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2016/08/29

こんにちは。根本齒科室の根本です。

しばらくご無沙汰しております。
最近、Yahooに出てきた記事ですが、フロスには有効なエビデンスがないというAP通信の報告があって、少し気になりました。

こんな記事(ケアネット)もありました(見られないかも)。

これについて私の考えを簡単に述べたいと思います。

最初にそもそも論ですが、まとめて言ってしまうと、
「フロスは、まず歯ブラシがしっかりできた上で」
ということになってしまいます。

そして、フロスには得意な点や不向きな点もあります。

◆ むし歯(間接)と歯周病(直接)のちがい

まず論文を見てあれっと思ったたのは、発表者が(AP通信はさておき)「アメリカ歯周病学会(AAP)」だという点です。
(これ、むし歯よりも歯周病、こどもよりも成人のことかな?)

たしかにフロスは、私の臨床実感からも、ある種のむし歯の発生を防ぐ効果はあっても、歯周病との関連は微妙です。
歯周病の場合、むしろ歯間ブラシの方が圧倒的に向いています。

それはなぜかというと、むし歯はプラークの関与が<>間接的ですが、歯周病はプラークが直接関与するからです。

むし歯は、「プラーク(むし歯菌)」「ショ糖」「歯」「時間」の4要素が重なってできます。

①むし歯菌が糖を食べ、酸を排泄する
②その酸で歯が溶ける

の二段階です。

歯周病は「プラーク(歯周病菌)」だけでなってしまいます。
①歯周病菌カルシウムと結合して歯石になり残留する
 一部はそのまま歯周ポケットにもぐりこむ

①’歯周病菌(歯石)の表面の膜タンパクそのものが害をなす

などのように一段階です。

このよう菌体そのものが害をなす点で、むし歯菌と決定的に異なります。
直接的/間接的、どういうことでしょうか。
分かりやすい例をひとつあげます。

オーストラリアにアボリジニという先住民族がいますが、彼らは昔はむし歯がありませんでした。
現代人のように歯を磨いていたかというとそんなことは決してありませんでした。
それでもむし歯がなかったのです。

ところが白人(もともと流刑者による植民地)の入植とともに砂糖が大量に流入したとたんに、彼ら先住民族の歯はむし歯でぼろぼろになってしまいました。

同じような例として、モンゴルの事情が、丸橋全人歯科の丸橋先生の著書でも紹介されています。
本によると、昔ながらの遊牧などで暮らすモンゴル人には、まったくむし歯が見られなかったのに、やはり西洋文明が流入しているウランバートルなどの子供たちを見ると、日本以上にむし歯に侵されてしまっていたとのことでした。

これは、むし歯菌だけではむし歯にならないことを端的に示しています。
「むし歯菌+砂糖」となってはじめてむし歯になるのです。

これが間接的の意味です。
「むし歯菌+砂糖」
どちらかを外せれば、むし歯にはなりません。

いっぽう、歯周病菌は、菌体の表面に悪い分子(LPS)が並んでいて、これが歯肉に直接触れることで歯肉に刺激を与え、炎症を起こさせます。
だから歯周病菌の作用は直接的なのです。

ざっくりですが、まだ病原菌がカルシウムと結合しないでふわふわのオカラの状態で炎症が起きている場合は歯肉炎、歯石になると歯周病ということが多いです(あまり学問的に正確な定義ではありません)。

いずれにしても菌体(表面の悪い分子)が直接歯肉や歯周組織に害をなすことに変わりはありません。
ですから、歯周病を止めるには、直接菌体(や歯石)を除去して減らすことしかありません。

プラークを減らすことでより大きな効果が得られやすいのは、むし歯よりも歯周病です。

フロスは、基本的に食渣(食べかす)を取るものであり、プラーク総量のコントロールが大事な歯周病には向きません。
プラークの総量をまず減らすには普通の歯ブラシでスクラビング法がしっかりできていることが大前提です。

◆ フロスの向き不向き

フロスがむし歯に有効な場面は、いくつかあります。

◇ なかでも、乳歯のD-E間の仕上げ磨きには必須です。

小児の患者様を診るときに、まず何をおいても見るところは、乳歯のD-E間です。
以前こちらのコラムでも書きましたが、ここは接点が不均等な形をしていて、
食渣がはさまりやすかったり、プラーク(むし歯菌)が取れにくかったりします。

