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2011/07/15

こんにちは。歯科医師の根本です。

今日は指向を変えて、歯医者のがっかりさせ方?!について少しお話してみたいと思います。
(閲覧注意:好まない方はブラウザの[戻る]をクリックしてください)

誰でも、自分だけで歯を守ることも、歯を何とかすることもできません。
しかも歯やお口は、健康の入口とも呼ばれる大事な器官・臓器でもあり、
歯にトラブルがおこると、さまざまな部分の体調が悪くなることが多いです。

そこで、プロの管理下に歯を置くことが大切です。
とはいえ、歯医者の敷居もなかなか高いものです。

しかし、歯医者のほうも「こんな人だと仕事がやりやすいorやりにくい」というのは
結構存在します。
もちろん、どの歯医者も同じというわけではありませんが、今回挙げた点については
結構多くの知り合いが「あーあるある」という感じだったので、ぜひご高覧下さい。


◆ 予約を気軽にキャンセルされたとき

どこの歯科医院でも同じだと思いますが、これが一番きついです。とくに

 新患の予約が入って、当日無断キャンセルの場合
 あっさり気楽に寝坊などで無断キャンセルの場合
 割と些細なことで連続で予約変更がつづく場合

こんなときは、本当に落ち込みます。

いい加減、5千円くらいキャンセル料をいただいてもいいですか???
・・・えっ、やっぱダメですか?なぜですか?

でも、おかしくないですか?
予約制でキャンセル料を取れないのって、世界中探しても日本の歯医者くらいです。
あなたが店長だったら、どう思いますか?

予約制ということは、人間&場所の時間貸しと同じです。いろいろ準備しています。
客の都合で一方的に穴をあけられたりしたら、その時間や手間が台無しです。

「エステやサロンやタトゥーは予約のキャンセル料を取れるのに
 何でウチらは取れないんだ?」

普通の店長なら切れますよ。
というか、そんな商売には参入してこないと思います。

同じことは「当日キャンセル」にも言えます。
事情があることは非常によく分かります。非常に良く分かります、分かりますが・・・
それでも落胆するものです。そうそう

 家族でまとめて予約⇒当日or前日に予約変更

コレ、本当に力いっぱい落ちます。
「○時0分から長女、15分から次女、30分から母親」
これがまとめて穴が開いたら、1時間パーですよ。
ウチの場合は、諸々込みで1時間あたりのコストが1万5000円近くあるのに・・

少なくとも、歯科についてはすでに順番制は破綻しているので、古い規則を改正して
保険とは別に実費でキャンセル料の徴取を認めたほうがいいと思います。

<番外篇:正しい転院のしかた>

ごらんの皆様の中にも「あっ、この歯医者はハズレだ」と感じた経験をお持ちの方は
多いのではないでしょうか。(新しい歯医者を探さないと・・・)

しかし少なくとも、無断キャンセルだけはご勘弁ください。
最低限の仁義だけは切っていただけますようお願いいたします。

①次回の予約をなるべく先の方にとる

 「えっ、行かないのに予約を取ってもいいの?」
 できればその場で断れればいいのですが、角が立ち、なかなか難しいものです。
 なるべく先に、最低でも1週間以上延ばして、一応予約を取りましょう。

②なるべく早く(できればその日の診療終了間際)電話を入れる

 長くても翌日の診療時間内までには連絡を入れましょう。
 お願いですから、予約の前日や当日は勘弁してください。

 
③「仕事/家族の都合etcで予定が立たない。

 ~改めてこちらから連絡します」と連絡します。
 こちらもピンと来ます。(ああ、最低限の気を遣っていただいたんだな)
 ハズレの歯医者も社会インフラの一部です。お互い気持ちよくお別れしましょう。

 きわめて簡単なことでしょう。

◆ ある治療法をすすめられて「検討する」といわれたとき

ご覧の方は、なぜそれがおかしいのか、と思われるかもしれません。
それは、プロと素人の間には、あまりにも判断力のレベルに差があるからです。
どの分野でも、そうなのかもしれません。

とくに中長期的な見通しについては、全く想定外といっても過言ではありません。
また、全身状況や生活環境、習癖も当然視野に入れて検討しなければ片手落ちです。
それだけ、歯やお口は生活習慣や食習慣、ライフスタイルが如実に出るものです。
歯は、単なる部品のようなわけにはいきません。

ある治療法をご提案するときというのは、十中八九、それらを専門的かつ多面的な見地から
検討に検討を重ねて、ほぼ絞りきった状態でのご提案
になります。
つまり、そのご提案が出るというのは、ほぼその症例を見切ったに等しいということです。

ですから、我々からしますと、「検討する」と言われますと
「専門的な見地からここまで練って出したものを、さらにどのように検討するのか?」
こう思うわけです。

そこは分かっていただきたいのですが、個々の事例について具体的に
そのあたりまで深く説明する時間を経営上取れないのも問題だと感じます。

◆ ある治療法をすすめられて「家族に相談する」といわれたとき

こちら側からすると、意外とずるい手です。
営業の本にはこの場合「家族にも説明させて欲しい」と言うと書いてあります。
そのときに、家族に対する説明の機会をとってくれる方は、中立の立場です。

そのときに、頑なに説明の機会を拒む場合は、断りの口実を探しているときです。
仮に奥様にお話しするときも、最初からやる気がない感じだと

主「今日歯医者で○○をすすめられたけど、高そうだし面倒そうだなあ」
奥「そうねえ、保険でいいじゃない?」

みたいな感じになると思うのです。

しかし、後々の想定も考慮して説明しないと「説明が足りない」というくせに、
「○○でなく●●だと▲▲を傷めて、入れ歯になる公算が大きい」
「■■だと、こことここの歯が傷んで、顎に負担が行き、反対側が壊れやすい」
などと正直にうそ偽りない臨床実感をご説明すると

「根本は私を脅すのか」

などということになってしまうものです。
本当に、人間という奴は、自分の都合の悪いことは耳に入らないものです。
(私も他人のことは全く言えた柄じゃありませんが・・・)

実際は、お口の問題は夫婦・家族間でも全く別の問題で、歯の修復については
一般論的な話が全く通用しないのです。
たとえば、歯が全部揃っている方には、入れ歯の方の苦労やストレスは
絶対に分かりません。

ですから、自分の身内が「歯の○○について困っている」と悩んでいる場合に、
ご自身の感覚を基準にしてアドバイスしても意味はないし、してはいけないのです。

このように、歯については夫婦・家族間でも全く会話が通用しないのです。
ですが、

主「今日歯医者で○○をすすめられたけど、高そうだし面倒そうだけど
  せっかくだからやってみたいなあ・・」
奥「何言ってんの!保険でいいじゃない?」

・・・こんな感じですかね orz

ホントは、それすら方便で、家族に話すらしていないかもしれません。
たとえば金がないなら最初から「金がない」と言ってくれれば話は早いのに・・

でもそういう人に限って、嗜好品(酒・タバコ等)とか外食産業、趣味などに
どうみても過剰に無駄な金を捨てているものです。
一例ですが、飲み屋やパチンコで年に40~50万どぶに捨てている人など、
たくさんいらっしゃいますね。これも20年ためたら1000万ですね・・・

この1000万をどぶに捨てて、長期的な健康の入口・土台へ全くコストを払わない。
じつにもったいない話です。

そのあたりの、長い目で見た「健康の価値観への投資判断と日常の出費」なども
時間があればいろいろとご説明もできるのですが、個々の事例について具体的に
そのあたりまで深く説明する時間を経営上取れないのも問題だと感じています。

◆ 矯正装置は恥ずかしい、といわれたとき

私は矯正装置を恥ずかしいなどとはこれっぽっちも思いませんので少々戸惑います。
また、日本以外のすべての先進国の方々も私と同じ感覚だと分かっていますので、
「なぜ日本だけで?」という疑念が、どうしても晴れないのです。

ところで、矯正装置を恥ずかしいと感じることは、あなたにとって正義ですか?
もしかしたら、誰かにそう思わされているのではありませんか?

そんなあなたは
「民は之知らしむ可し由らしむ可からず」
「ある矯正専門医との会話」
をまずとっくりと何度もお読み下さい。

その上で、どうしても固定観念を破れない方は、今後の長い人生を考えてください。
日本人の平均寿命は世界最高です。女性はなんと86歳です。
長い人生の1~2年の我慢と、その結果の多くの利点を、今一度先入観なく比べてください。

そして、人間という「今」「目に見えるもの」しか信じられない愚かな動物のちっぽけさを
ニヒリスティックに嘆じてみせるのもまた、心の一服の清涼剤なのかもしれません・・・

◆ 高齢者に「老い先き短いから適当でいい」といわれたとき

これは、いろいろな意味でがっかりです。非常にやる気をそがれます。
これを言われると、私の老い先まで短くなってしまうような気がしてしまい・・・

でも通常は、謙遜の意味でおっしゃっている方が大半です。

その場合には、まずよくお話を伺います。最近の歯科事情をいろいろ
ご存じないことも多いので、時間をかけて説明するようにしています。
そして、平均寿命が長いことは有難いこと、お口は健康の入り口であること、
食の自由の大切さをなるべくていねいに理解していただくようにします。

しかし御仁の態度があまりにもこちらを軽く見てナメたような場合は、仕方なく
こちらも一時的に「三橋貴明」とか「中野剛志」などに急遽変身します。
そしてデフレ不況と構造改革(やショックドクトリン)と国債と個人金融資産と
バランスシートと政府の借金の性質等について、まさにチャンネル桜の経済討論の
ノリで一から説明を始め、最後は43野と500旗頭の復興税の悪口で〆ます。

今の所これが最強、まさに(次からは来ないという意味で)百発百中です。

◆ むし歯の多い幼稚園~小学校低学年の児童の母親がニヤニヤしているとき

これ、ほんとストレートに(内心)親に切れます。

「お前のせいだろ!!」 ←口では言いませんよ

しかし、読者の方の多くは疑問に思ったことでしょう。
「なぜ小さい子がむし歯ができてかわいそうなのに、根本は切れるのか?」
「仕上げみがきを嫌がる子もいるし、むし歯ができちゃったらしょうがないのに」
こんな感じの感想を持たれるのではないでしょうか。

しかし現実として、19月~31月(およそ1歳半~3歳)きっちりと予防すれば原則的に
「むし歯のできない子」になることがすでに疫学的に分かっています。
また、幼稚園~小学校低学年のお子様が的確に歯ブラシができるわけありません。
目安ですが、7歳までは周囲の大人が100%子供の歯を守らないといけません。

ですから予防医学的には子供のむし歯は100%、周囲の大人の責任なのです。
親の愛と根気が試されているのです。やや遅きに失した感があっても、まずは情報提供です。

実際は切れたりせずに、今後は予防しましょう、などといって治療を進めていきますが
いちおう親御様には疫学的事実や現状で欠けている視点、今後必要な対策などについて
ていねいに説明するようにしています。

しかし小学校で永久歯がやられてしまうようでは、さすがにもう救いようがありません。
(=歯医者人生決定)

◆ 具体的に処置内容にまでいたる指示がある場合

初診の状態でいきなり
「こことここが気になるので、それを治療してください
という人がいます。

じつはこれ、相当カチンときます。この意味、分かりますよね。

正解は
「こことここが気になるので、その辺を見てもらえますか
です。

似ているようで全然ちがうのです。
その違いは、歯科医師の診断力を尊重しているか無視しているかです。
しかも、「してください」は敬語ですが命令形です。

ひとつには「痛くなければ悪くない」という固定観念が強いからだと思います。
しかし、痛くなければ悪くないという発想自体が、歯については間違っています。
今まで日本中が全員間違ってきました。まずはその辺をよくお話しするようにします。

もうひとつには、過去の多くの経験で、ある歯を治療に行った場合に
「これも悪いから治療しましょう」
「これも壊れているからやり変えましょう」
などと、さんざん通わされた経験があり、うんざりしているのかもしれません。

 歯の治療は治療ではなくリハビリテーションであること
 歯は有限なので、なるべく繰り返さないような努力がお互いに大事なこと

この場合にはていねいに、この2点をお伝えします。

また、これの別バージョンに以下の様なものもあります。

◆ 「新しい入れ歯を作ってください」と言われたとき

「なぜコレが?入れ歯を作るのが歯医者の仕事だろう」と思われるかもしれませんが
ほんとうは、歯がないということは、人体にはとてもアンバランスな異常事態なのです。
しかも入れ歯=かなりの本数の歯~総入れ歯ならすべてが失われているということなので、
「なぜ歯が失われてきたか」の経緯をさぐることの方がはるかに大事なのです。

たとえば歯周病に気がつかなかったか、とか、ヤブに当ってみんな抜かれたとか etc

また、このような方におたずねすると、大体が同じようなお答えをされます。
「今までも何回か入れ歯を作ったが合わなかった、新しくしたら合うかもしれない
・・・
まず、部分入れ歯と総入れ歯では考え方がまったく違います。
部分入れ歯でお悩みの場合の多くが、じつは第一選択がインプラントのケースです。
なぜなら、部分入れ歯はそれ自体が、抜歯装置と呼んでも過言ではない性質の物だからです。
その理由は機会を改めて後述します(ウチの歯科医院のホームページには書いてあります)

「高いor金を払いたくないor金がないので、何とか入れ歯で」
というときは、仕方ありませんが、残りの歯の長期保存は諦めてもらう形になります。
(1400兆の個人金融資産の大多数を占有する65歳以上に「金がない」とは?!と思いつつ・・)

総入れ歯ですが、ここまでくると基本的にはバネの力ではなくて吸盤の力で固定します。
しかも筋肉が動く口の中で、吸盤の力での固定がすべてという過酷な条件下です。
ですから筋肉の動きも考慮した型取りの辺縁の形がきわめて大事なのです。
型を修正して型を取る、模型から皿を作ってそれでまた型を取る etc

もちろん型以外にも、3次元的なかみ合わせ、見た目なども全部一から作るので大変です。

簡単に落ちたり浮き上がるのでは、そもそも総入れ歯ではありません。
しかし総入れ歯としての最低限の要件を満たすためには、非常に手間隙がかかります。
残念ですが、まともに作ると、2万5千円で売るのに7~8万くらいのコストです。
1のエネルギーを作るのに2~3のエネルギーを使う自然エネルギーのような有様です。

まさに、皮肉にも「孫 正義」ならぬ「 正義」状態です。

残念ですが、そのような状態で満足なものを保険で作成することは、個人商店では無理です。
(ですから私は保険医療機関を国有化せよ(or補綴の脱保険)と訴えているのです)

何回作っても落ちるor浮く、というのは、単純にいうと手抜きです。

◆ 来院動機をたずねて「近かったから」といわれたとき

近いから来ること自体には、とくに問題はないと思います。
しかし、街の中には、知っているだけでも▲▲医院や■■医院のような
あきらかに問題と思われるような治療内容の医院があることも分かっています。

もしその人が、たまたまウチではなくて▲▲医院や■■医院のそばにお住まいなら、
まず100%、そちらに逝ったと思うのです。

これは私の経験上、どこの歯科医院で仕事していたときも同じことがありました。

ということは、その歯科医院のことや治療方針、ポリシーなどを何も調べずに
歯科医院を選んでしまっていることの証左に他なりません。
間違いなく「歯医者などどこでも大体同じ」などと思わされてしまっています。

