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今年も行って参りました、流氷フリーダイビング。
フィンを背負って、ビキニを鞄に詰め込んで、
ユネスコ世界自然遺産登録10周年を迎える
極寒の地、北海道知床半島斜里町ウトロへ!
流氷をウェットスーツで素潜りするというエキセントリックな「流氷フリーダイビング」ですが、早いもので今年で3回目となりました。(2013年、2014年の様子はこちら)
フリーダイバーの中でも選りすぐりのモノ好きが集って仲間うちでひっそりとはじめたこの企画。究極の過酷なチャレンジです。今年は参加メンバーも増えましたが、地元の皆様に多大なる協力を頂きながら、これまで以上に入念な準備と徹底した安全管理体制の元に実施しました。また身体のコンディション作りも大切。このために冬の海でトレーニングを積んだり、数ヶ月かけてしっかり「身体を作り込んだ」(=体脂肪を増やした)選手も^^; どうぞこの先は真似したいなどと決して思わず「へぇーよくやるな・・」と呆れながら読んで下さいませ。
■流氷はどこへ?
さて、豊かでダイナミックな大自然に溢れるこの地には、毎年冬には遥かオホーツク海の北からやってくる流氷も見所のひとつです。が・・今年は少し様相が異なっていました。
流氷が・・・ほとんど無かったのです。
↓今年の様子。
毎年、この場所から見えた海は、「大海原」ではなく真っ白な「大平原」でした。波の音などなく、コチコチに固まり、しん、と静まりかえっていました。
ところが今年は、暖冬の影響か流氷が固まらず、耳を澄ますと「ゴォー」っというかすかな轟音が聞こえてきます。目をこらすと、氷を乗せたシャーベット上の海が、ウネウネとうごめいています。まるで生き物のように。そして海の様子は刻々と変わります。
こんな状態でどうやって潜ろうか・・・。本当はこんな風にがっちり凍った氷の上に穴を空けたいのですが
・・今年はこのありさま。シャーベット上の氷では足場を確保しようにも、流氷が動いてしまったり、柔らか過ぎて危険です。なにしろ、出口がいつのまにか塞がれてしまうことにもなりかねません。
安全に潜れる場所を探すためにドライスーツを来て流氷の様子を探索したり
それでも結局刻々と流氷の様子は変わってしまい・・・うーん、どうしようか。
そして迎えた大会当日。安全性も考慮し、漁港の中に浮かぶ大きな氷を係留して潜る場所を設置しました。
水深は5-6mと浅かったので、例年行っていた「コンスタント・ウェイト(垂直に潜る)」は中止し「ダイナミック(水平に泳ぐ)」種目だけの開催となりました。
これは知床観光協会の方が港から撮影してわかりやすく解説をつけてくれた画像です。氷の下の並行潜水は途中で浮上することが出来ないため、ショートコースとロングコースを設け、無理ない距離を潜れるようにしました。
また昨年のヒヤリハット経験から、ラニヤードは使わず、ロープに手を添えて潜ることになりました。
今回スタートとゴール地点には氷と氷の間が塞がらないように、地元の漁師さんたちの知恵で、こんな木枠を設置しました。
水中はほの暗く、おおきなヒトデがいました。そして見上げると
空に浮かぶ雲・・ではなくて、海に浮かぶ、氷。
一瞬だけど、長くも感じる時間。ゴールの木枠が氷の海にぽっかり浮かぶ、窓枠のように見えました。
アイムOK!のサイン。満面の笑顔・・がこわばっています、若干。
なにしろ、水温は-1℃。正真正銘、氷点下ですからね・・。直接海水と接触する顔は冷たいを通り越してピリピリと痛みを感じる程です。
体が冷えすぎないように、氷から上がったら暖かい豚汁。至福の時ですね。こんな準備も3年目の経験値ならでは、なのです。
ともあれ、こうして無事に大会は終了しました!
そして、氷上人文字でウトロに感謝を込めて!
浴衣姿で、感謝を込めて・・
■減少する流氷
オホーツク海から北海道に接岸する流氷は、世界自然遺産知床の大自然を育む重要な役割を担っています。でも近年地球温暖化の影響で年々減っているそうです。今回私たちはそのことをまさに肌で感じることになりました。
勿論年によって波があり、今年がたまたま暖かかっただけで、来年はまたがっちりとした流氷が見られるかもしれません。でも長期的には減少傾向にあるそうです。季節が移り変わりと同様に、気候というものはある日を境に突然変わるものではなくて、緩やかに移り変わるものなのかもしれません。
そう思うと、ますますとても流氷が愛しいものに思えてきます。「豊かな生態系を育むオホーツクの流氷の海がこれからもずっと続くように」そう願わずにいられません。
氷、海、雲、雪。
全て水が形を変えたもの。
水は様々な姿で私たちを圧倒します。そしてこの凍てついた地でほんの一瞬だけ、水に入ることで、自分の存在はとても小さく、でもこの大きな自然の一部だと、確かに感じることが出来るのです。
Photo by
Tomohiro Noguchi, Jay Hung, Shuji Hosoda,
Yui Takagi, Hiroko Murakami