非武装中立路線みたいなことは、できればしたくなかったのですが
いろいろ調べても、最近は、どうもどこの歯科医院でもやっているようでした。

うわ~面倒ぃ・・・!非常に気が重かったです。

「俺ってなんて気が短いんだろう。すぐ気が重くなったりイライラして」
とくに開業準備の頃は、そんな自分の姿に、改めて驚き、落胆していました。
30代も後半になり、もっともっと丸くて、人間ができているつもりだったのに。

(要は、俺は偉そうなことを口先だけで言っている奴だったんだ)

ストレス耐性の低さに愕然とする日々でした。

『開業ブルー』ってのがあるんですよ。極力おちついて、楽天的に」
ベテラン材料屋のRさんが、励ましてくれました。

Kさんは、歯科に対しては結構真摯で、勉強も良くしているような感じでした。
しかし、接しているうちに、どうも、仕切りたがり屋の面や威圧的な面、
自分に都合が悪いと不機嫌になりやすい点などが目立ってきていました。
そんな点を、ここのところ、何だかやりにくく感じていました。

Kさんは、強行に土足に反対してきました。
私は、土禁にエビデンスは無い、と説明しましたが、歯科衛生士がいないと
予防歯科や定期健診には痛手なので、そのときはあまり強く出られませんでした。

仕方なく、洗濯できるスリッパと、簡易型の靴棚を購入することになりました。
そのときに、ひとつ密かに心に思いました。

そうしたら、こんどは、予防個室内の壁面に、自分で持っている歯ブラシを
並べて飾りたい、と言い出しました。

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何でも、歯ブラシを自分でコレクションしていて、500本くらい持っており
壁面を改造して、それを全部ひっかけて陳列できるようにしたい
とのこと。
気がついたら、勝手に工務店の人を呼んで、図面を書かせたりしていました。

何じゃそらぁ(‘A`)

工務店の人に、できかけの図面を見せてもらったときは、もう全身の力が抜けました。
「・・・ちょっとまだ具体化したわけではないので、待っといてください」

傍らでは、新しく入った受付予定のMさんが、かいがいしく動いています。
「何も分からないんですけどー(2525)、何か仕事はありますかぁー(2525)」
聞くところによるとMさんは、お仕事はほぼ銀行一筋。
いくつかの都銀や地銀を歴任し、窓口業務の資質は万全そのもののようです。

そんなMさんの特技のひとつは、電卓です。

それも、他人の目を見て談笑したりしながら、リスト(東方じゃないよ)の鬼火
の右手
ような、それはそれは恐ろしいスピードで電卓をたたきます。
近所の銀行の窓口の方と比べても、かなり早いです。それが正確無比だから恐れ入ります。

内覧会の直前になって、歯科衛生士のKさんが「都合で出られない」と言ってきました。
(ミーティングも来なかったし、内覧会くらい出てくれてもいいのに)
とくに彼女には、他院のスパイをあしらってほしかったので残念でした。

内覧会の当日に驚いたのは、親類一同が集まってしまったことです。
とくに父の姉が嫁いだ先の「高橋整形外科医院(新潟市)」チームは張り切っていました。

「おい、寿司を取るぞ!!」

ハァ?(゚Д゚)y─┛
と思ったのもつかの間、親類一同はさっさと奥のスタッフルームに陣取り、
寿司とお酒を手に付け始めました。

他院のスパイは、衛生士学校に通っているDさんが、Kさんのかわりに対応してくれました。
最初は心配でしたが、見たら堂々としたモンで、相当安心しました。
仕事は任せてみるもんだな、と思い、あとで褒めようとしたら、彼女いわく
「口から心臓が飛び出しそうでした」

受付のMさんは、ちょっと歯科医院の受付とは思えないような高度な接遇オーラを
遺憾なく発揮していて、これまたカッコイイ。

俺、なにもしてねぇ・・・orz

自己嫌悪の感覚が一気に襲ってきて、もう壊れそうでした。

スタッフの雰囲気も微妙な感じになってきました。
扱いづらいKさんはノリノリ、他のスタッフはやりにくそう、
年上なのに無邪気なMさんを見ていると癒される。
俺、なにもしてねぇ・・・

まさに開業前日、6月1日(木)の夕方、何の用件かは忘れましたが、
ずっと親身になって対応してくれている工務店の担当者の方と電話で話している最中です。
何が原因かは分かりませんが、思わずこみ上げる感情を抑えきれずに、
携帯を握り締めながら、はばからず嗚咽を漏らしてしまいました。

開業って、こんなに思い通りに行かないものなのか。
明日は、はたして大丈夫だろうか・・・

今回は

◆ 求人誌の掲載
◆ スタッフ募集・面接
◆ ミーティング
◆ 開業スケジュール
◆ 内覧会

の内容になりました。
書きながら、胸が苦しくなってきてしまいました。
やはり、この時期は相当精神的にキツかったです。
「顧客ニーズと異なるメッセージを伝える」どこではなかったようですね。むしろ
「・・・って、てめぇ~らっ、ゴルァ~~~!!!」

さて、この後 ヘタレ根本 は一体どうなっちまうんでしょうか・・・to be continued

【今回のまとめ】

人を雇ってお店を構えるのは想像以上のストレス。ボスは基本、周囲に尊敬されない。

05:45 | nemoto | あまり語りたくない”開業”前夜2~内覧会篇 はコメントを受け付けていません
2012/04/23

こんにちは、根本齒科室の根本です。

先日、ちょっとキャンセルが出て空き時間ができたので、
裏口のところで佐貫の街並みを眺めていました。

足を引きずりながら歩く一人の老婆を除いて誰もいない
0.2マイクロシーベルト/hの遊歩道を眺めつつ
ふと、思いました。
(もう、開業して6年か。あっという間だなぁ)

なぜそんな風に思ったかというと、細かなところは別として
当時からほぼ街並みに変化が見られなかったことに気がついたからです。

あの頃、新しそうな建物(開業当時の当院も含めて)は、
今でもやっぱり新しそうな感じです。
いくつか新しく建った商業施設もありますが、全体として見ると
つぶれた店の方が多かったような気がします。

そんなことを思いながら、いつしか頭の中は開業前後の日々を
トレースしていました。

◆ ニーズとメッセージ

ここは多くの方に伝わりにくい部分です。
多くの方が当歯科室に求めているイメージと、私共が皆様に伝えたいイメージ
多くの場合、かなりちがいます。

これは一般的な、たとえばラーメン屋とか喫茶店、服屋、宿泊施設のような、
「顧客ニーズと施設のメッセージがほぼ一致している」業態と大きく異なる点です。

当歯科室としては、まずは患者様に、「歯に対する健康意識」を高めてもらわないと、
何をやっても砂上の楼閣である、ということをしっかり伝えなければいけません。
目指すポイントは、「歯の保存」「機能の維持」です。

しかし、来院される方は、そんな話しを聞きたいと思っているわけではありません。
「痛くなく」「さっさと」終わらせて欲しい、というのがせいぜいです。
目指すポイントは「除痛」「形態の回復」です。

こう見ると、それぞれの立場で、時間軸の観点が全く異なるのが分かります。

ここは、ずっと「おかしいな」と思い、悩み続けてきたところです。
「痛い」と「悪い」の相関が、ほとんどないのが歯科です。
「痛くない」から「安心」と思っているうちに歯がダメになってしまうのです。

私もさんざんいやな目を見てきました。

顧客ニーズに当初ないものをメッセージとして伝えていく。
なかなか厄介な使命です。

当時は、そのためには”高級感”だ(美容院etcの真似がよい)と思っていました。

その後、予防に対する考えが根本的に変わり、震災で大きな気付きがあり、
現在に至っています。

顧客ニーズに当初ないものを伝えていく件については、今でも悩んでいます。

◆ 立地

6年前にここで開業する前は、墨田区の本所4丁目というところに住んでいました。
三ツ目通りと春日通の交差点、高砂部屋から、至近距離にあるところです。
下町風情が漂う街並みながら、道路は碁盤の目のようにきっちりと垂直です。

そういえば、本所4丁目と佐貫1丁目は、どことなく似ています。
錦糸町・浅草という密集地帯のはざまのエアポケットのような本所4丁目
四方を野原や水田に囲まれた孤立した集落の佐貫(馴柴地区)
建物の感じが似ているのです。


碁盤の目の様に区切られた道路
お相撲さんのいるコンビニ
1本入ると鉄骨の2階建てが多い建物

違うのは、本所4丁目には徹底的に駐車場がないところです。
佐貫1丁目は徹底的に駐車場だらけです。何とかして欲しいです。

本所4丁目の、私の住むマンションのテナントにも、歯科医院が入っていました。
この界隈は(「も」?)、よさそうなところには必ず歯科医院が立っています。
「あっ、いい所に空きテナントを発見!」
隣には必ず歯科医院が立っているのです。残念。

最近は「歯科医師過剰問題()」で、いい立地には必ずといっていいほど
歯科医院が入っているものです。
皆様も、いちどデベロッパーの目で周りの街並みを眺めてみてください。
で、(あ、ここイイ)と思った辻辻を軽く見回してみてください。
「また歯医者じゃん」「まただよ」「まry」ウケます。本当に持ってかれます。

一般の方は全くそのようなイメージは無いと思いますが、どの歯科医師も
商圏とか立地とか、道路付け、人の流れ、昼間・夜間人口とか、
かなり敏感に見ています。

少々の技術差など、患者様には分かりません。
よほどのヤブでない限り、
立地ひとつで軽くひっくり返せます。
(これ、言い切っていいのかなあ・・・)

いわゆる、うまいだけのラーメン屋では繁盛しないのと同じです。

その頃は、本所から北柏に電車通勤していたので、その区間のテナントは
自分なりに注意して見ていたつもりでした。
おいしい場所は、どこも歯医者がすぐそばに入ってしまっていますね。

今や、立地に綿密に気を配らなければ、経営が立ち行かなくなるところまで
来てしまいました。

しかし、OECDの中では、歯科医院の数の比率は平均的なはずなのに。。。
うむ。何かおかしい。

◆ 診療圏人口

そんなこんなで、さらに常磐線を北上して、我孫子~取手、と見ていきました。
やっぱり、もうどこも入ってしまっていますね。

卒業後、ずっと都市部や住宅地の駅前の歯科医院で勤務することが多く
自分の開業についても、そのようなイメージを持っていました。

そうすると、土浦よりも向こうには行きにくい感じです。
その頃はまだつくばエクスプレスも開業したばかり、沿線も何もありません。

歯科医院の診療圏は、おおむね半径500メートルから1キロ程度に落ち着くのが
一般的です。
(日本全国、飛行機で来る患者様もいる、と豪語する医院もたまにありますが)

20世紀後半ごろは、全国で4~5万軒の歯科医院がありました。
このくらいの間隔で歯科医院があると、平均的に1軒当たりの人口が
3000人になります。
この時代から、一歯科医院あたり人口は最低2000人以上、というのが
“常識”的な基準と考えられていました。

そこから急に医院の数が増えて、現在の歯科医院の数は7万件超。
一歯科医院あたり人口は1700~1800人程度と、4割程度も
落ち込んでしまいました。
都心部では、1000人程度のところも少なくありません。

その間に、橋本行財政改革(本人1割⇒2割)、小泉構造改革(2割⇒3割)と
徹底的な緊縮財政が行われてしまい、
それでなくても「選択支出」性の
高い歯科医院
からは、ますます足が遠のいてしまいました。

そんなこともあるので、まずは周辺集落の動態が大事です。
「2000人以上住んでるか」
「強そうな歯医者が何件あるか」
足で歩き回って調べるのも大事ですし、後で自治体のホームページ等で
地区別人口と周囲の歯科医院を調べるのも大事です。

私の場合は、ちょっと理由があって、常磐線沿線で検討していました。

水戸までの「フレッシュひたち」が停まる駅の周りは大体見たのですが
駅の周りが整備されていても、周辺に住宅地が見当たらないところは
厳しそうです(代表例:勝田駅、友部駅)

土浦までは電車の本数も多いので、土浦から、一駅づつ南下していって
駅のまわりをいろいろ見ていきました。
変な物件もありました。広すぎて困る奴もありました。
で、佐貫駅に降り立ち、偶然、現在地を発見するに至ります。

見るからにコンビに跡地である物件の「テナント募集」の看板の番号に
あわてて電話してみました。
「失礼ですが、お客様の事業内容は、どちらになりますでしょうか?」

一応歯科医院です、といったら、やっと声の表情が和らぎました。
この近隣は学習塾が多く、水商売系と学習塾は困ると思っていたようです。

◆ 資金調達

もちろん開業には結構お金がかかります。

一般に土地からだと1.5億、家付きだと2億くらいが目安です。
そんなぜいたくは私にはできませんから、必然的にテナントになります。

家賃としては、郊外なので坪1万円~を目途に見ていきます。
ユニットは4台は置きたい、あとできれば個室診療にしたいというのもあり
坪数は30坪以上は欲しいところです。
まあ、なかなかそんな都合のいい物件もないので、困るわけですが。

そこで、まあ少なくとも5~6千万は見ておかないといけません。

しかし当然ですが、貧乏勤務医の私に、そんなお金があるわけもありません。
そこで、親族に泣きついて、借りることを前提に融資を検討せざるを得ません。

根本家では、私の祖父(故人)と叔父(故人)が2代に渡って、北茨城の大津町で
歯科医院を開業していました。しかし廃院して10年余、町はどんどん寂れ
歯科医院は逆に何件も増加する有様。
今は叔母がひとりで住んでいます。

そこで、常磐線の沿線で、という条件で親族借り入れができることになりました。

残りは融資になります。
しかしこの時代、銀行がそんなにホイホイ貸すわけがありません。
時代は2005年、小泉内閣終了間際と見るや、日銀がそれまでの金融緩和政策を
引き締めにかかり、また一段とデフレに向かっていた時代です。

最初に相談に行った大津支店では、けんもほろろに追い返されました。
どの業種でもそうでしょうが、新規の資金調達は、非常に厳しいものがあります。

何とか国金で、残りを融通してもらうことができました。

しかし、それでも少し(いや、だいぶ)足りません。
リースで1000万近く使ったでしょうか。
運転資金も、半年では心もとないので、1年近くは見ておかなければいけません。

日常生活では、そんな大きな金を使うことなどありません。
家賃も数万円、食費も1000円いくかどうか、服もその辺のユ=ク□や●印とかで
済ませてしまいます。

それが、いきなり500万~1000万円単位のお金が目の前を行き来したり、実際に
何百万もの札束を持って銀行に入金に行ったり、まさに”非日常”の世界です。

実際に手に持った350万の札束は、相当重かったです。

◆ 内外装

「顧客ニーズに当初ないものをメッセージとして伝えていく」
この課題は、けっこうきついです。

その頃はとにかく、(自分の歯は価値があるものだ)と思っていただけるには、
歯科医院の高級感を出せばいいだろう(いや、思って欲しい)くらいの考えしか
頭に浮かんでいませんでした。

ちょうど内装を考えているときに、トリノ五輪で、荒川静香が金メダルを
取りました。
そのときのユニフォームの色が、水色と青だったので、すぐに医院の色を
青に決めてしまいました。

歯科医院は、薄いグリーンか、薄いピンクのテーマカラーが無難で、最近は
オレンジ系のところもポツポツ出てきています。

真っ青、というのは、冷たく感じられてよろしくないようです。
(でも何か言われたら「荒川静香の真似をした」と言えばいいだろう)

院内でこだわりたかったのは、個室化(予防用の個室も)と土足です。
当時は、それが大きな差別化につながると思っていました。
とくに、予防コーナーは、タカラベルモントから「プロフィラックス」
という歯科衛生士専用のチェアが売り出されていて人気でした(今もです)。
ガラス天板が素敵なコイツをぜひウチにも、と考えました。

設計と施工は、伊勢喜屋工務店様にお願いしました。

 ちなみに、うちのテナントの大家が伊勢喜屋不動産(自社物件)様で、
 ご兄弟で経営しておいでです。
 ついでに、佐貫駅前の「竜ヶ崎プラザホテル」もご兄弟が経営しておられ、
 地元では「伊勢喜屋三兄弟」で有名です。

 ・・・いや、そのご兄弟のお母様である「会長」様のほうが有名です。
    女の細腕で3人の息子を育てながら、ゼロから不動産業を興し、
    この辺で事業をされている方で「会長」と聞いて違う方を想像される方は
    いらっしゃらないくらいの、それはすごいお方です。
    私共が入居できたのも、その会長さんに気に入っていただけたのが
    大きな理由です。

工務店の設計担当者の方とは、何度も何度も打ち合わせをしました。
歯科医院は結構手がけておいでとのことでしたが、それでも個室と聞いて、
かなり驚いておいでのようでした。

結局、通路の左手が治療個室、右手が予防個室になりました。
予防個室側はチェアユニットのガラス天板のイメージを延長して、ガラス扉の
入口です。

非常に素敵な仕上がりにしていただきました。
ゴージャスというよりも、シンプル&スタイリッシュ、でしょうか。
ただ、配管はもっと低くできれば(これはどこの歯医者も言う)文句なし
なのですが。

もう一点、これもどの歯医者も言うことなのですが、簡単に言うと、
なるべく多くチェアユニットを押し込みたい
願望が基本的にあります。
とうぜんですが、サービス業の店舗収益は

 イスの台数×回転率×平均客単価

なので、少々手狭でも、とりあえずイスの数が多いほうが有利なのです。
しかも、自分がていねいな治療をして頭数が回らない場合でも、
代診や衛生士で頭数を回していくことができます。

しかし施工業者は引渡し後の使い勝手のことなどもあるので、なるべくスペースにゆとりを持たせようとします。
とくにウチは個室だったので、あまり強引なこともできず、結局は思ったよりも2台分、配管が少なくなってしまいました。

トイレは「高級感を出すなら、トイレで思い切り遊んでみましょう」というご提案をいただき、自宅の本棚の隅にあった「月刊 商店建築(廃刊)」のトイレ特集を持ち込んで「コレやってください」みたいな感じでした。

さすがに、向かい合わせのマジックミラーは工□すぎると、却下になりましたが。

治療側は、バタバタすることも含めて、中央通路以外に窓際に従業員専用の細い通路を設け、「動線分離」にしてみました。超零細のクセにw
この写真は、その窓側の細い通路の工事中の写真です。
この通路の左側が診療室(個室)になっており、その左奥に中央通路があります。
この通路の突き当りが小さな倉庫で、突き当りの右が受付コーナーになります。
また、この通路は、 我近著 お子様が好んで走り回られる通路でもあります。
(‘A`)

◆ 診察券”とか”

歯科医院を始めるには、診察券とか問診票などが必要です。

これらは、出来合いのものもありますが、いまひとつスタイリッシュではなく
この芋っぽさは何とかならないものかと思っていました。
とくに、袋文字の太丸ゴシックが、媚びているようで気に入りません。

 芋っぽいと歯を安く思われる。そうすると定期健診に来てもらえない。
 歯を大事に思ってもらうには、診察券とかもスタイリッシュにしないと!