「激痛」「見えるところが崩壊」などの喫緊の主訴がない場合には、
まずはよく診査したうえで、とにかくウチの診療方針やポリシー・診療理念を
よくお伝えすることに時間を割きます。
また、ホームページや小冊子などもご覧いただくように促したりします。

◆ あまりにも身なりがだらしない、または不潔
◆ 性格が横柄/きつい/自己中心的、など残念な場合
◆ 歯科医師には低姿勢なのに女性スタッフに横柄

身なりについては、「歯の治療を受けに行くだけだから関係ないだろう」
と思うかもしれません。
また、性格が横柄とかと歯がどのように関係あるのか、と思うかもしれません。

いえいえ、じつは大有りです。
「歯だけ」と、歯を小道具の一種と考えてしまうのは、昭和時代の発想です。

歯や歯肉(歯周組織)は毎日マメな管理を必要とする器官です。
また硬組織なので、日々の食習慣・生活習慣や歯ぎしり・くいしばりなどが
年輪のように刻まれていきます。

身なりも、自分の肉体に非常に近いものなので、非常によく精神状態を表すのです。
少なくとも家庭や自家用車、鞄などよりは自分の肉体に身近にくっついています。
歯や身なりのような、自分の肉体に近くくっついているものは、遠いものよりも
よりその方の人となりを映し出しやすい
のです。

日頃の仕事の実感としても、歯~人となりの間の関連が相当強く見られますので
歯に限らず何事も、神経質すぎず大雑把すぎず、ツボを押さえて適度がベストです。

また性格が横柄、きつい、自己中心的ですと、スタッフが敬遠しがちで
仕事が進みにくいといったらありません。
(ひどいときは医局で皆で泣いて「○○だけは絶対許さないっ!!」といっています)
私たちも人の子、ウザい方の場合は、何とかさっさと放流したいと思うものです。
なるべく関わり合いを持ちたくありませんので、定期健診の案内も当然しませんし、
同じ説明もつい無機的な言い方や菅直人首相的な口調になってしまうものです。

歯科医師には低姿勢なのに女性スタッフに横柄な方の件ですが、歯科医院に限らず
さまざまな方面でこのような方は少なくないのではないでしょうか。

少なくとも私に言わせれば、受付を始めとして全てのスタッフは、自分の分身です。
彼女たちなくば、自分の医院は全く存在しませんし、多くの固定ファンの方も離れます。
そのような分身への攻撃は、まさに私自身に対する攻撃と同じと解釈します。

こんな手合いが居たら、どんなに悪くても治療したいところがたくさんあっても
とにかく「入れ歯は○○先生が上手」「ただちに健康に~」「事象は様子を見て」
などの枝野流一択で、一秒でも早く無難に放流したいというのが人情というものです。
(まちがっても深入りして「爆破弁」などに触りたくないですしね)

逆に、スタッフには親しく、歯科医師にはきつい方のほうが1億倍はマシです。
そのような場合は十中八九、症状に問題があり人柄には問題がないからです。

この3点は意図的にまとめて記載しました。その理由は
「歯は人なり」だからです。
「歯など部品」というわけにはいかないことをお伝えしたかったからです。

また、あくまでも臨床実感からの推察ですが、人となりや言動に問題がある方の多くは、
他の医院でも疎まれて早期放流された可能性を高く感じるのです。
そのような方で定期メンテナンスの行き届いた口腔内を見た例がほとんどないからです。

「人となり」「言動」馬鹿にできません。
それらの軽視が、結果として歯やお口に残念な結果をもたらすのです。
これらは単なる道徳的標語ではなく、歯やお口の健康に直結する概念なのです。

◆ 職業をたずねたら「銀行員」だったとき

銀行員等の方は、もうどうしようもありません。まことにお気の毒です。
私も仕事上のお付き合いがありますが、地元企業との癒着防止ということで
数年ごとにバンバン転勤になってしまいます。
しかも、私の住む龍ヶ崎からも、地元銀行の支店長が水戸、石岡、千葉etcと
結構遠いところに次々に転勤になりました。

これでは、地方の銀行員の方は、なかなか定期健診のために水戸や千葉から
龍ヶ崎まで来る、ということもできず、どうしても予防がおろそかになり、
後手後手の応急処置的、姑息的な対応に陥りがちです。

対策としては、『盆暮れに帰る』実家のそばで定期健診をしてくれる歯科医院を
さがすことです。
年に2回なら何とかアクセプタブルな範囲内ですので、妥当な選択だと思います。
実家のそばに良い健診歯科医院が見つけた上で、勤務先近くの歯科医院では、
むしろ事情を説明して応急処置にとどめてもらう方がいいのかもしれません。

そこで相手がいぶかるようであれば、ここのページ内容をお伝え下さい。

◆ 「糖尿病」「骨粗しょう症」「腎臓疾患」にチェックがあったとき

初診の時にはまず全体的なレントゲンを撮るとともに、この3点については
かならず確認するようにしています。

これら内科的疾患があると、治療行為にかなり制限が出てくるからです。

たとえば糖尿病では、HbA1c(ヘモグロビン値)が6以上だと、まず抜歯などの
外科的処置が難しくなります。
糖尿病や腎臓疾患などがありますと、基本的に傷の治癒が悪かったり
術後感染の恐れがあったりするので、治療行為に制限が出てきます。
また骨粗しょう症では、予防投薬(週1の薬)が3年以上続いている場合は
外科的処置に際して骨壊死のリスクがあるとされています。

あわてて歯医者に駆け込んだら、
「うちでは治療できません」
「大きなところを紹介します」
このようなことにならないためにも、全身的な健康や内科的コンディションは
きわめて重要です。

以上になります。いかがでしたでしょうか。

歯医者って生き物は、患者サイドとは結構異なる発想でお口を見ているもんです。
人によっては、私の文章にいささか不快感を覚えられた方もおられるかもしれません。

その場合は、ぜひかかりつけの先生にたずねてみてください。

「『友達が』歯医者に行ったら○○と言われたみたいですが、そんなもんですかねぇ?」
「先生の場合は、患者さんのどんなことが、気になりますか?」

たぶん先生は喜んで、いろいろとお話してくださると思いますよ。

【今回のまとめ】

歯医者が何を気にして仕事をしているかを知っておくのも、悪いことではない。

02:00 | nemoto | より損な?!歯医者のかかり方 はコメントを受け付けていません
2011/07/10

こんにちは。歯科医師の根本です。

前回は、歯の表面のプラークは、蓄積するにしたがって硬くなる
という話をしました。

ところで

(1) 歯ブラシの使い方を、誰に、どのように習いましたか?
(2) あなたにとって歯みがきとは、主に何でしょうか?

この質問に、あまりはっきりと答えられる人は、なかなかいないと思います。
多分、「何となく」が多いと思います。どうでしょう?

私は答えを知っています。それは

(1) TVのコマーシャル(TV⇒本人 or TV⇒親⇒本人)
(2) 日常の生活リズム、ないしはエチケット

です。ウチの来院患者様方におたずねしたのですから間違いありません。
しかし、今まで一度でもむし歯になったり、歯周病で歯石を取って
もらったような人は、どこか歯ブラシなどに課題があることが多いです。

TVのコマーシャルに出てくるタレントさんの多くは、『ひじ』を支点にして
がしがしやってますね。

しかし、歯には、三大不潔域と呼ばれる

◆ 隣接面(歯と歯の接しているあたり)
◆ 歯頚部(歯と歯肉の境目~生え際近辺)
◆ 小窩裂溝(歯の溝やシワシワの中)

の部分があります。

ここは実はかなり厄介なところで、TVの真似をして適当に歯みがきしてしまうと
もっときたなくなってしまいます。

『ひじ』を支点にすると、とたんに半径40~50センチの巨大な円弧になり、
これで細かくやれといっても無理です。

じつは

◆ あらかじめ毛先を食い込ませる
◆ 振幅は5mm以内、肘・手首は固定して指先だけで動かす

これが正解です。
これを効果的に実現してくれるスグレモノこそ、音波歯ブラシです。

なぜでしょうか?

今回もへたくそなAAを併用して見ていきます。

前回のアレは、局所の図です。
プラークは、歯をみがかないとか、歯ブラシがあたらない場所だと、
自分自身が毎日増えていきます。

形としては 上 か ら 順 番 に 積 も っ て い く 感じです。


<例>
(日にちは便宜的なもので、正確ではありません)
(使用漢字はプラークの硬さを現しただけで、植物等とは無関係)

【1日目】 【2日目】  【3日目】 【4日目】  【5日目】

                                ホホホホホ
                        ホホホホホ 木木木木木
(お口の中)          ホホホホホ 木木木木木 林林林林林
        ホホホホホ 木木木木木 林林林林林 森森森森森
ホホホホホ 木木木木木 林林林林林 森森森森森 鬱鬱鬱鬱鬱
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(歯の表面)
              (歯)

このように、「ホ」→「木」→「林」→「森」→「鬱」と、
地層のように発達していきます。

「ホ」:口の中に漂っている、きわめて柔らかい状態
「木」:一応くっついている程度。弱めの付着
「林」:爪で引っかいても少し残る。そこそこしっかり付着
「森」:かなり腰のある状態。歯みがきしても残ることも
「鬱」:1~2回こすった位ではびくともしない、歯石直前の状態


1日目の「ホ」は、2日目には「木」になり、その上にさらに
「ホ」が乗っかっている状態です。

1日目の「ホ」は、3日目には「林」になっています。
2日目に乗っかっていた「ホ」は「木」に成長しています。
その上にさらに「ホ」が降りかかっているので、3層構造になっています。

「鬱」まで来てしまうと、もうちょっとやそっとこすった位では
びくともしません。長期戦になる公算が大です。

とくに、三大不潔域と呼ばれる

◆ 隣接面(歯と歯の接しているあたり)
◆ 歯頚部(歯と歯肉の境目~生え際近辺)
◆ 小窩裂溝(歯の溝やシワシワの中)

のような、目地の奥のように凹んでいる部分は、すぐに
「鬱」が沈着しやすい場所といえます。

「隣接面」と「歯頚部」が合体した「歯と歯の間の生え際」
を模式的に下手糞なAAで示してみます。

      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
       ホ木林森鬱┃     (前の歯)
   お   ホ木林森鬱┃
       ホ木林森鬱┃
   口    ホ木林森鬱┃
        ホ木林森鬱┃
   の     ホホ木林森鬱┃・・・(隣接部)・・・・・・
        ホ木林森鬱┃
   中    ホ木林森鬱┃
       ホ木林森鬱┃
       ホ木林森鬱┃
       ホ木林森鬱┃     (後の歯)
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃

このように、かなり積もっている状態です。

TVのコマーシャルのように、肘を支点にして、ジャカジャカ
歯ブラシを振り回したとしましょう。

■■■■● は、歯ブラシの毛先のつもりです(先端加工あり)。


        ∧
       ↑↓↑
■■■■●↑↓↑
       ↑↓↑
       ↑↓↑
         ∨

このように、歯ブラシの毛先は大きく前後に往復運動します。

当然毛先は歯の出っ張っているところばかりをなでつけるばかり。
肝心の目地の奥の凹んだところ「三大不潔域」は完全スルーです。
ちょっと歯ブラシを振り回してみましょう。

      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
        林森鬱┃
        ∧  林森鬱┃
       ↑↓↑林森鬱┃
■■■■●↑↓↑木林森鬱┃     (前の歯)
       ↑↓↑木林森鬱┃
       ↑↓↑木林森鬱┃
         ∨ ホ木林森鬱┃
        ホ木林森鬱┃
       ホホホホ木林森鬱┃・・・(隣接部)・・・・・・
       ホホ木林森鬱┃
       ホホ木林森鬱┃
       ホ木林森鬱┃
       ホ木林森鬱┃
       ホ木林森鬱┃     (後の歯)
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃

はい。すると、

      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
        林森鬱┃
        林森鬱┃
        林森鬱┃
        木林森鬱┃     (前の歯)
        木林森鬱┃
        木林森鬱┃
        ホ木林森鬱┃
        ホ木林森鬱┃
       ホホホホ木林森鬱┃ ←プラークが押し込まれて増えている
       ホホ木林森鬱┃
       ホホ木林森鬱┃
       ホ木林森鬱┃
       ホ木林森鬱┃
       ホ木林森鬱┃     (後の歯)
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃


「隣接部」には汚れ=「ホ」が押し込まれてしまっていますね。
これでは逆効果ですね。いわゆる【へたくそな歯みがき】です。

肝心の毛先が肝心なところに当たっていないと、むしろ、より
悪い状態になってしまいます。

ではどうしたらいいのでしょう。
これの答えが上で書いた「 ス ク ラ ビ ン グ 法 」です。

しかし、これが結構難しい。
歯医者通いの途中の人は、担当の衛生士さん等に教えてもらいましょう。
これを誰でも簡単に再現できるようにした家電製品こそが

「 音 波 歯 ブ ラ シ 」です。

「 電『動』歯 ブ ラ シ 」ではありません。
古い電『動』歯ブラシは、カパカパ動いたりしますが、下手に動かれると
それこそ【へたくそな歯みがき】の上乗りになってしまいます。

音波歯ブラシ。OMRONの3000円くらいのでも十分効果があります。


■■■■◆ は、歯ブラシの毛先のつもりです(先端加工なし)。

スイッチを入れると 毛 先 が 細 か く 振動します。

■■■■◆       (OFF)

    ↑
  / ⌒ \
   /⌒\
■←((((◆))))→    (ON)
   \し/
  \ し /
    ↓


またまた分かりにくいAAですみません。
(毛先から同心円状に波動の輪が広がっているつもりです)
すると、どうなるでしょうか?

波動エネルギーは、毛先から歯の面に垂直にぶつかります。
(レイキとかヒーリングとかの「波動」ではありません)
「森」や「鬱」、「三大不潔域」に向かってぶつかっていきます。

ちょっとスイッチを入れてみましょう。

     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃     (前の歯)
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林○鬱┃
       ○○○○鬱┃
       ○○○○○┃
■■■■■■■◆○○○鬱┃・・・(隣接部)・・・・・・
       ○○○○○┃
       ○○○○鬱┃
      ホ木林○鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃     (後の歯)
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃

「○」がたくさん発生して、毛先から円状に破壊されています。
「○」はプラークが波動エネルギーに蹴散らされている図です。
(超音波の「キャビテーション効果」で発生するバブルではありません)

いい感じに「林」や「森」が、蹴散らされていますね。
スイッチを切ってみましょう。

     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃     (前の歯)
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林 鬱┃
             鬱┃
              ┃
               鬱┃ ←プラークの層が破壊されている
              ┃
             鬱┃
      ホ木林 鬱┃
      ホ木林森鬱┃
      ホ木林森鬱┃     (後の歯)
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
     ホ木林森鬱┃
やりましたね!