参考までに、私が校医をやっている馴馬台小学校のデータから一部を引用します。

棒グラフの右側は、治していないむし歯の割合です。
3年生は39.1%と、1年生2年生と比べてもかなりの割合です。
しかし4年生になるととたんに激減します。
これは、むし歯になりやすい乳歯のDが交換で脱落する時期に一致しますので、Dがとてもむし歯になりやすい歯であることは一目瞭然です。
ここを守れるのは、おそらくフロスだけでしょう。

◇ フロスで、目立たないむし歯が発見できます。

フロスが引っ掛かる所は、詰め物が合っていないか、そこにむし歯があることを示します。
もちろん接点の部分なので、通常肉眼では見えません。
(光の透過性の差を見て診断するとか、ダイアグノデントペン(高額)で判定するなどがあるにはあります)

けっこう、フロスの引っ掛かりの感じがいつもと違うのは、有効な前兆だと思います。

むし歯ができると通常、片方の接点が崩れて部分日食のように凹んできます。
そこに隣の歯が入り込んできて、接点や歯と歯の距離はせばまるのが一般的です。
そういう状況だと、フロスも通りにくいので、目で見てなくてもすぐにわかります。

△ 歯と歯がくっついているとは、フロスは通りません。

ブリッジや連結冠などが典型的ですが、T-Fixという歯同士の接着剤固定のところや、矯正後の保定装置のワイヤーリテーナーを接着剤で止めたものがついている人などは、そこの部分はフロスが使えないのは当然です。

そういうところは、歯間ブラシやワンタフト(一束)ブラシのほうが効率的です。

△ 強く使うと、歯肉を痛めることがあります。

外側(頬側)や内側(舌側)に比べて、接点の直下の歯肉は大変薄く、すぐに炎症になります。
ちょっと強く歯肉に向けてはじくようにブチブチやっていると、すぐに歯肉を痛めてしまいます。
フロスに血がついてくるようなら、圧力が少し強すぎるかもしれません。

以上になります、
今回は簡単でしたが、混乱しやすい内容でもあったので、自分なりにまとめてみました。
基本的には、菌種もロジックも違う「むし歯」と「歯周病」にはそれぞれ異なる対応を取ることを
頭においておくことです。

【今回のまとめ】

フロスは歯周病よりも、ある特定のむし歯に有効である。

11:19 | nemoto | フロスは●●●には効かない?! はコメントを受け付けていません
2016/07/15

こんにちは。根本齒科室の根本です。

このたび当歯科室で発行している季刊報の院内新聞「種」が歯科専門誌「アポロニア21( 日本歯科新聞社)」の誌面にて紹介されることになりました。
今回はそのいきさつについてご紹介いたします。



過去にさかのぼりますが、3月15日に突然、営業担当の方から医院にお電話がありました。
「日本歯科新聞社の者ですが、今弊誌でニュースレター特集をやっているのでぜひご執筆の方をお願いします」とていねいなお願いをいただきました。
何か簡単そうだったので、とりあえず気軽に、はいとか言ってしまいました。
(面倒そうだったら、後で断っちゃえばいいか…)

するとなんと、その日に鄭重なメールまで来てしまいました。

***********************
根本歯科室
院長 根本啓行先生

先ほどは突然のお電話にて大変失礼致しました。
改めまして日本歯科新聞社『アポロニア21』編集部の○○(仮名)と申します。
「当院のニューズレター」のご執筆をお受け下さり、誠にありがとうございました。

月刊『アポロニア21』の「当院のニューズレター」は、工夫を凝らしたニューズレターを紹介するコーナーです。
根本歯科室様の院内新聞「種」をホームページにて拝見致し、非常に充実した内容に魅力を感じました。その制作の秘訣など、是非お書きいただければと考えた次第です。

ご執筆の参考に、その依頼概要をお送りさせていただきます。
予定と致しましては、2016年7月号に掲載予定で、その締め切りは5月25日(水)になります。
データが重くなってしまいますので、過去のサンプルを2通に分けてお送りします。

なお、よく勘違いされてしまうのですが、営業の類のものではなく、薄謝ではありますが執筆料をお支払いしての原稿依頼となります。
突然の申し出にも関わらずお受けくださり、誠にありがとうございました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
***********************

「アポロニア21(日本歯科新聞社)」というのは、歯科の臨床雑誌ではなく、医院経営に特化した専門誌です。
業界内ではかなり有名で、誰もが一度は目にしたり耳にしたことがある雑誌です。
毎月毎月、勝ち組歯科医院石北会計歯科医院などのオンパレードです。

