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JunkStageをご覧の皆様、こんにちは。
最近、めっきり朝夕が涼しくなり、秋めいてまいりました。秋といえば芸術の秋、スポーツの秋など色々な秋がありますが、今月は食欲の秋をテーマにこのライターさんをご紹介させていただきます!
■vol.35 和菓子職人・高橋由美さん
――可愛くておいしい和菓子を作って、食べた人を笑顔にできる。なんだか、すごいですよね。(高橋由美)
専門学校卒業後、自らの店を持つことを目標に大和市内の2軒の和菓子舗で修業を続ける和菓子職人。食べておいしく見て美しい和菓子の世界の担い手として日々研鑽を積んでいる。
http://www.junkstage.com/takahashi/
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高橋さんは、現在神奈川県大和市にある2店の和菓子舗(「みどりや」さん、「鈴木屋」さん)に勤務される和菓子職人。製菓の専門学校を卒業後、現在も勤務されているお店に職人として入り、いつかご自身のお店を持つことを目標に日々おいしいお菓子を作り出しています。
ところで、高橋さんの上記の経歴のうち、面白いのはもともと彼女がパティシエを目指していたというところ。勉強を重ねる中で、また、幼いころから嗜んでいた茶道の影響もあり、和菓子の道を志したという変わり種です。
JunkStageでは主に季節の和菓子や、その時期の歳時記などにちなんだコラムを連載してくださっていますが、……どうにも読んでいておなかがすいてしまうのは、その美味しそうな和菓子の数々!
▲練り切りで作られた菊、サンタ。和洋いずれも造作が素晴らしい!
また、私が高橋さんのコラムをお勧めする理由のひとつは、和菓子が季節感を大事にしているものだと感じられる部分です。春の雛祭り、冬といえばの雪だるま、秋にはきんとんで表現された紅葉……。、そして季節限定感が楽しい苺大福!
いずれも芸術品のような、小さくて美しいお菓子たちは、目でも舌でも楽しませてくれる存在です。高橋さんがいみじくも言うように、「可愛くておいしいお菓子」の力は偉大だと感じられる作品たちは、まさに特別な日のおもてなしにも最適なのではないでしょうか。
また、お菓子にまつわる知識が増えるのも甘党としては楽しいところ。
普段何気なく口にしている求肥や雪平、練り切りが実はもともとの材料が同じであるとか、茶席での出入り和菓子屋さんの苦労、あるいは、和菓子屋さんならではの理想の女の子「白餡女子」など、トピックの選び方や語り口はまさにプロの女性職人ならではの遊び心ある着眼ばかりです。
普段美味しく頂いている和菓子の一つ一つの名前の由来なども謂れのあるものが多く、たとえばこちらの「調布」というお菓子は租庸調という税制度に由来したものだとか。お正月といえばの花びら餅は宮中行事に由来すること、和菓子屋さんの作る恵方巻、お盆に供えるお迎え菓子。
ざっと列挙しただけでも、何気なく店頭で見かける和菓子がいかに創意工夫を凝らして発展してきたものかと感心してしまいます。
もちろん、これらの知識・背景を知らなくてもお菓子のおいしさは変わらないと思いますが、ちょっとだけ得した気分になって、ますますおいしくお菓子を味わえそうな気がしませんか?
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高橋さんは現在、和菓子職人として厨房にたつ傍ら、茶道でもお弟子さんをとるほどの腕前。2店舗を掛け持ちして働いていることを考えれば、圧倒されるほどの仕事量です。にもかかわらず、高橋さんのコラムには、甘味と同じよにゆったりとした気持ちになれる“何か”があるような気がします。
その“何か”とは、夢に向かってまい進しているからこその余裕なのではないでしょうか。
旅行のたびに土地の和菓子舗やケーキショップにはいって研究したり、他の職人さんの言葉に謙虚に耳を傾けたり、時間があれば講習会へ通うほど勉強熱心である高橋さん。その、自分の店を持つという夢に向かって着実に進んでいる手ごたえが、ゆとりとなって、読むものをくつろがせるのではないか。
高橋さんのコラムを読んでいると、どこかそんな確信めいた余裕を感じます。
そして、そのゆったりとした空気と添えられた写真を眺めていると、たまには丁寧に緑茶を淹れて生菓子を頂こうかなという気持ちになる。
これは、得難い高橋さんのコラムの特徴であり、美質であるような気がします。