さて、毎年ひっそりと潜っていた流氷フリーダイビングですが、今年は各種のメディアでも取り上げていただきました。
■NHK「おはよう日本」特集「流氷に“異変” 素潜りに挑んで」
2015.3.15(日)
http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2015/03/0315.html
地元出身のフリーダイバー、高木唯選手を主人公に、地元知床の様子、流氷フリーダイビングの様子、年々減少する流氷の状況を湛然に取材した番組。流氷や水中に関するベテランのクルー陣により、長編映画が出来上がりそうなくらい湛然に丁寧な取材、撮影を頂きました。珠玉の10分間番組に凝縮されています!
(※流氷について興味を持った方、是非昨年のNHKスペシャル「流氷”大回転”」をご覧下さい!http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0518/)
■台湾 三立新聞網
換個角度看世界!北海道「流冰之下」景色震懾人心
2015.3.15(日)
http://www.setn.com/News.aspx?PageGroupID=15&NewsID=65664
今年もはるばる台湾から、JayとGeorge2名のフリーダイバーが参加しました!昨年すっかり流氷(リャオピン)に魅せられてしまい、今回2度目の参加となったJayがインタビューに答える様子がNHKの番組でも放送されました。この様子が台湾のメディアでも紹介されました!温暖な台湾の人にとっては「冬」「寒さ」は憧れのようですね。
■海とダイビングの総合サイト「オーシャナ」
世界遺産・知床で氷点下を潜る!「第3回フリーダイビング流氷カップ」レポート
2015.3.14(土)
https://oceana.ne.jp/after_report/55612
今回初参加のフリーダイバー村上紘子さん寄稿による速報レポートを、オーシャナに掲載いただきました!彼女は「今回少しでも不安を感じたら潜らない」としっかり決めて参加しましたが、結果は見事成功!氷から上がりたての笑顔が最高に輝いていましたね!そんな新鮮な喜びが伝わってきます!
■北海道ファンマガジン
氷点下の海で素潜りに挑む!
世界でも珍しい流氷フリーダイビング大会
http://pucchi.net/hokkaido/funlog/201503drifticediving.php
北海道の地域サイトとはいえ情報充実、ニュースアプリなどにも情報配信している「北海道ファンマガジン」でも取り上げて頂きました。地元ならではの暖かい視点で、丁寧にとても良い記事に仕上げて頂きました!
* * *
こうして、沢山のメディアを通じて、流氷の素晴らしさ・貴重さを沢山の人に広がることはとても嬉しく思います。それと同時に、再びですが、安易に真似出来る活動ではなく、危険と隣り合わせであることもお伝え出来ればと思います。
さて、最後にご紹介するのは・・
■写真集「Water Being」野口智弘
「流氷フリーダイビング」の発起人は地元ウトロ出身の高木唯ちゃんと、カメラマンの野口君の2人。もともとはこの地で素潜りする地元出身唯ちゃんの写真を撮ろう、というところからスタートしたイベントです。
野口君が3年前から撮り続けている、この流氷フリーダイビングをはじめとして日本各地の海と、素潜りする人との幻想的な写真を収めた写真集「Water Being」を3月20日に発売しました。(※ただし、お手元に届くのは4月半ば以降になります)
海の深さ、冷たさ、静かさ、そして水圧の重さがずしり、と伝わってくる、他で見たことがない独特の水中世界。必見です!!
撮影:野口智弘
A4 ハードカバー フルカラー96ページ
定価:本体5000円(税別)
出版社: 野口智弘写真事務所
http://www.amazon.co.jp/Water-Being-野口-智弘/dp/4990808304
photo by Hiroko Murakami
今年も行って参りました、流氷フリーダイビング。
フィンを背負って、ビキニを鞄に詰め込んで、
ユネスコ世界自然遺産登録10周年を迎える
極寒の地、北海道知床半島斜里町ウトロへ!
