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2014/02/28

こんにちは。根本齒科室の根本です。

前回の禁煙の話から随分と間が空いてしまい、申し訳ありません。2月には、ちょっと公言できないようないろいろなインシデントがありました。日時も通常の何倍もの速さで駆け抜けていくありさまで、ちょっとコラムどころではありませんでした。

時数も大幅に減少していますが・・・むしろこのくらいの方が読みやすいか?!

さて、禁煙の話ですが、「『改革』で失敗」して「『改善』で成功」でしたね。
これは、根本的にはどういうことを言いたかったのか?

ところで、「●●改革」と聞くと、なにか新しいこと、良いことのような気がしませんか?
私もずっとそう思っていましたが、じつは、あまり感心しない言葉であることを、最近知りました。

私たちは、ずっと「改革」という言葉を、「改善」のような身近なニュアンスで考えていたと思うんです。
だからこそ、その辺の違いをはっきり認識した方がいいのかな、と思います。

この辺を院内新聞にも書いてみました。

最初は、「勝つ」と「強い」は、どう違うのだろう?という点をいろいろ考えていました。
「勝つ」と「強い」の違いは、その前の号の院内新聞で書いてみました。

たまたま同時期に、ネットのブログやツイッターなどで藤井聡内閣官房参与とか、渡邉哲也先生が、同じように「『改革』ではなくて『改善』」と言い出しました。

(だいたい方向性の似ているこの2人が同じことを言いだした。何かのヒントがあるだろう)

「勝つ」と「強い」の違いと、「改革」と「改善」の違いに、何か共通点はないだろうか?

基本的に、同じ単語に対して全員が同じ解釈を行うかどうかは大きな疑問ですが、
私は私なりに、こんな解釈をしてみました。


◆ 改善~PDCA

可逆的である。
 自分自身で主体的にさじ加減をコントロールできます。

フィードバックがある。
 やってみて、ダメなら戻ってみることができます。

既存の枠組みを嫌わない
 枠組みを使い勝手が良いものにすることが改善の趣旨です。
 日本の伝統的な得意技でもあります。
 生活に根ざした現在地・居住地に軸足を置いた取り組みです。

合意形成が重要

 実際にPDCAを回す現場の意見が重視される。
 ボトムアップ的な側面が強い

ネット的な社会になじむ

 情報が相互的
 情報源が複数・自由
 情報源が無料(接続料くらいは払いましょう)
 情報源が多数で、操作しにくい

◆ 改革~「皮」の毛をムシってなめすことが「革」

一方通行

 自分自身で主体的にさじ加減をコントロールできません。
  TPPのラチェット条項や秘密主義に典型的
  アメリカ的な考え~条約は国内法に優先する原則を悪用

フィードックがない

 「改革を止めるな」という言葉に端的です。盲目的。
 ⇒「革命を止めるな(=粛清)」の共産圏と根が同じ。原理主義・設計主義

既存の枠組みを嫌う~原則的になくせばいいと思う
 グローバル企業の商売の邪魔だから、というところがスタートです。
 国家の枠組みを嫌う発想
  大航海時代~第二次大戦で逆戻り(アジア・アフリカの独立)~冷戦後に進展
  意図的に国家を避けて軸足を置きたがる
   国家より小さいもの(道州等)
   国家より大きいもの(TPP等)に 
   オフショア(ケイマン諸島・マン島など租税回避)推進

抵抗勢力叩き、スケープゴート探しにつながる
 スケープゴート探しは「いじめ」との共通点が大きい
 ルサンチマンや怨念を抱えやすい

周知徹底が重要
 
 上意下達の方向性が「風」と称して重視される。トップダウン的な側面が強い
 それが財務省や(財務省やCIAの息のかかった)マスコミの方向性が主だったりする

既存メディア的な社会になじむ

 情報が一方通行
 情報源が限定(国内通信社・新聞社・TV局)
 情報源が有料(スポンサーや視聴料税を必要とする)
 情報源が少数で操作しやすい

以上が私なりの改善と改革のまとめになります。
オフショア(ケイマン諸島・マン島など租税回避)推進が出てきてしまう理由は、以前のLINE@について書いた2回(12)で述べた通りの痛々しい心証が自分の中にあるからです・・

しかし、ごちゃごちゃして分かりにくい所もありますので、院内新聞に書いた表を抜粋して掲載してみます。

絵を見ると端的ですが、私の中では、改革といえば、スケープゴートを作って叩くイメージが強いです。逆に叩いた後どうするんだ、ということは常々疑問ではありました。

ただ、藤井聡先生の「維新・改革の正体」やナオミ・クラインの「ショックドクトリン」を見た後では、国際金融資本()はこういうことをやりたいがために、いろいろな方法論や手段をもっているのかなぁ、と、少し怖くなります。

いっぽう、改善の方の私のイメージは、何と言ってもPDCAサイクルのイメージです。非常に地に足がついていて、ポイントがぶれない、あるいは修正能力が高い感じを持ってます。

すみません。今回は時間がないので、続きは次回になります。
(さすがに月コラム0はまずいので、急いでageました。)

09:16 | nemoto | 『改革』より『改善』その1:総論?概論? はコメントを受け付けていません
2014/01/30

こんにちは。根本齒科室の根本です。
あ、えー

そう。きわめて重大な事態が起こりました。『あの』根本が、禁煙に成功だって?!

今回から何回かにわたって、改革と改善の違いに着目し、歯科の中での発想に関連付けて文章を書いてみようと思ったのですが、そんなことよりもはるかにビッグなサプライズが現実に我が身に起きてしまいました。

歯科にはほとんど関係ないですが、健康には非常に意義がありますので、曲げて投稿いたします。

思い起こせば、この四半世紀、片時もタバコが口元を離れたことはありませんでした。
私なりに何回か禁煙を試みたこともあります。

<『改革』型の禁煙>

「思い切ってしがらみを断ち切って、抜本的改革にまい進して~」

1990年後半から2000年前後は、こんな恥ずかしいセリフが、テレビでも流行っていましたね。
今から見たら、「○○さえなければ」「官僚さえなければ」「既得権益さえなければ」「通達・行政指導さえなければ」みたいな感じで、
スケープゴート探しに明け暮れ、それを叩いて満足した気になっていただけでした。

それは私の煙草を見ればわかります。
「灰皿さえなければ」
「ライターさえなければ」
「タバコの箱さえなければ」
  ↓
「この1本だけwww」

などとアイテムのせいにしたりして捨てたりするなどの無意味な行動に明け暮れていました。
残りのタバコが入った箱を壁の上のほうにピンで刺して留めておいたこともあります。
いろいろ工夫して禁煙を試みるものの、一向に喫煙欲がおさまることはありません。

<『改善』型の禁煙>

そこで、改革がダメなら、改善です。

ですから今回、まず1日だけ工夫して頑張ってみることにしました。

現在のタバコは、KENTの1mgで した。
昔は6㎎くらいのを吸っていたのを1㎎まで持っていくのは割合簡単だったのですが、
1を0に持っていくので、いつもつまづいていました。

頑張りながらも、まず客観的に自分を見つめなおしてみるのも良いと、ふと思いました。

すると。私の場合ですが「行動A」と「行動B」の間、行動Cの直後、など、身近な生活の何気ない動作の合間の中に、非常に頻繁にタバコを探す瞬間があることに気がつきました。

本を読んで、読み終わって机に置いた瞬間▲スマホのメールなどをチェックして、充電台に置いた直後▲缶ビールを口にして、缶を置いた直後▲ふと感傷的な気分になった瞬間▲電話を切った直後▲駅からロータリーに出た瞬間
etc

その都度「手や」「心」がタバコを探しているのです。こんなにも頻繁に欲しくなってたのには、びっくりしました。

(何だ俺は、動物みたいだ。飼いならされた家畜というか、パブロフの犬みたいに、すぐ条件反射的に吸いたがる)

そうなんです。
これがすごくショックでした。

<ガマンしてみる>

初日は自己点検中心だから、ダメなら吸っちまえばいいや。くらいの軽い気持ちでした。
本を読んで、読み終わって机に置いた瞬間▲スマホのメールなどをチェックして、充電台に置いた直後▲缶ビールを口にして、缶を置いた直後▲ふと感傷的な気分になった瞬間▲電話を切った直後▲駅からロータリーに出た瞬間
etc

のときの自分の状況を客観的に観察することに専念しました。

・・・ううむ、切ない。手が動きそうだ!

何があったら、これを「ごまかすことができるだろうか」?

ミンティアを買ってきました。あえなく撃沈。おいしいだけでした。
禁煙パイポも買ってきました。何の役にも立ちませんでした。

やっぱり「苦い香り」「煙」を体が欲しがる癖がついているのです。

<美代子の決意~電子タバコ>

ウェルシアで、ダメもとで適当にかごに入れてみた「美代子の決意 見よ、此の決意」
それがこちらです。

(何でこんなものをかごに入れたのだろう?高いからご利益がありそうな気がしたのかな?)
恥ずかしながら、金属製のおもちゃみたいな電子タバコをしっかりと眺めたのは初めてです。

・・・ネタだよなぁ、これ。

訝りながらも、根本と胴体をネジってめます。
タバコみたいに、とりあえずくわえて、吸ってみます。

 うお~、根本と胴体のジョイント部から空気漏れがスゲー
 あれっ、苦い煙が、肺にあたるぞ!!(コレいい感じかも)

息を吐いてみます。「フ~~~~~~~~っ」

 あっ、煙が長い!!

キタ─(‘A`)y─────┛”””

やりぃ~~~~~!!

その肺の感覚に続いて、細長く吐出される煙を見た瞬間、何だかものすごく
救われた、というか、得した気持ちがしました。

その時に、もうたばこを吸った気持ちと同じ気持ちになることが出来ました。
さっきの、手がたばこを探す感覚、切なさ、などは、もうほぼなくなってお腹いっぱいな感じです。

(もしかしたら、これいけるかもしれない!!)

もちろんご案内のとおりですが、この煙の正体は香料の含まれた水蒸気であり、
たばこを吸ったのとほぼ同じような心理的効果を得ることができます。

香料ですが、日本製では、ニコチン・タールともに無配合のものしかありません。

(よし!)

もう満足していましたが、うれしくなって、電子タバコをもう1回吸ってみました。
結構ガツンと肺に来る感覚と、細く長く伸びる苦い「煙()」。

(コイツがいれば、大丈夫かもしない!)

そしてその日1日耐えました。


電子タバコは1日もたずになくなりました。

次の朝は、うれしかったですね!!
ほとんどなくなった電子タバコを強引に吸い込み、合間はミンティアで我慢し、
昼休みになったら、またウェルシアにダッシュして、電子タバコ2本目を買ってきました。

2本目はやはり、煙も格段に多く、香りや苦味もしっかりしている。

安心しました。

<ふたたび、自己観察>

本を読んで、読み終わって机に置いた瞬間▲スマホのメールなどをチェックして、充電台に置いた直後▲缶ビールを口にして、缶を置いた直後▲ふと感傷的な気分になった瞬間▲電話を切った直後▲駅からロータリーに出た瞬間
etc

などになっても、もう安心です。
いざとなったら、電子タバコがあるから心を落ち着けることができます。

その日が終わって、よく振り返ってみました。
本を読んで、読み(中略)etc

のときなどに、切なくなる頻度が明らかに減少しているのです。

ちなみに、今日の段階で、まだ禁煙4日目ですので、全く偉そうなことは言えません。
しかし、明らかに変わってきました。

◆ ほとんど切なくなくなる

(あっ、そういえば昔の俺は、ここでたばこを探したくなってたな)

そんな過去形な感覚が増えてきました。
若干切なく感じる時もありますが、そんなときは3回に1回程度電子タバコで煙と苦味を見てしまえばすぐに満足できるようになりました。

そして最近は、電子タバコを出すまでもなくミンティアでしのげることも増えてきました。

◆ 無駄の多さに気がつく

今までは、たばこを切らせないために、買い物の時にはいつも非常に気にしていました。
たとえば、スーパーには自分のほしいタバコがなく、セブンとファミマにしかないので
必ず立ち寄るようにしていたとか。

そして買い物の際のレジでの会計額が、明らかに減少した実感があります。

29日は休診日(水曜)だったのですが、父の見舞いがてら三島に行きました。
いつもは新幹線こだま号の喫煙自由席である15号車にしか乗れませんでした。

今回は、3号車にも乗ることができます。
ご覧ください。三島駅からの富士の眺めも、禁煙前よりも一層澄んで見えますよねw

<成功の要因>

いろいろ考えてみたのですが、やはり自分の中でも大きかったのが

 ◇ 習慣的(心理的)依存の度合いが強かった

 ◇ 煙の疑似体験が、心理的依存の解消に大いに役立った

の2点だと思います。
もちろん肉体的(ニコチン)依存による離脱症状の辛さもあったと思いますが、ほとんどそれにとらわれずに、従来の方法と視点を変えて「行動」による変革に力を集中できたことがよかったのではないかと思います。

この、視点を変える、というところが、『改革』じゃなくて、『改善』のミソなのです。

また、1mgまで持って行っていたので、肉体的(ニコチン)依存による離脱症状の辛さは、思った程ではなかったように思います。
残る習慣的(心理的)依存を電子タバコでうまくあしらって、徐々に頻度も下げていくことが今のところできています。

そしてなによりも

◇ 周囲の身内の人間の爆発的な喜び

が大きいですね!!見舞ったはずの父を始めとして、母や親戚のおばなどに、本当に喜ばれました。あの弾けるような笑顔を見たら、もう裏切ることはできません。

以上、まだ4日しかたっていない禁煙ですが、ものすごい手応えを感じています。
それもこれも、『改革』ではなくて『改善』の威力が功を奏したからです。

その話については、次回以降、いくつかに分けてお話していきます。

【今回のまとめ】

禁煙もラクラク!『改革』ではない『改善』のすさまじい威力の秘密は?!次号にご期待w

04:18 | nemoto | 『改革』より『改善』その0:禁煙編 はコメントを受け付けていません
2014/01/09

こんにちは。根本齒科室の根本です。

遅くなりましたが、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

靖国の方は、昨年末の帰省前に、少し立ち寄って参拝したものです。
安倍さんが参拝したら案外高評価だったようで、せっかくなのでお邪魔したのですが、年末の夕刻ということもあり、割合すいていました。
小学校のとき以来で、久しぶりだったのですが、細長い敷地と参道、厳かな雰囲気が印象的でした。

実際の初詣はこちら行ってきました。

ウチらのホーム伊豆一ノ宮、三嶋大社です。三嶋大社といえば、「鹿」「ハト」「鯉」です。

しかし、三嶋大社は、混雑を避けるために2日目の午後にしたにもかかわらず、例年にない人出で、参りました。。
去年の元旦の昼よりも整理員の数が多いのですから、すごいもんです。
(後で見たところでは、靖国の方の初詣は例年の8倍の人出、神社はどこも大混雑だったそうで・・)
進まない行列進まない鉄道は、いつになってもウザイものです。

そう、有楽町の火災で新幹線が止まった件ですが、たまたま弟は1日早く、私は1日遅く出発して、幸運にも避けることができました。

ところで、私は朝にシャワーを浴びる派です。
洗髪の時間がけっこうもどかしいのですが、最近新技を開発しました。

◆ 歯ブラシ~後で書きます。

◆ シャンプー

私は朝シャワーを浴びます。順番は、だいたい頭⇒体⇒顔⇒髭そり、の順番です。
普通シャンプーは、適量を先ず手のひらにとって頭髪に塗り込み、そのあと一生懸命指で揉み洗いしますね。それが終わるとすすぎます。

このもみ洗いで2分くらいかかります。すすぎで1分くらいかかります。

ところが、この時間を一気に短縮できるのが、この『プラーミア クリアスパフォーム(ミルボン)』です。

使用し始めたきっかけは、担当の美容師さんのすすめがあったことです。
独自に編み出した使用法ですが、手のひらに(一般的な男性なら)ピンポンボール大の泡を取り、軽く地肌に触れるように塗り込みます。
すると、垂れてこないので、そのまま何分でも放置することができます。目もしみません。
その間に体を洗ってしまい、ボディーソープを流すときに、「頭から」流してしまうのです。
そうすると、トータル3分程度の節約になります。寝坊したときなどに重宝しています。
男子の朝の1分1秒は、非常に貴重なのです・・

製品本来の意義や使用法とは全く異なりますが、ふとした弾みに応用法を「開発」しました。
何でも、炭酸の封入技術が企業秘密らしく、最低むこう1年は他社から類似商品が出ないだろうと、美容師さんも言っていました。
(ただ、毎日コレではなくて、普段はしっかり地肌をマッサージするシャンプーのほうがいいと思いますが)

◆ 治療部位の形態

治療のことも書いておかないといけません。

治療で難儀するのは、もちろん時間がかかるパターンのときです。
それはたいていの場合、『道具が入りにくい場所』と同じ意味です。

道具が入りにくいということは、同様に、いやそれ以上に、歯ブラシが入りにくいことを意味します。まとめると

  むし歯や歯周病になりやすい ← 道具が入りにくい → 治療しにくい

まあ、当然といえば当然なのですが。
だからこそ、自分の弱点はちょっと意識したり努力したりして、カバーしておかなければいけないのですが・・

◇ 口腔前庭とSPEE(スピー)の彎曲

具体的に、治療の道具が入りにくいパターンですが、

 口腔前庭が浅い~口角から歯が遠い
 SPEE(スピー)が強い~奥が見えにくい

この2パターンが代表的です。

口腔前庭とは、簡単に言うと頬袋のヘリの部分のことです。
この図は、左右の面で切ったCTの断面ですが、これで言うところの、水色や黄色の線がいわゆる頬袋だと思ってください。
黄色のほうが内壁のヘリが短く、頬袋が狭くみえます。

このヘリが短いことを「口腔前庭が浅い」と表現します。
ここが浅いと、じつは口角が伸びにくく、「口角から奥歯が遠い」状態になりがちです。

実際に治療時にドリルなど道具を口に入れてみると「遠い」ので、我々には一目瞭然です。

ただ、自分自身では気がつきにくいと思いますので、「遠め」の人にはその旨指摘して、歯ブラシを少し長めに持つなどして、十分に奥歯も気をつけるようにアドバイスしています。

