Home > 新着記事 > nemoto

2012/08/30

こんにちは。根本齒科室の根本です。

先日、大変な話しを人伝に聞きました。
近隣の駅のそばの、とある大きな歯医者での出来事だそうです。

ある患者様が初診でそこにかかり、診療室に入りました。
しかし、どうも診療室内の “空気” が悪い感じだったようです。
その方のほかには患者様はいなかったとのこと。

院長は、なにか助手さんともめていたようでした。
そして何と、やおら院長はハサミを助手に向かって投げつけるという暴挙に出ました!
そしてそのまま院長室にこもって、出てこなくなってしまった、だそうです
?????

唖然とする、残された助手さんとその方(新患さん)。

患「今日は時間が無いので、またにしようかと」
助「もう院長は当分出てこないと思うので、出直してきてください」

…これは院長、見えない何物かと闘いすぎでしょう…(夏ですねぇ)

患者様の前で凶器を投げつけるような暴挙、もちろん正当化されるものではありません。
ただ、「闘うべきか、闘わざるべきか」の観点から言うと
私はその先生の心の乱れが、全く分からないでもないところもあります。。

ちなみに、私はこの仕事が「好きだし、きらい」です。

好きな点

◇ 歯医者をしていなければ分からなかったことが分かったこと
◇ そのことを “一応” 伝える機会があること
◇ 浅知恵は役に立たない、己の器は小さい、とよくわかること

嫌いな点

△ 社会では、歯科に対する注目度が思いのほか乏しいこと
△ 知れば知るほど、一般の方の “歯医者のイメージ” と離れていくこと
△ 複雑な治療、大掛かりな治療ほど、予後が悪いこと

好きな点よりも、「嫌いな点」と感じるポイントに絞ってみた方が、問題点の整理が
つきやすいと思うので、ここではそうしてみます。

【1】歯科観に対する乖離

△ 知れば知るほど、一般の方の “歯医者のイメージ” と離れていくこと

とくに「一般の方の “歯医者のイメージ” と離れていくこと」は、深刻です。

何事も「二手先、三手先を読む」ことが大事だとよく言われます。
もちろん、囲碁・将棋のプロ棋士は、それどころか何十手も先を
複数のパターンで正確に読んで、かつ再現できることが知られています。

これに対して、素人の縁台将棋のレベルでは、二手先、三手先もどうか?
局面が全体としてどう動いていくか、という見通しすら漠然としたものでしょう。

歯科でももちろん、普通の方が「疾患が今後どう動くか」など、ほとんど読めません。
囲碁・将棋でいう二手先、三手先も、きわめてあやしいレベルです。

患者様が、今後自分の歯やお口がどのような影響を受けて変化していくか。
しっかり読め、と言う方が、まぁ無理です。
その辺は必然的に、歯医者に丸投げ、ということになります・・・

いっぽう、歯医者の側は、何を考えているか?

「自分がやられたくないことはしない」
「自分ならこうしてほしいことをしたい」

彼なりに一生懸命考えています。しかしこの考えも難しい点があります。
結果論的にその誠意が「ウソ」になってしまうことが多いのです。

一生懸命、誠心誠意、自分”自身”のこととして当てはめて考えようと
すればするほど、お互いのすれ違いが広がるばかりなのが実情です。

以下、よくありがちなパターンです。

患「・・・痛いのをガマンしていたら歯がこんなにボロボロに」
根「診ますね。いす倒します」(ウッ、ここまでのダメージ?自分ではありえない)
根(無理やり自分に当てはめても・・・自分とは習癖も生活習慣も全然違うし)
根(強引に自分に当てはめて・・・こことここがキーポイントで、ここが気づきにくい盲点でetc)

患(診察の時間が長いなぁ。範囲が広いから、もしかしたら高額になるかも。心配だ)
患(とにかくすがっておけば何とかしてくれるだろう。早く何とかしないと)
根(これでは、思い切ってしっかりと作らないと後が最悪。自分ならそんな目にあいたくない)

患「とりあえず、保険で手っ取り早くかめる入れ歯を」
根「予防管理は必須、こことここはインプラント、ここはジルコニアフレーム、ここは挺出etc」

???

一生懸命自分のこととして考えれば考えるほど、こうも離れていってしまうのです。

ミクロ経済学の言葉で言うと、「情報の非対称性」が大きすぎるのでしょう。
原因は、おもに次の2点の差異でしょうか。

①専門知識

患者側は、どうしても「NHK」「朝日新聞」「ネット」「みのもんた」「宮根」etc、
「断片的」、かつ「一般論」にしかたどりつけない。
しかも、目の前の医者の意見よりもそちらを優先する傾向がある。

医者側は、「専門的」知識は省略。くわえて患者の見えない部分を直接診察することで、
いわゆる「個別具体的な」判断が可能になる。

②状況の認識

患者側、すすんでは国民(医科)医療の目的が「困りごとを助ける」であるので、
「痛い」「腫れた」「取れた」etcなどの「主訴の解消」が第一になりがち。
自覚症状の有無が主な判断基準なので、中長期的なことはほぼ念頭にない。

医者側は、再治療がリスク上昇につながることや予防の重要性を日常的に経験しており
主訴は勘案しながらも、歯や歯列、口腔「機能の延命」が第一という考えになる。
最近は、補綴物の設計不良でさらなる口腔破壊の可能性が高まることは常識であり、
天然歯質の温存を優先。

このように、

「断片的」「一般論」 VS 「専門的」「個別具体的」な知識・判断の差
「主訴の解消」が第一 VS 「機能の延命」が第一 な認識の相違

少なく考えても、この2点の大きな差があります。
まさに「市場の失敗」の良い例。

目の前の医者(⊇根本)よりも「NHK」「みのもんた」「宮根」等を信ずる方を前にして
どうすればよいのか。

目の前の医者よりも「NHK」「みのもんた」「宮根」等を信用している、というのは

 (マスコミ≒)患者 > 目の前の医者

ということであり、マスコミの権威をかさに、ついつい

◇ 目の前の医者は自分よりも下だ。私にはみのさんや宮根さんなどの有名人がついている。
◇ 目の前の医者は自分に都合のいい事を言うかもしれない。みのさんや宮根さんは公平。

こんな風に思いがちなのかもしれません。
同じ下敷きでも、ネットで拾った情報だと、ちょっとちがうと思うのですが。。

それが国民利益に繋がりやすいのであれば大変結構なのですが、実際は

◇ 広告代理店(電通etc)や、そこに投資するスポンサー勢力(CIA、中、韓、大企業etc)に有利
◇ 現場の製作会社(下請け)にはリベラル・左翼勢力の力も強く、事業主達に批判的

のようなことが必ずしも起こるとは限らないものの、構造上そのような傾向を無視できない
ことは常識であり、それ以上に報道自体がポジショントークとしての性質を強く持つ
ことにも注意を払わなければいけません。


 そう、TPP騒動の時には、本当にびっくりしました。
 左は朝日から右は産経まで、後ろにアメリカ資本
 までついて賛成賛成の大合唱。
 これをポジショントーク/改革真理教と言わず、
 何と言うのでしょうかw


 また、昨今の韓国の李明博大統領の 독도
 竹島上陸や、天皇陛下への謝罪要求発言
 などで、にわかに日本のメディアや中高年
 を含む一般国民が厳しい対韓姿勢を
 とりつつあります。


 もちろんそうなのですが、私から言わせれば、対韓国評はソウル五輪ですでに怪しく、
 2002年の日韓ワールドカップの内情などの諸経緯ですでに(善悪は別として)かなり
 日本人にとっては “やりにくい” 独特の国民性だと分かるのではないかと思うのです。
 歴史的な事大傾向からか、北も南も、基本的に似たような独特の雰囲気を感じます。


 昨今、今まで力一杯「東亞細亞共同体萬歳」「中韓良い国日本悪い国」教信者だった
 人たちが、にわかにまとめて踵を返すような態度を示すのも、私から見ると何だか、
 また 一 方 通 行 の マ ス コ ミ に流されているようで、逆に心配な面もあります。

【2】企業側の商売至上主義

そのような大資本、報道などの観点から、歯科で、とくに私が気になるのは

[1] 他の歯科材料に対して、歯みがき粉がムダに出回りすぎている
[2] むし歯予防を念頭に置いた「砂糖不使用」の食材・菓子類が少なすぎる

の2点です。

[1] 歯科材料~(グローバル)製造メーカー

私に言わせれば、歯みがきはプロ(歯科衛生士など)の管理があって初めて歯みがきです。
プロの手が入っていない歯みがきなど、はっきりいって ま ま ご と です。
また、一般の方が、自分にあった適切な歯科材料を自力だけで選択できることじたいが
ほとんど奇跡です。

歯みがき粉についても、「シュミテクト」「システマセンシティブ」等の知覚過敏用
の商品に限っては実質的な効果があると思いますが、その他は実質的にすべてウソと
言っても過言ではありません。
これらの、種々の 歯ブラシ/歯みがき粉 がマーケットに並んでいる様は

「自分の歯は、他人や専門家の力を借りなくても予防できる」

という誤ったメッセージを一般国民に提供していることになります。
そしてそれを推進しているのは、一部グローバル企業を含む大企業です。

[2] スイーツ・菓子類~食品メーカー

特に女性を中心に、甘い物がお好きな、スイーツに目がない方は多いと思います。
そのことは大変結構なことですが、

◇ 砂 糖 (ショ糖/Sucrose) が 体 に 合 わ な い 人

(齲蝕感受性の高い方、ハイリスクな方、先天疾患等の影響のある方etc)
が油断して、そうでない方と同じ行動を取ると、成人でもすぐに歯がダメになります。

まったく、世の中は不公平なものです。

これは私の個人的な意見ですが、砂糖(ショ糖/Sucrose)は、文明の発達とともに
広く人類に普及したのはご案内のとおりです。
しかし、タバコ、蒸気機関、有鉛ガソリン車などと同様、文明のさらなる発達に従い
スポイルされるべき、陳旧性のマテリアル
のひとつだとも思います。

「人類は、砂糖に負けた」 んだと思います

手軽に甘味を楽しめる利点はもちろんご案内のとおりです。
しかし、とくに新興国で顕著なのですが、欧米の砂糖使用の菓子が流入したとたんに
「今まで全くと言っていいほどなかった」現地の子供たちのむし歯が激増しました。
(8020財団の統計などを見れば、一目瞭然です)

現在は、安全で遜色ない代用甘味料が豊富にあります。また自分で体験して驚いたのですが
安眠サプリとして有名な「グリシン」が、色も形も「甘さも」砂糖に非常に似ているのです。
(リンク先の冒頭にある、「D-キシロース」も、いいですね!グリシンは下にあります)
グリシンは一番原始的なアミノ酸のひとつで、タンパク質やコラーゲン、軟骨などの
主要な原料のひとつでもあります。

これを代用甘味として何とか応用できないものかと、最近は思います。

今後は、むしろスイーツやお菓子類の分野で、

◇ 砂糖不使用の商品を一般化する
◇ 砂糖使用の商品は20歳以上に限定する

などという方向に行かなければいけないはずだと私は思うのですが・・・
製菓メーカーからは、一向にそのようなアナウンスは聞こえてきません。

むしろ逆に、砂糖不使用の菓子やスイーツ類を揃えてブランディングすれば、
相当ニーズはあると思います。

 (仮題)歯医者さんもオススメ!『お孫さんにも安心』シリーズ

等と称して、ロゴマークでも作り、さまざまな種類の飴、チョコ、ケーキなど
“甘味系おやつ類”の品数を充実させる。
(基準がしっかりしていれば、メーカーはこだわらなくてもよいのでは)
「祖父母が親に隠れてお孫さんにこっそり与えても、安心である」等とPRする。

 お子様のむし歯のほぼすべてが、両親や周囲の大人の助力不足が原因です。
 とくに、共働きなどで両親が面倒を見られない時間に、預けられた祖父母等が
 飴などをこっそり与えてしまうことは、非常に深刻なファクターです。
 (その他、口移しに含んで食べさせる、仕上げみがき忘れ、等のバリエーション有)

 乳幼児の口腔衛生管理は、これからの日本の大人の、大事な課題です。

また、バブル後の長期デフレで、ひと財産を築いた団塊以上の高齢世代や
婚活を卒業した?!経済的に自立しているミドル世代の女性などの層なら、
若干お値段が張っても、的確なブランディングとセグメンテーションで
ひとつの市場を形成いできるのではないかと思うのですが。

「○○新聞の言うことだから」と鵜呑みにしていると、結果として、視聴者自身や
歯科医院の中でも、混乱を引き起こすことが多いように思います。

【3】技術至上主義に対する矛盾・疑念

△ 複雑な治療、大掛かりな治療ほど、予後が悪いこと

という、まことに残念な性質が、歯科にはあります。
これは、どの先生でも異論はない事実ではないでしょうか。

目の前の所見という厳しい現実に「頑張らなければ」「闘わなければ」と思えば思うほど
患者様には治療回数や時間・費用面で負担を強いることになり、また、それに付き合わされる
衛生士や助手などのスタッフも、精神的に疲弊していくのです。
もちろん、歯科医師自身も、闘えば闘うほど、精神的にもテンパり、疲弊していきます。
(だからといって、安易に「面倒なのは全部抜いて入れ歯」というわけにもいきませんが)

歯科医師やスタッフが精神的に疲弊していく、というのは、どういうことでしょう?

歯や口の解剖、疾患は、ひとりひとりが全員違います。

たとえば、みがきにくいところは、汚れやすいので悪くなりやすく、治療器具が入りにくい
というのは、誰でも理解できるともいます。
下から上に、後ろから前に、削らないといけないような複雑な穴ほど、予後も厳しいものです。

そのほかに、接着修復では接着面の防湿・乾燥が大事です。
詰め物などを充填する前に、接着力を出すために表面処理します。
このときに、接着面が唾液(タンパク・有機物を多量に含む)に触れてしまうと、アウトです。
ですから、綿を挟んだり「ZOO」などの特殊パイプを使用したり、場合によってはラバーダム
などの苦しい器具を用いたりしてまで、術野防湿・乾燥にはことさら気を使います。

下から上、後ろから前に削らないといけないなど、複雑になればなるほど、患者様にとって負担です。生理学的には、唾液が多いことは健康な証なのに、治療のためにその反対のことを強いるのです。
治療のためとはいえ、はっきりいって、拷問です。

日頃の歯みがきが不十分などの理由で、物を入れ慣れてない臼歯部に複雑な処置をしようとするとオエッ!」「オエッ!」が始まります…

こんなときは
「すいません、ちょっと一休みしましょうか。奥なんで窮屈で大変ですね」
などと声をかけて、うがいしたり深呼吸をしたりしてもらいます。
患者様はさも(こんなきつい治療行為は心外だ、私は悪くない)かのごとく背中で表現しています。
しかし、かける言葉とは裏腹に、治療者の心はその何倍もイライラがたまってきます。

(お前が日ごろからそこをしっかり磨かないから、オエオエなるんだろう!)
(他でなら抜歯/抜髄(神経をとる)になるところをこんなに頑張って残してやってるのに!)
(何で俺がその尻拭いをさせられて、しかも嫌な顔をされなければならないんだ!)

絶対口や表情には出しませんが、ストレスはもとより、理不尽さからくる怒りが募ります。
(いけませんねぇ)

そうすると、不思議なことに絶対いけないことではありますが、治療者自身が
「平常心とは真逆の心」に犯されていく
のです。

まず、かける言葉とは裏腹に、手元が強引になっていくのを抑えることができません。
いくらオエオエ、ゴホゴホ始まっても、まるで「正義の闘士」のような気持ちになって、
無理やり推し進めていく衝動に駆られてしまいます。まさに斜め上の発想、いけませんねぇ!

スタッフに対する態度も、どんどん悪化していきます。

そんな奥まった複雑な部位なので、バキューム(唾液を吸う)したり、紫外線を当てたりするのは
表側の簡単な部位よりも難しいのは当たり前です。当然手元もブレます。
簡単な部位は介助も楽です。複雑な部位ほど介助も難しいので指示も丁寧に工夫する必要があります。
しかし「難しい部位ほど以心伝心で手早く正確にやってもらわないと困る」ような矛盾が勝ってしまいます。

「もっとこっち!」
「しっかり吸って!」
「(セメント等)練るのは手早く!」

複雑な形態の症例、難しい症例に限って、院長に厳しいことを言われてしまうスタッフも、大変です。ストレスや不満は募り、モチベーションも下がってしまいます。

スタッフに厳しいことを言ってしまった日は、非常に気分が悪くなってしまいます。
院内の空気も悪くなってしまいます。
そして、家に帰ると、正気に戻ってしまいますので、ここでまた気が重くなってしまいます。

(なぜ俺はあのとき、あんなに理不尽なことを 言って/やって しまったんだ…)
(もうこんな目(心境)には遭いたくない!しかし、どうしたらよいのか…)

そりゃ、ヤケ酒も増えますし、痛風にもなるってもんです。

「それじゃあ、患者さんがかわいそうだ」
「それじゃあ、助手の子がかわいそうだ」

ご覧の方は誰でもそのように思うと思います。私ももちろん、そう思います。
「闘うべきか、闘わざるべきか」
その闘うことに関しての “正当性” については、つねに心に矛盾や疑念を感じてきました

ここで、一般的な従前の治療基準(むし歯篇)について、まとめておきます。

 ◆ “ナンゾウ(感染象牙質)”は取りきる~齲蝕検知液(総山孝雄)
 ◆ 神経が出たら抜髄(神経を取る)
 ◇ ギリギリの時は危険な場所に水酸化カルシウム+硅酸セメント(アイオノマー)
   それでもダメなら神経を取る

 [1]G・V・Blackの法則~非接着修復(銀歯用の削り方)のお約束
   遊離エナメルは取る
   外開き
   保持形態・抵抗形態・鳩尾形・予防拡大
 ~病巣に比べて削除量が非常に多い

 [2]象牙質接着システムの発達~東京医科歯科大学(旧第一)保存科を中心に発展

 [3]フローレジン(フロアブルレジン ハイフロー/ローフロー)
   フリーエナメル(遊離エナメル)保存・利用可能
   各種形態の要件がない。感染除去のみ
 ~G・V・Blackに比べて削除量が非常に少ない
 「ミニマル(ミニマム)インターベンション」の概念

 [4]3Mix-MP法~タクシゲ歯科医院にて考案
 ◆ “ナンゾウ(感染象牙質)”を残せるようになった←きわめて画期的
 △ 技術的に非常にテクニックセンシティブ。失敗率が高い
 △ 薬効が、早い場合で数週間で抜けてしまうので、その後の再発リスク
 △ 名称・呼称の権利関係が面倒

何の事だか分らなかったと思うので、簡単に解説します。

[1]G・V・Blackの法則

20世紀の日本の歯科医院は、ほとんどこれでした。
何でも「削って詰める/かぶせる」「治療=銀歯」が常識の時代です。

この時代は、より早く削り、より多くの患者様を見ることに力が注がれた時代です。
器用不器用(や手抜きの有無)はあるものの、穴の形自体は「Blackの法則」という規則性がありました。

欠点は、間接修復(技工所に外注)なので、治療精度や耐久性に難が出やすい、ということです。
もっとも大きな欠点は、むし歯の大きさに比べて、圧倒的に削る量が多いことです。

具体的に、図で説明します。

①出し入れするのに外開きでないといけないので、赤の部分を削ります。
②青いスジ(裂溝)のなかはみがけないとして、”予防的に” 削ります。
③緑色の部分は汚れやすい(不潔域)ので、境界線を外に置くために削ります。
④前後的に引っかかって安定するように、ハート型(鳩尾型)に削ります。

