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2013/09/25

おはようございます、酒井孝祥です。

実は、今昔舞踊劇において、もしかしたら本番よりも気合を入れて(?)酒井が挑んでいるものがあります。

それは、上演前のアナウンスです。

お芝居を見に行くと、ほとんど全ての場合において、上演前に携帯電話の電源を切るようにだとか、上演時間はどのくらいで途中休憩があるかないか等のアナウンスが行なわれます。

小劇場だと、場内の受付スタッフの一人が前に出てきてそのアナウンスを行うことが多いです。

大きめの劇場だと、録音されたものが流れたり、生であっても、喋り手本人は姿を現さずに、マイクからスピーカーを通して流れることが多いかと思います。

実は、僕がお客として芝居を観にいったとき、その場内アナウンスのクオリティで、その芝居の良し悪しが分かってしまうことがあります。

アナウンスの声が小さかったり、素人みたいな棒読みだったり、内容が的を得ていなかったり、日本語の扱い方が間違っているなどと感じたときは、公演の内容自体が面白くなかったことが多いです。

たかだか注意事項を説明するだけの前説ではありますが、それはお客様がその公演において初めて耳にするセリフです。

そのセリフがお客様を引き込むことが出来るかどうかは、お客様が作品そのものに入り込めるか否かの重要なポイントになり得ると思うのです。

前説がしっかりしていること=その集団がお客様を大事にする意識をもっていることに繋がりますから、やはりその意識のある集団がつくる芝居は自然にクオリティが高まると思うのです。

今回酒井は、昨年に引き続いて、その前説を行なうことになりました。

実は今昔舞踊劇では、お客様が場内に案内されている段階からお芝居の世界に引き込むために、スーツを着た案内スタッフの他に、出演する役者が、劇中に舞台上に登場する黒子の姿(顔は出します)にてお客様の誘導を行ないます。

決してスタッフの人手が足りないわけではなく、演出的な意図で、黒子が場内整理を行います。

そして、酒井も黒子の姿で舞台上に現れて前説を行ないます。

当初は、一番最初の演目で酒井が紋付袴をつけた後見で登場する予定だったため、前説も紋付袴で、自分の流派の紋を背負って行なう予定だったのですが、直前になって、最初の演目は黒子で出るということになり、前説も黒子で行なうことになりました。

開演15分前になり、「着到(ちゃくとう)」と呼ばれる歌舞伎などの上演前に演奏されるBGMが流れ、その曲が鳴り止むと、黒子の格好で顔も隠した酒井が舞台に登場し、照明も当たります。

酒井が舞台中央までたどり着き、お客様が「何が始まるのだろう…?」と思ったところで、顔を隠している頭巾の布を上げて素顔を出し、前説のアナウンスを始めます。

そのときの表情はにこやかであることを心がけます。

表情が見えない黒子の素顔がパッと見えた瞬間、とびっきりの笑顔が眼に飛び込んでくれば、お客様も親近感を持つに違いありません。(逆にひいてしまうお客様がいたらごめんなさい…)

前説のアナウンスは、携帯電話・飲食喫煙・上演中の撮影と録音の禁止、上演時間、トイレや喫煙所の場所、アンケートへの協力依頼など、必要な情報をお客様にお伝えすることが、実質的な目的として行なわれます。

その情報伝達において、僕がもっとも気をつけるのは、自分がお客の立場で初めてそのアナウンスを聞いたときにも理解出来ることを想定して、分かり易く、明朗に説明することです。

そのためには、説明がダラダラしないように出来るだけ短いフレーズで説明出来る言葉を用い、ゆっくりと、お客様を包み込むような意識をもって喋ります。

そして開演5分前で再び登場して同じ説明を行なうのですが、既に一度聞いている人にくどい印象を与えないため、2回目のアナウンスのときにはさらにフレーズを短くし、必要最低限な情報を伝えることを心がけます。

たとえば1回目に「本公演の上演時間は、およそ2時間を予定しております。途中、15分間の休憩がございます。」と言ったとすれば、2回目の同じ部分では「上演時間は、15分の休憩を含め2時間の予定でございます。」などと、意味的には変わらなくても、言い回しを一部省略したり、2つのセンテンスを1つに繋げたりします。