SPEEというのは、初めて聞く人も多いのではないでしょうか。
簡単に言うと、人間の歯ならびのバランスが崩れていく過程において、横から見た感じで、青線のような平行に近い状態から、赤線のような下にたれた彎曲に移行しやすい傾向があります。

その歯列に現れている兆候(=彎曲)のことをSPEEと呼びます。

平行なのがいいとか、ごくごくゆるいカーブ(半径10センチ程度)がいいとか諸説ありますが、この写真のようにグッと曲がっているのが良いという説はもちろんありません。

一般的には、この赤線のように強く彎曲していると、上顎では、直線的な歯列に比べて、後ろ2本くらいが「その手前の歯」の陰に隠れて極端に汚れやすくなり、下顎では、内側の奥歯の生え際が極端に汚れやすくなります。

このことも、該当する患者様にはアドバイス申し上げています。

また、一般に歯はなるべく削らないほうがいいのですし、私も極力そのように心がけていますが、このSPEEの彎曲の解消(赤線⇒青線化)のを目的とする場合だけは積極的に削ったり、ときには便宜抜髄も止むなし、とするしかないと考えています。

◆ 治療道具

しかしうちも保険医療機関であり広く薄く保険料をいただいている以上、広く薄く治療の『効率』を求める面があるのも当然であります。

往々にして歯科の治療は、自然の摂理に反する状況を作り出すことが大事だったりします。

たとえば、接着するときは歯面を乾燥させないといけないのですが、唾液が多いのは健康の証だったりします。
また、口を大きく開けっぱなしというのも、治療では当たり前ですが、哺乳類の動物としての性質からも、顎関節の構造からも、まったく非合理的な姿勢であり、かつ無防備な状態でもあります。

一事が万事この調子です。

◇ 5倍速(電気モーター)ハンドピース

「キュイ~ン」歯医者といえば何と言ってもこの音でしょう。
ところが最近は、この音がしないドリルがあるのです。

歯を削るドリルが「キュイ~ン」と鳴るのは、空気圧で羽根車を回して回転させているからです。タービンとか、ターボとか呼ばれるモノ全般と同じ原理です。

1分間に30万回転くらいします。ドリルの直径2ミリ、円周6ミリ(←ゆとり)とすると、
30万×6÷1000÷60≒30[m/s] 時速108キロ!!
速いですねぇ~

音のしない方のドリルは、電気モーターで回しているので、どちらかというと「ウイ~ン」でしょうか。1分間に『最大で』4万回転くらいします。だいたいケタ1~2つくらい遅いです。
そのかわり、羽根車とは比べ物にならないくらいのトルクが出ます。そうすると

 手が楽
 細かい形に削りやすい
 除去が早い・バーを傷めにくい

などの点でだいぶ有利です。

「除去」というのは、金属製の修復物を外していく操作です。金属(ドリル)で金属(製の修復物)を削っていくのでかなり切削力が必要で、振動・騒音も大きくなりがちです。

◇ ハイブリッドセラミック・コンポジットレジン

最近は割りと一般的になってきました。
小~中規模の充填物については、以前のように型を取って次回装着するのではなく、その場で特殊なペーストに紫外線を当てて、固めて詰めてしまいます。すると

 1回で終わる

ので患者様は楽です。
ただ、紫外線を当てて固めるときに、少し縮む性質があります。ですので、一気に詰めて一気に固めようとすると、隙間ができやすいのです。
ですから、「積層充填」といって、少しづつ何回かに分けて充填して、隙間ができないようにします。

◇ セクショナルマトリックス

歯と歯の接点は、円筒面や円錐面のような、断面で直線が作れるような形態ではありません。
断面に直線が現れない、3次元的な球面構造です。

そこで、既製品ですが、先ほどのペーストを充填するときに自動的に球面になるようにする仕切り版を使用すると、きれいな球面が作成できます。

じつはこの接点回復操作は、ハイブリッドセラミック・コンポジットレジンの充填操作の中でもっともテクニックセンシティブな部分のひとつでもあります。

◇ 3Mスコッチボンドユニバーサルアドヒーシブ

先ほどのようにむし歯をつめるときは、詰める内面の表面を専用の処理剤で処理する必要があります。
処理剤には、ここのメーカーのを使っています。


耳栓は、関係ありません・・・はい。

この黄色の液体を塗って紫外線を当ててからペーストを充填すると歯面に緊密かつ強固に接着します。
しかし、裏面なども含めて均一にムラなく塗るのが難しく、かなりデリケートな操作です。簡単そうで難しい操作の代表例です。

最近、最後にこいつの尖端を押し曲げると手際よく均一に塗りやすいことを発見しました。
フリーエナメルやアンダーカット(下広がりのカーブ)の裏などの塗布に非常に重宝します。

◇ ロングネック

この2本のドリル(長・短)の写真を見てください。
どうでしょうか?一見、長いほうが、とり回しが悪く使いにくそうな気がしませんか?

ところが、真逆なのです。取り回しが抜群によい。むしろ短いほうが、付け根やハンドピース部分の頭が
歯に干渉して面倒です。
長い方が、懐にゆとりがある感じで、使いやすいことが多いのです。


このとおりです。

最初は私も長いから使いにくいのかと思っていましたたが、むしろ普通の治療の場合でも、長い方が使いやすいことがほとんどです。
(乳幼児や、極端に口の小さい人などの特殊な場合は別)

 口腔前庭が深い(=口角から臼歯部が遠い)人
 低いむし歯の位置にある人

などがいわゆる、治療しにくい口の形の代表例だと先に書きましたが、これらにとくに効果的です。

◆ 埋伏抜歯

親知らずの抜歯については、少し項を分けます。
親知らずの中でも、下の親知らずで、横になって埋まっているものは水平埋伏智歯と呼ばれます。
そのままでは出てこないので、まず頭(歯冠)と足(歯根)を分断して、その上で頭を除去してから足をこじって出します。
そのときに使うドリルで一般的なもので、ゼックリア(バー)というものがあります。

◇ 長いゼックリア
◇ 5倍速

ちなみにここに写っているドリルの機械は、上で書いた「5倍速(電気モーター)ハンドピース」です。

上記のロングネックと同じ理屈で、奥の方の切削操作が確実で分割が楽です。
たとえば、こんな歯を分割して抜く場合を考えてみます。ななめなので簡単そうですが・・

これ、長い方のバーがないと、確実に詰みます(orドはまり)。。

一般的には、

 内側の分割が直線状に進むか
 下側の切削が確実に行えるか

でだいぶ分割のスピードが変わってきます。
舌側のカット面がが近心によってくると、なかなか分割が進みません。

ゼックリアは折れやすいといって好まない向きもありますが、写真を見てわかるように5倍速ハンドピースを併用しています。
回転が10分の1以下なので、バーが跳ねて折れるリスクが格段に減少する面も5倍速の利点です。

◇ WT-3

一般的に抜歯で使うテコ(へーベル)は、写真の上のように、くぼみが湾曲の外側にあります。
直線状の道具もありますが、深い所に埋まった根などの場合は、これだけではうまく力が加わらないことも、ままあります。

このWT-3(YDM)は、くぼみが湾曲の『内』側にあります。

これが抜歯のときに何かと重宝。ただし万能というわけでもないです。
大学では「イケナイ」と教わったが、舌側に引っ掛けると割と簡単に抜けてくることも多い・・・のが私なりの現状だったりします。。
そんな、いざという時に便利な一品です。

◆歯ならびと歯みがき

今までは私側のお話を中心に話してきました。
一般の方が、普段歯みがきをすることを考えて見ます。

世の中には、いろいろな歯並びの人がいます。
皆様の予想や期待?!をよそに、最初に言ってしまいますが、手だけで自分の歯をまんべんなくみがくのは、絶望的に無理があります。論より証拠に

無理ですね。
この形の場合は、もう「できる範囲で」という話になります。
ケースバイケースですが、邪魔な場合は内側の歯を抜歯してしまうこともあります。

可能ですが、見てわかるとおり、歯の生え際の凹んでいるところに汚れや歯石の沈着が多く見られます。
下の前歯の裏側はもともとつきやすい場所なのですが、凹み部分により多いので、歯のみがきにくさとの関連が強く疑われます。

 

可能ですが、裏側から見て凹んでいるところが少しくすんでいるでしょう。ここにむし歯があります。
じつはこれは小さそうでしたが意外と深かったです。
左右の反対側にはなかったので、やはり歯のみがきにくさとの関連が強く疑われます。

たとえば、3番目の人がプロの指摘を受けずにそのまま歯を放置したら、たぶん数年後に朽ち果てていたでしょう。

小さな声で本当のことを言うと、このような場合には、長い目で考えると、矯正がベストなのです。保険が利かないので面倒な話に思えますが、圧倒的に歯ブラシがしやすくなり、当然ながら、圧倒的に歯の寿命が伸びるからです。

◆治療・定期健診

歯ブラシや道具が入りにくいところがあるのは、『時短』の面からも大きなマイナスです。
日頃から自分の歯ならびやかみ合わせの特徴を把握しておいて、またプロにもその辺をしっかり見てもらっておいて、メンテナンスをするのと、自己流(無手勝流?!)でいくのでは雲泥の差です。

★成人の場合は、下顎臼歯部舌側が大半。残りは上顎臼歯部隅角部でしたね。

そういうところに、普段からしっかり道具を入れる癖をつけておかないと、結構面倒です。
急にやると違和感が強かったり、「オエッ」となったりしてしまいます。
で、「や~めた」となるのが、一般的な傾向ですwww

しかし、そのままお口の中が「脆弱」な状態のままだと、たとえば治療回数でも1回で終わるところが2回になったり、治療時間が15分が30分になったり、と、いいことはありません。
この、違和感が出たり「オエッ」となりやすい部分の代表格である

◇ 舌根部

舌咽神経~自律神経(不随意神経)が支配しています。内臓と同じで、意志に反して勝手に動きます。

しかし、こういう神経の挙動は、顕在意識よりも、潜在意識の影響を強く受ける傾向にあります。
たとえば、今すぐやろうとしてもうまくいかないかもしれません。
だからといって「いやだ」とか、すぐに顕在意識の範囲で評価を下してしまうのはもったいない話です。

「いい」とか「いやだ」とかに関係なく、だまされたと思って3ヵ月程度続けてみてください。
数ヵ月意識して慣らしていけば、それが普通になる。潜在意識のいいところでもあります。

◇ 口腔前庭~広角から奥歯が遠いか近いか
◇ SPEE~奥歯が手前の歯の陰に隠れてみがきにくくないか

も意識してケアすることも大事です。
何となく、たとえば(私の場合は口角から奥歯が遠いかもしれない)と思ったら、少し長めに歯ブラシを持ってみましょう。
(一番後ろの歯が隠れてみがきにくい)と思ったら、斜めから入れたり、意識して工夫してみるのも良いと思います。

何よりも、かかりつけの先生がいたら、聞いてみるのが一番手っ取り早いと思います。

こういうちょっとした工夫を積み重ねるのとしないのでは、むし歯や歯周病の発生率も大きく変わります。

今回は、写真が多く、なかなか体裁が整わず、投稿も遅れまして失礼いたしました。
どうしても、文字だけでは確り説明できない部分が大きかったので、ご容赦ください。

【今回のまとめ】

予防もまずは自分を『だましながら』。自律神経(≒潜在意識)相手なら、習慣化が有効

11:53 | nemoto | 新年のご挨拶:『時短』を目指して はコメントを受け付けていません
2013/12/04

(今回はほとんど畑違いの内容なので、大変書きにくかった)
こんにちは。根本齒科室の根本です。

これは小鳥の名前でも、新進気鋭のピアニストの名前でもありません。
じつは私も以前、少しだけ『ピペド』的な状態だったことがあります。

結論から言うと、ピペドとは、ある特定の研究者を指すネットスラングです。

私がいわゆるピペドの一員だった1998年~2001年という時代は、バブル崩壊後の余熱に、みんながまだ酔っていたかった頃です。

そして世の中をバイオブームが席巻していた時代でした。
クローン羊とか、ヒトゲノム計画とかがもてはやされていた頃です。
今日は、歯とはほとんど関係がありませんが、そんな話を少ししてみたいと思います。

ピペドの語源は、ピペットの奴隷、とか、ピペットの土方という所から来ています。
(詳しくはこちらをご覧ください)

少し前、IT業界の劣悪な労働環境を指して、IT土方という言葉が流行ったことがありましたが、それに似ています。

<バイオブーム>

 パソコンのインターネットの黎明期。(Windows98SE)
 モバイルの主流がPHSから徐々に携帯に移行しつつある時期。
 株・土地バブル崩壊を経てなお、実社会ではバブルの余熱に浮かれていたころ。
 長銀国有化、山一破たん、住専問題や商工ローン問題。

そんな時代に、私の周りでも、確かにバイオバイオって言っていました。

あまつさえ、大学を卒業する頃には我が校にも『大学院大学何とか計画(失念)』のようなものができていました。
「今なら入れる!」「大学院生倍増中っ」みたいなことも盛んに言われていました。

大学院の2年次に、学部外の研究所に出向になったときに、早く歯医者さんしたかった自分は非常に複雑でした。(研究所で実験かよ・・・)でも、実際に研究所に行ってみると、本学、他大学を問わず、医学部や歯学部の院生が結構出向してきていました。
先輩方は「よかったな、ここで。今はバイオは花盛りだから」とか「モレキュラー(分子生物学の分子のこと)触ってないとこれからはダメだから」とか盛んに言っています。
それで、(そうなんだ・・・) と、何とか自分を抑えていたのが正直なところかもしれません。

ラボ内では、あくまでも私見ですが、かなりの精鋭の先生や先輩が多く、かっこいい感じではありました。
ラボ外でも、例えば私の出向元医局(旧第一口腔外科)では大学院生の報告会などもあるのですが、バイオとかモレキュラーやっていると一目置かれたりしていました。英語が(ある程度)読めるというだけで、後輩の院生は目を丸くしたりしていました。いいのかよ、それで。

もっとも不思議だったのは、(なぜ俺のような不相応のが院生やってられるんだ)という単純で素朴な疑問でした。親はどちらかというとあまり賛成ではなかったのを思い出しました。早く歯医者として仕事をしてほしかったのかと思われます。

結局3年間、歯科と全く関係のない実験ばかりをして過ごしたのは事実です。

「ピペド」「バイオブーム」先日この単語を見て、当時の疑問の多くが腑に落ちました。

バイオって、単なるブームだったのか!

衝撃だったのは、今日の今日まで、バイオは先端的で産業的にも有望な分野なことだと思っていたことです。
震災の時も、児玉龍彦先生が国会などで説明の引き合いに出したのも、RANK/RANKLやNF-κB、p38、p53などの、もろにバイオ系、分子生物学系の単語でした。それを見たら、私のような社会に疎い人間は、バイオは先端的で有望な分野だと思わざるを得ないですよね。

それがどうしたことか。

昨今は不採算部門の筆頭で就職率も最悪、偏差値も最低、まるで現在の歯学部みたい。
少なくとも、うちの大学でも自分の受験した平成2年でも、まだセンターの足切り6.8倍、2次試験が3.5倍(合計24倍)の倍率がありました。
今はあのころが嘘のようで、各大学で定員割れが続出の状態です。

<博物学と物理学>

「ピペド」とはそれにしてもひどい言葉だ。

博物学の系譜を引きずる生物学は原理・法則の追及や数学からは疎遠である、という指摘は、ずっとそうだとは思っていました。
博物学という単語は知らなかったけど。
〆のラーメン、じゃない、〆の統計なんて、けっこう弄りようで割とどうにでもなる?!なんて言ったら怒られてしまうけど、StatView()
確かに数学とはほぼ無縁な感じはします。

鬼のような、それこそ時には徹夜も厭わない動物実験を中心とした実験の山の日々。
修行僧的なストイシズムに裏打ちされた根拠のないプライド?!は結構満たされていたかもしれません。しかし(俺、頭使ってないなぁ)(体育会系な日々だなぁ)という疑問は、思い返してみるとたしかに感じていたと思います。

うぉ、ヤベー!当時の俺と全く同じ事やってやがる。しかも正確にwww
後はこの人(「まほろ」さん)にお願いして、俺は飯でも食いに行くかwww
って、なりますよねえ。こんなの見たら。

それにしても、かわいそうなのは、バイオブームに浮かれた現場の当事者たちです。

自分なんかは、とりあえず歯科医師免許があったから食うには困らなそう、というか、大学院を出た後も、働かないと食えないです。
「医局の好意で大学院を出してもらったんだから、少しは(無給医局員などで)お礼奉公でもしたら」とアドバイスしてくれた人もいて、それはそれで恐縮な気持ちにもなりました。

しかし実情は、全国的に大学院生を量産しすぎて、受け皿がなくて困っていたんですね。
特にバイオ。

「オーバードクター問題」「ポスドク問題」のように、博士号取得者の安定的な職がない問題もささやかれ始めていましたが、じつはその大多数はバイオ系だったようです。

院生のころの私は、畑違いだという違和感を強く持ちながらでしたが、それでも、上の好意で実験をさせてもらっている、という意識は忘れたことはなく(同時に、上の陰謀でさせられているとも思っていましたが)、自分の好意で実験をしてやってる、なんて傲慢なことは一度も思ったことはありませんでした。

もちろん院生や先生方の中には、歯科医師免許や医師免許を持たずに、その道一本という人も何人かはいました。そんな人のことは、心の底から尊敬していました。
俺には真似できない。まるで永平寺の修行僧か、陸自のレンジャー学生のようなストイシズムだ!
一を訪ねると百になって帰ってきて、「このジャーナル見とけよ」「○○先生が詳しいよ」なんて、私のような出来損ないにまで丁寧にアドバイスしてくれる先生方。
日本語訛りや関西弁訛りだけど英語で外人とふつーにペラっちゃう先生方。

さっき心配になって、主だったところを久しぶりにググってしまいましたが、みなさんご健在そうで安心しました。
もう12年前の話だなぁ

しかし、その他の中の大勢の人たちは、ブームに乗せられて、大学院は出たけれど、安定した就職先がない状態です。

「ピペド」の解説を見ると、たしかに、ちょうどバブル崩壊後にミレニアムプロジェクトなどの多数のプロジェクトが立ち上がるのと軌を一にして、大学院大学などで大学院生の増強が行われていることが分かります。

しかし、当事は誰も考えなかったのだろうかと思います。彼らの将来のことを。
バイオブームを演出するにあたって、彼らの卒後の研究者としてのポジションや、企業等への就職先の受け皿のことは、まさか頭にはなかったとでも・・・
(大学院生を増やしておけば、企業は自動的に雇用を増やすだろう)えっ、えっ?
ITブームやネット先物ブーム、起業ブームとはわけが違う、一大国家プロジェクトです。

例のミレニアム何とかのページ(PDF)を見ると、2005年時点で、バイオ関連の研究の多くは、方法論も含めて手さぐりの状態であったことが強調されています。
的確な攻略法が見当たらない山を崩すために、多くの若者の人生が、人海戦術さながらに無駄に費やされたのではないかと強い疑義を感じています?

