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JunkStageをご覧の皆様、こんにちは。
師走のこの時期、お仕事だけではなくプライベートでも色々と雑事が増える時期です。学生のころの気分を思い出してしまう方も多いのではないでしょうか?
ということで、今回は社会人から脱サラし、大学院生として第二の人生を歩んでいるこの方をご紹介したいと思います!
■vol.38 脱サラ大学院生・藤原整さん
――時には、理屈では説明できないようなことを、
噛み砕いて、受け入れていくほうが、
もしかしたら、ずっと生き易いのかもしれない、ということ。(藤原整)
3年間勤めた会社を辞め、大学院生に。おそらく日本で唯一、「ブータンの情報化」について研究中。GNH研究所研究員。ライフワークは、競馬とTV。
http://www.junkstage.com/fujiwara/
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2010年、藤原さんは3年勤めた某大手ゲーム企業を退職されて大学院に入学しました。
それまでもJunkStageでは主として趣味の競馬を中心としたコラムを書いてきた藤原さんの文章力は折り紙付きであり、その中に垣間見える丁寧な裏付けや物事への真摯な姿勢は確かに研究者向きであるような印象でした。
が、新たに藤原さんが研究対象として選んだ分野は「ブータンの情報化」。
おりしもGNH(国民総幸福量)という言葉が徐々にささやかれはじめ、翌2011年に熱狂的に迎えられた国王夫妻の訪日を控えた時節のことでした。
(藤原さんも参加したブータン国王夫妻の歓迎レセプションの模様はこちらから!)
このGNHという概念に惹かれ、本格的な学問の世界へ再び足を踏み入れた藤原さん。
あの熱狂的ブームのお蔭か国名としての認知は高いブータン王国ですが、その実情は意外と知られていません。
が、知らなくても藤原さんのコラムを読むに何の痛痒もありません!
なぜなら、それらはコラムの端々からにじみ出るように教えられるからです。
といっても、堅苦しいのは苦手……という方でもご安心を。
軽妙なテンポとユーモア、そしてはにかみに包まれた文書に押しつけがましいところは一切なく、研究者の日常を淡々と描きながら独自の目線でブータンという国の素顔を教えてくれるのです。
たとえば料理。野菜≒唐辛子で卒倒しそうな辛さのブータン料理のこと。
たとえば社会。幸福の国と呼ばれる場所で生まれている失業率の問題、国内のサッカー事情、はじめて訪れたブータンで目にした携帯電話の普及率の高さ、facebookの大流行、そして昨年行われた政権交代開票日のドキュメンタリ……。
また、観光地の紹介も東西ブータンの文化差から書き起こされており、東ブータンの豊かな自然を写真とともに堪能できます。
藤原さんのコラムの端々にはまっすぐなまなざしと綴られる対象への素直な敬意が感じられます。そして、それでいて淡々とした語り口。文章には人柄が現れるものですが、藤原さんの綴るエピソードはそれを実感させる誠実なものばかりです。
だからこそ、読者としても単なる研究者のレポート以上の情報を楽しみながら得ることができ、知らない間にブータンという異郷の魅力に気付かされているのではないでしょうか。
それを端的に示す、わたしの一番気に入っているエピソードをご紹介します。
「君は今日、普通にこの山に登るよりも、2倍のカルマを手にした」と。
なぜなら、「君がここに来てくれたおかげで、僕(ガイド)も、
今日ここに来て、良いカルマを得ることができた」からだという。
この言葉、宗教的な観念うんぬんは抜きにしても、
なんだかとても、素敵な発想のように思えたのだ。
(「物見遊山」より引用)
こんな体験ができるなんて、と思わずにはいられないような体験。
ブータンというまだ見ぬ国に、そこへ住む人々に、なんだか暖かく迎えられるような気がして、とても印象に残る記事でした。
藤原さんはブータン研究家として日本ブータン友好協会での理事としての顔だけでなく、現在、出身地でもある宮城県でまちづくりを通した被災地復興支援活動を行うなど幅広く活動。最近では気仙沼市でも研究分野の無料講座を行い、双方のフィールドで活躍を続けています。
冒頭に掲げたのは、そんな多岐にわたる活動の一つひとつを支えるもののように思われる藤原さんの言葉。
あるがままを見る、そして受け入れる。
難しいことではありますが、藤原さんのコラムにはそのヒントがたくさんあるように思うのです。