リアルタイムにレポート・・という当初の目論見とはかけ離れていた
アプネア・アカデミー インストラクターコース。
「開始しました!」と書いた初日はまだ体力が残っていたようで。
現地では、部屋でwifiが使えないという通信事情もさることながら、想像を遥かに上回る過酷なスケジュール。部屋に戻るとPCを開くどころか歯磨きもままならずベッドにダイブする日々でした。
ようやく帰国し、時差ボケに悩まされつつ東京の空気になじんできましたので、思い出しながら改めて修行記を、ポツポツと書いていきます。まずはちょっと巻き戻し。シャルムまでの道のりを振り返ります。
●シャルム・エル・シェイクへ
シャルム・エル・シェイク Sharm al-Shaykh は紅海に面したエジプトの国際的リゾート地です。
日本人の私には舌を噛みそうな地名ですが、アラビア語圏の人が話すととても美しい響きです。
日本からの直行便はなく、最低でも一回カイロを経由することになります。
私は成田発⇒アムステルダム経由⇒カイロ経由⇒シャルム・エル・シェイク
という道程、途中カイロで一泊したので、ほぼ2日かけて到着しました。日本との時差は-7時間で
日本の夜明けが現地の真夜中という感覚です。しかし、ヨーロッパの人にとって紅海は比較的手近なリゾート。現地のLCCでは、例えばスイスのジュネーブからシャルムまで直行便で4時間、往復2-3万円といったチケットも売っているそうです。東京から沖縄に行くような感覚なのでしょうか。冷たい海や湖しかない北欧や中欧のフリーダイバーにとっては、格好のトレーニング場所なのかもしれません。
フリーダイビングは欧州で盛んなので、彼らにとって身近な土地として過去にはAIDAの世界大会も何度かシャルムエルシェイクや、紅海周辺で開催されています。私は大先輩たちの色々な話や武勇伝を聞き、遥か彼方の国、として写真を見て来ましたので、「とうとう、私もここに来たか・・」という何だか不思議な感慨がありました。
ちなみにこの地については「ぼられる、お腹を壊す、食事に飽きるから日本食必携」というフリーダイバー達の通説のようなものがありますが、私はここに一つ付け加えます。「蚊取り線香必携」。 毎晩、巨大モスキートとの戦いを繰り広げることになりました・・・。
●旅の荷物
フリーダイバーの旅の荷物はものすごく多い。ウェットスーツ、フィン、ウェイト、
そういった機材だけでもう重量制限ギリギリです。重い上に壊れやすいものも多い。
長旅には本当に一工夫が必要です。
モノフィン(グライドフィン):
フリーダイバーの友人Tさんがハーレーでモノフィンを担ぐために自ら開発したという、特製のベニヤ式カバーを入手し、万全のプロテクトで臨みました。強度を考え頑丈なグラスファイバーのモノフィンをチョイスしましたが、グラスファイバー製でも私は一度、バハマのローカルエアーで見事にヒビが入ったことがあります。放り投げられるので大事なフィンもひとたまりもありません。それ以来フィンの運搬には細心の注意を払っています。今回はもちろん無事でした!
ロングフィン(C4):
カーボン製のデリケートなフィンなので、分解して段ボールで梱包して赤子のように終始抱きかかえていました。しかし、もう少し綺麗に梱包すればよかった、と後から少し後悔しました。手荷物検査の度にだいぶ、怪しまれました。
ともかくすべての荷物が一度のロストもなく辿り着いた時には本当にホッとしました。今回の旅程では乗り継ぎがトータルで6回あり、そのうち2回、アムステルダム空港では国際線の乗り継ぎ時間が1時間しかなかったにも拘わらず、一度もトラブルに合いませんでした。エアラインのシステムは進化しているなあと感心したのでした。
ともあれ、機材はどれも自分の身体の一部のように大事なものなので、壊したり無くしたりすると簡単には手に入らない。それ以上に自分の身体も無事たどり着いたことに感謝しつつ。カイロ空港で待ち合わせをしていたみみずんこと平井美鈴選手と合流し、やっとの思いでシャルムにたどり着いたのは、すでに夕暮れ時でした。
時間をかけてタクシーの運賃交渉をし、(にもかかわらず結局ちょっとボラれ、もう抗う気力もなく) とっぷり日が暮れた後にホテル「Club Reef」に到着。 すでに到着しているメンバーに迎えられ、 ほっと大きな大きなスーパームーンを仰ぎ見たのでした。そう、これが、束の間の安息でした・・・。
追記:
カイロでは修行の一環として?しっかりピラミッドにも行って来ました。
ラクダに乗ると酷い筋肉痛になるとは露知らず・・・。
アプネアアカデミー インストラクターコースが始まりました。
場所はエジプトのシャルム・エル・シェイクという紅海に面したリゾート地です。イタリアのフリーダイビング第一人者、ウンベルト・ペリッツアーリ氏が直々に指導する、年一度のコースです。(英語・イタリア語で交互に開催されます。私には二年に一度のチャンス)今回は28カ国、スタッフ含め総勢70名以上のフリーダイバーが集まっています。知った顔もちらほらいて、とてもアットホームな雰囲気です。
が、これがとんでもなくハードスケジュール。例えば明日のメニューは、朝7時半に呼吸法のクラスが始まり、海練習、プール、昼食、講義、呼吸法、海練習、リラクゼーション法、夕食、講義、で全てが終わると23時。自由時間は皆無。でも、フリーダイビング漬けなので、幸せなわけですが。この調子で6日間、間に実技テストなどもあるので、体力気力を持続させなくてはいけません。それにしてもヨーロッパ系の参加者は元気そう。東洋人とは体力の種類が違います・・。
フリーダイビングといっても、普段の練習とはだいぶ勝手が違います。大会でベストを出し自分の記録を伸ばしていくための練習ではなく、インストラクターコースなので、使う機材や、ちょっとした呼吸法も違います。例えば人魚のような一枚のモノフィンではなく、機動力に優れる2枚のロングフィンを使います。潜る前に思いっきり空気を溜め込むパッキングという呼吸法もなしです。これは、「必要な時にすぐに潜れる」ためです。色々なやり方が少しクラシカル、オーソドックスなやり方に感じますが、全てに意味があり、それだけに潜りの基礎能力が問われます。
ともあれ、シャルムの海は素晴らしく、マンタが練習ロープに何度もやってきました!