彼らには任期付研究者(=非正規・パート)や「ピペド」としての需要はあったが、社会での労働者としての需要はほとんどなかったものと思うと、言葉もありません。

<あちこちで『セイの法則』的な錯誤>

 「社会から必要とされない」
 「需要がない」

これはとりわけ成人男性にとって最もきついことの一つなのではないでしょうか。
なぜ「社会から必要とされない」「需要がない」人=供給を作ろうとするのか?

あなたは、実生活において

 「需要があるところに供給がおこる」
 「供給があるところに需要がおこる」

のどちらが真理だと思いますか?
いやこんなこと聞くまでもなく、常識として前者であることは言うまでもありません。

たとえば卑近な例ですが、当院で、いくらインプラントを宣伝で勧めてみても、たとえば「入れ歯にはこりごりだ」「ブリッジで歯を削りたくない」のような『需要』のある方がおられないと、まず話が進みません。
もちろん(この人にはいい結果が出そうだ)というケースで、ご本人がご存知でない場合は、お勧めして潜在『需要』の掘り起こしを行うこともあります。
これも、『需要』が先です。それは最終的な決定権は患者様にあるからです。

しかし、私の知る限り、世の中にひとつだけ、そうでないと思われる分野があります。
経済学です。とりわけ新古典派、新自由主義と呼ばれている分野です。

私は門外漢なので詳しくは分かりませんが

「セイの法則」

というのが、「供給があるところに需要がおこる」という法則で、今の経済学者や御用学者は一生懸命この法則の正当性を守るために頑張っているようです。

・・・この法則そのもの、というか、”セイの法則的な感覚”ですね。

今年の4月ごろを思い出します。
新しく就任した日銀の黒田総裁による「異次元緩和(量的質的金融緩和)」の効果で、たしかに行き過ぎた円高は解消され、株価などの資産価格は上昇しました。

しかし、緩和された現金は、各銀行が持っている日銀の当座預金の口座に付け替えになって積み上がるだけです。要は今まで持っていた国債(政府の借金の証文)を換金(日銀の借金の証文)した形です。

民間ではデフレで実質金利が高く、モノを買うより現金で貯金している方が得ですから、カネを使おうとしません。つまり資金需要がありません。

銀行も、民間や政府が金を使わないので、金利のつく国債を金利のつかない現金に換金してしまうと損です。今までは国債の金利で回っていたのですが、黒田さんに国債を取り上げられてしまったwので、利ザヤで稼げるものは何か、と考えます。

すると、株や土地、FXだったり、原油・貴金属・穀物などの海外商品先物だったりするわけです。

現金を供給して価値を薄めさえすれば、民間に資金需要は生まれるのでしょうか?円キャリーなどの形で海外に流れてしまっては、元も子もありません。日銀砲のときもそうでした。惜しいことをしたものです。

しかし肝心の内需という需要(復興、国土強靭化、五輪関連etc)を満たそうとして、国が国債を発行しようとすると「国の借金ガー」「国債暴落ガー」「プライマリーバランスガー」と朝日新聞や御用評論家が()

▲ (狭義の)リフレ派

いわゆる『(狭義の)リフレ派』と呼ばれる人たちも、デフレ下の方針は途中までは正しいのですが、基本的に「供給があるところに需要がおこる」という考えなのでしょう。だから緩和後のカネの流れに無頓着なのでしょう。
「カネの価値が薄まれば必然的にモノに移行する」といいますが、モノの前に海外に流れて円キャリーになっても、彼らの『方程式』『法則』では良いことのようです。
街の景気に敏感な庶民目線では、到底信用できるものではありません。

▼ グローバル主義者

ケケΦや三木谷氏など産業競争力会議の民間”議員”や、経団連などの『グローバル主義者(グローバリズム信奉者)』は言うに及ばず、「サプライ(供給)サイドの規制緩和」ばかりを訴え、日本の内需がなければ世界に打って出てアジアの成長を取り込む(=国内の雇用はどうでもいいので現地に工場を建てて現地人に売りつけるor日本に逆輸入)などと言っています。
供給を増やすのを一概に悪いとは言いませんが、デフレ下においても同じスタンスなのは首をかしげざるをえない。需要に対する視点が全く欠落している典型例です。

▼ 財政均衡主義者

「国の借金ガー」「国債暴落ガー」「プライマリーバランスガー」な『財政均衡主義者』の場合は、財務省内の表面上の収支が何を置いても最優先ですから、内需である国債というだけで大反対です。こちらは供給を重んじるというよりも、需要がムダ遣いに見えて仕方がない”固定観念”なのでしょう。
少なくとも商売人、手形で取引している人たちで、これに加担する人はいないでしょうw

 
経済学を外から見ていて思うのは、やはりモデリングの難しさです。
「経済人」という合理的で無味乾燥な仮想人格を元に構築しているので、もろもろの数式は、熱力学の式や気体の状態方程式のような、巨視的なものにならざるをえません。

でもそうすると、モデル化の際に、民族性や社会習慣、個性、気候など、さまざまな要素(パラメータ)を切り捨て過ぎになるのではないかと思います。それはコントロールと呼ぶには乱暴なことだと思います。

そのようなモデル()を作っていっても、あくまでも、ある程度の目安的な、近似的な関数しか得られないのではないでしょうか。モデリングに問題があるなら、逆にむしろ『博物学』的な観測アプローチ、端的に言うと三橋貴明先生的なデータ実証主義、が現状より強く求められるのではないでしょうか。

ここは、生物学には『物理学』的な、原理・法則を追求するようなスタンスがより求められているのとは対照的で、興味深い点です。

<『歯科』の供給と需要>

歯科はとうぜん医療系なので博物学です。その中でも治療分野はとくに職人芸的な才覚を要求されます。
たしかにこの世界になかなか、実験計画法とか、数式は、なじみませんね・・・
しかも治療行為はブラックボックスなので(123)、評価すら困難な状況です。

予防行為では、メンテナンスでの評価ができる分、まだ数値化になじみやすいように思います。

需要と供給は、どうでしょうか。

これは、昭和33年に大きな転機がありました。これは需要と供給を同時に満たそうとした例で、興味深いものがあります。

需要の掘り起こしとしては、昭和33年の皆保険加入がありました。供給の増加としては、歯科技工士法(昭和30年)の制定や、歯学部倍増がありました。

『みんなの歯科ネットワーク』の情報(PDF)によりますと、【歯科大学・歯学部数推移】は、7校(昭和35年)⇒29校(昭和55年)、【歯科大学・歯学部入学定員数推移】は、690人(昭和35年)⇒3360人(昭和55年)と、この20年間でものすごいことになっていますね。

これで治療『需要』に追いついていなかったのですから、そのすさまじさが分かります。

現在は大体入学者数も国試合格者数も3000人弱で推移していて、歯科医院1軒当たり人口1500人程度です。

この数字は、欧米では十分ペイできる数字ですが、日本の保険制度では、医院経営を考えると少々苦しい数字だとされています。
ただ、歯科医師の供給は、わが国では4分の3は私大によるものであり、今後の需給関係や学生動向を考えても、いまだ歯科医師を現状のまま量産し続ける姿勢には疑問を持たざるを得ません。(医学部を作って定員を倍増すれば学生も大勢集まるのに)素人考えながら、素直にそう思うのですが・・

歯科に話を戻します。
これからのことを考えると、今後の掘り起こすべき需要はもちろん予防だと思いますし、そのためには歯科衛生士の供給は当然必要です。

「歯科衛生士数 推移」で検索すると、就業歯科衛生士や、歯科技工士その他の数字が出てきます。歯科技工士数が35000人程度で頭打ちなのに対し、歯科衛生士は24836人(昭和57年)⇒103180人(平成22年)と順当に伸びています。

これだけ見ていると、歯科衛生士があふれているように見えますが、現場的には、正直、歯科衛生士の募集は非常に困難です。さすがに誰でもいいというわけにはいきませんが、どこの医院でも、求人に対してなかなか募集がないのが実情です。

しかし、日本では、海外と比較すると、麻酔ができない、レントゲンのスイッチが押せない、歯科医師の関与がないと仕事ができない、など、先進国の中では非常に業務上の制約が大きいのが特徴です。悪法も法なので一応守らないといけないんでしょうが、現状が実態に即しているとは思えません。衛生士のモチベーションや、職種の魅力を高めるためにも、先進国の事例を参考にしながら、業務上の制約の緩和は真剣に検討すべき時期に来ていると思います。

ここで歯科医師側の方が、いわゆる”既得権益”にしがみつく形になってしまうと、まさに「セイの法則」「供給があるところに需要がおこる」の典型になってしまうのではないでしょうか?

制度面の改善も駆使せず、需要を掘り起こさない状態で供給のみを増やすと、わが国において歯科衛生士が将来ピペドの二の舞にならないとも限りません。すでに、退職したり結婚したりして現場を離れている「潜在的歯科衛生士」が増加して復職したがらないことが大きな問題になっています。
あまり言いたくないのですが、長期間離職することで一定(はっきり断言はできませんが)以上の年齢になってくると、復職後の新技術の習得等に支障をきたしてくることも予想されます。どの分野においてもそうでしょうが、困難な問題です。

今回は、歯科に限らずいろいろなことを需給面から考えてみました。

【今回のまとめ】

私見だが、供給の前に、需要を精査したり掘り起こしたり創出したりすることが大事。

05:07 | nemoto | 『ピペド』って、ご存知ですか? はコメントを受け付けていません
2013/11/12

こんにちは。根本齒科室の根本です。
急激な冷え込みで、風邪をひかれる方が非常に増えております。ぜひご自愛下さい。

唐突ですが、看板を直しました。早く直れよGoogleストリート

ところで、風邪を引いていてもいなくても、歯医者に飛び込むのは勇気がいります。
まして初診ではなおさらでしょう。
(何をされるんだろう?)と思うと、歯医者の敷居は高くて門を叩きにくい。
「こんなになるまで何で放っておいたんだ」と怒られて、キュインキュイン削(ry
・・・想像するだけで恐ろしい、まさに地獄絵図です。

でもご安心下さい。
結論から言うと初診時はそんなに、というか、全然ヤバくないことが多いんです。
(何をされるんだろう?)
院長の大まかな頭の中の把握が、我が身の安全?!につながるwww第一歩です。

<強い痛みの2例>

まず最初に、我々が新患や急患の方々を見ていて、「これはお気の毒に」と思われるような強い痛みを覚える2例についてお断りしておきます。それは

▼ 歯肉周囲が、急にパンパンに腫れあがったもの
▼ むし歯が何もしなくてもズキンズキン痛い&熱いものも痛いもの

大体このパターンです。
この2つには共通点があるので、後で項を分けて述べます。

<主訴がない場合>

たとえばホワイトニング希望とか、全体的な検診希望とか。
この場合は、診断とか型取りしかしないので危険性()はゼロです。

<主訴がある場合>

受付が連絡を受ける所から始まります。通常は電話でお受けするのですが、まれに、ご本人が医院に訪れて予約を取られることもあります。

① まずは、緊急事態であるかどうかの判断が大事です。

◇ 取れたけど、痛みもないし、時間ができたので診てもらいたい

みたいな内容だったら、まずは心に余裕ができます。いっぽう、同じ取れたでも、

◆ 取れたのが前歯で、みっともないから何とかしてほしい
◆ 取れたところが痛い or かめない

などのような場合には緊急性が高いです。

② 専門用語ではなく一般的な言葉で伝えられます。

受付では、当然専門用語は使いません。
その中で、大まかに分類した状態が院長に伝えられます。主なところでは

◇ 痛い
◇ 腫れた
◇ 取れた

などのようなざっくりとした分類です。
もちろんそれぞれの中に細かい小分類がありますので、その言葉だけでは何とも判断できません。

③ 伝えられた内容から、必要な処置を推測します。

◇ 痛い の分類

冷たいのだけしみる^知覚過敏、C2
何もしなくても^Pul
熱いのだけ^たまにP急発
冷たいのも熱いのも^Pul
じーんと10秒以上しみる^歯髄充血
⇒落ち着くか、Perか

☆ 冷たいものだけがしみる場合

処置としては軽微なもので済むことが大半です。
初診や急患だったら、おそらく応急処置レベルでしょう。
しかし、症状がぴたっと劇的に取れないこともあります(とくに知覚過敏)。
ちなみに、知覚過敏の場合は、治療よりも生活指導がメインです。
おもに日中のかみしめグセの見直しと、歯みがき粉の見直しです。

☆ 冷たいのも熱いのもしみる場合

熱いのがしみる場合は、大まかに2通り考えられます。

ひとつは、神経がやられて歯髄反応が出ている場合です。
この場合は、とりあえず痛み止めを出して穴を仮にふさいで様子を見たりすることもあります。
ただ、痛みのレベルにもよりますが、患者様の同意が取れる場合は、その場で麻酔して神経を取る、などという話になってしまうこともあります。
とりあえず痛み止めを出して穴をふさいで、の場合も、次回はやはり麻酔して神経、のような話になってきます。

もうひとつは、歯ではなく歯の周囲の肉や靭帯(歯根膜)が炎症を起こしている場合です。
雑菌がたまったり、過剰な力がかかって打撲を起こしているようなところでは、熱いのがしみることがあります。
しかし、これは歯がしみているのではなく、歯肉がしみている状態です。

雑菌がたまった場合は洗浄・消毒して、ときに抗生物質(化膿止め)を出したりします。

ただ、炎症が起こって腫れている中を洗浄するときは、歯肉が押されたり食い込んで痛い可能性があります。でも、そういうところを洗浄すると、たいていオカラのようなプラークや膿がいっぱい出てきます。
大体、どこでも人間の体で皮がかぶっているところはカスがたまって汚くなるものです。
出ちゃうと、すっきりしますよ。

打撲している(咬合性外傷)ときには、必要に応じて咬み合わせを丸めたり隣の歯と接着したりして、負荷を軽減します。

☆ じーんと10秒以上痛い場合(主に冷水痛)

これは歯髄充血といって、微妙な状況です。
いちおう可逆可能な状態とされているので、まずは安静指示になります。

たいていは時間とともに落ち着くのですが、まれに悪化する場合があり、残念ですが、その場合は神経を取る形になります。

また、落ち着いたと思っても、しばらくすると歯の下1センチくらいのところが腫れてきたり、イボみたいなものができたりすることがあります。
これは神経が死んで、膿のようになって流出してきた状態です。歯肉内から歯肉外(口腔内)に流出してきた場合は、雑菌が穴を伝って歯や骨に逆流するので、やはり神経を取るときと同じ操作で歯の中の掃除・防腐処置が必要になります。
歯は死んでいるので麻酔は必要ありませんが、根の治療なので回数はかかります。。

◇ 腫れた の分類

奥^Perico系
その他^
 P急発系
 Per系
 ハセツ系

☆ 後ろの歯、とくに下顎の奥が腫れて痛い

若い方に多いのですが、十中八九、親知らず、とくに下の親知らずの周囲が急に腫れあがったパターンです。
ここには咀嚼筋(咬筋)がついているので、そちらにも炎症が波及すると、口が開きづらい、という症状を併発することもあります。
余談ですが、埋まっているような難しい親知らずを抜いた後に、純粋に剥離や縫合など、抜歯操作の影響による炎症が咀嚼筋に波及して、数日のあいだ顎が突っ張って口が開きにくくなることがあります。これは一過性のことなので、後日解消します。

こういう、急性炎症の日は、いろいろと問題があり、あまりその日に立ち入ったことができません。
何かを本格的に行うのは急性炎症という山を越えてから、です。
詳しくは後述する<強い痛みの2例>をご覧下さい。

☆ もう少し前の方が腫れて痛い

親知らずの場所でない場合は、まず歯周ポケットを見ます。
その歯の周囲だけ腫れていて、腫れている場所が歯の生え際(歯肉縁)に近い場合は、歯周ポケット内の雑菌が”バクハツ”した可能性が高いです。

これも、歯周ポケットの内部にはプラーク・雑菌が大量に繁殖している場合がほとんどなので、とりあえずやることは、電解水やぬるま湯による洗浄・消毒と、飲み薬(抗生物質、鎮痛剤etc)で炎症を抑えることです。

歯の生え際(歯肉縁)から少し離れている場所が腫れている場合は、原因が歯の内部的なものであり、若干厄介なことになってくることを疑います。
この場合は、歯の生え際からおおむね1センチ程度離れた所から膿が出てきている形になることが多いです。まず局所のレントゲンを撮り直して、肉眼で見えない部分の変化を観察します。

こんな風に炎症が起こるほどですから、すでに骨などの周囲の硬組織は、歯肉の中で融けたり変形を起こしています。

これは絶対ではありませんが、腫れや膿の漏孔の位置が、歯の生え際から1センチ以上と1センチ未満で、可能性が分かれてきます。

☆ 生え際から1センチ以上離れている所が腫れている~感染根管

この場合は、過去の根の治療の偶発症を疑います。
レントゲンを撮ってみて、根の先に黒い影があるような場合は、昔の根の治療のときに、治療行為自体で偶発的に感染したものの再発の可能性が高いです。
歯周ポケットは、腫れている盛り上がりの部分の上も平坦です。
処置も、閉じた系(根管内)の汚染に対してのみになります。
(根尖孔外バイオフィルムが疑われる場合は若干外科的な処置が必要です)

☆ 生え際から1センチ以内の所が腫れている~歯根破折

この場合は、後々ちょっと面倒なことが多いです。
歯が縦に割れている可能性が大だからです。
レントゲンを撮ると、特有の黒いオーラ(後光の逆)が根全体を覆うように映りこんできます。
歯周ポケットは、腫れている盛り上がり部分だけ他のところよりも深く、ズボズボって1センチくらい入ります。

これ、後々結構アカンヤツです。

根が縦に割れると、割れたヒビをつたって病原菌が行き来したり、ヒビの奥で菌が繁殖したりするのを歯肉の外から抑えることができません。
ですから基本的に保存不能で、診断としては抜歯の適応になってしまいます・・

もちろん「抜きたくない」ということであれば、当面そのまま置いて様子を見たりもしますが、他の歯に比べると明らかに短命です。

これらのように、腫れていても、強い症状がない場合は、当日は現状の説明や投薬にとどまる場合がほとんどです。
ペンチやドリルでいきなり「グイッ!」となんてことはありません。

◇ ぐらぐら・・・案外重症のことも

差し歯がグラグラ
 上だけ取れている~最悪の事態はまぬかれそう
 Brで片方ダツリ~全交換
  ハセツ→上がコアごとダツリ~最悪の事態も
 全体的にグラグラ~P2あくまでXP
  ハセツ系?P急発系? 