流氷をウェットスーツで素潜りするというエキセントリックな「流氷フリーダイビング」ですが、早いもので今年で3回目となりました。(2013年、2014年の様子はこちら)
フリーダイバーの中でも選りすぐりのモノ好きが集って仲間うちでひっそりとはじめたこの企画。究極の過酷なチャレンジです。今年は参加メンバーも増えましたが、地元の皆様に多大なる協力を頂きながら、これまで以上に入念な準備と徹底した安全管理体制の元に実施しました。また身体のコンディション作りも大切。このために冬の海でトレーニングを積んだり、数ヶ月かけてしっかり「身体を作り込んだ」(=体脂肪を増やした)選手も^^; どうぞこの先は真似したいなどと決して思わず「へぇーよくやるな・・」と呆れながら読んで下さいませ。
■流氷はどこへ?
さて、豊かでダイナミックな大自然に溢れるこの地には、毎年冬には遥かオホーツク海の北からやってくる流氷も見所のひとつです。が・・今年は少し様相が異なっていました。
流氷が・・・ほとんど無かったのです。
↓今年の様子。
毎年、この場所から見えた海は、「大海原」ではなく真っ白な「大平原」でした。波の音などなく、コチコチに固まり、しん、と静まりかえっていました。
ところが今年は、暖冬の影響か流氷が固まらず、耳を澄ますと「ゴォー」っというかすかな轟音が聞こえてきます。目をこらすと、氷を乗せたシャーベット上の海が、ウネウネとうごめいています。まるで生き物のように。そして海の様子は刻々と変わります。
こんな状態でどうやって潜ろうか・・・。本当はこんな風にがっちり凍った氷の上に穴を空けたいのですが
・・今年はこのありさま。シャーベット上の氷では足場を確保しようにも、流氷が動いてしまったり、柔らか過ぎて危険です。なにしろ、出口がいつのまにか塞がれてしまうことにもなりかねません。
安全に潜れる場所を探すためにドライスーツを来て流氷の様子を探索したり
それでも結局刻々と流氷の様子は変わってしまい・・・うーん、どうしようか。
そして迎えた大会当日。安全性も考慮し、漁港の中に浮かぶ大きな氷を係留して潜る場所を設置しました。
水深は5-6mと浅かったので、例年行っていた「コンスタント・ウェイト(垂直に潜る)」は中止し「ダイナミック(水平に泳ぐ)」種目だけの開催となりました。
これは知床観光協会の方が港から撮影してわかりやすく解説をつけてくれた画像です。氷の下の並行潜水は途中で浮上することが出来ないため、ショートコースとロングコースを設け、無理ない距離を潜れるようにしました。
また昨年のヒヤリハット経験から、ラニヤードは使わず、ロープに手を添えて潜ることになりました。
今回スタートとゴール地点には氷と氷の間が塞がらないように、地元の漁師さんたちの知恵で、こんな木枠を設置しました。
水中はほの暗く、おおきなヒトデがいました。そして見上げると
空に浮かぶ雲・・ではなくて、海に浮かぶ、氷。
一瞬だけど、長くも感じる時間。ゴールの木枠が氷の海にぽっかり浮かぶ、窓枠のように見えました。
アイムOK!のサイン。満面の笑顔・・がこわばっています、若干。
なにしろ、水温は-1℃。正真正銘、氷点下ですからね・・。直接海水と接触する顔は冷たいを通り越してピリピリと痛みを感じる程です。
体が冷えすぎないように、氷から上がったら暖かい豚汁。至福の時ですね。こんな準備も3年目の経験値ならでは、なのです。
ともあれ、こうして無事に大会は終了しました!
そして、氷上人文字でウトロに感謝を込めて!