ほとんどネタに見えるかもしれませんが、当時はガチでそう信じていました。

いろいろ自分の中にも、「こんな感じがいい」などという案があるわけです。
(それが他人の目にもいいかは別として)
そこで、それを具現化できるソフトということで、
イラストレーター(CS2)を思い切って購入しました。いや~、高かったw

看板、チラシ、名札、診察券、診察券シール、などなど。
全部自分でデザインしました。
このときにベジェ曲線の基本的な使い方を強制的に学習するハメになりました。

イラストレーターは大活躍で、今の院内新聞も、ホームページのデザインも
ほとんどコレ1本です。

もう一点、欠かせないのが、ダイナフォントです。費用対効果は最高です。
安っぽいという人もいますが、昔から「華康ゴシックW3」が気に入っていて、
その周辺の文字をいろいろ使えればと思っていました。

以上、歯科医院の開業について、当事者の立場から駄文をしたためてみました。
今回は、

◆ ニーズとメッセージ
◆ 立地
◆ 診療圏人口
◆ 資金調達
◆ 内外装
◆ 診察券”とか”

の面について、ガーッと駆け足で徒然草してみました。
予防や健診で歯の質が上がり、健康に寄与するとそこまでは分かっていたのですが、
当時を思い起こすと、そのためには高級感とスタイリッシュさが大事だと思っていました。

それが不要だとは言いません。もちろん非常に重要な要素です。
しかし、それ以上に重要な要素もあります。

まだまだ続きがありますので、もうしばらくのんびり書いていきます。

【今回のまとめ】

開業時は、ニーズと異なるメッセージを伝えるには高級感が重要だと思っていた。

01:27 | nemoto | あまり語りたくない”開業”前夜1 はコメントを受け付けていません
2012/04/01

こんにちは。根本齒科室の根本です。

今年は2年に1回の、保険制度改訂の年です。
月末に行われた保険制度改訂の説明「集団指導」(3月28日、勝田)に逝ってきました。
佐貫から勝田(⇒日工前)までの道のりは、かなり遠く感じられたのですが
道中ちょっと(自分だけ?!に)うれしいサプライズがありました。

今回の改訂は、「やるやるといって、やらない」でした。あまり変わっていない…
(これは「私たち市井の開業歯科医にとっては」ということです。)

あと、(一部ですが)インプラントが保険適応になりました。

「おっ!これはよい」
「保険が利かなくて高額なので二の足を踏んでいたけど、よし!」

…まあ、少々お待ちください。
これらについて、説明します。
また、「インプラントが保険()」になった!※ この言葉のニュアンスが
じつは、今回の改訂の意図を暗示しているのかもしれません。

◆ そんなことより

ちょっと見てくださいよ、コイツ!
キハ20━━━━(°Д°)━━━━!!!!

ですよ。何でおまえがここにいるんだよ?ちょっと嬉しいじゃんwww

床は木、木ですよ。しかも昔の教室のようななワックスと排気ガスの怪しい香り。
通路側の、シート角の「丸い」手すりが、もう、素晴らし過ぎて何とも言えないです。
ヱアコンなんて無粋なモンは、存在すら許されない、まさに昭和のカットオフです。
御存知(?)DMH17Hエンジンは、那珂湊方向の床下に1基。当然その真上に座ります。

このロングシートの下の市松模様の鉄板、コレみただけで来た甲斐があったです。
ほら、推定50代~含むヲタが3人カメラ片手に楽しそうに(写さなかったけど)
しかし残念ながら、日工前までは1駅。当然直結段に進段するはずもなく、
せっかくの官能サウンドもちょっとだけ、ほぼ惰行のまま着いてしまいました…

おまちかねの「インプラントが保険()※」の件は、もう少し先に書きますね。

◆ 総論~私の立場から見た皆保険

TPPの議論が起こってから、にわかに「皆保険を守れ」という声が高まっています。
もちろん私も TPP 皆保険維持に賛成です。
ちゃんと「国民皆(米国民間医療)保険」にならないように、国家で守れと思います。

保険や介護は、年金やベーシックインカム、○○手当てのような「所得移転」と異なり
「消費/政府支出」⇒「内需」なので、名目GDP(消費+投資+政府支出+純輸出)増大になります。

「税と社会保障の一体改革」という言い方は、所得移転と消費/政府支出を混同しているので
誤解を生みやすく、ややふさわしくないと私は考えます。むしろ
「増点[政府支出]」「負担率低下(3割⇒2割など)[消費喚起]」
を併せて行い、デフレ脱却とともに財政健全化の意味からも名目GDP増大に努めるべきです。

(税率ではなく)名目GDPが税収と非常に高い相関があるからです。

とくに医療業界にはさんざん批判の多い小泉構造改革。このときには
「減点[政府支出抑制]」「負担率上昇(2割⇒3割など)[消費抑制]」
と、真逆の政策が行われました。

小泉時代は、「金融緩和」はしましたが「緊縮財政」でした。

デフレ対策⇒「金融緩和」「政府支出」
インフレ対策⇒「金融引き締め」「緊縮財政」

なので、デフレ脱却の観点からは、アクセルとブレーキを同時に踏んでいた感じです。
これでは、家計⇒企業への所得移転といわれても仕方ありません。

そのような「堅調な内需」「GDP上昇」の意味でも、皆保険はしっかり政府支出で
守っていくことは、いいことなのではないでしょうか。

◆ ~歯科の現場と保険点数・制度

しかし、現場サイドの内情は、かなり複雑です。

【点数】

以前は私は、「現金給付」論者でした。現状のような現物給付だと

◇ 診療行為・材料そのものが制限される
◇ 月末のレセプト提出が面倒だ

というものです。

現金給付なら、行為や材料は縛られませんし、月末の「レセプト」は患者様が出してくれます。
(「レセプト」を支払機関に提出すると、治療費分が還付されるイメージ)

これは医院は楽です。不正請求とか二度と言われないしwww

患者様にはわかりにくいのですが、保険診療は、それぞれの行為が
非常に細かい点数で決まっています。

 ちなみに、1点の治療をすると、1点10円なので、3割負担の場合は
 3円を窓口で払い、7円は保険者が肩代わりしてくれる形になります。しかし

◇ 点数そのものが細かい
◇ 分類が細かい

のです。

では、ごく簡単な例で、前歯の型を取って差し歯を作るときと
奥歯が1本ないときに両サイドを削って型を取ってブリッジを作るときの
2例をご紹介します。それぞれ2日分です。


前歯の差し歯(点数)

再  診 40
(金属芯) 188
歯を削る 636
型を取る 62
上下関係 16
仮  歯 30
仮歯セメント 4
 合 計  976

再  診 40
かぶせ物 1504
セメント 16
維持管理 100
 合 計  1660


奥歯のブリッジ(点数)

再  診 40
(芯前小) 188
(芯大臼) 237
歯を削る 166
歯を削る 166
型を取る 280
上下関係 70
補綴診断 100
平行測定 50
仮  歯 100
仮歯セメント 4
仮歯セメント 4
 合 計  1405

再  診 40
装着料金 150
小臼歯分 719
偽大臼歯 860
大臼歯分 824
セメント 16
セメント 16
維持管理 330
 合 計  2955

・・・!!

いかがでしょうか?高い・安いよりも
「細かい!」
というのが、第一印象なのではないでしょうか。まさに末期的細かさです。
なので、患者様に

「次回いくら位?」

とたずねられても、今まではなかなか即座に正確な金額を出すことが困難でした。
(今はすべてコンピューターソフトにまかせっきりです)

もうひとつ、188、636、1504など、桁が大きいのに1の位まで細かい数字
かなり多いことにお気づきかと思います。
これは、2年に1回、各項目で1~数点追加とか減点、あるいは細かな点数新設とか
統合(マルメ)などを何十年も繰り返した結果、このような複雑極まりないコトに
なってしまっているのです。

【加算・しばり】

◇ 歯管

「歯科疾患管理(歯管)(110)」という、月1回取れる点数があります。

これは、私が駆け出しの頃(2000年前後)は
「歯周疾患基本管理(P基管)(150)」「歯周疾患継続管理(P継管)(110)」と呼ばれていました。

もう忘れましたが、こういう細かいところの名称や適応、点数が、2年ごとに変わるのです。

歯管は4年前に、いろいろな種類の管理料点数をまとめるということで導入されました。
最初は歯管1回目(130)、歯管2回目~(110)でしたが、2年前に歯管(110)に統一されました。

なお、歯管は、条件が合わないと算定できません。

当初の歯管1回目には1ヵ月しばりというものがありました。
たとえば初診時が4月20日だとすると、4月30日までに歯管1回目を算定しておかないと
原則的に5月以降歯管2回目を算定できません。
ただ、5月19日まで(1ヵ月しばり)に2回目の来院があれば、そのときに歯管1回目を取れます。
ということは、4月20日⇒5月21日、などの来院で、4月20日に取り損ねていると、アウトです。

その患者様自体が、医院にとって『おいしくない』感じになっつぃまいます。

2年前には、微妙にルール変更が行われました。

たとえば初診時4月20日⇒5月21日でアウト(1ヵ月しばり)が、5月末(翌月末しばり)まで
緩和になりました。

でも、これでもポロポロと出るんです。

初診時4月20日⇒(キャンセルとか何らかの理由で延期)⇒6月1日 とかがwww
そういう意味では、私は『ダメな歯医者』です。

◇ 歯清

「機械的歯面清掃(歯清)(60)」という、2ヶ月に1回取れる点数があります。

これは2006年の改訂で導入されました。
当初は、「歯周疾患指導管理(P管)(100)」「歯科疾患総合指導(歯管1回目)(130)」を取ると
おまけとして、3ヶ月に1回取れました。

2008年に、ご案内の様に、歯管1回目(130)、歯管2回目~(110)に統合されて、
歯管1回目を取ると2ヶ月に1回、に短縮され、点数は60点に減点されました。
また、算定日付は、歯管1回目や歯管2回目~を算定した日と同日というしばりがありました。

2012年に、算定日付が、2ヶ月おきならいつでもよくなりました。

◇ パントモと歯周病検査

パントモとはPanoramic Tomography(パノラマ断層撮影)の略です。
現状総攬・概括には、このうえない良質の資料です。
また、歯科以外の病気のスクリーニングにも極めて有効です。

子供の場合は、矯正の時には精密検査費(自由診療)に含めて取ったりしますが
親がいい(後続永久歯の精査など)といわない限り、あまり取らないことが一般的です。

「パノラマ断層撮影(オルソパントモ型)(402)」という、初診時に取れる点数があります。

一般にパントモが取れる病名は、P(歯周病)かGelenk(顎関節症)か両側Perico(智歯周囲炎)です。
このうち、Gelenkと両側Pericoは患者様の主訴がないとなかなか取れません。
必然的に成人の初診の場合はP病名をつけて取ることになります。

しかしP病名をつけると歯周病検査(歯周ポケット・プラーク染め出しetc)が義務付けられます。

パントモでP病名をつけた場合は、P検(歯周病検査)をしないと、なんと、
先ほどの「歯管」「歯清」が取れません。

これが(P検しばり)です。

これは結構いるんですよ。

初診時に4月20日「部分的に腫れた」P急発病名、P病名でパノラマ撮影
⇒(腫れが引いて痛みが取れたので忘れたetc)⇒6月1日 orz
そういう意味では、私は『ダメな歯医者』です。

以上、1ヵ月しばり/翌月末しばり/P検しばり などについてごく簡単に説明しました。
(○○しばり の命名は、根本独自の名称です)

開いた口が塞がらない方、それ以上に何が何だかさっぱり分からない方も多いかと思いますが、保険制度は全部が全部、こんながんじがらめの規則の中で行われています。

卒後、現場に出て一番初めに徹底的に叩き込まれるのが、治療技術よりも、コッチですwww
そういう意味では、私は『ダメな歯医者』です。

◆ 今回の改正の重点項目

今回はとくに


①「周術期」(病院連携)
② 在宅(訪問診療)

などの、いわゆる老人優遇系重視の方向に進んでいます。


①「周術期」(病院連携)

「周術期(しゅうじゅつき)」

寡聞にして、はじめて耳にする言葉です。要は

入 院 し て が ん (とか移植とか心臓血管外科) 手 術 を す る 人

の手術前後の歯科治療に点数をつけるということです。

私の経験では、開業前に勤務していた、千代田ホワイト歯科(柏市)では、
近隣の慈恵病院から白血病の骨髄移植をする人の移植前の歯科治療、ということで、
ときどき依頼がありました。もう7年も前のことです。

そういう内容でしょうか。
なら無理に歯科医院に点数加算する必要を、あまりというか普通に感じません。
別にやることは普通の治療と変わらないのに、余計に取られる患者様が不利です。
そんなことしなくてもいいから、よっぽど(P検しばり)をなくしてほしいです。


② 在宅(訪問診療)

往診はうちはやっていないので、何の関係もありません。

往診は往診キットや往診車などコストもかかるし、要介護者や障害者などの対応等
歯科医院での健常者に対する日常診療とかなり異なる独特のスキルを要求されます。

このようなことは、街医者には一般的にかなり不得意です。

私はTPPには反対ですが、往診こそ集約化して「規模の経済」を生かす意義があると思います。
たとえば、県単位にして、市町村の役所の出張所程度の密度で往診センターでも作って
そこに専門勤務歯科医や登録衛生士などをある程度集約化して派遣する形のほうが、
診療の質の維持・平準化の意味でも、対応の的確さの面でも、よいのではと思います。

訪問看護ステーションなどにセンターでも併設して、在宅歯科衛生士を大幅に雇用して
常時活用できる体制も、検討の価値がありそうに思います。
こういうことを言うと「歯科医師の頭ごなしに」などという向きも一部ありますが
規制緩和はデフレの元ですが、業務独占系の規制にはある程度緩和余地はありそうです。
あるいは、ついでに代診(DDS)をパートで1人雇ってしまうとかwww

