こんにちは。歯科医師の根本です。
「おい、タイトル逆だろう」
分かっています。
前々回、あなたを惑わし、事実から顔を背けさせようとする悪い奴が
わが国には確かに存在するので、問題だ、という話をしました。正確には
民は之由らしむ可し知らしむ可からず
だそうです。論語「泰伯」の一説だそうです。
そしてこの文章は<孔子説><家康説>という、まったく意味の異なる
二大解釈があることでも有名です。
家康説のほうは、彼が本当にそういったかどうかは分かりませんが
皆さんが「彼がそう言った」と言っているようなので、仮に家康説とします。
<孔子説…可能[~ことができる]>
人民を担当者の施政に従わせることはできるが、道理を理解させることはむずかしい。
<家康説…適当[~のがよい]命令[~せよ]>
担当者は人民を施政に従わせればよいのであり、道理を人民に理解させる必要はない。
「可」という中国語に「べし」と大まかに意味を当ててしまった時点で
家康説のような甘い方向への誤解が生じるのは必然だったのかもしれません・・・
孔子は、不勉強な私のイメージでは、浮世離れした学者とか評論家のような感じでした。
しかしもしそうなら、彼は下記のように言うでしょう
<逆孔子説>
人民に道理を理解させることはできるが、担当者の方針に従わせることはむずかしい。
なぜなら現在の御用学者とか評論タレント、電波芸者共だったら、こう言うと思うからです。
<逆家康説>
担当者は道理を人民に理解させればよいのであり、人民を方針に従わせる必要はない。
「従わせることは簡単」「理解させるほうが難しい」考えてみると
大昔の中国は何とも理不尽で野蛮な世情だとは思いませんか?まさに独裁・・・
それをあえて正面から受けて逃げない孔子は、庶民生活や文化の機微にも通じた
すぐれて実学的な志向を持った学者だなあと、改めて感じました。
家康から始まる徳川幕府(江戸時代)は、265年という長期安定政権でもありました。
そのためのさまざまな工夫や配慮、戦国の世に戻らない努力もあったと思います。
その最たるもののひとつが<家康説>だったのではないでしょうか。
誰も「改善」「民主的」など余計なことを考えない、知ろうともしない。
なるべく前例に頼る。
ある意味、家康も天才なのかもしれません。
しかし<家康説>が日本にすっかり根付いてしまった結果、大きな弊害も生まれました。
それが端的にあらわれたのは、今回の大震災に伴う原発事故問題です。
ご存知のとおり、地震の影響で全電源を失った原発は、あっというまに冷却水を失い
早々とメルトスルーから水素爆発を引き起こし、大量の放射性物質を撒き散らしました。
この際一番大事なのは、とくに風向きに注意して、飯舘村など風下の人が
被害にあわないようにいち早く情報を発信したり避難させたりすることです。
しかし、政府は国民にSPEEDIを隠しました。
しかも、IAEAには逐一報告していたのに、というおまけつきで。
武田先生や原子力安全委員会専門委員の青山繁晴氏などが一生懸命「風下風下」といっても
頑として「半径」以外のものを国民に提示しませんでした。
官房長官や御用学者は言い放ちました。
「ただちに健康に被害はない」
「低線量はむしろ体によい」
事故から3ヶ月もたった参議院の委員会で質問された所管の(文科)大臣は答弁しました。
正確な値が分からなかったので仮の値で計算したものについては内部資料扱いにした。
原子力災害対策特別措置法により定められた国の防災基本計画の指針には書いてありました。
事故発生直後は正確な値の把握は困難なので仮の値で計算を行いすみやかに国民に示す。
野党の追及を受けた首相、文科相、経産相はあわてて「知らなかった」といい始めました。
官邸では把握できなかったので、その点は責任を感じています。すみませんでした。
・・・
ご存知のとおり、仮の値を入れたSPEEDIは、後日出てきた実測値と非常に近似しており
十二分に実用に耐えうるものでした。
私は思います。
読者の方はこれだけ見たら、武田先生や青山氏、追及した野党議員の言うことはもっともだ、
政府は何をやっているんだ、隠蔽だ隠蔽!!と思うことでしょう。
しかし、もしあなたが、たとえば枝野さんの立場だったとして、いざ原発が爆発したら
本当に同じことを思えるでしょうか?同じことを言えるでしょうか?