(なぜうちのが…)

疑問は大きかったですが、せっかくの機会ですのでやれそうなところまで頑張ってみることにしました。

「豚に真珠」というか、「根本にドバイ」みたいな心境です。
(‘A`)

参考にくっついてきた過去の他院の例を何例か見てみて。。。

いやー、びっくり(やっぱりな)!
従業員が20 人くらいはいそうな大きくて立派な歯科医院ばかりです。
記事の内容も高尚で、しかもスタッフの執筆による手書きコラム(これがコンサル的には最良とされているようですね)など、私が個人的に好きでやっているだけの種ではとても太刀打ちできないような立派なものばかりです。

そりゃ、ウチの種はラーメン特集だのカフェ特集だの犬だの糖質制限だの歯に関係ないことばかりですしね。
もう開き直って「うちは院長が一人で歯科と関係ないことばかりやってます」とかやるしかなさそうですね。
でも、何かに取り上げてもらうなんてなかなかありませんので、それなりに頑張りました。

途中で「集合写真とかありませんか?」というメールをいただきました。

これは困った!

うちはスタッフが数人しかいません。
他っちみたいに、数十人とかいれば少しは格好がつくのに…
あまつさえ、急きょ退職予定者が出た所です。

(何とか集合写真梨でお茶を濁さないと)

あまりにもバカっぽい写真ではまっずいので、一応、私が歯科用顕微鏡を覗いている写真と、インプラントの埋入オペ中の写真を2枚並べて、集合写真の代わりにしてもらうことにしました。

そしていよいよ7月号の発売になりました。

そうそうたる先生方に交じってお恥ずかしい限りですが、28 ページ~5 ページにもわたって紹介されています。

「紹介するときは、本文が読めない程度の大きさでの掲載をお願いします」とのことですので、粗い解像度で恐縮ですが、このような感じです。
まぁ、ウチなんか誰も見ないんだから、4128px X 3096px くらいで載せちゃってもいっこうに無問題なんだけどな
(‘A`)


私としては理由が分からないのですが、編集担当の方にはかなり受けたようです。「種」のような内容の院内新聞は、他院にはなかなか無い独創的な内容なんだそうです。

たしかに最近では、歯科知識の啓蒙はほとんど影をひそめ、カフェ特集やラーメン特集、インコとか犬とかデビッドボウイについてなど、とても歯科医院の院内新聞とは思えないような内容です。

ひとつの発見ですが、関連リンクのQRコードを貼るのは親切だとほめられました。
実験的に導入したのですが、評価されてよかったです。
以前のガラケー時代は、QRコードなんか何十秒たっても全然読めませんでしたが、XPERIAになってからは、一瞬です。
そりゃ、QRコードが流行るわけです。

そして意外ですが、創刊号を振り返って「肩に力が入った上から目線の石北会計」と断じたのが、編集スタッフに内輪で結構受けたようです。

以上です。
あまり格好良くない紹介になってしまいましたが、医療雑誌コーナーとか水道橋のシエン社の前を通ったら、お暇がありましたらアポロニアの7月号を探してみていただければ望外の幸せです。

12:59 | nemoto | 院内新聞「種」、専門誌で紹介される はコメントを受け付けていません
2016/06/26

こんにちは。根本歯科室の根本です。

接客の仕事をしていると、いろいろ本音と建前が分かれてくるものです。
とくに、情報のない初診新患(新規顧客)の場合はそうです。

(この方はどんな人と成りだろう)

ざっくりとでも把握したいものです。
そんな時に、問診で特に気をつけてみている部分の話をします。
それはとりあえず

◆ 医院の認知
~当院をどのような形で知りましたか

◆ 最近の受診
~歯科は何年ぶりですか?近所の先生ですかor遠くの先生ですか?

◆ 局所か全体
~今回はとりあえずここだけにしかすかor全体的にも診ますか?

の3点です。

 

◆ 医院の認知

大きく「紹介」「ネット」「通りがかり」の3つに分けて考えています。
私の場合はまずここが一番気になる所です。

◇ 紹介

これは正直、「紹介元のヒトに依る」ところが7~8割wあります。
当院的に「良い人」の紹介であればまず安心できます。
当院的に良い人というのはたとえば、こちらの話に素直に耳を傾けてくれる、とか、定期検診にマメに来る、とか、予防に熱心だ、とか、今まで紹介してくださった方も同じように意識が高い、などが当てはまります。

これがいちばん安心できます。.