浴衣姿で、感謝を込めて・・
■減少する流氷
オホーツク海から北海道に接岸する流氷は、世界自然遺産知床の大自然を育む重要な役割を担っています。でも近年地球温暖化の影響で年々減っているそうです。今回私たちはそのことをまさに肌で感じることになりました。
勿論年によって波があり、今年がたまたま暖かかっただけで、来年はまたがっちりとした流氷が見られるかもしれません。でも長期的には減少傾向にあるそうです。季節が移り変わりと同様に、気候というものはある日を境に突然変わるものではなくて、緩やかに移り変わるものなのかもしれません。
そう思うと、ますますとても流氷が愛しいものに思えてきます。「豊かな生態系を育むオホーツクの流氷の海がこれからもずっと続くように」そう願わずにいられません。
氷、海、雲、雪。
全て水が形を変えたもの。
水は様々な姿で私たちを圧倒します。そしてこの凍てついた地でほんの一瞬だけ、水に入ることで、自分の存在はとても小さく、でもこの大きな自然の一部だと、確かに感じることが出来るのです。
Photo by
Tomohiro Noguchi, Jay Hung, Shuji Hosoda,
Yui Takagi, Hiroko Murakami
アプネア・トータルには様々なフリーダイビングコースが用意されています。
・Freediver :全くの初心者向け
・Advanced Freediver :フリーダイビングの基礎を取得している人向け
・Master Freediver :上級者向け4-5週間のコース
・Instructorコース
http://www.apneatotal.com/courses/freediver/
基本的には座学やプールを含めたスクール形式のコースがメインで、どれも数日間みっちりと行います。私のように数日だけ単発トレーニングをしたい、という人はあまりいないようでしたが、リクエスト次第で「自主練」「単発コーチング」なども可能です。
私の場合は「Apnea academy Instructor」のカードが十分なスキルの証明になり、Master Freediverの自習生と一緒のロープで練習をさせて貰えることになりました。フリーダイビングはスキューバのように資格がなくても出来ますが、やはりこういう時には世界標準の認定基準は必要だし、便利だと思います。
フリーダイビングの基本とリスクを理解していて、レスキュースキルがあること。これがわかると世界中どこでも、安心して一緒に練習することが出来る仲間と見なしてもらえます。医師の英文診断書とカードは世界中必携ですね!(もちろんカードがなくても経験やスキルが証明出来ればokだし、カードだけあれば良いと言うわけではありませんが)
トレーニングは目の前のビーチの沖合で行います。ここはいわゆる「どん深」地形ではないので、小舟で数分、泳いで数十分のところでようやく20m〜30mの深度が取れます。海況が良ければさらに遠出をして、50m〜70mの深度が取れるようですが、そこまで行くことは稀だそう。ディープダイブ向けの場所とは言えません。ただ、水温が年間通して28-29℃ととても暖かく、レンタル機材や船の設備が整っているので初心者には最適ですし、私のような経験者が冬の間暖かい海で軽い基礎練習をする場所としては丁度良いところ、と言えます。
ただし。私の滞在中は、当初から予測はしていたことですが、海況がとても悪く・・海が荒れて練習船が出ないという日すらありました。
これは沖合の練習場所から岸への道中。沖合の海は荒れていても岸近くはサンゴと魚の数がすごい!
この水中が見たくて、私は帰り道はいつも何人かと一緒に泳いで岸に戻っていました。(ただし、タクシーボートが運航しているので、単独でのスイムはおススメしません)
こちらが練習船。
http://www.apneatotal.com/headquarters/freediving-boat/
この船はフリーダイビングの機材が全部積んであります。ロープも簡単に降ろすことが出来、魚探も完備。まさにフリーダイビング専用船!
ニャンコを囲んでノンビリ世間話のNathanとKane。おいおい、、練習は?・・と呼びに行くと副鼻腔のスクイズについてマニアックトークをしていました。みんなマイペース。
私はmax深度-25m程度を繰り返し潜り、じっくり良い練習が出来ました。
透明度は激悪でした。ぼんやりと映っているのはフリーダイビングでも最も大切なレスキューの練習。初心者も必ず行います。
これが海底。何もない砂地です。水面はワサワサ荒れていても水中は静かで下の方は透明度やや上がります。潜行すると落ち着きます。
実はかなりの「うねり」もあり。行きのフェリーほどではありませんが、半数以上が船酔い・波酔いしてました。自主練組は続々リタイアしていき、この日はスタッフのArturoにサポートしてもらい潜りました。
彼らはノルウェーから来たスキューバダイバー。寒い北欧から来ている旅行者はとても多い。彼らはこれが初めてのフリーダイビング体験とのこと。なのに土砂降りの雨が降って来ました。
いや、、土砂降りどこじゃないよ・・雨粒が・・イタいイタいイタい!!