①②を全体的に見ると、やはり「高齢者」「医科/病院」に重点を置いている感じがします。

◆ インプラントが()※

では、さっそく、実際の資料から見ていきましょう。
集団指導で用いられた、

この資料の中からの抜粋です(傍線は根本による)。
なぜかベッドの上にあります。読むと瞬時に寝られるからですwww

要は、従来の「高度(先進)医療」と言っていた部分を保険に入れた、とういうことです。

「腫瘍」「顎骨骨髄炎」「外傷」

そうですね、一般歯科でおなじみの「むし歯」「歯周病」「義歯不適合」なんか
ありませんね。

「上顎洞若しくは鼻腔への交通」
これは悪性腫瘍でもない限り、そうめったにあるものではありません。

「区域切除以上の顎骨欠損」
交通事故とか、エナメル上皮腫/巨大嚢胞などの良性疾患でしばしば
このような状態になります。

いずれにしても、非常にまれな状態といっていいでしょう。

「病院であること」
残念でした。ウチらとかでは、無理ですね。

では次のページを見ていきましょう。

これ、はっきりいって、マズイです。あまりにも安すぎます。
下手をすると、相場破壊になりかねません。

たしかに、不慮の事故で機能と形態を失ってしまった方に対しては
最大限の手当てがなされて当然だとは思います。

しかし、「点数」をこれにしてしまうと、必ず起こるのが、内情を知らない方からの
「病院ではこんなに安いのに、一般歯科ではこんなに高い!」
「病院では3~4本で1万6千点なのに、なぜ根本の所は1本15万円も取るのか」
このような不満の声です。

この点数では、とてもではありませんが、一般病院は嫌がると思います。

「1顎一連」
1本じゃないのか!何度も見返しました。

もっとひどいのは、上部構造です。

「ブリッジ形態」は、よくわかりませんが一般的なブリッジを考えます。
本体が3本とすると、アバット(土台)3本、上部構造(ブリッジ)4歯で、安く見ても
アバット1本5万円、ブリッジの歯(偽歯含む)1歯6万円で合計40万くらい。
経費から考えても、このくらいは取らないと、大赤字です。

「床義歯形態」は、ドルダーバーデンチャーかボーンアンカードブリッジ、オールオン○とか
そんな形のものだと思います。

これだと、相場では安くても100~200万くらいします。
もう、以下の様な声が聞こえてくるような気がします。

①「そんな、高い点数を設定して、病人から絞り取ろうなどけしからん」
②「そんな、高い点数を設定して、医者が金儲けなどけしからん」
③「そんな、高い点数を設定して、財源ry」

①まってください。

日本の医療制度には、下記のようなすばらしい制度があります。


 <高額療養費の区分自己負担限度額(月額)>
 上位所得者(※1)~121800円 +(総医療費-609000円)×1%
 一般所得者~63600円 +(総医療費-318000円)×1%
 低所得者(※2)~定額35,400円
  ※1所得額が年額 670万円(月額56万円)超の世帯
  ※2市町村民税非課税世帯

これ以上の分は後で帰ってくるし、帰ってくるまでの間、その分を一時的に
市町村役所(国民健康保険担当課)や社会保険事務所、健康保険組合で貸してくれる
制度、場合によってはそれすらも必要ない委任払い制度もあります。
(詳しくは保険者、病院の医事課、医療ソーシャルワーカーの相談室等にお願いします)

たしかに「高度(先進)医療」時代は、だいたい60万くらいでやっていたようです。
これは患者様個人にとっては割高な負担です。
健保収載になることでの高額療養費の還付を考えると、不慮の患者様にとっては
おおきな福音です。

ただし、医療機関にとってみれば全く事情は異なります。
こんな60などというタダ同然の報酬では、どこの病院でもなかなか取り組めません。
ほとんどが実質的に採算度外視の国立大医学部病院で行われていたのは、
当然といえば当然です。

まあ、高度(先進)医療と肩書きがついていれば、「特殊な事例だな」と思います。
しかしこれを、少なくとも建前上は一般的である健保収載にしてしまうと、
私たち市井の医療機関(病院含む)は、枕を高くしてはいられません。


「病院ではこんなに安いのに、一般歯科ではこんなに倍以上も高い!」
「病院では3~4本で1万6千点なのに、なぜ一般歯科は1本15万円も取るのか」
「病院では3~4本で1万6千点なら、一般歯科はもっと安くて当然だ」

どこの歯科医院でもぜったい言われます。

残念ながら、歯科医院は公的機関ではなく、”公共事業” の下請け”業者”ですので、
保険外診療の治療費の相場はほぼ「原価率」で決まってしまいます。
モノ代、準備費用もろもろ、これらを、穏当に見ても売上の4分の1以内に抑えないと
非現実的です。

だから、実質採算度外視な国立大学の医学部などでないと無理なのです。

形だけでも健保収載にする以上、この点数はマズすぎます。
今回、健保収載になったので、今後は高額療養費の還付対象になると思われます。
であれば、①の問題は解決です。

② お気持ちは分かります。

しかし、先ほどの理由で、病院も(一部の事例を除き)利潤を出す必要があります。
いくら善意があっても、あまりにも経費損では、取り組みようがありません。
金儲けのためのボッタクリではありません。そこは御理解ください。

③ 「財源財源」復興構想会議でも…

議長の五百籏頭真氏が言ってましたね。あなたの認識は、私とは大分違うようです。
失われた20年、すべての元凶は官主導のデフレなのは分かりきっていることです。
カネなど、あるところにはあることは、誰でも知っています。
内需はめぐりめぐって必ず名目GDPアップに寄与します。お金は消えないからです。
まず、三橋ブログとか読んでいただければ少しは御理解いただけるかと思いますが。

いずれにしても、今回のインプラントが()※の件は、「高度(先進)医療」を形式上
健保収載にしたというだけだと思われます。

しかし、少なくとも健保は一般的な世界なので、どうしても「アレは特殊な事例だ」
と区分けして考えないと、私たちのためにも、医療機関のためにも、もちろん
不慮の患者様のためにもならないと思います。

実際歯科でも「コンポジットレジンインレー」が健保収載になった瞬間に
一斉に消滅した
、と、大学時代に保存修復学の講義で習ったことがあります。
(講師:山田敏元先生(現 虎ノ門病院歯科部長))

コンポジットレジンインレーとは、歯に詰める十字型の詰め物を、型を取って
模型上でプラスチック(コンポジットレジン)などで作るものです。
銀歯の詰め物よりは、審美的にははるかにましですが、耐久性や接着に難があります。
保険点数では、技工料含めても大赤字なので、みんな辞めてしまいました。
現在は、改良型の口腔内直接充填(ダイレクトハイブリッドセラミック?)が主流です。

あまりにも実情を省みない点数で載せてしまうと、事実上不可能になってしまうのです。

また、歯科での保険診療の点数設定そのものに対する根本的でおおきな疑義が
とくに業界を超えて国民の間で議論・糾弾されたりする可能性も否定できません。

そうすると危ないのは、設立経緯を考えても「歯科技工士」資格です。

◆ おわりに

以上、保険点数・制度のあらまし/今回の重点項目/インプラントの件 について
急ぎ足で見ていきました。

保険制度については、あらためて見たら、こんなに細かいのかと思われた方も
多くおいでかと思います。
まあこれは仕事なので、仕方ありません。
でもそのうち、予防中心主義に移っていくと、従前のような細かな改正自体が
意味をなさなくなるので、そのうちなくなるのではないかとは思っています。
(そのかわり一般歯科治療の「設置基準」がムチャクチャ厳しくなったりして)

その他、多分、私の回りで大きく変わる点は当面ほぼないといっていいと思います。

往診は大事ですが、個人医の副業に任せ切りというのはかなり疑問を感じています。
逆に予算を付けて集約化・特化による質・機能強化が期待できる分野だと思います。
とくに、歯科衛生士の力は、口腔ケアにおいては絶大です。

また、何事も安ければよいというものではありません。
特にデフレ下では内需拡大によるGDP増加の観点からも、思い切った政策も
十分検討に値すると思います。

何事もムダが少なければいいというものではありません。
惑星探査機「はやぶさ」や、サーバーシステム、防災政策などのように、
冗長化が命の分野も少なくありません。
私の頭の作りもかなりザツで乱暴ですが、議論は個別にていねいに行うべきですね。

インプラントの価格の件については、異論のある方も多いかと存じます。
(わざと今回そんな書き方をしたところもあります)
だからこそ、予防を推し進めて、将来はインプラントも一般治療も正しく激減させましょう。

【今回のまとめ】

少子高齢化に負けてはいけない。まずはデフレ脱却(「金融緩和」+「政府支出」)

07:53 | nemoto | 【4月1日】インプラントが保険()になった!※…けどw はコメントを受け付けていません
2012/03/25

こんにちは。根本齒科室の根本です。

もうそろそろ、ウチでは院内新聞の締め切りの季節がやってまいります。

当歯科室では季節ごと、3ヶ月に1度、ささやかな院内新聞を発行しています。
作ったものは、定期健診のご案内に同封したり、待合室に置いて
来院者の方にご自由にお持ちいただいたりしています。

最初は、定期健診のご案内のときに、それだけではつまらないということで
3ヶ月に1度くらいなら大した負担ではないだろう、ということで
気楽に始めてしまいました。

これが、結構大変です。

しかも、次の締め切りが3月末なのに、まだできていません。。。

院内新聞、一番の関門が、スタッフの検閲です。
憲法21条2項にも「これをしてはならない」と明確に定められているにもかかわらず
まったく守られていません。

「この熟語むずかしい~~」
「[忸怩たる][敷衍][遡及][畢竟][縷説]わかんな~~いwwww」

(うそだろー)とか思いつつ、いちいち簡単な単語に置き換えたりします。
もしかしたら小学生や中学生が読むかもしれないからです。

他にも、ついつい「~における」とか書いてしまうところを「~の」
などと簡略化します。

【ニュース解説】

まず、ネタを探すのがかったるいです。
(どうせ報道しない自由が好きなマスゴミのことだから、ウソばっかだろうし)
掲載スペースはA42枚で4ページなので、とりあえずスペースを埋める意味メインで
「歯」に関連あるニュースをぐぐります。

歯関連で微妙にほのぼの系のニュースを2つ~3つ拾ったら、
コピペした文章を(中略)(中略)で縮め、後にコメントを入れていきます。

これで1ページ~1ページ半をつぶします。

ここまでほとんど他力本願です。

しかし、自力本願のコーナーもあり、なかなか厄介です。

【ガチ?ヤオ?】

ご案内のとおり、ニュースレターは、定期顧客を育成するマーケティングツールとして
広く知られています。

しかも、最近は 優良 有料のネタ帳もネットで多く売られています。

また、「手書きが良い」とか「スタッフが書くと良い」ということもよく知られていて
時々そういう本を目にします。

しかしそんなもの、うちのスタッフが協力してくれるワケもなく、面倒なので、
イラストレーターで全部PDFにして作ってしまいます。

定期健診の案内に同封しているので、読者層はおそらく老若男女と幅広いでしょう。
「気の弱いネトウヨ」の地が出ないように、また文体がむずかしくならないように
思想信条の幅を超えて受け入れられるように気をつけながら書いています。

なので、いろいろあって、言いたいことの半分も言えてません。
…いやむしろ、この辺に抑えておいた方が安全なことはいうまでもありません。

 とはいえ、震災直後の菅直人元首相と民主党政権の体たらくは
 直後の号で徹底的に批判しましたが何か。

ネタ帳の購入も考えましたが、結局、書き手のクセがある程度伝わらないと、
思いもなかなか伝わらない部分はあると思います。
また、それを見て面白いといって定期検診に積極的に応じてくれるような方は
多分私と考え方が近いので、そういう”顧客”の方が”接遇”もスムースです。

むしろ、院内新聞を見て「何これ?だっせー」とか言っている人だと、
話が合わないかもしれません。それはそれでやりづらいです。

なので、一種のナチュラルセグメンテーションだと思って結局自前で書いています。

私の場合、一旦筆が滑り出すと止まらなくなってしまうという悪い癖があるので
削って推敲して、削って推敲してをくり返すのが一苦労です。
(JunkStageは基本的にそういうことがないので、逆に楽です)

以下、具体的に各コーナーを紹介していきます。

【レストラン紹介】

一応建前上は、患者様やスタッフから教えていただいたお店に食べに行って
あーだったこーだった、などと書くコーナーです。

実際に患者様から教えていただくこともありますが、歯科の治療中は
口を開けっ放しで、ほとんどお話ができません。

面倒くさいので自分の知っている店に勝手に行って
コーナーを埋めてしまうことも何回かありました。
しかし、期待したその店がつぶれたりしていて驚かされたりすることも多く
ズルや悪事はなかなかできないものです・・・デフレ恐るべし

企画の意図としては、若い女性の患者様にいろいろお店を聞ければ
密会に使えるようなこっそり系のお店が集まるのでは、などと思っていたのですが、
そのまえに、佐貫にはあまり若い女性の患者様は訪れていませんでしw。
「元・若い女性の患者様」は、たいてい良妻賢母の料理上手であるので、
それらしいネタは案外出てきません。

最初の頃は、匠神角ふじ(柏)⇒大勝軒(柏西口)⇒リバーサイド(我孫子)⇒
などと、ネタに詰まり、期せずして大食い系に流れてしまい困っていました。

さらにその後なんと!こともあろうに
「やよい食堂(野田市)行ったことあるよ」
という方が出てきてしまい、(嗚呼、そ、それだけはご勘弁・・・)
思わず世を儚んでしまったこともありました。

さすがにあそこはおひとり様で逝くところではないでしょう。

そこは反則技で、適当に自分の知っている店でごまかしました。

【書籍紹介】

一応建前上は、読んで面白かった本を紹介して、書評を書くことになっています。
しかし、残念なことに、私の読書量は非常に少なめです。

いつも毎朝、三橋ブログに目を通して、帰ってくると公速(はむそく)のRSSに目を通して
ついでにYahooのヘッドラインを見ておしまい、な、究極の手抜き情報空間です。

専門書以外の情報収集は、面倒なのでたいていこんな感じでネットで済ませてしまい
苦しくなってくると、CD紹介とかつべマル朴とか数々の反則技が飛び出します。

一番ひどかったのは先月号で、本が見つからず、アート・テイタムのDVDで
済ませてしまいました。
普段から読書をしないのだから、見つからないのも当たり前です。
しかもそのDVDすら買ったものではなく、すべてYouTubeで見ただけです。。。

あ、もっとひどいのがありました。

何回か前ですが、やはり本が見つからず、当時ネット上で話題になっていた
「ショックドクトリン(ナオミ・クライン)」の、なんと

 読 ん で な い 洋 書 の 紹 介 という暴挙に出たこともありました。

「お前それちゃんと読んだんだろうなあ」と聞こえてくる前に開き直ってます。
内容は、それこそ中野剛志先生らがいつもニコニコ動画などで語っていますので
それを劣化コピー焼きなおして適当にスペースを埋めてしまいました。

良心の呵責もかなりありましたが「和訳だけがないのでも有名な本」だったので、
(TPPと増税を推し進める罪務省・害務省←電通←CIAの陰謀にちがいない。伝えないと!)
と義憤に駆られたことにして、情報をお伝えしたことにしました。。。

じつは洋書自体は、アマゾンでちゃんと買いました(ホントだよ。信じろよ)。
尼損にしてはやけに重々しい荷物が届き、若干嫌な予感がしましたが開封してみました。
驚くことに、現物は厚さが4センチくらいあるすげーペーパーバックでしたよ。

第一章に、たしかにカトリーナがどうのこうので、バウチャースクールがとか
書いてあったのは覚えていますが、あれは今どこに行ったんだろう・・・

その後、和訳がちゃんと出ました。厚さ3センチくらいのハードカバー上下巻です。
和訳ですらきちんと読める気がしないのに、英語のペーパーバックなんか無理無理。

【健康法】

散歩、ジム通いなど、いろいろな方がいろいろなことを実践していると思います。

その中で、手軽そうなものを患者様から教えていただいて紹介するというのが建前です。

実際に患者様から教えていただくこともありますが、歯科の治療中は
口を開けっ放しで、ほとんどお話ができません。(2回目)

やはり、コンビニに行ってタ○ザンからぱちってきたり、いろいろします。

しかしそれもなかなか続かず、すぐに開店休業になってしまったのがコレでした。

そういえば私は、先月ですが大腸ポリープを取るので一泊入院したことがありました。
そのときに、院内掃除をお願いしているシルバー人材センターの方が
「先生、暇だったらコレ読んでみてくださいよ」
と貸してくれたのが、スクワット健康法の本でした。

「新スクワット健康法(野沢秀雄 講談社)」

80代の高齢者でも十分可能だし、健康法としてはよさそうな の で す が 、

♪~スクワット すればお腹が すくわっと
♪~お色気の 元になるのが スクワット

など、明らかに読者を愚弄してやまないような川柳が、これでもかと出てきます。
一応入院中の暇つぶしにはなりましたが。

一泊入院でも、入院中は最初にいきなり点滴をつながれて自由を拘束されてしまいます。
(あれは、いわば刑務所で言うところの「手錠」みたいなモンなんすね・・・)
どうせ付いてるのはソリタとか水のようなものなんですが・・・
勝手に点滴フックからパックを外してコートの胸ポケットに入れて、外で一服とかしてたら
肝心の腕の方が内出血してしまいました。腕の中でサーフローが暴れまわってて。。。