歯がグラグラしてくることは、自覚症状のひとつです。
「自覚症状」ということは、それだけで、思いのほか進行している可能性が高いです。

基本的に、物がグラグラしているということは、足がしっかり固まっていない状態ですから、レントゲンで確認します。

骨が固まっていない場合と、根が割れていて芯棒を支えきれない場合があります。

根が割れていて芯棒を支えきればない場合は、割れる方向にも寄りますが、さっきの「アカンヤツ」になる可能性が高まってしまいます。
斜めに割れて、残りの根が十分大きい場合は、再製作も理屈上は可能です。
骨が固まっていない場合は、可能ならば丸めたり、隣の歯と接着して揺れや負担を抑えます。

しかしそもそも・・・

割れてきたということは、今までの形では力学的に持たないことの証左です。
取れてきたということは、今までの形では力学的に持たないことの証左です。

また同じように作りたい・・・「同じ轍を踏む()」という言葉がありますね。。

とはいえ、当日は「どうしても今何とかしてくれ」というような場合を除いては、大仕事になることもなく、仮のフタや仮の固定などで対応します。

何度もこのコラムでも書いてきましたが、歯は自覚症状に乏しいのが特徴です。つまり、自覚症状が出た場合は、高い確率で思いのほか進んでいることが多いのです。

<強い痛みの2例>

冒頭に、お気の毒だとご紹介した、強い痛みの2例について少しまとめます。

◇ 共通点は?

▼ 歯肉周囲が、急にパンパンに腫れあがったもの
▼ むし歯が何もしなくてもズキンズキン痛い&熱いものも痛いもの

Perico/P急発
PulPer/急化Pul/一部壊死

いずれも、必ず、付随した「炎症」とりわけ「急性炎症」が起こっているのが共通点です。

炎症の原因としては

 感染~微生物的(むし歯菌、歯周病菌)
 外傷~無生物的(物理的(咬合圧がメイン)、火傷、化学的刺激を含む)

のようなものが考えられます。

神経がずきずき痛い~歯髄炎
腫れて痛い~歯根膜炎
         歯周炎
親知らずが痛い~智歯周囲炎

◇ 炎症って、なんだろう?

詳しくはググって下さい。簡単にまとめます。

炎症とは生体の免疫反応の一種です。
物理的な刺激、病原菌や雑菌、ウイルスなどによる刺激、化学物質による刺激などが原因となって、正常な状態から炎症状態になります。

そのときの局所は

◆ 血管に細かい穴が開く(血管透過性亢進)

なんと、白血球やリンパ球などが局所に向かいやすくするため、血管に穴がたくさん開くのです。ですから、血管の内側も外側も含めて全体的に熱を持って、充血したり、ときに膨張したような感じになります。
つつき回したり切り込めば当然出血しやすいし、血が止まりにくいです。また、

◆ 局所のpHが酸性に傾いています

じつは麻酔の注射は弱アルカリ性なので、とりわけ急性炎症の部位には効きにくいことが多いです。それなのにプロスタグランジンなどの発痛物質なども分泌されるので、踏んだり蹴ったりです。

このように、血も止まりにくい、麻酔も効きにくい、となると、なかなかその場で手を出すことは困難です。
ですから、局所の洗浄・消毒や投薬(消炎鎮痛剤や抗生物質)で様子を見るのが定石です。

◇いつまでも地獄?!は続かない

こう書くと、急性炎症ってなんて恐ろしいんだ、と怖じ気づく様が見えるようです。
また人間は楽しい時間ほど短く、辛い時間ほど長く感じるものです。

しかし、このような地獄?!の状態は、長くは続きません。
おおむね2-3日、どんなに長くても数日です。

それを過ぎると、「急性炎症」⇒「『慢』性炎症」となり、ひとまずは激烈な症状は落ち着きます。
ただ、当然ですが、病気が治ったわけではありません。

今度は血も止まりやすいし、麻酔も効きやすくなりますので、この時期の間に原因を除去する本格的な処置に移行します。
また再発して「急性炎症」をくり返してしまうと、また手が出せなくなってしまいますし、ほぼ全例で、状況が更に悪化してしまいます。

「気合で治した」???
風邪じゃないんだから、歯やお口ではありえません。

<おまけ>

この仕事をしていると分かりますが、診てもむし歯などの悪いところがないのに、歯の痛みが出るケースも少なくありません。
歯やお口そのものに、むし歯や顎関節症のような直接的な原因がない場合は、歯科では適応外となります。
このように、治療や簡単な生活指導の範疇を超えている、などで、他覚的所見がない場合は
 

 神経痛
 不定愁訴
 負の自己暗示(過度な集中)
 神経症、心身症etc

などのような方向を疑うことも、ままあります。
当然このような場合は、様子を見たり、他科を勧めたりすることになりますが、重要なのは、その症状の経緯を初期の頃からできるだけ詳しく記録することです。。

いちおうプロ向けですが、簡単なオススメの本としては、こんなのがあります。

<おわりに>

いかがでしょうか?
「歯医者は痛い」「歯医者は怖い」
という先入観は、じつは古今東西を通じてあります。 こんなのとか

しかし、我々の側から見ると、初診時にできることはかなり限られています。
とくに症状の強いケースではそうです。

検査や診査以外では、たとえば仮のフタをしたり、局所を洗浄・消毒したり、お薬を出したり、といった内容が精一杯なところです。

まれに「今日どうしても歯を抜いてくれ」のようなケースがないわけではないですが、それでも最近は内科的な診断の重要性が高まっていますので、よほどでもない限り、むしろおいそれとハイハイと抜歯するわけには行きません。

以上のように、初診時に限って言えば、痛いことをされるケースはまれで、”安全率”はきわめて高いです。

その後、ある程度の診断・計画があり、徐々に進んでいくことになりますが、それはそれで後で検討すればいい話です。

ということで、今回のお題の結論としては、『歯医者の初診は怖くない』でした。
(他の歯医者は知らないよ)

【今回のまとめ】

初診時には痛いことをされない可能性が非常に高い。ご安心ください。

02:18 | nemoto | 初診、ダイジョブ!ヤバくない! はコメントを受け付けていません
2013/10/18

こんにちは。根本齒科室の根本です。

まずもって、台風26号および付随する大島の土砂災害等の犠牲者の方に心よりお悔やみ申し上げます。またすべて被災者の皆様にお見舞い申し上げ、一日も早い復旧復興をお祈り申し上げます。

先日、保健所の定期立ち入り検査が終了しました。
その分、半日休診になってしまい、一部の方にはご迷惑をおかけする形になってしまいました。

今回は、保健所の立ち入り検査について、書ける範囲で書いてみます。

これは一応定型的なものなので、ある程度前に通知はいただいています。
しかし、2006年(私の開業した年)以前は、検査自体がありませんでした。

いろいろあって、医療法が改正されることになりました。
2007年に改正医療法が施行されてから(PDF)、定期立ち入り検査が始まることになりました。

ただ、最初のころは混乱もあったようで、(今度新しく赴任した保健所の所長が検査好きだから立ち入り検査が始まった)みたいな憶測も流れました。

当院は、その改正直後に一度、立ち入り検査を受けています。
当初は、どこの医院もおっとり刀の検査だったようで、おおむね「これから取り組んでください」「引き続き取り組んでください」で、名古屋カニ缶勉していただいたようでした。

(所長が変われば検査もなくなるかもしれない・・)
うちもご多分にもれないわけですが、今回はあれから5年たってます。

ずいぶんあやしい資料、不十分と思われる資料も・・

「5年もの間、何をやっていたんだ」
「てめぇ何だこりゃ、ふざけんじゃねーぞこの野郎!」

などと言われたらどうしよう・・・と思いつつ、心臓が口から飛び出しそうでしたが、結論から言えば、何とかセーフ。名古屋のカニ缶でした

◇ 準備

6月に通知が届きます。

「あっ、ガチじゃねーかwww」

一応懲罰的なものではないし、ある程度余裕をもって通知をいただいてはいるものの。。

呼応したかのように、6月19日に歯科医師会主催の講習会がありました。
その際に、医療安全管理の指導と、立ち入り検査のポイントについてのアドバイスもいただきました。

とはいっても、実際の検査はずいぶん先のことではあるわけで。
しかし、問題点が1つありました。ヒヤリハット・・・

◇ 提示資料

歯科診療所の場合は、病院よりは基準が緩やかです。
たとえば院内に消防委員会などは設置しなくてもいい事になっています。

以下に、提示資料をまとめます。

 医療廃棄物の排出業者の許可証
 医療廃棄物の排出伝票(マニフェスト)

 イス(ユニット)の月次チェックリスト

 スタッフの結核検査(≒健康診断、人間ドック)結果票 
 X線漏洩検査票
 医院の図面

 フィルムバッジ
 積算被曝量報告伝票

 院内研修の報告書
 4委員会ごとの指針・マニュアル・自主点検表
 4委員会ごとの研修についての報告  ←結構面倒

 インシデント集計票集(以下、月次報告書)
 インシデント報告書集(以下、ヒヤリハット)
 *医事紛争報告書は、幸い起こらなかったので、なし

4委員会とは、順番に

 ①医  療 安全管理委員会(毎回研修)
 ②医 薬品 安全管理委員会(1年おきくらい研修)
 ③医療機器 安全管理委員会(1年おきくらい研修)
 ④院 内 感染 対策委員会(1年おきくらい研修)

です。
これらの各委員会() を院内に設置して、院長が委員長になって年に2回定期的に院内研修()を行う、ということになっています。

その 院内研修()では、一般的には、

 医療安全管理(≒ヒヤリハットがたまるので、ミーティングなどで回覧)   ①
 新しい機械の操作法、院内感染対策、医薬品取り扱い要領などの説明②~④から1つ以上

の要領で2題をテーマに研修()を行うことが慣例になっています。
また、さまざまなインシデント()が起こったら、その都度ヒヤリハットに記載し、月ごとに集計を行うこととなっている模様です。

ヒヤリハットは、一応要件が指定されていますが、うちはコンパクトにExcelで自作してしまいました。

この集計がすごい面倒くさい!

これをずっとしないで溜め込んでしまったので、前の日は徹夜状態になってしまいました。
しかも悪いことに、震災前の分のヒヤリハットが無くなってしまっているようで、資料が不備に!
(やべ、間に合わね)

このヒヤリハットを月次報告書に転記していくのが、こんなに面倒だとは思わなかったです、はい。
月次報告書には書式があって、上のほうがその月のカレンダー、下のほうが凡例になってます。

凡例は番号に結構細かく分かれています。一例ですが

[1]受付・応対・接遇(患者への態度、応対の不備、連絡の行き違い、診療開始時間の遅れ、支払拒否など) 件
[2]情報収集、情報伝達の不備(2-1患者等に対して 件)(2-2診療従事者等に対して 件)
     |
   (自主規制)
     |
[24]診療従事者管理(不適切な労働環境、無資格者の業務範囲の逸脱、不適切な超過勤務、給与未払など) 件
[25]その他 件

のようにカテゴリーごとに細かく分かれていて、各ヒヤリハットを内容ごとにそのカテゴリーに分けていくんですが、これが迷うんですよ。
(この事例は[1]にしようか、[2]にしようか・・・)。

たとえば、○○年□□月には、3枚のヒヤリハットがあって各々

 ○○年□□月△△日~1番
 ○○年□□月□□日~24番
 ○○年□□月☆☆日~2番

だとします。

これを月次報告書の上部のカレンダー枠内に、△△日の枠内に1、□□日の枠内に24、☆☆日の枠内に2、と
記入していきます。

さらに、各項目の右側の、 件 のところに数字を書き込んでいく。

ここがこんなに煩雑であるとは全く予想せず、単なる集計だろ、と、ちょっとナメてかかってた所もありました。
その分バチが当って、前日にはほとんど寝ることができませんでした。
(その都度やっときゃよかった・・)ふと気がつくと窓の外では、スズメの泣き声が(‘A`)

◇ 当日

立ち入り検査は15時からの予定です。
おおむね1時間程度とのことだったので、入念に整頓して、超緊張しながら待つ、松、末。

(足りない資料のところは、どうしよう・・)
(院内図面もオリジナルが紛失してしまって、汚いコピーしかない・・)
(X線漏洩検査は、マニュアルが複雑すぎて分かりにくかったので適当に書いたけど・・)

受付のイスに座りながらも、さまざまな疑念が頭をよぎるたびに、心拍数が5上がっていく。
2011年から電子マニフェストに変わったので、スマホ(笑)でログインの仕方を練習しながら、
なめこDXと旧モグモンをおさわりしつつ緊張を抑えようにも、汗びっしょりww

◇ ご行幸啓
3時になりました。

半袖ワイシャツで名札を首からかけた方が2名(以下1、2)ご光臨。
根「あ、こ、こんにちは。お世話になります」
1「よろしくお願いします」
2「よろしくお願いします」
あわててなめこをビュルルっと収穫し、慌しくカウンターを挟んで名刺交換。超緊張の一瞬です。
(あ~、見た目穏やかそうな人だ。穏便に済めばいいが・・)

何と言っても、この人たちには逮捕権や捜査令状こそありませんが、税務署と一緒で質問調査権があり、特段の理由がない限り質問や調査をこばむことができません。まちがってご機嫌を損ねるようなことでもあったら・・
あ、や、不足の資料もいくつかあるし、やべやべ オワタ 神様仏様ご先祖様

・・・

2の方は、少し離れたところで、月次報告書(上がカレンダーの奴)を見ています。
質問や対応はおおむね1の方が行っています。

・・・

1「ああ、よくまとまっていますね」

はぁ?

1「ああ、いいですね」

えっ、えっ、どこが?

