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こんにちは、根本齒科室の根本です。
前回、開業前後のことについて書いていたら、何かの偶然でしょうか
つい先日、開業時のオープニングスタッフだった歯科衛生士Dさん(仮名)が、
突然急患として来院しました。
この間の件といい、彼女の来院といい、6年前を思い出させる出来事が
頻発しています。
そこで、オープニングスタッフの募集とか開業スケジュール、の件について
もう少し慎重に思い出しながら続きを書いてみたいと思いました。
Dさんは、当時採用したスタッフの中で、一番最初に採用を決めた人です。
まだ、当時は歯科医院は工事中でしたので、面接はできません。
恥ずかしながら、そばの佐貫駅前マクドナルドで行っていました。
◆ 求人誌の掲載
最初は、ハローワークと、アイデムさんととらばーゆさんに出しました。
アイデムさんの掲載料は、初回なので、現金払いでした。
オフィスもない(建設中)のでアイデムの担当者の方と駅前で待ち合わせて、支払いました。
このときに、うっかり昼寝していて、少しお待たせしてしまったのを覚えています。
自宅から、徒歩5分の駅まで全力疾走してダッシュしました。
このとき以来、募集はほぼアイデム1本です。
他誌も試しましたが、集まり具合がちがいます。ここらはアイデムさんが強いです。
とくに、日曜日に新聞折込に入るチラシの威力が強力です。
とらばーゆさんは、現金ではなく振込みでした。
「常勤に強い」とのふれこみでしたが、当歯科室の場合はいまいちだったようです。
◆ スタッフ募集・面接
以前税理士のF先生に指摘されたのですが、有資格者なのだから24時間365日
コレ仕事と思わないといけない、とお話をいただいたことがあります。
F先生は、社労士のI先生に紹介していただいた先生です。
年齢は私の1つ上で、”永遠のサッカー部員”というか、モロに体育会系ですが
相当無理を聞いてくれるので、頭が下がりっぱなしです。
F先生の話に、なるほどと思いました。でも歯科医院は人がいないと回りません。
そこは士業とかに比べて不利です。
そう、Dさんといえば、履歴書に写真を貼り忘れてきたのが強く印象に残っています。
「でも感じのよさそうな人だったので、採用してからでいいか」
当時、歯科衛生士専門学校に通学中でもあり、これは青田買いイケルか?!
という期待もありました。
面接する場所が無い、というのは、本当に情けないことです。
マクドナルドでの面接は、一応無料ではありません。
ひとり行うごとにコーヒー1杯注文しないと追い出されてしまいます。
そのうち店員さんに顔を覚えられ
「お客様、さきほどと同じでよろしいですか?」
・・・
面接が終わる頃には、今にも黒人になりそうな勢いでカフェイン漬けでした。
悔しいので、面接の終わりしなには
「よろしければ、帰りに現場見ていってください。ローソン跡地です」
と必ず一言付け加えていました。
そんな感じで、極端にカフェイン摂取量の多い日々が続きました。
予防や定期健診の力になる歯科衛生士ですが、案外あっさりハロワ経由で
応募がありました。
ベテラン衛生士のKさん(仮名)は、15歳も年上でしたが、(そのときは)
謙虚な感じでした。
◆ ミーティング
デフレまっただ中(今もそうですが)だったせいか、多くの方に面接に来ていただき
概ねメンツの頭数は揃いました。
その次は、今後の予定とかシフトとか、ユニフォームを決めてもらったりとか
そういう相談をしなければならない。
まだ内装は完成していません。
大家の不動産屋さんに相談して、近所にある持ち物件のビジネスホテルの
1階の食堂を借りることになったのです。
その日は朝から小雨でした。
ビジネスホテルと言えば聞こえがいいですが、要は長期滞在型の格安な宿坊にすぎず、
エレベーターも無い。あまつさえw食堂はまさに、昭和風カフェー(横棒がポイントです)
そのものの様相を呈していました。
歯科衛生士のKさんは、その日は来られないとのことで、お休みしました。
他の人たちと年齢が離れていたので、少し躊躇があったのかもしれない。
と私は思っていました。
◆ スタッフ募集・面接(受付編)
受付を選ぶのには、結構二転三転がありました。
何人かの中で、Gさん(仮名)がいいな、と思っていました。
Gさんは30代前半の女性で、面接の時には事務能力が高そうで誠実そうでした。
いくつかの、非常に名の通った有名企業でも秘書をしていたとのことです。
そして、変な影と色気があった。細身なのに、胸も名前負けせずGくらいありそうです。
なんだか、愛人にぴったりそうな感じだ。
とりあえず、そのときは「やりぃ~!」と思った俺も、なんだかなぁ。
ミーティングのときには、後ろの方でおとなしくしていたが、終わったあとGさんに
「・・・院長、すいません」
と呼ばれました。
何を言われたかは忘れたが、(何だかコイツ面倒くせぇことばかり言うなあ)
と思ったことだけは覚えています。
案の定、そのあと、中身は忘れましたが、急にいろいろ要求を出してきたり、
電話で話す感じがぞんざいになってきたりしました。
とりあえず、「こりゃアウト」と思いました。だけど、何でだろう??