今回はもう時間が無いので、これ(お腹がすくわっと)にします。健康法は久々だなあ・・・

【歯科マメ知識・Q&A】

これが意外と無いんです。

私が話したいことは結構あるのですが、一般的な患者様のお考えや感覚と
あまりにも乖離してしまって、驚かれて終わりになってしまうことも多く
つくづく、短い文章で考えを伝えるのは難しいなあと思っています。

また、一般の方が質問しそうなことはほぼ限定されてしまっていることが分かっています。

 たいてい自分が昔やられた治療についてです。
 そして、歯医者選びの方法の質問です。

それでなくても、最近はステマ(ステルスマーケティング)ステマと五月蝿く、
インプラントの質問に答えるふりをして自慢、とかが大変やりにくくなっています。

【レシピ】

最初は調子に乗って、簡単なものをいくつか書いていましたが、すぐに
「クックパッド」というホームページを発見してしまい、最近は
そんなコーナーがあったことすら誰も気がつかない状態です。

【編集後記】

最後のページで、紙面の4分の1を潰してくれる、まことにありがたいコーナーです。

毎回ですが、粗雑な編集と陳腐な内容を反省しながら書いています。
一応、優等生的にまとめてその回の内容の総括をする、趣旨なのですが
たいしたことはぜんぜん書いていません。

以上、院内新聞のおおまかな部分のお話をしました。

編集方法ですが、イラストレーター(CS2)を用いています。

第一号のときには他の歯科医院の院内新聞をいくつか真似して
雛形を作りました。

あとはたいてい枠を連結してテキスト流し込みで作ってしまいます。

イラストレーターと、ダイナフォントは、今後使う機会が多いだろうと
開業時に奮発して購入しました。
これは大正解でした。

3つ折りチラシとか、ポスターとか、ファザードや看板にいたるまで
イラストレーターとダイナフォントは大活躍です。

ウチのはA4を2枚と、学級新聞以下の、非常にちゃちなものですが、
それでも紙面の割り振りとか見出しとか、編集行為の真似は知的刺激になります。
最近は年を取ったせいか、3ヶ月があっという間に感じられてイケませんが
備忘録の一環として、何とか続けていきたいと思っています。

こんな備忘録に毛が生えたような院内新聞を、細々と続けているのも、
歯科は医科と逆で「自然治癒なし」「予防回避あり」だからかもしれません。
痛くないときの継続的な取り組みこそ大事なんでしょうね。

次回はもう少し硬め路線に戻れればと思います。

【今回のまとめ】

院内新聞は情報発信と備忘録の意味があるが、ステマもやりにくく字数制限も厳しい。

10:41 | nemoto | 院内新聞のあまり語りたくない内情 はコメントを受け付けていません
2012/02/23

こんにちは。根本齒科室の根本です。


追伸 2012.2.24

 今回から、冒頭の挨拶を「根本齒科室の根本です」に変更しました。
 よく考えたら、根本という姓の歯科医師の数は多く、特に茨城県は
 根本姓発祥の地(美浦村)でもあります。
 根本齒科室の根本なら1人しかいないと思ったからです。
 たいした理由ではありません。失礼しました。

どちらかというと夜型のほうが性分に合っているので、昼型の歯科医院というのも
どうなのかなあ・・・
などと思いながら、弱小歯科医院の1日を書いてみたいと思います。

朝ですが、早いです。8時20分くらいです。
「遅いじゃないか」という方もおいでかもしれませんが、私には、早いです。
以前は、錦糸町に住んで柏に通っていたのですが、朝がとても辛い毎日でした。
だから開業後は、遅刻しないように、医院から徒歩2分程度のワンルームを借りています。

朝は、シルバー人材センターの方に院内掃除の基本的な部分をお願いしています。
鍵を渡してあるので、私が朝することは、『水切り替え・水出し』と『滅菌』だけです。

『水切り替え・水出し』ですが、当院では、院内配管の汚染防止のために、全域に
微酸性電解水(殺菌水)を流しています。
歯科医院の配管の中は、雑菌などのバイオフィルムで高濃度に汚染されていることが
研究で知られています。
治療中に殺菌水を流すことで、入り口論で、そもそも配管の雑菌繁殖を防止できます。

これは、いわゆる強酸水(酸性水)とは全く異なります。
強酸水は、酸性度が強く、効果も高いのですが瞬時に失活してしまいます。
また、腐食性が強く、とても直接配管に流せる代物ではありません。
その点を改善したのが殺菌水です。
殺菌水は、電解次亜水と似ているのですが、pHが6程度と若干低めです。
何とか配管に流せるレベルです。

滅菌ですが、普通にオートクレーブで行っています。
現在の設定では、121度20分で、乾燥時間を1分と15分に分けています。

オートクレーブ滅菌では、乾燥工程で温度が結構上がるので、耐熱温度ぎりぎりの
樹脂やプラスチック系のものなどは、しばしば乾燥で変形してしまいます。
金属製品はそのようなことがないので15分乾燥していますが、危険な物は1分乾燥です。
この仕分けは、分かっている人がやらないといけないので、シルバー人材センターには
お願いできません・・・

たいてい15分のものを仕分けてスイッチを入れたら、速攻で自宅(徒歩2分)に戻ります。
・・・おっと、その前に、今日のアポ帳のコピーを確認して、PCで全員の治療を予習します。
大きな問題のある人がいないことを確認して、やっと速攻で自ry

二度寝・シャワー・一服・メールチェック・・・
診療開始は9時半なのですが、9時15分頃になるともう「逝きたくない病」が発病します。

診療開始間際にあわててバタバタと駆け込むのがデフォになって、久しいですね。
そういえば、開業初年度は、私と、受付の女性の2人で朝の掃除をしていました。
2年目に入り、新しい衛生士が就職しました。
「院長、お願いですから掃除はしないでください。やりますから。いいですから!」
・・・ああ、人間はこうやって、1歩1歩堕落していくんだなあ。
などと感慨にふけっていた頃をなつかしく思い出します。
今となっては、シルバー人材センターを雇うまでにだらけきってしまいましたが何か

朝礼は、一応やります。
でも、「職場の強要」とか「クッションボール」とか「餃子の応召義務」とか
そういうウザイ系の朝礼、どうも肌に合いません。
ただ、今まで朝礼のある職場も無い職場もいくつも勤務してきましたが、
やはり、開始前に何か無いと、本当に現場がダレる、というのが実感です。
日本人なら、形式の大切さは、多分肌身にしみこんでいるんだと思います。
なので、基本的な事項を確認して、軽くニヤニヤして、すぐ終わりになる
くらいでちょうどいいと思っています。

また、下手に早く出勤すると、スタッフが怪訝な顔をします・・・
何だか、楽しい時間を邪魔されてしまったかのように見受けられ、恐縮です。
基本的にウチは、院長でなく衛生士や助手などのスタッフの力で動いていますので
院長は、まるで政治主導を謳いながらも官僚に乗っ取られた某政権のような立場です。

治療は一人30分くらいは取っています。今までの経験上、15分では無理だからです。
ですから、待合室はすいていることが多いです。

「待合が込んでいるからいい歯医者」
などという川柳を信じ込んでいる人が寄り付かない
、という効果もあります。

衛生士は衛生士で、院長とは全く別にアポを取っていて、30~60分枠です。
治療の合間に「時間つぶしに」歯の掃除をさせたり、仮歯を作らせたりするような
使い方がイヤ
だからです。

おかげで、ウチの衛生士は患者様から「○○先生」と呼ばれる始末。

衛生士に担当にまわすと、過半数の患者様の場合は、私よりも衛生士の方が
権限が高くなってしまいます。
「この小娘のクセに、ちょこざいな」
などと思っても、圧倒的な健診リコール率を見せられると、もう何もいえません。
人間力とコミュ力の差かと、最近は達観、というか諦念ですね・・・

そんな院長、やられっぱなしでは仕事になりません。

慢性デフレ不況の日本経済みたいですが、金融緩和と財政出動のパッケージのような
正しい解を、なかなか見出せません。
最近アメリカFRBがインタゲ2%を宣言したのを横目にうじうじ何もできない白川法皇。
・・・気持ち分かります。でも、ウチもせめてコアコアCPI?GDPデフレーター?
0%までは持っていかないと、ということでネモ法皇が導入したのが

 イ ン カ ム (最安値)

です。ネットで探すと、上記標準価格の半額以下で手に入ります。
歯科用で検索するとこんなのが最初に出てきますが、こんな1台3万クラスなど、
冗談じゃねぇwwwwwwwwwwwwwどんだけボッてんだよ・・・
ギリシャの様に『外』債をたっぷり抱えた院内は、常に緊縮財政です。

でもこれ(別にアルインコでなくても可)は、本当に良いです。

歯科医院で、受付やスタッフとドクターが遠隔距離で連絡が取れることが
これほどまでに業務ストレスを軽減するものかと、驚くばかりです。
欲しい道具や人手はすぐに届くし、お互いがお互いを正確に読めますし
全てが捗りすぎて、もう手放せません。

とにかく仕事中、極端に「イラつかなくなった」こと!これが一番でかいです。

しかし、よく考えてみると、自分が何か言うよりも、何か言われることの方が
100倍くらい多いです。

「早く○○さんのカルテ入力してください」
「レントゲンのスイッチを押してください」
「シリンジは太い方ですか、細い方ですか」
「○○さんが早めに見えましたけど、通しますか」
「○○さんは前回治療後大分痛がっているようです。麻酔出しますか」
「カルテ入力が保険と自費が逆なので修正お願いします」
「割れた入れ歯はお預かりしました。通しますか、直してから通しますか」
「○○病院からCTが現像できたと連絡がありました。回収お願いします」
・・・

経営者って、言うよりも言われることがこんなに多いんですね。

ちなみに、ウチは結構、ネットで遠隔地のメーカーにいろいろお世話になっています。

 診察券はこちらです。
 診察券シールはこちらです。
 問診票はこちらです。
 パンフレットはこちらです。
 封筒はこちらです。
 小冊子はこちらです。
 名札はこちらです。
 タオルはこちらです。

 インカムはこちらです。

そろそろおなかも減ってきました。
休み時間は重要です。とにかく、食べるよりも何よりも「昼寝」!
1回神経を冷やさないと、打たれ弱い私は午後に頭がくらくらしてきてしまいます。
もしかしたら、このための「徒歩2分」だったのかもしれません。

スタッフは逆に、昼休みになると、がぜん元気が出てきます。
たまに用事で医局の前を通ると、診療時間中の100倍くらいの声量で(自粛

幸せな昼休みも、うたかたどころか、ほんとに一瞬です。
「やベー、ちこくだ!!」
徒歩2分の距離をあわてて駆けつけると、ぎりぎりセーフ。しかし・・・

「○○さん、先ほど電話があって、用事で抜けられないのでアポ変更になりました」

受付から、冷たいドタ(キャンセル)宣告がくだりました。。。
さあ、虎の子の30分が、全く何の生産性もない時間になってしまいました。
患者様のいない院内では、スタッフが受付に集まり(さっきの続きかよ)大盛り上がり
診療時間中の100倍くらいの声量で(自粛

私も何件か経験があるのですが、どこでも、院長は患者様のいない空き時間に
スタッフが羽を伸ばすのを嫌います。
それは、表向きは「院内の規律が乱れるから」ということのようです。
しかし、実際になってみて気づいたのは、院長とはとことん「孤独」だということです。
スタッフに直接言えない多くの悩みを抱えています。というか、言えないことばかりです。
だから吐き出す相手がいないので、必然的に院内では孤独にならざるを得ないのです。

その孤独感を、スタッフの雑談で刺激されるのを嫌うのが本当のところかと思います。

また、近くで集団が急に大笑いすると、特に自意識の強い人に多いですが、
根拠なき不安感を感じることが多いのが人情です。

私も心配性なたちなので、良くその気持ちが分かります。
しかし、ある理由で、あえてそれらを咎め立てしないようにしています。
それは、スタッフの持つコミュニケーション力、簡単に言えば「雑談力」のためです。

お客様の前で、お客様をハブいてスタッフ同士で雑談して盛り上がるなど以ての外です。
しかし、お客様―スタッフ間の雑談は、非常にお客様を安心させます。

私は、治療の合間、お待ちの間などに、スタッフにはなるべく
患者様(問題のある方を除く)と世間話をするように、むしろ指示しています。
院長のキャラがこんなで、コミュ力にも乏しいんだから、後はコレしか無いでしょうw
治療が終わってもなかなか帰らない「美少女」「元美少女」を横目に見ながら、
(これで俺の首の皮がつながってるようなもんだ・・・)
私はほっとしています。

つねに「世間話をするぞ、雑談するぞ」と思っていると、不思議なことに、自然と
接遇がにこやかで生き生きとしたものになってきます。
そういう世間話エンジンの暖機運転の意味もあるので、患者様がいない時間などは
むげにスタッフの雑談を禁止できないのです。

スタッフや医院に対して、安心感を持った患者様は、不思議なことに
非常に歯を大事にするようになります。
院長が上から指導するよりも、スタッフと仲良くなってもらうのが一番効果的です。

ところで、キャンセルは、歯科医院にとって、もっとも大きな痛手です。

それは、歯科医院は構造上、順番制にできず(昭和時代のアレは、今の基準では誤りです)
予約制は自然発生的な必然なのです。
一定の時間を確保して「手」を犠牲にしないと、一連の工程が進みません。
だから、予約で時間を切り売りしないと作業のアウトプットの質も保てません。

また当然ですが、予約制では、先約のある枠の日時を選択することができません。
その先約の方が、無断あるいは当日キャンセルで、穴をあけてしまうと
その先約の方を見て「ああ、ここに入りたかったのに」と思っていた別の方にも
結果として迷惑をかけてしまうことになるのに、誰も指摘しません。非常に不公正です。

キャンセルをするときに、歯科医院のことはまあ置いといたとしても
他の患者様に迷惑をかけた」
という意識を持つ方が、いったいどれだけおられるのでしょうか?

しかし、法律(健康保険法、療養担当規則、他)では一切そのような配慮がなく
キャンセルで穴が開いたら、歯科医院の丸損ということになっています。
歯科医院に限っては、勝手にキャンセル料をとったり、割増料金を聴取したりできません。
これは、リハビリテーション行為を含まず、Ns(パラメディカル)にほぼ処置を依頼できる
医科外来の順番制システムを前提に考えているからです。

だから、歯科医院は、予約の急なキャンセルが本当に嫌です。ほとんど一番嫌です。
じつは、キャンセル常連氏が、なるべく院に寄り付かないように工夫を凝らしたりします。

 健診の案内は忘れる、親しく話さず機械的に対応する、たまに冷たい答えをする、
 折に触れ前医や他院の受診を促す、なるべく「私(のような若輩)には出来ない」と
 答えるようにする、わざと少し待たせる、わざとちょっとだけ痛くする、究極は
 「キャンセルがちなようですが、当院は予約制なので、お互いのために他で診て
 もらって下さい」と言ってしまうetc

「えっ」「なんとひどいことを」と思われる方も多いかと思います。
これを必ず全部やるわけではありませんし、他院の事例も含まれています。
しかし、予約制の店は、歯科医院に限らず、本当にキャンセルを嫌がります。
ためしに、ジャンクステージのライターでもある、ネイリストの方のページを見てみると、
非常に厳しいことが書いてありました。曰く

 予約日当日の遅刻は厳禁です。
 時間を大幅に遅れた場合、内容に制限が出ることを覚悟してください。
 15分~30分以上の遅刻はキャンセル扱いにしてしまうサロンも少なくありません。
 どうしても遅刻してしまう場合は、必ず連絡をしましょう。
 無断の場合は次回からの予約を断られることもあります。

(;゚д゚)す、すげーー

何でネイルサロンは良くて歯科医院はダメなんだよ・・・
俺もこんな風に言ってみてぇもんだ・・・

おっと、そうこうしていると電話が鳴りました。
受付が取ります。どうもタウンページを見た新患予約の方のようです。
話を聞いていると・・・あっ、また電話が鳴りました。
横の衛生士が手が空いていたので、あわてて受話器を取ります。
話を聞いていると、やっぱり急患の予約のようです。
だいぶ痛そうらしく、すぐ診て欲しいらしい。緊張が走ります。

このような電話の重複は、結構多いです。
電話は歯科医院の命です。
開業当初、回線を中古のビジネスホンにしておいて、本当に助かりました。
うちのような弱小で多い程なので、他の繁盛院などは、もっと多いのではと思います。

次の患者様は、自費のセラミックのImp(印象)です。

「印象・・・」ご案内の方もおいでかと存知ますが、「歯型」のことです。
これは英語の業界用語のImpressionを直訳したのが定着したと思われます。
英語では一般的に型のことをMoldとかTemplateと呼んでいるようです。
しかし、Impressionの多様な意味の中に、「凹み」「圧痕」という意味もあります。
その部分が、むこうの業界で歯型の意味に捉えられて業界用語化したものと思われます。

院長の権威、というよりも、主にスタッフの「雑談力」のおかげで、多くの方が
最終的な物は良いものを、と選択していただくことが多く、こちらも気合が入ります。

私からは、治療の折に触れ、

のような話や、長い目の価値観が大事ですよ、
とかは言うのですが、インプラントの成約やセラミック、、ホワイトニングなど
ほとんどの自由診療は、スタッフ経由で成約に結びついています。
私が一生懸命説明しても、怪訝な顔をしていて「あー、こりゃダメだ、嫌われた」
とか思っていても、スタッフが何回か話しているうちに成約になってしまったりします。
一体、どんな魔法を使って洗脳しているのでしょうか???

