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2020/02/10

昨今、パートナーシップ条例が各地で制定され、同性カップルの権利運動は、一定の成果を上げています。
法律上の『婚姻』ではないため、法的な権利保障とまではいかないまでも、同性カップルの存在が肯定され、社会に対して大きなインパクトを与えました。
しかし、重要なのはこれからです。
同性カップルの存在が、数としてハッキリと視認可できるようになり、そのことに対して、肯定する意見もあれば、逆に極端な拒否反応を示す人もいます。
同性パートナーシップを、同性婚かそれに類似する制度にまで、権利保障の面で高めることができるかどうかは、これからが正念場です。
『婚姻』を伝統的な家制度の柱と考える立場では、同性婚制度を認めることは難しいでしょう。
そうした考え方を否定するのか?それとも、考え方は肯定したうえで、共存を目指すのか?
セクマイ当事者だけでなく、国民的な議論が必要なのです。
往々にして、世論構成には、マスコミが大きな役割を果たします。
今、同性婚に関する世論をマスコミは明確に報道しているようには思いません。
一部の政治家や当事者ではなく、全国民的な議論を喚起していかなくてはならないのです。
パートナーシップ条例は、制定自治体によって、その内容や利用の前提基準が異なります。利用したくても、あまりのハードルの高さに制度の利用を諦めるカップルがいる自治体も存在します。
そのことは、ややもすると、同性パートナーシップ条例の欠陥を表しているとも言えてしまいます。
単に、同性パートナーシップ条例の利用件数で、同性婚制度への期待度を図ることはできないということを、きちんとアナウンスしておかなければなりません。
同性パートナーシップ条例が、全国的に統一的な内容になれば、利用しやすい基準設定になれば、当事者にもっと浸透するかもしれません。
いつになっても、現状に満足することなく、より良い発展を目指していく。
それが、権利擁護運動の不変の法則と言えるでしょう。

行政書士 中橋 優

02:07 | nakahashi | 不変の法則 はコメントを受け付けていません
2016/05/06

熊本地震から3週間になりますが、現地を中心にその被害の深刻さは増しているように感じます。

私が住んでいる福岡でも、熊本地震の際は大きく揺れ、2度にわたる激震の余波に見舞われました。

私自身は何も被害を受けることはありませんでしたが、私の仕事仲間や友人知人の中には、被災地と関わり合いの強い人が何人もいて、その被害状況を聞く度に、今回の地震のすさまじさと、先行きの不安を覚えます。

そんな中で、現地では現在もなお避難生活をしている人が大勢おられます。

そして、その中には、LGBT当事者も含まれています。

避難生活とは、非常時でのことですから、当然に不便で不快な側面があるでしょう。

まずは、生命の安全を最優先させなければなりません。

しかし、避難生活が長引いてくると、避難生活自体が一時的なものとはいえ、その時の生活自体になるわけで、そこには、個人個人の生活スタイルや要求事項、それらの対立など、様々な問題が生じます。

よく報道されるようになりましたが、プライバシーの問題は、当事者にとっては真剣かつ深刻な問題です。

LGBT当事者の場合も、このプライバシーに係る点で、多くの問題が生じます。

具体的には、

・同性パートナーとひっそりと同居していたが、それがバレてしまいそう。

・トランスジェンダーがトイレや浴場の使用を躊躇う出来事が起こる。

・支援スタッフに自分のセクシュアリティを知ってもらった上で対応してもらうべきか悩む。

ということが挙げられます。

自宅を失うことで、これまで自宅内で保たれていたプライバシーが、避難所というプライバシーが限定的な場所で公にさらされることにより生じるものです。

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」という意見が多いと思いますが、当事者にとっては深刻な問題です。

実際にどの程度の当事者が、避難所での生活を続けているのか正確な数字はわかりませんが、数日間避難生活をした後に、福岡の知人を頼って移ってきたトランスジェンダー当事者の方に話を聞くと、「長期間の避難は難しい状況だった。自分の風体が、集団生活では異質過ぎて、常に見世物になっているような被害意識があり、支援自体はとても良い対応をしてもらったが、自分が気を使わなければならないような場面が多すぎて、疲れてしまった」とのことでした。