ノルウェー、ドイツ、オーストラリア、米国、韓国、日本・・メンバーは国際色豊か。機材もウェットもフルレンタル可能なので(というか、フリーダイビングの機材など持たずに来ている人が多いので)皆おそろい。いかつい顔にオソロのウェットが何だか可愛い。
滞在中お世話になったアプネア・トータルインストラクターのSilvia(スペイン出身)、Camila(アルゼンチン出身)。短い時間だったけれど、なんだか同志、みたいな感じに!ここは創設者のMonicaの影響かスペイン系のスタッフが多く、スペイン語が飛び交っていました。私も何故かスペイン語で指示出しされていました。笑。
フリーダイバーに出会うと勝手に世界中どこでも「ただいま〜」とでも言いたくなるくらいほっとします。言語以外の「共通言語」を持った仲間が、ここでも沢山出来ました!
タオ島のサイリー・ビーチはのんびりとした素朴なリゾート。
ビーチ沿いの小道の両脇には色々なお店が並んでいます。
ダイビングショップ・マッサージ屋・食べ物屋・土産屋・タトゥー屋・ネットカフェ
ダイビングショップ・マッサージ屋・食べ物屋・土産屋・タトゥー屋・ネットカフェ
ダイビングショップ・マッサージ屋・・・・(以下同文)
そんな中に少し目立つ店構えでフリーダイビング・スクール「アプネア・トータル」があります。
入り口は窓も扉もなく、全開。大きなモニターでフリーダイビングの映像が流れています。沢山のクッションが置いてある大きなソファはつい座ってみたくなる。まるでタイマッサージやお土産屋のように気楽にフラっと入れる雰囲気です。
フロントの奥にはガラス張りのレクチャー・ルーム
ロングフィンやモノフィン、フリーダイビング用のシンプルな機材が並んでいます。
■「通りがかり」のフリーダイビング
さて、この島を訪れる人の大半はスキューバダイバーかと思いきや、長期旅行中のバックパッカーもかなりの割合を占めているように思います。あとはヒッピーなパーティ・トラベラー。特に隣のパンガン島は夜のビーチで繰り広げられる野外レイブ、フルムーンパーティで有名。彼らがついでにタオ島に立ち寄ることも多い。
つまり、昼間とてもヒマな人が多い。そして皆、滞在期間がもの凄く長い。そんな彼らが昼間フラフラと小道を歩いているうちに「フリーダイビングでもやってみるかぁ〜。ヒマだし、海綺麗だし。安いし」となるわけです。たぶん。
そしてバックパッカーやヒッピー的なものを好む人たちの志向に、フリーダイビングのナチュラルさはFitするのかも知れません。
というわけで、アプネアトータルでは、フリーダイビングを始めたきっかけが「通りがかり」だったという人も結構いるようでした。日本ではなかなか無いパターンですよね、これは。笑。
ただ、きっかけはそんなに気楽でも、いったんハマった人がとことんのめり込むこともしばしば。私が滞在中知り合った一人は当初フリーダイビングなんて知らずに、軽い気持ちで体験してみたらすっかりハマってしまい、かれこれ1ヶ月ここで本気で修行している、とのことでした。
ふらっと通りがかるとこんな映像が流れています。
■Blue Immersion
島にはもう一件、「Blue Immersion」というフリーダイビングショップがありました。ここもApneaTotal同様に、経験とスキルと健康の証明出来ればdrop in可能でした。SSI系でとてもしっかりしており、とても親切。一日くらいここでトレーニングしてみようかと思っていたのですが、今回は時間が取れずに諦めました。
きっとここからも「通りすがりのフリーダイバー」が生まれているのだと思います。
このお店の並びにはタトゥー屋、そしてオカマバー。こんなカオスな感じも、ザ・コタオ。ザ・サイリービーチなのでした。
「忙」という文字が空気中を秒速で飛び交い、歩いているだけで呼吸とともに体内に吸収されていく錯覚を覚える師走のスーパー・ビジー都市トーキョーを飛び立ち、一路向かったタイのタオ島。
バンコクから南に500kmほど離れたタイ湾に浮かぶ、飛行機も止まれない小さな島です。タイ語ではKoh Tao(コタオ)、Koh は島、Taoは亀。その形から「亀の島」と名付けられています。トーキョーとは対極、名前からしてノンビリとした響きです。日本ではあまり知られていないものの、欧米人やコアなダイバーには密かに人気がある島です。