このように、むし歯以外の理由①~④で、削除量が飛躍的に拡大してしまいます。

[2]象牙質接着システムの発達

21世紀ごろになってから、歯の内面に接着処理をして、紫外線で固まるレジンペーストを
その場で充填する技術が発展しました。

型をとって外注に出さないので治療が1回で終わる点や、歯とほとんど同じ色に充填できる点が
銀歯に対する大きなメリットです。

しかし、2ミリ以上の大さに詰めて固めると、ちぢんで(重合収縮)隙間(コントラクションギャップ)
ができてしまいます。
そのため、ちまちま詰めては固めざるを得ず(積層充填)、1回あたりのチェアタイムは増加し、
またデリケートでテクニックセンシティブな技術のため、多くの開業医に嫌われました。

一人一人に今まで以上に神経を使うので、主に術者にふりかかるストレスが倍増します。

[3]フローレジン

今までのレジンペーストは、いわば、固める前の硬さが、硬めの「ロウ粘土」位ありました。
へらで穴に押し込んでいくときに、端の方や角の内面がピッタリいかないのです。
このフローレジンは、硬さが「練乳」くらいなので、内面によく流れ、こすりつけるのも簡単です。
そのため、隙間なく詰めるとき、端の方や狭いところを詰めるとき、積層充填の下地に使うとき
などに非常に威力を発揮し、レジン充填の普及に大きな力を発揮しました。

[2][3]まで来ると、かなり穴(窩洞)の彫り方(形成)が変わります。

これも図で説明します。

今までの方法(G・V・Blackの法則~銀歯)ですと、このようなむし歯の場合に
右のように、大きく削ることになります。
いかにむし歯以外の部分が大きく削られているかが分かります。
しかし時間はそれほどかかりません。

いっぽう、[2][3]のように、そこだけ削って詰める、とすると、てっぺんの充填は
それほどでもないのですが、「後」の部分の充填は、場合によっては神業に近いものがあります。

とくに、埋まった親知らずの角が引っ掛かって、低い位置に穴ができたむし歯は、最悪です。
さっきの「患者様もスタッフも先生も大変な治療」ほぼ確定です。

そんなとき、一冊の本が上梓されます。

[4]3Mix-MP法

「虫歯はクスリで治る(宅重豊彦/現代書林)」

衝撃的なコピーが踊ります。

今まではむし歯は全部削り取ってからでないと詰められませんでした。
そうでないと再発するからです。

この治療法のコンセプトは、むし歯に薬をつけておけば、むし歯が無菌化される、というものです。
3種類の抗生物質を乳鉢ですりつぶし、ある種の水溶性ワセリンに溶いたものを、穴の中に詰めて
ふたをしておくと、しばらくすると薬がむし歯にしみ込み、無菌化されて治る、というものです。

「僕は歯を削りたくない」

私のコラムスペースのタイトルです。まさに、そのものです。
歯を削らないでむし歯を治せるとの触れ込みで、非常にはやりました。2000年前後でしょうか。

下の赤くて横長の四角形が神経(のつもり)です。

今まで、神経ぎりぎりまで、むし歯を取り残さないように削って、副作用で重篤な知覚過敏や
歯髄充血、咬合痛を起こし、結果として神経をとる羽目になったことも、しばしばありました。
そんな顛末は、歯科医師には大きな大きなストレスです。上の図の右側の状態です。
これは当院ばかりではなく、話を聞く限り他院でも結構多いはずです。

むし歯もクスリで、事実上の”自然治癒”をする。麻酔もいらない。
マクロ的な意味で、初めて「歯の自然治癒力」という概念が成立します。
まさに革命です(上の図の下側の状態です)。

☆ 麻酔しない、削らないので、患者様が大変楽
☆ 窩洞形態が非常に単純化する
☆ 1回のチェアタイムが大幅に短縮

薬の力に頼れるので、術者にふりかかるストレスは大幅軽減。普及すればまさに夢の治療です。

結論としては、残念ながら、数年ですたれていきました。
最大の原因は、薬が漏れてしまうことが多く、漏れなかったとしても数週間で抜けてしまうことです。
そうすると、後で再発してしまうので、結局のところ、同じ結果になってしまいます。
薬の上に詰めたふたが咬合圧などで割れてしまうことも多く、結果として
レジンペースト充填以上にテクニックセンシティブな、もっというと確率頼みの治療法
ということになってしまいました。

「正当な認定医による正しい研修が必要だ」

3Mix-MP法を多くの開業医が真似し始め、失敗症例が増えてくるにしたがい、
タクシゲ歯科医院や事務局の運営は排他的な厳しさを増し、名称などの標榜に
どんどん制限をかけるようになりました。

今では、一部の愛好家を除いては、すっかり下火のようすです。

3Mix-MP法が普及に失敗したことは、私にとっては、とても残念です。
また削る治療に逆戻りせざるを得ないからです。

****************************************************

今まで、前回、今回にわたり、いろいろなものと闘ってきた顛末、その意義や正当性について
いろいろ考察してきました。

中長期的な視点で見ると、「歯の『治療』」という概念そのものの限界が露呈した姿でもあります。

あまつさえ国民も政府も、『治療』に拘泥するからこそ、

 医科と取り違える
 手遅れになる
 口腔破壊

の悪循環から抜け出せない姿は、もうそろそろ日本からなくなってほしいと思うのですが。

そんな中、「これは!」と思えるようなマテリアル(治療材料)を目にしました。
「僕は歯を削りたくない」
の名にも恥じない、画期的なものです(名称自体は5年ほど前から存じてはいました)。

次回はそのお話をします。

【今回のまとめ】

一般社会・メディアとの認識の乖離、重商主義、難症例との闘いが『治療』概念の限界を示す。

02:37 | nemoto | 闘うべきか、闘わざるべきか2 ~対一般社会、重商主義、技術論 はコメントを受け付けていません
2012/08/20

こんにちは。根本齒科室の根本です。

いつもではないのですが、最近しばしば心の中でつぶやいています。
「…闘うべきか、闘わざるべきか?」
あっ、”■国”相手じゃ、ないですよw

その心は、こうです。

◆ この仕事は、基本的に、事後処理・敗戦処理である
◆ 歯には、その方の食・生活習慣が大きく出る

すると

私「だけ」では、その症例を克服することができない

という結論になってしまうからです。しかも、

◆ 初診時の度合いで、復旧できる範囲が大きく制約を受けてしまう

これは、医科ではあまりない、歯科の特徴なのではないでしょうか。

「手遅れ」・・・

普通は、進行したガンとか、大事故、末期の難病などでつかう言葉です。
しかし、通常はほとんどそんなことはないのではないでしょうか。
それは、医科では自然治癒力という大変優れた能力を最大限使えるからです。

歯科・・・規模は小さいですが、基本的にすべて「手遅れ」です。
それは、自然治癒力が基本的にすべてゼロだからです。
その顛末を、説明します。

端的に言うと、仕事内容が
「何かを勝ち取る」というよりは「失うものをより減らす」ような、下向きのものになってきます。

たしかに一度敗戦しているので、非常に難易度や専門性が高く、骨は相当折れます。
たとえば

 みがきにくい ≒ 汚れやすい ≒ 道具が入りにくい ≒ 治療しにくい

などはほぼ毎回経験しているし、そのせいで、変な角度やきつい方向、
患者様の苦しい方向から削ったり詰めたりしなければいけないわけです。

しかし、いくら頑張っても「マイナス」から「ゼロ」に戻ることはできません。
マイナス10が、よくてマイナス3くらい・・・

 ゼロまでいけそうな分野としては、むし歯のない人の矯正とか
 ホワイトニング、小規模の審美歯科などはそうかもしれません。
 また安定したインプラントも、かなりいい線まで行くと思います。

「そんなのでいいのか?」
たしかにここだけ聞くと、そんな感じがします。

では(普段はあまりないのですが)初診時に凹む実例をいくつか挙げてみます。
例によって、写真は全てプライバシー保護のため手を加えてあります。

<Case1-1>


初診時に、どうもグラグラして物が詰まる、ということでお見えになりました。
見て明らかなように、2本で支える3本連結の歯(ブリッジ)の片方が分断しています。
しかも、分断したところが大きなむし歯になって、距離が広がってしまっています。

この “人” はずっと、1 “人” で 1.5 “人” 分の仕事をしていたんですね。
また、分断した隙間をみがけないので、むし歯菌がたまって、悪さをしていたんですね。

<Case1-2>


こちらも急患で、やはりグラグラしてたまに腫れる、とお見えになりました
こちらもはっきりと、誰の目にも欠損が明らかです。
やはり、この “人” も1 “人” で2 “人” 分の仕事をしていた形です。

これらの写真を見て、
「なら、ブリッジを外して、むし歯部分を削って、また新しく入れればいいのでは」
と思ったあなた。

それは、残念ですが、短絡的で近視眼的な視点です。

◆ 歯には、その方の食・生活習慣が大きく出る

と最初に書きました。前と同じようにすれば、前と同じような結果になるのです。

「今がよければいい」って奴は、現場じゃあなかなか通用しないんですね。
こうなる方は、その前に、以下のような過去を経ていることがほとんどだからです。
(上記ケースとは別人ですが)

それは、どういう過去なのでしょうか?

<Case2-1>


初診時に、根が腫れたといって来院しました。
レントゲンを見た感じで、限局性の影があるので「もしかしたらヒビかも」
とも思い、冠を外して中の掃除をはじめました。
ヒビらしきものが見えなかったので、とりあえず仮の土台を入れてみたのですが…

<Case2-2>

もともと咀嚼力の強い方です。下顎の骨隆起もはっきり盛り上がっています。
上顎の口蓋隆起もそこそこあります。
まずは、生活習慣の改善(食事時のかみしめ防止の練習)が第一なのですが…

そして、こちらも、最後臼歯の下がつぶれて分断したところが、大きなむし歯になっており、
距離が広がってしまっています。

おそらく、咬む力(咀嚼圧)が強く、強度的に耐えられなかったブリッジの下の根の接着剤が
脆性破壊を起こしたのでしょう。


<Case2-3>


前医で、「削って差し歯」が好きな?!先生に当たってしまったと思われる方です。
この手に当たると、患者様ご本人も、それが当たり前だと思ってしまいます。
あちこちが、(ここまでしなくてもいいだろう)と思うような差し歯だらけです。
適合に問題があったのか、隣の歯も含めて、スキマにも大きなむし歯があります。
レントゲンを見せて、根が割れていることを説明したのですが、さらりと

「なら、前の歯とつなげて、新しいブリッジを入れればいいですね」

・・・あぁ、こりゃ完全に洗脳されています?!というか、病識ゼロ・・・
前医の指示とちがう内容は、とても言いにくく、また受け入れられにくいものです。

また、2-2 と 2-3 は、修復物の下、特に連結部の下にある大きなむし歯が気になります。
連結補綴の下は汚れがたまりやすいので、歯間ブラシなどの補助的清掃用具が必須なのですが、そういう情報提供をしたところ、かなり面倒そうな表情でした。
(あぁ、前ry)

<Case2-4>


3回も根の治療をしたのに、すぐ腫れてくる」とのことで来院しました。
お口の中を見てびっくり、天然歯でやってはいけないことで有名

「 延 長 ブ リ ッ ジ (片持梁、カンチレバー)」

です。やっぱり、こっそり思います。

 誰だよ、これやったの・・・
 何でオレがやるハメに・・・

「これをやると、後ろの歯がすぐにダメになる」と、散々学校や先輩に教わってきた形です。
レントゲンを見せて、正直に説明しました。案の定、ガッツリ割れています。
「この形だと痛みやすいです。残念ながら、歯が割れています」

最終的には、最後臼歯をインプラント、そのひとつ前を自家歯牙移植でリカバーし、
事なきを得ました。

最初の<Case1>2例のブリッジのトラブルになるような方の場合は、その前に、
ほぼ<Case2>の4例のような、物理的な力や形態的な問題によるトラブルを経験しています。
安易に抜いてつなげればいい、というわけには、なかなかいかないのです。

「前に歯医者に行ったら、黙っていきなり抜かれた」

といぶかる方も少なくありません。
たしかに以前は抜歯基準が現在よりも緩かったのも事実です。

しかし、「黙っていきなり抜かれた」結果、入れ歯やブリッジにされてしまった方。。。
この前段階のほとんどに、上記<Case2>のような経験がある可能性も高いのです。

以上、残念な形をいくつかお見せしました。
ちなみに、ここで挙げた全例とも、通常まず自覚症状が出ない形なのです。
「やっと」腫れてやっと気がついて、あわてて来院したときには、もう終わってる…

通常は、このように治療に不具合があった場合、必ず自分のところに帰ってきます。
(帰ってこない場合は「患者様に見限られた」ということになるので、より問題ですが)
「前に治療した●●が、こわれた/調子が悪いetc」
たいがいの場合、前回と同じような治療では済まないレベルに進行していたりします。
そういう意味でも、敗戦処理とはいえ、責任重大です。

なぜそうなったのか、必然なのか偶然なのか、
ご本人の不摂生なのか、治療法に無理があったのか、前の歯医者が●●だったのか
etc

昔を見ていたわけではないので、確実なことはもちろん分かりませんが
たいていは複数の原因による込み入った因果関係があるものです。

そのなかでも、歯科医院の外に大きな原因があるものがほとんどであり
そこ(院外)への対応こそが、これからの歯科医院・歯科医師に課せられた
大きな使命だと言えると思います。

今後の方針、といっても「事後処理・敗戦処理」に変わりはない訳ですが、
それでも、先に述べた

 複数の原因による込み入った因果関係
 過去~現在~未来の時間軸で見た推察・予後

をないがしろにして安易に計画を立てると、前掲例のように、必ず失敗します。

◇ 食事指導・生活指導
◇ 歯ブラシ指導

考えてみると、本当に面倒な言葉ですよね。

「なにを○○指導だなんて言って、『本分』を疎かにしているようだ」
「食事や生活にまで『本分』以外に踏み込んで、うっとうしい。」
「壊れた歯の治療をするのが『本分』じゃないのか」

・・・や、だから、治療以上に、そっちこそが『本分』なんですけどwww

そのあたりがご理解いただけない場合、あるいは理解しても実施できない場合、
ほとんどが生活環境

 病み上がりなど、健康面の問題
 転勤・転居の多さや過密な勤務体系
 所得等に余裕がない
 精神的なコンディションなどの問題
 etc

に問題があると見てまちがいありません。

今までの経験では、その人本来のメンタリティよりも、このようなタフな生活環境が
歯に対する行動規範・Attitudeを再形成し、結果として歯やお口への意識が下がってしまう
ことの方が、結果として多かった臨床実感があります。
・・・
その場合は、意に反して、姑息的な対応しかできません。
まぁ、一次的、姑息的に瑕疵に蓋をして知らん振りするのと同じことかと・・・
(どうせ○年後に・・・)などと思いながらも、割り切って削るしかない。正直、心がきついです。

歯は本当は消耗品として扱ってはいけないのに、このような行為の繰り返しで・・・
「面倒くさい」ただそれだけの理由で、ご自身が進んで
つねに「天然歯質が目減りする方向、目減りする方向に行きたがる」ようになってしまうのです。

そのような思想の延長線上には・・・やはり総入れ歯の世界の国境線があります。

・・・そうはならないようにしないといけません。

(この話には続編があるので、分けて書きます。)

【今回のまとめ】

歯科医師は、歯科医院の外側のもの(食習慣・生活習慣)とも闘わなければならない。

08:28 | nemoto | 闘うべきか、闘わざるべきか はコメントを受け付けていません
2012/07/29

こんにちは。根本齒科室の根本です。

暇つぶしに西田昌司議員のビデオレターを見てました。

「同僚の磯)ry が質問」   はいはい
「今週の文芸春秋に・・・」  はいはい
「野田さんの後援会長・・・」 はいはい
「彼は元歯医者で・・・」       はい?!

普段は買わない週刊誌。さっそくコンビニに走ります。

どれどれ、インプラント使い回し事件以来の購入となる
現物をパラパラ、と

おっと、一番最初に、でかでかとありました。

DS株式会社」
 ↓
デンタルサポート株式会社」
 ↓
デンタルサポート
・・・

あっ、これは懐かしい名前だ

アレ」かぁ~!

私は昔、結構ここにお世話になっていました。
といっても、ここで働いていたわけではないのですが。
21世紀になって間もない頃です。

10年位前が、走馬灯の様に思い出されます。
読者の皆様は、ここのメインコンテンツが何をしていた所か、ご存知ですか?

答えは、意外ですが






「無料の歯科求人・求職掲示板」

です。

有料求人では、(旧)日本歯科評論「よろず案内」e-dentist が有名ですが
ついでに「アレ」の無料掲示板に流しておくと、そこそこ反応があったものです。

非常に印象深い思い出があります。

もう10年は前のことでしょうか。某歯科医院の分院長をしていたことがありました。
しかし、残念なことに、どうもそこの理事長や歯科衛生士と合わなかったのです。

自分は、自分なりの考えがあって治療をしているつもりでした。
でも理事長は理事長なりの考えがあって、私にいろいろ言ってくる。
やはり衛生士も衛生士なりの考えがあって、私にいろいろ言ってくる。
もちろん受付嬢も受付嬢なりの考えがあって、私にいろいろ言ってくる。

合わないときって、そんなもんです。個人商店だし。

 もう無理!ヤダ!やめたい!

日々不満は募る一方でした。
情弱なネモトは、歯科業界での雇用の流動性を、まだ信じていました。

 そうだ!「アレ」がある!

軽薄なネモトは、ほとんど一瞬のうちに(大体こんな)文章を仕上げていました。

 【急募・分院長】

 『勤務地』○○線◎◎駅歩5分 交通至便
 『条件』臨床経験3年上
 『募集』至急
 『休暇』○・日 夏季・年末年始 他
 『勤務時間』9:30~13:00 14:30~18:00
 『給与』保証35万、歩合20%
 『概況』ユニ2、DH1、DA1、15~20人/日
 『連絡先』
  ℡:(分院の電話) 採用担当 根本
  @:(根本の個人アド)
 『コメント』
  現分院長引越しのため急募いたします。女医も働きやすく歓迎。
  立地上、自由診療・インプラント等が出やすい雰囲気です。矯正専門Drあり。
  スタッフを大事にしながらも、自分のスタイルを追求したい意欲的な先生歓迎。

我ながら、うさんくさいことを書いたものです。ええ、ウソは書いていません。
アレ」には、しばしばこのような内容の募集が流れていました。

 ・・・いいや、無料だし。流しちめぇ!

「ぽちっ」となwww

その後、コレまでに経験したことのないほど一心不乱に神様に祈りました。


 神  様。
 根本です。いつもお世話になります。  
 ← これって、いいのかよ????
 不出来な私のお願い事をたったひとつだけ聞いてください。
 私は今、合わない分院で苦労しています。
 理事長や衛生士、受付嬢は私に嫌味や文句ばかり言っています。
 このままでは、私はどうにかなってしまいそうです。
 どうにか、周囲が円満な形で、再スタートを切りたいと思っています。
 しかし、私もこの状況なので、(旧)日本歯科評論 とか e-dentist などの
 有料サイトには、個人の財力権限で求人を出すことができません。
 神様。ああ神様。この不出来な根本を、ほんの少しでも憐れとお思いであれば
 どうか、どうかこの医院にマッチする若手でイキのいい先生のレスを
 何とか、この根本の「@」にお遣わしくださいませ。
 どうか、よろしくお願いいたします!