現地からなるべくリアルタイムにレポートしたいと思っていましたが。。非常にハードスケジュールなので、悪しからずです…
「人魚の武者修行」は「どこにでもいる普通の会社員」によるOLアスリート奮闘記
としてスタートしました。
が、このたび、転職に伴い2か月間のロングバケーションという、普通の会社員にあるまじき
時間を手に入れてしまいました。
世の中はGolden weekまっただ中ですが、私の場合はGolden daysのはじまり。
これから梅雨明け頃まで、世界各地、日本各地の海で武者修行をしてきます。
まずは前半戦。明日から5月下旬まで、東北⇒エジプト⇒南仏 と、ノンストップで旅に出るため、現在旅支度の真っ最中です。まだ水温5度以下と思われる東北でのボランティアの海支度と、24~5度はあるはずのエジプト紅海でのフリーダイビング・インストラクターコースに向けた準備を同時並行で進めています。
機材の選定と梱包、現地での栄養確保、水着とタオルとTシャツのローテーション検討・・など。人魚の武者修行は、準備から始まっていると言っても過言ではありません!
この2か月の期間は通信事情が許す限り、なるべくライブ感のある修行状況をレポートしたいと考えていますので、お付き合いいただけると幸いです。なお、これまで何度か予告をしてきた5月第三週目の館山インドア大会については、残念ながら私は欠場することに決めました^^;
それでは、まずは荷造り、ノンストップで仕上げます!
フリーダイビングをやっていて、最もよく聞かれる質問の一つが「何故、始めたの?」というものです。確かに、「どれくらい潜れるのか」「どれくらい息を止められるか」ということ以前に「この人はなぜそれを始めたのか」という疑問が生まれるのも無理はない、珍しいスポーツです。私の場合、この質問をされる度に「はて、そういえば?」と回答に困ってしまいます。
・運命的な出会いがあった
・昔からの夢を叶えた
というストーリーがあれば格好良いですが、私にはこれといった劇的な始まりがあったわけではなく、「いつの間にか始めていて、いつの間にか自分にとって欠くことのできないものになっていた」からです。ではどんな風に「いつの間にか」だったのか、ちょっと振り返ってみます。
●映画「グラン・ブルー」
私がフリーダイビングという言葉を知ったのはご多聞に漏れず映画「グラン・ブルー」です。学生時代に話題になり「良い映画」として押さえておいた、という感じ。あくまで鑑賞の世界として見惚れていました。同じリュック・ベッソン監督の「ニキータ」や「レオン」を観ても自分が殺し屋になろうなどとは思わないのと同様のレベルで、自分がジャックやエンゾのように海に潜りたい、などとは微塵も思わず、サントラなどぼーっと聴いていました。ちなみに、当時は海水浴しかしたことかありませんでした。
●スキューバダイビングと素潜り
私がリアルな海に通うようになったのは社会人数年目、友人に誘われて「嗜み程度」にスキューバダイビングのライセンスを取得してからです。スキューバで体験する海中の世界は素晴らしいものでしたが、私はいつのまにか、メインディッシュのスキューバよりも、空き時間に時折楽しむ「スノーケリング」「素潜り」に魅力を感じるようになりました。息を止めて水中にいることに生理的な納得感というか、落ち着きを感じたのです。なにしろ「安くて手軽」なのも魅力のひとつでした。
素潜りをメインに出来る場所はないかと思っていたところ、辰巳国際水泳場の5mのダイビングプールで練習が出来るという情報を入手。足を運ぶようになりました。プールには魚もサンゴもいませんが、「青い水の中で息をとめている」という、ただそのことの気持ちよさに、最初のころは毎回ウットリしていました。
●「東京フリーダイビング倶楽部」
この縁で初めて「フリーダイビング」的なものを体験したのがかれこれ10年以上前のこと。日本のフリーダイビング黎明期に近い時代でした。辰巳の練習会を主催していた日本のフリーダイビング界の第一人者、カズさんこと市川和明氏が、海でのフリーダイビングの練習の場として真鶴で「東京フリーダイビング倶楽部」を立ち上げたばかりでした。
競技としてフリーダイビングをやっている会員など殆どいない当時。人が集まらなければ練習も出来ない、というわけである日カズさんは素潜り好きな友人たちに「海行くぞ!」と一声かけました。どんな倶楽部に何をしに行くのか見当もつかないながら、私は出向きました。「カズさんは凄い人」と知っていたからです。何しろ、海で泳いでいるときに、彼のお腹にぴったりとコバンザメがくっつくという逸話があったのです。コバンザメと言えば自分の身を守るために、自分より強そうな生物に張り付く生き物。魚から「強そう」と認められた人間です。その人物が言うからには素晴らしいに違いない、と騙されたつもりで海に向かったのです。
果たして、向かった真鶴の沖合のボートには、ロープが垂らしてありました。簡単なレクチャーをしてもらって、さあ潜ってみて、という感じ。これが私が初めて体験した「フリーダイビングらしきこと」でした。なかにはすぐに15m、20m潜れる人もいましたが、私は耳抜きが上手く出来ず10mも潜れなかった。何となく海に「君はこれ以上来てはダメです」とシャットアウトされてしまったような感じがしました。そして、素潜りからも海からも、知らず知らず遠ざかってしまいました。
●再開のきっかけ
