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こんにちは。根本齒科室の根本です。
ところで、先日の朝、ADSLモデムが壊れました。
いつもは電源を入れなおすと収まるのですが、収まりません。
「ネットにつなぐ他の回路が無い!」
昼休みの時間に直してもらおうと思って、修理依頼で113に電話したら、
修理予定時間に30分以上も遅れて電話がかかってきました。
何でも、午後の診療開始時間までに、間に合わなさそうな公算とのこと。
ちょっと残念。つまらない夜を過ごすハメになってしまいました。
以前はウィルコムのカードをなぜか持っていて、万一モデムが壊れたときに
利用したりしていたのですが。
もう一台、B5ノートがあるが、これを抱えて(無線の)ホットスポットまで行くのも
面倒だし、本末転倒。
まんじりともせずに夜を過ごしながら、ふと頭に浮かんだ単語が
「レジリエンス」です。
最近ではネットですっかり有名になってしまった京大教授の藤井聡先生の本に
「救国のレジリエンス」という本があります。
震災復興やデフレ脱却などのからみでもとてもタイムリーな内容だったので
普段読書量の少ない私も珍しく購入してみました。
藤井教授はまた、私と同い年(教授の方が53日誕生日が早い)ということもあり、
風格と頭の中身では大幅に負けていますが、何となく勝手に親近感を感じている
ところもあります。
そして、新幹線や鉄道系の交通網の話題が中心に出てくるという前評判だったので
その意味でも、とても興味を持って購入してみました。
しかし、大変残念な点がひとつだけありました。
端から端まで何度も一生懸命探したのですが、くやしいことに
「常磐線or常磐新幹線」の「じ」の字もありませんでした。
(自分で書いていて、この単語のあまりの荒唐無稽さにビックリですが)
「震災復興には今こそ常磐線ルートの強化、とりわけ新幹線が必要です。
そのためにも、潜在的ポテンシャルの高い佐貫エリアに新駅をaqwsdefrgt・・・」
とは書いてありませんでした。残念。
とはいえ、本書を通じて、非常に面白い発想を学びました。
「地方分『散』」という概念です。
「地方分『権』」でも「地方分『断』」でもないのです。
もちろん日本ではかねてより一極集中の弊害が指摘されて久しく、また3.11後に
首都直下型地震や東海南海東南海などのリスクが状況証拠的に跳ね上がった現在は、
何らかの対策が必要だというのは、そのとおりだと思います。
そのような予防的意味で、あるいは以前流行った「改革」「規制緩和」などのインフレ対策系のノリが加味して、地方分権や道州制の議論が20年前のバブル崩壊ごろに流行り、今また同じ仕掛け人のもとで喧しくなっています。
この議論を見ていて思い返されるのが、熱海での「系統分離」と「三島妨害」です。
「系統分離」とは、電車がそこから先に行かなくなることです。
私の実家は熱海の少し先になるのですが、たまに新幹線でなく鈍行でのんびり帰ることもあります。線路沿いの街並みの雰囲気が小田原をすぎると一変し、線路も急勾配になってトンネルが激増、根府川鉄橋のような高所を超えると、ものすごい勢いでダウンヒルを始めます。
そしてスロープを下り切ると、熱海駅です。
伊東線~伊豆急行線が分岐し、昔懐かしい東急8500系がセミクロスシートになってまだまだ老体に鞭打っています。
ここで、全普通列車が止まってしまうのです(朝夕ラッシュ時を除く)。
昔は、東京発の列車は沼津行き、静岡行きが半々程度で、たまに浜松行きや伊東行きがある程度でした。本当に函南以西、とくに地元のローカル線を利用する層は不便になりました。
熱海まで乗ってきた、15両編成のグリーン車を連結した最新のE233系を降りて、案内板に驚いて、階段を使って隣のホームに移動すると、そこには吹き溜まりの様に乗り換え客で混雑しています。
散々待たされた挙句、西のほうから済まなそうにやってくるのは、名にし負う「静岡スペシャル」として悪名高いオールロングシートの211系5000番台、運が良くて313系2000番台の3~4両編成という、まことに貧相なドンガラです。