2「じゃあ、医療安全管理(=ヒヤリハット)の報告書を見せて下さい」ついに2人目から執行宣告か
根「あの~、すみません。報告書の期間が一部不足していあqwせdrftgyふじこl」
2「やった分だけでいいですよ。大丈夫」

・・・

2「ああ、いいですね。医療安全管理、非常によくまとまっていますね」

ゑ、これがかぁ?非常によく?ウソだろヲイ

1「あ、先生、従業員の健康診断の個人票はありますか」
   キタ――――――――\(^o^)/―――――――― !!
根「あ、いってれぼ、え、うわらば、その、ひでぶ、あ、安倍氏、個人票のこと知ったわばっ」
・・・
1「殺ったやったんですね」
根「はい一応。歯科医師会の斡旋の人間ドックの奴です」
1「ああ歯科医師会の奴ですね。分かりました。大丈夫です。
  次回は従業員さんの表のコピーもお願いしますね」

・・・

おかしい。
やさしい。やさしすぎる。
此れは孔明の罠に違いない。此方の油断や失言を誘っておじゃる

1「私たちも、健康診断の個人票のコピーを上に提出させられるんですよ」
根「そうですか、面倒ですね(うぅ、余計なことは言うもんか)」
1「万が一、労災になったときのこともありますしね」

なるほど、勉強になりました。

◇ 院内検閲

書類の検閲が終わると、院内の検閲です。案内するほど広くないですが、一応どうぞと

1「きれいな診察室ですねー!」
2「きれいな診察室ですねー!」

根「患者さんが少ないので、汚れる暇がないんですよ・・」

1,2(そっとじ)

冷蔵庫はこれですね、これはワセリンですね、針の捨て場所はこれですね・・・
1「このパイプは何ですか?ガスか何かですか?」
根「あーこれはエアーです。当初はサンドブラスターをここに設置しようと
  思っていたんですけど、ユニットに付けられる小型のがダンビル社から
  出たのでそっちにしちゃいました」
1「ああ、分かりました」

あとは、レントゲン室の入口と、2400円もした消化器を軽く見て、あっけなく終了しました。

 消化器も、遠くから一瞬しか見てなかったから、いちいち買いに行かないで、
 テナント共用流しのところにある奴を1日だけ借りてきて置いといてもよかったかも

 (いや、これは悪魔のささやきですから。ダメダメ)

最後に、1の方がおっしゃっていました。
1「今日も、九州で医療機関で火災がありましたね」
根「ああ、そうでした。お気の毒なことですね」
1「もしかしたら、病院なんかは今後厳しくなるのかもしれませんね・・」
根「・・」
1「でも、歯科診療所はまあ、そういうことはないと思いますけどね。
  火を使うのは、アルコールランプだけですよね」
根「はい」

・・・

◇ 嵐が過ぎて

あっさり、本当にあっさり、終了しました。
通知書におおむね60分と書いてあったので、×1.5は覚悟していたのですが
所要時間35分程度でした。

1「月末にお手紙を出します。改善勧告があってもなくても」
根「ありがとうございます。ご苦労様です」

終わったあとは、逆に拍子抜けしてしまいました。ここ2~3日の苦労は、何だったんだろう。。

今回の感想としては、第一に、ヒヤリハットのまとめが大変だったことです。
そのほかの書類は、変な話、揃えようと思えばすぐ揃います。
逆に、累積系の報告書は、後でやろうと思って溜めてしまうと、紛失してしまったり、
膨大な作業量になってしまったりします。
これからは、面倒くさがらずに、月ごとに転記を行っておこう、と肝に銘じた次第です。

第二に、(幸いなことに)準備の煩雑さに比べて、担当官の態度が非常に友好的で、検査自体も予定を大幅に短縮して終了したことです。

講習会での歯科医師会の先生の話では、何度も保健所側と話し合いを重ね、診療所のあるべき姿についてコンセンサスを得る努力の結果、現在のところ友好的な関係を保つことができているので、この関係を壊さないように、適切な対応をお願いします、とのことでした。

保健所の立ち入り検査自体は、2007年の法律改正直後以来ですから6年ぶり2度目の形になります。
規則ではおおむね5年ごとに行うとなっているので、1度目の立ち入り検査の不備な点が引き続き改善されていないと保健所からも要注意とマークされてしまうことになります。

それにしても、担当官は優しかった。

◇ 個別指導vs立ち入り検査~もうひとつの検閲

これと対極をなすのが、新規個別指導です。

歯科医院の検閲で大きなものは

 保健所による立ち入り検査
 地方厚生局による指導・監査

の2種類があります。
「指導?そんなの右から左に」とか基礎知識のない方は、詳細はこちらを予習しておいて下さい。

保健所の立ち入り検査の場合は、医療機関としての備えがどうか、という点を見ます。
これに対して、個別指導の場合は、保険のルールに基づいて点数を算定しているかを見ます。

下の方が補足的で上のほうが根本的に思えるかもしれませんが、大変さでは圧倒的に下です。
ガチでしょっちゅう自殺者が出たり、人がバンバン死んだりしています。

茨城県の場合は、開業後に、新規集団指導というのがあり、新規開業の先生は水戸に呼ばれて技官(指導医療官)の講演を聴く、というのがあります。これは別にいいのですが・・
問題は、その1年~1年半程度後に行われる新規個別指導のほうです。

通知は新規個別の場合は1週間前にFAXで届きます。
国保と協会健保(以前は政府管掌)から10人づつ、FAXで名前を指名されます。
呼び出しがかかると、すぐに歯科医師会の担当の先生がカルテの点検にやってきます。
(ここでけっこう怒られたりダメ出しされたりする。しかし非常に重要)

当日、むこうは各患者のレセプトを持っています。医療機関側はカルテを持っています。
これを付き合せて、カルテにおかしな点はないか、を根掘り葉掘り聞かれます。
カルテだけでなく、日計表、技工指示書も持っていかなければなりません。

部屋は、小学校の教室くらいの広さの部屋に、プロレスの実況中継テーブルが四角に置いてあり、技官が座っていて、そこに就職の面接のときのように入っていきます。
技官と対面する歯科医師の横に、歯科医師会の方が一人座っていますが、その先生はとにかく何もおっしゃいませんw

まさに 取 り 調 べ です。

今は別の方のようですが、私のときの担当の技官の方はとにかく上から目線で、被疑者を取り締まる検察官のようでコワカッタです。声こそ荒げないものの論調はきつく、しかも矢継ぎ早の質問なので、あれこれと資料を出したりするのが大変だった覚えがあります。

この指導というか尋問・検閲の結果、通常は税務調査と同じで、どこかの重箱の隅に何らかの瑕疵が見つかり、
①「○○の項目の点数について過去◇年分自主返還」
という結果になります。
○○も、1つか2つならいいのですが、たくさん指定されると大変です。
また、「歯科疾患管理」など、頻繁に算定されるものが含まれると、損失はウン十万単位に!
◇は新規個別の場合は1年ですが、新規ではない個別指導の場合は5年だったりします!

でも新規個別の場合は、1回だけなので、それを過ぎてしまえば、あとは目立つ悪事を
継続的に働かなければ大丈夫です。

指導の結果改善が見られないとされた場合は、世にも恐ろしい『監査』に移行します。

『監査』と書いて『ガサ』と読むwwwwww

この場合は、税務調査というよりも、マルサの査察に近い感じです。
マルサ地方厚生局の取調官が、監査を打ちに直接歯科医院に乗り込んできます。
やることはマルサやガサと大体一緒です。直接この目で見たことはありませんが、想像するだけで慄然とします。監査になると、高確率で

②「保険医停止5年」&「保険医療機関停止5年」

という死刑宣告が下されます。
最近では豊橋の「インプラント使いまわし事件」の歯科医院が、コレ食らってましたね。
病院では、阿見日本医大病院、ホスピタル坂東などがありました。

「免停・面取になるわけじゃないから、それほど大きな問題じゃないだろう」
 ↑
お宅はどこの外人ですか。

インプラント専門医、矯正専門医以外は、たいていはどんなに売上における自費率が高くてもせいぜい半分です。
通常の歯科医院では自費率1割(保険率9割)程度のところが大半です。
その売上の9割を、5年間、403Forbiddenされた結果wwwwwwwww 404 not found

皆保険の国・日本では、ほとんど免停・面取と同じ意味を持ちますね。

阿見日本医大病院での事案では、その5年間の停止期間を圧縮するために強大な政治力が用いられたのは記憶に新しいところです。ああ、藤枝市民病院なんてのもありました。
何よりも大病院なので多くの入院患者様に多大な迷惑がかかります。
粘り強い政治交渉wの結果、5年間が数ヶ月にまで短縮されました。患者様の負担は最小限に抑えられました。

(だったら形式的にでもこんな強い権限を地方厚生局に持たせとくなよ)
という、たいへんもっともな声が聞こえてきそうです。詳細は私には分かりません。

①「○○の項目の点数について過去◇年分自主返還」
②「保険医停止5年」&「保険医療機関停止5年」

このような強大な権限を持っているのが、保健指導です。

ちなみに実際の免停・面取は、医道審議会の仕事です。

これに対して保健所の立ち入り検査の場合は、問題点や指摘事項があっても、「改善勧告書」を郵送してきて、それに対して「改善しました」と返事を郵送すれば、基本的におしまいです。
基本的に、商 売 の 邪 魔 になることがありません。

◇ 保健所が重視していること

法律まで改正してお上が我々にやらせたいこと・・・
それは、「リスクに強い組織のしくみづくり」でしょう。
具体的に言うと、組織内での継続的なフィードバックによる、自律的な減災だと思います。

「ヒヤリハット」「インシデント」もともとは航空機事故の防止対策から生まれた言葉だと思います。
300個のヒヤリハットのうしろに1つの重大事故が隠れている。皆様もこういう言葉を聞いたことがあるでしょう。

歯科医師会の理事の先生が、6月の勉強会で、面白いことを言っていました。

 たとえば、誰かが道具を落として割ったとするでしょ。
 今までだったら、院長が落とした子を呼び出して「コラ」って怒ってたでしょう。

 そうじゃないんですね。
 「共有する」これが一番の狙いなんです。怒っても何の意味もない。

 だから、落としたら「ヒヤリハット」に「○○を落とした」って書く。
 そしてその下のところに「注意して持つ」とか対策を書く。
 これを書いて、回収袋に入れたら、もうその一軒はおしまいです。

 先生は絶対スタッフを怒っちゃダメです。絶対厳禁です。
 だって怒ったら、誰も書いてくれなくなるでしょ。
 で、半年たつと紙が貯まるから、みんなで回し読みする。
 これで研修1回終了。

この話しを聞いて、非常に強く印象に残ったのは「怒ったらダメ」ということです。
怒るって、何で怒りがわいてくるんだろう・・・

◇ 怒るって、なんだろう

いろいろ考えてみました。

現在のところの取り合えずの結論なのですが、多分、自分自身を思い返すと
「自分の思惑通りに動いてくれないので、段取りが損なわれた」からだと思います。
治療中も、簡単な治療だといいのですが、難しい治療や手順の多い治療のときは
こちらも気を張ってかかります。

そんなときにミスをされると
「反抗的だ」「やる気がない」
と、本当に感じるのです。裏切られたとさえ感じます。

なぜそう感じるのか、自分でも本当に悩みました。
治療を終えて昼休みになると、同じ状況になったと想定しても腹が立たない。これが、また自分を落ち込ませます。
(何であの時怒ってしまったんだろう)
    ↓
(何であの時「反抗的だ」「やる気がない」と感じたのだろう)
    ↓
(何で「自分の思惑通りに動いてくれないので、段取りが損なわれた」と感じたのだろう)
    ↓
  ・・・・

この部分の結論としては、院長である自分自身が、変な意味、スタッフに甘えて依存している点が
あるのではないか、という考えを持っています。

(コイツは俺の思ったとおりに動いてくれるだろう)

この思ったとおりにが曲者です。これが甘えです。
超能力者やサトラレじゃないんだから、直接思考を取り出すことは当然できません。
思ったとおりには、本来ありえない、非科学的な方向性です。

伝わらないものを、伝わるだろう、いや伝わっているはずだ、と甘く考えているところ。
思い通りに動かないものを、動くだろうと甘く考えているところ。

このあたりが、上司側の甘えなんだろうと思います。

(コイツは俺の思ったとおりに動かないだろう)

まず前提を変えることにしました。変な甘えは、あきらめちゃいました。
もちろん「カチン」と来ることも無いわけではないですが、「カチンの森」まで逝くことは
なくなりました。自分でも、結構、楽になった感じがします。

何かを捨てないと、何かを見ることができない・・・結構あることなのかもしれません。

【今回のまとめ】

インシデントに強い組織作りは、適切なフィードバック環境と「怒らないこと」

06:48 | nemoto | 保健所の定期立ち入り検査がありました はコメントを受け付けていません
2013/09/26

こんにちは。根本齒科室の根本です。

前回は、最後の最後に強引に歯科につなげてしまいましたので、今回はもう少し自然な流れを試みてみます。

もともと”弱者の戦略”信奉者であった私は、新自由主義にかぶれて道を誤りそうに、いや、誤っていました。
その頃に開業したあたりまでをお話しました。

今回はその続きになります。

<リベラル主義的史観時代>

2006年の開業当時はまだ「勝ち組」「負け組」とか、都会的な妄想のようなものが自分の中に残っていました。
方向性としては、見た目もスタイリッシュな医院にして、インプラントや矯正、審美などの自由診療を前面に押し出していけば、クライアントの歯に対する意識も高まるのでは、などという考えでした。
極端に言えば、見た目をスタイリッシュにしておけば、とりあえず痛い所だけちょっと、という向きは当歯科室を避けて、全体的にしっかり、という意識の高い人ばかり集まる、くらいな浅はかな考えでした。

まさにサプライサイドの都合丸出し、セイの法則丸出しの、偏った考えですねw

しかし実際に患者様に接していくと、残念なことに 当然のごとく、セイの法則サプライサイドの都合での改革のような表面的なことはほとんど意味を持たず、(勤務医の頃もそうだったように)しっかりと患者様と信頼関係を築いて地道にコミュニケーションをとって取り組んでいった方が、着実に患者様の数も収益も伸びていきます。

「人対人」の仕事なのだから、当然です。

徐々に、昔のような「自分だけが都合よく立ち回り、勝ち逃げる発想」が少なくなっていくのを日々感じていました。
少しだけ年を取ったのかも、と思うようになりました。

その後、DH(歯科衛生士)が就職しました。担当制で予防をやるようになっていくと、健診リコール率がどんどん上がっていきます。

DHは仕事の半分がアドバイスやコミュニケーションです。「歯医者先生」というと敷居が高く感じられますが、ちょうど歯医者と一般の方の中間くらいの立ち位置なので、患者様も敷居が低く、いろいろ相談がしやすい、というメリットもあります。

リコール率7~8割をコンスタントにたたき出すようになってくると、ますます地道な人対人のコミュニケーションの大切さを痛感するようになりました。

集客・接客・追客でいうところの「接客」や「追客」の大事さを身をもって知りました。

いっぽう、看板を出しても、チラシを蒔いても、あまり芳しい反応がありません。
投網をかけるようなプッシュ型マーケティングの難しさもまた知ることになります。

この「投網をかけるような」という表現は個人的にちょっと気になる点があるので、後で少し言及します。

 
ネット環境も、開業以前~開業当時とは徐々に変化していました。

郵政選挙あたりまでは、日本中が「改革」って単語に釣られてましたよね。

それまでのネット環境は、『電車男』を例に出すまでもなく、2ch(つーちゃんねるにちゃんねる)がムーブメントのメインでした。でも2chは基本的に新聞TVといった『レガシーメディア』をソースとしてスレッドを立てているので、趣味や専門板は別として、結局は従来的な主張の焼き直しのようなところがありました。

リーマンショックのころは、多くの企業が倒産したり内定取り消しが頻発したりリストラしたりというニュースばかりでした。
これはもう、今までのようにはいかないような感じを受けていました。
麻生さんの景気対策(全治3年)は応援してはいたのですが、今にして思うと、日銀が白川では、たぶん打つ手はなかったですね。中川昭一さんも大変残念なことでした。

リーマンショック後は、おもに韓国の通貨安(ウォン安)危機(昇竜拳、ほいさっさ、ワロス曲線、韓銀砲etc)が日本でも(新聞TV以外では)幅広く話題になるようになり、あらためて為替の勉強にもなりました。そのなかで、三橋貴明(赤字神)氏、渡邉哲也(代戸締)氏という経済評論家を知るにいたりました。
『レガシーメディア』ではなく、ひたすら実際のデータや統計をソースとしたところが、赤い人が斬新でウケたところだったと思います。

そこでやっと『デフレ』という単語にまじめに接することになりました。
「人対人」「リベラル」な視点に目覚め始めていた私は、非常にすんなりと受け入れることができました。
『円高は日本国が信認されている証拠だ』という主張にも、『ネバダレポート()』にも、疑問を持つようになりました。
でも「日銀がお札を刷る」の意味はよく理解していませんでした。
まさかバランスシート拡大のようなことができるとは思ってもみませんでした。

また、その後のことになりますが、リフレ派には、金融派と財政派がいることに気がつきました(以下敬称略)。

 金融派~山本幸三、岩田規久男、浜田宏一、高橋洋一、飯田泰之、田中秀臣、上念司etc
 財政派~麻生太郎、西田昌司、中野剛志ほか西部門下生、渡邉哲也(黒)、三橋貴明(赤)etc

桜の常連ばっかりだ・・・たぶん金融派の方が「狭義のリフレ派」なんだと思いますが、私は個人的に、上念さんと三橋さんの中間くらいの所が、もっとも現状にふさわしいと感じています。

しかし欧米ではリーマンショック対策で、FRBもECBも一生懸命”お金を刷って”いた頃、日本でそれを実感していた人は、私を含めて一般レベルでは誰もいなかったでしょう。

案の定国民は、ショック毒とリン的なメディアの暴走につられ、この大事なときに政権を素人の手に渡してしまいました。
「コンクリートから人へ」このプロパガンダ、私には全く肌に合いませんでした。

 事業仕分け(枝野、蓮舫、内田裕也、河野太郎etc)、八ツ場ダム中止、2番でいい、
 米中等距離外交、日本は日本人だけのものじゃない・・・
 すべてが子供じみて見えました。

 (なぜ景気が悪くなるようなことばかりするのだろう?)
 (『ムダがムダが』って、冗長性がなければシステムは安定しないのに・・・)
 (景気が悪化して苦しむのは、庶民「ひとりひとり」なのに・・・)

その頃の私は

 ”国の借金”のウソ
 デフレ脱却は格差解消への道
 国民の雇用、賃金が国の発展の礎 

くらいは知識としては把握していました。
自分の中に芽生え始めた「リベラル的な視点」も、やはり間違っていなかった、と勇気付けられたりもしていました。
実際の日常臨床の中で、職が失われたことで通院が困難になられた患者様も少なくなく、心を傷めたりしていました。

そういえば、橋下市長が大阪府知事をやっていたころは、とくに違和感も感じてはいませんでした。横山ノックや青島幸男、そのまんま東が知事になれるようなご時世ですから、もう誰が出てきても(フーン)という感じです。

しかし、大阪維新の会が出てきたときは、「まずい!」と思いました。
後ろに、堺屋太一氏と大前研一氏がいたからです。

20年前、まだバブル華やかなりし頃、彼らはしきりにアピールしていました

 国際化(現在は「グローバル化」と称する)
 単純労働移民
 地方分権・道州制

はっきりいって、また20年前と完全に同じことを言っています。しかも前回はバブルでインフレ傾向だったからまだましだったようなものの、今回はデフレです。

みんなの党や維新の会(西)に典型的な、このような主張は、新しいようで古臭い、古典的なものです。その証拠に、このような主張は「新古典派」と呼ばれていますよね。

弱者切捨て、ジャイアニズムは、やはり私の肌に合わないようです。

 
<この間のネット環境の変化の個人的なまとめ>

◆ メルマガ、ブログ、Mixiの衰退( 点 の時代)

  タイムライン軽視型~文書量・情報量の過多、高負担
  リプライ軽視~拡散力が弱い 
  プル型メディア~個人主義的、拡散力が弱い

大昔の@niftyのパソコン通信の頃は割愛します。そもそも知らないし。

ひと昔前の2ch全盛期、そしてその後はMixiが圧倒的に優勢でした。
紹介制というところが、プレミアム感や入会意欲をそそったようです。しかし「足あと」が面倒だと言われたり、紹介制ではなく誰でも入会できるようになったりして、勢いは衰えていきました。
大勢に何かを知らしめるためのツールとしては、メルマガや日記、ブログなどがありましたが、メルマガも、ネット最大の問題点のひとつでもあるSPAMメール・迷惑メールとかぶる形態なので、あまり塩梅がよくありません。
ブログも、ねぇ(自分でこんなコラム書いておいて難ですが)日記もブログの一歩手前のようなもので、この頃はまだ炎上文化もありませんでしたし、プル型メディアの域を出ず、トラックバック等も拡散力に乏しいものでした。