マレー半島の反対側のプーケットやピピ島はこの時期は海況も最高でハイシーズンですが、東側のタオ島はまだ雨期を抜け切っていない。その上地形的にDeepな外洋のBlue waterは期待出来ない。あまり情報もない・・
ただ、ここには、「Apnea Total(アプネア・トータル)」というフリーダイビングのトレーニング施設があるという情報だけを頼りに。
そして「タオ(=道)」という響きに吸い寄せられるように、行って参りました。
縁もゆかりも無い亀の島へ。
■バンコク到着からタオ島へ
バンコクからタオ島へのルートは主に3通り。(1)バス+船(2)飛行機+船(3)寝台列車+船。圧倒的に安価なのは(1)のバスルート。budget travellerとして当然バスを選択したいところでしたが、スケジュールが合わずに空路を選択しました。
バンコク到着の夜は簡素なドミトリーにチェックイン、ここで数時間の仮眠を取り、早朝のドンムアン空港から国内LCCのNok Airでチュンポンへ。
Nok Air、クチバシマークがかわいく、リーズナブルなタイ国内のLCC。
飛行機の中で、夜明けを迎えました。眼下には亜熱帯の風景。
チュンポンの船着場には朝9時に到着。さあ、、ここで4時間の待機です。
強烈な波を眺め、、「船、本当に出るのだろうか・・」などと心配しながら・・
海と、空と、FREE Wifiがあれば、4時間なんてあっという間。タイではWifiに困ることは殆どありませんでした。結局海が荒れていたため、この港ではなく別の港から運河を経由してフェリーは出航することになりました。
■フェリー
高速フェリーで約2時間。竹芝から大島、みたいなイメージで楽勝な船旅を想定していました。乗る前に「酔い止めピルは飲んだか?」と乗組員に聞かれましたが、「あはは、大丈夫〜」と受け流し・・
海風の心地良い甲板へ。(それにしても欧米人ばかり・・ここはどこ?という感じ。)
最初の数十分は穏やかな運河をゆっくり走行。水は泥水のような色をしています。運河には沢山のカラフルな船があり、そこには漁師さんらしいおびただしい数の人が乗っていました。フェリーが通り過ぎるとどの船からも派手なアクションで手を振ってくれる、マストの支柱によじ上ったり。カラフルな船の上で小さくうごめく人たちは妖精みたいで、おとぎ話のような光景に思えました。
運河を抜けたとたん、楽しい船旅の様相は一変・・・
甲板から命からがら船室に入り、どこでも良いからカラダを安定させようと近くの座席に転がり込む。
そして次々に聞こえてくる、、・・船酔いによる不穏な音と立ちこめる臭気。明らかにそれは伝染し、僅かな時間に、さっきまであれほど元気だった欧米の旅行者たちが次々と倒れていきました。。
まさに悪夢のような光景。
タイ人の乗組員はそんな中をひょいひょいと歩き回り、「使用済エチケット袋」を回収して新しいものと交換しています。船酔い耐性は強い筈の私ですが、さすがにこの「酔いの伝染力」には太刀打ち出来そうも無く、激しく傾く船内で何とか真鶴のエリさん直伝の「酔い止めバンド」を腕に装着。そして「万一の事態」(酔いよりむしろこちらのほうがシビアに怖かった・・)に備え「非常出口と救命器具の装着方法」を必死で探し頭にinput。その後は音と臭気をシャットアウトすべく、イヤホンで音楽を聞き耳を塞ぎ、目をとじ、マスクをし・・そして瞑想。。。
ひたすら瞑想・・
ナニも聞こえない、、ナニも見えない
peace mind……
明らかに心拍が下がり、やがて時間の感覚がなくなり・・・・
ん??これってStatic(息堪え)?フリーダイビングの技術ってこんな時に役立つんだなあ・・などと思いながら。
は、と我に帰ると、タオ島の港メーハートに到着していました。。船の床は汚れ、溌剌と元気だった旅行者たちはげっそりと憔悴し、でも何故かこの航海を乗り切った達成感と連帯感のようなものを感じながら、タオ島の地面を踏みしめたのでした。私は遥々トーキョーから航海してきたような気分で、心の底から思いました。
地面って素晴らしい!