逆に、微妙な人の紹介は微妙です。

こちらの話に素直に耳を傾けない、とか、定期検診を嫌がる、とか、予防に無頓着で歯は他人任せ、のような方(仮にAさんとします)の紹介の方(仮にBさんとします)ですと、むしろ(何でAさんはBさんをうちを紹介してきたんだろう?)と悩んでしまいます。
こちらの方針と反対の考えの人に気に入られるというのも、微妙なものです。

先入観なのかもしれませんが、このような紹介元のAさんには、大抵の場合、定期検診の案内を出していません。
ですから、紹介先のBさんに定期検診の案内を出したくなった時にも、Aさんの顔がちらついて出しにくくなってしまう所もあります。
そんなときに「歯の汚れが気になる」「歯石も見てほしい」など、Bさん側から言いだしてくれればすごく助かります。
それを理由にして定期検診の案内を出せるからです。

やはり、AさんとBさんの扱いを大きく変えにくいのです。
後でこんな会話がなされた場合
Bさん「あそこは親切だなあ、ていねいに歯の掃除もしてもらったよ。検診もすすめられたから予約してきた」
Aさん「」

この「」の中は通常「何でお前には言って俺には言わないんだ?」であり、「そうなんだ、じゃあ俺も頼んでみようかな」にはまずならないのが世の習わしです。
そりゃあ、言いたくなかったからだったりする訳ですが、こんなことがあるので、Bさんには申し訳ないのですがAさんとBさんの扱いを大きく変えにくいのです。

正直、処遇には何パターンかありますが、先方の出方によって差をつけざるを得ないのが現実です。

◇ ネット

ネットの最大の特徴は、ある程度当院を調べてから来ていただけることです。
ですからあれこれ説明する手間が省けたりとか、「あとでHPの○○に目を通しておいてください」で済んだりして、「ムンテラ(説明)要らず」なのが最大の強みです。

検索に対する敷居が低いのも特徴で、口コミ一辺倒派の方とは立ち位置が若干違います。ですから最近の傾向とか他院のこともある程度把握していて、情報に対する感度が高いのも特徴です。
「現代は治療より予防の方が大事」などというようなレベルの情報はすでに入っていて、こちらも話が進めやすいです。

しかし、なかには神経質系な方もおられ、一概に安心できない。
「おたくのPMTCはどのようなことをなさるんですか?」
「今日はフッ素は塗ってくれないんですか?」
など、細かいことを質問することで意識が高いことをアピールなさろうとするのかもしれません。
しかし「石北会系」もほどほどでお願いしたいところです。

うちは大衆食堂なんだから、鴨肉に番号なんてついてないよ…
食べたきゃ佐貫じゃなくて永田町に行けばいいのに…

たまに思います。

あとときどき困るのが、全くの初診の方で、1日で歯周検査から歯石まで全部取ってほしい、とおっしゃる方です。
お値段も保険で4000円以上逝ってしまいますし、時間も1時間以上かかってしまいます。
基本的に保険診療は『広く薄い負担』 に対する 『広くて薄い給付』という形が最も不公平が少ないものです。ですからひとりで1時間も取ってしまうような内容は、自由診療であれば別ですが、原則的にはお受けできません。

再初診で定期検診で、という場合は別ですが、まったくの初診で歯の掃除まで1日で全てというのは、そのような理由で現在お断りしています。

◇ 通りがかり

じつは開業当初は「通りがかり」にはかなり警戒していました。実際Psychosomatic problemを抱えた方や、あちこちで断られた系の方などが集中してしまうからです。
当時はかなりもめたこともあります。

しかし最近はだいぶ違います。黙っていますが、実際は「紹介」「ネット」であることも少なくありません。後になって
「じつは友人の○○さんも通っていてね」
「おたくのHPのワンちゃん、かわいいね」
なんて話になることもあります。

もちろんそういう方は、○○さんからかなり事前教育を受けていますし、HPの動物だけでなく、むし歯や歯周病のページにも目を通していることが多いものです。
通していなくても「HPに『歯周病』というコーナーがありますので目を通しておいてください」といえば済むので、説明も楽です。

ひとまずは(半分ガチ/半分△△かも)と半分疑って見ておきます。
その上でその方の雰囲気で判断していきます。
もちろんストライクゾーンの外側の場合は余裕を持って見送ります。
最初から予防やメンテナンスの話など、深入りせず、まずは相手の要望に応えながら、こちらの話は雰囲気を見つつ小出しに出していきます。