もしかしたら、折り目正しく対応せず、いっそベタなAVみたいな展開の方が良かったのか???
・・・や、それはないだろう。とにかく、きれいなバラにはトゲがあるんだなあ。
期待しすぎてしまった分、Gさんには、いや、自分自身にがっかりしたものです。
しかし、後々トラブルになるのも嫌なので、早めに断りの電話を入れた。
(ヨ、ヨリニヨッテ、コ、コノオレガ、【G●ッ●】ヲアキラメルナンテ・・・)
面倒な奴では仕方ない。電話でも結構こじれてしまったし、地雷だと思って諦めよう。
「店長(院長)って、嫌な仕事だなぁ・・・これが今後もあるのか」ガクッときました。
気の重い電話をした後、社労士のI先生に、とりあえず今まで採用した人の
履歴書をスキャナーで取り込んでメールしました。
I先生の返信内容は、驚くべきものでした。
「えっ、Gさんという人を採用しようとしたんですか、根本先生?
もう少し早くおっしゃっていただければ、こちらも情報を提供できたのに。
すみません。そのGさんは、他社の面接でも結構トラブルを起こしているんですよ。
受付は他の方がいいと思います」
ああ、こういうのを”授業料”っていうんだなぁ・・・
また募集を出すのは面倒くさかったが、出すより他にありません。
今度は、応募者の中ではIさん(仮名)という人が目にとまりました。
おっとりとしていて、とげがなく、いい感じの方です。
「この子でいいかな?」
ちょっと気に入ったので、面接もそこそこに、工事現場に連れて行きました。
「もうすぐ完成します」
Iさんを超える人材は、案の定、その後の面接ではあらわれませんでした。
以前のコラムに書いたように、大体少し話してみると、感じよさそうだな
とか、感じ悪そうだな、くらいは分かるものです。
いくら事務能力や知的能力が高くても、受付は院長の安心の拠り所でもあるので
使いづらい人材ではどうしようもない。
ことに大所帯でない個人商店なので、人事的な影響は甚大です。
「Iさんで決まりかな」と思いながらも、募集期間の間は待つしかありません。
何人かが急遽応募してきては、見ただけで「お疲れ様でした」が何件か続いた。
最終日の最終応募者はMさん(仮名)。
かなり遠くから、車で30分以上のところからの応募でした。
まず住所を聞いて、「はぃ?」って感じの距離。しかも自分よりも少し年上。
やる前からもう、結果は見えている「と思っていた」俺としたことが・・・。
その日の少し前に、裏口とスタッフルームは何とか完成していて、内装も
ほぼ終了、というところまで工事は進んでいました。
やっと、面接や応対を自分のオフィスの敷地内でできるようになっていました。
医院のすぐそばで道に迷い、遅れてやってきたMさんにはびっくりしました。
遅刻してきたにもかかわらず、とにかくニコニコ笑顔が絶えないのです。
「あぁすみません(2525)、ホントすみません(2525)」
そして笑いの閾値がとにかく低い低い。
こちらのオヤジギャグがどんなに寒くても一切滑らず、とにかく笑う笑う。
面接にありがちな気負いとか、張り詰めた緊張感が、微塵も感じられない。
受け取った履歴書を見て、またまた驚かされました。
そこに写っているのは、あきらかに私にガンを飛ばしているかのような
茶髪の元レディース系の姐さんそのものです。
今目の前にいる、笑顔の素敵過ぎるMさんとは、とても同一人物には見えない。
そういえばこの間、韓国では、3分間証明写真の機械にPhotoshopのように
写真を修整する機能がついていて話題になっている、とニュースで見ました。
これは、その逆のパターンです。
実物が履歴書に大きく劣る方は大勢いらっしゃったが、逆はありえない。
最初からすっかり狐につままれた心境ながらも、せっかくなので、
ほぼ完成した内装や受付周りでも見てもらうことにしました。
「うわぁ~!スゴーイ(゚∀゚ )!! スゴーイ( ゚∀゚)!! キレイ――(^O^)――!!」
「ここで座ってするわけですね。でも、キレイ―(^O^)―!! スゴーイ( ゚∀゚)!!」
Mさん、ひたすら感動しっぱなしのようすです。
口ぶりや雰囲気も、元ヤンとかDQN系ではないのは明らかです。