突然の災害、家を失ったり離れたりしなければならない緊迫感と喪失感、先行きの不安、長引く避難生活での心身両面の疲労、そうした極限の状態でのマイノリティへの配慮は、どうしても後回しにされてしまいがちです。

LGBTだからといって特別な災害対策があるとも思えません。

『LGBTの方は、この避難所へ集まって下さい』というアナウンスが流れたなら、それは避難所ではなく、収容所といっても過言ではないでしょう。間違った対応です。

どんな人であっても、安心して避難できる避難所の在り方を追求することが大切であるはずです。

日本は、いつどこで大地震が起きてもおかしくない国だそうです。

だとするならば、この問題は、検証と研究を重ねていかなければなりません。

命の次に守りたいものは、人それぞれだということも、まずは認識すべきです。

09:42 | nakahashi | 避難生活とLGBT はコメントを受け付けていません
2015/07/09

先日、アメリカ連邦最高裁において「同性婚を禁止する事は、違憲(アメリカ合衆国憲法に違反する)である」とする判決が出ました。
この事は、アメリカ全土で同性婚を可とする事を意味しており、日本でも大きく報道されました。

レインボーサポートネットにも、気が早い方々から、結婚手続の問い合わせが相次ぎました。

『結婚すること』は権利であり、誰にでも等しく備わっている基本的な人権であるとするこの立場は、結婚を「制度」として見がちな我々日本人にとって、ある意味、新鮮なものに映るかもしれません。

そして、結婚することが基本的人権であるなら、同性愛者は、当然に同性と結婚し得るということになるわけです。

制度として、結婚という枠にハマることで、様々な権利義務を発生させるという『戸籍制度』的な発想ではなく、愛する人を人生の伴侶とすることのできる権利としての結婚は、常に一人一人の個人の幸福追求を目的とした権利を保証するものとして考える事ができます。

だとするなら、結婚する相手を選ぶ事は、それぞれの自由であり、例え同性を結婚相手としようとも、それを制限する事は許されないという論法が成り立ちます。

意地悪な人…、いや、先進的な人?は、結婚が個人の権利であるなら、①子供(幼少者)との結婚 ②一夫多妻制or多夫一妻制 ③動物との結婚 ④二次元の相手との結婚 なども認められるべきではないかという主張をすることが考えられます。

これに対しては、結婚は双方で有効に合意する事が必要であるので、①・③・④はその要件を満たしません。そもそも結婚とは何かということを、当事者同士が理解する必要があるからです。

②に関しては、人権の観点からすると、アリですね。もちろん、政策的観点で否定する国は多いでしょう。

我が国でも結婚に対する考え方が、個人の『権利』として捉えられるようになれば、同性婚が認められるようになるでしょう。

個人主義・契約主義に根付く欧米の結婚観は、我が国の結婚観の根本とは相容れないと考える人も少なくありません。

そうした結婚観の違いが、いわゆる多様性として受け入れ始められているのが、現在の日本の状況であると思います。

昨今『嫌婚』という言葉が登場し、そもそも結婚を嫌って、独身の人生を送ることを好む人が増えているといいます。
このことには、様々な背景があるのでしょうが、人生を共に過ごしたいと思うパートナーが出来たのに、結婚しようとは思わないというのは、何だか寂しい気もします。

セクシュアリティに関係なく、我が国の『結婚』をめぐる人々の価値観・考え方は、大きく変化しつつあるようです。

結婚が、嫌で面倒な制度といった捉え方ではなく、権利として誰もが自分の幸せのために持つ権利だということを、肌身で感じる事が出来るような時が来ることを願うばかりです。