これを何日か続けていれば、「森」や「鬱」など、この世から
消えてなくなるでしょう?!(でもサボるとまたできてしまいます)


【今回のまとめ】

三大不潔域に対してはスクラビング法が有効で、音波歯ブラシの活用が再現性が高い。

03:30 | nemoto | AAで見る、音波歯ブラシ「実践篇」 はコメントを受け付けていません
2011/07/10

こんにちは。歯科医師の根本です。

このところ、評論家ぶった内容が多く恐縮しておりますが、
今日はなんとAA(アスキーアート)で、歯の予防について語ってみます。

一応内容は練って書いたつもりですが、表現力には期待しないで下さい。


ところで歯の汚れには、『食べかす』と『プラーク』の2種類があります。

食べかすは文字通り、食物残渣(食渣)であり、死んでいるものです。
死んでいるので物理的に落とせば終わりです。

これに対して、プラークとは雑菌の塊であり、生きているものです。
爪で歯を引っかいて付いてくる、白い岡田オカラのような物です。
また、増殖して歯や歯周組織に病原菌として悪さをします。
しかし生きているので、まめにブラッシングなどで減らすしかありません。


(1)歯をみがいた直後の状態

歯のエナメル質の表面に、ペリクル(獲得皮膜)と呼ばれる、うすい
タンパク質のコーティングができます。

菌は、まだその上に乗っかった状態です。
軽く一撫ですれば除去することができます。
ちなみに一種類だけでなく、むし歯菌や歯周病菌など何種類かあります。


菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌

菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━歯の表面━━━━━━━


(2)何時間かたった状態

ちょっとぬるぬるしてきます。
菌の数は増えて生きますが、お互いの結びつきは弱いので
普通に歯ブラシをすれば取れるレベルです。

菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌

菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌

菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌

菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━歯の表面━━━━━━━


(3)こびりつき始め

1日くらい経つとこんな感じになってきます。早い人は半日です。
はっきりどろどろしていて、爪で引っかくとしっかりと白い
オカラ(プラーク)がついてきます。

菌同士が、自分で分泌した細胞外器質(ぬるぬるやこびりつきの元)
で絡み合って結構強固に歯に結びついています。

<注意>
ここまで来ると、細胞外器質に守られているので、殺菌は無効です。
理捨倫(リステリン)も門惰眠(モンダミン)も一切効きません。
そんな、自分がまじめに歯ブラシをするのが面倒だからといってお薬様にすがろう
なんていうのは、理性や倫理観を捨てて、良心が惰眠を貪る門に他なりません。

ちなみに、理捨倫や門惰眠のような非特異的な薬剤が真核細胞(人体)や原核細胞(細菌)
にもたらす細胞毒性については、

◆ 低濃度ではどちらにも効かない
◆ 高濃度ではどちらも死滅する
◆ 中間濃度では真核細胞(人体)のみがやられる

ということが分かっています。
あきらめて、しっかりみがいて下さい。

菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌
 × × × × × × ×
菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌
 × × × × × × ×
菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌
 × × × × × × ×
菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌 菌
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━歯の表面━━━━━━━


(4)腰の入ったこびりつき

歯ブラシに取り残しのクセのある人には、これがあります。
かなり分厚く、押し固めたイースト菌のような感じで、黄土色っぽい漆喰のような
腰のあるオカラ(プラーク)が取れてきます。
1回歯ブラシでこすったくらいではほとんど落ちないレベルです。

菌同士は細胞外器質でさらに密に絡み合い、こうなると表面をこすっても
なかなか取れず、定期的に振動エネルギーで崩壊させて落としていく
「音波歯ブラシ」が有効になってきます。
または、「スクラビング法」という手技を毎回正確に行う必要があります
(詳細はぐぐってください)。

私は、この段階の人には、治療中、治療の歯に関係なくても必ず指摘して
改善を促すようなアナウンスをします。あるいは「音波歯ブラシ」を勧めたりします。

菌+菌+菌+菌+菌+菌+菌+菌
+菌+菌+菌+菌+菌+菌+菌+
菌+菌+菌+菌+菌+菌+菌+菌
+菌+菌+菌+菌+菌+菌+菌+
菌+菌+菌+菌+菌+菌+菌+菌
+菌+菌+菌+菌+菌+菌+菌+
菌+菌+菌+菌+菌+菌+菌+菌
+菌+菌+菌+菌+菌+菌+菌+
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━歯の表面━━━━━━━


(5)カルシウムを吸って歯石化

唾液の中にはカルシウムイオンが多く含まれています。
とくに初期歯周病に関連する菌があると、積極的にカルシウムイオンを
自分たち集団の中に取り込み、押し固められて「歯石」になります。

早い人で1ヶ月、遅い人でも数ヶ月程度たつとこんな感じになってきます。
こうなってしまうと、歯ブラシでは取れませんので、歯科医院で専門的な
道具(スケーラー)などで取るしかなくなります。

< 注 意 >
いまだに「歯石は歯医者でとってもらうもの」と誤解している
他力本願の御仁が後を絶たず、その意識の低さは見るに耐えないものです。

(3)や(4)の段階で自分でしっかりプラークを管理して(1)や(2)の状態に
自分を戻しておくのが歯みがきの正しい意義です。
そういう人は、基本的に歯石がほとんどつきません。
ただTVコマーシャルのまねをして歯ブラシで4545するだけでは0721と一緒です。


・・・私ですか?
はい、上に書いたようなことを治療中に説明して、改まらないような人は
バンバン放流しています。
定期健診の案内も一切書きませんし、「もう来るな」といわんばかりの対応です。
私は他力本願の(東日本大震災の被災者は別)輩には極めて冷たい人間です。
この歯石が体質によるものか、努力不足によるものかは、私共のようなプロが見れば
一目瞭然です。

菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌
Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca
菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌
Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca
菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌
Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca
菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌
Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca菌Ca
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━歯の表面━━━━━━━


【今回のまとめ】

歯の汚れ対策には死んだ食渣よりも生きたプラークが要注意で、経時的に増殖・硬化する。

03:00 | nemoto | AAで見る、歯の汚れと音波歯ブラシ はコメントを受け付けていません
2011/07/09

こんにちは。歯科医師の根本です。

ちょっと前のことです。小学校2年生のお子様が治療に見えました。
いくつかむし歯があったのですが、前歯のかみ合せが逆で、いわゆる案と匂いの気状態、
下が前に出ている状態でした。


上下4本づつ永久歯が出ていたので、ちょうどよいと思いお母様にご提案しました。


根「○○君は、かみ合せが反対ですね。ご家族に同じようなかみ合わせの方は
  いらっしゃいますか?」
母「ああ、うちの旦那がそうです」
根「今ちょうど上下の永久歯の前歯が4本づつ生えているので検討にはちょうどよい
  タイミングです。よろしければ一度矯正の先生に見せてみるのはいかがでしょうか・・・」

お母様、どうされたと思います?


・・・


・・         「そうですね」とか言ったと思います?


・・・


まず、いきなり固まりました。「ゑっ」とか言ってw
母「あ、は、き、矯正ですか・・・そ、えー、」
  (5秒くらいたって少し落ち着いた)
  あの~、それって、絶対やらないとだめでしょうか?」

お母様の目を見ると、急にセシウム137に降られた被災者のようなおののいた感じと、
こちらをまるで金儲け主義の悪徳医師か何かのように嫌悪する感じの入り混じった、
何ともいえない視線でした。

根「いや~そもそも歯科の分野に絶対なんてものはないからそういうことはないですが、
  個人的には、やってあげないと将来お子様がかわいそうな気はしますね。
  自分だったら、少し貯金を始めるかなあ・・・」

母「と、とにかくよく、一度考えますぅ」

根「(考えるつもりなんかないくせにっ)はい、お大事にどうぞ」

「検討する/考える」といったら、「はい、では検討のために情報提供」といって逆に一気に
情報を開示する、というか畳み込む、というのが営業の本にも書いてありました。
でも、なんだかそんなことをする気もうせてしまいました・・・

最近思います。
日本人は自分の歯の価値を安く考えすぎなんじゃないかって。
だいたいむし歯治療で2千円くらい、根の治療から初めて3千円~4千円。

自分の歯の値段が3千円くらいだと思っても仕方ないかもしれません。
3千円だと多寡を括るから、大事に扱わないの扱わなくないのって!!

 歯やかみ合わせは健康の入り口であって、決して部品じゃないのに。
 これじゃあ、誰も大事になんかしようと思わないよね。

この辺の話はまた別のところでします。
その日はその後ちょうど矯正の先生が来る日だったので、いろいろ聞いてみました。

根「今日、↑のようなお子さんがいたんですけど、なかなか治療に結びつかないのが
  悩ましいですね」

矯「そうですね。日本人はかなり矯正に対してはしり込みしてますよね。ただ、
  ここ(龍ヶ崎)のような田舎はそうかもしれませんが、都内なんかだとそれこそもう、
  小学校に上がるくらいからお子さんを見せに連れてくるのが最近は多いですね」

根(思わず涙目)「しり込みするというのは、治療費のこともそうですけど、矯正装置を
  つけているのが恥ずかしい、というのも大きい気がします。あれ、何でしょうね?」

矯「そうですね、あれを恥ずかしがるのは世界でも日本だけの、とても珍しい感覚
  のようです。」
 「一例ですが、大学で以前、アメリカの帰国子女の方の矯正をしたことがあります。最近は
  技術改良で目立たない装置がいろいろとあるので、当然そのような装置を使用しました。
  そしたら、えらく怒るんですね」

根「えっ、それはなぜですか?」

矯「彼女が言うには、何でも、矯正治療中ということがはっきり分からないと、現地で情けない
  目にあう、ということのようです。『日本人は矯正もしないのか、遅れた民族だ』などと、
  ヒスパニックや他のアジア系など他民族からいじめられる
んだそうです。」

根「本当ですか?それもすごいなあ」

矯「それで、どうしても大昔の金属製のブラケットをベタベタ前歯に貼ってくれないと嫌だ
  わざと目立つようにやってくれ、というので、まあ気が引けましたが、そうしました。
  彼女喜んで帰りましたよ」

根「うーむ、世界は広い・・・ところで、今日のお子さんも、3級(下顎が前)だったのですが」

矯「ああ、日本人、モンゴロイドは3級多いですよ。およそ1割くらいは3級でしょうか」

根「えっそんなにいるんですか?」

矯「はい。モンゴロイドはもともと3級が多くて、矯正はアジア地域では日本と韓国が
  二大矯正大国です。3級の保存治療(全身麻酔で顎の骨をずらす手術をしない方法)
  のノウハウはほとんどアジアなんですよ」
 「日韓は早くから保存的治療を試みて割合成績が良いんです。それでも医科歯科大学で
  保存対外科はだいたい半々程度ですかね」

根「へゑ~・・・(と、斜め上方を見つめる)」
 「でも韓国って矯正は安いんじゃないでしょうか?韓国だと以前も整形ツアー
  近視手術ツアーとかありましたよね」

矯「いやいやそれが、高いんですよ。日本並みに、日本円で80万くらいは取りますよ。
  (ちなみに当院は上下で55、調整月5千円です。韓国の真似して値上g・・いやいや法則がry)
  それでも韓国人はみんな小学校に上がるくらいに専門医に見せに行きますね」

根「えっそんなに行くんですか?金持ちだけなんじゃないんですか?」

矯「はい。矯正の普及率は韓国は日本よりもだいぶ高いです」

根「それは、日本人が歯の価値を安く考えすぎなんでしょうかねえ」

矯「それはかなりありますね」

根「まあ、歯が1本3千円くらいに思ってちゃ仕方ないか。こればかりは韓国は日本を見習わない
  ほうがいいですね。ところで欧米とかはどうですか」

矯「あっちは安いですよ。白人も黒人も骨も柔らかいし歯が動きやすいので、予約も
  日本のように1ヶ月に1度でなくて2ヶ月おきの予約が一般的です。材料費でも欧米は
  大量生産がきくから日本の半分くらいです。モンゴロイドは結構骨が固いんですよ」

根「何か先進国って感じしますね。治療費も結構補助が出て無料の国もいくつかある
  聞いていますが、補助なしでどのくらいですか?」

矯「大体日本の半分くらい、4~50程度だと思います。そこにさらに補助とかがつくので、
  とても行きやすい環境にはありますね」
 「向こうでは、赤ちゃんが生まれたら矯正用に積立をすることが一般的らしいですよ」

根「ああ、その話は聞いたことがあります。たしかどっかの本でシンガポールでも歯科積立を
 していると見たことがあります。しかも歯科用口座は相続税がかからないらしいですよ」
 「ところで欧米の3級とかはどうするんですか?デビッドボウイとかアンドレザジャイアント
  みたいな人とか」

矯「まあやるとしたらほぼ100%オペ(全身麻酔で顎の骨をずらす手術)ですね。オペか
  そのまま放置。日本で3級の治療をしていて、海外出張に行って続きをやろうとしたら
  オペだといわれてあきらめた人もよくいます」

根「そうか、3級がそんなにオリエンタルだったなんて初めて知りました。」
 「3級の人は下顎の舌側がみがきにくいと思うんですが放置していい影響はないですよね」

矯「そうですね。そのときは良くても、40代くらいに歯周病で一気に全部ダメになる
  パターンが凄く多い
ので、お子様のことを思うなら小さいうちにやってあげたほうが
  絶対良いと思います」

根「(まるで放射線の晩発性障害みたいだなあ、と思いつつ)なるほど。今日のお子様なんか
  まさにそうですね」

矯「ええ、でも彼はかみ合わせの深い3級なので、今のうちに前後関係を治しておけば、
  そのまま大掛かりなことをしなくても済む可能性も結構あります。むしろ浅いほうが
  シビアです」

根「被蓋(かみ合わせ)の浅いほうがシビアなんですか?」

矯「一般的にはそうですね。3級では浅いもの、2級(3級の逆で、下顎が後退したもの)の場合は
  エラやオトガイが張ってないタイプが怖いですね。
  いずれにしろ、2級や3級のシビアなものは骨が少ないので、動かす場所がないこともあり
  難しいです。単に歯並びが悪いだけの叢生なら骨は十分ありますので意外と大丈夫です」

根「あと、大人ので、美容整形の広告で雑誌の後ろのほうに出てるので、コルチコトミー
  ってありますよね。あれはどうなんでしょう?治療期間が短縮するならいいかと思いますが」

矯「あー、あれは歯間乳頭(歯と歯のすき間の肉)」がなくなるからトラブルが多いです。」

根「あれですか?生物学的なバランスが壊されるとかですか?」

矯「それもありますけど、骨膜を剥がした段階でもうだめみたいですよ」

根「早く動くといっても、歯がぜんぶスキッ歯じゃしょうがないですね」
・・・


こんなやりとりがありました。
専門医の知見は、さすがに見るべきものがあると感心いたしました。


読者の皆様はさまいかがお考えでしょうか?
私は、↑のお子様が、40代までに悪くならないことを祈るばかりです。

日本では、矯正は見た目のためにする、という考え方が支配的ですが、意外と、それよりもむしろ

◆ 矯正の予防や機能面を重視
◆ コストをかけて数十年後の転ばぬ先の杖を拾う、

という考えが大事なんだ、と改めて思いました。
受験教育とかだと、みんな本気出すのにね・・・

【今回のまとめ】

日本人・東洋人は矯正がやや大変だ。矯正の価値は見た目よりも予防面の方がはるかに重い。

06:00 | nemoto | ある矯正専門医との会話 はコメントを受け付けていません
2011/07/05

こんにちは。歯科医師の根本です。

前回、「事前的モラルハザード」ということばを紹介しました。
より安く、より国民の健康が増進されればいいのですが、なかなか
そうはならない厳しい現実があるのです。

そのまえに、いろいろと(私のコラム上だけ?!)槍玉に上がっている
保険制度をはじめとした現在の制度にまつわる諸問題を見ていきたいと思います。

ひとつ理解しておいていただきたいことがあります。
全国の医療機関(病院、医院、歯科医院、柔整、あはきetc)は保険医療行政という

国 家 の 公 共 事 業 の 下 請 け

業者なのです。
どうも一般の方は、医者歯医者は民間企業であるという認識が非常に強いのですが
やっていることはほとんど国の公共事業なのです。

以下、いわゆる「下請け構造」にまつわる諸問題をまとめていきます。

◆ 強制加入~被災者患者を人質に

否が応でも全国民は、社保か国保に強制的に入らされます。
もちろん、国民は全員保険証を持っていることになります。
すると・・・

◆ 二重指定~明治7年の「医制」以来の医師取締り手段

いっぽう、医者は、建前上は
 保険診療をやるなら国の軍門に下って保険医登録をする
 いやなら登録しなくてもよい
ということになっています。

もちろん軍門に下って保険医登録をすると、健康保険法や療養担当規則
ならびに各種通達、指導、監査等によって、まさに共産主義的なきつい縛りを受けます。
何と言っても、医療は公共事業であり、胴元は国です。
医療機関は下請け業者ですので、やりたいことの一部しかできません。

