前回からの続きです。
いい感じに集中してまいりましたので、ゴリゴリ描きます。
明るい箇所に集中しがちです。
暗いというか、形が入り込んで、詰まっている箇所にも描く仕事が必要です。
後ろのパート(仮に背景)との関係の見直し。
なじませるのではなく、何にもないけど描く意識。
さらに明確にクリアに。
部分への集中。
途中でも書きましたが、
明るい箇所の描きこみは得意というか、作業がし易いのですが、
回り込む、光がたまっている部分、暗い、形が集まってたまっている部分の描きこみが重要なのではないか。
と、思いました。
ぱっと見、なんか嫌な「軽さ」が鼻につく。
もっとゴリゴリでいいような気がする。
肌色というか、肌質というか、が、やはり足りない。
描き込んで密度が上がれば「Iちゃんらしさ」が増し、
そのことが作品を自分の制作意図に沿ったものとし、
クオリティを上げるかというと、そういうわけでもないのだが。
ここに、前々回書いた、
「結局僕は、表現性など気にせず、気分で描いているのが一番だと思いました。」
の真意があるというわけです。
意図を伝えたいが為に、無理矢理行為をミニマムにするより、 感じたように愚直に描けばいいのではないか。
意図的ではないにしろ、モデルを見て感じて作業を進めているのだから、
その行為の堆積が、作品を制作意図に沿ったものに押し上げるのではないか。
ということです。
ならば、愚直に描くまでです。
もう、描くしかないのです。
肌を追う。 肌色。人を描く上で誰もが一度は考える問題。
方法論は様々あるが、要するに複雑で、オイソレとは成しえない。
自分はというと、おおまかに2~3色で面による色味の変化を意識しつつ絵具を薄く敷き、
その絵具が完全に乾燥する前に、ベースになる色を重ねます。
ここまではわりとお決まりの作業。 (制作手記2、制作手記12の画像参照)
あとはモデルになっていただいている人の印象次第で、
豚毛などの腰の強い硬毛で、最終層まで不透明の絵具をしっかりと置いていくこともあれば、
極細の軟毛を使い、筆跡が残らないように努めることもしばしば。
今回のモデルのIちゃんは、サラッとしていて中性的な若者だ。
筆跡はある程度利用して男性の骨格を表現しつつ、透明感のある女性的な肌質にしたい。
(あらま。言葉にすると安易で陳腐すぎる。要はIちゃん的な肌にしたいのです。)
使用可能な有彩色3色を使い、黄みを帯びたおつゆ(絵具を溶き油で薄く延ばしたもの)を作り、
グレーズした。(透明色を画面に薄くかけること)
不安定に流動するおつゆを画面を振ったり、筆で撫でたり、またはウェスで拭き取ったりして、
イイ感じのニュアンスを感じたところで落ち着かせる。
人物以外の部分(仮に背景とする)で、おつゆがかかった部分は、
拭き取った後さらになにもない感じを意識して、 慎重に何でもない感じの色(白色寄り)を塗る。
肌。グレーズしたことで、彩度も明度も落ち込んでいる。
ここに、明部を中心とした白色の線を重ね、カタチを起こしていく。
全体が白っちゃけた。 白に近い淡いグレーは、細部の描き起こしには適していると思うし、
そこにマチエールでも絡めば、かなりの密度感が期待できる。
この白っちゃけた状態は、正直嫌いではない。
しかし、もう少し、若干、締まった感じが欲しい。
で、髪の毛だ。 写す意識で描いたら相当黒っぽい色。
それもいいかなと思って、黒っぽい色をベタっと置いてみようとして、 やっぱりやめた。
そうしたくなったら、その作業はいつでもできる。
とりあえず描いてから決めようと思って、黒っぽい色を3色ほど作り、 部分で変えながら、髪の毛を描く。
頭を描くというより、髪の毛を描く。
今日はここまでです。
表現性を強くしたいがために、「省略」を目的とし、材料や道具を限定した新ルールを敷き、 自分に課したわけです。
このことが直接的に作品に劇的な変化を与える影響を及ぼしたとは思いませんが、 そうしたことにより、
結局、自分が何をどう描きたかったのか、少しだけですが、 掘り下げることができたと思います。
「自分はこうだろう。だって、こうだから。」というところから、
「では、こうしたほうがいいのでは?」という視点での新ルール。
