« | Home | »

2012/02/21

こんにちは。根本齒科室の根本です。

天皇陛下の手術も無事に終わり、きわめてご順調とのこと、安堵しております。
2011年はお疲れの一年でもありましたので、この機にごゆっくり英気を養われて
ご自愛召されるよう祈っております。
何でも、3月11日の慰霊祭に間に合わせるために急遽手術をお急ぎになった
との噂も仄聞しております。
本当に頭が下がる思いです。私たちも見習って頑張らなくてはいけません。

ところで、この間久しぶりに新人さんを採用しました。
今回は、その面接について少しお話ししてみたいと思います。

私も勤務医時代は、さんざん履歴書を片手に就活?!の苦労をしました。
しかし、面接をする方の立場に立ってみると、また違った苦労があります。

応募者と採用者の求める理想は、かなり違います。
これは、両方やってみると強く感じます。

その原因は、たぶん求めているものがお互いに違うからだと思います。

【媒体募集】


《募集する側》

ウチ(茨城県龍ヶ崎市)の場合は、通常アイデムさんに出します。
1回3~4万の枠です。ここがこの辺では一番反応がいいです。

募集期間が1~2年くらいあくと、10人以上は普通に応募があります。
今までの最高では、30人近く面接したことがあります。
試用期間の3ヶ月程度で退職して次の募集となっても、5人は電話があります。

人材難で有名な歯科衛生士の募集でも、数人の方がエントリーされます。
歯科医院のスタッフは、結構高いハードルをクリアして就職してきている
ということが分かります。

ちなみに私が大学に入学したとき(1990)は、センター初年度で問題も易しく
結局6.8倍(足切り3.5倍)という話でした。
当時は「高倍率だなあ」と思っていましたが、とてもかないませんね。


《募集される側》

私の勤務医時代の頃の話です。
知人の紹介、大学厚生課に届いた募集の確認などもありますが、
一番数が多いのは、歯科月刊誌「日本歯科評論」の募集欄です。
我々の間でも、「『ヒョーロン』はほとんど求人誌」という認識でした。

ただ、あまりにもしょっちゅう出しているところもあります。
人使いが荒く、従業員が居つかないのかもしれません。。。
また、あまりにも破格の条件でも、必ず裏があります。

【求めるもの】


《募集する側》

基本的には、院内のスタッフの一員になっていただくわけです。
ですから、既存のスタッフとの連携や和、相性が一番重要と思います。
従って、以下のようなタイプは、どんなに能力があっても無理だと思います。

◇ とげのある性格、ダメ出し屋など
◇ 協調性のないタイプ
◇ 約束を守らない、など、基本的な部分の欠如

よく「歯科医院ではスタッフを容姿で選んでいるのではないか」という声を耳にします。
これは、当たらずとも遠からずといった感じです。

基本的な容姿については「既存のスタッフと並んで違和感がないか」が一番近い回答です。
ありていに言うと、たとえば太過ぎ、細過ぎetcですと、バランスが悪いですよねw
院長の個人的な好みなど、ほとんど入る余地はありません。

(この子、俺の愛人とかならぴったりなんだけど、スタッフだとなぁ・・・)
美人すぎ(俺的)もダメなようです。残念な放流も、何度かありました。

「とげのない快活さ」「癒しの雰囲気」

このあたりは、高ポイントです。

ひとつ気になるのは、あまりにもレベルの高い、経験の豊富すぎる人です。
「歯科衛生士を20年やりました」「開業に3件立ち会いました」
これでは、はっきりいって、この人に医院を乗っ取られてしまいます
・・・
ここは日本だし、ほどほどが好まれるのかもしれません。


《募集される側》

どうしても(自分を「レベルの高い有能な人材」だと思って欲しい)と思いがちです。
これは、どの面接にも言えることかもしれないと思いますが。

自分が院長になってみて、勤務医を雇うことを考えた場合ですが、まず思うのは
院長の臨床スタイルを理解して欲しい、合わせて欲しいということです。
非常に下世話ですが、そうです。
全く違ったスタイルを展開されるのでは、逆に心労が増えるばかりです。