これで熱海~浜松152.5kmトイレなしということもあるのですから恐れ入ります。
かと思うと、もっともラッシュが問題になりそうな名古屋近辺に限って快適な転換クロスシート車ばかり。逆だろうと思うのですが。
何かJR東海幹部が個人的に静岡県に恨みでもあるのか??あるいは、リニア新幹線で甲府や飯田を発展させるために静岡のステイタスを下げておく企業判断なのか(それはあまりにも非民主的でもあるが)、18きっぱーに対する愛情?!なのか、判断に苦しみます。
このままでは、熱海から浜松の間が、さながら常磐線取手以北~以東のような空白地帯化しかねません。リニア予算捻出のために静岡で緊縮、という従来のアナウンスは、名古屋圏の車輌のシートを見ていると束民の立場からは全く説得力がありません。
「三島妨害」とは、箱根山の西側から妨害電波を出して、三島以西の地区で、地デジの在京キー局民放を見させないようにする措置です。
静岡地方局の保護のためということですが、これは完全に地区のニーズの真逆を行っています。
もともと三島沼津、とくに三島は、「小さい用事は沼津」「大きい用事は東京」というのが基本であり、住民の目は完全に東を向いています。私も幼少の頃、剣道部の試合を除いては、電車で静岡に行ったことは一度もありませんでした。
また、前市長の小池政臣氏の時代に「東京都三島区」のコンセプトで、ひかり号停車の2時間1本への増加を祝ったのも記憶に新しいところでもあります。北口の開発も順調に進み、あの地域ではかなり勢いを感じます。
ですから多くの市民は、在京5局の民放を見られるケーブルテレビに当然の様に加入していました。それが、強引ともいえる地デジ化と三島妨害により、多くの市民、とくにネットに遠い中高年にとってテレビの楽しみは半減してしまったと聞きます。
「系統分離」「三島妨害」
直接地方分権の議論とは関係ありませんが、とりわけ従来型の、中央 vs 地方 の権力闘争の延長での分権化、道州制を進めると、境界域を中心に、このような分『断』にまつわる問題が多発するのではと憂慮します。
また、歴史的に、現在提唱されているような道州の範囲で区切って行政を行ってきた伝統が、今の日本にありません。思い当たるのは、藩とか、旧県などの規模のものばかりです。その意味からも、行政学的にも少なからぬ疑義を感じます
それよりは、中央 & 地方 をタッグと考え、まず複数の基幹交通網ネットワークを構築することによって国土全体が災害等に対処しやすい多重的な脈管系を整備し、局所災害の対応に効果的に対応する冗長性(リタンダンシー)を確保しつつ、あわせて投資の分散化や耐震化などを進める。これなら分『断』問題も起きませんし、国民経済(名目GDP)の成長やデフレ脱却の惹起にも資すると思います。
しかし、つい油断してトップダウン系の情報であるテレビや新聞ばかりに偏っていると、日本は成熟社会で少子高齢化しているので、公共工事はムダで悪だとか、土建屋は談合ばかりして悪だ、族議員は利権に群がって癒着して悪だ、みたいな論調に偏り過ぎかねません。
すると、このような客観的かつ専門的な情報に接したときに、最初は非常に驚きます。
世間一般の常識と、真逆だからです。
でも、納得できると、少なくとも
『可住面積』という単語(を使用した人)にはダマされないぞ
正しいと信じたい情報を鵜呑みにするだけでは危険だ
ということくらいは理解できます。
この「国土分『散』化」の視点については、非常に新しい概念ですので、今後更なる細かい議論が必要だと思いますが、趣旨の骨子としては、歯科医師として大賛成です。
◆ なぜレジリエンスに歯科医師として賛成か
その理由は、「周りが一丸となって守る/助ける」という発想だからです。
◇ レジリエンス1~弾力性
まず「レジリエンス(Resilience)~靭性」というと、どうしても弾力性や柔軟性というイメージが先に出てきます。
Resilienceでグーグルの画像検索をかけると、雑草や樹木などが出てきます。
これは、歯科的にも非常に親和性の高いイメージです。
歯、とくに神経を取った失活歯(無髄歯)は、長期的に乾燥してひびに弱くなっていきます。