そんな彼女に、私は混乱しっぱなしでした。
しかし、ふと、今までのストレスがかなり癒されていたことに気付いたのです。
面接は残念なことがとても多かった、
なかなか思うようにことが運ばない、
工期はやっぱり遅れた。
私はずいぶん疲れていました。だけど、何となく感じました。
「この笑顔に賭けてみよう」
だめなら試用期間で切って、また面接すればいいか。
まさか、最後の最後に、Iさんを超える人材が訪れるとは思っても見ませんでした。
じつは、採用後にMさんにたずねた所、近所の方からアイデムの新聞折込を
「捨てる前にどうぞ」といただいて、それを見て電話してきた、と言っていました。
星霜遷変、今ではすっかり主力、というか、実質”M歯科医院”状態です。
Mさんに付いているリピーターの患者様も多く、まさに無くてはならない存在です。
私にはとても得手には思えない「女性陣のマネジメント」もMさんのおかげで安心です。
そんなMさんの現在の働きぶりに、私は非常に満足しています。
どこに何があるか分からない。
Mさんの件は、まさに神の采配としか言いようが無いと、今でも思います。
◆ 開業スケジュール
Mさんを採用したころは、もう開業予定日も押し迫っていました。
思えばこの半年はあっという間でした。
物件も見つからないのに大津支店に相談に行き、あしらわれたのが前年末。
あわてて物件を探し、運良く伊勢喜屋さんを見つけたのがその直後です。
もう、典型的な落下傘開業です。
なるべく早く開業したかったので、もう大体内装の図面案は書いておきました。
動線分離と個室、水場、トイレ、待合室など。
担当者から「ここまでできていれば早いですね」と言われたのも、そのころです。
本所から佐貫に引っ越してきたのは、年が明けてからです。
それまでは、柏での仕事が終わってから佐貫の工務店に打ち合わせに行き、
それから東京に帰宅という日々が続いていました。
しかし打ち合わせでいろいろこだわりが出てしまい、部材の輸入やら何やらで
賃料発生が結局3月になってしまいました。
そこから改めて内装の解体から始めるので、GWまでずっと工事になってしまいました。
4月ごろ開業できれば言いかと思っていた考えは、甘かったようです。
面接は、GW明けになってしまいました。
ミーティングが5月中旬、そこからさらに2回連続でアイデムに募集を出し・・・
その間、材料(ケーオーデンタル分)の
◇ 袋出し(袋から出す)
◇ 伝票合わせ(過不足がないかチェックする)
や、保健所への開業届け、社会保険事務局(現 関東信越厚生局)への保険医療機関届け、
ビジネスホンの説明、カルテソフトの説明etc
袋出しした材料は、歯科衛生士のKさんが「勝手に」バンバンしまっていました。
もう、それをとめる気力もありません。
◆ 内覧会
5月28日の内覧会が、もうすぐでした。
内覧会というのは、近所の方に、無料で開業直前のお店に入ってもらって
開業直前の院内をのぞいていただくイベントです。
しかし、もともと歯医者を好きなどという奇特な方はまずいらっしゃらないし、
近隣の競合 店 医院では、絶対にスパイをよこすに決まっています。
そんな、非武装中立路線みたいなことは、できればしたくなかったのですが
いろいろ調べても、最近は、どうもどこの歯科医院でもやっているようでした。
うわ~面倒ぃ・・・!非常に気が重かったです。
「俺ってなんて気が短いんだろう。すぐ気が重くなったりイライラして」
とくに開業準備の頃は、そんな自分の姿に、改めて驚き、落胆していました。
30代も後半になり、もっともっと丸くて、人間ができているつもりだったのに。
(要は、俺は偉そうなことを口先だけで言っている奴だったんだ)
ストレス耐性の低さに愕然とする日々でした。
「『開業ブルー』ってのがあるんですよ。極力おちついて、楽天的に」
ベテラン材料屋のRさんが、励ましてくれました。
Kさんは、歯科に対しては結構真摯で、勉強も良くしているような感じでした。
しかし、接しているうちに、どうも、仕切りたがり屋の面や威圧的な面、
自分に都合が悪いと不機嫌になりやすい点などが目立ってきていました。
そんな点を、ここのところ、何だかやりにくく感じていました。