また、本公演においてのこだわり要素の一つとして、和物の作品を上演するので、作品の雰囲気に合わせて、前説においても外来語を使わないことにも気をつかいました。

「スタッフ→係の者」「ビデオ撮影→動画撮影」「PHSやアラーム付き腕時計→“電子機器”と総称」といった具合です。

それでも“アンケート用紙”への協力要請については、“アンケート”という言葉を使った方がお客様も瞬時に理解出来ると思うので、敢えて使いました。

「お手元に感想を書き込む用紙がございますので、是非ご協力下さい。」と言ってもいまいちパッとしません。

5分前アナウンスも終了した後は、開演直前になって再々登場し、酒井の「大変長らくお待たせいたしました。只今より開演でございます。最後までごゆるりとお楽しみ下さいませ。」の言葉をきっかけに暗転し、公演がスタートします。

この「ごゆるりとお楽しみ下さいませ。」という言葉は、お客様を現実世界から切り離して今昔舞踊劇の世界に誘うためのキーワードです。

もしもこの言葉を噛んでしまったら、作品全体を崩しかねず、この言葉でお客様を引き込むことが出来れば、公演自体が成功するという気概を持って挑みました。

この前説部分は、公演がDVD化されるときは、本編とは別扱いでカットされます。

だからこそ、本番当日に舞台に足を運んだ人んしか味わうことの出来ないものにもなります。

終演後に、前説が良かったなどと言われると、“してやったり”と思えます。

07:01 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その24 前説 はコメントを受け付けていません
2013/09/25

こんばんは、酒井孝祥です。

既に10日以上前の話になりますが、今昔舞踊劇東京公演の初日の幕が開きました。

昨年は初日から雨で大変な思いをしましたが、今年においては、野外舞台完成後は比較的天気に恵まれ、晴れの舞台で初日を迎えることが出来ました。

この公演においては、たとえ芝居や踊りが上手くいったとしても、着替えや小道具準備、黒子としての裏方作業などの、様々な段取りを一つ間違えただけでも、全ての流れが狂ってしまう恐れがあります。

実際の衣装や小道具を全て使って本番同様の稽古が出来たのは、実質的に本番の前夜に行なわれたゲネプロの1回だけ…否、ゲネプロの時点でも完全な状態ではありませんでした。

本番でトラブルが起こらないための最終予行演習として、ゲネプロにはかなりの集中力をもって臨みました。

そのためか、僕が感じる限りでは、黒幕の裏表を間違えそうになってあたふたしたことはあったものの、ゲネプロでは大きなミスもなく、初めてのリアル通しにしては、それなりにスムーズにいったと思います。

それで迎えた本番ですが、ゲネプロで安心してしまったかどうかなのかは分かりませんが、酒井はトンでもないミスをやらかしてしまいました。

後々になってみれば、笑い話のように思えるかもしれませんが、公演本番中にそのミスに気がついたときには、生きた心地がしませんでした。

それは、宇治拾遺物語の中のエピソードを題材にした作品の上演中に起こりました。

仏に化けた狸を猟師が弓矢で射るという物語で、僕は射られて逃げる狸の役で、狸の面をつけての登場だったのですが、こともあろうに、その後の作品に登場する、鬼の面をつけて出てしまったのです。

丁度その鬼の面も狸のように茶色っぽい色で、楽屋内の自分の物置き場に一緒に置いていたために、間違えて取ってしまい、時間的にも忙しいタイミングだったので、周囲の人もそれに気がつかなかったのです。

そのため、狸2匹が矢を射られて一目散に逃げていくシーンだったのが、鬼と狸のコンビが逃げていくという非常に摩訶不思議な絵となりました。

しかもやっている本人は、自分が間抜けな狸だと信じて疑っていない状態で芝居をしているのに、外面が凶悪そうな鬼であったため、非常にシュールなキャラクターになっていたと思います。