02:34 | nakahashi | 制度から権利へ はコメントを受け付けていません
2015/05/09

渋谷区の同性パートナー条例が成立しました。

その後の反応について、当事者の皆さんから様々な意見をお聞きしましたので、そのご紹介です。

・条例ができたことは嬉しい。これを機会に、LGBTの権利が拡大していくことを望む。

・まるで同性婚が認められたかのような誤った反応をする人が増えている事に懸念を覚える。公正証書による手続が必要など、かなりハードルの高い条例で、当事者には使いにくく、使ったところで(証明書を発行してもらったところで)その効果は大したものではない。実用的ではない。

・LGBTに関心が集まっているが、嫌悪感をあからさまに露わにする人もいて、ちょっと怖い。そっとしておいてくれてもいいのでは?

・渋谷区だけでなく、全国的に類似の条例が制定され、やがて国会でも法律として制定して欲しい。

・制度自体には賛成だが、個人的には利用することはない。ハードルが高すぎる。

・パートナーのいないゲイやビアンの肩身が狭くなる。

・既婚でゲイの僕らには、かなり背徳心を煽られます。

・まだパートナーはいないけど、人生の目標が出来ました。

・双方の夫公認のビアンカップルだけど、既婚者でも利用できるのかな?

・良い事だと思う。でも、自分は一生無縁だと思う。制度があっても利用する予定なし。

・法的な権利を与えられるものでないので、無意味だ。

ここ2ヵ月ほどで私が接した皆さんの反応は、概ねこんな感じでした。

実際に利用するという人には、私自身はまだお会いした事がありません。

今回の条例自体には賛同するが、自分自身が利用する予定は今のところないという人がほとんどでした。

同性でパートナーを探すこと自体が大変であるのと、そのパートナーと結婚に近いような関係を公正証書で手続しないといけないので、そこまでのハードルをクリアするという当事者がまだ少ないのが現状でしょう。

この条例が、LGBTの権利擁護に関する本格的な議論の発端になったのは事実です。

今、地方議会や国会において、議員たちの超党派の勉強会や研究会が出来つつあります。

同性パートナーシップ制度が法制化される日は、案外そう遠くない未来なのかもしれません。

06:43 | nakahashi | 同性パートナー条例制定後の反応 はコメントを受け付けていません
2015/02/12

渋谷区が同性パートナーのカップルに対して、結婚証明書に類似したパートナーシップ証明書の発行を検討しているというニュースが速報されました。

正確には、条例案を検討中とのことで、正式に制度としてスタートするには、区議会で可決成立しなければなりません。

ただ、この制度は、法的な男女の結婚のように、夫婦としての法律上の権利義務を規定するものではなく、法的拘束力は無いということに注意が必要です。

それでも、こうした制度を導入しようとする背景には、同性カップルが、住居の賃貸借契約の際に不利な扱いをされたり、医療機関での療養看護について、家族同様の扱いをしてもらえなかったりする不利益を少しでも解消しようということによります。

東京といえば、2020年のオリンピックを控え、世界中からの注目度は、しばらく上昇の一途でしょう。

そうした中で、欧米先進国に浸透しつつある同性婚制度に類似の制度を創設することは、東京の「ユニバーサルシティ化」をより強く印象つけるメッセージ性も有していると言えるのではないでしょうか。

今回の証明書発行を受けるには、パートナー間で任意後見契約を締結していることを条件とするようです。

同性パートナーがお互いの万が一の際に備えて、財産管理や療養看護のために任意後見契約を締結するということを踏まえての要件で、実態に即した大変良い取扱であると評価できます。

任意後見契約は公正証書で行わなければならず、一定の法的手続を行っている事を証明書の要件とするとこで、証明書の乱発を防ぐことができます。

欧米の同性婚制度も、いきなりそうした制度が誕生したわけではなく、今回のような法的拘束力のない制度からスタートしたものもあります。

『風穴をあける』快挙となるのか否か?