しかし、従来型の差し歯(メタルコア)や継続歯に多い金属製の芯材は、弾性率が低すぎる、つまり曲がらないのです。
「バネ定数」という言葉があるように、金属は曲がりやすいイメージがありますが、歯(象牙質)や骨に比べるととても硬いのです。
いっぽう象牙質はコラーゲン繊維に富み、横方向の力に対してたわむことで脆性破壊を逃れている面があります。
このような、曲がりやすくひびに弱い歯に、曲がりにくい剛体の金属製の芯棒を差し込むと、長期的にはどうしても歯の縦割れリスクが上がってきます。
歯は縦に割れると、残念ながら即抜歯の診断です。
割れ目の中の細菌感染コントロールが不可能になり、周囲骨の慢性炎症が止まらなくなるからです。
そこで、芯材の弾性率を象牙質に近似させることで、当然ながらリスクは大幅に低減します。
このときに、グラスファイバーを併用した芯材が有効なのです。
そのほか
万一のときは自分が壊れたり抜けたりして、ショックアブソーバーになる
天然歯に近い半透明なので、審美的にも非常に有利
という利点もあります。
100パーセント縦破折を防ぎきるとまでは言いませんが、少なくとも、全く同じ設計下では
メタルコアとは比較にならないほど安心であるとは確実に言えます。
また、グラスファイバーの応用としては、金属不使用による軽量化やアレルギー防止の観点、そしてやはり色調の有利さからも、ブリッジの橋渡しの芯材としてもよく用いられます。
(この写真は、大昔に某海外のページから拾ってきたものを加工したものです)
またグラスファイバー製の技工物全般に言えることは、コストが安いことです。
純セラミック製に比べると、割安な価格での導入が可能です。
◇ レジリエンス2~「周りが一丸となって守る/助ける」
しかし、もうひとつの「周りが一丸となって守る/助ける」材料が歯科にはあるのです。
それが「ジルコニア(二酸化ジルコニウム)」です。
ジルコニウムは原子炉の燃料ペレットを収納する鞘の部分の素材としてもおなじみです。
それだけ基本的には信頼度の高い素材であるともいえます。
しかも、この素材は「東ソー」ほぼ一社で、世界中に供給している状態だということで、うれしいことに日本の技術力の高さの証でもあります。
私があれこれ言うのも難なので、よくまとまっているウィキペディアの文章を抜粋します。
安定化ジルコニアは、酸化物無添加ジルコニアに比べて強度、及び靭性などの機械的特性に優れる。これは、破壊の原因となる亀裂の伝播を正方晶から単斜晶への相変態によって阻害し、亀裂先端の応力集中を緩和するからである。この特異なメカニズムを「応力誘起相変態強化機構」と言い、最大で正方晶の約40%が単斜晶に変態する。また、変態を完全に抑制した完全安定化ジルコニアよりも、添加剤の量を減らしてわずかに変態出来るようにした部分安定化ジルコニアの方が機械的特性に優れることが知られている。
安定化ジルコニア(特にイットリア安定化ジルコニア (YSZ))はイオン伝導性に優れており、高温で固体電解質となり、燃料電池や酸素センサの材料として用いられる。また近年、金属に変わる差し歯やブリッジの歯科治療材料としても着目されており、需要が増えている。
簡単に言うと、「割れない」セラミックである、ということです。
その原理を大まかですが説明します。
(詳しくはこんな論文などもありますが、私には難解すぎてアブストで腹一杯ですwww)
ジルコニアの結晶は全体的に見るとこんな感じです。
ジルコニアの結晶には、m相(単斜晶の相)とt相(正方晶の相)の2種類(もっと?)の形があります。
これは、ひとつの粒が、t相 ⇒ m相 に変わろうとしているところでしょうか。
今ひとつ英語が良く分かりません。
基本的に t相 主体のジルコニアにひびが入ると、その周りが m相 に変化(相転移)します。
ひびの先端部分も当然 m相 に変化(相転移)します。
すると(私の読解力では) m相 は t相 よりも体積が少し(3~5パーセント)大きいので、圧力?!でひびを埋めてしまいます。
私はジルコニアのこの図が大好きなのです。
何だか、被災地をみんなで救いに行っているような感じが、しませんか?