しかし、ひょんなことから2006年に再び真鶴を訪れました。この、いつだか思い出せない「ひょん」が、私がフリーダイビングを本格的に始めるきっかけになった日です。暑い夏だったので、深く潜らなくて良いから、まあ海に漬かりに行こうと数年ぶりに訪れた「東京フリーダイビング倶楽部」は見違えるほときちんとした倶楽部になり、色々な選手が練習していました。30m、40m潜る人たちに圧倒されながらも「私は5-6mで」とマイペースで遊んでいると、これまでびくとも抜けなかった耳が、何となく抜け始めたのです。最初に壁を越えたのが「17m」。かつて10mで通行止めだったのに、海から「もっと潜ってみたら」と言われたような気がしました。翌2007年には沖縄での篠宮龍三選手の講習を受けに行き、秋には真鶴の大会で-30mを潜りました。その後は新しいフィンを買ってしまったり、ウェットスーツを新調したり、プールでの大会にも出てみたり。そして2009年にはバハマでの世界大会に補欠で参加、昨年2011年には代表選手としてギリシアでの世界大会に参加することが出来ました。そして海を通じて出会う人たちが急速に増え、フリーダイビングも海も、私の生活の、人生の一部になっていました。
こう振り返りながら「グラン・ブルー」のサントラなどを聴いていると、不思議です。あの時、映画の世界でしかなかった、地中海の青い海に自分が潜ることになるとは。私にとって、フリーダイビングの第一印象は「ふ~ん」だったのに、2度目の再会で惚れ直し、ノックアウトされてしまったという感じです。
「何故、始めたの?」という問いの答えはやはり、「いつの間にか」です。ちょっとしたきっかけが繋がり、いつの間にか思いもよらぬ方向に進むものですね。
AIDA Individual Depth World Championship 2011(2011年9月ギリシア/カラマタ)
photo by sachiko iizuka
●「フリーダイビング初めて講座」
さて、先日、私が主催するフリーダイビングサークルリトル・ブルーでは、「フリーダイビング初めて講座」という入門講習を実施しました。今年になって2回目の開催ですが、のべ30名近くが参加。フリーダイビングに興味があるけれど、始めるきっかけがない人、素潜りが好きだけれど、上達の方法がわからない、という人が、意外に沢山いることがわかりました。これはたった一日の講座ですが、これが「ちょっとしたきっかけ」になるかもしれない、そしてちょっとしたきっかけが繋がって「いつの間にか」が生まれてしまうかも・・しれませんね!
「フリーダイビング初めて講座」プール実習の様子(2012.4.21)
photo by littleblue
前回はフリーダイビングの競技種目についてご紹介しました。
今回は、大会は誰が主催しているのか?いつどこで行われているのか?
世界大会とは?代表選手はどのように選ばれるのか?といったことをご説明します。
■■■フリーダイビング団体:AIDA InternationalとAIDA Japan■■■
「競技」としてスポーツが成立するためには統一のルールが必要です。ルールを設けたり、競技を普及するにあたり、フリーダイビングも他のスポーツ競技と同様の団体があります。フリーダイビングの国際団体としては「AIDA International」という組織があり、各国のフリーダイビング団体がそこに所属しています。AIDA Internationalの本部はスイスにありますが、様々な国のメンバーで成り立っています。日本ではジャパン・アプネア・ソサエティ(通称JAS)という団体がありこの団体がAIDA日本支部(AIDA JAPAN)として活動しています。選手として公式な記録を残したり、代表選手として世界大会に出場したい日本人はJASに選手登録を行うことになります。
■■■大会はいつ、どこで行われているのか?■■■
マラソン大会や水泳大会のように競技人口が多いスポーツとは違い、ひっそりはしていますが、実は国内でも年間いくつもフリーダイビング大会が開催されます。気温や水温の問題から、海洋競技は季節や地域が限られていますが、プールの大会は冬でも開催されています。昨年は一年間でプール・海洋合わせて8回の大会が開催されました。今年は昨年よりさらに沢山の大会がありそうです。今年になって行われた/行われる国内大会は以下の通りです。9月のニースでの大会は国内大会ではありませんが、日本人選手が多く出場するため、記載しておきます。
≪2012年のフリーダイビング大会(2012年3月現在)≫
2月19(日) True North Static Challenge vol.1(プール競技)
3月11(日) 東北支援Apnea Academy 2012 indoor記録会(予定)(プール競技)
3月18(日) True North Dynamic Challenge vol.1(プール競技)
3月25(日) True North Static Challenge vol.2(プール競技)
5月19(土)・20(日) JAS主催:インドアカップ2012 in 館山 (プール競技)
7月14(金)~16(日) フリーダイビング沖縄大会 DEEP WATER CUP 2012(海洋&プール競技)
*9月9日(日)~16日(日) AIDAフリーダイビング世界選手権 inフランス(海洋&プール競技 団体戦)
10月20日(土) 真鶴フリーダイビングクラシック2012(海洋競技)