後述するSNSでは、ユーザーが披露していくことが特徴ですが、この時代は著者(発信者)の方が著述量の負担が大きく、ストレスフルでした。

◆ TwitterやFacebookの台頭( 線 の時代)

  タイムライン主導型~文書量・情報量の短縮、低負担
  リプライ重視~議論加熱、SNS疲れ
  プル型メディア~個人主義的、拡散力が弱い

相変わらずのプル型メディアではありますが、独特の簡易なプラットフォームと、リツイートやTogetterなどの横のつながりを強くサポートする機能(と電通等の煽り)で、一気に登録ユーザー数を伸ばしました。当初は「~とつぶやく」のゴリ押し的な表現や「~なう」とか、力いっぱい無理でしたですが(中でも一番キモかったのが田村耕太郎の『乳糖入党なう』)。
また、実名主義の走りでもあり、有名人や芸能人も宣伝などで気軽に参加しやすい面も手伝って、プラットフォームの普及やネット情報の拡散力に寄与しました。

従来型の(点)の時代との大きな違いは、相互の直線の絡み合いの関係を構築しやすく、ムーブメントや社会運動を容易に起しやすい部分だと思います。

ただ、その性質の副作用として、いわゆる「バイトテロ」「バカ発見器」などの名で知られる炎上事件が若い人の間に急速に拡大してしまいました。
未成年の飲酒やアルバイト先での不埒な姿などの、問題な写真をageたりつぶやいたりなどの、若気の至りによる一時の過ちが、オンラインデータとして永久に残り、拡散して社会的烙印を押されてしまうのは非常に大きなリスクです。

SNSは基本的に、その瞬間全世界に開かれてしまっています。
内々の雑談だと思っていると全世界から痛い目にあう。強い拡散力の負の側面です。

いずれにせよ、この拡散力を軸に、新聞TVが報じない政治経済社会問題についても、幅広く国民の間で議論される契機になりました。
今までは、その議論の素材が、記者クラブという既得権益を通した国内通信社・新聞社の報道ベースというお寒いものでしたが、今は簡単に海外を越えて一次ソースに当ることができてしまいます。

このように、低負担のSNSは、面に近い相互の線を形成して、拡散力が爆発的なのが特徴です。ですから、おのずと対手は日本全国、または全世界になります。
歯科医院にとっては若干マトが広すぎのような気がします。

【追記 2013/9/27】
現在、財務省のFacebookが華麗に炎上中の模様です。何でも、消費増税に反対のコメントを勝手に消しただもんだから、火に油とのこと。
すごいことになっていますwww大変だこりゃ、木下康司次官わw

・・・あれっ?

もう一点、私が個人的に気になったことですが、Twitterによる拡散で一番大切なことは、大同(最大公約数)団結であり、あまり論旨の枝葉末節で不必要に敵を増やしたり余計な遺恨を残さないことだと最近強く感じます。
コレで失敗しているツイ民が大勢いることも気になります。

たとえばデフレ脱却の議論で、財政派と金融派の間で瑣末なニュアンスで論争したりするのもいいですが、今はデフレを先ず脱却するという大同(最大公約数)の目標があります。
低負担のSNSという、面に近い相互の線を形成しやすいプラットフォーム上で、瑣末なニュアンスで粘着し合って揚げ足の取り合いをくり返すと、せっかくできた網の目の縦糸横糸を、周囲を含めて自らむしりとる形になってしまい、面的なネットワークのコンプライアンスが減ってしまいます。

◆ LINEの登場( 面 ~ 系 (コロラリー)の時代)

  タイムライン主導型~文書量・情報量の短縮、低負担(チャットに近い)
  友達、グループ重視~疲労感の減少、高い既読率
  プッシュ型メディア~拡散力が強い、新規開拓はやや弱い

最初は、こんなのが流行るとは思っていなかったので、少々驚いたことを覚えています。

私が一番に思うのは、Twitterの負の側面が大幅に改善された、内々の雑談という形に特化したことが成功の秘訣だったのではと思います。

普及の中心はもちろん、スマホを自在に扱う若年層中心になります。PCネットユーザーではありません。
この辺は、Mixiのコミュニティでも意識されていたような気がするのですが、LINEは圧倒的に導入の敷居が低く、かつFacebookやTwitterに見られた“Webブラウザに対する幻想”を完全に打ち破ったところが大きな特徴だとも思います。
加えて言えば、(ガラケー(フィーチャーフォン)を含めて)モバイルはプッシュしやすい媒体です。PCではやはりプル系が基本であるのとは根本的に違います。

似たようなので懐かしいところではICQも思い出します。しかしスマホのない時代、この”Webブラウザに対する幻想”から逃避するわけにも行かず、日本ではあまり日の目を見ることはありませんでした。

必然的に、ユーザーはいくつかの準閉鎖的な「グループ」~つまり系(コロラリー)のメンバーになり、チャットのような気軽で頻繁なやりとりを、気を使わずに楽しむことができます。
いわゆる「SNS疲れ」を起こしにくい形態です。よく工夫したなと思います。

疲れを起こしにくく、面~系(コロラリー)という準閉鎖プラットフォームに対する安心感が高いので、メッセージの開封率が非常に高いのも特徴です。従来のプッシュ型メディアの代表である「メルマガ」と比べれば天と地の差です。

 
以上が、まあ、大雑把なネット環境の変遷の、自分なりのまとめです。
歯科医院でネットというと、ホームページを使って予約を取ったり、予約日前日に確認メールを送ったりするサービスが思いつきますが、システム導入費用が相当高額であり、当歯科室の規模には大きすぎるので、今のところ導入には至っていません。

導入しないうちに、ガラケー自体がすたれていってしまいました。。

 
<地域型店舗にフィットしそうなLINE@>

商用アカウントには、ご案内のように大規模向けの「公式アカウント」と小規模向けの「LINE@」の2種類があります。
小規模向けの方は、集客支援システムこそありませんが、リピーターの多い、面~系(コロラリー)という準閉鎖プラットフォームの客層には非常に向いていると思います。

いちおう面~系(コロラリー)という準閉鎖プラットフォームの条件としては

 リピーターが多いサービス
 商材・サービスの目的が限定されている 

というのが当たると思います。
たとえば、美容院などのサロン系、リラクゼーション系、趣味の買回り品などの専門店、個人経営のこだわりレストランなどはおそらくうってつけでしょう。
これらはまた、労働集約性の高い、「人対人」の傾向が強い、とも言えそうです。

いっぽう、スーパーやコンビニ、ホームセンターなどの間口の広い(=目的が限定されない)物販や、フランチャイズの飲食では、メッセージを絞りきれずにSPAM化して、あまりうまくないような気がします。むしろ大規模向けの「公式アカウント」にしてスタンプ(1垢8種1500万だそうです!!!)で集客するほうがいいのかもしれません。。

それを考えると、LINE@は、歯科の患者様にはかなりフィットするのではないかと思うのです。
労働集約型の代表でもあるし、思いっきり人対人ですし。
たとえば予防・メンテナンス重視の歯科医院の実態とは・・

 小規模商圏(おおむね半径1キロ程度)
 リピーター重視(チラシ系紙媒体は高コスト、既読率の面で不利)
 目的がきわめて限定されている 

このような条件がすっぱりと当てはまります。

また、集客、接客、追客でいえば、「追客」にもっとも威力を発揮するプラットフォームなのは一目瞭然です。
媒体が若年層に広く普及していることも、今後の医院経営を長い目で考えたときに大きなプラスと思われます。

Coutaなどのクーポン情報誌も、歯医者のような個人商店から見ると魅力的です。
事実、ホワイトエッセンス様など、クーポンを出しているところもあります。
しかし、ホ(ry は自由診療です。法規(療養担当規則)上、保険診療については窓口負担を割引してはいけないことになっています。

 保険の窓口負担3000円(1000点)をたとえば半額の1500円に割り引いたとすると、
 お上は7割負担なので筋としては患者さんの(7/3)

  1500円×(7/3)=3500円

 だけ負担すればよいことになります。
 しかし歯科医院が、1000点のままレセプト請求すると

  1000点×10×(7/10)=7000円

 歯科医院に振り込むことになります。
 そうすると、患者さんの(7/3)を超える差額の3500円分が
 歯科医院がだまし取った扱いになり、詐欺罪の構成案件になってしまいます。
 ですから、保険医療機関では窓口負担の割引はご法度なのです。

また基本的にCoutaは、集客、接客、追客でいえば、一番最初の「集客」に焦点を当てた媒体でもあり、LINE@のクーポンとは方向性が反対です。

いずれにせよ、Coutaでも、LINE@でも、保険診療は割引にできない・・
歯ブラシプレゼントなどではインパクトに欠ける気がするし・・

この辺が、課題でしょうか。。。

 

<LINE@で何をしたいか>

じつは大したことは予定していません。当面は

 当コラム(JunkStage)掲載のお知らせ
 新しい院内新聞.JPGの発行のお知らせ
 その他、院内の新着情報やお役立ち情報など

まぁ無難な内容です。どうみても、平均して2週間に1回以下ペースですね。
ブロックするのも面倒な情報の薄さwww

でも、いいんです。目的は

 院をたまには思い出すことで、頭の片隅から根本齒科室が消えないようにする
 ある程度若い世代の方に、院内情報に対する関心を(ちょっぴり)育む一助とする
 高い開封率を利用して、コラムや院内新聞.JPGへのアクセスハードルを下げる。

で十分ですから。
前述しましたように、院の中の一部の多数歯インプラントや矯正の方ばかりでなく、来院される方はみな大切であり、
とくにメンテナンスに定期的にお越しくださる方はひときわ大切な方々です。
そのような皆様が、もれなくお口の健康増進の道に進んでいただきたい、という願いが一番強いですね。

なかでも若い方は、仕事も忙しく、肉体の他の部分との比較の印象で、お口の健康に対する意識もおざなりになりがちです。そのような方のお口の健康が損なわれていくのを少しでも食い止められれば幸甚に絶えません。

【今回のまとめ】

商圏が狭く、目的限定的で継続重視の予防歯科にはLINE@が合う・・・かもしれない

(おまけ)「投網をかけるような」企業経営者系

私が強く疑問だったのは、いわゆる企業経営者系の人に、消費増税賛成論者が多いことです。

代表的なところではワタミの渡辺美樹氏や楽天の三木谷氏、もちろんケケφもそうです。最近で言うと、残念なことに麻生(太郎財務大臣)さんもそうでしょうか。
最初は、自分のところの商品やサービスを買い控えられたら損だろうに、と思っていたのですが、最近なんとなくわかってきたことがあります。

彼らは、ひとつひとつの商品やサービスを売ることよりも、シェアを拡大することに、はるかに大きな価値を見出していると考えるとすっきり納得できます。
CMでは商品やサービスの質や魅力を大切にしていると喧伝していても、それは要はブランディングやシェア拡大のための手段です。ブランディングもまたシェア拡大のための手段です。

つまり、シェアこそ全てです。

かくしてシェアを拡大した後は、まさに広く薄く「投網をかけるような」感じで収益を上げていきます。
その上において、ブランドやシェア自体が収益装置です。

 ①シェアを拡大する
 ②広く薄く「投網をかけるような」収益を上げる

【命 題】企業経営者やグローバリストは『シェア拡大』『投網』が大好き
     (あくまでも憶測ですが)

だから、「投網をかけるような」准人頭税的な消費税が肌に合うんだと思います(くわえて輸出企業の場合は還付金(戻し税)狙いというものもあります)。
国民が客にみえるんですかね・・・

しかし本来、予防歯科は、広く薄くではありながら公的に国民に給付されるべきものだとは思います。
とはいえ、これほど労働集約型で規模の経済が効きにくい業種もそうはないのではないでしょうか。少なくとも現場では提供するサービスの質こそが重要であり、増患はもちろん願いますがシェア拡大のために臨床している気は全くありませんし、できません。
赤い人の言うように、これからは潮流としてグローバリズムが行き詰まり、りショアリングや現場回帰が見直される時代なのかもしれません。

社会保障と民間企業(とくに大企業)のかかわりは常に、さまざまな問題をはらんでいます。

08:37 | nemoto | LINE@を始めた歯医者(続編)の回顧録 はコメントを受け付けていません
2013/09/25

こんにちは。根本齒科室の根本です。

まずは、2020五輪東京開催決定、とてもよかったと思います。
そして、敬老の日の台風18号、被災者の皆様にお見舞い申し上げ、復旧復興をお祈り申し上げます。

今年はTPP、猛暑、ゲリラ豪雨、竜巻などの暗いニュースが続きましたが、これを機に世の中が明るい方向に進んでもらいたいと思います。
2020は国民が一致団結して成功させて、デフレ脱却~経済発展につなげたいところです。

そんな自分ですが、医院として、先日LINE@を始めました()。

じつは私は長らくガラケー愛用者でした。が、まずLINE@の登録のためにLINEのアカウントをモバイルで取らなければいけません。
ガラケーの場合はQRコードを読み取って登録するんですが、なぜか読み込めなかったんですね。でも登録しないと・・
そんなことがきっかけで、ついにスマホ(Xperia)に変えた次第です。まだ使いにくいし、熱も持ちやすいし、電池の消耗が激しいし、慣れませんね。。
(変えた数日後にDoCoMoのiPhone報道があり (‘A`))

ちなみにLINE自体は”ドメインからして”いろいろ疑念は無くはなかったんです。
「自動登録」「LINE八分」「殲滅団」「消えない友だち」「丸分かりブロック」
などなど、私が言うまでもなくさまざまなトラブルや問題点も報告されています。

でもいろいろ考えて、現状ウチにはLINE@がイイ!(・∀・) という判断にいたりました。
その理由は、後述します。

<増税の問題>
に話を戻します。

今まで私は、専門外ではありますが、歯科の話以外にもときどき経済のこととかデフレ脱却などについて述べてきました。
私のような「人対人」の仕事をしていると、やはり一番大事なのは「人」だと感じるからです。
日々、さまざまな個性に接し、温かみを感じていると、リテールの重要さを痛感します。

そうすると、設計主義(共産主義、新自由主義etc)的な上から目線の思想に、一抹の味気なさ、冷たさを覚えるようになります。
基本的に格差拡大を助長するものや、真面目な庶民が不利になったり弱者切捨ての遠因になりかねないジャイアニズムのような風潮には二の足を踏みたくなります。

歯科医院はまさに患者様という「人」がいないと成り立たない仕事です。
各々の「人」が成り立つには、各々の「家計」が成り立たないと始まりません。

ところがデフレは、少なくともミクロ的な視点でも

 格差拡大
 家計の縮小

という二大害悪を庶民にもたらします。
物価(≒給料)の下落とともに貨幣価値が上昇していくので、どうしてもお金の節約(=貯金)を重視して、長期的視点は後回しになります。

歯科も、ただでさえ後回しになりやすいのに、国民の長期的視点が妨げられると(妨げられなくてもだが?!)さらに後回しになり、ますます予防的発想が失われ、姑息的発想になりがちになります。

治療の場合は、基本的に「とりあえず○○を」という発想から来ているので、もともとが短期的視点、姑息的発想といえます。
これに対して予防の場合は、まだ訪れていないむし歯や歯周病に対しての備えでもあるので、長期的視点、投資的発想と言えると思います。

せっかく培った予防的な発想・長期的視点の芽が、デフレで失われていくんです。

このように、個人診療所規模で臨床をしていると、どうしてもリベラル的な視点の大切さに気がつきます。
たしかに、ときどき多数歯のインプラントや全顎矯正の話が入ることもあり、それはそれでとてもうれしいですが、同時に、定期的に、より多くの「おひとりおひとり」がお顔を見せてくれることも、同じようにとてもうれしいのです。

残念ながら現在はもう、国民総中流の時代でもないようです。
アメリカの戦中戦後、日本の高度成長期~バブルまでは、いい時代でした。

また、歯科と医科は性質も対応も反対であることも分かりました。
これを主張しているのはまだ、私だけのようですが・・

ここ数年で言えば、リーマンショックや3.11のような大きな出来事もありました。
数年前はつくば市北条で竜巻被害もあり、今年はとくに風水害も多く、「国難」「災害」というイメージも、今までよりも意識されるようになってきた気がします。

しかし、ダメージを被る主体はやはり、ひとりひとりの人間です。

今後は、格差拡大を促進するような発想や、自分だけがうまく立ち回って勝ち逃げするようなことでは、日本はやっていけないような気がします。

そこに消費増税(2012野田・谷垣会談~三党合意)がありました。

もともと

 間接税
  准”人頭税”~引き算的。
  金持ちも貧乏も
  格差拡大作用

 直接税(資産課税含む)
  所得税・法人税~割り算的。
  高収入高負担、低収入低負担。
  格差是正作用

私は素人考えながら直間比率の是正に関してはこのような感覚を持っています。。

非常に大雑把ですみません。

最近(2013年9月~)は、いわゆる”財務省リフレ派?!”と呼ばれる人たちの間で、消費増税と同時に、合わせて5兆円規模の所得移転「法人税減税」「低所得者に簡素な給付」を行えばいいという議論がありますが、それならば増税も所得移転も両方やらなければ良いだけですよね。
無意味な議論と思われますので、私は反対です。

よく引き合いに出される欧米社会ですが、もともと階級社会だったり、格差に寛容な社会だったりします。
そもそも欧州では長らく民は王侯貴族の所有物であり所有物である民が住んでいるエリアが国土、ということだった伝統と歴史を持っています。
えっ、アメリカの歴史ですか?ま、まぁ~、アレですからw