昔は最初に当院の方針をきっちり説明して、ふるいにかけていくのが、地域に対する教育、就中、地域貢献だと思っていたのですが、軋轢も多いですし、いわば「予防真理教」みたいなカルト教団みたいな患者層になってしまうのも自分が嫌です…
ですから現在は初診時などは意図的にハードルを下げて、相手中心で話を聞きながら、(こちら側の人だな)と思われる人を拾っていく形にしています。

これらをまとめると

紹介(良)>ネット(良)≒通りがかり(良)>ネット(△)>紹介(△)≒通りがかり(△)

でしょうか…

◆ 最近の受診

受診の間隔が2年以上開いている場合は、おそらく歯科に対する関心が低下している可能性が高いので、その辺は注意しながら見ています。
ただ一概に受診間隔が短ければ歯科に関する意識が高いというものではなく、「数か月前に他院で診てもらっていたが良くならない」などということもあります。

また、受診医院が分かればその患者様の雰囲気がおおよそつかめることもあります。
その医院の先生の方針やスタイルが、すなわちその患者様の歯科に対する意識そのものだからです。

少し前に、某医院が閉めたことがありました。
そこの方がかなり当院にも流れてきたのですが、そこの方はとにかく、定期検診の話をすると怪訝な顔をするのが特徴でした。HPに書いてあるような医科と歯科の違い、事前対処と事後対処の話などをそれこそ理詰めでていねいにするのですが、「通りがかり」の方の場合は「なるほどね、分かりました」ということも多いのに、そこから流れてきた方はおしなべて「…あー、そうなんですか…」のような感じです。

多分金儲けだとでも思われていたのでしょう。
逆なんですけどね。

都内などの遠くの医院の場合は別ですが、最近まで通っていたところの先生のことが近場だったりして(できれば名前も)分かると、ある程度その辺が読めます。
すると、当院よりも上手な医院・評判の良い医院に通っていた方の場合ももちろんあります。
「○○歯科に通っていたんだけど、坂を上るのが辛くてね、こちらに新しく医院ができたのでお世話になることにしました」
このセリフは、初診時にかなり聞きました。
で、やっぱり見ると仕上がりはお上手ですし、患者様の意識も高く、さすがと思います。

いっぽう
「△△歯科に通っていたんだけど」
という方の場合は、
(あー。やっぱり…orz)
みたいなこともあります。。

◆ 局所か全体

もし問診票の「全体的に」に印がついている場合は、とくに成人はスクリーニングの意味を兼ねて、まず全体的な「パノラマX線写真」

を撮ることが一般的です。

しかし、「今回はここだけ」にチェックが入っている場合は、たとえば親知らずや顎関節症などのように、その「ここだけ」の診断にどうしても全体的なパノラマX線写真が必要である場合以外は、それは撮影せず、局所だけの「デンタルX線写真」

の撮影にとどめます。

開業当初は全員といっていいほど、パノラマを撮っていたと思います。
全体的な骨格や治療履歴、(ある場合は)骨の膿瘍や腫瘍が一目で分かるので、大変重宝するからです。
しかし、ある時から注意するようになりました。

あまりない(数百人~1000人に1人程度)のですが、ごくまれに「この写真は必要あるのですか?」などと尋ねられることがあります。
また、「不要な被曝はしたくない」とおっしゃる方もいます。震災後に顕著になりましたが、これは小学生くらいの患者様の保護者の方がおっしゃいます。

こういう場合は、あまり深入りできません。
残念ですが、自分の中で「注意リスト」みたいなカテゴリにチェックが入ってしまいます。

ただ思うのが、(自分だったらどうだろう)ということです。
今は私は歯科医師なので、自分の治療は先輩の所に行くのが安心ですが、もし歯科医師でない自分が歯に主訴があって受診する場合は、「今回はここだけ」にチェックをすると思います。

だいいち歯医者は面倒だし、痛そうで怖いし。。

プロでない私だったら、まずそう思うと思います。
プロの私がそう思うのですから、一般の方の歯科に対する敷居は高くて当然だと思います。

ですから、「今回はここだけ」の方でも、必ず主訴だけを診てすぐ追い返すのではなく、いわゆる相手中心で話を聞きながら、(こちら側の人だな)と思われる人は当然拾っていき、予防メニューなどに振っていくアンテナは常に張っています。