作品のオチの部分を台無しにしてしまい、気持ちが堕ちてしまいましたが、本番中ということでなんとか切り替えて、初日の幕を降ろすことが出来ました。

ゲネプロで失敗しておくと本番では上手くいくなんて話を聞いたこともありますが、本当に、ゲネプロであたふたした部分ではミスがなく、予想だにしないところで、予想だにしないミスをしてしまいました。

12:02 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その23 初日 はコメントを受け付けていません
2013/09/24

こんばんは、酒井孝祥です。

この記事を書いている時点で、既に東京公演は終了しており、過ぎ去った日を思い返してのコラム掲載となりますが、今回は舞台設営の日のことです。

今昔舞踊劇東京公演の舞台は、野外特設舞台であり、何もないところにゼロから作られます。

小劇場などの仕込み作業であれば、役者陣だけで舞台を作り上げることも多いですが、なにぶん今回は、舞台の土台の骨組み部分から作りますので、プロの大道具さんが10人近く来ての大掛かりな作業となります。

金槌で釘を打ったり、インパクトでネジをはめたりする作業は、専らプロの職人業にまかせ、我々役者陣は、平台や木材を運んだりの単純作業に徹します。

舞台は、ほぼ能舞台と同じ形状です。

ただ、舞台面の板張り部分も能舞台そのままを再現すると大変な労力がかかりますので、舞台面に関しては、フローリングをデザインしたマットを敷くことで、能舞台の様に見せます。

舞台が出来上がったら、役者陣は、そのフローリングマットを舞台面に敷いていく作業に従事します。

その間、プロの大道具さん達は、舞台の周辺を葦簀(よしず)で囲んだり、提灯をつけたり、幟(のぼり)を立てたりしていって、会場は、お祭りの様な雰囲気になっていきます。

商業的な演劇であれば、役者が舞台設営などのスタッフワークに携わることはなく、それが理想なのかもしれませんが、何もないところに舞台を作る作業に携わることで、その舞台に愛着もわき、自分達の舞台に立つと思うことが出来ます。

舞台が出来上がることで、いよいよ、公演というお祭りが始まるという実感が沸き上がってきます。

09:31 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その22 設営 はコメントを受け付けていません
2013/09/08

こんばんは、酒井孝祥です。

今昔舞踊劇の本番が間近に迫ってまいりました。

時間的にも精神的にも、あらゆることに余裕がなくなってくる時期です。

こんなとき、何よりも心の支えになるのは、知人からのチケット予約の連絡です。

あまりにもきつくて、心が折れそうになっているときに、携帯電話を見て、チケット予約のメールが入っていると、それだけで報われますし、公演に対する意欲も沸いてきます。

しかし、予約ではなく、都合がつかずに公演を観に来られないという連絡も、意外に励みになるものです。

案内を送った相手から連絡が届くと、その相手と繋がっている気がして、自分は一人ではないという気持になってきます。

たとえ、演劇なんかお金を払って観に行きたいと思わないとか、酒井なんかの舞台を誰が観に行くかよといったような内容の返信でも、その様な連絡をいただければ、その人が観に来ないという情報を得られますし、その人の考え方、価値観が分かりますので、とてもありがたいことです。

仮に、酒井の活動、存在を全面否定する様な内容であったとしても、それに対して反発する如くにエネルギーを燃やすことが出来ますし、自己を客観的に見つめる判断材料になります。

完全否定されるよりも、何も返信がなく、その人が何をどう考えているのか分からないことの方が辛いかもしれません。

まあ、そんな風に余計なことを考えてしまうこともありますが、観に来て下さるお客様が一人でもいる限り、その人を満足させることに集中したいです。

11:27 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その21 返信 はコメントを受け付けていません
2013/09/07

こんばんは、酒井孝祥です。

今昔舞踊劇東京公演の稽古も、荒通しを行う段階になってきました。

「荒通し」と聞いても、舞台関係者以外の方には、なんのこっちゃ分からないかもしれません。

稽古の初期段階では、場面ごとに区切って少しづつ進めていきますが、その区切りをなくして、本番と同じ流れで、基本的には途中で止めずに最初から最後まで稽古するのが「通し稽古」です。