*現時点で日程が把握できている公式大会を記載しました。これからさらに大会が開催される可能性があります。また、これ以外にも海外の大会は多数行われており、日本人選手も参加しています。
■■■記録とポイント■■■
フリーダイビング大会では、安全に競技が出来るか、公正に記録認定出来る環境が整っているか、などの基準をクリアした大会がAIDA公認の大会となります。公認大会での記録は公式記録となり、国内外のランキングに反映されます。認定された記録はポイントに換算され、各選手ごとの持ち点、となっていきます。代表選手になりたい場合、一定の期間に各種目で公式記録を残す必要があります。
- 深度競技 1 メートル=1 ポイント
- ダイナミック系 1 メートル=0.5 ポイント
- スタティック・アプネア 1 秒=0.2 ポイント
もっと詳しく知りたい、という方は競技ルールの熟読にトライしてみてください。
なお、最近では多くの大会で「トライアル」という枠が設けられ「公式記録はいらないけれど、競技にトライしてみたい」という人にも広く門戸が開かれています。
■■■世界大会■■■
AIDAが主催する世界大会は個人戦、団体戦が一年ごとに交互に行われます。
≪個人戦≫
個人戦は前回ご紹介したそれぞれの種目のランキングの上位者が各国代表となります。海洋競技(3種目)とプール競技(3種目)とに大会が分かれ、それぞれ開催時期・場所等も異なります。2011年は海洋競技がギリシア、プール競技がイタリアで行われました。個人戦は各選手が自分の得意種目に磨きをかけて出場するため、ナショナルレコードなど大記録が出やすいことが特徴です。また、個人がそれぞれの挑戦をする、という性格上、大会自体の雰囲気も比較的自由なものになるようです。
2011年の世界大会個人戦の様子
・野田幾子apnea report
AIDA Individual Depth World Championship 2011
(海洋競技世界大会:2011年9月ギリシア/カラマタ)
World Championship AIDA 2011:EUROPE EVOLUTION CUP/WORLD CHAMPIONSHIPS INDOOR
(プール競技世界大会:2011年10月イタリア/リニャーノ・サッビアドーロ)
≪団体戦≫
一方、団体戦はオールマイティにバランスが取れていることが重要です。
コンスタント・ウェイトウィズフィン/ダイナミックアプネア・ウィズフィン/スタティック
の総合得点の上位者が代表として選ばれ、3人一組のチームで他国とこの3種目の総合得点を競います。バランスが取れた能力や、チームでの総合力が要になります。また一人の減点や失格がチーム全体に影響するため、個人の記録を伸ばすことより、「綿密な作戦に基づきチームとして着実にポイントを獲得する」という色合いが濃くなります。このため団体戦は個人戦とはまた違った緊張感が生まれます。前回2010年の世界大会は沖縄で行われ、女子が金メダル、男子が銀メダルという快挙を成し遂げました!
2011年の世界大会個人戦の様子
・野田幾子apnea report(団体戦の見どころなどをわかりやすく解説してあります。)
WC2010沖縄:フリーダイビング団体戦・基礎知識
・団体戦海洋競技のムービー(※映像は海洋競技のみ)
by aidawc2010
photo by Junko Ueki
■■■今年の見どころ■■■
今年は2012年9月9日からフランスのニースで団体戦が開催されます。2010年7月17日から2012年7月16日までの2年間の公式記録を元にした、3種目の合計ポイントでの上位者男女各3人から選出されます。今後行われる大会の度に記録が更新され、候補者ランキングの入れ替わりが起きてくることでしょう。(ちなみに私は暫定4位)
AIDA Team World Championship 2012日本代表選考について
http://www3u.kagoya.net/~jas-apnea/selection2012.html
シーズンが始まったばかりの現在では、まだ全ての種目の記録がそろっていなかったり、公式記録がないだけ、という隠れた実力選手も数多くいます。そのため今年は誰が出場することになるのか、これからの大会に注目です。 いよいよ、2012年のフリーダイビングシーズが本格的に始まります!
5月に開催される「フリーダイビング・インドアカップ・イン館山2012」のエントリーがスタートしました。多くのフリーダイバーにとっては桜の開花や花粉症と同じく「ああ、今年も始まるか」とシーズンインを感じる毎年恒例の大会。2日間でのべ100人以上が参加する国内最大規模の大会です。
冬の間着々とトレーニングを積んで来たダイバーも、競技を始めたばかりの新人も、そして冬眠していたダイバーも、それぞれの目的を持って続々とエントリーボタンを押しているはずで、この大会とともにフリーダイビング界はにわかに活気づきます。また、今年9月にフランスで開催される世界大会の選考会も兼ねているために、全国からかなりの参加者が集まり、熱い戦いが繰り広げられるのでは、と期待されます。
では、フリーダイビングの大会がどのように開催され、どのような仕組みで代表選手が選考されるのか、ということをご説明したいと思いますがその前に。そもそもフリーダイビングにはどのような競技があるのか、という肝心なことを、このコラムではまだご紹介していませんでしたので、独断でピックアップした選りすぐりの映像と共にご紹介します。
◎フリーダイビングの競技の種類には、どんなものがあるのか?