しかも報酬は国際的に見ても雀の涙ほどです。
昨今の頭脳流出は当然だし、中国人医師も帰国してしまうのも当然です。
(なぜなら、日本よりも中国のほうが診療報酬が高いからです)

そういえば昨今、「歯科医師過剰問題」が取りざたされています。
豪邸に住み、高級外車を乗り回し、銀座でドンペリを開ける歯科医師、のイメージは
すでに過去のものとなりつつあり、「コンビニの2倍」「ワーキングプア」などという
センセーショナルな言葉が飛び交う始末です。

しかし実態は、OECD20ヵ国の中では日本の歯科医師数は平均的な方なのです。
それでも外国人歯科医師が破産したとか自殺した、などという話は一向に聞きません。
それもそのはず、1日10人以下の患者数で臨床の質を保ちつつ、ゆうゆうと
日本の歯科医師の数倍の収入を得ているわけです。
今の人数できついということは、いかに日本の診療報酬が安いかということの表れです。
(こういうのって、読まなかったことにしときたいだろw だからズルいって、そういうの)

ところが、考えても見てください。国民は全員保険証を持っているわけです。
美容整形とか不妊治療、矯正歯科などのような特殊な例を除いては、どうしても
保険医登録をしないと誰も来てくれないので食べていけません。

さらに、たとえば院長が不正をしたりして取り締まられても
別の勤務医を雇って診療を続けられるようでは、お上の締め付けが利きません。

そこで、医師本人だけでなく、医療機関のほうも「保険医療機関」として
国の監視対象にするということが行われています。
こうすれば、院長を取り締まると同時にハコ(=保険医療機関)も潰せるのです。

◆ 現物給付~国家による医師の裁量権侵害

これは、患者様が一旦全額を払った後に、保険金が後払いで戻ってくる
「現金給付~償還払い」の逆の制度で、患者様の一時的な負担が少なくてすむのが利点です。

しかし、現物=行為そのものですので、必ず行為そのものが規制されてしまいます。
「医師の裁量権ガー」、などと言う向きもありますが、何と言っても胴元がえらいのです。
「何とかワクチンはダメだ」「金歯はダメだ」「パノラマレントゲンは1回だけだ」
と言われてしまえば、それをしないと非常に患者様がまずい場合でも、何も出来ません。

◆ 出来高払い~偽りのチキンレースで医療の質の低下

私はコレが一番矛盾していて、おかしいと思います。
なぜなら、私たち保険医療機関が行っていることは公共事業の下請けだからです。
つまり「准公務員」に等しい立場なのです。

そうであれば、報酬が出来高払い=歩合制など、とんでもないことです。
准公務員に出来高払い=歩合制にしたら、「公的サービス間」でチキンレースに突入します。
つまり、回転率競争による、国民の命や健康を蔑ろにした、臨床の質の低下です。

じつは今の医療システムなら、医師一人とか医院一軒あたり毎月いくら、などの
「固定報酬制」でないと筋が通らない話なのです。

◆ 混合診療禁止~えげつない統制制度、晩発性障害の元

このことについては非常に誤解が多いので、改めて説明します。
まず医科について説明します。
周囲にこの話をすると、あまりのえげつなさに、一様に固まります。
たとえば「一連の治療」の中で

 治療A:保険診療(3割負担7割国庫)
 治療B:保険診療(3割負担7割国庫)
 治療C:保険外診療

の順に行われたとします。

すると、治療Cが行われた時点で、「治療A」「治療B」の分の保険料を請求されるのです。
つまり、治療Aの7割国庫の分と治療Bの7割国庫の分も、今さらのように請求されるのです。

これが混合診療禁止の原則です。今あなたも固まったでしょう・・・

これが問題になったのが、がんの治療と歯科の治療です。
がんの治療の場合、A~B~Cの流れだと効果があるのに、A~Bで止まると効果がない場合
命にかかわりますよね。時々裁判になるのですが、いつも原告(患者)側が負けています。
歯科の場合は、以前もお話した「差額徴収制度」で保険料を抑えるというアイデアで
チェアタイムの確保=臨床の質の低下抑制を図ってきた面があります。
残念ながら「昭和51年課長通知」の公布で差額徴収が終焉したことも、
そのせいでかえって歯科医療費が増えてしまったこともご案内のとおりです。
一応

 根の治療:保険診療(3割負担7割国庫)
 冠の修復:保険外診療

この流れだけは認められることになりました。

今、一昔前の、いい加減な基礎(根の治療)の上に豪華な差し歯が乗った歯の根の汚染
たいへん深刻な問題になっています。
その患者様は当時、1本10万円程度のお値段で立派なセラミックの差し歯を入れたはずです。
しかし根の治療の方は保険が利くので、まさにスピード勝負の「チキンレース」だった訳です。
また昔は、トラブル(術後疼痛)防止のためと称して、現在よりもかなり安易に、便宜的に神経を
取っておく行為(便宜抜髄)が行われてきました。その際の汚染も馬鹿になりません。

その結果、5年後10年後20年後に根が腫れて、豪華な差し歯を外そうにも硬くて外れない、とか
無理に外したら根が割れてた、あるいは根が中で朽ちていた、または根を再消毒しても汚染が
非可逆的に(根尖口外バイオフィルム)拡大して手遅れ、などの

「晩発性障害」

が非常に多発しております。

・・・「汚染」?「晩発性障害」?
まるでどこかで聞いたことがあるような言葉ですね()

その傍証でもありますが、私の歯科医院のホームページでは無料メール相談も行っていますが
面白いほど、9割方は判で押したように「晩発性障害=感染根管による根尖病変」の相談です。
このことは、いかに日本の歯科の保険診療がいい加減であったかの証左に他なりません。

◆ 応召義務

基本的な点については「保険制度以前の歯科と医療」をごらん下さい。
ここでは『医制』と『予約制』にからめて、もう少し考えてみたいと思います。

明治7年公布の医制の制定理由はご案内のとおりで、この精神は現在でも生きています。
それが応召義務です。

これは「今持ち合わせがなければ次でも良いですよ」ではなく、
金を払う気のない人も含めて現に金がない人でも医師は診察しなければなりません。

医師法19条では「正当な事由」がない限り診療拒否できない、と定められています。
この「正当な事由」については厚生省通知通達(昭和24年)があります。以下のような物です。

<診療拒否できない場合>

(1) 診療報酬の不払い
(2) 診療時間の制限
(3) 特定の人を相手に診療する医師(会社の医務室勤務等)
(4) 天候の不良など
(5) 自己の標榜する診療科以外の疾病について診療を求められた場合
[壱] 医薬品の不払い(医業といえども生活資料を得るを目的とする行為である)
[弐] 施術行為中(他の患者を診ているとき)

*下2つは戦前は診療拒否できたが戦後できなくなったもの

<診療拒否できる場合>

① 医師が不在の場合
② 病気、酩酊により事実上診療できない場合
③ 医師の親族、知人の婚礼、争議がある場合
④ 患者酩酊
⑤ 休日診療などが整備してあり、緊急で無い場合

これを見ると、とにかく医師が医院に「居たらアウト」です。
無銭飲食でも専門外でも時間外でも治療中でもアウトです。

逆に「居ない」「酩酊」というのがセーフのポイントです(酒かよ・・・)。
また、近所に同じような他の医院があれば断ってもセーフです。


これが歯科にもそのままあてはめられているのが大きな問題なのです。

ご案内のように、歯は有限であり、かつ自然治癒しないので、機能と形態を一から
構築する必要
があり、その手技的煩雑さは一般に医科外来の比ではありません。

必然的に診療の質を担保するための計画性およびチェアタイムの確保、すなわち
「予約制」
の合理的必要性が生じます。

ところが健康保険法や療養担当規則その他にはキャンセル料の規定はありません。つまり
「順番制」
医師は無限に診療を行いなさいという想定なのです。

これはお上ばかりではありません。
一例ですが「医療サービス需要の経済分析(井伊、大日 日本経済新聞社)」の26ページに
このような記述があります。
「他方で、医療サービスの供給曲線は短期的には水平であると考えられる。①医療サービスの取引単位として受診率をとっており、また少なくとも日本では待ち行列の長さを理由に受診を拒否されることもないので、その場合には供給曲線は水平である。つまり、行列が長くなると診療時間で調整され、受診を拒否するという割り当て的な解決はされないとする。
もし仮に、②医療サービスの取引単位を診療時間とすると供給曲線が右上がりとなり、診療報酬点数で定められる③公定価格が均衡価格よりも低いと割り当てが生じることになる。しかし、これは少なくとも④日本における軽医療では一般的なことではないので、前者の想定、つまり受診率を取引単位とし、供給曲線を水平であると考えるほうが妥当であろう。」(番号および下線は根本註)

これはいったいどうしたことでしょう?

① 女性が産む機械でないのと同様、医者は診る機械ではありません。あんまりです。
② これこそが歯科医院の予約制の意義の本質です。否定しますかね・・・
③ 保険点数が低すぎて、保険だけではすぐ倒産してしまうのが日本の歯科の大きな問題点
 なのですが。ご存じないのでしょうか?
④ 割り当て(=予約制or順番ノート制)が一般的でないなら、歯科とは何ですか?

お上どころか、民間の認識ですらこの有様です。
まるで医師を人とも思わない「診る機械」扱い、割り当てと称して予約制の否定、歯科差別。

おそらく悪気はないのだろうと最大限好意的に解釈して、私なりに忖度するに
「歯は自然治癒しない」「歯は有限である」
ことがもたらす現実面の大きな制約に対して全く無警戒・無関心かと思うしかありません。

なお、一部の自由診療専門医の歯科医院では、キャンセル料を徴取している所もあります。
これに倣って、保険医療機関の一部でも同様な試みを行っているところもあるやに聞きます。
一説では院内掲示などで認知していれば有効等という説もありますが、どうでしょう。

「認知はあったが不服であった。やはりこれは応召義務の趣旨に照らし公序良俗に反する」
などと言われて(医院から遠いかもしれない)患者居住地で不服を訴えられたとき、現在の
日本の世論では、患者側勝訴ないしは患者有利の調停は避けられないのではと案じます。

もはや歯科医療について現行法の解釈運用が限界であるのは当然といわざるを得ません。

◆ フリーアクセス~大事な病歴の消失

日本の法津では、紹介状が必要な一部の基幹病院を除き、自由に初診で全国どこの
医療機関にかかっても良いことになっています。

じつはこれは応召義務の裏返しであり、本質的に同じことを表しています。

「根本歯科はどうもヤブだから、もうやめて○○歯科に行こう」
業を煮やした患者様が保険証一枚持って、予約も取らずにいきなり○○歯科に駆け込みます。
「根本歯科でヤラれたんだけど、急に痛くなった。○○先生のところで診てくれ」

こんなことをして歯科医院を叩き出されないのは、先進国の中では日本だけです。
(知らない振りをして叩き出すところもありますが、厳密に言うと現在は違法です)

なぜ叩き出されないか?
それは歯科医院側が「応召義務」で規制されているからです。
応召義務は日本だけ。
だから叩き出されないのは先進国の中では日本だけなのです。

しかしそれ以上に重要な問題があります。

○○先生(は多分根本歯科より上手でしょうが)には、その患者様に特異的な問題点が
全く分からない状態でスタートせざるを得ないわけです。一生懸命問診はしますが

 精神的にかなり不安定である
 酒が強すぎて麻酔がぜんぜん効かない
 血糖値が高く傷が治りにくい
 口が開きにくく、治療しにくい
 何とかという薬で副作用が出た
 家業が893だor●●教の幹部だ
 etc

など、診療に際してあらかじめ注意すべき情報が完全に失われてしまった状態で
始めなければいけないわけです。

これはじつは全ての医療機関における日本特異的な問題でもあります。
このようなことを防ぐため、とくに欧州では「家庭医制度」が発達していて
救急を除き、基礎的な疾患ではまず専属の家庭医にかかるシステムになっています。

これは、病歴管理の観点からもきわめて合理的な制度だと、私は思います。

◆ 開業規制~人災で日本人の歯が蝕まれる

これらを踏まえて考えてみると、皆様いろいろ思うのではないでしょうか。

「どうも歯科は当たり外れがあって分かりにくいなあ」
「後々まで面倒を見てくれる歯医者のほうが歯が持ちそうだ」
「なるべく歯を削らない歯医者のほうが歯が持ちそうだ」
「やっぱり優しい先生がいい」
「※ただしイ()」
「近いところのほうがいいけど、不安だなあ」
etc

私もいつも考えています。「患者様は『○○』と思ってるだろうなあ」と。

そんな私なりの理想の歯科「医院?」は、現時点では一応こんな感じです。

 紹介制(飛込厳禁。一見さん初診時は説明会のみ。同意者のみ次回以降処置)
 会員制(ランク分けして、ディスカウントを導入)
 抜歯・投薬・歯石除去のみ保険適用
 インプラント、矯正(全顎・部分とも)は積極的に行う
 GP(一般治療)は原則的に行わない
 複数の担当衛生士による予防・定期管理中心
 院長は普段はマネージメントと患者説明に特化
 分院で、全員衛生士のみの予防専門サロンを経営

まあ、いろいろな考えがあるとは思いますが、私がウソをついても仕方ありません。

しかし、今の日本では下線部の部分が法律に引っかかるので、このような夢を
実現することはできません。日本では

① 医師・歯科医師・歯科技工士・薬剤師に開業(開設)権が制限されている
② 応召義務があるので、不測の大規模停電一見さんの飛込を規制できない
③ 保険医療機関はすべての保険診療を拒めない。「入れ歯と銀歯のみ不可」とか言えない
④ なぜか衛生士が麻酔もレントゲンも独立的処置もできないような理不尽な法規制

のような前近代的な規制がいまだに健在だからです。
現にオーストリアでは誰でも歯科治療して良いというフリーダムの極北状態です。
またオーストラリアやニュージーランドでは「デンチュリスト」と称して、一定期間技工所勤務すると
歯の治療をしてもよいという認定を受けることができます。
ちなみに、そもそもそれらの国には国家資格としての「技工士」というものはありません。
つまり誰でも歯科治療をしてもよいというのと同じことなのです。