 仏  様。
 根本です。いつもお世話になります。
 先ほど神様のほうにもお願いいたしましたが、
 (後は大体同じ)
 どうか、よろしくお願いいたします!
 仏様のために、今から「般若心経」を頭の中で唱えさせていただきます。
 ♪~マカ般若腹見たwww~(ry
 (一応、漢字は分かりませんが、今でも空で暗誦はできます。)

 御先祖 様。
 おじいちゃん、おばあちゃん、敏行叔父さん、幸子叔母さん。ジョイジの叔父さん叔母さん。
 啓行です。いつもお世話になります。
 先ほど神様と仏様のほうにもお願いいたしましたが、
 (後は大体同じ)
 どうか、よろしくお願いいたします!

正確かどうかはわかりませんが、ほぼこのような内容で、とりあえず
一心不乱にお祈りしたことだけを覚えています。
多方面にお願いしたことが幸いしたのか、何と数日後にひとりの先生から
私にメールが届いたのです!

その後はあまりにもとんとん拍子に進み、その先生も理事長とかスタッフとも
いい感じに馴染んだようで、非常にスムーズなバトンタッチになりました。
いくら「アレ(デンタルサポート)」が反応がいい掲示板だったとしても
そのときほど「奇跡」という言葉を実感したことはありませんでした。

・・・もう10年近く前のことです。

アレ」には、多くの求人・求職情報が流れており、結構多くの人たちの
役に立っているようでした。

その中に、ポチポチと「自社」の求人の情報も混じっていました。
私の記憶が確かなら、

 「提携歯科医院で働きませんか」
 「訪問診療スタッフの募集」

などのような内容がメインだったと思います。

現在の「アレ(デンタルサポート㈱)」のページには、当時のような
「無料の歯科求人・求職掲示板」の部分は一切ありません。

ホームページのリニューアルを繰り返しながら、少しづつ自社中心に
切り替えていき、現在のようなトータルな往診(訪問歯科)メインで全国展開する
方向にもって行ったのでしょう。。

「無料の歯科求人・求職掲示板」には、しばしばお世話になった部分もありますが
社としては、立ち上げにおける宣伝効果がうまくいった形になるのでしょう。

しかし、いくら社長が歯科医師だとしても、形態が株式会社なので、
自前で直接病院を運営するわけには行きません。

そのため子飼いの医院・医療法人を数多く必要とする形になります。
もっといいのは、勤務歯科医師を直接飼いならして操り人形化する形です。

社としては、それぞれの子飼いの医院に対し

 往診をサポート(新規開拓、営業、送迎etc)
 手数料を取る

形です。

社が直接詐欺行為を働いた、ということではありません。
子飼いの医院の尻を叩きすぎて、過剰なノルマを押し付けてしまうのでしょう。

じつは歯科は、規模の経済がきわめて効きにくい特殊な業態でもあります。
前述の「分院長」wの次に勤務していた医院の院長が、しみじみおっしゃっていました。

昭和の高度成長期の頃、すでに少なからぬ名だたる商社が、歯科医院のチェーン化を
いろいろと画策していたようです。
しかし、歯科は個人差もさることながら、形態と機能(つまり外科とリハビリの共存)
に直接手を出すので、業務形態のパターン化が非常に難しく、どこもあきらめた、と。

また当時は空前の歯科バブル時代で、どこも開けておきさえすれば患者様の行列、とか
現在と比べて、非常に個人開業医にとってやりやすい時期でした。
今のコンビニの様に、あえてフランチャイズの下に入る動機が、全くないのです。

それがいいことか悪いことかは分かりませんが、現在はまともに個人商店できるのは
医療系くらいではないでしょうか。

ご案内の様に、歯科医院を臨床内容で効率化やコントロールすることはできませんので、
社としては、子飼いの医院を数字で追い込むしかありません。

これ、小泉時代にあった「コムスン」の不正請求事件と、似た感じですね。
コムスンは直接的、今回は間接的な不正請求。
そして業界自体が、“人多くして金回らず”で矛盾が多い点も似ています。

逆に言うと、そこまで尻を叩かないと収益があがらないほど厳しい時代です。
子飼いの医院としても、”大旦那”の営業力・集客力に依存して、頭が上がらない
所も多いのかな、と思います。

社長の寒竹(かんたけ)郁夫氏が、ひとつ本質的なことを言っています。

「ドクターが患者に麻酔を打って効くまでの10分間をずっとその人の前で待っていることはない。その間に他の患者さんを診れば、1時間に5、6人は診られる。素人はこのカラクリがわからないから、20分だと大騒ぎする。法律が間違っている。不正はない」

それぞれの立場から、「法律が間違っている」と、とくに歯科界では声があります。
実際に、多くの先生方がお感じの「正義」と「現行法規」の乖離が大きいことは事実です。
私も、別の面から、現行法規にはさまざまな時代に合わない点が多いと、不満もあります。

今回の問題の本質は、まさに「患者様を並べて診る」ことの是非にあると思います。
20分以上か以下かで金額が変わる云々言われていますが、つまりそういうことです。
並べれば20分以下で安い。並べなければ20分以上で収益倍以上。
(並べて診て、並べなかったことにしよう)・・・

 私は気持ち悪いので、個人的にはしたくないし、してません。

 寒竹氏は、一般でも訪問でも、やってもいいといっています。

 現行法規は、一般では良くて、訪問ではダメといっています。

同時に患者さんを診る、という状況は想定していません。別々です。訪問診療の場合、患者のリスクは、外来の患者に比べて高く、手間隙もかかるため、診療点数を高くしている。あくまでもつきっきりできちんと診療をやっていただく。その結果として20分あったのか、なかったのか、ということです」(保険局医療課)

これはキツイ状況ですね。
独禁法ではありませんが、官僚的な手のひら返し「運用厳格化」のサインでしょうか?
ソースが文春なので、政局がらみの面もあるのでしょうか?


 2008年、福田内閣総辞職時のことを思い出しました。
 「あなたたちとは違うんです!」

 当時、サブプライム→リーマンショックで大ダメージの米国が、日本政府に対し、
 総額100兆円の金融支援をしつこく迫っていました。
 日本が保有する全外貨準備高に相当する額だったと言われています。

 そこはお約束で、新自由主義なけけΦさんやw443さんらが「毅然と追随」します。
 そう、この人らが自民党を飛び出して、「(こっち)見るなの党」を作りましたね。

 当時の伊吹文明財務大臣は、慎重論を唱えました。すかさず、
 「あなたたちとは違うんです!」砲の炸裂です。

 フフン捨て身の防御で、日本の政府機能はストップし、晴れて100兆円は守られた。
 まことしやかに語られる話です。

野田内閣といえば増税TPP
増税TPPといえば野田内閣。

もしかしたら・・・

承前
「それは子飼いの医院が勝手にやったことだ」
内閣総理大臣の[前]後援会長だからといって、今回は知らぬ存ぜぬは通らないと思います。

各医院で合計21億も不正請求。これだけでもすごいことです。
普通、水増し請求や不正請求などに対する個別指導や監査の結果、
医道審議会にかけられて保険医停止とか取り消しになるケースでも
多くても一医院あたり数百万レベルです。約100倍。単年度で33倍。

これは大きな問題になることでしょう。
お気の毒なのは、全国に数多い子飼いの医院です。
そして、そこでお世話になっている患者様たちです。

しかし、私が一番憂いているのは、「患者様を並べて診る」というコンセンサスそのものです。

 20分云々は、本質ではないと思います。
 もともとは30分だったし、官僚のサジ加減のひとつでしょう。
 この問題をつきつめてしまうと、レセプトを現在の月次から日次方式に改めるとか
 日計表の同時提出義務化などして、人数制限?!のような方向に走りかねません。
 想像するだに、尋常でない事務量と煩雑さの増加です。さすがに非現実的です。

「患者様を並べて診る」飛び回り診療。

あっち行ってちょろちょろ治療、こっち行ってちょろちょろ治療。
それが、歯科医師をこえて、患者様や国民の間でも当たり前になってしまっているのです。

大きな診療室に、何の間仕切りもないユニット(診療台)が4~5台。
こんな国は、先進国・中心国では、日本以外のどこにもありません。

「患者様を並べて診る」飛び回り診療がやりやすいように、そうなっているのです。
さすがに最近は、プライバシーが、ということで、簡易間仕切りを追加するところも
増えてきています。

でもそこは、院長が飛び回る動線wを邪魔しないように、周到に工夫されています。
工夫というか、単に仕切りが小さい、ということです。

そのような歯科医院がまだまだ多く、まだまだ多くの患者様が通院しているのも
事実です。

それは、歯科医院も、患者様や国民も、「それでいい」と思っているからです。
・・・忘れていました。行政も「それでいい」と思っているからです。

ここは、私一人がどうこうしても、どうにもなりません。
多くの国民が「患者様を並べて診る」飛び回り診療、ならんでは従来型の歯科臨床に
違和感を感じ、より良い方向性に変えていかなければいけない、という方向にならないと
なかなか事態は動かないのではないか、と思います。

まさに、良くも悪くも”民主”主義なのでしょう。

そして、現実にそぐわない法規などの実体を良く理解せず、それに反したといって
単に叩いて溜飲を下げるだけの不勉強な風潮に、常に抵抗しなければならないのも、
“民主”主義社会における”市民”の責任なんだと思います。

【今回のまとめ】

不正請求問題の根源に、出来高制度と「患者様を並べて診る」飛び回り診療がある。

06:16 | nemoto | 文春 キタ―(‘A`)―![前]後援会長of野田首相’s不正請求?の件 はコメントを受け付けていません
2012/07/16

こんにちは。根本齒科室の根本です。

いつもすぐ捨てているニュースレター「日歯広報」
(日本歯科医師会)今まさに捨てようとした瞬間、
ある語句がチラッと目にとまりました。

「歯科口腔保険法」

・・・あぁ、ちょっと昔を思い出しました。

2007年参院選「石井みどりに入れろ」
2009年衆院選「自民党に入れろ(えっ、この茨城3区で???)」

当時は歯科医師会の上のほうが頑張っていて、いろいろお達しが来たものです。
面倒な気がしていましたが、陰で、こんな形になるように頑張っていたんですね。

また、最近あった地元市の歯科医師会の会合で、ある先生が言っていました。
市の協賛で、某小学校にて近々フッ化物洗口法を試験的に行うようです。
歯科保健を、生涯スパンの取り組みと捉えた形としては良い取り組みの一歩です。
ただ

「・・・どうも 教 育 委 員 会 の方で異論が強くて」

教育委員会。まぁ、どこの地域でもそうなのかもしれません。

これは学童期(6歳~12歳)中心の措置ですが、受療率が極端に低い昨今、
予防歯科処置の公衆化にも一定の意義がありそうだと思う今日この頃です。

しかし、私はずっと違う「ところ」を見ています。
違う「ところ」、とくに注意が必要な期間は、ココです。

◆ 19M(約1歳半)~31M(約3歳)

 私もときどきお手伝いに伺う、歯の保健センターの健診で見ていると、
 1歳半健診でほぼ上下左右4本づつ萌出しています。3歳(2/6~3/5)健診で5本づつ。
 統計的に、この期間内を上手にクリアすればその後も結構安泰だと分かっています。
 この期間でむし歯を作って、菌が居座ると、歯医者人生ほぼ確定です。
 その冷徹な結果は、幼稚園児の口腔内を見ると、はっきり分かるのです。

 また、小学生でむし歯の少ない子でも、この4本目と5本目の間(D-E間)が
 やられていることがとても多いのも乳歯齲蝕の特徴です。

 D-E間は接点(コンタクト、隆線etc)の形態が複雑でみがきにくい面もありますが、
 もしかしたら、この部位の萌出期間差でもある 19M~31M の衛生管理状況が
 特異的な齲蝕発生と関連があるのではないかと、最近すこし疑っています。

お口の中には、当然ながらさまざまな菌が常在菌として存在しています。

非常に大きく分けると、「むし歯菌」「歯周病菌」「その他の菌」がいます。

今後何十年~一生のためにも、人生の初期は、まず「むし歯菌」の徹底隔離が大事です。
これを第一段階と私は考えています。

子供は自分で自分の歯を適切に守れません。100%周囲の大人の力が必要です。

◇ 幼稚園~小学校

 このような集団教育の場では、一斉実施が有効な「フッ素」の応用がよく行われます。
 手法としては「フッ化物洗口法」が簡便で有効です。

 フッ素の応用は、幼弱歯が「安定化」するのでたしかにむし歯になりにくくなりますが

  「むし歯菌」の徹底隔離=プラークコントロール
  「砂糖(ショ糖)」の管理=シュガーコントロール

 が家庭内でおろそかだと、ほとんど意味が無いような気もしています。
 フッ素の利点は、「すでに生えた」「若い」歯を「安定化」させる点です。

◆ 小3・4~高3

 この頃になると、親の仕上げみがきや管理の手を離れる年代です。
 しかしそのせいで、上記要因のある子は、むし歯が急速に進みやすい時期でもあります。

 また、この年代よりも前は「むし歯菌」のみの対応で十分ですが、
 早い子では、永久歯が生え揃ってくる小学校高学年~中学校あたりから
 歯肉炎・歯周病もはじまります。


 例は少ないのですが、「若年性歯周炎」という難治性の破壊的疾患があります。
 一般開業医では、まず適切な対応は困難だろうといわれているものです。
 それに対する早期のスクリーニングも、この年代ではとても大事です。
 腫脹・発赤などの明瞭な自覚症状に乏しく、破壊が迅速で手遅れになりやすいからです。

私は以上の、◆19M~31M ◆小3・4~高3 の危険な2つの期間を特に注視しています。

しかもこの期間は、◆19M~31M ⇒母親・周囲の大人 ◆小3・4~高3 ⇒本人 
にほぼ依存しており、歯科医院などの民間施設や、学校などの公的機関が関与する
チャンスがほとんどない時期
でもあるのが特徴です。

ここをどうにか対処しないと、つまり、この時期に


◆ 育児で忙しい母親や周囲の大人
◆ 思春期・自我形成期のデリケートなお子様

に「直接」「丹念に」アプローチしないと、正直、抜本的な改善はないと思います。

すなわち

 「痛い」「取れた」後に、あわてて歯科医院に駆け込む ⇒ 予想以上に悪化済

なスタイルからの脱却が本質的に不可能だということです。

このようなスタイルは、自分自身だけでなく、小さなお子様にも悪影響を及ぼします。
論より証拠、典型的な例を挙げます。
(プライバシー保護のため、画像および内容を一部変革してあります)

<A様(20代)>
 現在第二子妊娠中につきレントゲンは撮影できず
 お子様が1歳半健診で齲蝕を指摘されて、3歳健診でも指摘された
 原因菌の垂直感染(親⇒子)が疑わしいケース

<B様(4歳)>
 片親(男性)
 機嫌を取るために親や祖父母が甘いものを多く与える

最近の小さい子は、むし歯ゼロも結構多いのですが、ある子に、このように集中して
あるのです。

とりわけ、1歳半~3歳の時期は特に大事です。
この時期は、親や周囲の大人の取り組み次第でほぼ100%決まってしまいます。

また、前例の<A様>のように、20代で歯に大きなダメージを負っている場合は、
A様自身の中~高時のエラーが大きく関与している疑いがきわめて濃厚です。
このエラーは「むし歯などの歯科疾患そのもの」「食・生活習慣」両面を指します。
そしてそれはそのまま「むし歯・歯周病の世代間連鎖(=垂直感染)」につながります。

このあたりを、平均的なところで、大まかに図にまとめてみます。

歯科口腔保険法の条文を見直してみましたが、このゾーンに対するピンポイントの
有効打は、まだまだ打ちにくそうな感じです。

ではどうやって有効打を打つか。

折を見ての指導というのも有効だと思います。
健康保険など公的サービスでの予防的処置・健診メニューの拡充も大事です。

しかし現実問題として一番手っ取り早いのは、有?病者受療率の上昇

現在はなんと、1%程しかありません。

(厚労省統計(PDF)p12下段折れ線グラフ黄線 および p16下段棒グラフ左側)

これを8割程度に持っていければ、このゾーンに施設として介入するのに
非常に効果的なのはまちがいありません。
それに対する最大の阻害要因であり、一番変えなければいけないところは

「歯医者は痛くなってから行くところ」

という国民感情そのものです。じつは

◇ 痛くなく優しい先生がいい
◇ 回数がすぐ終わる先生がいい

というのは「歯医者は~」の傍証であり

◇ 上手な先生がいい

というのは、さらに上の2つの◇を別の表現で現した同じ意味に他なりません。
つまり、根本のベースに

『歯医者には基本的に行きたくない』

というのがあるということです。

これは、歯医者に、医者と同じようなこと(治療中心主義)を要求しているからです。
しかし、こちらの表(Click)で述べたとおり、歯科は医科一般と真逆の性質です。

なぜ私たちは「歯医者は~」と、歯医者に医者と同じことを要求してしまうのか。
その無意識の洗脳?の根源には、法制度的な制約が大きな障害として存在するからです。

① 皆保険
 △ 国民は全員保険証を持たされるので、保険外の医院の方針に納得できない
 △ 保険医登録しない医院には誰も来ないので、医院が保険の制約に縛られる

② 有病制限
 △ 一旦悪く(むし歯・歯周病など)ならないと保険が使えない

③ 資格制限
 △ (歯を削る)歯科医師しか開業できない/独立業務できない

 
これらの①~③の制約があるので、どうしても初回は「悪くなった人」が
「削る」とか「治療」のためにヤラれざるを得ない形になっています。

歯科医院でも、どうしても「初回は有病者への治療から入る」という構えを
取らざるを得なく
なります。

両者ともこのような感じになってしまいますので、必然的に、どうしても
「自覚症状優先」「病気(=歯科疾患)治療目的」のためにでないと
歯科医院に行きづらい、という流れを固定化しやすいのです。

今現在が有病か否かににかかわらず、受療率を8割程度まで持っていくことが
◆19M~31M ◆小3・4~高3 の危険ゾーンへの介入に有効だ、と先に言いました。

しかし、①皆保険 ②有病制限 ③資格制限 などの制限を残したままだと、
患者様や先生の両者の意識が「自覚症状」「疾患治療」に誘導されてしまいます。
当然ながら

 「痛くならないと行かない」⇒「受療率1%」

の悪循環は何ら改善されません。
そこで、その逆を取って

「未病主義」

「資格規制緩和・権限委譲」

を進めることこそが有効なソリューションになると、私は思うのです。
そのキモとしては、すでに先進国では当たり前ですが、歯科衛生士が

 歯科医師の指示・監督から独立して業務可能
 「局所麻酔」「X線スイッチ」「管理者(分院長)」「開設者(開業)」

くらいは、せ め て できるようにすることです。
そうすると、一般レベルの認識も

[1] (②の別表現なので略)
[2] 初診で「病気」「治療」でなくても、保険(or格安クーポン等)で安心
[3] 歯科衛生士が相手なら、痛いことをされないので安心
[3´] 歯医者に若い女性が激増するので、男性陣もマメに通う気が起こる
[3″] 歯医者に若い女性が激増するので、女性陣も合間の雑談がより楽しみ

になります。
一般レベルから見ても、歯科医院の立ち居地が、根本的に激変すると思います。
きっと、国民受療率を大幅に押し上げること、間違いありません。

その意味で、ひとつ非常に意義のあるニュース(恐ろしい写真をClick)がありました。



(「痛いニュース」より抜粋)

「・・・男性衛生士 orz 」「歯医者終了」「俺たちの最後の楽園が」
まさに悲鳴にも似たネット上の反響が印象的なニュースです。

しかしこのニュースで、そこは全く本質ではありません。
コレのキモは「『 直 接 』 の 文 言 の 削 除 要 請 」です。

現在、歯科衛生士はまだ、歯科医師の『直接』の仔細な指示がないと、
何もできないことになっています。先進諸国に比べると、

何と厚かましい「マイクロマネジメント」

なのでしょう。歯科医学的根拠ゼロだし。

 まぁ、はっきりいって忙しい医院はそれどころではないので、形骸化
 しているところも少なくないのが実態ですが(ウチは割と暇)・・・

もうひとつ、歯科衛生士が初診を含め独立して臨床を行えるようになると
大きく変わる点があります。

それは、先ほども言ったように、歯科医院が
「治療をされない」「痛いことをされない」場所になる
ということです。
歯科医院の立ち居地が、根本的に激変する、とは、そういうことです。

歯科衛生士が前面に立って、必要のあるときのみ歯科医師に指示を出す
くらいの形であれば、患者様にとっては精神的敷居がきわめて低くなります。

◆19M~31M ◆小3・4~高3 の危険ゾーンへの有効な対処には、受療率の
ケタを2つ上げるくらいの徹底的な努力
が不可欠です。

そのためにも『歯科医院』というシステムやイメージの抜本的な改善なくして
事態は前に進まない
と思います。

法的な整備もそうでしょうし、既存メディアによる 正 確 な 広報も必要でしょう。

(おまけ)

「抜本的改革」「規制緩和」

一般的には、これらの用語は経済学でいう「インフレ対策(デフレ促進)」
のソリューションの意味で用いられます。
最近成立した三党合意『消費増税(するか後で考える)法案』の附帯条項18条が
いみじくも示すような、長期デフレ不況の現状では、このような
「インフレ対策(デフレ促進)」の匂いのする単語の使用は少々気がひけます。

しかし、ベースとしての受療率に最大80~100倍程度のレバレッジが期待できること
(この受療率の掘り起こしがないと、単なるデフレ促進になってしまいます)、
社会保障費の中でも、年金・子供手当のような所得移転と異なり、
医療費・介護費は、エコポイントと同様に消費刺激や内需・GDP拡大として働くこと
(逆の例が小泉改革での[本人2割⇒3割][マイナス改定]による緊縮財政)
(主として女性ですが)圧倒的な雇用創出、関連産業(医院、専門学校、材料屋etc)
の需要拡大を生むこと、などから考えても、まさに今のデフレ期にふさわしい、お口の

「強靭化計画」

と呼ぶにふさわしいものだと思います。

もうひとついっておきます。
そんな「バラマキ(←所得移転と内需くらい区別しろ!)は悪」とか「ムダ削減」とか
このデフレ期にまだ「インフレ対策(デフレ促進)」を喧伝している意味不明の御仁が
新聞TV等でも後を絶たないので、一応概算ですが予算的なことをさらっと。
医療費には昔から

3X8=24(さんぱにじゅうし) の法則??