これはメーハートの港。雑然と賑やか。ちなみにこの後さらに海は荒れ、夜の船は欠航したようです・・
■サイリー・ビーチ
ともあれ。無事にApneaTotalは見つかり、そしてすぐ近くのリーズナブルで居心地の良いバンガローに落ち着くことが出来ました。booking.comにもagodaにも全然出ていなかった。目で見て足で歩くことも大切です。
サイリービーチの夕暮れ。
ここは、初めて来た場所には全く思えません。何だか、葉山の一色海岸でまったりビールを飲んでいた数ヶ月前の「夏」を巻戻ししたような感じ。もう夏も終わりに近づいているような雰囲気。エンドレス・サマーという言葉がぴったりです。
年の終わりから、夏の終わりへ。旅は場所だけでなくて季節まで移動するのですから、あのくらいの荒波は仕方なかったかな?
でも船酔いはゴメンです。SINGHAで酔うのは素敵です。マイペンライ♪
※タオ島のハイシーズンは2月〜10月、この頃はとても海況は安定するようです。
2014年も沢山の海で、多くの時間を過ごしました。
一緒に過ごしてくれた仲間に、そして新たに出会った人たちに、心から感謝します。
このブログでもサルディーニャやバハマのVerticalBlueなどの世界のフリーダイビング大会についてお伝えして来ましたが、2014年は世界を舞台に日本のフリーダイバーが大いに活躍した一年でした!
また国内でフリーダイビングがメディアで取り上げられることも多くなりました。新しくフリーダイビングを始めたい、という人も増えて来ており、私が主催するリトルブルーにも沢山の問合せを頂いています。
何より嬉しいのは「フリーダイビングをやっています」と言うと「あ、あのロープで潜るやつですね」と通じることが多くなって来たことです!もちろん今でも、、「スカイダイビング」や「スキューバダイビング」との違いを延々説明するシチュエーションも多々ありますが・・
それから、今年は私自身もBRUTUS×DESCENTEコラボサイト「カラダにいい100のこと」で記事に取り上げて頂きました。インタビューを頂く中で、改めて自分とフリーダイビングの関わりについて考えることが出来たことに、とても感謝しています。
実は私自身は今年は選手として海外大会に出るような活動もなく、ちょっと小休止・・の予定でした。でも何故か海に「そうはさせませんよ!」と言われてしまったようなかたちで、これまでとは少し違った形で、ますます深く海と関わることになりました。
ひとつはインストラクター活動。
もうひとつは大会の実行委員長。
どちらも未熟で試行錯誤でしたが・・自分のために潜る海とは、少し違う海が見えるようになった気がします。海と仲間と自分、その繋がりをますます強く感じることになりました。そして「安全」ということについて、これまでとは比べ物にならない重さを感じるようになりました。自己ベスト深度を更新したわけではないけれど、海との関係がとても深くなった、そんな感じがしています。
私が今年潜った海は、主に葉山、真鶴。あとは、、西伊豆、八丈島、御蔵島、釜石、知床、沖縄、日本海、タオ島。あ、けっこう色々潜ってますね^^;
青、緑、灰色、透明な日、濁っている日、凪いでいる日、荒れている日・・海には本当に沢山の表情があります。一日として、同じ海はないのに、全部が繋がっていて、いつでもそこにあります。
嬉しい時も悲しい時も、途方にくれた時も、
海はいつも果てしない癒しとパワーを与えてくれます。
No Ocean, No life
今や完全に海は自分の人生の一部です。
来年はまた新たな挑戦をしたいと思っています。
2014年の海と仲間に感謝を込めて。
そして2015年が素晴らしい一年になりますように!
私が尊敬するフリーダイバー、そして大好きな友人である”みみずん”こと
岡本美鈴選手が、先日バハマで開催されたVertiacal Blue2014で-91mを潜り、日本記録を更新しました!
これは世界でも歴代第三位という快挙です。男子選手ですら難しい91mという大深度を達成する、これは本当に生半可ではありません。
90mは10気圧。この地上の10倍もの圧力がかかる世界。パンパンに空気の入ったカチカチのサッカーボール(全力で押しつぶそうと思ってもびくともしない)が、クシャクシャにしたティッシュペーパーみたいに小さく潰れてしまう深度です。
そんな深度を達成してしまう女性はどんな人なのか?というと・・・
人間離れした記録を達成しているのに、とっても人間くさい人!