たぶん、がさつな私が話すよりも、こぎれいなスタッフが話す方が、より
「歯を長い目で大事にしよう」と伝わりやすいのでは、と言い訳しておきます・・・

このように、経営上もスタッフは院長の命の恩人だったりします。
政治主導を謳いながらも官僚に乗っ取られた某政権の、微妙な居心地のよさ?!が
分からないでもないような気もします。。
(だからってデフレ期に財政規律とか増税とか、少しは自分の頭で考えたら?○○さん)

閉院時間も近づいてきました。

開業後1~2年は、夜間診療と称して、19時~22時まで治療をしていたこともあります。
当初は「仕事帰りの人の治療にも役立つだろう」などと、甘いことを考えていました。
無理やり学生さんを雇ったりして、やっていたのですが・・・

バカでした。

彼らのキャンセルするのしないのって、ほとんどアポ帳が役に立たないレベルです。
と思うと突然、「いてえいてえ」などと、酔っ払いや○○国人が駆け込んできたり、
ほとんどカオスです。
しかも、私自身も患者様も、

でいうところの「医」と「歯」のちがいや
予防の大切さの真意がほとんど分かっていなかったものですから、健診反応率ほぼゼロ。

修復だけで安堵してしまった彼らが今頃どうなっているか、思い返すだに落ち込みます。
悪くなる根本原因に全く対処していないので、一定の確率でかならず再発するでしょう。
そんな片手落ちの仕事など、やるだけムダです。

なので、やめました。
今後も、やる気はありません。

そしてどうなったかといいますと、その中の幾人かの方が、昼に移ってきました。

(何だ、昼間に来られるじゃん)

「夜辞めてしまったので残念で面倒だけど・・・」
最初こそそういいますが、しばらくすると、歯に対する意識が格段に上がってきます。
私ひとりでできることなど、ほとんどありません。患者様が変わることが、すべてです。
私共はそのお手伝いをしているだけです。

そうこうするうちに、やっと最後の患者様が終了します。

衛生士は今日も疲れた顔をしています。
担当制は、負担も大きく、回転率も落ちます。
しかし、その分患者様が大きく意識変革をされたり、状態が良くなるのです。
いつも、思います。「俺には勤まらないんじゃないか」・・・今日もありがとう。

チーフの受付は今日もてきぱきと指示を出し、くるくると院内をまとめています。
威圧的な性格ではないし、派閥が嫌いなタイプなので、院内は本当に助かっています。
最後に、配管の水を通常の水道水に戻して、全体に流します。
殺菌水のまま配管に残ると、残留塩素の影響で配管が腐食しやすくなるからです。

「スーパーが開いているうちに帰らないと」

水を流し終える頃には、片付けもレジ〆も終わり、名々が帰途に付きます。
残念なことに、院長はその後、多くの場合雑用が残っています。

 衛生士への申し送りの記入
 仮歯・個人トレー・蝋堤・ファイバーコア・マウスピースなどの製作
 見積書・治療計画書の記載
 etc

んまぁ、頭の中には、早く帰ることしかありませんけど。

近所の安いスーパーは、19時になるともう良いものがほとんど奪われています。
線路の反対側は、やや品揃えがいいのですが、陸橋を超えるのが面倒だし、高い。
「あり合せの総統」を目指す私にとって、より少なく買って形になる方がカコイイ! のです。

・・・ここで、酒を買い込んじゃうからダメなんだよね。
  しかも芋焼酎の安いのとか(‘A`)
  そりゃ、尿酸値が10.6っちゃぁ10.6ですよ。
  でも、何かいろいろとストレスがたまって、呑まずには居られないんですne
  最近趣味で再開したピアノですが、『酔っ払い運転』は最悪です。
  まったくイメージに手が付いていかず、演奏の体をなしません。

  こんど親友が結婚式をやるそうなので、一発!・・・とか、思っちょるけん。。。

【今回のまとめ】

ありふれた歯科医院の中でも、患者様に内緒で、いろいろ変な心配や努力をしています

08:45 | nemoto | 歯科医院のあまり語りたくない一日 はコメントを受け付けていません
2012/02/21

こんにちは。根本齒科室の根本です。

天皇陛下の手術も無事に終わり、きわめてご順調とのこと、安堵しております。
2011年はお疲れの一年でもありましたので、この機にごゆっくり英気を養われて
ご自愛召されるよう祈っております。
何でも、3月11日の慰霊祭に間に合わせるために急遽手術をお急ぎになった
との噂も仄聞しております。
本当に頭が下がる思いです。私たちも見習って頑張らなくてはいけません。

ところで、この間久しぶりに新人さんを採用しました。
今回は、その面接について少しお話ししてみたいと思います。

私も勤務医時代は、さんざん履歴書を片手に就活?!の苦労をしました。
しかし、面接をする方の立場に立ってみると、また違った苦労があります。

応募者と採用者の求める理想は、かなり違います。
これは、両方やってみると強く感じます。

その原因は、たぶん求めているものがお互いに違うからだと思います。

【媒体募集】


《募集する側》

ウチ(茨城県龍ヶ崎市)の場合は、通常アイデムさんに出します。
1回3~4万の枠です。ここがこの辺では一番反応がいいです。

募集期間が1~2年くらいあくと、10人以上は普通に応募があります。
今までの最高では、30人近く面接したことがあります。
試用期間の3ヶ月程度で退職して次の募集となっても、5人は電話があります。

人材難で有名な歯科衛生士の募集でも、数人の方がエントリーされます。
歯科医院のスタッフは、結構高いハードルをクリアして就職してきている
ということが分かります。

ちなみに私が大学に入学したとき(1990)は、センター初年度で問題も易しく
結局6.8倍(足切り3.5倍)という話でした。
当時は「高倍率だなあ」と思っていましたが、とてもかないませんね。


《募集される側》

私の勤務医時代の頃の話です。
知人の紹介、大学厚生課に届いた募集の確認などもありますが、
一番数が多いのは、歯科月刊誌「日本歯科評論」の募集欄です。
我々の間でも、「『ヒョーロン』はほとんど求人誌」という認識でした。

ただ、あまりにもしょっちゅう出しているところもあります。
人使いが荒く、従業員が居つかないのかもしれません。。。
また、あまりにも破格の条件でも、必ず裏があります。

【求めるもの】


《募集する側》

基本的には、院内のスタッフの一員になっていただくわけです。
ですから、既存のスタッフとの連携や和、相性が一番重要と思います。
従って、以下のようなタイプは、どんなに能力があっても無理だと思います。

◇ とげのある性格、ダメ出し屋など
◇ 協調性のないタイプ
◇ 約束を守らない、など、基本的な部分の欠如

よく「歯科医院ではスタッフを容姿で選んでいるのではないか」という声を耳にします。
これは、当たらずとも遠からずといった感じです。

基本的な容姿については「既存のスタッフと並んで違和感がないか」が一番近い回答です。
ありていに言うと、たとえば太過ぎ、細過ぎetcですと、バランスが悪いですよねw
院長の個人的な好みなど、ほとんど入る余地はありません。

(この子、俺の愛人とかならぴったりなんだけど、スタッフだとなぁ・・・)
美人すぎ(俺的)もダメなようです。残念な放流も、何度かありました。

「とげのない快活さ」「癒しの雰囲気」

このあたりは、高ポイントです。

ひとつ気になるのは、あまりにもレベルの高い、経験の豊富すぎる人です。
「歯科衛生士を20年やりました」「開業に3件立ち会いました」
これでは、はっきりいって、この人に医院を乗っ取られてしまいます
・・・
ここは日本だし、ほどほどが好まれるのかもしれません。


《募集される側》

どうしても(自分を「レベルの高い有能な人材」だと思って欲しい)と思いがちです。
これは、どの面接にも言えることかもしれないと思いますが。

自分が院長になってみて、勤務医を雇うことを考えた場合ですが、まず思うのは
院長の臨床スタイルを理解して欲しい、合わせて欲しいということです。
非常に下世話ですが、そうです。
全く違ったスタイルを展開されるのでは、逆に心労が増えるばかりです。

多くの場合、勤務医を雇うときは、院長1人で患者数が回らなくなったときですので
「手早く」「基本的な治療を」こなせる、というのが第一条件のことが多いです。

また、専門医を雇うときは別ですが、基礎的な部分は別として
あまりアドバンスな技術は求めていません。
「そういうのはおいおい伝授する」くらいに思っているはずです。
逆に、アドバンスの勉強をしたいために就職する場合は、かなり給料は厳しくなります。

基本的に募集の動機が動機なので、基礎的な部分がいまいちでも、
何とかなりそうな範囲ならむしろ「自前で鍛えて何とかする」と思っているはずです。

ここを一番見落としてしまいがちです。

【実際の面接】


《募集する側》

中にはスーツを着てこない人もいます。
履歴書の殴り書き、または書き間違いを修正液で消してくる人もいます。

それはまずいと思います。非常に苦しいです。
それだと、他が良さそうでも、取れません。

うちの場合は、まず受付が履歴書をお預かりして、私のところに持ってくるのですが
そのときに、微妙な表情をしたり、ニヤニヤしているときは、大抵そんな感じです。

実際の話が始まると、まずは長く勤められそうか、を基準に話をしていきます。
女性の採用なので(それでも開業以来今まで2名ほど「男性」の応募があり驚きましたが)
将来の結婚、出産、親御様のサポート、この辺は慎重に聞いていきます。

小さいお子様連れだと、保育園などからしばしば呼び出しが来ることもあります。
その他、PTAや習い事、他の仕事などが業務に差し障らないか、なども細かく考えます。

また当地は常磐線の駅前ではありますが、クルマ通勤が一般的な土地柄です。
とはいえ、あまりに遠い人は基本的に不安になります。

そして、うまく説明しにくいのですが、いろいろ会話しながら
既存のスタッフと雰囲気が近そうか、うまくなじみそうか、を重視しています。
「朗らかすぎ」「暗すぎ」「真面目すぎ」「はっちゃけすぎ」・・・
どれも、減点対象かもしれません。


《募集される側》

私は男性なので、スーツを着ていかないことはありませんから省略します。

大抵最初に対応するのが、受付の方なので、ここで嫌われないように、慎重に行きます。
硬すぎず、はっちゃけすぎず、基本礼儀正しく、相手を立てて、ですね。
(この業界は、女性を立てないとうまくやっていけません)

相手の院長の性格は、極端だったり攻撃的だったりしなければ、
それほど関係ありません。
とはいっても、何だかんだで割合身近にいる人なので、
生理的嫌悪感を抱かない範囲で、ということです。

案外大事なのが、診療室の道具の種類だったり雰囲気だったりします。
「とにかく早く回したい」という雰囲気のところもあれば
「じっくりとこだわりの臨床をしたい」という雰囲気のところもあります。

あと、院長の院内の説明は、とりあえずはあまり当てになりません。
「ていねいな治療を心がけている」
「予防中心の臨床を」
などと、いろいろ説明しますが、歯科の特殊性もあり、
「ていねい」「予防中心」などの各単語の概念の解釈が、
歯科医師間でありえないほど広範に散逸してしまっています。

自分の「ザツ」が、その院長のていねいよりも断然ていねいなことなど、ざらです。
事細かに、このようなことがいっぱいなのが、歯科業界なのです。
「自分的」普通を見つけるのがきわめてむずかしいのです。

もし見られれば、洗浄コーナーと、アポ帳も確認したいところです。
この辺に、その医院の実態が結構出てきます。

「ていねい」「予防中心」とか言っていて、アポ帳がぐちゃぐちゃだったり
衛生士の担当がクルクル変わるようでは、「・・・ry」

まあ、でも、とりあえず内定は多いに越したことはないし、
しょせん開業予備軍の?!勤務医、水商売のようなものですから
(そうでない方もたくさん存じてはおりますが)内定は多いに越したことはない。

それよりも、自前の資本財(医院、設備、スタッフetc)を持たない勤務医ですから
「○国民の生活が第一」ではありませんが、自分の生活が第一なのです。
夢は抱きつつも、臨床観の実現のような贅沢は開業後のお楽しみだったりします。

【採用】


《募集する側》

残念ながら、採用の実質的な最終的権限は、ほとんど院長にはなかったりします。
面接が終わった後の医局では、当然の様にあれこれ人事会議が始まったりします。
「えー、再婚する予定ぃ?」
「○○歳っ?ビミョーじゃなくない?」
「これ、金髪!とりあえず履歴書とかまずいでしょう」
・・・

見てもいないスタッフまで混じって、あれこれ言い出します。

(あっ、この子ダメ出し食らってる)
(この子せっかく巨乳だったのに、不評だわ)
思うところは多々あれど、院長の発言権はここではあまり大きくありません。
数々の履歴書がバルサのように華麗にパス回しされ、3-4-3では太刀打ちできません。

最終的に、医局で
「う~ん、これか、これかなぁ、どっちかかなぁ」
などと、大枠が示されて、ようやく院長が何か言うことが許されます。。。

まあ、歯科医院の面接なんて、そんなもんかもしれません。


《募集される側》

今にして思えば、正直なところ、終わった感じである程度分かっていたのかもしれません。
その当時は、そんなことは思いも付きませんでしたが。

◇ とにかく人材を求めている
◇ 院長と性格が合いそう

なところが、やっぱり、単純に受かります。

◇ 院長がどうも理屈っぽかったor嫌味っぽかった
◇ やたらと根掘り葉掘り聞かれた
◇ 歯の模型を削らされた

ときは、だめでした。

逆に、いろいろな理由で、こちらが「ここヤバイ」と思うことがあります。
◇ 院内が不潔
◇ 院内を猫が走り回っている
◇ 院長が竹刀を常時携行している
◇ カルトっぽい
◇ スタッフの雰囲気がとげとげしい
etc

こんなときは、受かっていなくても、数日後に
「他に決まりましたので、御迷惑をおかけしました」
などと電話を入れてしまうこともあります。

【結局、どんな人材を求めているの?】

じゃあ、最後に、院長としてまじめな話をします。

うちでは、患者様が歯に対して「治療」「補修」というステージを卒業して
「維持」「管理」「重宝」というステージに入っていただきたい、という思いがあります。
ですから、そのサポートの意味で重要な『居心地の良い』歯科医院として、

[0] 患者様との適切な雑談能力、世間話の力、コミュニケーション能力

を最大限重視しています。
治療に際しては、バキュームとか照射、セメントなどのチェアサイドの能力は
最初からは求めていません。
というか、新人さんには、その辺は忘れてもらっても結構、とすら思っています。

まずは業務上、

[1] 導入退出、誘導が適切にできる
[2] 細かな道具や名前を早く覚える
[3] 目の前のことには責任感を持つ

あたりをしっかりやって欲しいと思っています。

「○○を持ってきてください」
といわれたときに、すぐに持ってこられるようになるのが第一です。

また、細かいものが分からないときに「大体こんな感じでいいか」
などと、不正確な作業をするのは困ります。

すぐに上直や先輩に聞いて、作業は正確にしてもらいたいと思っています。

どうしても歯科のスタッフというと、患者様へのバキュームや照射など、
診療介助が強くイメージされてしまいがちです。

しかしそれだけでは「看護婦さんごっこ」になってしまいます。
また、一応歯科医師はツーハンドで(要領が悪くても)仕事をする訓練は受けています。

勤務医については、現在の規模では一般医の需要はあまり考えていません。
予防を担当する衛生士が、少しずつ増えていってくれればと思っています。

今の世の中、「行列のできる○○」を求めても仕方ありません。
患者様も従業員も、『ウチと合う人』が増えて欲しいのが、第一です。

【今回のまとめ】

募集は、される側とする側では思惑が異なることが多い。両方やって分かることもある。

12:32 | nemoto | 歯科医院の面接 はコメントを受け付けていません
2012/01/29

こんにちは。根本齒科室の根本です。
今日は、治療中とてもびっくりしました。いずれもインプラントの説明のときの話です。

3人くらい続けて「NHKでインプラントは怖いと言っていたから、ちょっと待ちたい」
と、判を押したように患者様が不安を口にするのです。

私はすでに報道しない自由を謳歌するようになって久しいマスコミ(新聞TV)とは
かなり疎遠な生活になって久しいのですが、これは何かあったかもしれない、と
ちょっと気になりました。