フリーダイビングというと、映画「グラン・ブルー」の印象から海をイメージすることが多いようですが、海洋・プール両方の種目があります。現在の世界大会の種目になっている全6種目をご紹介します。
■■■■■■海洋競技■■■■■■
海洋競技では垂直に何メートル潜れるかという「深さ」を競います。
フィンを付けるもの、フィンをつけずに平泳ぎで泳ぐもの、フィンを付けずにロープを手繰るもの、と3種類の種目があります。「潜って上がってくる」ことが前提なので、往復を想定して距離(=深度)を決めます。予め申告した深度までロープを垂らし、ボトムにあるタグを持って戻ってきます。深度は垂らしたロープの長さで測ります。
1.コンスタントウエイト・ウィズフィン
Constant Weight With fins(CWT)
2枚フィン、またはモノフィンといわれる魚のようなフィンをつけて潜ります。
花形競技とされ、見た目にもスピード感が気持ち良い種目です。
日本女子トップの平井美鈴選手の泳ぎをご覧ください。
Misuzu Hirai, Constant Weight with Fins 74m, Freediving Japanese National Record
by Aifutaki
※上記映像は2010年4月バハマ・ブルーホールで撮影されたもの、平井美鈴選手の2012年3月現在の日本記録は-82mです。
2.コンスタントウエイト・ウィズアウトフィン
Constant Weight Without fins (CNF)
その名のとおり、フィンを一切つけずに、平泳ぎで潜っていきます。
ニュージーランドのWilliam Trubridge選手が昨年達成した、平泳ぎで-100mを超えた世界記録の映像、とても幻想的です。
William Trubridge 101m CNF World Record Freedive
by MovesCountbySuunto
3.フリーイマージョン
Free Immersion (FIM)
こちらはフィンを一切つけず、平泳ぎの代わりにロープを手繰って潜ります。
プロフリーダイバー篠宮龍三選手が、一昨年バハマで出した日本記録-104m。
一緒に深海にトリップしてしまいそうです。
Ryuzo Shinomiya FreeImmersion 104m 篠宮龍三フリーイマージョン104m
by apneaworks
なお、映画「グラン・ブルー」で登場した種目は「ノー・リミッツ(NLT)」というものです。ザボーラという乗り物に乗って潜降し、浮上の際バルーンなどを使います。機械の力を借りるため、コンスタント・ウェイトよりさらに深く潜ることが出来ますが、特殊な設備が必要であるため、現在では公式種目からは外れています。
■■■■■■プール競技■■■■■■
実は海洋競技よりもずっと競技人口が多いのでは、と言われるものがプールでのフリーダイビング。「水平に泳ぐ距離」と「息を止める時間」を競う競技があります。プールでは海のように「行って、帰ってくる」という要素がないのでゴールを最初に決めておく必要はありません。そのため大会でいきなり大記録が出ることもあります。
1.ダイナミックアプネア・ウィズフィン
Dynamic Apnea With fins (DYN)
2枚フィンまたはモノフィンをつけて平行に泳いだ距離を競います。
つい先日3.11に行われた、「BIG BLUE主催 東北支援チャリティ大会」の様子をご紹介します。解説テロップが入っているので、競技ルールを知らない方にもわかりやすい映像です。ルーキー米山美弥子選手が50mプール1往復半以上(=25mプール3往復分)を一息で泳ぎ、歴代日本女子ベスト4に入りました。私はこの日、彼女のサポートをしており、プールサイドで男泣きでした。
Freediving DYN158m Miyako Citrobal Yoneyama 2012/3/11 in Tokyo
by Miyako Citrobal Yoneyama
2.ダイナミックアプネア・ウィズアウトフィン
Dynamic Apnea Without fins (DNF)
主に平泳ぎで平行に泳いだ距離を競います。
昨年10月イタリアで行われたインドアの世界選手権での様子。フリーダイビング界屈指のイケメン(浅野忠信に激似)との誉れ高い金田勝己選手の平泳ぎ。50mプールを1往復強(=25mプール2.5往復分)、126mで日本男子歴代ベスト3入りしました。
Katsumi Kaneda Japan DNF126mPB!!7,oct
by Miyako Citrobal Yoneyama
3.スタティックアプネア
Static Apnea(STA)
究極の「アプネア(無呼吸)」と言えます。呼吸を止め、水面に浮き、その時間を競います。
この競技を始めて見る人は100%びっくりします。「何もしていない」からです。「いかに何もせず、何も考えないか」という精神的な面が大きく影響し、非常に奥の深い競技とも言えます。
ちなみに私は非常に苦手な種目です。。
なお、映像を流しても5分以上は動きがありませんので写真の掲載に代えさせていただきます。
photo by Ikuko Noda (World Championship Indoor 2011 Italy)
さて、どのような種目があるか、ということがだいたいお分かりいただけたでしょうか?
次回は、大会の仕組みと今後の見どころをご紹介します!