というものがあり、国民医療費がだいたい30兆、歯科医療費はその8%で2兆4千億
と、ほぼ決まっています。
最近は医科医療費と薬価が伸びていて少し増えていますが、全体としては大きく
変わっていません。とくに歯科はほぼ完全な横ばいです。

ちなみに歯科の場合はその半分の約1兆2千億が入れ歯・差し歯・銀歯などの修復で、
残り半分が外科、歯周病、他などとなっています。

ここで、誰かの真似をして「口腔de強靭化プランww」とか適当に作ってみます。

「国民全員に毎年1人当たり年間1万円、歯科検診のために補助をしよう」
と決めたとします。
内容は、年2~3回程度の健診・清掃と、4歳~14歳にフッ素塗布・洗口とします。
全国民なので1億2千万人とします(計算上0歳から10●歳まで全員としています)。
国庫補助は1万円、国民負担は0~数千円程度で、別途考えます。
すると、これがちょうど1兆2千億(1.2兆)円なのです。

ついでにオプションで「毎年全国民の8歳児を矯正診断して、問題があれば
一期治療(簡易矯正レベル)の補助を行おう」というのも決めたとします。
8歳児の人口を100万人、一期治療が30万円、治療必要児の割合を50%とします。
すると、100万かける30万÷2で1500億(0.15兆)円なのです。 

これらを、非常にざっくりと、図にまとめてみます。

しかも、この計算では生まれたての0歳から大往生間際の10●歳まで、全員含めて
いるので、国民予防の実数はこの試算よりも数割程度少なくなることは明らかです。

さらに、残り半分の中には、初診再診料や、不定期の軽度歯周病(患者様の自主的健診?)
あるいは、実際の外科・その他の内容も数割近く含まれているので、それぞれを
半々程度(ピンク)(グリーン)とします。

そうすると、方向性としては、図の様に「入れ歯・差し歯・銀歯」の分の6~7割
程度を振り向けると十分実現可能なプランです。

なお、大変申し訳ないのですが、将来的な方向性として、補綴(入ry)の負担率上昇と
点数倍増を打ち出さざるを得ないのは

◇「アメとムチ効果」
◇「事前的モラルハザード防止」

の観点からの政策誘導上、致し方ないものと考えています。

設備面ではどうでしょうか?
左側の「国民予防」だけ考えて見ます。
患者(顧客)管理・メンテナンス業務なので、すべて衛生士に任せるとします。

日本の歯科医院の数を8万軒、診療日を年間250日とします。
一医院に年間のべ1500人訪れると、1500人かける8万軒=1億2千万人。
全日本人が1回づつ歯科医院を訪れた計算になります。
2(3)回づつ訪れたら一医院に3000(4500)人。250日で割ると1日12(18)人
手の遅い衛生士、ていねいな衛生士もいるので、1日12(18)人を2人で診るとします。
すると『常勤計算で』8万軒かける2人で、16万人の衛生士が必要になります。
おおむね現状の倍です。不足8万人の大幅な雇用創出、女性の社会進出になります。
米韓FTAで、アメリカは韓国の雇用を7万人も奪ったと言われていますが、それ以上ですw

一方、歯科医師は右側の、質の高い「矯正・外科・保存・補綴」に専念する形になります。
せめて1コマ1時間とって、きっちり良い仕事をしたいですね。
インプラントも、もう数十年は残るでしょう。
どうしても、母集団が多ければ、様々な要因で齲蝕感受性の高い一部の症例も残るでしょう。

 ここが読めないのです。

 むし歯・歯周病がほぼ壊滅すれば、次世代の一般歯科医師はほぼ不要になるでしょう。
 感受性の高い一部の症例が少し多めに残れば、今ほどではなくても、ある程度人数が
 必要になるでしょう。

しかし真に国民の口腔の健康を思うのなら、当座は、歯科医師は、治療者のポジションから
統括管理者・マネージャーのポジションに、ゆるやかに移行せざるを得ないかと考えます。

【今回のまとめ】

歯科口腔保険法、医療推進方策検討WGなど、予防系の流れが若干見えてきた。ここで●●強靭化を!

06:12 | nemoto | 知っていますか?「歯科口腔保険法」と●●de強靭化 はコメントを受け付けていません
2012/06/30

こんにちは。根本齒科室の根本です。

更新が遅れてすみません。心身ともにそれどころではなかったんです。
じつは非常に恥ずかしいことに、通風(Gout)になってしまいました。

開業以来このかた、毎晩の晩酌が手放せなく、
しかも「記憶がなくならないと酒を飲んだ気がしない」という悪い癖があり
「○○を○合」などというチマイ行為では我慢ならない性分で『した』w

よって尿酸値も年々1づつ上がり、昨年などは10.6程度あったので、
いつ爆発してもおかしくない状態ではありました。

さすがに健康診断で先生に怒られてから、最近は晩酌を『2日に1度位』に
減らしたので、大丈夫だろうと思っていました。

先日、地元歯科医師会の会合があり、その席でビールを結構飲んでしまいました。
(やばい)途中であわてて芋焼酎に切り替えたけど、酒量自体はかなり行きました。
しかも「下っ端の特典」余った寿司を大量にパックに詰めて持ち帰りました。

さらに、翌日にも、つい油断して、缶酎杯を2リットルほど飲んぢまっただもんでorz

左足の親指が痛くて、真夜中に目が覚めました。
寝違えたのだろうか?親指の付け根は真っ赤、突き指の強烈版のような感じです。
左足の甲はパンパンに脹れ上がって、右足と比べると別の人の足のようでした。

どうも、突き指にしては状況証拠が不自然です。
先般しこたま呑んだ酒のことを思い出したら、尿酸値のことも気になります。

深夜なのにごそごそと、一応ネットで通風を検索して見てみました。
・・・悔しいぐらいにビンゴでした。

翌日が休診日で命拾いしました。

その後は何もしないのに痛すぎて痛すぎて、全く寝付けませんでした。
例えると、まるで、あたかも骨折の断面同士をゴリゴリこすり合わせているような
全くとんでもない激痛なのです。
無理やり寝ても、足の指が激痛で苦しむ夢を見て、すぐ目が覚めてしまいます。

ほとんど一睡もしないうちに、窓の外で雀がチュンチュン鳴き出しました。
(とりあえず職場にロキソニン(痛み止め)があるはずだ。背に腹は変えられない)

爽やかな朝日の中、一念発起して、歩2分の(はずの)医院に向かうことにしました。

しかし痛すぎて立てません。立つだけで指の血圧が上がり、指が爆発するような感じです。
這いずるようにバスタブにたどり着き、左足だけ5分ほど冷やしました。
ほとんど焼け石に水でしたが、さらに5分かかって、ようやく靴を履くことができました。

1歩左足を進めるごとに、この世の終わりのような強烈な痛みが全身を走ります。
脂汗をたらしながら這々の体で医院にたどり着いたときには、10分以上かかっていました。
時速1キロ以下ということになります。

這いつくばるようにしてロキソニンを2錠服用して、そのまま医局で伸びてしまいました。

痛すぎてゆらぐ意識の中で、ふと思いつきました
最近気をつけていたのに、なぜこんなことになったのだろう。
だいたい平均的に、飲む日と飲まない日を半々くらいにしていたので
大丈夫かなあと思っていたのですが。

それで、さる某スジの方から、ちょっと珍しいのですが、『光線治療器』
という、火花のスパークの光で治癒力を促進する機械をお借りする機会を得て
割合早めにある程度の緩解を見ました。

 バチバチッ!! ブイ~ン!!

これもこれで、スパークとかすごい豪快なものなんですが、やってみた実感としては
「温熱療法」「遠赤ry」に近いような気がしました。

上の図で、「まだ火花」の状態で足をあぶっているのが、写真です。これで10~15分です。

理屈では、電極の炭素棒(これで儲けてるような気がガガガ)のスパークの色を微妙に変えて
その色のちがいによって対応臓器や疾患が異なる、ということのようです・・・
専門外なので、それ以上のことは分かりません。

最近やっと生き返り、何とかこうしてコラムを書く気力が戻ってきた次第です。

話を戻します。

そのときは痛過ぎてちょっと納得行かないし、休診日だし、いろいろ不満や疑問も尽きませんでした。
とくに、飲酒の件についてはちょっと複雑なものがありました。。。

そこでExcelで「1on1(二項係数ごっこ)」というのを作ってみました。

以下ルール。

 スタート時点の点はゼロ。プレイヤーの人数は仮に10人とします。
 1回経つごとに、確率5割でプラス1またはマイナス1の得点を与えます。
 これを多数回くり返し、その得点の合計を見ていく。ただそれだけです。

数式は[=前項+2*ROUND(RAND(),0)-1]としました。
2*ROUND(RAND(),0)-1の部分は、1と-1を半々の確率で出す関数式。
グラフ化してビックリ!恐ろしいことになりました。

これは一見、確率50%でプラス1またはマイナス1の得点の累積なので理論上期待値ゼロ。
やればやるほどトントンで値はゼロに近づいていく気が何となくしますが。。。

とんでもない!

1000回、5000回と回数を重ねれば重ねるほど、どんどん乱高下しながら
ゼロから離れる方、離れる方に発散していくのです。
しかも恐ろしいことに、上の方に発散するとどんどん浮き上がっていく一方で、
下のほうに沈んでいくと、乱高下を重ねながらもどんどん沈む一方です。

全てではありませんが、ほとんどがそんな感じです。
とても期待値ゼロには見えません。

プレーヤー10人で行うと、ごく一部ゼロ近傍を行ったりきたりするものもあるものの
多くは、乱高下しながらまるで糸の切れたタコのように発散していきます。

ためしにに1000回で試行すると、一番上に浮いたものと一番下に沈んだものの差が
目分量で100を少し超えます。
ということは、ポイント数的には試行回数の1割程度の分散になりそうです。
試行回数100回なら10ポイント、1万回なら1000ポイント程度・・・

このゲームは乱数関数の rand() を使っているので、[F9]を連打したり
計算しなおしたりすると、次々に値やグラフも変わっていく感じです。
やや煩雑ですが、とりあえず3回試行したグラフのスクリーンショットを
実際にご覧いただければ分かると思います。
下のサムネイルをクリックすると別窓で開きます。



実際のExcelファイルはこちらです。右栗で落としてみてください。

グラフを見ると、何だか先物やデリバティブのような激しい”値”動きです。
そりゃAIJも失敗するというものです。
とても理論期待値ゼロの動きには見えません。

ここから分かる教訓は、1歩進むか1歩退くかの積み重ね程度のレベルでは、
他に何の制約もないのに、人によってはどんどん進み、人によってはどんどん落ちる
ということです。

これは、-1と0と1を3分の1づつ均等に出して(期待値ゼロ)も、大体同じような結果です。



・・・

「3歩進んで2歩下がる」


という歌詞の歌が昔ありましたね。ためしに同じことをやってみますね。

数式は[=前項+2*ROUND(RAND()*1.25,0)-1]です。
これは、「0が4割で2が6割出るようにしたもの」から1を引いているので
ランダムに「-1が4割で1が6割出る」形になります。

とりあえず3回試行したグラフのスクリーンショットをまた貼ります。
Excelファイルは先ほど(前掲)のファイルの別ワークシートになります。



・・・
ウン、これは(・∀・)イイ!

何度か[F9]を押していただければ分かるように、1000回試行後の値が
おおむね150~250になっていますね。
理論上の期待値が0.2なので、1000回後の予想平均値は200ですが、
分散の幅が約100なので、おおむね100~300の間に落ち着きます。
一番沈んでいる人でも一応安定してプラスで、取りこぼしは全くありません。

 「3歩進んで2歩下がる」という歌は、同じ努力しても下に発散して沈んだ人が
 上に浮かび上がるには、絶妙の按配なのかもしれない。
 水前寺清子、隅に置けないですね。

たとえば、芸事を職業にしている人だと、「●日休むと▲▲」のような戒めをよく言う。
そこまでぎっちり行かなくても歯科の場合は全然構わないと思います。

ただ、今までどおりの、歯に気を使わない食習慣や生活習慣は、やはり
歯にマイナスの影響をおよぼします。

逆に、寝る前に、ちょっとすみずみまでみがいてみたり、甘いものを多めに食べた後は
1日3度以外のタイミングでも歯をみがいてみたり、キシリトールガムを多目にかんでみたり
そんな、歯にやさしい1日を送れば、当然ですが歯にプラスの影響を及ぼします。

こう考えると、なかなか自分では「歯にとってプラスマイナスゼロ」という
都合の良い一日を感じたり過ごしたりすることはむずかしいものがあります。

そこで、5日のうち3日以上とか、1週間なら4日以上(これだと理論期待値は1/7≒0.14)
は、歯にやさしい1日にしてあげてください。

くり返します。(hタグがあることを発見してしまった・・・)何事も、

『半々』で安心してると危険です。

【今回のまとめ】

『半々』は、本当は恐ろしい。確実なプラスの結果を期待するには、1回多く頑張るだけでよい。
 *今回使用した単語「分散」は、統計学的なvariance V(X) の意味ではありません。

11:54 | nemoto | 通風になっちまった・・・ら気がついたこと はコメントを受け付けていません
2012/06/11

こんにちは。根本齒科室の根本です。

(三笠宮)寬仁親王殿下におかれましては、6月6日のご薨去に接し、謹んで
哀悼の意を申し上げます。

お隠れの前はさまざまなエピソードも残され、皇族方でも印象深いお一方でした。
庶民のひとりとして、さぞやお疲れのこととご案じ申し上げます。
ぜひごゆっくりお休み遊ばれますよう奉じます。

・・・

そんなことを考えていたら、以前ニートをやっていた頃、死後の世界について
結構突きつめて考えていたことを思い出しました。
もう10年以上前のことです。
人間、『職』を持つことは非常に大事です。ニートでは、心も萎びてしまいます。

いろいろな宗教や霊能者、スピリチュアリスト等が様々な見解を述べています。
結構目からうろこ的な視点もありました。

その結果、最大公約数的なところを取って、少なくとも現在の日本では
おおむねこのようなパターンだろうという「あの世のシステム」的なところが
あるんだな、と当時なりに思ったことも思い出しました。

ふと思いました。

「死んだらむし歯や入れ歯はどうなるのだろう」
そうだ、殿下の歯を確認してみよう(どうしてそうなる?)

こちらは2枚のご生前のお写真です。

右側は3年前の2009年に撮影されたものです。左側は報道写真ですが不明です。

そして、口角部を拡大した物がこちら。

一見して上唇小帯のテンションが高めで、前歯部唇側はきゅうくつそうです。
お手入れにはなかなかのご面倒があったのではとお察しします。

そして、左側の#12(右上2番)を見ますと、他の歯と色がちがいます。
左側のお写真は、殿下にしては珍しい、下顎の歯列が写りこんだものです。
そしてその色は#12(右上2番)と同じ、少し暗い感じです。
もともと下顎は上顎に比べてワンランク暗めの色が自然なのですが
それにしても上顎の他の歯とは、明らかに色調が異なります。
また、神経を取ると、歯の色は長期的に少し暗い感じになるので
#12(右上2番)は、神経の処置をなさった後なのかもしれません。

これに比べて、右側の歯は、全体的に明るい色調と形態が揃っています。
かなり大がかりな治療をなされたのではと推察されます。

あくまでも限定的な情報ですが、これらから察するに、右側のお写真の方が
後に撮影されたもので、左側の時期から、さらに全体的な歯の治療をなさって
揃っているのでは、と推察されます。

つまり、ご生前は、歯の治療でかなりご苦労があったのでは、と案じられます。

さて、そこで冒頭の問いに移ります。


【 問 】死んだらむし歯はどうなるの?

【 答 】自動的に治ると思います。

以下は、完全な個人的仮説です。

唯物論のマルクスは「死んだら灰になって、おしまい」と喝破したそうですが
それではあまりにも夢がないので、ひとまず置いておきます。

生きている/死んでいるということは?
どういう「システム」?
天国?地獄?普通の感じ?

あくまでも私感ですが、大雑把に「システム」を推察すると

 ゴール(悟り)ゴール
  ↑      ↑
 現世→死亡→あの世(反省・目標再設定)→[記憶消失]→来世(この世)→
     ↓   ↑
    地獄→改心

こんな感じです(以下、勝手な仮説が続きます)。

◆ 死ぬということ

あの世は物質を介在しない世界です。
物質を介在しないということは当然肉体も介在しない世界です。

本人の脳内イメージがすべて?なので、死ぬとある程度若返るらしい。
つまり、自分の一番イメージが強い年代とか、一番イケてると思える時代に
なるようです。

 ここで、(小さい子供が亡くなった場合は、どうなのだろう)という
 素朴な疑問があります。
 彼らは大人になってしまうのだろうか?子供のままなのだろうか?

