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2011/07/09

こんにちは。根本齒科室の根本です。

ちょっと前のことです。小学校2~3年生くらいのお子様が治療に見えました。
いくつかむし歯があったのですが、前歯のかみ合せが逆で、いわゆる案と匂いの気状態、
下が前に出ている状態でした。


上下4本づつ永久歯が出ていたので、ちょうどよいと思いお母様にご提案しました。


根「○○君は、かみ合せが反対ですね。ご家族に同じようなかみ合わせの方は
  いらっしゃいますか?」
母「ああ、うちの旦那がそうです」
根「今ちょうど上下の永久歯の前歯が4本づつ生えているので検討にはちょうどよい
  タイミングです。よろしければ一度矯正の先生に見せてみるのはいかがでしょうか・・・」

・・・うっ、返答がない

根「いや~そもそも歯科の分野に絶対なんてものはないからそういうことはないですが、
  個人的には、やってあげないと将来お子様がかわいそうな気はしますね。
  自分だったら、少し貯金を始めるかなあ・・・」

母「と、とにかくよく、一度考えますぅ」

根「(考えるつもりなんかないくせにっ)はい、お大事にどうぞ」

・・・やっぱなぁ

最近思います。
日本人は自分の歯の価値を安く考えすぎなんじゃないかって。
だいたいむし歯治療で2千円くらい、根の治療から初めて3千円~4千円。

自分の歯の値段が3千円くらいだと思っても仕方ないかもしれません。
3千円だと思うから、自分の歯の扱いも3千円くらいの感じなのでしょうか。

 歯やかみ合わせは健康の入り口であって、決して部品じゃないのに。
 これじゃあ、誰も大事になんかしようと思わないよね。

この辺の話はまた別のところでします。
その日はその後ちょうど矯正の先生が来る日だったので、いろいろ聞いてみました。

根「今日、↑のようなお子さんがいたんですけど、なかなか治療に結びつかないのが
  悩ましいですね」

矯「そうですね。日本人はかなり矯正に対してはしり込みしてますよね。ただ、
  ここ(龍ヶ崎)のような田舎はそうかもしれませんが、都内なんかだとそれこそもう、
  小学校に上がるくらいからお子さんを見せに連れてくるのが最近は多いですね」

根(思わず涙目)「しり込みするというのは、治療費のこともそうですけど、矯正装置を
  つけているのが恥ずかしい、というのも大きい気がします。あれ、何でしょうね?」

矯「そうですね、あれを恥ずかしがるのは世界でも日本だけの、とても珍しい感覚
  のようです。」
 「一例ですが、大学で以前、アメリカの帰国子女の方の矯正をしたことがあります。最近は
  技術改良で目立たない装置がいろいろとあるので、当然そのような装置を使用しました。
  そしたら、えらく怒るんですね」

根「えっ、それはなぜですか?」

矯「彼女が言うには、何でも、矯正治療中ということがはっきり分からないと、現地で情けない
  目にあう、ということのようです。『日本人は矯正もしないのか、遅れた民族だ』などと、
  ヒスパニックや他のアジア系など他民族からいじめられる
んだそうです。」

根「本当ですか?それもすごいなあ」

矯「それで、どうしても大昔の金属製のブラケットをベタベタ前歯に貼ってくれないと嫌だ
  わざと目立つようにやってくれ、というので、まあ気が引けましたが、そうしました。
  彼女喜んで帰りましたよ」

根「うーむ、世界は広い・・・ところで、今日のお子さんも、3級(下顎が前)だったのですが」

矯「ああ、日本人、モンゴロイドは3級多いですよ。およそ1割くらいは3級でしょうか」

根「えっそんなにいるんですか?」

矯「はい。モンゴロイドはもともと3級が多くて、矯正はアジア地域では日本と韓国が
  二大矯正大国です。3級の保存治療(全身麻酔で顎の骨をずらす手術をしない方法)
  のノウハウはほとんどアジアなんですよ」
 「日韓は早くから保存的治療を試みて割合成績が良いんです。それでも医科歯科大学で
  保存対外科はだいたい半々程度ですかね」