※なお、競技としてのフリーダイビングを正しい知識なしで行うことは危険ですので、絶対に独自で真似をしないでください。興味のある方は個別にお問い合わせください。
⇒フリーダイビングチーム・リトルブルー http://www.littleblue.biz/
ついに、雪の積もった港から、水温3度の海に潜る日がやって来ました。
2012年2月26日。岩手県大船度市三陸町、崎浜。
プロスキューバダイバーとフリーダイバーとによる、三陸の海の再生プロジェクト
「Sanriku Ocean Rescue Divers」略称SORD(ソード)が始動しました。
私もこの活動の一員です。
この日の気温は1度。水中の方が温かいはず、、と無理やり自分に言い聞かせ、、
恐る恐る入った海は、冷たいというより・・・唯一露出している頬が
ピリピリ痛い。でも6.5mmの分厚いウェットスーツを着た身体は全く寒さ
を感じませんでした。これまで体験した最低水温は14度なので、一気に
経験値が上がってしまいました。
漁師さんに「ちょっと様子を見てきてほしい」と言われ港の中心をスノーケルで
泳ぎまわりますが、水底は随分片付き、とても綺麗です。
が、ふと見ると水底に藻で覆われた籠が目に留まりました。
水深は5-6m程度、普段なら一瞬で潜れてしまうところですが、これが潜れない・・
防寒性抜群の分厚いウェットスーツは浮力もたっぷり。錘を沢山つけて、ジャックナイフで
潜り込むのに一苦労でした。何とかフィンキックして水底に到達。籠を掴むと砂を巻き上げ
ながらも軽く持ちあがり、素潜りでもたやすく引き上げることが出来ました。
これはタコ漁の籠。本当はもっと沖で使うのですが、港に置いてあったものが津波で
流されてしまったそうです。でも、こうして引き上げたものはまた使えるそうです。
船の上で待機している漁師さんに籠を手渡して、もう一度水中へ。
2個めの籠も探すまでもなくすぐそばに落ちている。
それどころか、少し岸壁よりに移動すると、同じような籠が無数に落ちていました。
さらにタイヤ、パイプ、工具、ビニールシートのようなもの、大きな金属の破片・・
これが、津波から丸一年たった三陸の海なんだ、と
氷の入ったコップの水のような海の中で、私は実感しました。
日本中が震撼した大震災から一年が経過。
東京にいると、時としてもう何事もなかったかのように感じることもあります。でも、
ここ三陸の海で漁業は壊滅的な打撃を受けており、いまだ目の前にある現実の出来事。
今回の崎浜では、先輩団体である「三陸ボランティアダイバーズ」と一緒に潜ることが
出来、彼らや漁師さんに色々なお話を聞きました。まだ使える漁具を拾い上げたり、
養殖の邪魔になる瓦礫を撤去したり、と人の手でコツコツやるしかないことが、
そして、少しずつでも役に立つことが、まだまだ沢山あります。そして何より、
沢山の人にやって来てほしい、忘れないで欲しい、と言われました。
私にとって3.11は、全ての価値観が覆るような日でした。
「海」の存在を改めて大きく、強く感じる出来事でもありました。
フリーダイバーとして何か出来ないか、ということ思い続けていた昨年末のある日、
スピアフィッシングの名手であり、昨年花火による復興支援イベント「Light Up NIPPON」
を立ち上げた高田佳岳氏が「東北海開き」を構想していること、そしてフリーダイバーの力を
必要としていることを知り、私はいつの間にか、このプロジェクトに参画することになりました。
抜群の実行力と企画力、そしてとてつもなく熱い海への思いを持った
高田氏の熱意に巻き込まれるように、元海上自衛官、元海上保安官、学生、フリーダイバー、
スキューバダイバー、スピアフィッシャー・・・・「海に対して、自分が出来ることをしたい」と
思うメンバーが次々と集まりSORDが結成されました。
そして、最も海の冷たいこの時期に活動が始動しました。
なぜこんな寒い時に?と思いますが、実は、透明度の良い冬こそ、
効率的に水中での作業が行えるのです。
SORDは、スキューバダイバーとフリーダイバーがタッグを組んで作業をします。
水中で長時間作業を行うような場合にはタンクを背負ったスキューバダイバーが有利、
広範囲をサーチしたり、水面と水中を何度も往復したりする時は身軽な素潜りが効率的、
とそれぞれの特徴を生かして今後の活動を続けて行く予定です。
フリーダイバーが日々磨いている、息を止めたり、深く潜ったりする能力。
それがボランティア活動として役に立ち、海の復興支援に繋がるのであれば、
これ以上なく嬉しいことです。 だけど、無理をしたり、先を急ぐことはない。
今は、出来ることを、出来る人が少しずつやっていければ良いと思います。
私は、何度か訪れるうちにリアス式の美しい三陸海岸が大好きになりました。
それにここは、岸近くても大深度がとれる、とてもフリーダイビング向きの地形。
夏になったらフリーダイバーのみんなとモノフィンで潜りたい!というのが夢です。
でもまずは少しずつ清掃作業を。
今週末は気仙沼でサーチ活動を行います!
詳細はこちらで・・https://www.facebook.com/#!/SORD.Divers
●雪の中も不思議と寒くない!作業が終わってウェットスーツを脱ぐと体から湯気が出ました。
photo by Tomohiro Noguchi
Youdo Takeuchi
*この日の作業を指導いただいた三陸ボランティアダイバーズさんのブログはこちらです。
http://volunteerdivers.blog.fc2.com/blog-entry-132.html
人の顔というのものは、年齢を経るに連れて履歴書のように、人格や、積んできた経験など
が現れるものです。そして美醜という枠では判定できないような、味が出てきます。
それと同じように人の身体もその人を物語るものです。特に筋肉。
どんな仕事をしているか、どんなスポーツをしてきたかということが隠しようもなく表れます。
では、息を止めて泳いだり潜ったりするフリーダイバーはどんな体型をしているのか?