多くの場合、勤務医を雇うときは、院長1人で患者数が回らなくなったときですので
「手早く」「基本的な治療を」こなせる、というのが第一条件のことが多いです。

また、専門医を雇うときは別ですが、基礎的な部分は別として
あまりアドバンスな技術は求めていません。
「そういうのはおいおい伝授する」くらいに思っているはずです。
逆に、アドバンスの勉強をしたいために就職する場合は、かなり給料は厳しくなります。

基本的に募集の動機が動機なので、基礎的な部分がいまいちでも、
何とかなりそうな範囲ならむしろ「自前で鍛えて何とかする」と思っているはずです。

ここを一番見落としてしまいがちです。

【実際の面接】


《募集する側》

中にはスーツを着てこない人もいます。
履歴書の殴り書き、または書き間違いを修正液で消してくる人もいます。

それはまずいと思います。非常に苦しいです。
それだと、他が良さそうでも、取れません。

うちの場合は、まず受付が履歴書をお預かりして、私のところに持ってくるのですが
そのときに、微妙な表情をしたり、ニヤニヤしているときは、大抵そんな感じです。

実際の話が始まると、まずは長く勤められそうか、を基準に話をしていきます。
女性の採用なので(それでも開業以来今まで2名ほど「男性」の応募があり驚きましたが)
将来の結婚、出産、親御様のサポート、この辺は慎重に聞いていきます。

小さいお子様連れだと、保育園などからしばしば呼び出しが来ることもあります。
その他、PTAや習い事、他の仕事などが業務に差し障らないか、なども細かく考えます。

また当地は常磐線の駅前ではありますが、クルマ通勤が一般的な土地柄です。
とはいえ、あまりに遠い人は基本的に不安になります。

そして、うまく説明しにくいのですが、いろいろ会話しながら
既存のスタッフと雰囲気が近そうか、うまくなじみそうか、を重視しています。
「朗らかすぎ」「暗すぎ」「真面目すぎ」「はっちゃけすぎ」・・・
どれも、減点対象かもしれません。


《募集される側》

私は男性なので、スーツを着ていかないことはありませんから省略します。

大抵最初に対応するのが、受付の方なので、ここで嫌われないように、慎重に行きます。
硬すぎず、はっちゃけすぎず、基本礼儀正しく、相手を立てて、ですね。
(この業界は、女性を立てないとうまくやっていけません)

相手の院長の性格は、極端だったり攻撃的だったりしなければ、
それほど関係ありません。
とはいっても、何だかんだで割合身近にいる人なので、
生理的嫌悪感を抱かない範囲で、ということです。

案外大事なのが、診療室の道具の種類だったり雰囲気だったりします。
「とにかく早く回したい」という雰囲気のところもあれば
「じっくりとこだわりの臨床をしたい」という雰囲気のところもあります。

あと、院長の院内の説明は、とりあえずはあまり当てになりません。
「ていねいな治療を心がけている」
「予防中心の臨床を」
などと、いろいろ説明しますが、歯科の特殊性もあり、
「ていねい」「予防中心」などの各単語の概念の解釈が、
歯科医師間でありえないほど広範に散逸してしまっています。

自分の「ザツ」が、その院長のていねいよりも断然ていねいなことなど、ざらです。
事細かに、このようなことがいっぱいなのが、歯科業界なのです。
「自分的」普通を見つけるのがきわめてむずかしいのです。

もし見られれば、洗浄コーナーと、アポ帳も確認したいところです。
この辺に、その医院の実態が結構出てきます。

「ていねい」「予防中心」とか言っていて、アポ帳がぐちゃぐちゃだったり
衛生士の担当がクルクル変わるようでは、「・・・ry」

まあ、でも、とりあえず内定は多いに越したことはないし、
しょせん開業予備軍の?!勤務医、水商売のようなものですから
(そうでない方もたくさん存じてはおりますが)内定は多いに越したことはない。