 分からないのでひとまずマルクスと一緒に置いておきます。

要は、イメージやエネルギー(現世の物理学的には正しい表現ではない)の世界
だということです。
そこでは、最大公約数的に、少なくとも以下の3点が可能なようです。

カツ丼が食べたい、と思うと瞬時に目の前に現れる
②行きたいと思ったところに瞬間移動できる
③問わず語りに考えが伝わるダダ漏れ状態

一見、何とも都合がよさそうな世界です。

◆ 推察の推察

この説でいくと、歯ももちろん一番都合の良い感じに回復しているのは当然です。
当然あの世には「入れ歯」「銀歯」なんて憎らしい物があるはずがありません。
全員が全員、上下顎とも7-7まで有髄の天然歯で揃っているに決まっています。

殿下も今頃は煩わしい歯のお悩みからすっかり解放されておいでのことでしょう。
ところで、ひとつの大きな疑問がわきます。

「そもそも歯を使う場面があるのだろうか?」

①カツ丼

食べたいと思うと瞬時に出てくる、ということはすべてイメージの世界。
「自分自身」すらも魂だけ、つまりイメージの産物なわけです。
当然、食べなくても飢え死に(二重に死ぬ?)しないということになる。

察するに、彼らは、普段は必要ないので食事はしていないと思われます。
当然、歯の使用頻度は劇的に減る、あるいは「なくなる」と思われます。

また、これらから帰納的に衣食住も「イメージの産物」なので、思えばそうなる。
つまり、働く必要がないわけです。
経済活動全般が完全に否定される。雇用も、賃金も、デフレもインフレも無い。

現在の日本では日銀があの体たらくですが、金融政策が必要ないということですね。
まさに現総裁にはぴったりの世界なのではないでしょうかwww


人間、『職』を持つことは非常に大事です。ニートでは、心も萎びてしまいます。

最初に、私はそう言いました。
コレ自体が、とても現世的な考えなんですね。

②瞬間移動

また、あちらではどうも、どこでもドアのように、瞬間的にどこにでも
思ったところに移動できるようです。

衣食住どころか、自分自身すらイメージの産物ということは、物理学的な
時空、質量、ポテンシャルなどの概念が無いことを示しています。

これは、移動手段(自動車も自転車も鉄道も)が不要ということです。
もちろん工業・産業の否定でもあります。
内需拡大も遅刻もない。運賃なども当然ない。

相対性理論などを考えると、時間の観念が否定される世界だともいえます。

③考えが伝わる

ということは、作り笑いしたり、気持ちを隠したりする必要がなくなるわけです。
自然に、似たような思いの「人」たちが仲良くなりがちだとのことです。

そりゃ、隠し事のないガチの人間(?)関係しか存在しないのですから、
似たもの同志しか集まれないのも当然です。

すすんで、この点から、「言語・音声会話の否定」という結論も導かれます。

 A) 読む(in)・書く(out)~時間超越的(2章を先に読む、清書・推敲など)、演繹的
 B) 聞く(in)・話す(out)~シーケンシャル・タイムライン・即興的

言語を取り扱うときには、上記のように質の異なる「読む(in)・書く(out)」と
「聞く(in)・話す(out)」の2種類の体系があります。

英語などの外国語を学ぼうとすると、まずB「聞く(in)・話す(out)」のことが
頭に浮かぶものです。
しかし自国語(日本語)で考えてみると、Bは教わらなくても何とかなる一方
A「読む(in)・書く(out)」の方は、学校で習わないと習得できません。
そのかわり、Bには当意即妙が要求されるのでジャズ的、Aは推敲や読み飛ばしが
可能なので、クラシック的、ともいえると思います。

B「聞く(in)・話す(out)」は、完全にあちらでは要らなくなりますね。

そのかわり、総括や目標再設定など、理詰めの考察は必要かと思われるので、
A「読む(in)・書く(out)」はやはり必要だと思います。

しかし、お互いダダ漏れなので、コミュ力()やウソは全く不要になります。

ということは、腹芸や利害調整も必要ないので、政治も不要になります。
言語が不要ということは、民族性のなかでも偏狭で排外的な部分が
ゆるやかに否定されるということです。
また、「国家」「制度」など「政治」的枠組も不要になるので否定されます。

以上、①カツ丼②瞬間移動③考えが伝わる についておおまかに考えてみました。
ここまでエビデンスを軽視して文章を書くというのも、どうかとは思いますが。。

昔の宗教者は、このようなものを「天国」とか「極楽浄土」と呼んで、
良いことをするとこう生まれ変われる(ので当院をよろしくお願いいたします)
などと営業活動を行っていたのかもしれません。

たしかに、地獄はイヤだと思います。絵を見ても痛そうだし。鬼ガチムチだし

しかし、これは、果たしてこの世の私たちにとって天国と呼べるのでしょうか?

◆ 生きるということ

①カツ丼 ②瞬間移動 ③考えが伝わる の3つについて共通の特徴は

経済活動がない
社会活動がない

生きてる間は、食べないと死ぬので、努力して収入を得て、対価とします。
このような労働や消費を通じて、人は社会人として成熟していきます。

遅刻しないように気をつけることも、自分を律するひとつの方法です。
道路・鉄道・乗り物などの社会インフラの整備も、重要です。とくに


 A) 震災復興、国土強靭化・耐震化
 B) デフレ脱却(一翼は金融緩和。もう一翼は財政政策)
 C) 自然災害多発国としてのメンテナンス

に対して真剣に考えることは、Attitudeとか責任感の面を鍛えられます。
たとえば、震災や竜巻などでは等しく物理的に大きな被害を受け、
被災地に援助に出向くのに時間的、インフラ的な障害が生ずるわけです。

これらを我が身に置き換えて真剣に考え、行動することは、必ずや
人間的な成長に資する
と考えられます。

またこの世では肉体も物質の一部ですので物理法則に縛られています。

災害が無くても、離れて暮らして、お互いに相手を思ったりすること、
苦労して遠くの大学などに通って学ぶこと、あるいは働きながら学ぶこと、
遅刻しないように早起きすること、時間を守る努力をすること。

これらが、生活上も、社会通念上も、心身の成長の面でも、有用です。

しかし残念ながら、あの世では、この様な学びの機会、成長の機会が
失われることが容易に推察されます。

また、隠し事やウソというのが、いかにこの世的なものかが分かります。
「お天道様は見ている」「閻魔様にはお見通し」
昔の人はうまいことを言うものですが、アチラでは全員がお互いにお見通し!

全員が全員の考えが伝わってしまうのなら、似たもの同志が自然に集まる
に決まっています。

この世では、当然ですが、デフォルトでは相手に情報は伝わりません。

能動的に努力して伝達したり、言語を学んだりPCやスマホをいじってみたり、
面接に際して服装頭髪に気をつけてみたり、「話し方教室」に通ってみたり
そんなこんなで、はじめて誤解なく伝わるのがコミュニケーションです。

また、自分の気が合う人だけでなく、ときには合わない人とも話をする
必要があります。

これらの努力も当然、心身の成長や社会生活に欠かせないことでもあります。
他人や、ときには自分自身の隠し事やウソに葛藤したり傷ついたりすることも
過剰なトラウマは別として、適度なレベルであれば成長の糧ともいえるのではないでしょうか。

しかし、あの世では全員が全員お互いに「閻魔様にはお見通し」では、
コミュニケーション方面の成長の機会は全くと言っていいほどないですね。

反面、アチラの世界は、お互いに隠し事が効かない世界ということなので、
本音の考えの部分での緊張感で、そちらは鍛えられるような気もします。

◆ 「命あってこそ」の正しい意味

こう見ると、過去の宗教家が「天国」「極楽浄土」と言っていた世界とは
現世的な人々にとっては辛抱たまらない地獄なのかもしれません。

少なくとも、現在の私は、いきなりそんなところに放り込まれるのは嫌です。
もっと食べたい料理もあるし、もっと行きたい場所もあるし、
まだまだ修行が足りないのは当然ですが、未練のほうも十分あります。

現世や来世であるこの世は、ひとつの修行ステージなのかもしれない。
いくつかの道場があって、それが国とか地域なのかもしれない。

と考えると、日本はかなり”修行しやすい道場”、”由緒ある道場”
ということになりそうです。ゲームにたとえるとかなりイージーモード?!
いっぽう、恐縮ですが、たとえば「イラク」「アフガニスタン」などは、
ゲームにたとえるとかなりハードモード、いわば”練習しにくい道場”
なのは否めないかと思います。

私も小さい頃に、剣道の道場に通っていたことがあります。
そこでは稽古の終わりには、みんなでぞうきんがけをするのが日課でした。
「みんなでみんなのために」剣道だけでなく、プチ大事な考えも学びました。

“修行しやすい道場”、”由緒ある道場”、”イージーモード” な大切な日本を
後々利用する次世代の日本人のためにも大事にしていきたいと思います。

追記 2012/6/11
今、ふと気がつきました。合ってるかは分かりません。

①金を出さないと物を食べられない
②瞬間移動できない
③黙っていると情報が伝わらない

という制約の中で、人は自分の何を伸ばすべきか or 何が良く伸びそうか、ですが、
今まで書いた内容から考えると、もっとも妥当で合理的な方向性は

『 利 他 の 心 を大事にすること』
『自分的 な 苦 手 分 野 の克服』

なのかもしれません。

◆ 命と「歯」について

生きている間は、特殊な進行性の難治疾患にでもならない限り、一般的な肉体は
自然治癒力で回復します。
医療の主な役割は、その治癒力を最大限に引き出すことです。

また、その回復度合いは、健康状態や精神状態にも大きくかかわります。
すべてではないが、かなりの部分が「気の持ちよう」に少なからず影響されます

すると、一病息災や怪我の功名という言葉がいみじくも示すように
軽度、ないしは一過性の疾患は、生きる力や意思の喚起と大きな関連がありそうです。

しかし、歯が現状のような形で人間の肉体に存在する意味は?
そして、むし歯菌や歯周病菌が存在する意味は??

歯には

 自然治癒しない(毀損したら終わり)
 予防可能である(未然に回避可能)

という、一般の医科とは真逆の大きな特徴があります。

しかし、「歯」がこういう特徴を持つとは、今まで思われてきませんでした。
むしろ逆で

 自然治癒する(痛くなければ終わり)(フタをすれば終わり)
 予防できない(誰でも自然に悪化)(老化現象の一種)

とすら思われていたフシがあります。

歯は「歯を同じく」など、”釜” 同様に、しばしば “食事” の意味で使われてきました。

① 昔は今よりもだいぶ寿命が短く、大きく悪化する前に亡くなっていたので
  重要視される機会も少なかった、という点もあるのかもしれませんが

② 宗教的に(あるいは霊的に?!)歯はあまり重要な臓器とはされてこなかった
  のかもしれません。

放置するとどんどん悪化して喪失する
一旦悪化したら自然治癒・再生しない
しかし放置しないで予防すれば悪化しない

その意味では、歯は、人生の年輪とか、人生のレコードという面も持つのでしょう。
再生の利かないものに対して、今までどのように接して対処してきたのでしょうか。
マメであったのか、扱いが粗末だったのか、他人任せだったのか・・・

つい最近までは、悪くなると抜いてブリッジ、抜いて入れ歯などが横行。
今でも「抜けてしまっても『仕方ない』。インプラントもあるし大丈夫」などと、

 歯に対する扱いが粗末だったり、
 自然治癒しないという重大な事実をないがしろに

した向きも決して少なくないのが現実です。

社会が成熟し、寿命が大幅に伸びたことを通じて、私たちは多くの物を得ました。
逆に、新しく

 自然治癒しない(毀損したら終わり)
 予防可能である(未然に回避可能)

もの(=「歯」)に対する管理、という過去になさそうな課題がひとつ増えました。

今までは、このような2つの性質を持つものの代表と言えば、

 皇統(男系が切れたら終わり)
 国防・安全保障(負けたら終わり)
 ロストテクノロジー(絶えたら終わり)

などのような、全体的、全国的な分野ばかりが取り沙汰されていました。
何でも、ダマスカス鋼や一部の古刀(日本刀)などは現在では再現不能だそうです。

しかし「歯」についてはきわめて個人的な分野になります。

自分のことだけを大事にして、地域や国家のことは大事にしない、という態度も
どうかと思いますが、自分のこともしっかりコントロールできないのに、周囲の

 自然治癒しない(毀損したら終わり)
 予防可能である(未然に回避可能)

のような問題に十分対処できるのか、と言われれば、それも非常に疑問を感じます。

そして、自分にも、周囲にも、良い影響を与えて高めていき、三途の川で
閻魔様に少しでもお褒めの言葉をいただけるような人生を歩んで生きたいものです。

「先づ隗より始めよ」です。

【今回のまとめ】

歯は人生の記録装置。長期的な歯の予防は、より良く生きる意味での「魂の修行」の一部。

05:12 | nemoto | 死後の世界と歯科疾患 はコメントを受け付けていません
2012/05/28

こんにちは。根本齒科室の根本です。

ところで、先日の朝、ADSLモデムが壊れました。
いつもは電源を入れなおすと収まるのですが、収まりません。

「ネットにつなぐ他の回路が無い!

昼休みの時間に直してもらおうと思って、修理依頼で113に電話したら、
修理予定時間に30分以上も遅れて電話がかかってきました。

何でも、午後の診療開始時間までに、間に合わなさそうな公算とのこと。

ちょっと残念。つまらない夜を過ごすハメになってしまいました。

以前はウィルコムのカードをなぜか持っていて、万一モデムが壊れたときに
利用したりしていたのですが。

もう一台、B5ノートがあるが、これを抱えて(無線の)ホットスポットまで行くのも
面倒だし、本末転倒。

まんじりともせずに夜を過ごしながら、ふと頭に浮かんだ単語が

「レジリエンス」です。

最近ではネットですっかり有名になってしまった京大教授の藤井聡先生の本に
「救国のレジリエンス」という本があります。
震災復興やデフレ脱却などのからみでもとてもタイムリーな内容だったので
普段読書量の少ない私も珍しく購入してみました。

藤井教授はまた、私と同い年(教授の方が53日誕生日が早い)ということもあり、
風格と頭の中身では大幅に負けていますが、何となく勝手に親近感を感じている
ところもあります。

そして、新幹線や鉄道系の交通網の話題が中心に出てくるという前評判だったので
その意味でも、とても興味を持って購入してみました。

しかし、大変残念な点がひとつだけありました。
端から端まで何度も一生懸命探したのですが、くやしいことに
「常磐線or常磐新幹線」の「じ」の字もありませんでした。
(自分で書いていて、この単語のあまりの荒唐無稽さにビックリですが)

「震災復興には今こそ常磐線ルートの強化、とりわけ新幹線が必要です。
 そのためにも、潜在的ポテンシャルの高い佐貫エリアに新駅をaqwsdefrgt・・・」

とは書いてありませんでした。残念。

とはいえ、本書を通じて、非常に面白い発想を学びました。

「地方分『散』」という概念です。

「地方分『権』」でも「地方分『断』」でもないのです。

もちろん日本ではかねてより一極集中の弊害が指摘されて久しく、また3.11後に
首都直下型地震や東海南海東南海などのリスクが状況証拠的に跳ね上がった現在は、
何らかの対策が必要だというのは、そのとおりだと思います。

そのような予防的意味で、あるいは以前流行った「改革」「規制緩和」などのインフレ対策系のノリが加味して、地方分権や道州制の議論が20年前のバブル崩壊ごろに流行り、今また同じ仕掛け人のもとで喧しくなっています。

この議論を見ていて思い返されるのが、熱海での「系統分離」と「三島妨害」です。

「系統分離」とは、電車がそこから先に行かなくなることです。
私の実家は熱海の少し先になるのですが、たまに新幹線でなく鈍行でのんびり帰ることもあります。線路沿いの街並みの雰囲気が小田原をすぎると一変し、線路も急勾配になってトンネルが激増、根府川鉄橋のような高所を超えると、ものすごい勢いでダウンヒルを始めます。

そしてスロープを下り切ると、熱海駅です。
伊東線~伊豆急行線が分岐し、昔懐かしい東急8500系がセミクロスシートになってまだまだ老体に鞭打っています。

ここで、全普通列車が止まってしまうのです(朝夕ラッシュ時を除く)。

昔は、東京発の列車は沼津行き、静岡行きが半々程度で、たまに浜松行きや伊東行きがある程度でした。本当に函南以西、とくに地元のローカル線を利用する層は不便になりました。

熱海まで乗ってきた、15両編成のグリーン車を連結した最新のE233系を降りて、案内板に驚いて、階段を使って隣のホームに移動すると、そこには吹き溜まりの様に乗り換え客で混雑しています。

散々待たされた挙句、西のほうから済まなそうにやってくるのは、名にし負う「静岡スペシャル」として悪名高いオールロングシートの211系5000番台、運が良くて313系2000番台の3~4両編成という、まことに貧相なドンガラです。
これで熱海~浜松152.5kmトイレなしということもあるのですから恐れ入ります。

かと思うと、もっともラッシュが問題になりそうな名古屋近辺に限って快適な転換クロスシート車ばかり。逆だろうと思うのですが。

何かJR東海幹部が個人的に静岡県に恨みでもあるのか??あるいは、リニア新幹線で甲府や飯田を発展させるために静岡のステイタスを下げておく企業判断なのか(それはあまりにも非民主的でもあるが)、18きっぱーに対する愛情?!なのか、判断に苦しみます。

このままでは、熱海から浜松の間が、さながら常磐線取手以北~以東のような空白地帯化しかねません。リニア予算捻出のために静岡で緊縮、という従来のアナウンスは、名古屋圏の車輌のシートを見ていると束民の立場からは全く説得力がありません。

「三島妨害」とは、箱根山の西側から妨害電波を出して、三島以西の地区で、地デジの在京キー局民放を見させないようにする措置です。

静岡地方局の保護のためということですが、これは完全に地区のニーズの真逆を行っています。

もともと三島沼津、とくに三島は、「小さい用事は沼津」「大きい用事は東京」というのが基本であり、住民の目は完全に東を向いています。私も幼少の頃、剣道部の試合を除いては、電車で静岡に行ったことは一度もありませんでした。
また、前市長の小池政臣氏の時代に「東京都三島区」のコンセプトで、ひかり号停車の2時間1本への増加を祝ったのも記憶に新しいところでもあります。北口の開発も順調に進み、あの地域ではかなり勢いを感じます。

ですから多くの市民は、在京5局の民放を見られるケーブルテレビに当然の様に加入していました。それが、強引ともいえる地デジ化と三島妨害により、多くの市民、とくにネットに遠い中高年にとってテレビの楽しみは半減してしまったと聞きます。

「系統分離」「三島妨害」

直接地方分権の議論とは関係ありませんが、とりわけ従来型の、中央 vs 地方 の権力闘争の延長での分権化、道州制を進めると、境界域を中心に、このような分『断』にまつわる問題が多発するのではと憂慮します。
また、歴史的に、現在提唱されているような道州の範囲で区切って行政を行ってきた伝統が、今の日本にありません。思い当たるのは、藩とか、旧県などの規模のものばかりです。その意味からも、行政学的にも少なからぬ疑義を感じます

それよりは、中央 & 地方 をタッグと考え、まず複数の基幹交通網ネットワークを構築することによって国土全体が災害等に対処しやすい多重的な脈管系を整備し、局所災害の対応に効果的に対応する冗長性(リタンダンシー)を確保しつつ、あわせて投資の分散化や耐震化などを進める。これなら分『断』問題も起きませんし、国民経済(名目GDP)の成長やデフレ脱却の惹起にも資すると思います。