しかし、これまで場面毎に稽古していたものを、いきなり本番さながらの流れで稽古をしろといっても難しいものです。

かと言って、問題なく全通し出来る段階になるまで、全ての場面を煮詰めて稽古しようと思っていたら、いつまで経っても通し稽古になりません。

途中で止まるかもしれないけれど、グダグダになるところが出てくるかもしれないけれど、まだ演出がついていない箇所もあるけれど、取り敢えず最初から最後まで、基本は止めずにやってみようと言うのが、荒通しです。

荒通しを行うことにより、作品全体の流れをそれぞれの役者が掴むことが出来ます。

そして、無理くりに通してみることによって、ある場面からその次の場面への転換が物理的に不可能であったり、早替えが絶対に間に合わないなどの問題点が浮き彫りになってくることがあります。

衣装や小道具がやたら多く、一人で何役もこなさなければならないこの公演においては、自分がどのタイミングでどの衣装に着替え、いつ小道具をスタンバイするかといったことを整理するためにも、荒通し稽古は重要です。

今回酒井は、自分が殺人的な早替えをすることはないようですが、他人の殺人的早替えの補佐に入らなければならないことが分かりました。

しかし、着物と袴が2セットあるという時点で既に大変なのに、トータルで8パターンくらいの格好をします。

それだけの衣装やアクセサリーがあるので、きっと楽屋前は大変なことになるでしょう。

それらのアイテムを上手く整理して、いかに効率よく使用出来るか整理することも、役者の仕事の一つです。

荒通し稽古が終った後、まるで空き巣に入られたかの如くに衣装や小道具が乱雑に置かれているのを見て、つくづくそう思います。

本番中、どのタイミングで、楽屋の中の自分のスペースを整理整頓するかも、荒通し稽古の最中に考えるのです。

12:52 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その20 荒通 はコメントを受け付けていません
2013/09/04

おはようございます、酒井孝祥です。

小屋入り…もとい神社入り稽古二日目が終了し、三日目に突入しようとしております。

毎年そうではありますが、本番を迎える2週間ほど前までの段階では、本当に作品完成が本番までに間に合うのかと不安な気持ちになります。

いくら、本番の10日前より朝から晩まで連日稽古になるとはいっても、衣装や小道具の作成も並行して行わなければなりませんし、なにより、野外の何もない場所に舞台を作るので、その労力は尋常ではありません。

稽古出来る時間は本当に僅かです。

しかし、神社入りして2日目となり、稽古はかなり急速なペースで進みます。

このペースで最初から稽古していたら、もうとっくに完成しているのではないか…?とも思いますが、それも違うと思います。

やはり長期にわたって、探り探りではありながらも、作品の輪郭作りに勉めてきたからこそ、ガッツリと演出をつけることが出来、これまでのラフスケッチの様な作品にどんどん色がついていきます。

そういえば、歌舞伎の一公演の稽古は、3日程度しか行われないと聞きます。

1つの公演の度に、1~2ヶ月は稽古している我々からは信じられないことですが、でも、この今昔舞踊劇のラスト集中稽古に参加していると、歌舞伎が3日で出来るのが分かる気もします。

つまりは、基礎固めが確実に出来ていれば、作品を肉付けする作業は短期で十分なのだと思うのです。

我々は、古典芸能の家に生まれたわけでもなく、歌舞伎などよりは遥かに時間がかかってしまいますが、我々にしか出来ない作品を完成させるために、残された時間を大切に使います。

作品が急速に出来あがっていく感覚を、ある種の快感のように思い、それを動力にさらに加速させていきたいものです。

09:35 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その19 急速 はコメントを受け付けていません
2013/09/02

こんばんは、酒井孝祥です。

公演の本番が近づき、本日よりいよいよ、公演会場である神社内の施設に籠り、毎日朝から晩までの稽古です。

毎年そうなのですが、それまでの稽古で作品の輪郭を作り上げてきて、このラストの集中稽古で、作品は一気に完成します。

朝一番で荷物を搬入した後、別の用途で配置された状態のテーブルや椅子を並べ替え、我々が稽古をするための環境を作り上げます。

例年使っている場所なので、その段取りは手慣れたもので、この稽古場作りは、戦慣れした武士達が、戦場に砦を築くかのごとくに行われます。

稽古場が出来上がると、いざ出陣という心持ちになります。

これから本番までの10日あまりは、いつ命を落とすか分からない、戦に参加するような気持ちで稽古に挑みます。

11:43 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その18 出陣 はコメントを受け付けていません
2013/09/01