今回はフリーダイバーの体型について考察してみます。
●「スイマーの聖地」にて
やって来たのは「スイマーの聖地」東京国際水泳場。競泳、シンクロの全国大会や
国際大会も行われるメインプール、サブプールのほか、10mの飛び込み台がある
深さ5mのダイビングプールを有する都内でも有数の水泳施設です。
このプール、一般利用も出来ますが、我々フリーダイバーはチームでコース貸切の
練習をします。大きな足ひれを使ったり息を止めて泳いだりと、特殊な練習が出来る環境は
都内でも少ないので、とても貴重。その上夜22時まで泳げるので、都心に勤める会社員が
仕事後に駆け込めるありがたい場所でもあります。
この聖地の最も奥地にある最高にステキな場所、それはジャグジー。
温水プールとはいえ、やはり水の中は冷えます。
なので、冬場にここに浸かるのが至福のひと時でもあるのです。
ここは、プールではそれぞれのレーンに分かれて練習している様々なジャンルの
スイマーやダイバーが集まるクロスロードのような場所。
ジャグジーで「は~っ」と息をつきながら、休憩をしていると、色々な方の姿が目に入って来ます。
(あくまで、観察するともなく自然に視界に入ってくるだけですので・・・)
圧倒的な存在感を放つのは競泳選手。流線的な筋肉の上に程よく乗った脂肪。
男女とも水着を格好よくバーンと着こなして、一目で「この人は絶対競泳だな」
というオーラを放ち惚れ惚れしてしまいます。
一方フリーダイバーはというと、、、「これといった特徴がない」としか表現できません。
フリーダイビングというのは、子供のころから長年やってくるスポーツではなく、
ある程度大人になってから始める人が多いため、それぞれ多様なバッググラウンド
を持っています。そのため、特徴がないというより、十人十色、多種多様になるのです。
水深-100mを越えて潜る海外のトップアスリートの中には大柄マッチョな現役のパイロット
もいれば、身長150cmそこそこの小柄なヨガの先生もいます。
●では、実際はどのような体型が最適なのか?
バレーボールやバスケットのように背が高ければ有利なのか、
体操選手のように小柄が得なのか、柔道や格闘技みたいにマッチョが良いのか
ボクサーやバレリーナのように絞る必要があるのか・・・
それはまだわかりません。
ただ確かなことは「酸素消費が少ない省エネな身体」が有利であるということ。
筋肉が付き過ぎていると何もしなくても酸素を消費してしまいます。
かといってある程度筋肉がないと長距離や大深度を効率よく泳ぐことが出来ません。
このため、フリーダイバーにとっての理想の筋肉は「インナーマッスル」だ、と言われています。
外につくモリモリした筋肉ではなく、体の奥にある細い筋肉。なかなか鍛えるのが難しい
部位です。でもこれが一番効率よく、酸素消費を抑えながら運動できる、と考えられています。
私はフルコンタクト空手を長年やってきており、筋トレやら走り込みやらをしてきた為、
ともかく無駄なアウター筋肉がついている。
特に上段回し蹴りを繰り出しまくっていた大腿四頭筋は今でも健在で無駄に酸素を消費
しています。この身体を少しずつ変えようと、インナーマッスルを鍛える地道なトレーニング
を続けています。プールではインナーマッスル強化のためのサポーターを付けて泳いだり、
また陸上では、古武術など取り入れたトレーニングをしたり。
ひょっとすると、フリーダイビングには万人にとってひとつの「理想の体型」が
あるわけではないかもしれません。結局は泳いだり、潜ったりするなかで、
「自分の理想形」を見つけていくしかないかもしれない、とも思っています。
理想の体型をみつけ、そこに少しでも近づくことを願いながら・・
私は暇さえあれば、もとい、ヒマはなくとも、プールに通い、ジャグジーに浸かります。
決して「観察」だけしにいっているわけではありませんので、悪しからず^^;
*ちなみに、日本のフリーダイバー女子はなぜか筋肉質が多いのです。
photo by Rika Nishimoto
通常、フリーダイバーにとって、冬はオフシーズンです。
特に1月。大会もなければ海の練習もありません。何より、寒い。
そのせいか、プールに行っても何となく人がまばらです。
「フリーダイバーって冬はどんな練習しているんですか?」
と聞かれますが、私もその実態をよく把握していません。
夏の間は家族のように四六時中顔を合わせている海仲間ですが、
冬になるとめっきり会わなくなり、お互いの生息状況すらわからなく
なるからです。
夏場は一斉に海やプールに向かうフリーダイバーですが、冬場の行動
パターンはおそらくこんな分類が出来ると推測します。
1.プールで地道にトレーニング
2.陸上でヨガや呼吸法を地道にトレーニング
3.寒い海で地道にトレーニング
4.南の海に行きガッツリとトレーニング
5.冬眠に入る
1,2をきちんとこなすのは真面目なアスリートフリーダイバー。
この時期の基礎トレーニングが本格的なオンシーズンに活きて来ます。
冬のジャンプのために夏場に筋トレに励む真央ちゃん的なストイックな世界、リスペクトです。
3は極めて少数派。サーファーの場合は冬の海に入ってこそ一人前という価値観かも
しれませんが、フリーダイバーは冬に海に入らなくても「丘ダイバー」などとは言われません。
むしろ入る人は「物好き」として珍重されます。
4も少数派。金銭的、社会人的な事情から致し方なし、です。
5はあまり大きな声では言えませんが、意外に多いと思われます。
サラリーマン・フリーダイバーの場合、この時期は仕事も佳境な第4四半期。
夏に備えて冬の間は仕事に専念、というのもまた処世術でしょう。
さて、私の場合。例年だと冬場は細々とプールトレーニングをする程度だったため、
毎年オンシーズンに身体が戻らず、立ち上がりが遅いことが課題でした。
特に苦労するのが水中での「耳抜き」。水圧で内側に押される鼓膜を鼻から空気
を送ることで解消するテクニックです。これが上手く出来ないと、耳が痛くて深く潜