「(この間まで前向きだったのに)どうしたのですか?TVで何か言っていたのですか?」
いろいろとおたずねしてみました。

どうやら、最近(1/18)クローズアップ現代で、インプラント特集をやったらしいのです。

この時代、まだまだ中高年世代にはTVの影響力は大きいようで、我ながら感心しました。
とりあえずNHKのホームページで調べてみました。

・・・ダメだ、やっぱりマスゴミかorz

私から言うと、かなりインプラントというものに対して偏見・誤解があるように思います。

 追伸 2012.2.2

 (株)ケーオーデンタル様のリーフレットによると、1月の一連の
 インプラント警告キャンペーンは、昨年12月22日に発表になった
 「国民生活センター」の発表情報を受けてのものであるそうです。
 詳細はこちら(PDFはこちら)をごらんください。

詳細は、NHKのページを並べて見ていただければ分かりますので、どうぞ。
ちなみに、この番組の下敷きになったであろうと思われる記事が、やはり11月24日付で
>NHK生活情報ブログに掲載されていますが、趣旨はおおむね同じです。
さらに、元プロ野球選手の田尾選手のご子息が開いている歯科ポータルサイト
「歯チャンネル((株)ファンクション・ティ)」のメルマガでも12月16日付けで
「NHKから歯チャンネルに『トラブル面について取材したい』という連絡がありました」
という連絡もありました。

かなりこれは、インプラント≒トラブル、という心象の下敷きで特定の方向に世論誘導しよう
という意図が明らかです。

しかし、インプラントを考えるときにもっとも大事な点だと私が思う部分が、
すっぽり抜け落ちてしまっているのです。
それは後述します。(前々回の【CM】をご覧いただければ、そこにもヒントがあります)

まずは、番組を見損なってしまった私が、ホームページの動画と文字起こしをもとに
僭越ながら感想を述べてみます。
それを踏まえて、私のインプラント観の概略を後段で述べてみたいと思います

◆動画について

◇ 失敗症例1(下歯槽神経損傷)

神奈川県女性(70代)
「自分の歯の様にかめて、おいしいものを食べられる。だもんで」と勧められたとのことです。
(「だもんで」って聞いただけで嬉しくなってしまった「だもんだから」・・・ですが・・・)

まずこの辺が、どうなのかと思います。
たしかにによくかめることは良いことですし、実際そうなのですが、私としては
それをセールストークの一番に持ってきてしまうことはいかがなものかという気もします。

で、レントゲン見た瞬間「下歯槽管(神経)が高い!」と気づかないとまずいです、これ。
下歯槽管の高さは個人差が大きく、低い人は下顎下縁に這うように走行している一方、
高い人はこのように骨の中央部を走行しています。高いほど損傷リスクが高いのは当然です。

次に、直感的に「顎堤低い!」と警戒できないとヤバイです、これ。
どうしても口腔内イメージで、骨頂が緑線のように思いがちなのですが、実は赤線なのです。

この(軽度の下歯槽神経損傷)場合は、早期ならリカバリーの方法も十分あります。

また、レントゲンを見たときに、「コレはヤバイ(下顎)」と思ったら、たとえば
いつものメーカーではなくバイコン社イノバ社のような
ショートインプラントで定評のある会社の製品を応用することも選択肢に入れるべきです。

◇ 上顎洞迷入・下歯槽管損傷

それにしても、あまりにも図がひどいので、ちょっと訂正します。

上顎ですが、上顎洞に落ちやすいと言われているのは主に 6 番か 7 番です。
それも、増生した仮骨の中で傾く、という程度が一般的で、このようにゴロンと
上顎洞に落とす、というのは、私レベルの経験ではイメージすら難しいです。
図のように 4 番を落とすことは、非常にまれなケースでもまずありえません。

私の上顎のトラブルについてのイメージは
 しばらくしたらインプラントが取れてきた
 上顎の上の副鼻腔に少し破れて先が出た
程度だったので、この報道の図のレベルには、ある意味とても驚きました。

下顎ですが、下歯槽管の位置がほぼデタラメです。おおまかに緑線で訂正しておきました。
図のように、親知らずの後ろの内側の●「下顎小舌」という穴から神経・血管が入り込み
それぞれの歯に分岐して、 5 番の下の●「オトガイ孔」という穴から外側に出て
下唇方向で終わる、というのが概略です。

図のように 3 番の位置で下歯槽管に当てることなど、人が人である限りありえません。
おそらく、事故が起きやすいという印象操作のためにこんな変な図になったのでしょう。
しかし、それならせめて横顔の図にして、もう少し正確に書いてほしかったです。

◇ 40代歯科医・40万歯科医

ご覧の皆様、ここ、だまされないでくださいね。
いかにも白衣の歯科医師は誠実そうな人で、青服の方は金儲け主義の悪人に見えますね。
でも・・・

「打てば打つほど歯科医院が潤う」・・・どうみても「演出」です。
「経営が成り立たない」も、カツカツ、という話ではなく、設備投資にもコストをかけた
質の高い臨床を維持できない、という意味だと、院内映像を見ても思います。

まず2人の胸元を見てください。青服の歯科医師の胸元には、拡大鏡がかかっています。
「かかっている」ということは「普段の普通の治療でも愛用している」ことを意味します。
それだけ、治療一つ一つがに対してより誠実でていねいである、ともいえます。
私も良く存じていますが、マイクロスコープや拡大鏡は、裸眼で見えないものが見えます。
バリの元だったり、知覚過敏を起こしているひびだったりetc
いざというときの拡大視野は、トラブル解決の力強い見方だったりします。

いっぽう白服の歯科医師の胸元はなにもありません。院内にマイクロスコープが置いてある
雰囲気もありません。あまり臨床に投資しない系なのかな、と感じてしまいます。

また、いくらデモ展示とはいえ、素手金属製の鑷子(せっし)でフィクスチャー本体を触る
(鏡面研磨部といえども)という姿を映像に乗せるのは、いかがなと思います。

まあ、一瞬の映像からのみの判断なので不正確であるとは思いますが、直観的な心象として
そのようなことを感じました。

また、NHKはとくに大学アンケートや大学教官などを前面に押し出して、いかにも
大学=善、個人開業医=悪、かのようなイメージを持っているように見受けられます。
さらに、開業医は急激に増え続け、金儲けに走るのは当然かのごとく語っています。

しかし、私が大学にいた頃よく言われていたのは、大学のインプラント外来の実習時間に
見ているだけでは伸びない、現場でバンバン打たないとうまくならない、ということです。

「バンバン」はどうかと思いますが、私がいつも大事だと思うのは、難易度を見分ける目です。
しかしすでに、簡単な症例はかなりインプラントをやり尽くされかかっています。
残った難症例ばかりが個人開業医に集まるような時代が始まっているのかもしれません。
実際に日本よりもインプラントが盛んな韓国ドイツでは、そういう問題が現実化しています。

「骨のある奴は金が無い、金のある奴は骨が無い」よく聞く言葉です。

◇ 40万歯科医~金儲けは悪か?

どうでしょうか。
彼は1本40万円に設定しているとのことでしたが、(当院よりは高いですが)おおよそ
先進国の相場どおりの価格だと思います。

「なんで歯ごときに1本40万もするのか」と思う日本人も多いでしょう。
しかし、歯ごとき1本の正しい値段をあなたはご存知か?そう小一時間ry ←ナツカシス
日本でも誤抜歯の訴訟判例などから、天然歯1本120~150万円、アメリカでは12万5千ドル
という値段も出ています。

今まで私たちはわりと簡単に歯を削ったり神経を取ったり抜いたりしてきたと思いますが、
じつはとんでもなく価値の高いものをみすみす失ってしまっていた、と言えるとも思います。

入れ歯ならそんなに高くないのに、とお思いの方もいるかもしれません。
入れ歯は、じつはいろいろと大きな問題があるのですが、逆に隠蔽されている感じがします。
まるで、入れ歯≒保安院、のような感じです。
「安全神話」という意味でも、入れ歯と「何か」は似ています。
その辺は、また別の機会にお話できればと思います。

◇ 失敗症例2(500万の治療費を失った)

まずレントゲンをちらっと見た瞬間に「歯周病の問題はどうなのか?」と強く疑いました。
それにしても上顎と下顎の残存歯のバランスが悪すぎる。人為的なものか?

本来は下顎は緑線の辺まで骨があるのが普通なのですが、赤線のところまで低下しています。
歯周病で骨がやせた、あるいは歯周病の傾向が強いことが、とりあえずは伺えます。

私が気になるのは、以下のセリフです。

 「2本の歯だけをインプラントにしようと考えたがさらに8本の抜歯をすすめられた」
 「(患者談)『なんであんなに立派な歯を抜いちゃったのかと思いますよね』」

私は直接見ていないので何ともいえないのですが、基本的に、いくら歯が立派でも
歯周病などで歯周組織が一定以上損傷していれば、保存不能ということは十分ありえます。

逆に、過剰な「戦略的抜歯」等で、十分保存可能な歯を失ったのであれば同情に堪えません。

術前の、とくに上顎の歯周評価が無いので、本当に何ともコメントのしようがありません。

もうひとつ、ここで注目すべきは、再治療時の上顎のインプラントの形態です。
今までのインプラントに比べてとても長く、しかも両端は傾斜して埋入されています。

これは「オールオン4」と呼ばれるもので、ポルトガルのマロ先生という方が提唱された
方法です。長大な4本のアンカーで、金属製の総入れ歯を高床式の様にネジで止める
というものです。ネジは定期健診のときに外して、掃除する形です。

私は余裕が無いのでここまでは手を出していませんが、麻酔医や専用手術施設など
十分な余裕が無いとなかなかこなせない、難易度の高い方法です。
一般のインプラントとは、まったく別物といっても過言ではありません。

ちなみに、一般のインプラントはこのように短いものです。難易度も格段に下がります。

「オールオン4」についても、概略の説明だけでもほしかったので、残念でした。

◆文字起こしについて

◇ 小宮山彌太郎先生

この先生は、歯科医師なら知らない人がいないほどの大先生で、私も大変尊敬しています。
長年ノーベルバイオケア社のBranemarkインプラントのインストラクターを務めてもいます。
現在も「東京歯科大学教授」ですが、じつは臨床教授、つまり開業医です。

「規範を」と先生がおっしゃりたいのは良く伝わってきます。

ただ、NHKも好みそうな認定偏重主義に陥ることは、逆に言えば入試偏重などにもつながる、
肩書主義の一種であり、すなわちそれは本質軽視です。

残念ながら、臨床行為それ自体の客観的評価は、構造的にブラックボックスで無理です。
難しいところです。もう少し時間がかかりそうです。

◇ 米原記者

(1)

まず、開業医やメーカーを十派ひとからげにひっくるめて「金儲け」と断定している姿勢、
これって、どうなんだろう?

「~その背景には、歯科医師だけではなくて、業界全体、インプラント治療を巡って、
 収益を上げようとしていると感じました」

たぶん、NHKはこのセリフのひとことがどうしても言いたかったのではないでしょうか。
保険では臨床の質や耐久性が著しく劣るからインプラントなどで質を維持している、のが
現場の実感なのですが。。

(2)

また、他にも大きな誤解をしているようです。要は

保険診療は行政チェックがあるので善であり、
自由診療は監視の目が届きにくいから悪であり、
開業医は第三者の目が届きにくく同様に悪である、と。

ほとんどの医師や歯科医師は思っています。
保険診療であろうと、自由診療であろうと、臨床行為自体の客観的評価が構造的に無理であり
それだけに臨床に当たっては自分の倫理観を損なわないことが一番大事だ、と。

バレないからと、自分をごまかしたりウソをついてはいけない、ということです。

それに、保険診療ならチェックが入るから適切な臨床が維持されるということではありません。
保険診療ではおもにレセプト(請求書)の点数計算について、保険診療の算定ルールに基づく
チェックが行われる
だけです。
より望ましい臨床のあり方などについての指導ではありません。

どこの指導会場でも、指導医療官(技官)は口をすっぱくして言っています。
「保険診療とは、ルールである。ルール(規則や通知等)に従った算定を心がけるべし」

むしろ、杓子定規すぎて医療の質に齟齬をきたす面が大きくなっている問題の方が
重要化していたりします。

逆に、保険診療は行政チェックがあるので「悪徳な金儲けができないので」善である、
という文脈で用いているとしたら、それはアンチビジネスであり、医師差別?!です。
保険診療は、公共事業です。
微々たる?!不正請求などを批判するのであれば、その前に医師の収益構造、たとえば
レセプト方式(民間委託形態)そのものに構造的問題があることを主張すべきです。

すると、医療機関国有化or医師准公務員化も話に含めないと、不十分な議論にもなります。

結局、医療に向かっては「儲けるな贅沢するな苦労しろでも俺には最高の治療
とか(川柳かよ)・・・

・・・うん、分かって言ってますね、やっぱり。

まあ、ほんとうは、日本の公共医療制度のあり方や問題点について、医療側ばかりでなく
国民や政府にも厳しいけど必要な論点をも、どうどうと国民に投げかけるべきなのですが。

(3)

もう一点、この記者が大きく誤解をしていると思うことがあります。
それが、文字起こしのテキスト中の「治療」「医療」という単語の数に表れています。

小宮山先生:「治療」~1回   「医療」~0回
米原記者 :「治療」~3回   「医療」~10回

これは、この記者は、歯科臨床を医科臨床と本質的に同質なものであり、
歯科においても医科同様の対応が求められると誤解している節があります。

それが根本的誤りであることは、「震災に学ぶ」の回の表で書いたとおりです。
トラブルの質や方向性が反対なので、対応の質や方向性も反対になるのです。

その安定的な対応の枠組を外れて、歯科疾患になってしまった場合の臨床的対処は
その大小を問わず、非可逆的に損なわれた「機能と形態の回復」です。

つまり下は小さな銀歯から上はインプラント・総入れ歯に至るまで、本質は同じなのです。

これは医療・治療ではありません。
自然治癒と無縁のものを医療・治療と呼んではいけません。
(埋入処置の外科部分については、かなり医療「的」ですが)
第1回目のコラムから言っている通りリハビリテーションの範疇です。

そんなリハビリのお世話にならないために、回避努力=予防・メンテナンスが重要なのです。

おそらく小宮山先生はこのあたりをお分かりになってらっしゃるので、言葉遣いを
注意深くされておいでなのだろうと察します。

記者というよりも放送局として、医療ジャーナリズムについて三省を促したいと思います。

◆ インプラントの本質

まだ読者の皆様のなかには、あてはまる方はいらっしゃらない方が多いかと存じますが
これは、「歯が無い(とか、もう持たない)」ところに新たに作るものです。

当然ですが、歯がある所には不要です。

◇ 最大の特徴

その中の「インプラント」の持つ最大の本質は、癒着(Ankylosis)であるということです。
(別の表現でOsseo-Integratonと呼ぶこともあります)

この骨が持つ癒着という生理的性質を最大限に用いて、歯に代わるものを作成するのです。
癒着には、下記の性質があります。

  ◎ 頑丈である
  △ 歯根膜で菌から守られない
  × 側方(横向)の力に弱い

骨に直接癒着しているのだから、これは頑丈です。

いっぽう歯は、「歯根膜」という皮スジ1枚を挟んで、骨にこびりついています。
これをクッションという見方で見ると、インプラントにはクッションがありません。
また、こびりついているわけではないので細菌(歯周病菌)に対する抵抗力は弱めです。
また、側方(横向)の力は打撲の力として働いて、歯よりも傷みやすい面もあり、要注意です。

◇ 最大の意義

私が考える歯科臨床上の最大の意義は、その頑丈さが活用されることでもたらされる

 隣在歯の安寧・保存
 垂直的位置関係の安定

が、歯列咬合の維持・安定に非常に有用であるということです。
グラグラで持たなさそうな歯でも、隣にインプラントを入れて重心を按分負担したら、
けっこうグラグラが収まってくる
ケースも枚挙に暇がありません。

また、力学的に頑丈でも細菌学的には異物であり不安定な面もあるインプラントの維持のために
定期健診・メンテナンスの習慣づけが促進される面も見逃せません。

こんな高級な歯を入れて、入れっぱなし、などというわけには行きません。
何とか一生長持ちできるようにするために、定期健診や衛生指導はとても重要です。
結果として、他の歯も状態が良くなり、長持ちさせる作用もあるのです。

「よくかめる」「固定式で快適」というものも、もちろんあります。
むしろ患者様によく自覚できる点としては、そちらが主でしょう。
それに伴う、各種アンチエイジング効果も、臨床実感として無視できないのも常識です。

ただ、快適な咀嚼は顧客サービスやQOLの面から、前面に押している歯科医院も見受けますが
歯科医学的には、上記の「本質」がもたらす「副次的効果」です。
また、劇的によくかめるようになるようなケースは、往々にして大掛かりなものです。
1本2本程度では、あまり日常の違いの実感はわかないことが多いのが正直なところです。

◇ 患者側に必要な目

さて、このような長所・短所のあるインプラントを検討するに当たって、
患者様はどのような点に注意すればよいでしょうか?