こんばんは、酒井孝祥です。

毎回、舞台の本番が近くなると、様々な雑念にとらわれてきます。

「チケットが売れず、お客さんを呼べなかったらどうしよう。」

「稽古でうまくいかなくて、役を外されたり、出番を減らされたりしたらどうしよう。」

「自分の見せ場で失敗したらどうしよう。」

「小道具や衣装の準備が間に合わなかったらどうしよう。」

「演出家、共演者、スタッフ、そして、観に来てくれたお客様に怒られたらどうしよう。」

以上の様なことは、はっきり言って“どうしよう…?”と思ったところでどうにもなりません。

そんな心配をすることが、結果としてお客様に良いものを提供する要因になることはありません。

客観的に省みれば、そんなことを考えることに費やす時間とエネルギーは無駄でしかありません。

じゃあどうしてそんな雑念が生じるのかと言えば、きっと、不安な状態の中にいることで、自分を落ち着かせようとしているのだと思います。

そういうマイナスな感情に支配されることに、ある種の快感があるのかもしれません。

また、何もかもが上手くいって絶頂の気分であるときに、突然にショックなことがあって、一気に気持ちがダウンしてしまうことを恐れるあまりに、わざと平時からネガティブなものを持ち込みたくなるのかもしれません。

ところが、今度の公演に挑むにあたっては、全くないわけではありませんが、通常の本番前に比べて、遥かにそういった雑念が少なくなっております。

実は先日、夏バテなのか、ハードスケジュールによるストレスが原因なのかはっきりしませんが、これって拒食症…?と思うくらいにものが食べられなくなりました。

たまたま、稽古そのものが連続でオフになっていた期間だったので、特に大きな支障もないままに、数日で回復し、取り越し苦労に終りました。

しかし、もともと痩せの大食いだった自分が、ほとんど何も食べていないのに、全く空腹感が起こらない状態になったとき、危機感をおぼえました。

「このままだと、急に倒れたりしないだろうか…?」

「本番直前になって、降板せざるを得ない状況になり、他の皆に大迷惑をかけないだろうか…?」

その大きな不安が、雑念的でどうでもよい様な不安をかき消してしまったとも言えるかもしれませんが、それ以上に、この舞台に立てるということが、どれだけ幸せなことかということに気が付いたのです。

ともすれば、毎年立たせてもらっているのだから、今年も立つのは当たり前だと思ってしまうこともあるかもしれませんが、この舞台には、自分一人の力で立っているのではありません。

数奇な巡り合わせが重なって、これこそ自分が求めていた舞台と思えるものに出会い、そして自分がそこに立たせていただける様になったのは、はっきり言って奇跡です。

そして、体調悪そうにしていた自分を気遣ってくれたり、回復した後に元気になったと喜んでくれる、共演者達の何気ない態度を、この上なく嬉しく思いました。

この仲間達に出会えて、この舞台に立てることが何と幸せなことかと、危機的状況に陥ったからこそ、身に染みて感じることが出来ました。

余計な雑念にとらわれることなく、この公演に参加し、この作品を構成する一部となる幸福を噛み締めながら、明日からの集中稽古に挑みます。

10:22 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その17 雑念 はコメントを受け付けていません
2013/08/31

こんばんは、酒井孝祥です。

今昔舞踊劇の特徴の一つとして、とにかく早替えが多く、役者陣が次から次へと、色々な役柄で色々な格好をして出てくるというものがあります。

オムニバス形式の作品の中で、ある一つの作品のラストまで舞台上に残って、一番最後にハケていった役者が、次の作品のド頭で、全く別の役で登場することも珍しくありません。