しかし、つい油断してトップダウン系の情報であるテレビや新聞ばかりに偏っていると、日本は成熟社会で少子高齢化しているので、公共工事はムダで悪だとか、土建屋は談合ばかりして悪だ、族議員は利権に群がって癒着して悪だ、みたいな論調に偏り過ぎかねません。

すると、このような客観的かつ専門的な情報に接したときに、最初は非常に驚きます。

世間一般の常識と、真逆だからです。
でも、納得できると、少なくとも

 『可住面積』という単語(を使用した人)にはダマされないぞ
 正しいと信じたい情報を鵜呑みにするだけでは危険だ

ということくらいは理解できます。

この「国土分『散』化」の視点については、非常に新しい概念ですので、今後更なる細かい議論が必要だと思いますが、趣旨の骨子としては、歯科医師として大賛成です。

◆ なぜレジリエンスに歯科医師として賛成か

その理由は、「周りが一丸となって守る/助ける」という発想だからです。

◇ レジリエンス1~弾力性

まず「レジリエンス(Resilience)~靭性」というと、どうしても弾力性や柔軟性というイメージが先に出てきます。
Resilienceでグーグルの画像検索をかけると、雑草や樹木などが出てきます。

これは、歯科的にも非常に親和性の高いイメージです。

歯、とくに神経を取った失活歯(無髄歯)は、長期的に乾燥してひびに弱くなっていきます。
しかし、従来型の差し歯(メタルコア)や継続歯に多い金属製の芯材は、弾性率が低すぎる、つまり曲がらないのです。
「バネ定数」という言葉があるように、金属は曲がりやすいイメージがありますが、歯(象牙質)や骨に比べるととても硬いのです。
いっぽう象牙質はコラーゲン繊維に富み、横方向の力に対してたわむことで脆性破壊を逃れている面があります。

このような、曲がりやすくひびに弱い歯に、曲がりにくい剛体の金属製の芯棒を差し込むと、長期的にはどうしても歯の縦割れリスクが上がってきます。

歯は縦に割れると、残念ながら即抜歯の診断です。

割れ目の中の細菌感染コントロールが不可能になり、周囲骨の慢性炎症が止まらなくなるからです。

そこで、芯材の弾性率を象牙質に近似させることで、当然ながらリスクは大幅に低減します。
このときに、グラスファイバーを併用した芯材が有効なのです。

そのほか

 万一のときは自分が壊れたり抜けたりして、ショックアブソーバーになる
 天然歯に近い半透明なので、審美的にも非常に有利

という利点もあります。

 100パーセント縦破折を防ぎきるとまでは言いませんが、少なくとも、全く同じ設計下では
 メタルコアとは比較にならないほど安心であるとは確実に言えます。

また、グラスファイバーの応用としては、金属不使用による軽量化アレルギー防止の観点、そしてやはり色調の有利さからも、ブリッジの橋渡しの芯材としてもよく用いられます。

(この写真は、大昔に某海外のページから拾ってきたものを加工したものです)

またグラスファイバー製の技工物全般に言えることは、コストが安いことです。
純セラミック製に比べると、割安な価格での導入が可能です。

◇ レジリエンス2~「周りが一丸となって守る/助ける」

しかし、もうひとつの「周りが一丸となって守る/助ける」材料が歯科にはあるのです。
それが「ジルコニア(二酸化ジルコニウム)」です。

ジルコニウムは原子炉の燃料ペレットを収納する鞘の部分の素材としてもおなじみです。
それだけ基本的には信頼度の高い素材であるともいえます。

しかも、この素材は「東ソー」ほぼ一社で、世界中に供給している状態だということで、うれしいことに日本の技術力の高さの証でもあります。

私があれこれ言うのも難なので、よくまとまっているウィキペディアの文章を抜粋します。


安定化ジルコニアは、酸化物無添加ジルコニアに比べて強度、及び靭性などの機械的特性に優れる。これは、破壊の原因となる亀裂の伝播を正方晶から単斜晶への相変態によって阻害し、亀裂先端の応力集中を緩和するからである。この特異なメカニズムを「応力誘起相変態強化機構」と言い、最大で正方晶の約40%が単斜晶に変態する。また、変態を完全に抑制した完全安定化ジルコニアよりも、添加剤の量を減らしてわずかに変態出来るようにした部分安定化ジルコニアの方が機械的特性に優れることが知られている。
安定化ジルコニア(特にイットリア安定化ジルコニア (YSZ))はイオン伝導性に優れており、高温で固体電解質となり、燃料電池や酸素センサの材料として用いられる。また近年、金属に変わる差し歯やブリッジの歯科治療材料としても着目されており、需要が増えている。

簡単に言うと、「割れない」セラミックである、ということです。

その原理を大まかですが説明します。
(詳しくはこんな論文などもありますが、私には難解すぎてアブストで腹一杯ですwww)

ジルコニアの結晶は全体的に見るとこんな感じです。

ジルコニアの結晶には、m相(単斜晶の相)t相(正方晶の相)の2種類(もっと?)の形があります。

これは、ひとつの粒が、t相m相 に変わろうとしているところでしょうか。
今ひとつ英語が良く分かりません。

基本的に t相 主体のジルコニアにひびが入ると、その周りが m相 に変化(相転移)します。
ひびの先端部分も当然 m相 に変化(相転移)します。
すると(私の読解力では) m相t相 よりも体積が少し(3~5パーセント)大きいので、圧力?!でひびを埋めてしまいます。

私はジルコニアのこの図が大好きなのです。
何だか、
被災地をみんなで救いに行っているような感じが、しませんか?

普通のセラミックでは、「ばり~ん!」と、ひびが先端まで逝ってしまうのですが、ことジルコニアに関しては不思議なネットワークと相転移で、ひびを止めてしまうのです。


 ①変身(相転移)
 ②膨張(相転移)
 ③抑止
(電車ではありません)

この「周りが一丸となって」なイメージが蜂球みたいで大好きなのです。

当然、歯科でも急速にニーズを伸ばしており、現在まで陶材焼付け冠(メタボン)が主流だった、いわゆる『良い歯』の大半が、現在はジルコニアフレームに置き換わったと見ています。
また、欠損上を連結するブリッジでも、割れにくいので、適応症もどんどん広がり、現在では2歯欠損も結構可能になってきています。

さらには、人工歯根(デンタルインプラント)の本体(フィクスチャー)に、チタンの代わりに応用するメーカーも出ております。写真(白い本体)を見たときには、正直、驚きました。
何でも、骨癒着(インテグレーション)はチタンやHAより甘いものの、しっかり結合するとのこと。今後の展開次第では、前歯などの審美領域に大幅な革命をもたらすかもしれません。
(さすがに私はまだ導入の度胸はありませんが、アバットや上部なら全く問題ありません)

ただ、(とくに上顎)前歯部は骨が弱く吸収しやすいので、通法でも再生療法の併用が多い部位でもあり、その辺はネックになりそうです。

いずれにしましても、このような利点づくめのレジリエンスに富んだジルコニアですが、ひとつだけ欠点があります。

それは、単色だということです。射出ブロックなので仕方がありません。

前歯を鏡で見れば分かるように、歯の先端と付け根部分、中間部、隣との接点の部分、すべて微妙な色合いや透明度がことなります。
べた~っと単色な歯を(最終補綴物として)前歯に入れたら、それこそ仮歯のような感じになって、少なくとも私の目には不自然です。

目立たない奥歯にかぶせるならありなのかもしれませんが。

ということで、現在前歯で用いるには、ジルコニアのキャップ(コーピング)を作成して、その上に技工士が職人芸で従来型のセラミックを盛り付けして細かな仕上げをしていく形になります。

それでも、今までの金属重視の時代からしたら、概念が一変してしまいました。
まさに、『レジーム・チェンジ』、金属レジームからジルコニア(レジリエンス)レジームへと、我々は補綴設計思想そのものを変えていかないといけないのでしょう。

そして日本の歯科界では、この『レジーム・チェンジ』に対する最大の抵抗勢力が役所(厚労省)による統制であり、それを是と付託する民意(民主主義)である点が、一応皮肉ではあります。

◆ またまた最後に言います

金属レジームからジルコニアレジームへ変わらなければいけない、などと言った舌の根も乾かないうちに、またいつものお約束ですが、ひとこと。

金属レジームとジルコニアレジームの『共通点』は、何でしょう?

そう考えると、分かりますね。
『治療(と称する行為)』です。

『治療(と称する行為)』が必要になるのは、歯が悪くなるからです。
原因の大半は「むし歯」「歯周病」。
端的に、常在菌と習慣のコントロールができていないから、こういう結果になるのです。

そして、歯科疾患には医科と反対の性質がありましたね(一部慢性疾患除く)。

そうです。

◇ 予防できる(回避あり)
◇ 自然治癒しない(復旧なし)

グループBつまり「事『前』対応」=『予防』じゃないとだめなんです。

「痛くなければ、とりあえず何でもいい」
「痛くなったら、歯医者に行けばいい」

実際痛いときは仕方がありませんが、こういう後手後手の発想は、上の表のような自然の摂理に対しては、本質的に非生産的で残念な感性だと思いますが、いかがでしょうか。
私には、風車に立ち向かったドンキホーテの映像が重なって見える思いがします。

また、歯科は本質的に、そのようなドンキホーテ的な感性を助長するための仕事ではないと思います。だから、治療の新技術が開発されるたびに、嬉しいと同時に若干複雑な感情も否定できないのです。

そして、このような性質の歯科に対して、「事『後』対応」=『治療(と称する行為)』を認めるのは

このようなお口の状態をよしとすることにほかならないのです。

「でも悪くなったものは『仕方ない』じゃない」

確かに現在は、歯科の概念が大きく変わる過渡期の最中なので、それ以前に生じた問題を引きずってしまっているケースについてはそうかもしれません。
私自身を含めて、私の世代より上は、そういう方も多かろうと案じます。

しかし、それ以降の世代、未来ある子供たち、まだ生まれない未来の日本人が、この写真の様になることを、はたして『是』とすることができるでしょうか?

 “歯がダメになっても、○○があるから(ちゃんとお手入れしなくても)大丈夫だよ”

そんなことは言えない、できない、こうなって欲しくはない、と、私は思います。
そして、有効な回避の手立てはあるのですから、それを全力で邁進しなければと考えます。

だから、本当のレジームチェンジは、「予防レジーム」へのチェンジなのです。

そして日本の歯科界では、この『レジーム・チェンジ』に対する最大の抵抗勢力が役所(厚労省)による統制であり、それを是と付託する民意(民主主義)である点が、何とも皮肉ではあります。

p.s.

今回は、モデムが壊れたことによる一時的なネット遮断環境で、慣れない焦燥感と暇つぶし重視の勢いがついて、モデムが直ったとたんに、勢いで一気に仕上げました。

おかげで回線がつながったとたんに、ブラウザが下記のようなことになっています。

タブの数が通常の3割り増しですwww


ついでに勢いで、恥ずかしい曲を1曲作ってしまいました。ほとぼりがさめた頃に、おもむろに紹介しようかな・・・

【今回のまとめ】

レジリエンスとレジームチェンジを、歯科的に見ると予防中心になる&絵が多かった・・・

07:46 | nemoto | 歯科的に見る「レジリエンス」「レジーム・チェンジ」 はコメントを受け付けていません
2012/05/22

こんにちは。根本齒科室の根本です。

前回の失態に続いて、さっそく金環日食を見逃すなど、ダメ男街道一直線ですが
何とか-2SD内に復活しなければいけません。

次の皆既日食は、2035年9月2日。23年後です。私は65歳。
ごらんの皆様も、ぜひ今からこの日まで、歯を1本も失わないように頑張りましょう。
そして次こそは(は俺だけか?!)日食と美食を十分堪能しましょう。

さて今回は唐突ですが、資生堂の育毛剤「アデノバイタル」という子wwwのご紹介です。

今までコレ系を美容院で奨められて購入したことはなかったのですが、
今回はじめて購入に至りました。その経緯で思うところがあり、ちょっと書いてみます。

最近、ちらほらと白髪も気になってきたので、思い切って相談してみました。
墨田区本所からこちらに引っ越してきてから6年間、ずっとお世話になっているお店です。

根「良い白髪染めとかトリートメントはありませんかね?」

美容師さんの返事は、予想外のものだったのです。

美「やめたほうがいいですよ」
根「どうしてですか?」

◆ 驚きの展開

なぜやめた方がいいのかの理由が、気になって仕方ない。一瞬固まります。
美容師さんは、おもむろに、とんでもないことを口にしました。

美「あれ、髪の毛が緑色になるんですよ。知ってましたか?」
根「えーーっ、みっ、み・ど・り ですか?マジですか」

あまりの展開に、言葉を失いました。

・・・いやだっ!!

美「はい。最近問題になってるんですよ」
根「北海道に『まりも』ってありますよね。あんな感じですか」

ふざけて言ったつもりだったのに

美「はい、そうです」
根「えーーっ、まっ、ま・り・も ですか?マジですか」

もう私の頭の中は、 「特急『まりも(廃止)』」  「まりもっこり」 
ぐるぐる駆け巡っていて、混乱が収まりません。

何でも、ある種の白髪染めトリートメントの継続使用でとくに髪の毛が緑色になりやすく、最近も2件の相談を受けたばかりとのこと。

残念ながら、一旦緑色になってしまうと簡単に黒に戻らないのだそうです。
補色の赤系を乗せてもうまく乗らないようです。

(根本の聞いた記憶では)まずブリーチしてアッシュ系にして、それから
黒を乗せて戻す、という複雑なことになり、なかなか大変なのだそうです。

根「じゃあ、どうすればいいですか」
美「基本的には、白髪は根元から切って対応していく形になりますね」
美「あと、育毛剤がいいですよ」

根「えーーっ、いっ、育・毛・剤 ですか?マジですか」

(なぜこの俺が?家系的にも白髪系で、ハゲ系じゃないのに)
またまた、にわかには信じがたい単語に、耳を疑うほかありません。

美「根本さんはハゲではないですけど、1本1本の毛根の活性を高めることで
  白髪の予防になるんです」

正直、この段階ではまだ、美容師さんのおっしゃること「珍説?」について
全く頭の中での整理がついておらず、会話を思い出すだけで精一杯でした。

(毛根の活性・・・)このとき、ふと思い当ることがありました。

この間、自分で白髪を狙って抜いてみたら、中には、先端は白なのに
毛根側の途中から黒に復活している髪の毛がけっこうありました。
非常に複雑かつ残念な心境でした。

 この人たちを抜かなければ、また黒髪が復活してたはずなのに。
 もしかしたら、そういうことかもしれない。

 美容師のAさん(仮名)にはかれこれ6年お世話になっている。
 長く見てもらっているし、この「珍説」も率直な意見だろう。
 うん、5万までだったら、Aさんに賭けてみるか。

美容師のAさんは、説明パンフを取り出して、解説を始めます。
まるで、説明資料を取り出して患者様に歯周病の解説をする私にそっくり。

美「これは、有効成分として、えふじーえふせぶん(FGF-7)というも・・」
根「あぁFGFですね、分かります。一応医療系なので」
美「そうだ、根本さんお医者さんだったんだ、どうも失礼しました」
根「いえいえ」

(俺も結構ヤなこと言うよね。そういう意味ではダメな『歯』医者です)

根「うん、分かりました。Aさんが良いって言うんだから、買いますよ」
根「で、いくらくらいですか?10万くらいwww」
美「いやいやそんなには。6千円くらいです」
根「分かりました。OKです。じゃあ、使い方を教えてください」

案外簡単な使用法でした。また私のようなショートなら数ヶ月もつだろうとのこと。
コスパも問題なし。

ということで、その日はその子(アデノバイタル)をつれてお持ち帰りすることになりました。
そして懐の広い私は、後でアマゾンや価格.comは見なかったことにしてあげました。

自宅に帰って、スタイリッシュな彎曲のボトルを手にとってしげしげと眺めながら
いろいろ考えました。

 今日はいろいろな珍説が飛び出して、とてもびっくりしたけど
 何でこの子を連れてきたんだろう。
 まあ、白髪について質問したからいろいろ勉強になったわけだが

 ひとつには、美容師のAさんを信頼して、というのもあったけど
 もうひとつ、その場しのぎでなく長い目で髪の毛を強化していこう
 と思ったからだ。

たしかに、将来、自分の髪の毛の色が緑色になってしまったのでは、元も子もありません。
緑なら、まだまだ白の方がましかも。

 黒>>アッシュ>>白>>(越えられない壁)>>緑

しかし、こういう話は、お店の相性なども、結構重要だと思います。
仮に他の飛び込みの店などだったら、同じように白髪について質問して同じような説明や答えが返ってきたとしても、買うとかはなかったでしょう。

「正論だけでは、人は動かない」

そのとき、思いました。自分で「動いて」おいて難ですが。

◆ 何が人を動かすか

私もよく経験しますが、初めて接する正論は、まず十中八九「珍説」に聞こえます。
そして、大なり小なり混乱を引き起こすものです。
そりゃあ、「頭がまりも」と言われれば、誰だって混乱すると思いますが。

先入観の壁は、なかなか厚いものです。

(白髪染めトリートメントを使用し続けても自分に限っては緑色にならないでほしい)
(えっ育毛剤?えふじーえふ?怪しいニセ薬じゃないの?そうだ怪しいにちがいない)
何としても、科学的根拠に反した願望にすがりつきたくなるものです。

このような、根拠が無いのに自分に都合の良い願望のようなものを、一般に
「ドミナントストーリー」と呼ぶそうです。

それが良いとか悪いとかではありませんが、人の意思決定や行動選択は
客観的事実や科学的合理性よりも、このドミナントストーリーによって
主に決定されることが知られています。
また、人はある程度複雑な物事の概念を理解するのには、このような
物語形式のストーリーに仕立てて理解する必要があることも分かっています。
そして、自力でドミナントストーリーを修正していくことは、通常
認知不協和の観点からも、非常に困難であることも知られています。

ですから、ドミナントストーリーの内容が、万一誤っている場合には
混乱や矛盾を感じながらも、正しくない決定に進んでいくことになります。

◆ ドミナントストーリーが動いた

今回は、白髪染めトリートメントという、事後対処的なものから、
おすすめの育毛剤という、事前対処的なものに選択の方向が変わりました。
(ただ、効果の確率は100%ではないとは思いますが)

これは、歯科で、事後的対処である治療中心主義から、事前的対処である予防中心主義に選択の方向が変わる過程にきわめて似ています。
(ただ、効果の確率は100%ではないとは思いますが)

また、入れ歯を修理に見えた方やブリッジを覚悟してお見えの方が
インプラントを選択される過程も、かなりコレに近い感じがします。

まず、正論を聞いても、その人には十中八九「珍説」に聞こえてしまうことが、
自分の経験を通じてよくわかりました。

以下、あくまでも正論が提示された上で、という前提のもとで考えますが、

◇ 適切な説明
◇ 信頼と実績
◇ 適切な価格

という段階を踏んで、人ははじめて行動の変容に踏み切るような気がしました。

◇ 適切な説明

アデノバイタルには、お客さま用にお渡しする小さなリーフレットがあります。
これにはFGFとか細かいことは書いてありません。
情報提供には、あまり資さないと考えられます。

それ以外に、現場でお客様にご説明するための、A43枚分くらいの厚紙の媒体があります。
大きな毛根の解剖学的な断面図や、科学的・分子生物学的な有効成分の詳細な説明などの必要十分な情報が書いてあります。