それならば、少なくとも理論上、制作していて以前よりは躓くことはないということになるはず。
しかし実際、工程の改善は図れているのにもかかわらず、なぜか筆が走らない。
前回の記事の時、これがなぜだか判らず、イラついていた。
しょうもない話ですが、結局僕は、表現性など気にせず、気分で描いているのが一番だと思いました。
しかしながら、だからこそルールは必要とも思いますので、とっぱらおうとまではしません。
ただ一所懸命描く。そうします。
制作中、頭に浮かんだ事を、時々メモしてます。
これは、作業の反省点や、問題に対しての解決策など、 「後々役立つ情報をメモしておこう。」というより、
「後で見返すとおもろいから。」という理由で。
読めないような字なので、改めて起こしますね。
・3Dからの解放 ↓
・そもそも油彩である意味 ↓
・最終的には作品を通して自分の肖像でなければという意味合い その場合、油彩以外にはナイ。ということ。
自己表現とは、自己をヒモとく行為 その一方で作品を作り続けるというのは、イデアからの解放という正反対の思考の存在
・行き止まりの絶望を知って、それを食べて僕は大きくなった。
……こわッ。大丈夫かオレ? 引くわ…。 笑
ね。おもろいでしょう?
絵描きには、こういったことが多々あります。
ご家族やご友人に絵描きがいるという皆さま、 どうかドン引きせず優しく接してあげてください。
絵でも、登山でも、マラソンでもそうですが、追いつめられる時があります。
「もう、辛くて辛くて、どうしよう。やはり無理だったか。やめてしまおうか。」 って時です。
その時、自分がどう解決するのか。 または、解決とまではいかないまでも、どう折り合いをつけるのか。
…ミモノですよね。
今、まさに、そういったところ。
みなさんこんにちは。 絵にフェルトに登山にマラソン、もはややりたいことが多すぎてとっちらかり、 なにがなんだかよくわからない深夜のコンビニアルバイト、福井諭史です。
いったい何になりたいのか、最近よく聞かれますが、そんなの決まってるじゃないですか。
「超人」です。
多少ふざけましたが、本編です。油絵です。
今回は自ら定めた新ルールを適用して、描くぞ!と始めましたが、早くも雲行きがあやしくなってまいりました。 と、いうのは、新ルールに難アリといったところ。
↓
描画様式
・人の顔とわかるように描くこと
・極力立体的な空間を感じさせない構成を組むこと
…うーん… ていうことは、明暗で判断する描き方はしないってことだよなあ。 明暗を意識すると立体的になるからなあ。 て、ことは、色味か… 際(線)以外は描く意識より色を並べる意識だな。
色彩
・使用する色は、白、黒、その他有彩色2色まで
おいおい… 色あんま使えねえじゃねえか!あほかオレ…。
と、まあこんなところでして、 散々考えた挙句、「ああ、もうしらねえ。」となり、何も考えずとりあえず気の向くままに描き進めました。
結果からして、(もちろんまだ途中なのですが) 使っていい有彩色は3色まで。
で、平面的にしようとか無理。だってゴリゴリ描く人だし。僕。 描けばそりゃあ立体的になるんだもの。しょうがない。
「モデルから感じられる色に絞った、ゴリゴリ描写(変更アリよ)」
くらいでいいや。
なんでしょうねー。やっぱり考えるとダメね。 何度やっても懲りないけど。
でもこうやって文字におこす作業をしていると、自分に正直になれますわ。
機会を与えてくださったjunkstage様に感謝しております。
ええと、唐突ですが、僕の趣味は登山です。 ようやっと2000mクラスですが、けっこうな頻度で登ってます。 で、山で最近よく見かける、こじんまりした一風変わったザックにローカットのカラフルな靴を履いて、登山道を走っている方々。 山で走るなんてイカれてる。なんつう体力してんの?って、颯爽と駆け抜けるのを奇異な眼差しで見送っていたのですが、 気持ち良さそうなので、僕もやってみることにしました。 とは言ってもいきなり山で走るのもどうかと思い、自宅の周りをジョギングするところから始めたのですが、 距離を伸ばす快感を覚えまして、3キロから6キロ、次は8キロとしていくうちに、今日は15キロ走ることができました。 ものすごい達成感。充実です充実。まだまだ始めたばかりなので、この程度のことでもすごく嬉しいんです。 しかし、妻に話しても、なんか反応が希薄なので、寂しくなってこの場をお借りして主張します。 すげえだろ。