これはほんの一例です。
それでその辺の国の歯はボロボロかというと決してそんなことはなく、
むしろ日本よりも成績が良かったりするから分からないものです。

日本のは、すべて歯科医学的には全く根拠のない妄想の部類であり、
医師歯科医師に権限が集まりすぎなのです。
だから既存の日本のシステムでは

 どうしても歯科医師が開設(開業)せざるを得ず
 どうしても保健医療機関登録せざるを得ず
 どうしても不測の一見飛込みを規制できず
 どうしても想定不適当な保険範囲内選択要求を拒めず
 どうしても患者側もホームドクターを決めきれず
 どうしても患者側も「痛い=悪い」の呪縛を逃れられず
 どうしても患者側も一旦悪くなるまで歯科医院の門を叩けず

という残念な方向に行ってしまうのです。
そして国民の歯は無為に削られ、抜かれ、口の中を金属スクラップだらけにされるのです。
「歯は修復よりも管理を重視すべき」「From on demand to control」という世界の潮流に
真っ向から逆流している、情けない現状です。

これは制度設計と法規制の体系が、必然的に国民をコチラに誘導するようにできているからで
私からすれば明らかに人災です。
日本国民の口に巣食う人災です。


いかがでしょうか。

◆ 強制加入~被災者患者を人質に
◆ 二重指定~明治7年の「医制」以来の医師取締り手段
◆ 現物給付~国家による医師の裁量権侵害
◆ 出来高払い~偽りのチキンレースで医療の質の低下
◆ 混合診療禁止~えげつない統制制度、晩発性障害の元
◆ 応召義務
◆ フリーアクセス~大事な病歴の消失
◆ 開業規制~人災で日本人の歯が蝕まれる
・・・

たとえば、ウェルシアやマツモトキヨシなどの、店が薬剤師を雇う形態と同様の形態で
歯科衛生士が開設して、歯科医師を雇うor顧問歯科医師と契約、でも全然ありでしょう。

なぜ歯科衛生士が浸潤麻酔をしてはいけないか?開業してはいけないか?と言われれば、
法律で決まっているからという答えになるでしょう。

しかし、なぜ法律が「歯科衛生士が浸潤麻酔をしてはいけない/開業してはいけない」
などの、前近代的で国際水準で見ても説得力を大きく欠く因習にとらわれたままなのか?
現在の医療事情を鑑みても、前近代性の根拠が理解できないので納得の行く説明を求める
と言われたら、官僚は何と答えるのでしょうか?
官僚は良いとしても、担当政務官や大臣は、絶対に答弁できないと私は思うのですが・・・

私はコレを、自由がない、破壊的であるという意味で「お口の中の北朝鮮」と呼んでいます。
普段はテポドンガーとか拉致ガーとか言っている御仁の歯が攻撃されて神経を取られたり
鉗子で拉致られて勝手に抜かれてるのは、歯科医師から見れば滑稽な話です

そんなお口の中の北朝鮮を必死に守っているのが、「宣伝村歯科医療村」の人民です。

いわゆる守旧派の歯科医師、変化を嫌う厚労官僚、そして、官僚と対決する振りをして
「保険で良い入れ歯=抜歯推奨」などと勇ましい保険医協会です。

みんなグルです。


今のままでは、なかなか、より安く、より国民の健康が増進されるとはならない、
むしろ弊害面が大きい、という意味がお分かりいただけましたでしょうか?

来院する初診の患者様のじつに99%が、まだまだこのような旧来の因習に侵されています。
それは問診をすれば一発で分かります。
そのような方々に、お口の健康の大切さとか現状の問題点を説明して、ご理解いただくことは
困難を極める作業のひとつです。

逆洗脳と同じことだからです。

【今回のまとめ】

日本の歯科行政は、制度設計上、国民の歯をより傷めるようになってしまっている

01:46 | nemoto | 「現在の」制度設計で日本人の歯が悪くなる はコメントを受け付けていません
2011/06/30

こんにちは。歯科医師の根本です。

前回は、縄文時代から昭和33年までの流れを、まさに駆け足で
おさらいしていきました。

人間の自然な寿命がもともと40年程度だったのが、戦後は現代医学の発達と
栄養・健康状態の改善によって、飛躍的に増進しました。

しかし歯の寿命は伸びないので、潜在的な歯科疾患の大幅な増加が見込まれる。

こんな時代背景をもとに、歯科も皆保険の仲間入りをしたのです。

昭和33年に施行された国民健康保険法で、3年後に皆保険達成になりました。
当時は国保本人家族、社保家族が窓口5割負担だったのですが、社保本人は

 0 割 ( = 治 療 費 無 料 )

です。
治療に通うな、というほうが無理です。

私もよく当時の話を聞くのですが、とにかく今とは全く比べ物にならないような
ものすごい売り手市場だったようです。
なにしろ歯科医師1人スタッフ1~2人の平均的な街医者においてさえ、患者数が

 1 日 100 人 (≒1人5分) は 当 た り 前

なのです。待合室には入りきれない患者様がそれこそ鈴なりのようにあふれ、
院内ではとにかく患者数を右から左にさばくことで精一杯、待ち時間はそれこそ
30分1時間は当然の有様です。

よく、医者歯医者の金儲け主義はけしからん、なんてしたり顔で嘯く輩がいますが
これでは金儲けの前に先生が体を壊してしまいます。
これが昭和50年代ごろまで続きます。
私が歯科医師会の会合で先輩の先生に聞いた話では、約30年前の開業当時

患者様が待合室からあふれて行列をなしており、診療室に入れなかった

とおっしゃっていました。。
根「治療はどんな感じだったんですか?」
先「まあほとんど抜歯ばかり」
・・・

よく「昔の先生は抜歯が好きで抜いて入れ歯ばかりで、こんなになってしまった」
とおっしゃる患者様がいらっしゃいます。
それもほんの数十年前の話です。
しかし、1日100人の時代では、良質の歯科臨床の提供など絵に描いた餅です。

それでも、無料ないしは安い値段で一応歯科治療が受けられるようになりました。
このことが、国民の行動様式に非常に大きく刷り込まれ、固定観念を形成します。
このことについては、重要なので後に述べます。

◆ 歯は無料~1本数千円で治療できる

もちろん実態は何度も申し上げたように、歯の治療は治療ではなくリハビリテーションなので
1日100人などの劣悪な労働環境では、否応なく
 「とりあえず削って水銀(アマルガム)充填」
 「とりあえず神経を取って差し歯」
 「とりあえず抜いて入れ歯」
などの粗悪な仕事が乱発し、結果、患者様の歯やお口の健康を大きく損ねたのは当然でした。
しかし1日100人を1人で診るような野戦病院さながらの現場です。それはそれでお気の毒です。
労働者(歯科医師)も必然的に自己防衛のため下記のような固定観念を形成します。

◆ 削ること、神経を取ることは良いことである
◆ とりあえず抜いて入れ歯は良いことであ

診療所に大勢の患者様が押しかける。これも国民の願いだということも良く分かります。
これは非常に複雑な心境です。しかし自分の良心を騙して雑な仕事をするしかありません。

「もうこんなのは嫌だ、俺は技術を生かしてていねいに治療したい」
いわゆる自由診療専門医(=保険は診ない歯医者)がかなり生まれました。

必然的に患者数を1日10人以下に絞ります。
それでも患者が10人来たのです。それほど歯科の潜在需要の高かった時代でした。
(今そんなことをウチでやったら、一人も来なくなるでしょう・・・)

また、当時は差額徴収制度という、今はない制度もありました。
たとえば銀歯は保険が利くけど金歯は保険が利きません。
銀歯1本2万円、金歯1本5万円とします。
そこで、1割負担の社保本人の人は、

 5万 - 2万×(1-0.1) = 3万2千円

国保や家族など5割負担の人は

 5万 - 2万×(1-0.5) = 4万円

で、銀歯の保険を使って金歯を入れるというものです。
現在ではもちろんこれは混合診療禁止の原則に引っかかり違法ですが、
当時はかなり保険外診療の歯が出たようです。

金歯を保険に入れればいいのでは、という声が聞こえてきそうですが
やはり保険料の財源問題から、金歯までは無理だということでこうなりました。

この差額徴収制度は「昭和51年課長通知」という通知で廃止になります。
きっかけは主に国民やマスゴミの「歯医者は金儲け主義だ」という不満の声でした。
また日本医師会も、差額徴収という混合診療は保険制度の趣旨になじまないと反対しました。

そしてどうなったかというと、また歯科医療費が伸びてしまいました。
今まで以上に安易に、銀歯が増えたと言うことです。

 今までの金歯数 + 今までの銀歯数 < 廃止後の銀歯数

私は思います。

確かに当時は、世界的にも差し歯入れ歯至上主義の時代ではありました。
しかし歯科医師はていねいで良質の仕事をしたい、と思うのも人情です。

自由診療専門医や差額徴収制度が、ある程度患者数を抑えることによる
チェアタイムの増加~診療の質の向上
に寄与した面も大きいと思います。

なにしろチェアタイムは回転率に反比例します。

確かに客単価は上がりましたが、サービスの質も同様に向上しました。
ですから、単純な金儲け主義とはとてもいえないと、私でも思います。
現在の歯科臨床の観点から言うと、まあ五十歩百歩ではあるのですが、
私のような仕事をしていると、当時の先輩方の祈りのような気持ちが
伝わってくるような気がするのです。

ここで、私が最初のコラムで申し上げた「歯は治療できない」のように

◆ 歯の治療は治療ではなくリハビリテーションである
◆ 歯は有限なので、なるべく残すことが大事である

ということや、武田先生を引き合いに出したコラムで申し上げたように歯科を

 第四象限
 「可逆的」「回避不能」~たとえば一般的かつ偶発的な病気や怪我
 現状どおり保険診療の『主訴に対する』対応で事足りると考えます。

ととらえずに、その時代に予防や定期健診の重要性を行政も含めてよく理解し

 第二象限
 「非可逆的」「回避可能」~メタボ・糖尿病・歯科疾患など生活習慣病系
 「情報提供」「予防奨励」「飴(予防保険)と鞭(治療自己責任)」がきわめて有効

と捉えることが出来ていれば、現在の日本のようなお口の中の悲劇は生じなかった
と考えられるのです。

その大きなヒントは、患者数です。

じつは外科や内科、他科の医科開業医は、基本的に手作業がほとんどありません。
それは自己治癒力を期待できるので、投薬や指導、経過観察、看護師の処置指示で
ほとんどが完結してしまうからです。
また難病は大きな病院や大学病院で診ますし、小オペはまとめて行います。
ですので、彼ら(医科開業医)の場合は鼻歌を歌いながら楽勝で、現在でも

 1 日 100 人 (≒1人5分) は 当 た り 前

なのです。
すべて手作業の歯科医師の1日100人とは全く事情が異なります。
それも「歯は再生しない」がゆえに起こる医科と歯科の質的な差から生じています。

昭和40年代当時、差額徴収を批判したマスコミや国民、医科医師たちの批判は、
その点も押さえてのものだったのでしょうか?
私は、その当時は国民誰もがその点を理解していなかったと思います。

日本独特の医療軽視の伝統もあり、おそらく単純な嫉妬心からであろうと案じます。

それから現在、若い主婦や小さいお子様は徐々に分かってきてはいるようですが
男女とも40代以降、とりわけ高齢者に近づくにつれて、意識は昔のままです。

それは初診時に患者様とお話をしてみると非常に良く分かります。

「とにかく、削ってフタをしたり取り付け工事をすればすべてよし」
一見素人考えのような気もしますが、そうではなく、じつは歯に対する昭和時代の

 古 い 考 え 

なのです。そして、その古い考えが非常にまずい利権構造と化しているのです。

じつは保険診療の歯科治療費(窓口負担)はOECD相場の30分の1近くの値段なのです。
その他はと言うと、上流階級以外は抜歯が実質的な治療だったりするような国ばかりです。

いっぽう、今の日本の健康保険は一旦悪くならないと使えません。
ですから予防や定期健診には(多少の抜け道はありますが)保険が利きません。
まじめに歯の除菌をしたりするだけで、数万円かかったりします。

ところが保険の利かないセラミックやインプラント、予防などの自由診療では
料金はわが国を含めてほぼ国際的に統一化の傾向
にあります。

 海外の歯科診療≒自由診療>>>/∞/>>>海外の予防歯科≒予防歯科>保険診療

何と、歯を予防するより歯の治療するほうが(若干ですが)負担金的には安いのです。
これではよく事情を分からない国民は、いや、悪質な輩は事情を分かっていたとしても
分からないふり
とか「これが日本の常識だ」みたいな原子力村の連中のような顔をして

 「悪くなってもぉ~、気軽にぃ~、保険でぇ~、歯の治療ぅ~♪」

とか言うに決まっています。
 んなもん、俺だって事情を知らなきゃ、絶対言いますよ、おんなじこと!
リハビリテーションとか有限なので大事にとか、そんなことは30分の1の価格差の前では
頭から消えてしまいます。何しろ削ったほうが安上がりなのですから!

このような状況が放置されると、国民の歯はむしろどんどん悪くなり、医療資源も
どんどん浪費することになり、ますます財務省と厚労省がのさばることになります。

この悪循環のことを保険業界では「事前的モラルハザード」と呼びます。

正確には「ある事象に対して保険が設定され、被保険者が事象の発生確率に
影響を及ぼしうる場合に、被保険者が努力や注意を怠ることによって、発生
確率が増加する」という表現で示され、書籍「医療サービス需要の経済分析
(井伊雅子、大日康史;日本経済新聞社)」で二階微分方程式の解として証明
されています。

保険が利くことで国民の歯が良くなればいいのですが、逆に悪くなるのです。

これは問題です。
次回はこのあたりを、もう少し掘り下げて、保険制度にまつわる諸問題をいくつか
述べてみたいと思います。

【今回のまとめ】

国民皆保険以来、歯に対する国民意識は「事前的モラルハザード」に毒されたまま

p.s.