ですから、社会システムや国民性そのものが、日本のような「和」的な発想とは相反します。
欧米の伝統やシステムで考えると、人頭税的なニュアンスを強く持つ消費税(間接税や付加価値税)を好むのはよく理解できます。元”所有物”ですからw

だからといって、そのままあてはめても、わが国の国情には合わないのは当然です。

 
<新自由主義的史観時代>

私自身は、もともと非常に自由主義的な考えだったような気がします。

小学校の頃「ソビエト帝国の崩壊/小室直樹」を読んで、「ソビエト帝国では机を重さだけで評価するので、軽くて機能性の高い机よりも、重くて使い勝手の悪い机が高評価になる」という記事に愕然とした記憶があります。
競争の無い社会は質が低下する、とも当時はよく言われていたものです。

また、アメリカは顕在的競争社会だが、日本は潜在的競争社会、ソ連や中国は無競争社会なので日本が一番バランスがいい、みたいなことも言われていた記憶があります。
(ソ連や中国は、権力闘争や党内闘争はすごそうですが)

中学高校大学と、私は剣道部に所属していましたが、いずれも、部員のそれほど多くない、こじんまりとした剣道部でした(大学は医歯薬系で、どこの剣道部も小規模でしたが)。

いつも、(部員の多い名門校に勝つためにはどうしたらいいか?)を考えていました。
自分の中の結論としては

 「強い」≠「勝つ」①
 今だけ勝てればよい②

 ①②より

 「強い」<「勝つ」③~”弱者の戦略”

ということになり、心身の鍛錬よりも、試合運び、打つよりも打つまでの進め方、間合いやタイミングの重視などなどに過剰に傾倒していった記憶があります。
ほとんど武道というよりは、ゲームの世界でしたw

大学院に行くようになると、さすがに剣道は引退しましたが、修了間際の最終学年の年に、ネット商品先物にはまったことがありました。あの頃はひまわり証券とかフジフューチャーズ、PanRollingなどが走りの頃で、林輝太郎とか後藤康徳などの名前がネットでもてはやされていたのを懐かしく思い出します。

 営業マンがいない自由
 資産管理・運用の自由

とにかく 投資 投機は、私にとって自由の代名詞のような気がしました。
今考えたら相当マヌケですが。。

こんなマヌケで自分だけよければよい私でしたから、小泉内閣が2001年にできてから「自己責任」という単語が流行ったことに、非常に共感を覚えていた始末です。
郵政民営化のよしあしがどうとかは、当時はとくに考えませんでした。
城内実氏や平沼赳夫氏、小林興起氏などが無理やり青票を投じて、落選したり自民党を除名になったりしていたのを見ても(そんなに意地を張らなくてもいいのに)くらいにしか思いませんでした。

もちろん、ケケφのことも、開明的な学者だ、くらいなもんでwwwどこが悪いのか、さっぱり分かりませんでした。
これは相当重症だった模様です。

たぶん、自由主義的な観点から感じる「互助会」「和」的な発想に対する違和感。
それは中高大と所属していた剣道部時代の記憶もあるのかもしれません。

当時は常総学院や常葉菊川のような名門校にいたわけでもありません。
しかし、負けてヘラヘラしている人とか、強くなるよりもみんなで和気藹々を指向している人を見て、私なりに不満を覚えていたことは間違いありません。
(他の人は、勝ちたくないのか?強くなりたくないのか?)
(他の人は、準決勝や決勝で目立ってみたくないのか?)
当時から感じていた、そのような不満な気持ちが、現役引退後も商品先物に走らせたり、自由主義に走らせたりしたんでしょう。。
もちろん部内でどのような態度でいようと、まさに『自由』なわけですが・・

 他人と違うことがカッコイイ
 成り上がるための自由が欲しい。
 成り上がるときの規制がウザい。

しかし、そういう”弱者の戦略”的な発想のときは、悪い意味で前向きなので、何事に対してもついつい
「○○さえなければ一気にブレークスルーだ」
みたいに短絡的に考えがちです。

たとえば、(政財官)癒着とか既得権益とか○○を叩きさえすえれば世の中は良くなる、のような単純な発想です。

ここが、「強い」「勝つ」の違いだと思います。
「勝つ」ことを積み重ね、あるいはその前提で、継続は力なりを実践できる人が「強い」んだと思います・・

語弊を恐れずに言うと、「勝つ」の方が、一般の方や患者様がイメージしている、治療に期待するイメージであり、「強い」の方が、当歯科室で目指しているイメージかもしれません。

あのことの橋本内閣では「金融ビッグバン」などともてはやされ、「税金のいらない銀行」なんて本が非常に売れた時代でした。
(ああ、個人でもHSBCやケイターアレンなんかの海外オフショアに口座を持てるようになったんだ。そうすれば、財務省に相続税を取られなくてもすむんだ)
その裏で、相続税の控除額が1000万×法定相続人の数+5000万だから自分には全く関係のない話だ、なんてことは、少しも知りませんでしたw

(アメリカの属人主義はかわいそうだなあ。日本でよかった)
その裏で、デフレ期に増税をするということがどれだけ危険なことか、などということは私も含めて誰も真剣に気にしていませんでした・・

小泉内閣が出てきた頃から、どうも実体経済も疲弊して「勝ち組」「負け組」なんて言葉が気になり始めましたが、「自由」という言葉の魔力には取りつかれたままでした。
(バブル期にも「マル金」「マルび」なんて言葉があったし、単なる言葉遊びだろう)

このころに開業しました。2006年の頃です。
ハンカチ王子が甲子園で活躍した、あの年です。

・・・すみません。長くなりましたので2回に分けます(すぐageます)。
   LINEの話も、次回にします。

【今回のまとめ】

「強い」と「勝つ」は違う。
「勝つ」+「継続」≒「強い」。「予防」+「継続」≒「健康な口腔」

02:58 | nemoto | LINE@を始めた歯医者が消費増税に反対の理由 はコメントを受け付けていません
2013/09/02

こんにちは。根本齒科室の根本です。

前回前々回「もしもむし歯が痛くなかったら」ワールドについて考えてみました。
そして、同時に「ハゲ禿髪は「病気」ではない」ことも書きました。
そのとき、ふと恐ろしげな三段論法を思いついてしまいました。

<1>むし歯が痛くない~むし歯を放置するのがわりと当然になる
<2>禿髪は「病気」ではない~禿髪を放置するのがわりと当然になる

<3>痛くないむし歯は、病気ではない

・・・!

そんなバカな!と我ながら一瞬思ってしまいました。
そういえば、禿髪は「病気」ではないということなので、かつらとかに保険が利くわけないですね。
また、近視・遠視・乱視なども「病気」ではないので、メガネにも保険が利くわけないですね。
(でもイギリスには『健康保険のメガネ』という、低品質医療を揶揄する諺がありますが)

むし歯や歯周病はどうでしょうか?

むし歯は、はっきり言って、ちゃんとしみたり痛くなってくれるのなんて、10本中2~3本もあればいいほうではないでしょうか。私が見ている範囲でも、ほとんどステルス状態で進行しています。
歯周病に至っては、またの名を「Silent Disease(静かな疾患)」と言うほどです。自覚症状がほぼないということそのものが歯周病の一番恐ろしい点のひとつでもあります。

そしてこれらは、自然治癒しません。むし歯の穴は縮まないし、歯周病(慢性辺縁性歯周炎)で下がった骨は戻りません。
しかし自覚症状がありませんね。

昭和時代やそれ以前の人は思いました。 「 歯 の 寿 命 だ 」

一部のむし歯はまれに痛くなることがありますが、大抵は無自覚にステルス進行していきます。
例えば、ある日突然、「奥歯が割れた」「奥歯が腫れた」などということが起きたとします。
すべてとは言いませんが、少なくないケースで、無自覚に進行した大きなむし歯のせいで強度が大幅に低下し、そのせいで折れたり割れたり腫れたりすることが、「割れた」「腫れた」な急性症状の遠因となっています。
そのような、慢性的な進行は、通常は当事者がまったく関知できないままに進みます。

このようなことは、今でも現実にしばしば起こっています。7~8割方は自覚症状がありません。
つまり、「もしもすべての歯科疾患が痛くなかったら」は、7~8割方達成されているんです。

冒頭の三段論法を考えると、ちょっとオソロシイかも・・

私は、自分が歯についてどう考えているかということもそうですが、前回前々回と今回は、「もしもむし歯が痛くなかったら」ワールドを通じて、他人だったら、一般の方だったら、歯についてどう考えるだろうか、についてずっと思いを致しています。

矯正あれこれ

 矯正装置が恥ずかしいから、歯ならびが気になるけどやりたくない。
 やるにしても、目だたないように、舌側(裏側)矯正やマウスピース矯正でできないか

という問い合わせの声が、当院でも絶えません。

いつも非常に不思議に思うんです。

 なぜ矯正装置が、恥ずかしいのか?
 なぜ日本でだけ、恥ずかしいのか?

変な話、矯正装置は、2年くらい経てばなくなるものじゃないですか。

それよりも、そのヤニがこびりついた歯肉とか(ヤニは皮の中にもしみこみます)、色あせた詰め物、ずれてる差し歯、歯肉縁から透けてる縁下歯石etc..

はるかにヤバい物が、いっぱいありますよ。
あるにもかかわらず、それらのことは何とも思わないで、矯正装置が恥ずかしく感じることは、理屈で考えるとどうしても分からない。

これは、美意識の個人差というよりは、日本人に共通する独特の意識です。

昔の、江戸時代のことを考えて見ましょう。日本では既婚者の鉄漿(おはぐろ)が、むしろ美の証でした。
逆に『明眸皓歯(めいぼうこうし;白い歯の美人)』とは、杜甫(唐代)の言葉です。
歴史的にも、この言葉がわが国で喧伝された痕跡はありません。

これらからも、日本では伝統的に、歯の着色には抵抗がない文化だと感じます。。

何より、色あせた詰め物、ずれてる差し歯は何十年も、もしかしたら一生そのままかもしれませんが
矯正装置は一生のうち、人生88年(女性)のうちの、わずか2年ですからね。

日本以外の先進国では、当然ながら、歯ならびの悪さを放置するよりも、矯正装置がついていることの方が高評価であり、「針金ガー」とか恥ずかしがる人はいません。

ですから、わざわざ時間とカネを倍かけて、よけいにしゃべりづらく食事しにくい方法を選ぼうとする動機がほぼありません。
時間とカネが倍かかる舌側
矯正などが流行るのは、基本、日本ならではのようです。

鉄漿や不良修復物などのことを考えると思いますが、それが良いか悪いかは別として
本当は日本人は、歯の着色や汚染を、特段恥ずかしいとは思っていないのではないでしょうか?

どんな理由があるのかは、私にもよく分かりませんが、自分なりにいろいろ考えた結果、現時点では、こんな感じです。

◆ 保険診療と[貴穀賤金(きこくせんきん)]の[農本主義(のうほんしゅぎ)]

江戸時代の朱子学が代表的です。コメなどの実物を尊び、カネを卑しいものとして蔑む。
農業を尊重するのは大変結構ですが、貴穀(実質GDP↑)賤金(名目GDP↓)も行き過ぎると、まさにGDPデフレーター(=名目GDP÷実質GDP)押し下げのデフレ推進思想や縮小再配分、悪平等主義に通じる虞があります。
「上を見るな、下を見ろ」など、まさしく典型です。
これらを防ぐために幕府はたびたび改鋳(かいちゅう≒金融緩和)によるインフレ化政策を余儀なくされていたようです。

また、士農工商の言葉が示すとおり、金儲けは卑しい行為として農業や”工”業の下に位置づけられていました。ですから

 ①「お金が高い」⇒[貴穀賤金]⇒医療のクセにけしからん。
 ②(お金が高いからけしからん)という考えがバレたくない。
 ③そうだ!「装置がみっともないからということにしようwww

・・・
何とも荒唐無稽に思えるかもしれません。
しかし、いろいろ考えても、他に合理的な理由があまり思いつかないのです。

たとえば、矯正が乱暴な治療だからイヤだ、という説はどうでしょうか?

いやいや、もっと乱暴な治療や大きなリスクを残す治療は、保険診療の中にもいくらでもあります。
しかし日本では、保険診療そのものや、診療内容そのものが排斥されたことはありません。
よく出る不満は、昔から「回数がかかる」「待たされる」「説明不足」であり、診療そのもののダメージや予後ではありません。

これを、歯医者叩きの面から考えて見ます。

一般に、歯医者が叩かれるのは、「回数がかかる」「待たされる」「説明不足」とか、不衛生、横柄な対応などの事例が多いです。これらは治療そのものに対する批判ではありません。
むしろ、根底に

 回転率の高さ
 安い診療単価

という二大問題があるから、結果として上記のような、主に時間的余裕がないことに端を発するトラブルという形であらわれてきます。
治療そのもので嫌悪されるのは、難しい親知らずの抜歯くらいではないでしょうか。

現在、治療そのものが嫌悪されているのは、主として「矯正(矯正装置がみっともない)」であり、「インプラント(危ないこわい)」です。

こういうと、すぐに

「そうじゃない
       ⇒痛そうだからだ」
        怖そうだからだ」
        恥ずかしいからだ」
        マスコミガー」etc

という声が聞こえてきそうですが・・・

この2つの共通点としては、第一に「保険診療ではない」「高額だ」ということがあげられます。
これは、何の根拠もなく、こう言っているのではありません。
その昔(高度成長期)、歯医者が批判されたのは、「差額徴収(歯医者は金儲け主義)」矯正治療だからです。

ここで、差額徴収と混合診療のまとめを簡単におさらいしておきます。


◇ 差額徴収まとめ

 金歯 1本5万
 銀歯 1本1万(保険)

 どっかのオマケとは、色が逆ですね。
 銀歯は、窓口では3割負担なので、この計算では3000円になります。

 ところで、金歯と銀歯(10割換算)の差は4万円あります。
 そこで、3000円に、差の4万円を足した、合計4万3000円を払うと金歯になります。

 ちょっとだけ(7000円)だけど、金歯が安くなりました。

 国としては、金歯なのに保険を使われて、ムダだ!と思ったようです。
 民間やマスコミからの金儲け主義批判もあり、昭和51年課長通知で、廃止しました。
 結果として、金歯で微妙に悩んでいた層で、あきらめて銀歯に流れた人が多く、
 むしろ保険分の歯科医療費が上がる結果になりました。。



◇ 混合診療まとめ

 <パターン1 混合診療>

 ある疾患に対して、一連の治療エーと治療ビーが行われて完結するとします。
 この場合、2つのパターンに分かれます。

  治療a(保険診療 3割)
  治療B(自由診療)

 <パターン2 混合診療禁止>

 治療B(自由診療)に至った段階で、治療a(保険診療)の7割(お上が負担する分)
 も出せ、というのが混合診療禁止です。

  治療a(保険診療 3割)
  治療B(自由診療)
   
+
  治療a(保険診療 7割)

 なぜ後で治療aの7割を徴収するかというと、一応「国庫(や保険料)の負担が大きいから、
 という説明です。
 このように、少なくとも局所だけを見ると、混合診療禁止の方が患者負担が大きいのです。

もちろん、どのような”商品”にせよ、高いよりは安い方が良いに決まっています。
また、厚生省(厚労省)としても、国民の血税、じゃない、保険料で賄う物なので、つねに、野放図な大盤振る舞いを慎まなければならない立場なのは理解します。

しかし、以前から、こと医療に関しては、診療単価に限らず、医療システム全般に対する独特な観念があるような気がしています。

◆ ヤブ(野巫)医者伝説

とりあえず江戸時代から考えて見ます。当時の規範が、自由化・平等化よりも安定化・固定化を第一に考えた政治体制だったこともあり、医師・歯科医師・薬剤師の国内での地位は今では考えられないほど低いものでした。医師は一部を除いて、今で言う


“霊能者ファンタジスタ”

みたいなものでした。
「野巫(ヤブ)医者」ということばがそれを端的に現しています。

彼らは村人や町人たちの仲間ではないので、村や町には居を構えず、「野」という外野にいます。
普段は薬草や、人によっては漢方や蘭学の研究をし、村人からお呼びがかかると、出番です。

野巫(ヤブ)なので、山窩(サンカ)のように渡り歩いたりはせず、多くは定住はしているようです。
サンカと言えば、五木寛之の著書が有名ですが、最後のサンカと呼ばれた人が、ちょうど私の出身地のすぐそば、静岡県三島市~函南町のあたりで昭和30~40年代に確認された、という話をどこかの本屋で立ち読みしたのを懐かしく思い出します。

それでも、野という「ムラでない外野」にいるので、いわゆる「ヨソ者」です。

その他は今回は手短にしますが、

 医師   ~野巫、香具師
 歯科医師~大道芸人(抜歯)、木彫師・入歯師(補綴)
 薬剤師  ~藤内(とうない;富山の置き薬の源流)、香具師

などは、いわゆる特殊技能者であり、普段ムラ内部で接する人種とは異なるわけです。
昔は、今のような健康観は全くなかったので、彼らの仕事は基本、せんじ薬を飲ませたり、加持祈祷心霊治療wパフォーマンス(抜歯が典型)wwwwww etcでした。

江戸時代の医療は、ほとんどその場限りに近い、姑息的な処置なわけです。
予防歯科とか長期経過観察のような、西洋医学的な継続処置がほとんど存在しません。。

医学的な継続処置を前提にすると、そこに医者(=ヨソ者)が長居するのと同じ意味になり、
どうにも肌が合わないのではないかと推察します。あくまでも憶測ですが・・・

 そうえいば、秋田県に、医者が居つかないので有名な無医村がありますね。
 名前は忘れましたwww
 あのイメージに微妙に近いと思うんです。
 村内部に居つかれてしまうと、空気が合わないから、トラブルの元になってしまう。
 あ、あくまでも憶測ですが・・・

◆ 医療(≒ファンタジスタ)管理主義

そんな野巫医者や大道芸人や香具師やファンタジスタetcでしたが、明治時代になり、西洋医学に鞍替えします。
時代が変わり、昔風の医療やパフォーマンスは禁止されてしまったからです。
しかし、貧乏人を診ないで追い返したりする、上から目線な風潮がはびこりました。

