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2010/09/14

初の海外フィールドワーク(@ブータン)に訪れた8月。

そもそも、文化人類学とかそっち方面に知見があったわけではないので、
「フィールドワーク」といっても、実はあまりよくわかっていなかった。

ただ、一応、入門書のようなものを読んでみたし、
参考のために文化人類学の講義にも出席したりしてみたものの、
小手先のテクニックだけを学んだところで、
そのとおりになるはずなんてまずないだろう、という予感もあった。

何より、「何が分からないか分からない」から研究しているのであって、
何を探せばいいのか分かっているなら、誰か他の人がやればいい、
という思考に行き着いてしまうような難儀な性格が災いしてか、
結局、さしたる準備もせずに出発の日を迎えてしまった。

そういう意味では、ほとんど普段の旅と変わらない、
予定調和2割、行き当たりばったり8割といった混ざり具合で、
見て、聞いて、気になったことをメモして、という過ごし方。

結果、事前に連絡すべき人に連絡ができていなかったりと、
反省も多々あったのだが、自分なりには収穫もあったと思っている。

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今回の旅で印象に残ったエピソードの中に、こんな話があった。

チベット仏教を信奉するブータンにおいて、一番の聖地とされている、
「タクツァン僧院」という寺院に登っていたときのこと。

タクツァン僧院は、断崖絶壁に位置しており、
麓から険しい山道を2時間以上かけて登らなければ辿り着けない。
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だが、敬虔なブータンの人々にとっては、
この山に登れるということは、至上の喜びであり、
良い「カルマ(業)」を積むことに繋がるのだという。

ちなみに、カルマとは仏教用語で、「行為」を意味しており、
良い「行為」をすれば、それが良い「果報」として返ってくる、
というものである(ものすごいざっくり言えば)。

この山、馬に乗って登ることもできるのだが、そうすると、
「得られるカルマは、馬と折半になってしまう」から、
なるべく自力で登った方がいい、のだとガイドに諭され、
なんとかかんとか、頂上まで辿り着くことに成功した。

その帰路。
ガイド曰く。
「君は今日、普通にこの山に登るよりも、2倍のカルマを手にした」と。

なぜなら、「君がここに来てくれたおかげで、僕(ガイド)も、
今日ここに来て、良いカルマを得ることができた」からだという。

この言葉、宗教的な観念うんぬんは抜きにしても、
なんだかとても、素敵な発想のように思えたのだ。

この話が、いま自分が研究テーマとしている情報化の問題と、
どのように線を結ぶのか、いまはまだよく分からない。

ただ、彼らなら、金銭欲や物欲のためではない開発、というのも、
あながち夢物語ではないのかもしれない、
と、本気で思えるようになったのも、また確かである。

百聞は一見に如かず、とは良く言ったもので、
まさしく、自分の目で見てきたものについては、
自分の血となり肉となって、きっと良い研究成果をもたらしてくれる、
そんな予感がしてくる。

これこそが、馬に乗っていては得られない、
グッドカルマの成せる業、なのかもしれない。

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さて、話は逸れて。

ブータン、という国を研究しはじめて早半年。
各所で「ブータン研究家」なんて肩書で呼ばれることも増えてきたのだが、
実は、そう呼ばれることには凄く違和感を覚えている。

もちろん、研究するからには、その道を極めてみたい、
という思いがあるのも事実ではあるのだが、
それとは裏腹に、5年くらいでまた新しい道を歩いていそうな気もする。

良く言えば、好奇心旺盛。
悪く言えば、飽きっぽい。

これまで、そういう生き方しかしてこなかったので、
1つの道を選択することに、必要以上にこだわりがない。
物見遊山で次々といろいろな道に首を突っ込んで行くのが性に合っている。

裏を返せば、その道の専門家には成り切れない、という弱みがある、
とも言えるかもしれない。

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先週末、本コラムの大元であるJunkStageが主催した、
「JunkStage Cafe」なるイベントが、東京・中目黒で開催された。
http://www.junkstage.com/100911/

その中で、旅好きが集まるスピンアウト企画が催され、
今回、そこにスタッフとして参加することができた。

そこで得た、というか紹介された肩書が、件の「ブータン研究家」である。
確かに、いま、旅好きの間では、ブータンはちょっとした注目を浴びており、
研究家を名乗ることで、人目を惹くことができるのは事実。

その一方で、この日集まったメンバーの話を聞いていて、
自分には「旅人」あるいは「バックパッカー」という肩書も、
ちょっと荷が重いような気がした。

何故って、彼らは、それこそ、
氷点下になりそうな砂漠の中で寝袋で一夜を過ごしたことや、
不用意に軍の施設を撮影してしまい警察に捕まったことや、
入国不可の国のビザを何ヵ月もかけて交渉して勝ち得たことなど、
辛かったエピソードと言いながらも、嬉々として話すのだ。

確かに、自分も、バックパックを背負って旅するのが嫌いではないし、
ヨルダンで、気温50℃の灼熱の砂漠を歩いて死にかけたことや、
モロッコで、タクシー運転手と口論になり警官に撃たれかけたことや、
インドで、乗合いバスのフロントガラスが走行中に大破したことなど、
普通の旅行者なら、二度と経験したくないであろう話も、
自分の中では、旅の笑い話として必要不可欠なエピソードになる。

なるものの、できれば楽な旅をしたい、というのが本音だ。
行き当たりばったり10割は、自分にはちと辛い。

金が唸るほどあるのなら、間違いなく安宿には泊まらないし、
旅の強者たちの話も、凄いとは思うが、真似したいとは思わない。

ただ、パックツアーは、たぶんもっと自分には合わない気もする。
人生そのものが寄り道だらけなので、寄り道ができない旅はすぐ飽きる。
予定調和10割も、相当辛い。

なんだろう、楽な旅というか、自分勝手な旅が好きなのだ。
たぶん。

やっぱり、自分には、何事も物見遊山が性に合っているのかも、
なんて考えながら、収拾のつかない思考に頭を巡らせる、
そんな残暑の夜。

2010/09/14 12:00 | アジア周遊, ブータン | No Comments

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