「やばい、やっぱり本当に爆発しやがった」
「SPPDI、SPPDIうるせえなあ、マスコミや野党は」
「どいつもこいつも我が政権のことを素人扱いしやがって」
このような気持ちに真に打ち勝って、原災法に則って速やかな情報発信ができるでしょうか?
マスコミや野党に追及された後でのこのこ出したら、負けた気持ちにならないでしょうか?
「いいや、とりあえず『ただちに』とか『事象が』とか言ってその場をしのいでおけば」
これでは、まあ官房長官は当然失格だとは思いますが。。。
しかし私はそのような人間的な弱さをまったく理解しないものでもありません。
なぜなら私たちは遠い昔から<孔子説>に真に向かい合わず、<家康説>でお茶を濁し
「ムラ社会」「余計なことは考えるな」「空気嫁」でここ300年以上来たからです。
これは民主党も自民党も、あなたも私も全く関係ありません。
これが「日本」の一部なのです。
まあ、その辺の普通の村なら「ムラ社会」でもべつに隣村や周りに被害はありません。
しかし「原子力村」「歯科医療村」のような専門家や業務独占資格者集団がそれで失敗すると
じつに莫大な被害を飯舘村やその他の幅広い周囲にもたらします。
しかも、その発想の根底こそは
<家康説>
担当者は人民を施政に従わせればよいのであり、道理を人民に理解させる必要はない。
なわけです。
「それは専制的だ」と思うかもしれませんが、この発想のもっとも大きな問題であり
さきほど私が「甘い方向への誤解」と申し上げた点は、後段の「~必要はない」が
無責任主義の温床になってしまっている点だと私は考えます。
<家康説Ⅱ>
「命題1」をすればよいのであり、「命題2」をする必要はない。
とした場合に、たいてい、より因習や前例に近くて処理しやすいのが「命題1」で、
より困難で、現状打開的な命題は「命題2」のほうではありませんか?
そういうことは、周囲に影響を及ぼさない範囲でやっていただきたいものです。
そういえばこの間、復興構想会議の座長の五百籏頭真氏が言っていました。
「復興『税』」
地震の前を思い起こしてみても、メディアでよく目にするのは
「増税による税と社会保障の一体改革」
「『国』の借金で日本は破綻する」
「『赤字』国債は抑えるべき」
池田信夫氏や勝間和代氏、辛坊治郎氏あたりが好きそうな意見ですね。
私見ではとくに悪質なのは谷垣禎一自民党総裁と与謝野馨特命相、この2名です。
今こんなことをして一体誰が得をするのでしょうか?
考えても考えても分からなかったのですが、最近私はようやく気づきました。
それは特殊ムラ社会の住人~「財務省」の担当官や「日銀」の白川方明総裁などの、
個人個人です。
特定の条件と思考がたまたま位置した少数の人間が特殊ムラ社会を形成します。
(いわゆる御用学者や電波芸人は、その保全のための部品の一部と考えられます)
彼らは別に財務省や日銀と心中当然なほどの責任を負っているわけでもなく、
ただとりあえずの任期をまっとうできればいい、程度の考えだと思います。
この辺は企業経営を強いられる一民間医として非常に強い違和感を覚えます。
月末に金が出て行く人と金が入る人はもしかして永遠に分かり合えないのかと・・
そうしたら、無難にしのぐには、前例や所属組織に迷惑をかけないことを
第一に考えると思うのです。「財務省」「日銀」という特殊ムラさえよければいい。
本当は日本はデフレが問題なので、景気対策や消費促進が第一、増税など絶対禁忌
本当は国債は全て円建てで95%は国内で回しているので日本国や政府は絶対飛ばない
本当は『国』でなく『政府』の借金であり、主な貸し手は1400兆の『家計』貯蓄
本当は 『赤字』とか『借金』とかは本質的に全く問題ではない
彼らは私が言うまでもなく、上記のことなど完全に理解しているはずです。
そして国民や国全体にとって正しい道であることも完璧に分かっているはずです。
では、なぜそうしないのか?