これを見ると「何だ根本は保険否定論者か?」といぶかる方も少なくないかもしれません。
そんなことはありません。より低廉な負担でより国民の健康が増進されることはまことに
結構なことだと思います。
しかし、制度が骨抜きだったり偏ったりしていると、思わぬ弊害があるのもまた事実です。

たとえば現在の日本経済はバブル崩壊後の数十年デフレ不況で苦しんでいます。たしかに
家庭の主婦にとっては物価が下がったので良いと思うかもしれません。
しかしその分賃金水準も下がっており、全体として金が社会に回らず、国は貧血状態です。
家庭の主婦は頭の中では「物価が下がってよかった」と安心していますが、無意識の中で
亭主の給料の低下に怯えており、なるべくムダ遣いを控え、旦那の小遣いを減らして貯金
しょうとしています。一家庭ではそれでいいですが、日本中がそうなると大問題なのです。
日本のGDPの9割は内需なので、解決策としては、1400兆とも言われる個人金融資産つまり
預貯金を国内で消費する、あるいは企業が投資することですが、1400兆の預貯金を預かる
銀行では、誰も借りてくれない中、利子で損しないために国債で運用するのが一番確実で
どうしても銀行に国債がたまり、政府に赤字と現金がたまっていきます。つまり貸し手は
国民の貯金なのです。こんなときには多少政府の借金が増えても景気対策が最優先です。
景気が良くなると物価がやや上がりますが亭主の給料も上がります。企業も銀行から金を
借りるようになり、銀行は国債を政府から買わなくなります。そのような時代こそ好景気
の日本であり、そうなるまでは国の借金がとか税と社会保障の一体改革とか決して口には
してはいけないのです。

これを家庭の主婦の視点で見ると、人によってさまざまです。
<A>給料が下がっても物価が安くなるほうがいい人もいます。
<B>物価が上がっても給料が高くなるほうがいい人もいます。
しかし貯金の多い高齢者の年金生活者から見ると、<A>がいいに決まっています。
つまり日本のお年よりは景気がデフレで悪い方が損をしないのです。
しかし貯金のない若中年の給与所得者から見ると、<B>がいいに決まっています。
つまり日本の若者は景気が悪いままだと生活も貯蓄もできないのです。
ただこのままでは高齢者の個人金融資産は相続税で国に召し上げられ財務省の帳簿のみ
矛盾が解消されるものの、本来国を回るべき富が国を回らず死に金になってしまうので、
デフレや低賃金は解消されず、若者はいつまでたっても貧困のままである、ということに
なります。

このように、物価が下がって一見良く感じても、じつは給料も下がって全体としては悪く
なる、ということもあります。やはり物事は多面的な見方が大事だと思います。
その意味では、震災もあるし、今は積極的な公共事業や設備投資を優先して、財務省には
景気が良くなってインフレ率がプラスになるまで税と社会保障の一体改革は待ってほしい
のです。とくに今は資産を失った被災者や将来の子供のために動くべき時期だと思います。

ところで今日本の歯科の優先課題は果たして安価で低質な修復の推進でいいのでしょうか?

08:42 | nemoto | 保険制度以降の歯科とモラルハザード はコメントを受け付けていません
2011/06/29

こんにちは。歯科医師の根本です。

私は、歯は治療できない、リハビリテーションだ、と前回まで言ってきました。
また、やや既成概念と異なることもいくらか言ってきました。

「何となくニュアンスは判らないでもない部分もあるが、具体的な点が・・」

こうお思いの方もいらっしゃると思います。
そこで、いわゆる歯の治療の実態とは何かについて少し述べていきます。


1年ほど前に「インプラント使いまわし事件」という、ありえない事件が起こりました。
他人の『骨』内に埋め込んだ「インプラント」という歯の支柱が、失敗して取れたのに
それを洗剤で洗って滅菌した後、また別の人の『骨』内に埋め込んでいたというのです。

インプラント治療とは、顎骨の中にチタンの支柱(人工臓器)を埋めて、癒着したら
それに歯を取り付けるという、技術的に高度な治療法です。
もちろん厳密な清潔操作が要求されるのは言うまでもありません。

いくら菌を消毒したからと言って、他人のタンパク質が付いた人工臓器を移植する・・・
Aさんの骨の中にあったものが失敗して取れてきたのに、何とそれをBさんの骨に埋める!!

私も恥ずかしながら、それなりにイカサマ治療や手抜き治療の話を聞いたり見たり
(しても自分では極力しないように)してきたつもりですが、コレには驚きました。
しかも傷害罪で検挙されなかったことには二度びっくり!!まさに開いた口が塞がりません。


しかし驚いた後、よく考えてみたら、別の意味でとても恐ろしいことに気がつきました。
歯の修復は、治癒力がないので、手作業の仕上がりが全てであることは当然です。これを

◆ 患者様は全く確認することができない

のです。


<歯石除去>

簡単に言うと、歯石とは歯周病菌がカルシウムイオンを取り込んで固まったものです。
歯に歯石が付くと歯周病になります。
歯周病になると骨が溶けるので歯石を取らないといけません。

歯周病菌は、酸素が嫌い(通性嫌気性)なので、隅の方隅の方に行こうとします。
とうぜん歯周ポケットの外よりも歯周ポケットの底の方に行こうとします。
また(簡単に言うと)歯周ポケットの底の方が菌が元気なので歯石も硬めです。

処置では、この底の方の隠れ歯石「縁下歯石」の確実な測定・除去が大前提です。
場合によっては麻酔をしたり、さらにメスで切って一時的に歯肉をはがしてまで
確実に縁下歯石を除去することを第一の目的とします。

ところが、こんな自分で見えないところの歯石が取れているか取れていないかなど
患者様が自分で確認することなど決してできません。

「取れたよ」と先生が言ったから取れたんだろう

・・・本当ですか?

「おかしいなあ、定期健診で取っても取っても、しばらくするとまた腫れてくる」
という自覚症状で推察できるかできないか、というレベルです。
普段は痛みも無いし、定期健診にも通っていて、歯みがきの指導も守っています。
ですので、患者様本人には落ち度はありません。そこで誤解します。
「私の歯肉は、他の人より弱いのかなあ・・・」
「私の歯みがきは、他の人より下手なのかなあ・・・」

そうこうするうちに、歯槽骨は痛みもなくスルスルやせて下がっていきます。

まさか取り残しだとは思いません。
まさにブラックボックスなのです。


<むし歯除去>

あなたは歯医者で治療してもらったときに、確実に自分のむし歯が完全に
除去されたことを、ご自身の目で確認したことがありますか?
おそらくそのような方は一人もいないのではないでしょうか。

ちなみに、現在では、むし歯の取り残しを染める色素「齲蝕検知液」で染めて
削った後に赤く残らなければ終了、ということになっています。
これは、確度は高いのですが、むし歯菌そのものを染めているのではありません。
むし歯でカルシウムが溶けた後の歯のコラーゲン残骸部分を染色するものです。

それすら目で確認していないでしょう。

先生も、時間がもったいないのか、それすらせず勘で削っていることがほとんどです。
「エナメル象牙境/EDJ」などと呼ばれる隅の方を見落としでもしたら
後でそいつの中に確実に残存するむし歯菌がフタの中で増殖して・・・

「取れたよ」と先生が言ったから取れたんだろう

・・・本当ですか?

じつを言うと、患者様がそれらを確認することができる歯科医院がごくまれにあります。
ドイツのカールツアイス社製の歯科用マイクロスコープ(双眼式実体顕微鏡)の
400万位する機種には、患者様が鏡像をライブで確認できる3Dのメガネ型スコープを
取り付けられるものがあります。
(私の医院のものは安物なので残念ながら取り付けられませんが)

それを見れば、先生がしっかり削っているか確認しながら治療を受けられるのですが、
第一にそんなのを覗きながら削られるのも、苦しくないですか??

そこで、目をつぶって治療を受けながら「私の場合は大丈夫だったと思いたい」
と信じたいのです。
まさにブラックボックスなのです。


<神経除去>

永久歯の神経を取る処置、ということは、その後に中の空洞を洗浄消毒して、そこに
防腐剤(根管充填材)を密に充填することにより、いわば

「歯の剥製」
「歯のミイラ」

を作成する作業です。

歯には1~3本の根があり、それぞれの根ごとにチクワの穴のように1本神経が通っている
とされます。
Google画像検索などで見られる歯の神経の図も、チクワのような単純そうな図です。
しかし、根によっては売れないキュウリのように強く湾曲していたりします。
また、チクワの穴(根管)がつぶれて断面がひょうたん型になっているものもあります。
あるいは、先端部(根尖部)で網目状に分岐したりもしていることもあります。

以前、母校の歯内治療学の医局での実験で、抜去歯を手に持って神経を取ろうとしても
取りきれない(根尖を穿通できない)ものも1割くらいあった、というデータを
見たこともあります。その道(根管治療)のプロがやってこれです。

また、じつは根管の本数を2本だと思ったら3本だった、という見落としもあります。
(これは、他院での再治療のときに発見されたりします)

このように、どうしても取りきれない神経や機械的に洗浄しきれない管の内面が
残ってしまいます。

そういうものは、結局薬で殺したり、アルカリで溶かしたりして、何とかした
「ことにする」ことで、治療を進めざるをえないというのが実情だったりします。

神経除去や根の治療についてはいろいろありすぎるので深くは割愛しますが
もうひとつ大事なことは、

◆ 先生すら治療中に治療部分(根尖部)を見られない

つまり、指先の勘と電流計(根管長測定器)だけをたよりに処置するしかない、という
ものすごい不確実性が存在します。
いったい他のどの分野に、目で見ないで勘だけで処置する治療があるのでしょうか?
こんな治療は神経とか歯科の治療だけです。

もちろん数百万円の歯科用マイクロスコープで覗いても、見えるのは入り口だけで、
中間部分以降はたいてい大なり小なり湾曲しているので見えません。そこで

◆ 器具の先端が根の先端まで届いたら治療終了

などという、きわめて不確実な基準で治療を終えざるをえません。
先端に届いたことは電流計やレントゲンで確認できますが、神経や汚れを取り残して
いないかどうかを確認しているわけでは全くありません。

後はメーカーの指示通りの量だけ内面研磨(拡大)して終了になってしまいます。
それも、拡大終了根管は必ず正円にちがいないと言う「希望的観測」をもとにして。
まさにブラックボックスなのです。


以上は、歯科医院で 日 常 的 に 行われる処置です。

豊橋でインプラント使いまわし事件がおこったときに、浅はかな私は
「患者様の目に見えないからといって、使いまわすなんて何と非倫理的な」
と、いったんは憤ってはみました。
しかしほどなくわが身を省み、まさに背筋が凍るような恐怖感に襲われました。
それは歯の治療すべてが、

◆ 施主が工程の精度を一切確認できずに進行するがままの工事

に他ならないと改めて気が付いたからです。
私は心の底から自分の仕事に落胆しました。
歯科の治療では患者様がこんなに不確実で不安定で不利な状況に置かれるなんて!

そういえば、「歯」という漢字を見ていて、アレを思い出しました。
数年前の、某建築士による耐震偽造問題です。ずいぶん新聞をにぎわしましたね。
とりあえず、例の物件がその後倒壊したなどの大きなトラブルはまだないようです。
今回の震災でも、特筆すべき被害は今までのところ見られなかったようです。
しかし、私たちの安全を脅かすこのような偽装やブラックボックスが
日常的に存在することはとても怖いことです。

しかも歯科治療の場合は、ていねいか手抜きかにかかわらず、治療体系自体が
構造的ブラックボックスを誘発
する宿命的な問題を抱えています。

じつは、ほとんどの開業歯科医の先生は、うすうすこのことに気が付いています。
しかし、現在の制度上、開業医は経営を強いられるので利潤をあげる必要があります。
ためしに数々の歯科医院のホームページを見てください。

 「私はインプラント/審美治療/○○治療etc. が大変上手です」
 「私は○○国に留学しました/国際○○学会に所属しています」
 「私の治療は完璧です/他院のように悪くなりません/痛くありません」

そんなのばっかじゃないですかwww ウチもですけどorz

まさか自分の口から
「歯科治療とは本質的にブラックボックスであり不確実性を伴うものである」
などと本当のことをポロッと漏らしたら、患者さんがビビって逃げ出してしまいます。
もちろん、自分の店がつぶれてしまいます。

ですから、歯科医師の口からは絶対にこのことは国民に漏れないようになっていますw

患者様は、どのような気持ちで通院すればよいのでしょうか?
「先生を信じろ」とでも言うのでしょうか?
先生ですら見えない治療があるというのに、それを信じろとでも???
「私の場合は大丈夫だったと思いたい」それでは宗教ではないでしょうか?


「歯は治療できない」
私は初回のコラムのタイトルにそう書きました。

あなたが以前受けた処置が、こんなブラックボックスでよかったのでしょうか?
当面痛みが出さえしなければ、中や裏側は大雑把な手抜き工事でいいのでしょうか?

もちろん私も、やるからには極力丁寧にやろうとは思いますし、そうしています。
しかし、家に帰ってきてからが、心苦しいですね。酒が一向に減りません・・・
このような、「歯科治療」と称するブラックボックスを作り出すシステムや作業を
国民医療・国民福祉の枠組みから一刻も早く一掃して、別の職能集団による
「歯の治療のない日本」を何とか確立してほしい・・・

最近はそんなことばかり考えています。
あなたも一度、外科や内科など、他の科と比較して考えてみてください・・・


p.s.
インプラント使いまわし事件に関連してひとこと申し上げますが、万一失敗して
インプラントが取れてしまった(初期固定に失敗)場合、古いインプラントを撤去
(これは非常に簡単です)した後に、穴の保存処置をして数ヶ月待つと、ふたたび
再埋入が可能になります。その際により長いor太い物にするとたいてい問題なく
生着します。
つまり、通常治療の失敗とインプラント治療の失敗では、再現性の観点からみて
通常治療のほうが決定的に不利なのです。骨は再生しますが、歯は再生しません。

【今回のまとめ】

歯科の治療はブラックボックスで、患者様は工程を確認できず、先生もできない。

06:11 | nemoto | 歯の治療の本質とブラックボックス はコメントを受け付けていません
2011/06/29

こんにちは。歯科医師の根本です。

私は、歯は治療できない、リハビリテーションだ、と前回まで言ってきました。
また、現場で見ておりますと、つい保険制度下で油断して歯を粗末にして
「安物買いの銭失い」になってしまう例が多いことも懸念しております。
(これは保険外の高い義歯を入れろ、という意味では全くありません)

「そんな、歯医者は医者の一種だと思っていた」
「歯科は医療の一部ではないのか」

という声もまだまだ大きいのでは、とは思いますが。

実際、西洋医学的に厳密に分けると、歯科が外科でも内科でもなく
該当する診療科がない、ということなのですが、その昔は当然おおまかでした。

そこで、若干医科のほうにも重なりますが、現在の保険制度に到達するまでの歴史を
少しおさらいしてみたいと思います。


まず、縄文時代ですが、現代人よりも顎の骨格がしっかりしていることが
知られています。また、遺骨の残存歯数も数多く、しっかり歯が残っています。

「ああ、どうも現代人は退化したようだ、なんと情けないことか」
と思わないで下さい。縄文時代の人の平均寿命は、なんと驚くなかれ

 1 8 歳

なのです。これではむし歯や歯周病になる前に死んでしまいます。
その後、鎌倉室町あたりが30代、それからずっと明治時代~戦前あたりまで、
平均寿命は40前後を行ったり来たりなのです。

40で死んでしまうのでは、やはりほとんどの人が、多少歯を傷めるでしょうが
歯を全部失ったりする前に寿命ということにになるでしょう。
現代医学の発展がいかに人間の寿命を強引ともいえるまでに伸ばしているかが
分かるというものです。
(てゆうか、コレ無かったら俺なんてとっくに●んでるはず)

つまりこれから推察されることは、人間の生物としての自然な寿命は

◆ 現代医学なし、社会文明なしでは 18歳
◆ 現代医学なし、社会文明ありでは 40歳
◆ 現代医学あり、社会文明ありでは 80歳

ということです(本当かどうかは分かりません)。
寿命40なら、歯の寿命は・・・う~ん、微妙かも

その昔、信長は桶狭間の前に「人間五十年~♪」と、熱盛り敦盛を舞いました。
子供心に私は、「昔の人生はなんて短いんだろう」と思いました。
じつはあれでも、結構長めにサバを読んでいたのですねw