3月の渋谷区議会に注目が集まります。

LGBTの人口が比較的多いと思われる都市部を中心に、こうした制度の導入を検討する機運は確実に高まることでしょう。

11:15 | nakahashi | 渋谷区が同性パートナーシップ条例制定か!? はコメントを受け付けていません
2015/01/14

明けましておめでとうございます。

少し充電期間を頂きまして、12月は休載とさせて頂いておりました。

今月からの再開となります。

本年もよろしくお願い申し上げます。

今後は、不定期ではありますが、月2回以上の記事更新をしていきたいと思います。

本年最初の記事は、1月18日(日)に福岡市のアミカス(福岡市男女共同参画推進センター)で行う講演会のお知らせです。

同性婚制度やLGBTの家族観などについて、実際のご相談内容を題材に講演します。

詳しくは、こちらのHPをご参照下さい。

福岡市男女共同参画推進センター・アミカスイベントガイド

10:31 | nakahashi | 講演会in福岡(1月18日)のお知らせ はコメントを受け付けていません
2014/11/04

皆さんは、役所と言われる所に行く機会は、普段どの程度あるでしょうか?

住民票や戸籍謄本、収入証明や納税証明、印鑑証明書の交付を受けるためなら、何度か行かれたことはあるでしょう。

新しい生活を始める際や現状に大きな変化があった際に、役所で様々な手続きが必要になってきます。

そもそも、自分自身に関して、役所で最初にする手続きは何かご存知でしょうか?

それは、出生届です。

もちろん、生まれて間もない自分が役所に提出することは出来ないので、親族等の誰かがそれを届け出てくれることになります。

この出生届から、戸籍への記載がなされ、役所の帳簿(現在では電子データ)に載り、一生管理されていくわけです。

ちなみに、出生届は、医師等が作成する出生証明書と一体になっています。死亡の際の死亡届は、同じように、医師等が作成する死亡診断書と一体になっています。

出生届に始まり、死亡届に終わる、この役所での個人情報管理のやり方は、戸籍制度が出来た明治時代から変わらない方式です。

戸籍や世帯を単位とした「家」単位での管理のやり方は、LGBTの皆さんにとって、壁であり、悩みの種でもありました。

しかし近年、続柄を「長男」とか「二女」という記載を、一部の証明書で「子」という表示に改める等、性別や性的指向に対する先入観を持たせないような配慮がされるようになっています。

以前の記事にも書いたように、嫡出子(結婚した夫婦の間の子供)と非嫡出子(法律上の結婚をしていない夫婦の間の子供)の相続分差別が撤廃される等、戸籍の表示上の区別による実際上の差益が無くなりつつあります。

この先、ずっと先かもしれませんが、同性婚が法制化された場合、出生届の性別欄が無くなる日が来るのかもしれません。

もしそうなったら、行政手続上、どういうことで支障が出てくるのでしょうか?

本人確認への影響? 母子家庭への補助? 寡婦への助成? 

性別とは、果たして、行政手続上で区別されておくべきものなのでしょうか?

真の男女共同参画社会が到来した時、戸籍や住民票に男女の別を記載する意味が問われるかもしれません。

出生届における男女の別は、同じ用紙の半分に記載されている出生証明書の男女の別を踏襲します。

その男女の別は、赤ちゃんに男性器が付いているのか、女性器が付いているのかの別であり、その区別で人生が影響されるような社会になってはいけないはずです。

男性らしさや女性らしさは内心の問題で、誰かから押し付けらるものでも、レッテルを貼られるものでもありません。

セクシュアルマイノリティの権利を考えるとき、男女の性差の諸問題を看過していては、不十分な議論になってしまいます。

我が国のセクシュアルマイノリティの権利は、男女が平等な権利を本当に享受するようになって初めて、実質的に保証されると言っても過言ではないでしょう。

05:09 | nakahashi | 出生届に始まる性別感 はコメントを受け付けていません
2014/10/03

少し前は、同性婚挙式・披露宴を取り扱う式場・ホテル・プランナーなどの事業者が珍しい状況にありましたが、ここ最近は急に増えたような気がします。

同性婚に特化した事業者もありますが、既存の冠婚業者やホテルなどが、同性婚挙式や披露宴をパッケージプラン化するところも現れてきました。

こうした事業者は、この分野に踏み込むことに最初は抵抗があったようですが、実際に行ってみると、良い反響の多さや、市場の可能性を実感して、本格参入を決断するに至ったようです。