(1)

やめておいたほうがいいのが、「単価が少しでも安いところを探す」「経験本数の多い先生」
だけ
で決めることです。

数年前、豊橋で「インプラント使いまわし事件」がありましたね。
フェラーリに「インプラント1号」「2号」などと名前をつけてぜいたくしていた歯科医師が
摘発されました。
何でも1本14万円だったそうです。インプラントにしては破格の安値です。
でも失敗した人のインプラントをママレモンで洗って他の人に植えていました・・・
こんなので先生の本数や症例数が多くても、安心できません。

同じことが、医療ツーリズムにも言えます。

最近は、地方空港とアジアなどとの直行便が多く、たとえば韓国は今は超ウォン安
(加えて政府の円高放置)で、
1本10万円前後という値段でインプラントを行うことも不可能ではありません。
治療費、飛行機代、ホテル代、焼肉代、これらを入れても
国内より安く上がることもあります。

しかし、インプラント(に限らず、歯科修復全般)で大事なのは、メンテナンスです。

半年に1度飛行機で外国に定期健診に行くのも、そうとうかったるいですよね。

(2)

自分の骨や体質のことは、よく把握しておきましょう。

HbA1c、骨密度(骨年齢)、血圧、血液型、その他内科的既往の把握は、治療以前です。
また、自分の欠損部も立体的に把握しておきましょう。

 骨は?
 下歯槽管は高いor低い?
 上顎洞は高いor低い?
 上顎骨は何ミリ挙上可能か 前上歯槽動脈は高いor低い?
 欠損部の形態(土手そのものが低いor切り立っている、頬舌(内外)的な幅の欠損)
 咬合(1級?2級?3級?)

よく先生に説明を受けましょう。また似たような症例のレントゲン写真も見ると安心です。
骨の形が難しいときは、CTで精査して、骨増生や傾斜埋入などの工夫も必要です。
また、あまりに厳しいときは、やらない、という選択肢もあります。

(3)

どんな歯科医院が安心か、ですが、ひとまずは慣れているところ、という答えになります。
具体的には、先生の腕自慢よりも、慣れた歯科衛生士よる指導・予防管理体制のあるところ
という基準で見たほうが、素人目には安心です。
もちろん小宮山先生のところも、安心中の安心です。

費用負担の考え方も大事です。

基本、一生使うものなので、その場だけでのトータルの値段で考えずに
『自分の余命(平均寿命)』と『治療費の整合性』と『価値観』を十分に考えてください。
20年~30年以上壊さず使えると考えたら、ある意味「高いけど安い?!」という理解もある
と思います。
たとえば身の回りで、30年以上持っているモノって、意外と少ないのではないでしょうか・・・

最終的には個人の判断になりますが、先入観のみで誤った判断をすることは良くありません。
得られる情報はなるべく集めて、その上で熟慮したいものです。

【今回のまとめ】

TVの一方的な論評や特集は問題も多い&インプラントの大きな利点は隣在歯保護である

09:47 | nemoto | NHK?「インプラントへの警鐘」への警鐘 はコメントを受け付けていません
2012/01/24

こんにちは。根本齒科室の根本です。

先日、ご近所のみどり幼稚園の歯科検診に行ってきました。
縁あって、ひょんなことから幼稚園の園医を引き受けることになったのですが
児童の皆さんを見ていると、いろいろ学ぶことが多く、ためになります。

ここでは、ご近所の山村医院の先生とご一緒に、年に2回、内科と歯科の検診を行います。
1月と6月にあるのですが、今回の1月は新入生の入園前検診で、一学年?!分になります。
6月には園児全員の検診があります。これがまたすごいのですが・・・

地元の歯科医師会でも、市の保健センターで持ち回りで検診をしています。
主に1歳6ヵ月検診と3歳(2/6~3/6の間)検診ですが、それともまた違う、
独特の雰囲気です。

そんな幼稚園の話です。


◆ 幼稚園とはどんなところか

多くの人が経験したはずなのに、具体的にはどうだったか
ほとんど覚えていないのが幼稚園時代です。

オジサンの目線で、改めて何十年ぶりに門をくぐって驚いたのは、とにかく

 エ ネ ル ギ ー の 塊 が 熱 く 燃 え て い る

場所だということです。
幼児の集団にあんな力強いオーラがあるとは思いませんでした。
子供たち一人ひとりが、何だか発光体のようですらあります。

そんな園児たちをまとめている先生、それはそれは大変です。
見るからに全力投球で、園児たちに負けないように大きな声で指示を出し、走り回る。
それも笑顔を絶やさずブチ切れず。まさに肉体労働そのものです。

一番最初に目の当たりにしたときは、正直圧倒されてしまい、新鮮なショックでした。
しかし、終わって帰る頃には爽やかな敗北感とエネルギーを注入されて、いい気分です。

◆ 幼稚園でやること

当日の指定された時間に、園に向かいます。
玄関入り口はカウンターみたいになっていて、向かって右側が廊下になっています。
廊下を進んですぐの部屋が職員室になっているので、まずそこでご挨拶をして着替えをします。

その間にも、廊下の外には、母親に手を引かれた新入園児たちが何組か、
せわしなく行きかっています。先生方もまけじと?!せわしなく行きかっています。

準備が整うと、指定された部屋に向かいます。
1月は、ある教室ですが、6月はなんと突き当たりの講堂で行います。
広さは、そうですね、剣道のコートが2面取れるくらいでしょうか。

スタイルとしては、ちゃぶ台のような低いテーブルの横に、幼稚園児用のいすがあり
私がそれに座って行います。横にはひとりの先生がアシストとして付き、
記録をとったり園児の誘導をしたり、他の先生にミラーの消毒の指示を出したりします。

なぜそのようなスタイルかというと、普通の座面700のいすに座ると高すぎるからです。
幼稚園の検診なので、専用の設備はありません。というか、園児は「きおつけ」です。
それでも園児用のいすですら高過ぎて、気がつくと”先生”が地べたにしゃがんだり
正座していたりすることもしばしばです。

燃え滾る火の玉を何十発も(百何十発も)食らって、すっかり幸せになって
フラフラになりながら、職員室に戻ってくると、そんなにまだ時間がたっていません。
帰りに少しお茶が出ます。話の中心はいつもネタの王様こと山村先生です。
とても博学で物知りなので、私はふんふんいっているだけで良く、楽?!です・・・

これでおこづかいまで頂いてしまったら、ばちがあたりそうですが。。

◆ 保健センターの検診との違い

◇ 保健センターの場合

保健センターの場合は、あらかじめ剣道のコートが1面取れるほどの大部屋のすみに
職員室用のようないすと机が置いてあります。
中心の大部分はカーペットになっており、そこにあらかじめ親子が座って待っています。

このように、基本的に知らない者同士なので、保健センターは少し落ち着いています。

また、3歳のときは半分程ですが、1歳6ヶ月のときは100%向かい合わせ抱っこで行います。
まず親と歯科医師が向かい合わせで座り、親が子供と向かい合わせ抱っこをします。
そこからこどもが、歯科医師のひざの方、後方に「ごろん」をするわけです。
また、簡易照明ですがライトがあります。ですから、割合落ち着いて診られます。

もちろん子供たちの中には、キラーコワルスキーや永源遙も多く、先生はヤラレっぱなしです。
しかし必ず親が付いていますので、ある程度子供は観念してヤラレてくれます。天然ブック?!
ただ親同伴の場合は、かならず説明とか指導をしないといけないので、時間はかかります。

◇ 歯式

「歯式」という、歯の記録をする表のようなものがあります。
上下左右8個の枠に歯の状態を記入していくときの「部位」のことです。
詳しくはこちらのページをご覧下さい。

これが、歯医者によって本当にまちまちなのです。
私は、ある歯を特定するときは「右or左 上or下 ●番」(例:右上6番、左下3番)と呼び、
検診のときに特に指定されない限りは、FDI歯式の番号にのっとって

 右上奥歯 ⇒ 左上奥歯 ⇒ 左下奥歯 ⇒ 右下奥歯

に向かって記録していきます。保健センターでもそうです。
(あくまでも順番だけで、実際にFDIのように右上8番を#18と呼んだりはしません)
しかし幼稚園では、前任者が

 右下前歯 ⇒ 右下奥歯 ⇒ 右上奥歯 ⇒ 左上奥歯 ⇒ 左下奥歯 ⇒ 左下前歯

の順番で行っていたので、現場の混乱を控える意味で私もそれに合わせています。
また、以前の勤務先で、

 左上前歯 ⇒ 左上奥歯 ⇒ 左下奥歯 ⇒ 左下奥歯 ⇒ 右上奥歯 ⇒ 右上前歯

という順序で記録していたところもありました。
どうしても歯科は個人事業主や小規模法人が多く、先生の好みでまちまちになりがちです。
ですから初めて検診に赴くときは、かならず歯式の方向を確認するのが最初の仕事です。

◇ 幼稚園の場合

1月は、教室の中で私とアシストの先生だけが待っていて、親子連れが順番に
部屋に入ってくる形式なので、部屋はそれなりに静かです。

問題は6月です。

150人以上の園児たちが、パンツ一丁で「ダーッ」と講堂に並びます。
あふれた子供たちの行列は、一部廊下にまではみ出しています。
さらに各教室にそれぞれパンツ一丁の一個小隊が群れを成して後方を固めています。
うるさいのうるさくないのって、そりゃもう、以前歯科医師会の旅行で行って驚いた、
中国深セン駅前の「何とかしろ城」というビル内の大食堂の大量の中国人の食事風景をも
軽く上回りそうな有様です。

(こりゃ、日本の未来は大丈夫かもだわ)普通に思えます。先生方、死に物狂いです。

しかし、コレだけにぎやかなのに、とってもみなさんお行儀が良くお利口さんなのです。
先生のそばの部分だけは行列も静かで、自分の番が来ると、タッタッタ~と小走りに駆け寄り
「こんにちは」と挨拶すると「っこんにちぅあ~っ!!」と満面の笑みで返し、ぱっと起立します。

これでオジサンは軽くノックアウトされてしまい、気分良くなってしまうのです。
もう、カワイイかわいい可愛い(*°∀°*)(n’∀’)η゚(*≧∇≦*)・*:.。..。.:*・゜゚・*

基礎教育はすごくしっかりしています。さすがの肉体労働の賜物と、感心するばかりです。
本当にみんな上手なので、一部の数名を除いてはかなりスピーディーに終了します。

◆ 幼稚園児を診て気になること

◇ 鼻唇溝

おはな ぷーーんしてこよっかぁ~♪

◇ 齲蝕

歯科の話に戻ります。

歯の生える早さとかには若干の個人差がありますが、それほどではありません。
差が大きいなと思うのは、まず、むし歯の本数です。

このご時世、親も予防歯科の勉強をしており、仕上げ磨きやフッ素に気を配る所も多く
ほとんどの子供にむし歯はありません。

ごく一部のある子に集中してあるのです。そういうことです。

出来やすい場所も決まっています。むし歯のある子のほとんどが、EとDの接点に作るのです。

(上図の赤いところです;[歯チャンネル]より引用)

これは私の医院をおとずれるお子様にも共通する特徴です。
その他、多い子だと、上の前歯のすきま、上の前歯の表面などが多いです。

◇ 上唇小帯

上唇をつまむと、上の中心の前歯と前歯の間から唇に向けてスジがあります。
これが上唇小帯(じょうしんしょうたい)です。

これが歯の生え際に非常に近いところ、極端な場合は歯と歯の間あたりから立ち上がって、
すきっぱになってしまっていることさえあります。

検診で見ていると、こういうお子様が10人に1人くらい見られ、意外に多く感じます。

こういうお子様は、仕上げ磨きのときにこすれて、痛がって嫌がるパターンが多いようです。
上の前歯のところだけは縦磨きしてあげるといいでしょう。

◇ 咬合

反対咬合(上より下が前)とか2級(下顎が後ろ)のお子様はまだ多くありませんが、
なっているケースでははっきりとなっています。

叢生はたまにあります。
乳歯の場合は、むしろ霊長空隙など、歯と歯の隙間が開いているほうが普通ですので
乳歯の段階できつきつですと、まちがいなく永久歯でもきつきつになります。

矯正医や小児専門医がよく言っているのは、タイミングとして上下4前歯が生え変わった頃
一度、専門の先生に見せた方が良い、ということです。
時期的に小学2年前後になると思います。

◇ 癒合歯

数十人に1人くらいの割合でいます。
歯2本の変わりに、歯2本分の幅の広い歯が1本生えてくるものです。下顎のA-Bに多いです。
こういうお子様は、永久歯も同じように癒合歯で生えてくることが多いのです。
こんなご時世で、余計な被曝はあまりしたくはないものですが、乳歯が癒合しているときは
一度永久歯胚(永久歯の芽)をレントゲンで確認しておくことが大事です。

癒合歯は病気ではないとされていて、治療対象ではありませんが、審美的に気になるときは
結局成人になってから抜いて矯正とか抜いてインプラントになってしまうようです。

◆ 幼少時(就学前)に気をつけること

詳細は小児専門医になりますが、あくまで一般医からの視点でお話します。

◇ むし歯予防

むしば歯の原因は 「砂糖」 「歯」 「むし歯菌」 「時間」 の4つです。

これらのうちどれかひとつ落とせばむし歯になりません。
一番簡単なのは「砂糖(ショ糖)」ですが、現代社会ではそれは事実上不可能です。
ですが、甘いものを与えすぎない、与えたらまめに仕上げ磨きする、などで
回避可能です。

現実的に一番簡単なのは「むし歯菌」です。

最近はいろいろ知れ渡り、赤ちゃんにキスや口移しなどはなくなりましたし
仕上げ磨きや、かかりつけの歯科医院での定期的なフッ素塗布も一般化しました。

ただ、どうしても子供が抵抗したりすると、つい仕上げ磨きの手が緩みがちです。
基本的に、奥歯はE-Dの間が危険なので、フロスが有効です。
お勧めは、ライオンのウルトラフロスです。


これのもっともすぐれている点は、フロスの糸が柄に対して垂直なことです。

ドラッグストアなどの歯ブラシ売り場のフロスを、一度確認してみてください。
全部が全部といっていいほど、フロスの糸が柄に対して平行、同一延長線上です。
これでは奥歯では使いづらいですね。

ウルトラフロスで必ずE-D間を仕上げ磨きしてあげれば、一番の危険地帯を
しっかり抑えることが出来ます。

ちなみに、むし歯予防には、19~31ヵ月(1歳半~3歳)が勝負で、そこをうまく乗り越えると
将来カリエスフリー(むし歯知らず)の大人になれる可能性が高いです。
逆にそこでやらかすと、歯医者と縁の切れない残念な人生の可能性が高いです。

ここが勝負です。

◇ その他

私の場合は咬爪癖(こうじょうへき)がなかなか治らず、グリッサンドに向かない
残念な指になってしまったのを大人になってから後悔しても遅かったのですが
小さなお子様は指しゃぶりなどいろいろな癖があるものです。

〔口呼吸〕

鼻が悪かったりすると、口で呼吸しがちです。
そのような場合に、上顎の内側を見てください。
口蓋(口の天井)が深く、V字型に切れ込んだりしていませんか?