これを美容師さんが紙芝居みたいに裏返したりめくったり指差ししたりして
一生懸命にミニプレゼンする
わけです。

これが、
 誠実に
 過不足なく
できると、次のステップに行きます。

◇ 信頼と実績

美「髪の毛が緑色になってしまった方から、最近2件もご相談をお受けしたんです」

これは、かなり説得力があります。
まさか担当のAさんがウソをつくとは思いませんので、やはりコレを聞くと
(最近は白髪染めトリートメントが結構問題になってるんだなぁ)
と自然に思います。

美「一旦緑色になってしまうと、じつは簡単に黒に戻らないんですよ」
根「あれっ、補色を乗せて染めたりしたら何とかならないんですか?」
美「それが、補色がうまく乗らないんですよ。すぐ戻るというか」

客の質問にも実際のケースを例に、的確に回答しています。
(経験も豊富そうだ。よくあることなんだな。この方面に明るい担当者だな)

美「(根本の聞いた記憶では)まずブリーチしてアッシュ系にして、それから
  黒を乗せて戻す、て、結局そんな複雑な感じになるんですよね」

具体的なトラブル時のリカバリー方法が(やや煩雑な手順ながら)説明されます。
(仮に万一ということがあっても、この担当者ならリカバリーも安心だ)

ここで、お客様ごとの個別に発生する疑問も解消されています。

信頼と実績もクリアして、ようやく価格に行きます。

◇ 適切な価格

ここで、ご覧の方は驚くかもしれませんが、ここまできてまだ
価格の話が出てきていない
のです。


 逆説的な話をしますが、ある説明に
乗り気でないときは、とにかく最初に
 内容についての説明がなされないうちに
 「それはいくらですか?」
 と『相手に値段を言わせてしまう』
のがよいと思います。
 どんなに相手が値段から話をそらそうと思っても、まず値段ですw

 そうすると、内容の無いものに価格をつけるということになり、イコール
 つねに「個人的な想定よりも高額」というギミックが成立可能になります。

 後は、後付の説明で何を言われても
 「なるほど、そういういい点もあるんだね」
 「でも、何分高めだね。そこまで出す価値観は、ないなぁ。すみません」
 で、セールストークをかわせます。

 相手(=内容)に、こちら(=価格)に追いつかせる形で、
 後追いの説明をさせる形になるので、立場的には買い手有利です。
 結論にはつねに「でも、何分高()」のカードがあるのです・・・

じつは、今回はわざと、Aさんに価格のことは聞かないでおきました。
ある程度導入に前向きな検討も視野に入れていたからです。
それに、最初に値段を言わせたら、Aさんも説明しにくいだろうからです。
(それはまさに、私が日常経験していることでもあるからです。)

また、内容よりもまず価格が気になってしまうと言うことは、
問題の手早い解決には関心があっても、問題の原因や周辺事情について関心が薄い、
とも言えると思います。

◆ いくらまでなら支出できるか

そこで、付加価値に対して個人としてどのくらいの価格までなら支出できそうか?

大きな課題です。もちろん個人個人の好みや経済状況によってもちがいます。
そこで、付加価値に対する適切な価格についてちょっと真面目に考えてみます。

やはり、お金持ちの方も貧しい方もいます。
こんな時こそ「合計」で考えるのがフェアです。ここでは国民所得系の数字です。

ところで、現在はデフレなので、実質(現物)ベースだと名目(金額)ベースよりも
大きな値になってしまいます。
そこで、一番公平な数字として、当座は名目GDPを考えます。
(フローで考えるのでGDPです。ストックならバランスシートです)

Wikipediaのデータをそのままエクセルに入れてみました。



 青が「名目GDP」(金額ベース)
 ピンクが「実質GDP」(現物ベース)
 オレンジが「GDPデフレーター」(青÷緑≒消費者物価指数)
 緑が「GDPデフレーター対前年増加率」(今年のオレンジ÷去年のオレンジ)

名目GDP、ざっくり言って500[兆]円です。
現在は、GDPデフレーター(≒消費者物価指数)や名目GDPで見ると
25年前の1987年(昭和62年)程度の経済状況に等しいことが分かります。

 また、表(グラフをクリック:PDF)の方を見ると、日本が経済成長するたびに
 アメリカの横槍wwwwwwで円高になり、成長が鈍っていることも分かります。

国民所得は金額ベースでは名目GDPに比例すると考えられます。
しかし何と言っても現在は長期のデフレ
今年1000円でボールペンが5本買えるなら、来年なら6本買えます。
だから、誰だって、我慢して来年多く買おうと思って貯金してしまいます。

名目GDP=①消費+②投資+③政府支出+④純輸出

なのですが

 ① 金融資産のある世代~社会保障の将来不安から消費抑制
 ①’金融資産のない若者~所得や雇用が十分ないので消費不可能
 ② 企業~将来の景気不安から債務返済、人件費抑制、内部留保

 ④ 輸出~「リーマンショック」「ユーロ危機」で、買ってくれる国が消失

 ・・・あれ、③政府支出 は?wwwwww

こんな世の中なので、なかなか財布の紐もしまりがちです。
しかし、豊かな方も貧しい方も等しく大体同じ額なものがあります。

食費 と 医療費 です。

医療費については以前とりあげましたので、今回は食費で考えてみます。
そして、定期的な出費として、歯科の定期健診を考えてみます。
(公共料金ですと、世帯ごとの単位になってくるので、割愛します)

◇ 食費

国民の平均的な食費については、1人あたり月2万強、年間25万円程度と言われています(総務省統計局2010)。
名目GDPの20 [億] 分の1です。
(GDP500[兆]の数字の500を25で割って、単位を[兆]⇒[万](億分の1)に変換)

◇ 定期健診

歯科は医科と異なり、選択支出、つまりぜいたく品の傾向があるといわれていますが、定期健診ならほぼ一定です。
これを半年に1回3千円とします。年間6千円、(当然1人あたり)月500円

これは食費のほぼ40分の1なので、名目GDPの800 [億] 分の1です。

月500円。歯科の定期健診程度の出費なら、失業者や生活保護受給者など特殊な事例でなければ、痛いとか痒いとか感じる額ではないと思います。

以上のような結果です。
名目GDP、ざっくり言って500[兆]円です。

こうみると、食費と同額のものを定期的に出費するのは厳しいけど
歯科定期健診と同額のものなら問題ない。その間ということになります。

名目GDPで見ると、100[億]分の1(=年間5万)500[億]分の1(=年間1万)程度
おおむね許容範囲かと思います。

アデノバイタルは1本6000円程度でした。年間4本として2万5千円程度
名目GDPの200[億]分の1という形になります。

△ (おまけ)インプラント

1本何十万。3~4本で100万円クラス。
「何でそんなに高額なものを!」「そういう話は他のお金持ちにww」
や、ちょっと待ってください。まずは計算してみましょう。
モデルケースとして、58歳女性(平均余命30年)とします。

常識的に考えて、せめて30年は持つとします。

100万÷30年=年間3万 名目GDPの167[億]分の1

意外や意外、『100[億]分の1(年間5万)~500[億]分の1(年間1万)』の十分枠内です。
食費(年間25万)と比べても、4年で同額になりますね。
32年持ったら(まぁ、32年くらい当然持たせるつもりですが)食費の8分の1です!

短期的にはたしかに大きな出費ですが、長期的な目で見ると十分『投資』価値があり、かつ十分射程距離内の話なのではないでしょうか。

◆ まとめ

このように、人が心を動かし、行動に移るには、正論提示の他にさまざまなステップを踏む必要があることが分かりました。

そして、長期的・俯瞰的な視点の有効活用もおろそかにできません。

少なくとも、私のような仕事をする者も、正論をガナリ立ててばかりでは、患者様は混乱するばかりで、結果として地域に良い結果をもたらすことから遠ざかってしまいます。
基本といえば基本なんでしょうが、患者様と根気良くしっかり接していくことの重要性が、改めて問われることを示唆する一件になりました。

また、今回、名目GDPにも少し着目してみましたが、『単位』の有効活用もなかなか利用価値がありそうです。

ニュース記事で「兆」「億」と聞いただけで「ああ、他人事だ」と食わず嫌いしてしまうのは、大変もったいないことです。
『単位』に負けてしまうと、「報道しない自由を謳歌する者達」の印象操作に騙され放題です。

 国のことは『兆』で(割って)見る
 自治体・大企業は『億』で(割って)見る

これだけでも、『単位』に負けず、『単位』を活用して、自分の身の回りの状況の妥当性についてもおおむね合理的な分析が可能になります。

そして最後にひとこと言わせてください。

このような付加価値への長期的投資をもっとも阻害するものこそ、

『 デ フ レ 』

にほかならないのです。
1000円で今年のボールペン5本より来年の6本
これでは誰でも長い目の価値観に対する長期的投資が抑制されてしまいます。

一日も早いデフレ脱却が、有意義な人生のためにも、予防歯科にとっても、重要なのです。

【今回のまとめ】

長い目の価値観の実現には「正論」意外に重要な点が多い&次の中心食まで歯を守りたい。

06:56 | nemoto | 育毛剤と予防歯科 はコメントを受け付けていません
2012/05/17

謹啓

読者の皆様には平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、このたび、諸般の事情に鑑み、一部コラムの掲載自粛措置を取らせていただきました。
インターネット媒体は、情報収集、検索ならびに発信におきましてきわめて有意義なものでありますが、同時に、関係者等の枠を越えて広く世界の目に触れるものでもあります。その点を鑑みますと、必要以上に院内の内情に触れる内容のエントリーにつきましては、とりわけ患者様や来院ご検討の方に対しまして、あらぬ誤解やトラブルを招きかねない疑念が否めず、掲載はふさわしくないという結論に達しました。
また、仮に匿名記載であっても、見る人が見れば特定可能な内容につきましては、不適切であると判断するに至りました。
そこで本日付で、まことに恐縮ではありますが、昨今のエントリーのうち、院内の具体的な事例や人員等を扱った数件につきましては自主的に掲載を停止する措置を取らせていただきました。略儀ではございますが、取り急ぎ皆様に謹んでお詫び申し上げますとともに、何卒御理解いただけますようお願い申し上げます。

敬具

根本啓行

07:15 | nemoto | お詫び~一部コラムの掲載自粛措置について はコメントを受け付けていません
2012/05/05

こんにちは。根本齒科室の根本です。

さて、前回まで、開業までにはいろいろ面倒なことが多いことを説明してきました。
やりたくもない内覧会()までやって、前日まであれもこれもで、目が回る勢いでした。

あまり語りたくないシリーズ、本当にwwwどんどん”語りたくない度”がうpしています。
今日のエントリーは、マジきちーorz
(でも最後の最後でほっとできます)

そして、いよいよ開業の6月2日。
その日は、とてもとても静かにやってきました。

朝礼、やらなかったなぁ・・・

あまりにも淡々とその日が訪れたので、一応、かなり拍子抜けしました。
ただ、今まで私服だったメンツが、今日からは白衣に変わったので
まるでコスプレみたいでした。そのことが強く印象に残っています。

メンツは、私と、衛生士のKさん、受付のMさんの3人です。誰も来ないので
私は2診(2番の個室)、Kさんは予防個室、Mさんは受付でずっと黙っていました。
(今思い出して書いてみると、こりゃ当時は相当空気が険悪だったかも)

◆ 辛すぎる初日

「し~ん」と冷たく静まり返った院内で、空気が固まったまま時が過ぎて行きます。
この、極限まで不安な気持ちを、どう表現したらいいのか分かりません。

この状況、この現実に直面して、「希望を持て」と言われても、無理です。
エビデンス(論拠←患者様が来るetc)もないのに、一体何を信じろと・・・

昼前に、工務店の担当者Wさんがやってきました。
開業するまでいろいろわがままを聞いてくれて、熱心に対応してくれた方です。
Wさんには、その後もいろいろ良心的に細かいケアをしていただきました。
(何かの点検かなあ)と思ったら、何と保険証を差し出してくるではありませんか!
Wさん、晴れて患者番号1番ということになりました。
(医療機関でこの言葉遣いが適切かどうか存じませんが)W様ありがとうございました。

果てしない砂漠の彼方に見つけたオアシスの一滴の水って、こんな感じなのかも。
無間地獄のような心の闇に、ほんの一瞬、一筋の光が差した気分です。

結局、初日は患者様1名で終了ということになりました。

その後も、患者様はほとんど増えず、患者数ゼロ、という日も何度もありました。

◆ 試用期間

ご案内の様に、労基法的には、試用期間は実質14日となっています。
14を越えて雇用したのち解雇する場合は、30日分の解雇予告手当てを支給する
必要があります。

(試用期間を超える頃には少しは賑やかになってくるかな・・・いや、なれwww)

なれ!って思っても、そんなに急に忙しくはなってくれません。

しかし、そのうち、歯周病のケアが必要と思われる方もお見えになりました。
歯周病については、衛生士のKさんに配当することにしています。
お手並み拝見、というわけではありませんが、本人もノリノリのようだし
まずは結構期待して配当してみました。

・・・

あれっ?
長い。

(まだ終わらないのかなぁ)

歯周病検査を6点法でやってるから時間がかかってるのかな、と思って覗きに行きました。

歯周病のケアを始めるには、保険制度の決まりで、全歯、歯周ポケットの深さを
測定することになっています。
その後は、歯を染色液で染め出して、みがき残しをチェックすることになっています。

検査用紙は1点法の奴でした。
(えっ?!なんで1点法でこんなに時間がかかるんだろう)

歯1本につき、何ヵ所測定するかで、”○点法”と呼ばれます。
1点法は、歯のどこかの1点、6点法は内外それぞれ前中後の6箇所を測る方法です。
当時は、1点法は200点、4点法以上は400点でした。
ちなみに4点法は大まかに言って内外それぞれ前後4の箇所を測る方法です。
(単純に6点法は手間は6倍なので、本来1200点ないと割に合わないのですが)
時間的余裕もあるので、6点測って、ていねいに処置してるんだろう・・・

もう診療開始から45分たっています。
ちょっと、今まで見てきた衛生士とは大分違う感じなので、疑問が残ります。
私が今まで見てきた衛生士だったら、1点法と歯ブラシ指導だったら、
どんなにていねいにやっても30分以上かかることはありません。
手が早い人なら、下顎前歯のスケーリング(歯石取り)が終わってる時間です。

・・・いやいや、でもこの人はベテランだから、何か特別なテクニック()でも
  あるのかもしれない。
  自分が見てきた範囲だけで判断するのは、時期尚早だ。

とりあえず、あまり深く考えず、様子を見ることにしました。

◆ 夜間診療

龍ヶ崎市佐貫は、上野から50キロ弱電車で50分820円特急で35分+500円の距離です。
上野駅からの直線距離では、久喜 鴻巣 坂戸 飯能 高尾 厚木 茅ヶ崎とほぼ
等距離です。ナメてかかれない、かなり通勤に便利で職住のバランスが取れた地域です。

また、ひとつ先の牛久以北は営業キロ50キロ超なので特急料金が急激に上がります。
そんな点からも、佐貫はますます都心アクセスに便利な場所といえます。

ごらんください、この超通勤型時刻表(上り 下り)wwwwwwwww
いかに常磐線が通常時間に手を抜いているかがよくわかります。

また、佐貫駅は、少しはなれたニュータウンや旧市街、あるいは稲敷や河内方面の
玄関口
でもあります。

1日の乗客数は、関東鉄道竜ヶ崎線を入れると1万7千人。
取手(関鉄常総線含む)の4万2千人には及びませんが、天王台の2万1千人にせまり、
佐貫以北では、水戸の2万9千人を除いては、土浦も越えてもっとも利用客の多い駅です。

それだけの方々が、通勤時間にどっと佐貫駅を利用します。
多くの方は、駅のロータリー内でバスに乗るか、キス&ライド(家族送迎)で
吸収されてしまうのですが、それでも結構な人数が19時くらいから
医院の前を人が西から東に向けて歩いていきます。

 このような彼らを商圏に落とさず、みすみすロータリーで逃がしてしまう。
 佐貫駅近くの都市計画最大のミステイクです。
 返す返すも、マクドナルド~東口公衆便所~山村医院のエリアがもったいない!!
 旧ファミマには鬼の様に人の流れがあったのに・・・

歩いていく方は、この近辺にお住まいの方ですが、稲敷など遠方の方で
駅付近に蔓延している駐車場・駐輪場等を借りている方もかなりおられます。
このあたり一帯は(とくに佐貫1丁目、3丁目)ほぼ駐車場だらけといっても良く
当歯科室よりも駅から若干離れたところにもたくさん駐車場があります。

 駅~医院付近の大まかな地理は、前回コラム内の図(内覧会の案内状)で
 ご確認ください。

「この人の流れを掴まない手はない!!」

誰だってそう思います。

駅前の竜ヶ崎プラザホテルの高層階客室のベランダから、夕方~夜にかけて
夜景を眺めていると、

「何と発展()した都市なんだ!ひっきりなしの車と鉄道、夜でも見通しのよい
 電力消費量の高そうな駅近エリアだ。これは将来性や成ちry」

昼間(10:00~18:00)は、まあ、勘弁してください(映画のセットじゃないんだから)

ですから、患者獲得のため、夜間診療に力を入れたくなるのも当然です。
しかし、その時間は家庭の主婦(KさんやMさんなど)では出勤は無理です。
必然的に学生さん(大学や歯科衛生士学校など)中心のシフトになります。

やはり、当初はアポイントが埋まるのは昼よりも夜のほうが早かったです。

ただ、夜間診療は19時~22時までやっていたので、バイトさんは
ちょっと大変だったかもしれません。
その後も試験前などは、アポイントを減らして対応したりしていました。

◆ 冷たい空気

その頃は、朝は少し遅めの10時から診療開始でしたので、スタッフは
9時15分くらいに出勤していました。
ただ、私はKさんから「来なくていいです」といわれていたwwwので、
診療開始直前にあわてて顔を出す感じでした。

その頃は、医院から少し離れたところにスタッフ用の駐車場を借りていました。
しかしKさんは堂々とお客様用駐車場に車を止めていました。

何か言おうかと思いましたが、うちは患者様用に5台分スペースがあります。
それに、歯科衛生士がいないと、予防や定期健診がかなりおろそかになります。
必要なポジションでもあるので、こちらもあまり強く出られません。

Mさんは、文句も言わずに、少し遠くの駐車場を利用しています。

院内では、相変わらず、業務に関係ない雑談のような物は、3人の口から一切出ず、
患者様のいない時間は「し~ん」と静まり返った空気が支配していました。

Kさんの仕事のスピードは、相変わらず遅いままです。

歯石を取った後、歯の表面をプロフィーブラシやプロフィーカップなどを使い、
研磨剤の入ったのや入っていないペーストなどをつけて、仕上げみがきをします。

それをスケーリングの後、毎回やっているのです。

さらにご丁寧なことに、そのあとエピテックスという50ミクロンの極薄研磨テープで
歯と歯の隙間を全部裏表研磨していたのでした。
(このセロテープみたいなの何だろう?)
寡聞にして私も存じ上げませんでした。

「毎回患者さんにして差し上げています」
Kさんのドヤ顔、今でも忘れられません。

 うわ~~、やり過ぎだよ、そりゃ。
 そこまでやるなら自由診療で1万くらいのチャージを取らないと割りにあわねぇ。
 しかも何だよ、その5本セットはwww俺に黙って勝手に注文しやがって(‘A`)
 一番細かいのと、せいぜい2番目がありゃ十分じゃね?