また、医療については誤解が多いのですが、日本では有史以来明治維新まで、
医療は原則的に身分の卑しいもの「賤民/被差別民/穢多・非人等」が行う仕事でした。
(身分の高い人向けの医師や小石川養生所などのまれな例外はあります)
これは、有史以来「死・産・血」にかかわることは穢れである、というのが、
日本の歴史と伝統の大前提であるからです。とうぜん医師も例外ではありません。

詳しいことは沖浦和光先生の講演録(PDF:49/138ページ~)をごらんください。
内容は今で言う漢方のようなものや、民間療法、加持祈祷、気や超能力?!などが主でした。
歯科ももちろん、そのようなアウトサイダーズの方々がメインに担っていました。

当然、今のような歯の治療など昔にはありませんでした。抜歯と入れ歯だけです。
抜歯は大道芸人や香具師、藤内(とうない:薬売りの行商)などが行っていました。
入れ歯は総入れ歯しかありませんでしたが、仏師崩れのような人が木の入れ歯
(木床義歯)を作ることもあり、かなり精巧な出来なので富裕層に好評でした。
もちろん芸人さんや藤内さんなど全員、そのようなアウトサイダーズの方々です。

ところが明治時代に西洋医学が導入されると、今までおとなしかった医師が
突然いばり始め、治療費を吊り上げはじめます。
それまでのアウトサイダーズの方々のような懐の深さは影を潜め、
「貧乏人は帰れ」などと追い返すようになりました。

そこで怒ったのが明治政府です。「『医者のクセに』生意気な!!」
明治7年に医師取締法「医制」が公布されました。
貧乏人を追い返すことを禁止し、禁固刑まであったそうです。
これが今、憲法違反ではないかなどと問題になることもある「応召義務」の走りです。
戦後、このような前近代的なことは廃止しよう、という議論がありましたが
「公益性(=医者どもをのさばらせるな)」の観点から、努力義務規定の形で残り、
通達等や民事訴訟では有効なまま現在に至ります。

ですから日本人は医師の応召義務は当然だ、ノブレスオブリージュの一種だと
誤解して
いて、外国でもそうだ、と考えている方が多いのですが、もともとが
「医制」という規制に端を発するものであり、わが国固有の制度・慣習です。
もちろん契約社会の欧米では医師と患者は対等ですので、応召義務はありません。

しかし患者サイドも無い袖は触れません。
そこで政府は明治44年に恩賜財団済生会を設立して、医療を広く行き渡らせようと
しました。また同じ頃、鈴木梅四郎らによる「軽費医療運動」という運動が
草の根で起こりました。
こちらの方は、どうも開業医の守旧派に足を引っ張られてうまくいかなかった
ようですが、時代の流れで大正時代になると、日本を支える労働者階級のための
健康保険制度
が生まれるきっかけにもなっていきます。

こうして西洋医学はぜいたく品から、社会インフラへと様変わりを見せるのでした。

このころの歯科も、正直、今から見れば江戸時代とさして変わらないレベルでした。
新しいことといえば、部分入れ歯ができたことと、むし歯につめ物をするようになった位です。
当時はまだ戦前~戦中、歯科には保険はありませんでしたから、むし歯のつめ物は金箔でした。
私の祖父は開業歯科医でしたが、隣町まで金箔を買いに行くのが、幼い頃の父の役目でした。


当時は患者数も1日10人前後、歯科医師の仕事のメインは、夜に入れ歯を作成することです。
昼間は抜歯したり型を取ったりするのですが、それはいわゆる「前準備」です。
また歯科自体がぜいたく品でしたから、そのような家内工業で十分採算が取れました。
また、むし歯に詰める金箔ももちろん高価です。

戦後は、経済成長や医学の発展のおかげもあり、平均寿命はどんどん伸びていきました。
そうすると、体のほうは医学の発展や健康に注意すると治癒力や生命力が上がるのですが
歯のほうは残念ながら、治癒力や生命力があがりません。
寿命の延長とともに、必然的にむし歯や歯周病で困る人が増加することになります。

「歯を『何とか』してくれ」という社会的需要も大きかったことは容易に推察されます。
・・・


この『何とか』の部分を、現在の私たちはどう捉えるべきでしょうか?

ここまで、古代から、皆保険達成の昭和33年までの歯科と医療を駆け足で眺めてきました。

私もいろいろ調べてみて、ひとつ個人的に気になることがあります。

それは、どうも日本では歴史的に医療は軽視されてきたのではないか、ということです。
確かに、外国でも歴史的に別の業種の職人などが医療を行っていた例は多いのですが
日本の場合は、医療そのものが歴史的な賤民思想、はっきり言ってしまえば今で言う
差別、人権問題的な問題をながく引きずってきたという懸念を少なからず抱くのです。

もちろん現在の医師・歯科医師がそのような問題を引きずっているかというと
そうではありません。

しかし、今もゆがんだ形で応召義務や保険制度に残る問題を考えてみると、どうしても
時の行政が医療者の増長を抑えたりコントロールしたがってきた経緯を強く感じます。

また国民一般が、医療や病を他人事のように考えたくなる気持ちも分かります。
なんといっても「死・産・血=穢れ」であることや、前回コラム「民は之~」
で書いた無責任主義<家康説>のこともあり、なるべく病や医療については、
とりあえず保険料も払っているし医者は道具だから使い倒しておけばよい、
いちいち医療問題を考えるのも面倒くさい、などと思いたいのもよく理解できます。

ただ、このような発想は、今の国民一人一人が勝手に考えたりマスコミが報道して
そうなったというより、すでに歴史的な「国民性の一部」として根付いているのでは
ないかとも思われます。
とはいえ、とくに歯は、治療できない/再生不能リハビリテーションしかできない
という特性もありますので、とても他人任せで安穏とできるものではありません。

何より、市民各位による公平確実な情報収集・把握は民主主義の大前提です。
マスゴミ等の宣伝に踊らされて満足しているようでは衆愚主義の謗りを免れません。

【今回のまとめ】

個人的な考えだが、日本人は歴史的に、医療面を他人事として軽視してきたのかもしれない。

05:33 | nemoto | 保険制度以前の歯科と医療 はコメントを受け付けていません
2011/06/22

こんにちは。歯科医師の根本です。

「おい、タイトル逆だろう」
分かっています。

前々回、あなたを惑わし、事実から顔を背けさせようとする悪い奴が
わが国には確かに存在するので、問題だ、という話をしました。正確には

 民は之由らしむ可し知らしむ可からず

だそうです。論語「泰伯」の一説だそうです。

そしてこの文章は<孔子説><家康説>という、まったく意味の異なる
二大解釈があることでも有名です。

 家康説のほうは、彼が本当にそういったかどうかは分かりませんが
 皆さんが「彼がそう言った」と言っているようなので、仮に家康説とします。


 <孔子説…可能[~ことができる]>
 人民を担当者の施政に従わせることはできるが、道理を理解させることはむずかしい。

 <家康説…適当[~のがよい]命令[~せよ]>
 担当者は人民を施政に従わせればよいのであり、道理を人民に理解させる必要はない。


「可」という中国語に「べし」と大まかに意味を当ててしまった時点で
家康説のような甘い方向への誤解が生じるのは必然だったのかもしれません・・・

孔子は、不勉強な私のイメージでは、浮世離れした学者とか評論家のような感じでした。
しかしもしそうなら、彼は下記のように言うでしょう
 <逆孔子説>
 人民に道理を理解させることはできるが、担当者の方針に従わせることはむずかしい。

なぜなら現在の御用学者とか評論タレント、電波芸者共だったら、こう言うと思うからです。
 <逆家康説>
 担当者は道理を人民に理解させればよいのであり、人民を方針に従わせる必要はない。

「従わせることは簡単」「理解させるほうが難しい」考えてみると
大昔の中国は何とも理不尽で野蛮な世情だとは思いませんか?まさに独裁・・・
それをあえて正面から受けて逃げない孔子は、庶民生活や文化の機微にも通じた
すぐれて実学的な志向を持った学者だなあと、改めて感じました。


家康から始まる徳川幕府(江戸時代)は、265年という長期安定政権でもありました。
そのためのさまざまな工夫や配慮、戦国の世に戻らない努力もあったと思います。
その最たるもののひとつが<家康説>だったのではないでしょうか。

誰も「改善」「民主的」など余計なことを考えない、知ろうともしない。
なるべく前例に頼る。

ある意味、家康も天才なのかもしれません。

しかし<家康説>が日本にすっかり根付いてしまった結果、大きな弊害も生まれました。
それが端的にあらわれたのは、今回の大震災に伴う原発事故問題です。

ご存知のとおり、地震の影響で全電源を失った原発は、あっというまに冷却水を失い
早々とメルトスルーから水素爆発を引き起こし、大量の放射性物質を撒き散らしました。

この際一番大事なのは、とくに風向きに注意して、飯舘村など風下の人が
被害にあわないようにいち早く情報を発信したり避難させたりすることです。

しかし、政府は国民にSPEEDIを隠しました。
しかも、IAEAには逐一報告していたのに、というおまけつきで。

武田先生や原子力安全委員会専門委員の青山繁晴氏などが一生懸命「風下風下」といっても
頑として「半径」以外のものを国民に提示しませんでした。

官房長官や御用学者は言い放ちました。
「ただちに健康に被害はない」
「低線量はむしろ体によい」

事故から3ヶ月もたった参議院の委員会で質問された所管の(文科)大臣は答弁しました。
正確な値が分からなかったので仮の値で計算したものについては内部資料扱いにした。

原子力災害対策特別措置法により定められた国の防災基本計画の指針には書いてありました。
事故発生直後は正確な値の把握は困難なので仮の値で計算を行いすみやかに国民に示す。

野党の追及を受けた首相、文科相、経産相はあわてて「知らなかった」といい始めました。
官邸では把握できなかったので、その点は責任を感じています。すみませんでした。
・・・

ご存知のとおり、仮の値を入れたSPEEDIは、後日出てきた実測値と非常に近似しており
十二分に実用に耐えうるものでした。

私は思います。

読者の方はこれだけ見たら、武田先生や青山氏、追及した野党議員の言うことはもっともだ、
政府は何をやっているんだ、隠蔽だ隠蔽!!と思うことでしょう。

しかし、もしあなたが、たとえば枝野さんの立場だったとして、いざ原発が爆発したら
本当に同じことを思えるでしょうか?同じことを言えるでしょうか?

「やばい、やっぱり本当に爆発しやがった」
「SPPDI、SPPDIうるせえなあ、マスコミや野党は」
「どいつもこいつも我が政権のことを素人扱いしやがって」

このような気持ちに真に打ち勝って、原災法に則って速やかな情報発信ができるでしょうか?
マスコミや野党に追及された後でのこのこ出したら、負けた気持ちにならないでしょうか?

「いいや、とりあえず『ただちに』とか『事象が』とか言ってその場をしのいでおけば」

これでは、まあ官房長官は当然失格だとは思いますが。。。


しかし私はそのような人間的な弱さをまったく理解しないものでもありません。

なぜなら私たちは遠い昔から<孔子説>に真に向かい合わず、<家康説>でお茶を濁し
「ムラ社会」「余計なことは考えるな」「空気嫁」でここ300年以上来たからです。
これは民主党も自民党も、あなたも私も全く関係ありません。

これが「日本」の一部なのです。

まあ、その辺の普通の村なら「ムラ社会」でもべつに隣村や周りに被害はありません。
しかし「原子力村」「歯科医療村」のような専門家や業務独占資格者集団がそれで失敗すると
じつに莫大な被害を飯舘村やその他の幅広い周囲にもたらします。
しかも、その発想の根底こそは

 <家康説>
 担当者は人民を施政に従わせればよいのであり、道理を人民に理解させる必要はない。

なわけです。
「それは専制的だ」と思うかもしれませんが、この発想のもっとも大きな問題であり
さきほど私が「甘い方向への誤解」と申し上げた点は、後段の「~必要はない」が
無責任主義の温床になってしまっている点だと私は考えます。

 <家康説Ⅱ>
 「命題1」をすればよいのであり、「命題2」をする必要はない。

とした場合に、たいてい、より因習や前例に近くて処理しやすいのが「命題1」で、
より困難で、現状打開的な命題は「命題2」のほうではありませんか?
そういうことは、周囲に影響を及ぼさない範囲でやっていただきたいものです。


そういえばこの間、復興構想会議の座長の五百籏頭真氏が言っていました。

「復興『税』」

地震の前を思い起こしてみても、メディアでよく目にするのは

「増税による税と社会保障の一体改革」
「『国』の借金で日本は破綻する」
「『赤字』国債は抑えるべき」

池田信夫氏や勝間和代氏、辛坊治郎氏あたりが好きそうな意見ですね。

私見ではとくに悪質なのは谷垣禎一自民党総裁と与謝野馨特命相、この2名です。
今こんなことをして一体誰が得をするのでしょうか?
考えても考えても分からなかったのですが、最近私はようやく気づきました。

それは特殊ムラ社会の住人~「財務省」の担当官や「日銀」の白川方明総裁などの、
個人個人です。
特定の条件と思考がたまたま位置した少数の人間が特殊ムラ社会を形成します。
(いわゆる御用学者や電波芸人は、その保全のための部品の一部と考えられます)

彼らは別に財務省や日銀と心中当然なほどの責任を負っているわけでもなく、
ただとりあえずの任期をまっとうできればいい、程度の考えだと思います。

 この辺は企業経営を強いられる一民間医として非常に強い違和感を覚えます。
 月末に金が出て行く人と金が入る人はもしかして永遠に分かり合えないのかと・・

そうしたら、無難にしのぐには、前例や所属組織に迷惑をかけないことを
第一に考えると思うのです。「財務省」「日銀」という特殊ムラさえよければいい。

 本当は日本はデフレが問題なので、景気対策や消費促進が第一、増税など絶対禁忌
 本当は国債は全て円建てで95%は国内で回しているので日本国や政府は絶対飛ばない
 本当は『国』でなく『政府』の借金であり、主な貸し手は1400兆の『家計』貯蓄
 本当は 『赤字』とか『借金』とかは本質的に全く問題ではない

彼らは私が言うまでもなく、上記のことなど完全に理解しているはずです。
そして国民や国全体にとって正しい道であることも完璧に分かっているはずです。

では、なぜそうしないのか?

それは、国全体にとって良くても、彼ら個人個人や特殊ムラにとって良くないからです。
政府の赤字が増えたら、『財務省』や『担当官』の評価にとってよくない。
金融緩和でインフレになったら『日銀』や『日銀総裁』の評価にとって良くない。
彼らは国全体の危機よりも自分の評価が悪くなってしまうことを恐れている。
だから、国の借金とか赤字国債で日本破綻とかウソをついてまで、保身に走る。
御用学者や電波芸人に小金を掴ませてまで、わが身や因習・慣例の保身に走る。

そうとしか、思えないのです。

だから<家康説>で、庶民には国民一人当たりとか借金時計とか日本が飛ぶとか
ウソをついて今まで隠してきたのです。
最近はネット社会になり、ウソはばれてしまいましたが、それでもTVなど
お金の絡む場面では、いろいろな問題に関して<家康説>的なウソにまだまだ
しがみついているような気がします。


歯についてもそうです。

『早期発見早期治療』はウソだ。

有名な開業歯科医である竹尾昌洋先生が最近喝破されたように、早期発見早期治療は
ある策略に基づいて業界が画策し、結果として国民を騙し多くの歯を傷めてしまった
悪政中の悪政のひとつです。

そして大きな問題は、国民がすっかり餌付けされてしまい、その悪政が正しいと
思っていることです。

さらに私を含めた「歯科医療村」全体の方針として、その因習が受け継がれて
しまっていることです。

しかも、まれに正しいことに気が付いた人がいても、制度上の問題で不利になるので
口をつぐんでしまうような制度設計になってしまっていることです。


だから、あなたは今だに

「痛くない歯医者」
「やさしい歯医者」
「すぐみてくれる歯医者」
「回数のかからない歯医者」
「地元で人気=込んでる歯医者」
「金儲け主義でない歯医者」

などにばかり目が逝ってしまうのではありませんか?