このような場合、全員ではありませんが、嘔吐反射が強めなことが多いです。
「オエッ」となりやすいのです。

成人でこの手の方が来た場合、まずまともに型は取れないだろうと覚悟します。

しかし、嘔吐反射は自律神経と連動しています。
ということは訓練次第で十分に延長が可能なのです。

お子様はややかわいそうですが、少しがんばって根気良くみがいてあげて
終わったら必ずほめるようにしてあげてください。

それがその子の一生の財産になると思います。

〔舌突出癖〕

ゼツトッシュツヘキ?!何だそりゃ、とお思いかもしれません。

これは、舌先を上下の前歯の隙間に押し付ける癖です。
絶対やめさせたほうがいいです。

これを放置すると、「開咬」というかなりみじめな状態になります。
開咬とは、奥歯でかんでも、前後左右に動かしても、上下の前歯が触れ合わず
奥歯だけがゴロゴロ接触する状態です。

「パスタ(麺類なら何でも可)、どうやって切ってる?」

こう質問して、すぐ答えが出てこない人は、十中八九、コレです。

これでは奥歯は通常の人の倍の力に晒されることになりますから
すぐにむし歯になったりかけたりしてしまい、さらに
つめてもつめてもすぐ壊れ、より拡大してしまいます。

残念ながら、これは舌突出癖を治さない限り、矯正しても戻ってしまい治りません。
奥歯に詰め物をしても、早めに崩壊する可能性が高いです。

矯正専門の先生に相談してクセ直しの装置を作ってもらうのも有効ですが
手っ取り早くは、舌先を押し付ける場所を、上の前歯の生え際より5ミリほど
奥(=上)にするよう指導してしまうことです。

◆ まとめ

このように、お子様の歯の健康やむし歯予防に対して、できること・すべきことは
たくさんあります。

前々回に申したように、歯科は自然治癒せず、回避可能な疾患なので、
対応としてはまずは予防の一手が絶対条件です。

さいごに
お子様は自分で自分を守ることができません。
(大人でさえ碌に歯みがきできないというのに!!)
子供のむし歯は周りの大人の努力が全て、100%です。

【今回のまとめ】

その子の将来のために、幼少時にしてあげられることがたくさんあるのに忘れられている

08:00 | nemoto | ようちえん(幼稚園)にいってきました はコメントを受け付けていません
2012/01/22

こんにちは。根本齒科室の根本です。

たまには何の自分の得にもならない宣伝もしてみます(これ、いいのかなあ)。
なお、あらかじめお断りしておきますが、私は断じて

   三 ( ^ω ( ´ん)( ^ν)
  三 ( ∪ ( ∪ ー(‐∪─→
  三 / 》 ̄ 》 ̄ ̄ 》  ̄\
三三 | U   U    U ・ |
三 と|            ι| |       三┏(;´ア`)┛
 三 /_∧∨ ̄ ̄ ̄ ̄/_∧U     三     ┛┓

このような系譜(ア)の人種とか、「私は日本人だが」でコメントを始める外国人とか
そのような類ではありませんので、屋上屋乍お含みいただければ幸いです。
ごくまれにνかもしれませんが・・・

で、ひょんなことから耳にした某インディーズレーベルのCDが、なかなか心地よさげです。
類似の系統として真っ先に頭に浮かんだのが、コレとかコレでした。

じゃーん


太陽と野原のラフなデッサン風景。

いかにも「自然」「空気」などを連想させるイメージですし
歌詞も一生懸命その辺をさらう単語が出てくるのですが、
曲調そのものは何とも洗練されていて都会風なのです。
とくに艶があるのに微妙に退廃と癒しを含むVocalは、
こういう歌い方ができる日本人がほとんどいないだけに
秀逸です。

どうせなら

 9. でふれ
 ”駅前の古ぼけたビルの7階 当たり前の大盛りが嬉しかったあの頃~
  少しくたびれた総武線がたたずむ 昼下がりの景色~♪”
(牛友チェーン中野店)くらいやってくれれば、杉並三駅近傍での売れ行きが急j
 ・・・いやいや、個人的な戯言はこの辺にして

アーティストHPを見て、なるほどと分かりました。つまり

3-4-3 ⇒ サッカー ⇒ ブラジル ⇒ ボサノバ

ということだったんですね。
そりゃ、私の頭の中にすぐ歯悪ぃバワリーキッチンが出てくるはずです。

活動10年余、各メンバーがしっかりとジャズ等の研鑽を積んでおり、確りした取組です。
そのせいか、視聴者重視の分かりやすい音楽的展開に気を配りながらも、
全編を通じてコード進行の妙も随所に感じさせてくれる、オトクな1枚です。
(自分はコード譜まったく読めないけど)
とにかく(1曲を除いて)聴きやすい曲調なので、作業用BGMにはもってこいです。

その中でも私の一番のお気に入りは 9. でふれ
・・・じゃなくて、ラストの

8. うちへ帰ろう

です。
イントロのアコースティックもいいですが、そこからVocalに入るところの変調が、
「あ~、こういうの聴きたかったのにぃ~」と、まさに意を得たりという感じでした。
それだけに、コーダでもう少し(16小節くらい)アコースティックでコードを振って
イントロのイメージに近づけて、若干の不協和音で終わってくれたらだったのに。

あっという間に、ホント、あっという間に終了してしまいます。お客さん残念!

このような、腐れ切った「JPOP的王道進行」を真正面から撃つような、
(といっても、8のサビでそれらしいのが出てきますが、嫌味はない)
インパクトよりもインプレッションで勝負できる曲って、
なかなか日本のミュージックシーンにありません。

たとえば難曲中の難曲と言われる、バラキレフの「イスラメイ」。
これが、難しいけどつまらない曲だと評判なのです。
聞いて納得、前半がほぼ「王道進行『だけ』」で出来ているのです。
曲名はイスラムという意味らしいですが、こりゃ、イスラム教徒も不満かもです。

 でも何年か前にイラクで日本人青年が殺害された事件のときに流出した
 動画とか、あっち系のBGMも、独特な単調さがあって「何だかなあ」ですが。

私が知らない曲を聴くときのクセなのですが、音楽的に成立する範囲で
どっちに(「コード」と呼ばれるモノ)が転がっていくか、いやむしろ転がれるか、
その曲が数分程度の時間の中でどれだけその辺の可能性を広げてくれるか、
そんなことを意識しながら聴いています。

また、ひとつひとつの楽器の良さがどれだけ引き立っているかも気になります。
音の幕の内弁当が石焼ビビンバのようにかき混ざってしまった商業レーベルには
基本的にほとほと嫌気が差しているのです。
ここは特にJPOPがUSやUKのそれに比べて弱いところです。
露骨なのは、20年前くらいに流行った「Into The Night」というダンスミュージックの
マイケルフォーチュナティ版と、カバーの成田勝版のアレンジの違いです。
最初聞いた瞬間に呆れて「あぁ、このアレンジじゃあ成田さんカワイソウだわ」
と、いたく同情したのをつい最近の様に覚えています。

この辺を小室哲也やB’zらが初期の頃に少しだけ意識しかかった気がしましたが
やっぱり石焼ビビンバに戻っていってしまいました。

そんな不満をどこかに抱えてきたので、カラオケはどちらかというと嫌いでした。
「あれはナンパ用」と割り切りながらも、世間的に寂しい音楽事情のままでした。
でも自分で音を出すほどの才覚など少しもありません。

その辺の事情を勘案して、私が「ほっとできた」一枚です。

 ループシュート/3-4-3 曲目リスト

 1. キミの心のクサビにノールックパス
 2. 夜の蒼い空
 3. 杉並
 4. 武蔵野
 5. 新緑
 6. 青いバレエシューズ
 7. いわし雲
 8. うちへ帰ろう

・・・うーん

返す返すも残念なのが、タイトルかなぁ。
以下、限りなく独断と偏見に基づく個人的見解

 1. 「キミの心のクサビに」←不要。「キミ」とかちょっと厳しい
 2. 「蒼」より「青」のほうが透明感のある曲調に合いそうか?
   あるいは某AV女優がカバーしたらブレイク必至?!
 3. ←「無垢(まっしろ)に揺れる街並」でいいのではby元杉並区民
 4. この歌詞で武蔵野は無い。苗場だら。 「僕の前髪に繋まって」辺りとか?
 5. 曲調からもそのまま「ふたりで歩く日曜日の午後」でおk?
 6. 「バレエ」←「トウ」シューズの方が曲調に合うかと?
 7. いわし雲 ←タイトルで魚臭さが連想。他の雲もたくさんあるのに
 8. おk

インディーレーベルだからと、ど素人風情が
素養も無いのに言いたい放題すみません。

つくづく日本語の扱いは、とくにPOP系では難しい。
「開音節」「モーラ」を兼ね備えてる、世界でも稀有な言語。
会話楽勝、読み書き無理ゲー。翻訳特化の厄介な言語です。
ラップは当然ですが、基本的にRockやPOPに乗せにくい。
同じモーラ言語であるフィンランドの(初音ミクで有名な)「Ievan Polkka/ロイツマ」
みたいな、ぶつ切りになってしまうので、雰囲気的にもノレないのです。
シンコペーションにもモーラ配分が邪魔して朗読みたいになってしまう。

あと、せっかく曲の完成度が高いのだから、日常の些事ばかりでなく
むしろ歌詞に、(暗示程度でも良いので)LOVEとかEROの味付けも
勇気を持ってもう少し盛った方がいいのでは、とも感じました。
このVocalなら、そういうエンチャントメントも十分引き出せるでしょう。

そんな感じですかね。
私が、言語学者でも無いのに、数ヶ月前の「民主主義」騒動のときみたいに
モーラモーラとうるさいのは、本当に日本語を「歌」うのは難しく感じるからです。
演歌「謡」とか民謡「唄」とかだと、ピシャッとはまるんですけどね。

実際聴くと、そのニュアンスが、私の解釈が正しいかどうかは別として
少しご理解いただけるかもしれません。
それだけ、(1つを除いて)曲の方の完成度は高めだと思います。

ぜひ、聴いてみてください。

【今回のまとめ】

自分の得にならない宣伝は、国語の練習になったけど疲れた

追記 2012/6/8

この回ご紹介しました「3-4-3」様のリーダー、太田祥三様は、現在
ジャンクステージでライターとしてもご活躍中です。

私は、太田さんのことは、とあるご縁で若干御存知ではあったのですが、
(だから今回の書評がやたらと辛口でもあったりするわけですが)
今般、何とまったく別のルートで「知り合いの知り合いの知り合いの()」で
つながるルートができました。

詳細は、こちら(鍵盤の下のバタ足/外山安樹子)をごらんください。

じつは、外山さんから「今後コラムを少し増やしていきたい」という
未確認情報が某ルートから伝わっており、私もとても楽しみにしております。

やはり、世間は案外狭いのかもしれません。

07:30 | nemoto | 【CM】某インディーレーベルの音色が透明すぎる件 はコメントを受け付けていません
2012/01/14

こんにちは。根本齒科室の根本です。

大変遅くなり恐縮ですが、本年もよろしくお願いいたします。
さて、わが国にとって非常に大きなインパクトを残した年、2011(平成23)年が
やっと終わりました。

考えてみたら、私がこのJunkStageの末席を汚すことになったのも昨年6月でした。
まさに震災後の混乱の時期です。
歯科医師としての私も、震災やその後の混乱から多くのことを学んでいました。
ケガの功名とでもいいますか、このことがなければ気がつかなかった、あるいは
はっきり意識に上ることもなかった多くのポイントや反省点がありました。

なかでも一番大きかったことは、これです。

ここでも述べましたが、歯科と医科は逆の性質であるという点に
改めて気がついたことです。

言われてみれば当然のことといえばそうなんですが、私にとっては
このことに気づいたのが本当にデカかったです。

「性質が逆なので対応も逆になるべきだ」という、何とも当たり前の事実に・・・

震災前からずっと絡まって悩んでいた多くのことが、この概念ですっと腑に落ちました。

◆ なぜ予約を軽々しくたこってキャンセルする人が多いのだろう
◇ なぜ治療を1回で終わらせずに何回も通わせるのだろう

◆ なぜ定期健診やメンテナンスに来ない人が多いのだろう
◇ なぜ困っても痛くもないのに歯医者に呼ばれるのだろう

◆なぜ”良い治療”を勧めても乗ってくれないのだろう
◇ なぜ保険医なのに保険が悪いような物言いなのだろう

etc

私◆も悩んでいましたし、患者様◇も悩んでおいでの方が多かったと思います。
しかしそのお互いの悩みを解決するために『何をどう』皆様にお伝えするのが最良か
自分の中で今ひとつうまく整理できていませんでした。
この表については、後段で簡単に敷衍します。

2011年に東日本大震災がなかったら、どうなっていたでしょうか・・・

2010年ごろは、何かの販促の本の「織り込みチラシが良い」というのを真に受けており、
2011の年初には、年賀風のチラシも新聞折込に入れてみました。

当時の私が必死な感じが思い出され、心なしか面映い感じがします。
もちろん結果(反応率)はといえば (‘A`)


3月に、ご案内のとおり東日本大震災が発生しました。

借金を抱えた一個人事業主としては、「・・・終わった」というのが正直な実感でした。
このあたりの当時の詳細については、当歯科室の院内新聞に詳しく記載してあります。
この号は3月末が締め切りだったのですが、紙面も大変慌しく苛立ちと焦燥感にあふれ、
今見てもとても正常な心理下とはいえません。

ちょうどその頃、「織り込みチラシが良い」パート2の企画があり、近所に5000部くらい
撒く予定がありました。
しかし当然ながらとても「どうぞ私の歯科医院にいらっしゃい」などと不謹慎すぎて
書く気など起こりません。

考えた結果、私を捨てて公~地域に役立つことだけに絞って紙面を作ることにしました。
それがこれです(A4-PDF2M注意)

お見舞いがてら、このときに当歯科室で非常に特徴的に起こったことに絞り、
そのことから見えてくる普遍的な「歯を大事にする考え」だけを伝えることにしました。
これは折込ではなくポスティングで入れたのですが、後で複数の患者様に聞いたところ
「えっ、そんなの気がつかなかったよ」
・・・orz

当時は、なぜ予防中心が良いのかと言う理由として、「プラスの世界・マイナスの世界」
という概念を考えていました。簡単に言うと、
 治療(歯科医師)はマイナスをゼロ近傍に戻す役割
 予防(衛生士等)はプラスをよりプラスに上げる役割
ということです。
この頃作成した小冊子(今もあります)の中の挿絵に、いみじくもこのような物があります。

(ああ絵が下手すぎて恥ずかしい)
もちろんこれは間違いではありません。プラスの世界を維持することは大事です。
空中を飛ぶインプラントに跨っているモロAA風の歯を見ると若干営利目的の香りがしますが、
それでも精一杯客観性にも配慮した概念のつもりです。

しかしどうもパンチに欠けます。
魅力的(かどうかは別として、それに訴えたよう)な概念ですが、必要性が感じられません。
人間には一定の愚行権があり、法的にも保証されているからです。


このように、当時の私は、周囲に何かを伝えないといけない、と焦っていました。
そこに震災が起こり、混乱の中で多くの人がいろいろなことを言ったりやったりしました。
ひょんな人伝で桃生苑子様をご紹介いただき、こちらの末席を汚すことにもなりました。

ここのコラムでいろいろ書いてきたことは、自分が得ている知見とか考えを書いて
読者の皆様のお口の健康に対する考察の一助になればという意図もありましたが、
昨年の拙いコラム群を振り返ってみると、コラムを書くことによってはからずも
(自分の今までの考えは何だったのか)を整理する機会でもあった
ことに気がつきます。

 書いて→悩んで→まとめて→書いて(以下無限ループ)
      ↓
     たこって

おぼろげながら見えてきた、自分の頭の中の鳥瞰図を、ぎゅっと濃縮したのが、
一番上に示した表だった、と、2012年初頭の私には言えると思います。
「この表の意味は?」という方は下のバナー(当歯科室HPです)をクリックしてください。

トップページ中盤にこの表の言わんとする点についての簡単な説明があります。

現段階では、歯科医師の自分自身に対しても、この概念が一番説得力があります。

よく「予防が大事」とか「定期健診に行こう」とか書いてある歯医者のホームページが
たくさんあるじゃないですか。
分からないではないけど、微妙に胡散臭くありませんか?

しかし、この表の概念、歯科と医科は基本逆の性質という概念は、一切ブレません。

仮に今までどおり、「痛くなったらあわてて」などのオンデマンドで来院して、
治療が終わったらはいさようなら、健診何それ?式の行動様式を考えてみると、当然

 症状が後手に回って思いのほか被害が拡大するリスクが高まる
 一度失うと戻らない、かけがえのない歯を大幅に欠損するリスクが高まる

という結論が導かれます。
逆に、自然治癒して、回避不能である、急な事故や怪我、意図せぬ感染症では
予防とかほぼ無理なので、オンデマンドの対応しかないことも合わせて分かります。

・・・よし、今年はこれでのんびり逝くか!
   ということで本年もたまにはよろしくお願いいたします。

【今回のまとめ】

自分が強く信ずる考えは案外他人に伝えにくいが、継続的な伝達の努力が大切

01:53 | nemoto | ヤブ医者は東日本大震災に結局何を学んだか はコメントを受け付けていません

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