利用者の声を聞くと、現場のプランナーやスタッフも利用者に寄り添い、種々の希望を叶えてくれるために懸命に働いてくれたとのことで、概ね良い印象で無事に挙式や披露宴を終えたようです。

そもそも挙式や披露宴などのように、極度にプライベートな事柄を扱う仕事は、顧客に寄り添い、そのニーズを的確に把握し実現していくことが仕事であるといえます。

そうした業界の基本的な姿勢は、顧客のセクシュアリティを問題にしない接遇姿勢であるはずで、LGBTビジネスへの参入には、もともと親和性のある業界であったといえるのではないでしょうか?

我が国には法制度としての同性婚制度は存在しませんが、任意に同性同士で挙式や披露宴を行うことを禁止する法令もありません。

「やりたければ、どうぞ」といった緩い風潮といえるかもしれません。

宗教上や国民感情上でタブー視する観点が少ない我が国においては、LGBTのライフステージ(冠婚葬祭など)やライフスタイルに関するビジネスへの参入は、既存の事業者にとってさほどのハードルとはいえないのかもしれません。

もちろん、LGBT当事者に配慮すべき様々な接遇上の方法論などはあります。

しかし、正しい知識と心構えさえあれば、それを修得することは難しいことではありません。

LGBTビジネスは、競争の時代へ突入しつつあるようです。

12:01 | nakahashi | 同性婚挙式ビジネス盛況なり はコメントを受け付けていません
2014/09/19

平戸オランダ商館をご存知でしょうか?

長崎の出島よりも前、今の長崎県平戸市にオランダ商館が存在した時期がありました。

江戸幕府の鎖国政策が厳しくなり、平戸のオランダ商館は取り壊され、長崎の出島に時代は移ります。

そんな歴史情緒あふれる『平戸オランダ商館』にて、LGBTをテーマにした企画展示「十人十色展」が10月31日まで開催されています。

平戸は観光名所としても知られている場所ですが、この秋、平戸に足を延ばされてはいかがでしょうか?

詳しくは、こちらのホームページをご覧下さい。⇒ここをクリックして下さい。

12:01 | nakahashi | 十人十色展~長崎・平戸から~ はコメントを受け付けていません
2014/09/05

今回は中橋と香川さん(仮名・34歳女性)との対談です。

中「香川さんとは同性婚制度をめぐって、かつて激論を交わした事がありましたが、それをまた再現しようと思いまして、今回はご協力をお願いしました」

香「お手柔らかにお願いします(笑)」

中「こちらこそ(笑) まず、香川さんの素性から教えて頂けますか?」

香「素性ですか?(笑) まず、セクシャルマイノリティではありません。専業主婦です。子供が二人います。夫は会社員です。ごく平凡な家庭の一般市民です」

中「ありがとうございます。さて、香川さんは、同性婚制度に反対の立場でしたね。今でも意見は変わりませんか?」

香「はい。変わりません」

中「同性婚制度に反対する理由を教えて下さい」

香「まず、子供の教育に良くないと思います。家族観が歪んでしまうと思うのです。同性婚をする人が増えたら、少子化に拍車がかかるでしょうし、極端な事を言うと、国が滅びませんか?」

中「家族観が歪んでしまうというのは、香川さんの考える家族観のことですよね。多様な家族の在り方が認められても良いのではないかと私は思いますよ。同性婚をする人が増えたとしても、それを選択するのはそもそも同性愛者の皆さんですから、少子化と結び付けるのはおかしいと思います」