(でも歯科衛生士の重要性とかのこともあるし、あまり強くは出られないボクでした)

まあ、今(←その当時)は暇だからいいとしても、これは3ヶ月(現在は2ヶ月)に1回
しか保険点数をつけることができません(しかもわずかに60点)。
それ以上の頻度でやると、この処置は持ち出し(無料処置)になってしまいます。

(そのうち、どうしよう)

それでなくても、有意義ですがていねいにやるとけっこう手間のかかる処置です。
OECD基準で考えても、保険点数で最低300点くらいはないと、悩みの多い処置です。
経営者としては、頭痛のタネが増えます。

また、Mさんは、当然ですが、いつもあまり楽しそうではありません。
若干萎縮したような感じで時間をすごしているように見える
のが、気になっていました。
夜間診療の日や、土曜日は、学生のバイトさんが来るので、彼女たちとのおしゃべりが
数少ないMさんのリラックスタイムでもあるようでした。

(いつも昼休みとか、どうしてるんだろう)

◆ 想定外の混乱

夜間診療が、どうも思うように行きません。
若い学生さんたちなので、患者様がいない空き時間などは、ご想像のとおり
ものすごい勢いで雑談しています。

私はオジサンなので、もちろんその輪にはとても入れないのですが。
(最近の女子は、自分らの頃に比べて、声の大きさが3倍くらいになったなあ。
文化なのか、それとも、声帯の新たな獲得形質なのか???)

そんなことはいいんですが、ある夜、大雨と落雷により、なんとさっそく停電しました。
東電何やってんだよ~たるみ過ぎじゃねぇの???
たまたま患者様のいない時間だったからよかったのですが

「ドス~ン!!!!!!!!!!」

えらい稲光り&音&地響きが同時に炸裂して、一瞬にして周囲が闇に包まれました・・・
と思ったら、非常灯がついて、ビックリしたのですが、女子たちの驚いたの驚かないの

「ぎゃ~~!!!!!!!!!!」
「やだ~~!!!!!!!!!!」
「コワ~~!!!!!!!!!!」

まさにパニック状態。泣き出す者も出る始末です。

「大丈夫大丈夫。落ち着いて」
と励ましても

「もうやだ~~こわ~~い」
「院長、ここ場所に問題あるんじゃないですか~??」
「設備がぼろいんじゃないですか~~??」

えっ、そっちかよ????

思いもよらない反応に、一瞬頭がクラクラっとしました。
本当に、そっちのほうがビックリしました。かなりショックでした。

考えました。

 俺が向いている方向と、彼女たちが向きたい方向が、かなり違う感じだ。
 しかも、この修正はちょっと俺の手を超えている感じがする。
 相当信頼されてない感じだし。
 人徳のなさもあるけど、女性スタッフのマネジメントは、本当に難しいなあ。

夜間診療を手放すのは、経営的にかなり苦しい選択になってしまいます。
だけど、このままのメンツでやっていけるとは思えません。

歯科医院は人がいないと動きませんが、さすがに人がいるだけでは動きません。
スキルもそうですが、なによりも信頼関係がないと私もむこうも安心できません。

そして、日中の時間の問題点もまったく解決していません。

業務縮小を含めた大きな判断の決断に迫られました。

◆ 大きな判断

その日は、開業からちょうど2週間の日でした。
Mさんはお休みの日だったと思います。・・・いや、もしかしたら先に帰っていたのかも
しれませんが、細かいところはよく覚えていません。

診療が終わった後、私は、封筒を手に、Kさんを呼び止めました。

根「お疲れ様です。ちょっとお話があるんですが、いいですか」
K「はい、何でしょう」
根「まあ、いろいろなことを考えながら、2週間見させていただきました。
  大変申し上げにくいんですが、今の私の力では、Kさんほどの衛生士を
  マネジメントしていくことは、分不相応にすぎると考えています」
K「・・・それは、どういうことですか?」

ちょっと緊張の場面だったので、あらかじめ用意しておいた比喩で説明しました。

根「例えて言うと、今のベルマーレでは、セリエAで活躍している中田英寿は
  とても使いこなせない、それはもちろんお互いの不幸につながるということです」
K「私は結構ここに期待してたんですが、それは、辞めろということですか?」
根「辞めろ、という意味ではないのですが、むしろ力不足を申し訳なく思っています。
  短い間でしたが、いろいろ勉強させていただきましたし、お世話になりました。
  少ないですが、とりあえず15万円(記憶では多分)お持ちしました。お納めください。
  残りの1か月分の差額については、直ちに計算して近々にお送りします。」

何だか、論理的に破綻した文章のような気もしましたが、とにかく現ナマを
一生懸命差し出しました。

数秒の沈黙があったでしょうか。
現ナマの封筒を手にしたKさんは、案外あっさり引き下がりました。

K「分かりました。こちらもお世話になりました」
根「・・・すみません。では、とりあえずロッカーの中の私物はよろしくお願いします。
  白衣はそのままで結構です。家にある奴は後で着払いで送ってください。
  鍵は鍵穴にさして置いてください。
  では自分はもう少し仕事があるので、残っていきます。お疲れ様でした。失礼します」

ここまでけっこう一気にしゃべったと思います。
最後は一例をして、医局(スタッフルーム)の扉をそっと閉めました。

仕事なんてやるわけありません(探せば無限にあるのは当然だが)。
一緒に院を出るのは気まずいので時間稼ぎするだけです。

それに、自分にはあまりに大きい(と思われた)決断に、精神的に結構キテました。

 従来型の歯科医師重視、形成(削るの)補綴(ほてつ:かぶせや入れ歯)中心が嫌だから
 歯科衛生士の指導・管理スキルを見込んで無理して採用したのに。
 こんなことになってしまうのは、やはり自分の人徳が至らないからだ。

 だけど、これから予防はどうしよう。
 Kさんに配当した患者様は代わりに診るとしても、これからしばらくは歯の予防を
 指導力に欠ける自分でやらなければならない。どうしよう。
 万一、Dさんがうちに有資格者として来てくれるかもしれないとしても、
 それは1年もあとのことだ。

 他人って、本当に自分の思ったとおりに動いてくれないもんだ。
 払った給料を返してもらいたいくらいだ(当時はデフレと雇用について無知だった)。

いろいろなことが、堂々巡りで頭の中を駆け巡り、机に突っ伏したまま
頭を起こすことも忘れていました。

 でもKさんも、ベテランのDH(衛生士)だし、いろいろネタ(まじめな意味で)を
 提供してくれて、歯科について勉強になったことも結構あった。
 「袋出し」も、勝手にやったとはいえ、あのおかげで捗ったところもある。
 その部分については評価しなければ。
 今後、何とかKさんにもいい就職先が見つかれば、だな・・・

ふと、思いました。

 Mさんには何と説明しようか。話したら、どんな顔をするだろうか。
 正直に、自分の実力では彼女のマネジメントは無理なので、地道に一つ一つ
 キャリアを積み重ねていくしかない、と思って、状況を正直に話すしかない。

 要は俺は、今後この院のコアを、KさんではなくMさんでいくことにしたんだな。
 そういうことだったんだ。
 正直に話して、Mさんに女性のマネジメントを含めて、今後の切り盛りについて
 よろしく頼むしかないな。

考えながら、そんな風に感じました。

夜間診療については、当初週3日だったのを2日に縮小し、一番遠距離の子に、
この調子では採算が合わないので業務を縮小する、などといって
引き取ってもらいました。
また、もうひとりが、学業の都合で、ということで退職していきました。

とりあえず、バイトさん4人が、いっきに2人になりました。

◆ 新しい朝が来た

「♪~希望の朝だ 喜びに胸を~♪」

・・・全然その時間は過ぎてますが、翌朝、私は9時過ぎには出勤していました。
Mさんがやってきたとき、意を決して一生懸命にお話ししました。
多分、記憶では、彼女は白衣を着ていたビジュアルがおぼろげに出てくるので
開始前に着替え終わった後に話したんだと思います。

たしか、その日はMさんがやっていた床掃除などは、さぼった形になったはずです。

根「ちょと改まってお話したいことがあるんですが、いいですか?」
M「はい、何ですか?」
根「じつは、先日の帰り際に、Kさんといろいろお話させていただきました」
M「はい」
根「で、結論としては、今の自分にはKさんを使っていくだけの力量はないので
  申し訳ないけど、お互いのためにということで、引き取ってもらいました」
M「・・・はい」
根「歯科衛生士もいないので、大変ですけど、院内のマネジメントや、
  他の女性スタッフのこととかも考えたら、今後は、Kさんでなくて
  Mさんにその辺は任せてお願いしていきたいと考えて、こうしました。
  急ですみません、大変だと思いますが、これから『よろしくお願いします』

この、『よろしくお願いします』の部分は、とくに万感の思いを込めて口にしたことは
良く覚えています。

数秒戸惑った表情のまま固まったMさんでしたが、ふっと顔の表情が緩み
わずかに微笑んで、返してくれました。

M「・・・分かりました。よろしくお願いします」

その瞬間、もう内臓が一気にぐにゃ~って溶けてしまいそうな位、ほっとしました。

根「ありがとうございます」
根「じゃあ、さっそく、今後は駐車場はKさんが使ってたところを使ってください」
M「はい」

 だいぶ人も減ってさみしくなった。Mさんもさぞ心細いだろう。
 でも、こうするしかできなかった。これが俺の今の力量だ。 ←今も大して変わらず
 だけど、もう俺は、Mさんに今後を賭けるしかない。

数日前までとは、うその様に心が軽くなりました。
Mさんに後日お話を聞いたところ、毎日昼休みは、ほとんど会話らしい会話もなく
二言三言お話したら、あとは突っ伏したり寝たりして時間を潰していたようです・・・

それを聞いたときは、本当に胸が痛み、いたたまれなくなりました。
2週間とはいえ、自分はMさんに、なんと辛い目に合わせてしまったんだろう。
もう今後は、Mさんに変な面で気苦労をかけたくない、と思いました。

 でも、まあ俺はその後もいろいろとやらかしてしまうわけだが・・・ナイショ

ひとまずMさんのお話はこの位にしておきます。
そして、暫く後に、晴れて根本齒科室は全館土足になったのでした。

◆ 歯科医師会の例会

いつだか忘れましたが、6月末に、龍ヶ崎市の歯科医師会の例会がありました。
私はこのようなお付き合いの飲み会が極端に苦手なのですが、落下傘開業だし
さすがに今回はここに顔を出しておかないと、干される・・・!

みたいな変なプレッシャーがあり、厭厭、本当に厭厭、料亭「魚(うお)よし」
に出向きました。
ここは、じつは当歯科室から数百メートルしか離れていないところで、
交通費がかからない点だけは助かったのですが。

宴会場は2階になっています。

気が重すぎて死にそうでした。何しろ同業者ですよ。悪く言えば商売敵ですよ。

嫌なので時間ぎりぎりに行ったら、すでにオジサマたちは結構盛り上がっていました。
誰が誰だか良く分からないのですが、総勢30名程度でしょうか。女性の方もおられます。
とりあえず近くのベテラン某先生につかまりましたw

某「君が新入りの根本君か」
根「あ、はい」
某「とりあえず、お酒大丈夫だよね」
根「・・・そんなに大したことは」
某「はい、じゃあとりあえず乾杯!!」

 やべ、これ俺が一番イヤなパターンじゃん。
 これ下手すると芸とか脱衣とかそっち方面・・・いやいやそこまでは無いだろう。
 とりあえず適当なところで苦しそうな顔をしてトイレに逃げるだな、こりゃ

そうこうするうちに、参議院の西田昌司議員にヘアスタイルがやや似た、渋い先生が
知らない間に横に座っていました。爽やかなのに何だかやり手な感じです。

西「根本君、どうだい歯科医院の調子のほうは」
根「いや、まだまだ2週間ですから、暇ですけど落ち着かなくて・・」
西「ハハハ、最初はそうだよ」
根「とくに、勤務医じゃなくて、経営者として女性をマネジメントするのは大変ですね」
西「そりゃ仕方ないよ。みんな大変だ。で、どうだい女性のマネジメントとかのほうは」

酒が入っていたので正確には覚えていないのですが、何かおおむねそのような
話の流れになりました。
まあ、時間つぶしの一環なので、あまり隠さずに話しました。

根「じつは、採用してすぐに衛生士に辞めてもらった件がこたえて」
西「へ~そりゃ大変だな。最初から衛生士ってのも、頑張るなあ」
根「すみません。ありがとうございます。ベテランの人で、Kさんっt 」

その瞬間、西先生(仮名)のやさしそうな目が、いきなり2倍くらいの大きさに拡大しました。

西「なに?! Kっ?!まじかよ!!!!!!!! K アイツお前ン所もいったのかwwwwwwwww」
目が拡大した途端に大爆笑。

西「おいおい、あれ、ほら、前話した K アイツさぁwww」

何だか、他の先生たちと「K」の話でやたら盛り上がっています。

ちょっとここからは、酒も入っていたので、非常に それなりに 差し障りのある
表現も出てこないわけでもないので、私の独断と偏見で要約します。

Kさんは、西歯科医院で少しだけ働いていたことがあったそうです。そこで
ホワイトニングの前処置をやらせたら、全然できなかった、
この程度もできないのではレベルが低い、ということのようです。
まあ、いろいろあったのでしょう、割とすぐに西歯科医院を退職されたようです。

どんな内容かはここでは伏せますが、確かにそれほど難しい処置ではありません。
ただ、西先生はやり手そうなので、要求レベルが私よりも高いのかもしれません。
調子に乗って、「ソッスヨネーーーマジデ」とか下手なことは言わないことです。

そしたら、西先生よりも少し若手ですが、大柄でインテリジェントな感じの先生が
話の輪に加わってきました。
小説「コレキヨの恋文(三橋貴明/さかき漣)」に登場する、東田剛主席補佐官が
知的レベル的に私のイメージにそれとなく近いので(ご本人はもっと普通な感じですが)
東先生(仮名)とします。

東「Kさん、そうそう、うちにも来ましたよWWW」
西「お~東君のところもかWWW」
一同大爆笑で大盛り上がりです。みんな東先生のほうを向いています。

要約し()

東歯科医院では、先生がおっしゃるには、朝と帰りの掃除を全員で行うそうです。
「すごいな」正直そう思いました。自分も少し院内の掃除をしたくなりました。
そこでやはりKさんは、子供のことがあるのでとか言って、早く帰らせてもらおう
としたようです。
・・・Kさん、やりそう(‘A`)

東「やっぱり、和を乱すようなパターンは無理だなぁ」

一同 ヘェ~、ヘェ~、などと納得したり盛り上がっているようすです。と、

西「根本君、最初から大変だったなぁ」
東「災難だったなぁ。そのうちいい人材が見つかるよ」
某「よし、あれっ根本君グラスが空じゃんWWW」

根「あぁ、あ、りがとうございます。とりあえず頑張ります」

こんな感じで、何とか2時間を潰して逃げ帰ってきました。
よしよし、後1年半はばっくれられる。
それを何回か繰り返していけば、晴れて幽霊会員・・・

◆ 仕事の意義とは

ほとんどつまみを口にせず、ビールばかり連続で飲んでいたものですから
腹部膨満感とゲップと尿意は、それはすごいものがありました。

とりあえず魚よしから自宅も遠くないので逃げ帰り、深呼吸をしながら
いろいろ考えてしまいました。

「仕事する」って、どういう意味なんだろう。
勤務して金を稼ぐ、以外にも、いや、それ以外のほうが大きな意義がありそうだ。

Kさんの言われ様には、若干同情できなくないところもあります。
Kさんは、もともと永年にわたってある歯科医院に勤めていたそうです。
その院長先生が亡くなられたか引退されたかで、その後はいろいろと
転職をされているようです。

ただ、龍ヶ崎市内では、ごらんの有様です。

確かに、歯科医師や歯科技工士と異なり、歯科衛生士は慢性的に人材不足です。
とくに歯科衛生士は、歯科業界の中のゼネラリストである歯科医師から見ても
指導力・管理能力方面のスペシャリストでもあります。
歯科での予防の重要性を考えたら、絶対に欠かせない人材です。

ただし、必ずしも雇用流動性が確保されているかといえば、疑問も多々残ります。

まず、40代を超えるような人材ですと、すでに前医院の型が身についています。
結局、前医院のレベルが高ければ彼女を使いこなせないし、低ければ低いで
新医院の職場モラルを下げてしまう結果になりがちです。
個人商店よりも、フリーランスとか、企業、公的機関が合うのかもしれません。

その辺の柔軟性は、やはり若い人ほどやりやすいです。
逆に、若い人を採用するときは、その人の将来のことを考えても、
レベルを下げないように下げないように気を使う必要があります。
最初にレベルの低い仕事を見せてしまうと、アウトです。

そして特筆すべきは、この飲み会は全員経営者(個人事業主か零細法人理事長)
の集まりです。

主体的に社会に対して付加価値を生み出し、雇用と賃金を提供する。
とくに医療機関なので、下請けとはいえある程度公共的な財として振る舞う。
自らが「月末に金が出る人」に甘んじ、他人を「月末に金が入る人」にする。
そのかわり可能な範囲で「月末に金が入る人」を責任を持って面倒を見る。

各々責任感は強いのですが、個人商店主ばかりですので、それぞれ差があります。
その企業風土の差で、求職者から見たキャパシティ的な安定感は低い感じはします。

こんなことを考えると、まあ当然ではありますが、「働く」ということは
社会に参加して、その中で自分に対しても、周囲の社会に対しても
ポジションやアイデンティティーを構築していく作業に他ならない、
それが第一義だと感じます。

社会に参加するということは、ある程度自分を合わせないといけない。
雇用側も、自分の許容範囲を超えそうなところは相手にそれを求める代わりに
社会人としてのポジション・アイデンティティー形成・維持をファイナンスする。

ある程度、お互い様なんだと思います。
それなのに、Kさんは市内ですでに大きなミスを犯してしまっていました。

なかなか私レベルでは、Kさんクラスに正面切っては言いにくいものがあります。
しかし、うちではうまく行きませんでしたが、今頃なにかKさんにも、
ちょっと感じのいい環境が用意されていればいいなあ、とかふと懐かしく思います。

そして、前回コラムに出てきた、GカップのGさんのことも気になりました。
彼女にも、よい職場か、よい家庭が用意されていれば、と思います。

だから、私は個人的にですが、昨今はやりのベーシックインカム礼賛思想には
かなり懐疑的なのです。私に言わせれば、

「 バ ラ マ キ よ り ハ タ ラ キ 」

なのです。

以上、6年前を思いながら、また歯科とあまり関係ないことばかり書いてしまいました。
もとより筆不精な私のこと、当然、日記など付けてはいません。
しかし、書かないと貴重な思い出が風化しそうだったので、あえて余計な記憶を辿り
他人の褌を汚す挙に出ました。

今回は

◆ 辛すぎる初日
◆ 試用期間
◆ 夜間診療
◆ 冷たい空気
◆ 想定外の混乱
◆ 大きな判断
◆ 新しい朝が来た
◆ 歯科医師会の例会
◆ 仕事の意義とは

といった内容でお届けしました。

書きながら、働くことの意義について、改めて私なりに深く考えさせられました。

また、今回のコラムを書きながら、事業主(経営者の端くれ)として社会に存在する
という点についても、いろいろ思いをいたすところがありました。

また変なことを書くかもしれません。

【今回のまとめ】

歯科医院も、付加価値の社会提供、従業員の社会的アイデンティティー形成の責務を担う。

10:20 | nemoto | あまり語りたくない”開業”前夜3~開業直後篇 はコメントを受け付けていません

« Previous | Next »