さて、本編。
Iちゃんを描く。
描き出しながら考えたことは、「どんな風にIちゃんを描くか。」 Iちゃんに対しての「叙情」を描き記し、その堆積が僕の表現方法だとは思うのだが、 様々な作業をしていくうえで、そこまでハッキリと突き抜けられないことが、僕自身の大きな問題であり、 その問題の原因となっている部分は僕が培ってきた技術の断片だったりで、完全には否定できず、 またグルグルするであろうことが見てとれる。描き出しの段階から。如実に。
時々、「ああもうしらねえ。」と思ったりもしますが。いい意味で。
似てなければ駄目だ。これだけは確かだ。
…似た。
「叙情」これは本当に難しい。 それに乗り過ぎると、絵肌(マチエール)ばかり追うようなただの絵具遊びに陥いったり、気分だけで色を配置したり、 とにかく、「なんとなくイイ感じ」という、とても曖昧な誤魔化しを堆積することになる。 しかも、その良さは時間限定な代物で、二度と見たくないような上っ面だけの遊びだったりする。
うーん自分で書いてて何言ってんのかさっぱりわからない。
まあいいや。
ひとまず今回は新ルールだ。
個有色にこだわらず、カタチ(3次元的空間のことではない)を考えよう。
すみません。お休みいただいておりました。
休載中は、仕事で絵を描いたり、町内の行事を手伝ったり、
あと、谷川岳に登りました。いいでしょ?
制作手記11
今回からは、前回改定した通りの新ルールを施行します。
とても嬉しいことに、以前このjunkstageにてモデルになって頂きたい人を挙げましたが、 そのうち2人とアポイントがとれまして、了解を得ることができました。 ありがとうございます。
モデルになっていただくのは、以前バイトで同じシフトだった、Iちゃん(22歳)です。
彼とは週に1回(水曜日)にシフトが一緒になり、午後10時~午前6時まで過ごしておりました。 年齢も一周り以上違うので、何を話したらと思いましたが、彼がとても大人であることと、僕がとても幼稚であることの相乗効果で、 話題に困ることはありませんでした。まあ、話すことといったら大抵下ネタなので、まあ詳しくは言及しません。
彼を見ていて感じたことですが、 彼らの世代は僕らが二十歳そこそこの頃と比べて、随分、シビアに生きている。
僕が二十歳の頃なんて、そりゃあもう、根拠のない自信を全身に纏い、 飲めもしない酒のんで、したり顔で語り明かしたものです。
時代背景からか、いい意味でも、良くない意味でも、無駄に高い目標を掲げない。
その日、その日を確実に生きている。 そこが、切なく、美しい。
さて、描き出しだ。
白、黒は当然使う。 では、あと2色、どういったことから決定するか。
Iちゃんのイメージを思い浮かべる。
青っぽい緑だな。 そんで、冷たいピンクだな。
カタチを線で。で、線を選ぶ。Iちゃんの線。
JunkStageをご覧の皆様、こんにちは。 いつもJunkStageをご訪問いただき、ありがとうございます。
「絵のこと」のライター、油絵画家・福井諭史さんですが、現在私事多忙のため2013年7月末日までこちらの連載を休載とさせて頂いております。
ご愛読頂いております皆様には大変申し訳ございませんが、次回更新の際をお楽しみにお待ちくださいますよう、お願い申しあげます。
(JunkStage編集部)
前回のことを踏まえて、新ルール。
モチーフ
・知人であること
描画様式
・人の顔とわかるように描くこと
・極力立体的な空間を感じさせない構成を組むこと
色彩
・使用する色は、白、黒、その他有彩色2色まで
形
・故意に崩さないこと
マチエール(絵肌)
・故意に表情を作らないこと
道具
・筆、ペインテイングナイフ以外は用いないこと
材料
・油絵具、溶き油以外は用いないこと
次の制作はこれでいこうと思います。
が、行ったり来たりはよくあることなので、あまりガチガチにならずといった感じで臨みます。