香「多様な家族の在り方って何ですか?家族というのは、父親と母親と子供で構成されるものではないですか?」

中「例えば、シングルマザーやシングルファザーの家庭、ゲイカップルやビアンカップルの家庭なども家族と呼んでも良いのではないかということです」

香「そういう家庭があるのも理解はできます。でも、基本は、両親と子供で構成されるべきだと思います。その基本形を尊重する事が、法律的にも重要なはずです」

中「なぜ、基本形にこだわるのですか?」

香「様々な家族の在り方というのは、結局、無秩序な家族観につながって、家族という概念自体を破壊してしまいかねない気がします。だからこそ、基本形である両親プラス子供という形を大切にし、そういう古来からの家族観を法的にも保護する必要があるのです」

中「両親プラス子供という家族形態が基本であるということには異議はありません。でも、それ以外の家族形態との法的格差を設ける必要はあるのでしょうか?香川さんが心配している無秩序な家族観というのは、あまりにも突飛な考えではないですか?」

香「私から言わせると、ゲイカップルやビアンカップルを夫婦として認めて、法的な家族として認めろという主張の方が突飛ですよ。家族というのはやはり、子供を産み育てるという側面が大きいと思うのです。だから、両親プラス子供が基本形なわけで、子供を持つ可能性が低い人たちの集団を家族として法的に保護する意味はありますか?」

中「現在では生殖医療が発達して、ゲイカップルやビアンカップルが必ずしも子供を持てないとは限りませんよ」

香「そういう先端医療を利用すれば可能かもしれませんが、大切なのは、自然な状態で子供を持てることだと思うのです」

中「香川さんは、自然な状態で子供が持てるカップルでなければ家族と認められないというわけですか?」

香「法的な保護に値する家族には当たらないとするのが妥当だと思います」

中「その考え方だと、家族の価値は子供の有無、あるいは自然に子供を持てる可能性の有無にあるというわけですか?」

香「法的に保護する家族の価値としては、そうだと言えますね」

中「それは何故ですか?」

香「国家にとっては、次世代をきちんと産み育てていくことがとても重要だと思うのです。だからこそ、その機能を果たすべき家族は法的に保護されるべきだし、それ以外の家族は法的な保護の価値までは無いと思います」

中「まとめると、同性婚制度は、子供を産み育てる基本的な家族とはかけ離れた家族像だから、制度自体を法的に保障する必要まではないだろうということですか?」

香「はい。別に、同性カップルの存在自体を否定する気はありません。でも、法的に夫婦と認めて、家族として法的に保護するまでの必要性を感じません」

中「香川さんの言う必要性とは、国や大多数の異性愛者の人たちにとっての必要性であって、当事者の気持ちは全く無視されています。セクシャルマイノリティ当事者が同性婚制度の導入を切望しているのであれば、そこに必要性が生じるのであって、その必要性の内容について吟味すべきです」

香「そもそも家族とは何か?という意見の対立だと思いますよ。私は、家族というのは、子供を産み育てる最少構成単位だと思っています。だからこそ、法制度上の保護を受ける事ができるという見方です」

中「そうですね。家族の定義についての対立かもしれませんね。この溝は埋められないのかもしれませんが、結局のところ、法改正には国会の審議を経る必要があるので、政治的にそういう機運になり得るかという事が全てです」

香「それに当事者の皆さんが本当に同性婚制度の導入を望んでいるのかという点も知りたいですね」

中「その点には同意しますね。だからこそ、当事者の側から法改正に向けた政治的なアピールがされないと、世論に訴えるきっかけすらできませんね」

香「欧米で同性婚制度が導入されつつあるからといって、日本も同じようになるとは限らないと思います。家族観について、私と同じように考える人は多いと思いますよ」

中「そうですね。私もすぐにそういう機運の高まりは無いだろうと思っています。しかし、多様な家族の在り方について、社会はもっと寛容になるべきだと思いますし、そうすることが国益にも適うと思っています。今回はありがとうございました。またいつか続きをお願いしたいと思います(笑)」

香「またいつでも戦います(笑)」

11:50 | nakahashi | 平行線の議論(ある対談・41) はコメントを受け付けていません

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