Kさんは、強行に土足に反対してきました。
私は、土禁にエビデンスは無い、と説明しましたが、歯科衛生士がいないと
予防歯科や定期健診には痛手なので、そのときはあまり強く出られませんでした。
仕方なく、洗濯できるスリッパと、簡易型の靴棚を購入することになりました。
そのときに、ひとつ密かに心に思いました。
そうしたら、こんどは、予防個室内の壁面に、自分で持っている歯ブラシを
並べて飾りたい、と言い出しました。
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何でも、歯ブラシを自分でコレクションしていて、500本くらい持っており、
壁面を改造して、それを全部ひっかけて陳列できるようにしたいとのこと。
気がついたら、勝手に工務店の人を呼んで、図面を書かせたりしていました。
何じゃそらぁ(‘A`)
工務店の人に、できかけの図面を見せてもらったときは、もう全身の力が抜けました。
「・・・ちょっとまだ具体化したわけではないので、待っといてください」
傍らでは、新しく入った受付予定のMさんが、かいがいしく動いています。
「何も分からないんですけどー(2525)、何か仕事はありますかぁー(2525)」
聞くところによるとMさんは、お仕事はほぼ銀行一筋。
いくつかの都銀や地銀を歴任し、窓口業務の資質は万全そのもののようです。
そんなMさんの特技のひとつは、電卓です。
それも、他人の目を見て談笑したりしながら、リスト(東方じゃないよ)の鬼火
の右手ような、それはそれは恐ろしいスピードで電卓をたたきます。
近所の銀行の窓口の方と比べても、かなり早いです。それが正確無比だから恐れ入ります。
内覧会の直前になって、歯科衛生士のKさんが「都合で出られない」と言ってきました。
(ミーティングも来なかったし、内覧会くらい出てくれてもいいのに)
とくに彼女には、他院のスパイをあしらってほしかったので残念でした。
内覧会の当日に驚いたのは、親類一同が集まってしまったことです。
とくに父の姉が嫁いだ先の「高橋整形外科医院(新潟市)」チームは張り切っていました。
「おい、寿司を取るぞ!!」
ハァ?(゚Д゚)y─┛
と思ったのもつかの間、親類一同はさっさと奥のスタッフルームに陣取り、
寿司とお酒を手に付け始めました。
他院のスパイは、衛生士学校に通っているDさんが、Kさんのかわりに対応してくれました。
最初は心配でしたが、見たら堂々としたモンで、相当安心しました。
仕事は任せてみるもんだな、と思い、あとで褒めようとしたら、彼女いわく
「口から心臓が飛び出しそうでした」
受付のMさんは、ちょっと歯科医院の受付とは思えないような高度な接遇オーラを
遺憾なく発揮していて、これまたカッコイイ。
俺、なにもしてねぇ・・・orz
自己嫌悪の感覚が一気に襲ってきて、もう壊れそうでした。
スタッフの雰囲気も微妙な感じになってきました。
扱いづらいKさんはノリノリ、他のスタッフはやりにくそう、
年上なのに無邪気なMさんを見ていると癒される。
俺、なにもしてねぇ・・・
まさに開業前日、6月1日(木)の夕方、何の用件かは忘れましたが、
ずっと親身になって対応してくれている工務店の担当者の方と電話で話している最中です。
何が原因かは分かりませんが、思わずこみ上げる感情を抑えきれずに、
携帯を握り締めながら、はばからず嗚咽を漏らしてしまいました。
開業って、こんなに思い通りに行かないものなのか。
明日は、はたして大丈夫だろうか・・・
今回は
◆ 求人誌の掲載
◆ スタッフ募集・面接
◆ ミーティング
◆ 開業スケジュール
◆ 内覧会
の内容になりました。
書きながら、胸が苦しくなってきてしまいました。
やはり、この時期は相当精神的にキツかったです。
「顧客ニーズと異なるメッセージを伝える」どこではなかったようですね。むしろ
「・・・って、てめぇ~らっ、ゴルァ~~~!!!」
さて、この後 ヘタレ根本 は一体どうなっちまうんでしょうか・・・to be continued
【今回のまとめ】
人を雇ってお店を構えるのは想像以上のストレス。ボスは基本、周囲に尊敬されない。