思い出してください。

初回コラムのタイトルに私は『歯は治療できない』と書きました。
前回の武田先生を引き合いに出したコラムには、一見過激な数々の提案を
恥をしのんで晒してみました。

あなたの口の真の敵は、「歯科医療村」であり「原子力村」「財政規律村」などの
特殊ムラ社会主義であり、その底流にあるものこそ、無責任主義<家康説>です。

普段は構いませんが、必要に応じて<孔子説>に立ち返り、困難に正面から立ち向かう
勇気も必要です。

あなたを惑わし、事実から顔を背けさせようとする悪い奴がどこにいるのだろう、
という問に対する当面の答えは、私たちの心の中&私たちの歴史『の一部』にある
<家康説>であり、特殊ムラ社会主義であるとしておきます。

そしてより歯や口そのものに密着した問題については「歯の実態について」
現在到達した歯科学からみて理不尽な制度面の問題については、あらたに
「お口の中の無責任」というカテゴリーに分けて、今後具体的にいろいろと
分かっていることをお伝えしていきたいと思います。

そして今回のタイトルをわざと逆に書いたのは
「ここで書いてお伝えすることは簡単だが、実際に皆様の歯やお口の健康が
 増進するかどうかは、困難な課題である」
という意味をお伝えしたかったのがその理由です。

【今回のまとめ】

日本人の歯が悪い原因の元は無責任主義<家康説>にあり、<孔子説>の再評価が有意義

 *おわび
  今回は徳川家の末裔の方々には不快な内容であったことをお詫び申し上げます。
  家康公のお名前は概念の説明上仮に拝借したものであり他意は全くございません。

10:57 | nemoto | 民は之知らしむ可し由らしむ可からず はコメントを受け付けていません
2011/06/17

こんにちは。歯科医師の根本です。
今日は、私の好きな学者、武田邦彦先生の議論から少し考えたいと思います。
胡散臭いと見る向きもありますが、私はこのような「正直系」の人間が大好きです。

ご存知のように先生はブログで活発に発言を行っております。
最近も勝手に王様になった菅政権という記事で、「原子力基本法は民主自主公開が
原則であり、政府民主党東電保安員御用学者のような原子力村の
隠蔽体質は論外である」とおっしゃっています。

これは全くそのとおりだと思います。

<命題>
民主自主公開の原則がない場面、必要十分なデータがない場面では
すべての国民議論、民主主義はまったくムダ
<対偶>
国民議論や民主主義を実りあるものにするなら
民主自主公開の原則と、必要十分なデータの確保が必要である。

というのが私の考えでもあるからです。

また、科学技術者の誠意、商人の誠意という記事で、
◆少なくとも科学者自身が「社会に貢献する」と考えていること
◆作品に関する全ての情報を表示すること
という前提条件が満たされるなら、科学技術者は傲慢にならずに、
その技術をショーウィンドウに飾るだけでよい、とおっしゃっています。

科学技術者としての中立性・矜持を示すまことに潔い見解であり、
このような言いにくいことをしっかり述べられる点に特に私は惹かれます。

その上でさらに、医療従事者の端くれとして社会福祉政策を語るなら
もう一段の敷衍が必要であると思います。
そこで若造が蛮勇を省みずに軽く暴れてみます・・

<1>ポジショントークを脱却する勇気

最近は歯科についてもネットで情報を断片的に取れるようになってきました。
しかし残念ですがどうしても一般レベル=患者サイドだけで取れる情報には限度があります。
その最大の理由は、

患者=消費者

というだけで、すでに偏ったポジションだからです。

私は以前、(挫折したが)商業出版用のデータ収集で、三重県在住の顔の広い某友人に
「歯科について何でもいいので一般レベルの疑問があれば集めてほしい」
(そのかわり個別の質問には彼を通じてすべて無料で回答する)
というお願いをしたことがあります。
彼は高校剣道部の同期で、25年ぶりに音信が取れたということもあり、
以前同様にとてもがんばってくれました。

その結果、非常にたくさんの質問が集まったのですが、その質問集はみごとに
過去に 自 分 が やられた不良治療についての相談になってしまったのです。

全般的・俯瞰的な面からの質問など皆無に等しかったことがとても印象的でした。

「歯など興味がない」と言われてしまえばそれまでですが、これが、
患者=消費者、というすでに偏ったポジションに立つ限界なのです。

それに対して私はこのジャンクステージのスペースを通じて
「それではヤバい」と、プロの端くれとして訴えたいのです。

やはり、包括的な視点に立って考えるには


医者=提供者
政府=監督者

という視点も加味して問題を検討するだけの精神的忍耐が必要があり、
あわせて、多面的な視点からの情報収集などの努力も必要です。

つまり医者が患者の立場にも立って考えるのは当然ですが、その他にも
国家とか行政、社会福祉担当者の視点に立って考えることも必要なのです。

ある人間がこの3者の視点にそれぞれ立って考えられる度量を持つことが、
 民主自主公開
 万機公論に決すべし
などのすべての国民議論、民主主義に参加するスタートラインだと私は考えます。

個人的な損得関係や利権などのポジショントークに終始して
声が大きいほうが勝つ、などというのはもはや議論とは言えず、
最悪を通り越して野蛮で卑属すらあります。

<2>ショーウィンドウに飾るだけでよい場面、よくない場面

武田先生の科学技術者としての中立性・矜持を示すまことに潔い見解は
科学の途に付く万人が見習わなければならない点でもあると思います。
先生からほとばしる正直系オーラは、泣き笑い健康談義(4)「修理屋さん」と「作る人」という記事(本当は(4)ではなく(5)だと思われますが)でも吹き上がり、
医療においても、厚労省と企業の利権の塊のようなメタボ検診を批判し

 野戦病院で必死に治療している医師から見れば、一刻も早く戦争を止めるべきなのです。
 しかし、医師は戦争については口に出しません。それは医師が「故障した人を修理する」
 という任務を委託されているからです。
 人の生き方について医師は口をださない・・・
 その約束があるから、医師は治療という人の体に手をかけることを許されています。

と切って捨て

 「予防医学」という「医学」が出てきて、医師は「故障の修理」から
 「設計」の方に進出してきました。(中略)官僚や医師がこのようなことを
 押しつけるのは(中略)傲慢な心が見え隠れします。

と、医療をあまり知らない人が額面どおりに聞くとやや不利益を被りかねない
発言もあります。

ただ、こと医療に関しては、そこから一歩踏み込んだ立場、すなわち武田先生流に言うと
「音声マニュアルつきの」ショーウィンドウ
にする必要があるものもある、と思われるので、その点について若干敷衍いたします。

私たちが歯科を含めて今後の医療をよりよくしていくためには
その疾病ないしは障害が

◆X軸~「可逆的」か否か
◆Y軸~「回避可能」か否か

の2点を軸に考える視点が必要だと私は考えます。すると

第一象限
「可逆的」「回避可能」~なものは、寡聞にして事例が思いつきません。
おそらく一般レベルで問題にならないのではないかと思います。

第二象限
「非可逆的」「回避可能」~メタボ・糖尿病・歯科疾患など生活習慣病系
「情報提供」「予防奨励」「飴(予防保険)と鞭(治療自己責任)」がきわめて有効

第三象限
「非可逆的」「回避不能」~後遺症の残るような大事故or癌等での断肢等
医療『以外』にリハビリテーションを必要とする内容なので、そこに手厚いケア

第四象限
「可逆的」「回避不能」~たとえば一般的かつ偶発的な病気や怪我
現状どおり保険診療の『主訴に対する』対応で事足りると考えます。

医療についての多くの問題がこのようにきれいに分かれると思います。

 ちなみに原発事故も第二象限「非可逆的」「回避可能」ですね。
 これに照らし合わせると原子力村の隠蔽体質などもってのほか、
 もっとも忌むべき発想です。
 政(ry が現在ごまかそうとしているのは、今回の事故が
 第二象限であるのに第三象限「非可逆的」「回避『不』能」
 であると言っている点です。その上で
 (自分たちに対する)手厚いリハビリ(=電気代値上げ、復興『税』)
 を掠め取り、ツケを国民に押し付けようとしている点です。

もっと言えば歯科疾患や原発事故は「歯科医療村」「原子力村」の住民が
国民に対して大事なことを隠蔽して、第二象限でもっとも大事である

「情報提供」「予防奨励」「飴と鞭」 = 民主自主公開/万機公論に決すべし

などのすべての国民議論、民主主義に参加する最低限のスタートラインすら
奪ってしまっているのです。

つまり歯科疾患や原発事故は「非可逆的」「回避可能」なので
「情報提供」「予防奨励」「飴(予防保険)と鞭(治療自己責任)」
が正解だと考えます。

「情報提供」
~民主自主公開、必要なデータの十分な提供
「予防奨励」
~広く安価に予防行動(健診など)ができる制度設計
「飴と鞭」
~上記2点を担保した上で、万一悪化の際はある程度の自己責任

原発も

「情報提供」
~民主自主公開、必要なデータの十分な提供
「予防奨励」
~十二分に安心な制度設計、付近住民への配慮
「飴と鞭」
~上記2点を担保した上で、万一悪化の際はある程度の責任共有

がもし徹底していたら、現在とは若干異なった議論や情勢になって
いたのではと思います。

ちなみに現在の「医療」保険は、体や歯がいったん悪くならないと使えず、
歯科やメタボのような「非可逆的」「回避可能」なものには不向きと考えます。

<3>プラスの世界・マイナスの世界

大体100人に1人くらいですが、ごくまれに分かっている人がいるもので、
歯科については歯科医師に権限が集中しすぎているのが問題だ、
とおっしゃる人がいます。

また欧米のように、歯科衛生士に開業権限を与えて(or衛生士を国が雇い)
「予防処置」「定期健診」「小児矯正」
をメインにしたら、誰も大人になってからむし歯や歯周病で苦しまない
という人がいます。

すでによい数字が北欧やドイツで出てきているのは事実なので、
歯科については日本は北欧やドイツをまねたらいいと、個人的には考えます。
(この件については今後じっくりと語っていきます)

また、産婦人科領域において助産師、整形外科領域において整体やカイロなど
周辺領域の人たちの活用が足りない、という意見も良く聞きます。

ただ、この点については乱暴に議論を進めると
「医者/歯医者ガー」「官僚ガー」「郵政ガー」「旧自民ガー」etc
などという、無用なスケープゴートによる悪者叩きでガスを抜くという

 戦 後 日 本 人 最 悪 の 悪 癖 

である無責任主義の上塗りを助長しかねません。
いや、楽ですよ。そういう風に叫んで溜飲を下げてしまうのは。
何だか素朴な正義の視点で社会参加した気分になるし、もしかしたら
問題も解決するのでは、と庶民が思いたくなる気持ちも分かります。

ただ、これを脱却しないと真の自立、真の民主主義も訪れない。

ストレスを発散する自由はありますので、この辺は分かった上で
WWEのように”大人的に振舞う(法の範囲内で)”のはいいと思います。

話を戻します。
そこで周辺領域の人の活用においては、当該部位の

◆Z軸~「全般的健康状態」

という概念を導入して考えます。

たとえばはっきり病気や怪我というのは、Zがマイナスの状態です。
糖尿病を長患いして、インシュリンを自己注するか薬で何とかするか、
なんていうレベルははっきりマイナスの状態です。
歯に穴が開いた、とか、歯周病で抜けてしまった、なんていうのもそうです。
歯並びが悪く、うまくかめない、などというのもそうです。

難しいのが、いわゆる第二象限のうち自覚症状に乏しいものです。
たとえばむし歯などの歯科疾患全般や、がんとかです。
(むし歯歯周病の自覚症状のアテにならなさといったら、ありません!)
これはたとえ痛くなくても他覚的に「むし歯」とか「がん」とか
はっきり診断が付くものは、Zをマイナスとすべきです。

いっぽう、これといって病名は付かないものの検査値が高いとか、
どうも最近運動不足で疲れやすい、このごろ腰や肩がこる、などというのは
Zがマイナスとはいえません。
お産についても、管理された正常な分娩は、Zをマイナスとするべきでは
ないと思います。
歯についても、定期健診でいつも歯石がつきやすいといわれる、とか
歯の掃除をしてもらうとときどき知覚過敏がおきる、などというのは
Zがマイナスとはいえないと思います。

結論から言います。簡単です。

医師(や歯科医師)の守備範囲は、Zがマイナスの領域です。
周辺領域の人たち(や歯科衛生士)の守備範囲は、Zがプラスの領域です。

ですから、利用者側としては、有効なスクリーニングの観点からしても
(1)まずはZがマイナスの領域の人(医師・歯科医師)の目を通して
(2)その上で必要があれば、Zがプラスの領域の人を有効活用する
という、ごくごくあたりまえの結論が出てくるだけです。

その上で、わが国では、Zがプラスの領域の人たちをあまりにも
軽視・抑圧しすぎてきた弊害が目立っていると考えます。

他科については不案内なので控えますが、歯科については明々白々です。
とりあえず現在の法体系があまりにも時代にそぐわな杉なので、
現行法の悪弊はいち早く切り捨て、まずはさっさと


 助手は無資格でも歯科用レントゲンのボタンを押してもよい
 助手は無資格でも型をとってもよい
 助手は無資格でも義歯の調整をしてもよい
 助手は無資格でも義歯を歯に接着してもよい

 (以上、歯科医師の指示下であれば指導監督は不要)

&

 衛生士は浸潤麻酔をしてもよい
 衛生士はカルテを書いて保険請求してもよい
 衛生士は本来的業務に際し歯科医師の指導監督は不要


という、世界中の先進国では常識以前の公理であり、かつ

 お 口 の 中 の 北 朝 鮮 = 日 本 

(いや、現韓国の歯科予防施策の前進を考えると、実質北朝鮮以下かも)
だけに残された無意味で弊害ばかり目立つ法規制は、国際的にも恥ずかしいので
一秒でも早く撤廃して、上記のような世界標準の歯科臨床環境を早くわが国にも
整えていただきたいものです。

「えっ、そんなことをしたら歯医者がオマンマ食い上げなのに、いいのか?」

という、私からしたら情けない声がたくさん聞こえてきそうです。
別に自分は、インプラントと予防マネージャーで食ってきますから
構いませんけど。。

【今回のまとめ】

医療系問題は「可逆性」「回避可能性」「+/-の世界」の三軸で考えるべきである。

01:03 | nemoto | 緊急提言:武田邦彦と「可逆性」「回避可能性」「+/-の世界」の三軸 はコメントを受け付けていません

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