どうやって着替えたの…?と思うくらいの早替えが当たり前の様に行われることがも公演のウリかもしれません。

今度の公演で、自分の衣装パターンを数えてみたら、ざっと7種類ありました。

上に羽織っているものを交換するだけだったり、中にはお面を交換するだけの様な簡単なものもありますが、ガッツリ紋付袴姿に着替えて登場する場面もあります。

過去、本番中に舞台上で袴が脱げたなんていう人もいるくらいですから、どんなに慌ただしくても、きちんと着なければ、恥をかいてしまいます。

毎回公演の度に思うのですが、俳優には、発声方法や身体能力、感情表現などはもちろんのこと、いかに美しく素早く衣装を着るかということも、重要な能力の一つとして、必要になるかと思います。

そして、自分自身が着替えるのはもちろん、他人をスムーズに着替えさせることも大切です。

特に着物の場合は、自分で着るより人に着せてもらった方が綺麗になりますし。

役者がどんなに良い芝居をしても、衣装が乱れていたらそれだけで台無しです。

しかし、次から次へと、見事に衣装を着こなして登場すれば、早替えそのものが、立派な演出となります。

11:44 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その16 早替 はコメントを受け付けていません
2013/08/28

こんばんは、酒井孝祥です。

しばらくの間、「今昔舞踊劇への道」と題してコラムを連載させていただいておりますが、僕がどんな言葉を使って公演の魅力を伝えようとも、百聞は一見にしかずです。

このコラム「和に学ぼう!」で僕が伝えようとしている、日本の古典芸能から学んだことをそれ以外のジャンルの舞台で活かすということを体現したこの公演、ジャンクステージ読者の皆様、ライターの皆様には、是非ご覧いただきたい!

本番も近づいてまいりましたので、再度、公演の案内を掲載させていただきます。

●オフィスパラノイア 主催 / 東京幻堂 公演●

☆今昔舞踊劇「遊びの杜」其の六☆

◆作・演出:佐藤 伸之

◆出演:
佐藤 伸之
秋場 千鶴子
伊藤 貴子
荒井 典子
佐々木 夕里干
成田 みわ子
かなや たけゆき
北原 マヤ
太田 亜希
伊東 武志
竹中 美月
藤本 しの
河野 晴美
酒井 孝祥

◆パーカッション演奏:
大石 智紀

【日時】
2013年9月12日(木)~16日(月祝)
19:00開演
(18:15受付開始/18:30開場)

【会場】
靖国神社内 神池前特設ステージ
(雨天時、靖国神社境内「参集殿」2Fフロアーに変更)
※靖国神社が18:00で閉門となるため、正面から右に回ったところにある北門から入場

【交通】
・営団地下鉄:九段下駅(半蔵門線/東西線/都営新宿線)
1番出口より階段を上がりそのまま直進、徒歩7分
・バス:九段下~高田馬場系統「九段上停留所」より徒歩1分

【料金】
一般:前売3800円/当日4000円
小中学生:前売2000円/2300円
(未就学児童無料)

【予約】
下記酒井連絡先まで、ご希望日とチケット枚数をご連絡下さい。
sakai.taka2013◆gmail.com
(◆を@に変えて下さい)

直前の連絡には応じられない可能性がありますが、当日受付で酒井扱いと仰っていただければ、前売り扱いでチケットを用意いたします。

【公演概要】
日本古来より伝わる、怪談、説話、伝記、神話などから良作品を集め、日本舞踊、殺陣、イリュージュン的な演出で装飾された、大人から子どもまで楽しめるエンターテインメント作品。

「語り」とパーカッションの生演奏をバックに、靖国神社境内の神池前に作られる特設野外ステージにて上演されます。

本年度の上演予定作品は、

「破約」(小泉八雲)
「大井光遠の妹の強力の話」(今昔物語集)
「清徳聖の奇特の事」(宇治拾遺物語)
「幽霊滝」(小泉八雲)
「喰わず女房」(民話)
「猟師、仏を射る事」(宇治拾遺物語)
「黄泉比良坂」(古事記)

です。

※作品タイトル等変更になる可能性があります。

12:13 | sakai | 今昔舞踊劇への道 その15 再掲 はコメントを受け付けていません

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