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5月に開催される「フリーダイビング・インドアカップ・イン館山2012」のエントリーがスタートしました。多くのフリーダイバーにとっては桜の開花や花粉症と同じく「ああ、今年も始まるか」とシーズンインを感じる毎年恒例の大会。2日間でのべ100人以上が参加する国内最大規模の大会です。
冬の間着々とトレーニングを積んで来たダイバーも、競技を始めたばかりの新人も、そして冬眠していたダイバーも、それぞれの目的を持って続々とエントリーボタンを押しているはずで、この大会とともにフリーダイビング界はにわかに活気づきます。また、今年9月にフランスで開催される世界大会の選考会も兼ねているために、全国からかなりの参加者が集まり、熱い戦いが繰り広げられるのでは、と期待されます。
では、フリーダイビングの大会がどのように開催され、どのような仕組みで代表選手が選考されるのか、ということをご説明したいと思いますがその前に。そもそもフリーダイビングにはどのような競技があるのか、という肝心なことを、このコラムではまだご紹介していませんでしたので、独断でピックアップした選りすぐりの映像と共にご紹介します。
◎フリーダイビングの競技の種類には、どんなものがあるのか?
フリーダイビングというと、映画「グラン・ブルー」の印象から海をイメージすることが多いようですが、海洋・プール両方の種目があります。現在の世界大会の種目になっている全6種目をご紹介します。
■■■■■■海洋競技■■■■■■
海洋競技では垂直に何メートル潜れるかという「深さ」を競います。
フィンを付けるもの、フィンをつけずに平泳ぎで泳ぐもの、フィンを付けずにロープを手繰るもの、と3種類の種目があります。「潜って上がってくる」ことが前提なので、往復を想定して距離(=深度)を決めます。予め申告した深度までロープを垂らし、ボトムにあるタグを持って戻ってきます。深度は垂らしたロープの長さで測ります。
1.コンスタントウエイト・ウィズフィン
Constant Weight With fins(CWT)
2枚フィン、またはモノフィンといわれる魚のようなフィンをつけて潜ります。
花形競技とされ、見た目にもスピード感が気持ち良い種目です。
日本女子トップの平井美鈴選手の泳ぎをご覧ください。
Misuzu Hirai, Constant Weight with Fins 74m, Freediving Japanese National Record
by Aifutaki
※上記映像は2010年4月バハマ・ブルーホールで撮影されたもの、平井美鈴選手の2012年3月現在の日本記録は-82mです。
2.コンスタントウエイト・ウィズアウトフィン
Constant Weight Without fins (CNF)
その名のとおり、フィンを一切つけずに、平泳ぎで潜っていきます。
ニュージーランドのWilliam Trubridge選手が昨年達成した、平泳ぎで-100mを超えた世界記録の映像、とても幻想的です。
William Trubridge 101m CNF World Record Freedive
by MovesCountbySuunto
3.フリーイマージョン
Free Immersion (FIM)
こちらはフィンを一切つけず、平泳ぎの代わりにロープを手繰って潜ります。
プロフリーダイバー篠宮龍三選手が、一昨年バハマで出した日本記録-104m。
一緒に深海にトリップしてしまいそうです。
Ryuzo Shinomiya FreeImmersion 104m 篠宮龍三フリーイマージョン104m
by apneaworks
なお、映画「グラン・ブルー」で登場した種目は「ノー・リミッツ(NLT)」というものです。ザボーラという乗り物に乗って潜降し、浮上の際バルーンなどを使います。機械の力を借りるため、コンスタント・ウェイトよりさらに深く潜ることが出来ますが、特殊な設備が必要であるため、現在では公式種目からは外れています。
■■■■■■プール競技■■■■■■
実は海洋競技よりもずっと競技人口が多いのでは、と言われるものがプールでのフリーダイビング。「水平に泳ぐ距離」と「息を止める時間」を競う競技があります。プールでは海のように「行って、帰ってくる」という要素がないのでゴールを最初に決めておく必要はありません。そのため大会でいきなり大記録が出ることもあります。
1.ダイナミックアプネア・ウィズフィン
Dynamic Apnea With fins (DYN)
2枚フィンまたはモノフィンをつけて平行に泳いだ距離を競います。
つい先日3.11に行われた、「BIG BLUE主催 東北支援チャリティ大会」の様子をご紹介します。解説テロップが入っているので、競技ルールを知らない方にもわかりやすい映像です。ルーキー米山美弥子選手が50mプール1往復半以上(=25mプール3往復分)を一息で泳ぎ、歴代日本女子ベスト4に入りました。私はこの日、彼女のサポートをしており、プールサイドで男泣きでした。
Freediving DYN158m Miyako Citrobal Yoneyama 2012/3/11 in Tokyo
by Miyako Citrobal Yoneyama
2.ダイナミックアプネア・ウィズアウトフィン
Dynamic Apnea Without fins (DNF)
主に平泳ぎで平行に泳いだ距離を競います。
昨年10月イタリアで行われたインドアの世界選手権での様子。フリーダイビング界屈指のイケメン(浅野忠信に激似)との誉れ高い金田勝己選手の平泳ぎ。50mプールを1往復強(=25mプール2.5往復分)、126mで日本男子歴代ベスト3入りしました。
Katsumi Kaneda Japan DNF126mPB!!7,oct
by Miyako Citrobal Yoneyama
3.スタティックアプネア
Static Apnea(STA)
究極の「アプネア(無呼吸)」と言えます。呼吸を止め、水面に浮き、その時間を競います。
この競技を始めて見る人は100%びっくりします。「何もしていない」からです。「いかに何もせず、何も考えないか」という精神的な面が大きく影響し、非常に奥の深い競技とも言えます。
ちなみに私は非常に苦手な種目です。。
なお、映像を流しても5分以上は動きがありませんので写真の掲載に代えさせていただきます。
photo by Ikuko Noda (World Championship Indoor 2011 Italy)
さて、どのような種目があるか、ということがだいたいお分かりいただけたでしょうか?
次回は、大会の仕組みと今後の見どころをご紹介します!
※なお、競技としてのフリーダイビングを正しい知識なしで行うことは危険ですので、絶対に独自で真似をしないでください。興味のある方は個別にお問い合わせください。
⇒フリーダイビングチーム・リトルブルー http://www.littleblue.biz/