「医者(=元ファンタジスタ)のクセに生意気な!」

今は、医学部の偏差値が高いので、医者は高級な仕事のような感じですが、その昔は全く違います。
なにしろ、ついこの間まで加持祈祷が得意技のファンタジスタwですから。

そこで、明治4年に「医制」という医師法(医師取締法)の原型ができました。
貧乏人だからと診ないで追い返すと、最悪禁固刑です。これが「応召義務」のはしりです。
そのほか、除霊wパフォーマンス等を医療行為として行うことの禁止、医師免許の要件についてなどのさまざまな規定がととのえられました。

また、明治後期~大正時代には、医療費の軽減のために、済世会病院(明治天皇)、軽費医療運動(鈴木梅太郎)
などの潮流もおこり、一部に医療保険制度もできあがりました。
ただ、戦前の医療保険制度は、労働者とその家族のためのものであり、今のような「全国民のもの」という建前ではありませんでした。

戦後は、それが皆保険制度に移行していきます。歯科は昭和33年に移行しました。
戦後民主主義の風潮を経ながら、岸~池田内閣の所得倍増計画に象徴されるような
「国土の均衡ある発展」「一億層中流」と潮流を一にしています。

なにしろ国民全員が保険証を持っています。
「うちは保険は診ません」
そんなところには、誰も行かなくなってしまいます。
仕方なく?!保険医療機関登録をするしかありません。

そこで、保険診療による、おもに金銭(診療報酬)の流れと許認可(保険医、保険医療機関)を通じて、厚生省が医療を管理していく体制ができあがりました。
この体制については、ケケΦなどのごく一部をのぞき、国民のほぼ全員の支持を得ています。
諸外国に比べて、応召義務や現物給付など圧倒的に患者有利だからです。ほとんど既得権益、利権です。

語弊を恐れずに言えば、保険制度は、医療に対する国民の既得権益でもあるわけです。
と同時に、藪医者の時代から続いてきた、伝統的な医療者統制のひとつでもあります。

でも、中野剛志先生ではありませんが、私は何事も、内実を精査せずに「既得権益だから悪だ」「規制だから悪だ」と一概に決め付ける、みんなの党(でも音喜多駿先生都議選ご当選おめでとうございます)や西側維新や記者クラブのような大根切りは、いかがなものか、と考えます。
はっきり言って、
保険医療制度のような、国民にとって「よい既得権益」「よい規制」も厳然としてあるじゃないですか。それに日本国民であるということだけで、他の多くの外国に比べてパスポートの力も圧倒的に強いし、社会保障も経済も非常に有利ですよね。この、日本国民だということも考えてみれば立派な「よい既得権益」です。(当院を訪れる外国籍(おもに途上国)の患者様を診るにつけ、そう思います)
ですから、新藤総務大臣いわく?「総論反対、各論賛成」のような、先入観にとらわれない柔軟な視点が第一に求められると思います。

(聞いてるかケケφ?自由真理教とか、もう古りぃ~んだよ)


規制といえば、現在は保険制度、戦前までは医制、そして江戸以前の時代は、じつは身分制度がありました。

士農工商という言葉がありますが、それに合致しない多くの特殊技能者などが多数いました。
代表的なのが芸能人(歌舞伎、能、踊り子etc)です。その他医療系とか、サンカなどもそうです。

それらの身分の人たちは、士農工商の「外」とされました。
「下」というよりか、「外」です。
この辺はほとんど詳しくないのですが、今も昔も、とくにムラ社会や共同体の中で、上下差別よりも内外差別のほうがよりキツイのは、誰でも肌身で実感したことがあるのではないでしょうか。

だから、江戸以前はムラの外に出すことで統制し、明治以降は法律で管理する。

自由気ままな風来坊とか、ブラックジャックとか、スーパードクター何とかみたいなのは、物語としてはいいですが、実際どの先生もそんなスーパー自由人だったら、それもどうでしょう??
ほとんど医療共産主義のような皆保険制度ですが、案外ムラ社会の日本人の肌に合うところがあるのではないかとも思います。

「特上」は出ないけど、「並」~「並と上の間」で大体クオリティが揃って、まず「外れ」がない。これも、戦後民主主義的な感覚からしても、安心材料ですね。

このような制度設計を「『ソフト的な』社会インフラ」と捉えれば、確かに国民の安心材料です。

◆ 禿髪、肥満と、歯科疾患の”社会的認知”

しかしもちろん、健康なときには、医者にはなるべく世話になりたくない、と思っています。
歯の問題や、禿髪、肥満くらいなら大したことないし、医者にかかるよりは、放置しておく。

それが当たり前になる。

禿髪も、歯の問題も、このような社会的認知さえあれば、決して恥ずかしくはありません。

だから、もし歯科疾患でも歯が痛くならないなら、むし歯や歯周病の放置が早晩社会的認知を得られるであろうことは、想像に難くありません。
あんな予約を取ってまで痛い思いをしなくても済むなら、誰が歯医者になんか行くでしょうか。

痛くもなく、さして不便でなければ、歯医者に通ったりすることもないでしょう。
そうすれば、50代~60代などになれば、無歯顎の人も今の何倍も多くなるでしょう。

しかしそれが当たり前になっているわけです。
たとえば知人に「歯が欠けてor抜けて食べにくい」と相談しても、

 そんなもんだよ、僕もそうだし。歯の寿命だし、仕方ない」 とか
 「不便だったら入れ歯かインプラントでも入れておけば?」 とか

こんなそっけない答えが返ってくる世の中なんでしょう。

「食べにくい」と感じれば、入れ歯でも入れておく。
鉤歯がダメになって抜歯になったら、さらに大きな入れ歯に変える。

歯がなくなったら、総入れ歯にする。

この過程で、嘔吐反射が強く、入れ歯を入れていられない人のなかで一部経済的に余裕がある人の場合は、インプラントを検討するのかもしれません。

昔TVをにぎわせた「きんさん ぎんさん」のきんさんの方も、無歯顎のまま顎堤(土手)だけで、何でもご飯を食べていて、何の不便もなかったとのこと・・

多くの方は、きんさんのような感じになることでしょう。
見た目が気になる人は、入れ歯を入れるのかもしれない。
しかし、下手に入れ歯を入れたりすると、がたついて合わなかったり、しゃべりにくかったりしますよね。
入れ歯安定材は、やはり手放せないものになるでしょう。現在もそうですがw

また、とくに合わない入れ歯を入れると、顎堤吸収が促進され、土手がより早く痩せることになります。
そこで、どうせ土手が痩せるくらいなら、普段は入れ歯を我慢しよう、などということにもなりかねません。

そしてそれが当たり前になっているわけです。
たとえば知人に「土手で咬むのは、痛くて食べにくい」と相談しても、

 そんなもんだよ、僕もそうだし。慣れれば唐揚げでも天ぷらでも大丈夫」 とか
 「不便だったら入れ歯かインプラントでも入れておけば?」 とか

こんなそっけない答えが返ってくる世の中なんでしょう。

では、歯周病についてはどうでしょうか。

以前は歯石や歯周組織について全く知見がなく、まさに 「 歯 の 寿 命 」扱いでした。歯周病にまつわる不便な点は

 グラグラしてくると咬みにくい
 口臭が気になる
 たまに腫れる
 歯みがきで出血する

などが考えられます。

が、これらは病気というよりも「不便」として捉えられることでしょう。

「口が臭いなんて、キメー、無理」

と思う方もいるかもしれませんが、そんな時のためにリス○リンもあります。ガムもあります。
今でも、当院では、男性の方が上記のような内容を主訴に歯科医院に初診来院されたり、問診票に記入するケースはほとんどない感じです(女性ではしばしば散見されます)。
また、歯が原因の口臭がある場合、たいていは、中程度レベル近くか、それ以上まで歯周病が進行しているか、神経まで侵されているようなむし歯の大穴がある場合が多いものです。

それは、歯周ポケットや歯の大穴など、複雑で手入れができない部分の空間が生じて、そこに雑菌がたかり、腐敗物を産生し続けるからです。。

もちろんこれらの処置は、たいていの場合、数回以上かかります。
でも、”痛くない”んだから、治療に通う方が面倒ですよね。

「しっかり咬めることで寝たきり防止」という考えも、最近はあるにはあります。

しかし、当人にとってみては、そんな寝たきり防止のために歯をわざわざ残したり入れ歯を作らされたりするのも、面倒極まりない話っちゃ、そうです。
しかも、入れ歯を安定させるために、わざと歯を抜かなければならない(便宜抜去/戦略的抜歯)場合も少なくない。
そんなことをされるのも、さらにおっくうな話です。

このように、歯が崩壊したり、なかったりしたとしても、本人にとっては別段『困ること』は起こらないわけです。

「しっかりかんで寝たきり防止」「ゴルフのスコアが伸びる」などと言われても、慣れれば唐揚げでも天ぷらでも大丈夫」と返す人が大半の世の中だったら、そこまで必要性を感じない、というのがコンセンサスになってしまうのでしょう。。

◆ 歯が痛い と 歯が悪い の間の遠い距離

以上、2回にわたって、「もし歯科疾患が痛くなかったら」ワールド、という仮定の元で、主に憶測に基づいてですが、一般の方がどのように考えるであろうか、プロファイリング 考察 空想してみました。
その結果は、遺憾ながら、現在の感覚からはかなり退化したような内容でした。

今まで書いてきたようなことを言うと、お叱りの言葉をいただくかもしれません。

「お前が歯を大事にしろと言うから、私は○カ月おきに健診に通って大事にしてきたのに」
「根本は予防が大事だと言ってきたのはウソだったのか」

もちろんおっしゃるとおりです。が、我々は日本人でもあります。
たまたまありがたいことに現在のところは「予防が大事だ」「健診に行きましょう」みたいな考えが普及しつつあります。

しかし、もし日本が、今まで書いてきたような『歯が痛くないワールド』だとしたら、どうでしょう?
わが国においては早晩

 「一般人は大体みんな行ってないから」
 「いちいち行かなくていい感じだから」

という社会的コンセンサスが早々と形成されることでしょう。
そして、歯医者には行かない方が当たり前、的な空気になってしまうんでしょう。。

仕事とかお付き合いで、仕方ない人は、歯を整えておかないとステイタスがどうのとか写真映りがどうのとかいろいろ面倒だから、整えておく。
そうでない人は、痛いわけでもないので、あまり歯の保存や延命に関心がない。。

これでは、一般に歯の治療や予防が普及した状態とは、とても言えませんね。

歯が痛くなければ問題なしとして放置することは、遠くない将来の、歯の崩壊や咬合機能の崩壊に直結します。
しかも、傷口と異なり、自然治癒力がありませんから、必ず直結します。

 人間にとって、歯とは何なのか?
 歯が自然治癒力がないことは、人間にとってどんな意味があるのか?

考えてみれば不便で面倒な「歯」。いろいろな切り口や意義があると思います。
それらの切り口や意義はもちろん、私が上から押し付けるものではありません。
おのおの環境や考えは異なると思いますので、皆様各自で熟考いただければと思います。
ただ、その際はせめて最低限

この事実だけは下敷きにしていただいた上で、各位ご高配いただきたいと思います。

【今回のまとめ】

歯が痛い/痛くないを突きつめて考えると、人生における歯の意味、治癒力の意味に辿り着く。

(おまけ)推薦図書 不潔の歴史

昨今の潔癖症は、最近のアメリカの流行の後追いのようです。またまた毅然として対米追従です。いっぽう現在、当のアメリカ自体は、ややそれを脱しつつあります。原因はおもに、1%対99%な経済問題です。

02:45 | nemoto | 国民歯科とヤブ(野巫)医者~もしもすべての歯が痛くなかったら・・ はコメントを受け付けていません
2013/08/31

こんにちは。根本齒科室の根本です。

8月は、散々な月でした。。ちょっとコラムどころではなく
[‘A`]

ところで、Windows7をご使用の方

 自分のログインユーザーネームとパスワードも把握していますか?
 Adminは有効になっていますか?Adminのパスワードもありますか?

詳しくは後で書きますが、甘く見てると、7にはとんでもない落とし穴があります。

ケチのつけ始めですが、まず7月20日からみるみる患者数激減が激減していきました。
安倍美楠の負の副作用でしょうか?例年にはこのようなことはないので非常に危惧を抱きました。首相の選挙演説に影響されて今年はみんな旅行に行ってしまったのか、猛暑やゲリラ豪雨のせいで足が止まってしまったのか、とにかく散々な院内でした。

その他(ここに書けないことを含めて)いろいろありました。

PCトラブル
 8/16
 Windows7で突然「ユーザー名」「パスワード」の『両方』求められる画面に

 ログインできなくなる。
 「パスワードのリセット」の表示をクリックしたらパスワードリセットディスクの挿入を求められる
 →事前に当該PCで作成しておく必要がある。リセットできず(というかもともとパスを設定していない)
 utilman.exeをcmd.exeに置き換えてコマンドプロンプトもユーザー名SYSTEMで入れない
 (コンパネやコンピューターの管理にアクセスできず、蹴られる)
 knoopix(unixの一種)のCDを焼いてCドライブを覗いても、ファイルコピーがうまくいかない 
もう1台の古いFUJITSUのデスクトップPCもなぜか同時に壊れ、起動しなくなる
 ”○○(失念).sys”が足りないという表示が出たので別のノートから同名ファイルをUSBメモリにコピーも。。
 ファンを掃除しようと裏蓋を開けた後、BEEP音がなり、BIOSも起動しなくなる
Windows7の再インストール
 ログインできないので当然リカバリディスク(DELL)を作れない
 ダウンロード販売でW7買ったら英語版だった
 日本語版を改めて買ったら間違って32Bit版を注文~64Bitに交換
 ↑AMAZONで買ったのに、発送元が何と中国広東省で問い合わせメールアドレスが.co.kr
ホームページにウイルス感染
 全ページにコメントアウトを装ったJavaScriptを貼り付けられる
 駆除後、HTMLのパーミッションを644のままにしておいたら無料相談フォームが403
現金の入った封筒を銀行に置き忘れる
 防犯カメラで確認されて、次の朝に訪れたら返していただけた

この間、ずっと予備のB5ノート【命綱】で細々と対応。

結局買ったもの
(↓この子、本当に使える子だった!クリックで尼損にGO)

 S-ATA直付けコード【命綱】
 1T(いちてらばいと)の外付けHDD
 OS

分かったこと

 デスクトップPC内HDは、直付けコード(片方がS-ATA、片方がUSB)で他のPCからUSB外付けHDとして読める
 デスクトップPC内HDでのWindowsが立ち上がらなくても、他のPCからファイルや設定を【命綱】全部吸い出せる
 Windows7はCドライブにのみインストールされ、Dドライブは全く無傷だった(Dドライブ吸出しは結局無意味)
 C\Users\[ユーザー名]\Downloadsに結構大事なファイルが多い(私はセコいのか)。。
 C\Users\[ユーザー名]\Desktopを移行(コピー)中に、勝手にデスクトップが再現されていく
 万一の危険防止のために、あって非常に安心(自己責任)だったソフトがWindowsLoader2.2.1
 Thunderbirdは、設定を移行した後にインストールしたら、いきなり元の設定が保存された形で立ち上がった
 Thunderbirdの再インストールは、~\Downloadsにあった当時のバージョンをそのままインストールが奏功か?
 GoogleChromeも、設定移行後に勝手にブックマークやSpeedDialが修正されていた
 「パンダ」という無料アンチウイルスソフトがとても軽い(>>(越ry)>>MSEorAVAST)
 アドビ祭り絶賛開催中!まだまだ頑張りますw
  AI(CS2)は、「Google日本語入力」「IME2010」の2つを入れるとWindows7でも普通に動く
 Dynafont600+3000は付属のインストーラーが古くて使えず、ドラッグ&ドロップのみ

こう書くと、割合あっさりとした感じを受けるかもしれませんが、これでも何日も徹夜するハメになっております。こういうことが好きで趣味でやっているわけではないので、本当に心が折れかけました。

そもそも夏休みに入ってから、例年ここまで患者数が落ち込むことはなかったので、とても不安な気持ちに。
(もうウチはつぶれるんじゃなかろうか。。)
そこから猛暑やゲリラ豪雨もあり、お盆まで患者数がとんでもないことになった状態のまま推移。
(ご先祖様、うちの院を助けてください。。)
祈った矢先に、突然のPCトラブル。

トラブルの発端は、ユーザー名とパスワードの両方を突然要求されたところから。

いきなり右側の画面になって、「おっ、パスワードのリセットか」と思ってクリックした後の出来事のことを考えると、今でも背筋がぞっとします・・
セキュリティーのためにレジストリをいじって、わざとこういうログイン画面にする方法もあるようですが、私の場合は、それこそ何の予兆もなくパスの設定もない状態でいきなりコレになってしまったので、まさに

 こ の 世 の 終 わ り

のような気分だったです・・

教訓

必ずAdministratorのアカウントは有効に(ログイン画面でAdminも出るように)しておく。
7は初期アカウントユーザーにAdmin権限が与えられるかわりに、Adminが無効になってしまう設定。
なので、早いうちにAdminを有効にしておかないと今回のようなエライ目にあう。

初期アカウントユーザー名のパスワードは、何でもいいので付けておく。
パスなしでもできるが、両方要求されたときに手が出なくなる。事実いつものようにパス無しで
ログインしようと思ったときに、蹴られてログインできなかった・・

パスワードリセットディスクの場面で、全体の7~8割の精神的ダメージを蒙った

・・・

はぁ~、完全復帰したのが、ホント最近のことです。
原稿のネタはあるのですが、とても清書する気分になれませんでした。
(そのほかここに書いていない(書けない)プライベートなトラブル、辛いことも頻発しました)
近々、ちゃんとしたコラムをageますので、何卒お許し下さい。

【今回のまとめ】

備えあれば憂いなし。Vista以降はログイン管理を厳重に&S-ATA直付けコードは大当たり

07:22 | nemoto | 【歯と全く関係ない話】PCトラブルをこじらせた話 他 はコメントを受け付けていません

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