普通のセラミックでは、「ばり~ん!」と、ひびが先端まで逝ってしまうのですが、ことジルコニアに関しては不思議なネットワークと相転移で、ひびを止めてしまうのです。
①変身(相転移)
②膨張(相転移)
③抑止(電車ではありません)
この「周りが一丸となって」なイメージが蜂球みたいで大好きなのです。
当然、歯科でも急速にニーズを伸ばしており、現在まで陶材焼付け冠(メタボン)が主流だった、いわゆる『良い歯』の大半が、現在はジルコニアフレームに置き換わったと見ています。
また、欠損上を連結するブリッジでも、割れにくいので、適応症もどんどん広がり、現在では2歯欠損も結構可能になってきています。
さらには、人工歯根(デンタルインプラント)の本体(フィクスチャー)に、チタンの代わりに応用するメーカーも出ております。写真(白い本体)を見たときには、正直、驚きました。
何でも、骨癒着(インテグレーション)はチタンやHAより甘いものの、しっかり結合するとのこと。今後の展開次第では、前歯などの審美領域に大幅な革命をもたらすかもしれません。
(さすがに私はまだ導入の度胸はありませんが、アバットや上部なら全く問題ありません)
ただ、(とくに上顎)前歯部は骨が弱く吸収しやすいので、通法でも再生療法の併用が多い部位でもあり、その辺はネックになりそうです。
いずれにしましても、このような利点づくめのレジリエンスに富んだジルコニアですが、ひとつだけ欠点があります。
それは、単色だということです。射出ブロックなので仕方がありません。
前歯を鏡で見れば分かるように、歯の先端と付け根部分、中間部、隣との接点の部分、すべて微妙な色合いや透明度がことなります。
べた~っと単色な歯を(最終補綴物として)前歯に入れたら、それこそ仮歯のような感じになって、少なくとも私の目には不自然です。
目立たない奥歯にかぶせるならありなのかもしれませんが。
ということで、現在前歯で用いるには、ジルコニアのキャップ(コーピング)を作成して、その上に技工士が職人芸で従来型のセラミックを盛り付けして細かな仕上げをしていく形になります。
それでも、今までの金属重視の時代からしたら、概念が一変してしまいました。
まさに、『レジーム・チェンジ』、金属レジームからジルコニア(レジリエンス)レジームへと、我々は補綴設計思想そのものを変えていかないといけないのでしょう。
そして日本の歯科界では、この『レジーム・チェンジ』に対する最大の抵抗勢力が役所(厚労省)による統制であり、それを是と付託する民意(民主主義)である点が、一応皮肉ではあります。
◆ またまた最後に言います
金属レジームからジルコニアレジームへ変わらなければいけない、などと言った舌の根も乾かないうちに、またいつものお約束ですが、ひとこと。
金属レジームとジルコニアレジームの『共通点』は、何でしょう?
そう考えると、分かりますね。
『治療(と称する行為)』です。
『治療(と称する行為)』が必要になるのは、歯が悪くなるからです。
原因の大半は「むし歯」「歯周病」。
端的に、常在菌と習慣のコントロールができていないから、こういう結果になるのです。
そして、歯科疾患には医科と反対の性質がありましたね(一部慢性疾患除く)。
そうです。
◇ 予防できる(回避あり)
◇ 自然治癒しない(復旧なし)
グループBつまり「事『前』対応」=『予防』じゃないとだめなんです。
「痛くなければ、とりあえず何でもいい」
「痛くなったら、歯医者に行けばいい」
実際痛いときは仕方がありませんが、こういう後手後手の発想は、上の表のような自然の摂理に対しては、本質的に非生産的で残念な感性だと思いますが、いかがでしょうか。
私には、風車に立ち向かったドンキホーテの映像が重なって見える思いがします。
また、歯科は本質的に、そのようなドンキホーテ的な感性を助長するための仕事ではないと思います。だから、治療の新技術が開発されるたびに、嬉しいと同時に若干複雑な感情も否定できないのです。
そして、このような性質の歯科に対して、「事『後』対応」=『治療(と称する行為)』を認めるのは
このようなお口の状態をよしとすることにほかならないのです。
「でも悪くなったものは『仕方ない』じゃない」
確かに現在は、歯科の概念が大きく変わる過渡期の最中なので、それ以前に生じた問題を引きずってしまっているケースについてはそうかもしれません。
私自身を含めて、私の世代より上は、そういう方も多かろうと案じます。
しかし、それ以降の世代、未来ある子供たち、まだ生まれない未来の日本人が、この写真の様になることを、はたして『是』とすることができるでしょうか?
“歯がダメになっても、○○があるから(ちゃんとお手入れしなくても)大丈夫だよ”
そんなことは言えない、できない、こうなって欲しくはない、と、私は思います。
そして、有効な回避の手立てはあるのですから、それを全力で邁進しなければと考えます。
だから、本当のレジームチェンジは、「予防レジーム」へのチェンジなのです。
そして日本の歯科界では、この『レジーム・チェンジ』に対する最大の抵抗勢力が役所(厚労省)による統制であり、それを是と付託する民意(民主主義)である点が、何とも皮肉ではあります。
p.s.
今回は、モデムが壊れたことによる一時的なネット遮断環境で、慣れない焦燥感と暇つぶし重視の勢いがついて、モデムが直ったとたんに、勢いで一気に仕上げました。
おかげで回線がつながったとたんに、ブラウザが下記のようなことになっています。
タブの数が通常の3割り増しですwww
ついでに勢いで、恥ずかしい曲を1曲作ってしまいました。ほとぼりがさめた頃に、おもむろに紹介しようかな・・・
【今回のまとめ】
レジリエンスとレジームチェンジを、歯科的に見ると予防中心になる&絵が多かった・・・