ることが出来ません。毎週のように海に潜っているオンシーズンには自然に抜ける
ようになる耳が、数か月間海に潜らないと固く閉じてしまうのです。
というわけで、今年は「3.寒い海で地道にトレーニング」に
モノ好きなダイバーとバディを組んでトライ。
冬の海は人気がなく、本当に静かです。そして青くて透明です。
夏にはない透明度と、何ともいえない静謐感はこの季節にしか味わえないものです。
オンシーズンに22度以上はあった水温はぐんぐん下がり、現在14度~15度。
3ミリのウェットスーツでは1時間が限界です。
自分のベストの半分以下の深さ、-24mの水底に向かってゆっくりと潜る練習をしました。
この深さが今はせいいっぱいです。北欧の選手などは夏でも水温4~5度の
暗い湖で練習しているといいますが、それが強さの理由かもしれません。。
そういえばノルウェーの選手から「ノルディック・ディープ」という大会(注:雪山ではなく
スカンジナビアの海に潜る大会です)の話を聞いたことがあります。
そんな、名前からして寒そうな大会はありえない、と思っていました。
でも何だか興味が出てきてしまったような・・・
この冬トレーニング、オンシーズンの競技にどのくらい役に立つかは未知数です。
でも、実はこれからさらにもっと冷たい海で潜る、ある計画があります。
この冬は、冬眠できそうにありません。
連載開始直後にいきなり専門用語満載の10大ニュースを掲載してしまいましたが、
今年の武者修行の話に入る前に、まずは「フリーダイビングとはどんなものか?」
ということを書きたいと思います。
ネットを検索すると色々なサイトでこうした解説は出てくるのでこのコラムではいっそ
このまま割愛してしまおうか・・などと無精なことを考えていましたが、考えて見れば
世間一般に圧倒的に知られていないことばかり。
というわけで、フリーダイビングの基礎知識コーナーを時折交えていきたい
と思います。
まずは第一弾。
■フリーダイビングを一言で言うと?
「酸素タンクを使用せず息を止めて潜水をすること。」です。
「アプネア(apnea)」とも呼ばれています。「アプネア」とはラテン語で「息こらえ」
「無呼吸」の意味です。
freedivingのfreeは「自由」ではなく「タンクなし潜水=(tank)free diving」
のことだと言われます。「砂糖無し」=sugar free などと同じwithoutと同意
のfreeであり、「自由気ままな何でもあり潜水」という意味ではないのです。
むしろ競技としては色々な細かい規則が存在し、練習でも大会でも安全面
から守るべきルールが沢山あり、その意味では全然自由ではありません。
でも、身体一つで海に潜ると、ある一瞬、間違いなく「自由」を感じます。
このfreeは「呼吸と引き換えに得られる重力からの自由」とでも言えるのではないか、
などと私は思います。
■似たような海のスポーツとどんな風に違うのか?
◎「スキューバダイビング」との違いは?
スキューバダイビングは酸素ボンベを背負って海中に潜ります。
海の中を楽しむという点では共通していますが最大にして決定的な違いがあります。
それは「息を止めるか止めないか」という点。
私はどちらも好きですが、タンクの有無は、全く同じ海で潜っても、別の場所に感じる
くらいの大きな違いです。この二つの違いは例えて言えば「スキーとスノボ」
「ボクシングとキックボクシング」「アコースティックギターとエレキギター」の
違いとでも言いますか。似たフィールドだからといって言い間違えると、やっている本人
たちからは「全然別物!」と反論されるに違いない、そんな類の違いです。
スキューバでは息を止める必要がないため、長い時間水中にいることができます。
ただし、窒素酔いや減圧症の防止という意味からも、通常の潜水深度は-40mが
限度とされています。
◎「スノーケリング」との違いは?
マスク、スノーケル、フィンの3点セットをつけて、パシャパシャと、スノーケルをくわえて
呼吸を続けながら海中の魚などを見て水面泳ぎ回るものが「スノーケリング」です。
海水浴のついでに、または南の島のリゾートで、経験したことがある人も多いのでは
ないでしょうか?小さな子供でも楽しめ、ライセンスなどは必要ありません。
タンクはもちろん背負わないのでこれも「tank free」ですが、基本的には「水面を泳ぐ」
もので海水浴の延長です。フリーダイビングとの違いは「息を止めるか止めないか」
それ以前に「潜るか潜らないか」という点になります。
◎「スキンダイビング(素潜り)」との違いは?
スノーケリングをしているうちに、必ず生まれる欲求が
「上から見ているだけでは我慢ができない・・」というものです。
海の中に潜って行きたくなるのです。なので、多くの人はスノーケリングを楽しむ途中で
「えいや」っと潜ってみます。最初は1、2メートルかもしれません。でも、水面から水中に
入ったとたん、世界は一変します。マスク越しの視界は水面から見るものと何ら変わりま
せん。けれど、体に感じる水圧、耳の痛み、そして水中の音。何もかもが違うのです。
水というものを身体中で感じます。そして思うはずです。
「もっと長く、深く潜ってみたい」と。
これが「スキンダイビング」または「素潜り」です。
実はフリーダイビングと、やっていることは全く同じ。必要な技術、そして感覚も同じです。
フリーダイビングとの違いは「競技性があるかどうか」という点だけです。
例えてみれば「ランニング(広く走る行為全般)とマラソン(42.195kmを走る陸上競技)」
のような関係です。
ちなみに、これらを中国語で何というのか、台湾のフリーダイバーに聞いてみました。
Freediving =自由潜水
Scubadving =水肺潜水
Snokeling =浮潜
Skindiving =徒手潜水
英語より、何だかわかりやすい、ような、気がしてきませんか?
「自由潜水」の練習の合間の「徒手潜水」