常に感謝を忘れない。謙虚。努力家。良く笑いそしてよく泣く。(かつては泣き虫で”Crying Queen”と呼ばれていたことも^^;)自分のことにも人のことにも真剣。
そして、何より私が彼女の一番尊敬する点は
「良いことも悪いことも、真摯に受け止める」
ところです。
私は彼女と、世界大会で金メダルを取った最高の瞬間を共にしたこともありますが、最悪に近い事故の瞬間も共にしたことがあります。私にとって思い出深いのは、むしろ後者です。そんな時の彼女を見ると、何故そんな深海に挑める強さがあるのか、わかる気がするのです。
そんな彼女に、夏から先月のバハマ大会までの競技活動を密着取材したNHKのドキュメンタリー番組『アスリートの魂』が12/27、放送されました。
あいにく私は海外にいて見逃してしまったのですが、再放送の予定があります。
まだ見てない方、ぜひご覧ください!
【再放送予定】
①BS1 =2015年01月06日(火)pm17時~
②NHK総合=2015年01月08日→7日の深夜1時半~
http://www.nhk.or.jp/tamashii/
ちなみに、昨年達成した-90mの様子はこちらです
彼女の泳ぎの美しさは世界でもピカイチの定評があり、本当に人魚のようです。
-91m達成の様子は是非番組でご覧下さいね!(私も早く見たい!)
photo by Den CG.
11月の半ばを過ぎると、年末に向かって一気にクリスマス・年末モードですね。もう夏なんて遥か昔、忘却の彼方のような。そして海という場所を忘れそうになっている人も多いのでは・・?
私も濡れたウエットスーツとギョサンの代わりに、そろそろ陸(オカ)に上がって暖かいコートとブーツで街を闊歩しようか〜・・という誘惑にかられることもあるのですが、この時期の、ひっそりとした海の魅力はそれを遥かに凌駕しているのです。
広いビーチを独り占め!するこの感じ^^
夏の「さあ海だ!」というワクワク感が、「大トロ」とか「カルビ」みたいな王道的なわかりやすい美味しさだとすると、冬の海は「酒盗」とか「ジビエ」とかちょっと通好みな感じですかねえ。(食べ物の例えでスミマセン・・)
同じ場所でもこの時期は人も少なく、透明度も増して、そして思わぬ大群や大物に出会うことも出来ます。
■三浦半島の南諸磯海岸。夏はキャンプや海水浴客で賑わう場所ですがこの時期は「秘境」のような場所になります。まるでどこかの南の島のようです。水温は18℃ですけれど・・
■これは葉山の小磯。夏はたくさんの海の家でとても賑やかで楽しい場所ですが、冬はひっそり、のんびりとして、時には信じられないほど青い世界が広がります。
■真鶴・岩。11月の最後のトレーニングの帰りに、なんとマンボウに出会うことができました!
■これは西伊豆・井田でのトレーニング。海の中から紅葉に染まった山を眺め、帰り道のこんなタカベの大群に囲まれると、寒さを忘れます!
スキューバダイビングと異なりスキンダイビングやフリーダイビングはドライスーツを着ません。だんだんと冷たくなる水温を肌で感じます。そしてトレーニングの後の温泉や、暖かい飲み物の美味しさ、太陽の暖かさをひときわ嬉しく感じるのもこの季節の醍醐味。
大分早くなった日の入り。夕陽が沈んだ後、じわじわと空が染まり行くマジックアワー。ハイライトの「日の入り」が終った後にじーっと残っている人だけが見られる特別な、ちょっとツウな時間。
日本、だけでなく北半球のフリーダイバーはほぼオフシーズンに入りますが、夏とは違う魅力を持つ冬の海。潜らないなんて勿体ない!
寒さに負けない心と身体、そして万全の装備と、・・・忘れちゃいけないホットジェルを持って冬の海へGO!
photo 2014.11 @moroiso, hayama,manazuru,ita
photo by Masayo yoshida, yuki muto
バハマ・ロングアイランドのDeans blue holeにて、
世界中のトップ・フリーダイバーが集結する大会
VerticalBlue2014が11/27(木)から始まりました!