それよりも、自前の資本財(医院、設備、スタッフetc)を持たない勤務医ですから
「○国民の生活が第一」ではありませんが、自分の生活が第一なのです。
夢は抱きつつも、臨床観の実現のような贅沢は開業後のお楽しみだったりします。

【採用】


《募集する側》

残念ながら、採用の実質的な最終的権限は、ほとんど院長にはなかったりします。
面接が終わった後の医局では、当然の様にあれこれ人事会議が始まったりします。
「えー、再婚する予定ぃ?」
「○○歳っ?ビミョーじゃなくない?」
「これ、金髪!とりあえず履歴書とかまずいでしょう」
・・・

見てもいないスタッフまで混じって、あれこれ言い出します。

(あっ、この子ダメ出し食らってる)
(この子せっかく巨乳だったのに、不評だわ)
思うところは多々あれど、院長の発言権はここではあまり大きくありません。
数々の履歴書がバルサのように華麗にパス回しされ、3-4-3では太刀打ちできません。

最終的に、医局で
「う~ん、これか、これかなぁ、どっちかかなぁ」
などと、大枠が示されて、ようやく院長が何か言うことが許されます。。。

まあ、歯科医院の面接なんて、そんなもんかもしれません。


《募集される側》

今にして思えば、正直なところ、終わった感じである程度分かっていたのかもしれません。
その当時は、そんなことは思いも付きませんでしたが。

◇ とにかく人材を求めている
◇ 院長と性格が合いそう

なところが、やっぱり、単純に受かります。

◇ 院長がどうも理屈っぽかったor嫌味っぽかった
◇ やたらと根掘り葉掘り聞かれた
◇ 歯の模型を削らされた

ときは、だめでした。

逆に、いろいろな理由で、こちらが「ここヤバイ」と思うことがあります。
◇ 院内が不潔
◇ 院内を猫が走り回っている
◇ 院長が竹刀を常時携行している
◇ カルトっぽい
◇ スタッフの雰囲気がとげとげしい
etc

こんなときは、受かっていなくても、数日後に
「他に決まりましたので、御迷惑をおかけしました」
などと電話を入れてしまうこともあります。

【結局、どんな人材を求めているの?】

じゃあ、最後に、院長としてまじめな話をします。

うちでは、患者様が歯に対して「治療」「補修」というステージを卒業して
「維持」「管理」「重宝」というステージに入っていただきたい、という思いがあります。
ですから、そのサポートの意味で重要な『居心地の良い』歯科医院として、

[0] 患者様との適切な雑談能力、世間話の力、コミュニケーション能力

を最大限重視しています。
治療に際しては、バキュームとか照射、セメントなどのチェアサイドの能力は
最初からは求めていません。
というか、新人さんには、その辺は忘れてもらっても結構、とすら思っています。

まずは業務上、

[1] 導入退出、誘導が適切にできる
[2] 細かな道具や名前を早く覚える
[3] 目の前のことには責任感を持つ

あたりをしっかりやって欲しいと思っています。

「○○を持ってきてください」
といわれたときに、すぐに持ってこられるようになるのが第一です。

また、細かいものが分からないときに「大体こんな感じでいいか」
などと、不正確な作業をするのは困ります。

すぐに上直や先輩に聞いて、作業は正確にしてもらいたいと思っています。

どうしても歯科のスタッフというと、患者様へのバキュームや照射など、
診療介助が強くイメージされてしまいがちです。

しかしそれだけでは「看護婦さんごっこ」になってしまいます。
また、一応歯科医師はツーハンドで(要領が悪くても)仕事をする訓練は受けています。

勤務医については、現在の規模では一般医の需要はあまり考えていません。
予防を担当する衛生士が、少しずつ増えていってくれればと思っています。

今の世の中、「行列のできる○○」を求めても仕方ありません。
患者様も従業員も、『ウチと合う人』が増えて欲しいのが、第一です。

【今回のまとめ】

募集は、される側とする側では思惑が異なることが多い。両方やって分かることもある。

2012/02/21 12:32 | nemoto | No Comments