根「へゑ~・・・(と、斜め上方を見つめる)」
 「でも韓国って矯正は安いんじゃないでしょうか?韓国だと以前も整形ツアー
  近視手術ツアーとかありましたよね」

矯「いやいやそれが、高いんですよ。日本並みに、日本円で80万くらいは取りますよ。
  それでも韓国人はみんな小学校に上がるくらいに専門医に見せに行きますね」

根「えっそんなに行くんですか?金持ちだけなんじゃないんですか?」

矯「はい。矯正の普及率は韓国は日本よりもだいぶ高いです」

根「それは、日本人が歯の価値を安く考えすぎなんでしょうかねえ」

矯「それはかなりありますね」

根「まあ、歯が1本3千円くらいに思ってちゃ仕方ないか。こればかりは韓国は日本を見習わない
  ほうがいいですね。ところで欧米とかはどうですか」

矯「あっちは安いですよ。白人も黒人も骨も柔らかいし歯が動きやすいので、予約も
  日本のように1ヶ月に1度でなくて2ヶ月おきの予約が一般的です。材料費でも欧米は
  大量生産がきくから日本の半分くらいです。モンゴロイドは結構骨が固いんですよ」

根「何か先進国って感じしますね。治療費も結構補助が出て無料の国もいくつかある
  聞いていますが、補助なしでどのくらいですか?」

矯「大体日本の半分くらい、4~50程度だと思います。そこにさらに補助とかがつくので、
  とても行きやすい環境にはありますね」
 「向こうでは、赤ちゃんが生まれたら矯正用に積立をすることが一般的らしいですよ」

根「ああ、その話は聞いたことがあります。たしかどっかの本でシンガポールでも歯科積立を
 していると見たことがあります。しかも歯科用口座は相続税がかからないらしいですよ」
 「ところで欧米の3級とかはどうするんですか?デビッドボウイとかアンドレザジャイアント
  みたいな人とか」

矯「まあやるとしたらほぼ100%オペ(全身麻酔で顎の骨をずらす手術)ですね。オペか
  そのまま放置。日本で3級の治療をしていて、海外出張に行って続きをやろうとしたら
  オペだといわれてあきらめた人もよくいます」

根「そうか、3級がそんなにオリエンタルだったなんて初めて知りました。」
 「3級の人は下顎の舌側がみがきにくいと思うんですが放置していい影響はないですよね」

矯「そうですね。そのときは良くても、40代くらいに歯周病で一気に全部ダメになる
  パターンが凄く多い
ので、お子様のことを思うなら小さいうちにやってあげたほうが
  絶対良いと思います」

根「(まるで放射線の晩発性障害みたいだなあ、と思いつつ)なるほど。今日のお子様なんか
  まさにそうですね」

矯「ええ、でも彼はかみ合わせの深い3級なので、今のうちに前後関係を治しておけば、
  そのまま大掛かりなことをしなくても済む可能性も結構あります。むしろ浅いほうが
  シビアです」

根「被蓋(かみ合わせ)の浅いほうがシビアなんですか?」

矯「一般的にはそうですね。3級では浅いもの、2級(3級の逆で、下顎が後退したもの)の場合は
  エラやオトガイが張ってないタイプが怖いですね。
  いずれにしろ、2級や3級のシビアなものは骨が少ないので、動かす場所がないこともあり
  難しいです。単に歯並びが悪いだけの叢生なら骨は十分ありますので意外と大丈夫です」

根「あと、大人ので、美容整形の広告で雑誌の後ろのほうに出てるので、コルチコトミー
  ってありますよね。あれはどうなんでしょう?治療期間が短縮するならいいかと思いますが」

矯「あー、あれは歯間乳頭(歯と歯のすき間の肉)」がなくなるからトラブルが多いです。」

根「あれですか?生物学的なバランスが壊されるとかですか?」

矯「それもありますけど、骨膜を剥がした段階でもうだめみたいですよ」

根「早く動くといっても、歯がぜんぶスキッ歯じゃしょうがないですね」
・・・


こんなやりとりがありました。
専門医の知見は、さすがに見るべきものがあると感心いたしました。


読者の皆様はさまいかがお考えでしょうか?
私は、↑のお子様が、40代までに悪くならないことを祈るばかりです。

日本では、矯正は見た目のためにする、という考え方が支配的ですが、意外と、それよりもむしろ

◆ 矯正の予防や機能面を重視
◆ コストをかけて数十年後の転ばぬ先の杖を拾う、

という考えが大事なんだ、と改めて思いました。
受験教育とかだと、みんな本気出すのにね・・・

【今回のまとめ】

日本人・東洋人は矯正がやや大変だ。矯正の価値は見た目よりも予防面の方がはるかに重い。

2011/07/09 06:00 | 歯科の臨床的っぽいこと | No Comments

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