日本からは人魚ジャパンの岡本美鈴、福田朋夏、廣瀬花子選手始めトップ選手も多く参加しています。
毎年、この地で開催されるVertical BlueはDean’s Blue Holeという巨大な池の様な穴で開催されるため、年間を通して安定した環境で競技を行うことが可能です。既に大会3日目にして、各国でナショナルレコードが続出しています!
Vertical Blueについて(昨年VB2013年の記事)http://www.junkstage.com/yukimuto/?p=2646
さて、今回のVB日本選手に関してはCNF(コンスタント・ノーフィン:フィンを使わずに深く潜る競技)で既に男女とも日本記録が更新されています。
・各種目でアジア記録を保有し、日本人唯一の100m超えダイバーでもある
篠宮龍三選手が日本記録-65mを達成!
・期待のホープ、海洋競技はデビュー公式戦となる、大型ホープの
木下 紗由里選手が日本記録-53mを達成!
関連記事はこちら
Vertical Blue 2014 Update – 10 National Records in 2 Days
https://www.deeperblue.com/vertical-blue-2014-update-10-national-records-2-days/
昨年のVerticalblueは大会開催期間中の事故により残念ながら中止となりました。
フリーダイビングは、人体の限界に挑む過酷な競技ですが、決して命をかけてはいけないスポーツです。深い海の中、たったひとりで自分自身の心と身体に向き合い、そしてその先の何かを選手の一人一人がつかんで、水面に持ち帰って来ます。
まだ大会ははじまったばかり。今後の選手の活躍を日本から応援します!そして選手全員が安全で満足なdiveが出来るように、心から祈っています。
みんなの笑顔&ホワイトを願って、日本からエールを送ります!
<大会公式info>
■Verticalblue2014公式サイト(リアルタイム経過報告)
http://2014.verticalblue.net/results/?action=days
■Verticalblue2014 Facebook
https://www.facebook.com/verticalblue?fref=ts
いよいよ今週末、毎年恒例の東京フリーダイビング倶楽部主催の記録会、第15回目「真鶴フリーダイビング・クラシック」開催です。
毎年恒例のこの記録会は、一年のしめくくりとして、そのシーズンの練習の成果を記録しよう、という主旨で開催されます。今大会の最大深度は-95m。真鶴・尻掛沖の100mの地点でアンカリングして競技を行います。
日本のトップ選手から初心者まで、そしてTFCメンバーだけでなく、八丈島、小笠原、関西、と色々な地域からのフリーダイバーが大集合します!
海上セッティングは「世界大会仕様」です。
この時期の真鶴、水温は21-22℃まで下がりますが、透明度は時に-20m以上にもなります!
今年は新型ボトムカメラが登場。そしてプロカメラマンに水中で写真・映像を撮影いただけるので、とても楽しみです。
今年の記録会では、私は実行委員長を任命され奮闘しています・・私よりもベテランメンバーに助けられ、真鶴の皆さんに助けられながら。。真夜中にメールが飛び交いskype 会議したりと大変ながらワクワク準備を進めています。
今年の3大コンセプト
1)ともかく安全第一!
⇒フリーダイビングのリスクを熟知した医療スタッフが陸上にもスタンバイして安全管理を徹底。
2)地元真鶴のみなさんともっと身近に交流!
⇒岩のロッキーマリンさんからは初めて&念願の「見学船」を出していただくことに!そして観光協会から、地元広報誌にも掲載頂きます!記録会後の懇親会には真鶴町の皆さんに参加頂きます^^
http://ameblo.jp/rocky-marine/entry-11944269164.html
(ロッキーマリン島田えりさんのブログ。見学船のテスト出航の様子です。実際にはもっと大きな船を出して頂く予定)
3)みんなで潜って、みんなで運営
⇒運営委員会メンバーも潜ります!私も2日目には潜りますよ!
先週末にはロープ計測も終えて準備万端!
週末のお天気は少し心配ですが、あとは海にゆだねるばかり。
みんなのホワイトカード、笑顔を楽しみに、行ってきます^^)
東京フリーダイビング倶楽部
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