それは、国全体にとって良くても、彼ら個人個人や特殊ムラにとって良くないからです。
政府の赤字が増えたら、『財務省』や『担当官』の評価にとってよくない。
金融緩和でインフレになったら『日銀』や『日銀総裁』の評価にとって良くない。
彼らは国全体の危機よりも自分の評価が悪くなってしまうことを恐れている。
だから、国の借金とか赤字国債で日本破綻とかウソをついてまで、保身に走る。
御用学者や電波芸人に小金を掴ませてまで、わが身や因習・慣例の保身に走る。
そうとしか、思えないのです。
だから<家康説>で、庶民には国民一人当たりとか借金時計とか日本が飛ぶとか
ウソをついて今まで隠してきたのです。
最近はネット社会になり、ウソはばれてしまいましたが、それでもTVなど
お金の絡む場面では、いろいろな問題に関して<家康説>的なウソにまだまだ
しがみついているような気がします。
歯についてもそうです。
『早期発見早期治療』はウソだ。
有名な開業歯科医である竹尾昌洋先生が最近喝破されたように、早期発見早期治療は
ある策略に基づいて業界が画策し、結果として国民を騙し多くの歯を傷めてしまった
悪政中の悪政のひとつです。
そして大きな問題は、国民がすっかり餌付けされてしまい、その悪政が正しいと
思っていることです。
さらに私を含めた「歯科医療村」全体の方針として、その因習が受け継がれて
しまっていることです。
しかも、まれに正しいことに気が付いた人がいても、制度上の問題で不利になるので
口をつぐんでしまうような制度設計になってしまっていることです。
だから、あなたは今だに
「痛くない歯医者」
「やさしい歯医者」
「すぐみてくれる歯医者」
「回数のかからない歯医者」
「地元で人気=込んでる歯医者」
「金儲け主義でない歯医者」
などにばかり目が逝ってしまうのではありませんか?
思い出してください。
初回コラムのタイトルに私は『歯は治療できない』と書きました。
前回の武田先生を引き合いに出したコラムには、一見過激な数々の提案を
恥をしのんで晒してみました。
あなたの口の真の敵は、「歯科医療村」であり「原子力村」「財政規律村」などの
特殊ムラ社会主義であり、その底流にあるものこそ、無責任主義<家康説>です。
普段は構いませんが、必要に応じて<孔子説>に立ち返り、困難に正面から立ち向かう
勇気も必要です。
あなたを惑わし、事実から顔を背けさせようとする悪い奴がどこにいるのだろう、
という問に対する当面の答えは、私たちの心の中&私たちの歴史『の一部』にある
<家康説>であり、特殊ムラ社会主義であるとしておきます。
そしてより歯や口そのものに密着した問題については「歯の実態について」
現在到達した歯科学からみて理不尽な制度面の問題については、あらたに
「お口の中の無責任」というカテゴリーに分けて、今後具体的にいろいろと
分かっていることをお伝えしていきたいと思います。
そして今回のタイトルをわざと逆に書いたのは
「ここで書いてお伝えすることは簡単だが、実際に皆様の歯やお口の健康が
増進するかどうかは、困難な課題である」
という意味をお伝えしたかったのがその理由です。
【今回のまとめ】
日本人の歯が悪い原因の元は無責任主義<家康説>にあり、<孔子説>の再評価が有意義
*おわび
今回は徳川家の末裔の方々には不快な内容であったことをお詫び申し上げます。
家康公のお名前は概念の説明上仮に拝借したものであり他意は全くございません。