◆ おわりに

医療系でも、歯科とか整体・整骨など、リピートオーダーになりやすい所は、お互いの感覚が近くないとどうしても中断になりがちです。
我々も、正直、そのほうがストレスを感じずに仕事ができます。
そうでない場合に、あたら衝突をしてしまうのは愚の骨頂なのは言うまでもありません。
ですので、(コイツ俺と真逆じゃねぇか)と思っても、まずはハイハイ言うことを聞いてしまいます。
その上で、相手が聞く耳を持ってきたかな、と思う頃に少しづつお話をするようにしています。それでもしついてきていただければ、それは歯科医師冥利に尽きるというものです。
(持たないな、という場合は、当然深入りせずお引き取り願う方向で行きます)

我々も人間ですから、魔法のように布教はできません。
今回も、かなりぼかしながらですが、言いにくいことを言ってしまいました。

【今回のまとめ】

初診時の印象や属性が、その後の診療に影響する。損にならないように。

10:38 | nemoto | 初診時のチェックポイント~どこを見るか はコメントを受け付けていません
2016/06/02

本日、根本齒科室は開業10周年を迎えました。

その日は曇りでしたが今日はさわやかな快晴でした。
当時の想定では今頃もっともっと繁盛しているはずでしたが、今後とも頑張ってまいりますのでどうぞよろしくお願いいたします。

09:05 | nemoto | ★★祝!! 10周年★★ はコメントを受け付けていません
2016/06/01

こんにちは。根本歯科室の根本です。
今回も若干動物がらみの話になります。

経験上、セキセイインコは特に厳しくしつけなくても、極端に人に警戒するタイプでもない限り、軽く人に慣れていてお互いの距離感をつかめてさえいれば、さほど大きな問題は生じません。
むしろ手を怖がらないように人間側が欲望を我慢することと、放鳥中の安全管理が重点になります。
いわばペットとして半完成形といえます。

また私の実家では金魚を飼っていますが、エサと藻を与えるだけがほぼすべてです。
(まれに水槽の掃除もしている)
手は実質的にかからないといっても過言ではなく、ほぼ完成形です。
金魚のしつけなど、当然ですが、聞いたことがありません。

このように手がかからないものほど、完成形に近いと定義します。

とすると犬は、完成形とは真逆です。


しつけない犬など、野蛮で卑俗かつ危険な獣でしかありません。

 人間と遜色ない大便(糞)や小便(尿)を所構わず垂れ流す
 大便を食べ(食糞)、その口で周辺や人間を舐め回す

 誰彼構わず吠える
 誰彼構わず噛み付く
 様々な物をかじり、破壊する

これではお話になりません。
漠然とTVなどを見て(子犬カワイイ)と思っているあなたも、他者にリビングの無垢のフローリングに放尿脱糞でもされたら、よく理解、というか発狂できることでしょう。
いわば犬はぜんぜん未完成形。

おみちょりとテオを見ていると、つくづくそう思います。
テオには申し訳ないのですが、本当に面倒です。
うちの奴の問題行動で気になっていた例をひとつ挙げてみます。

◆ 犬についての見解

散歩です。

たかが散歩と軽く考えている人が多いと思いますが、悪い散歩を繰り返していると、しつけ的に犬の問題行動を助長する結果になったりするので、舐めてかかれません。

「犬が人の前を歩く」

最初は犬の散歩とはそういうものだと思っていました。
これが悪いことだとは全く思っていませんでした。

20~30年ほど前は盆暮れなどに北茨城の父の実家にお邪魔していましたが、そこで飼っていた柴犬の室内犬の散歩をたまに頼まれたりしていました。
とはいっても、犬の散歩など要領はまったく分かりません。

 犬が先に歩いて人間が後
 犬の行きたい方に歩く
 フンはそのまま(又は穴を掘って埋める)   ←ヲイヲイ

当時は世間的にこれが普通だと思っていましたし、実際私もこんな感じでした。
散歩中にシャベルを持っている人もいることは知っていましたが、それは糞を持ち帰るためではなく、野に穴を掘って埋めるためだとさえ思っていました。

時代は変わり(?)自分で犬を飼って散歩するようになってしばらくしたら、そうでないことをネットのYouTube動画などで初めて知りました。
まさに驚天動地という言葉がぴったりなほど、驚きました。

 人間が先に歩いて犬が後
 人間の行きたい方に歩く
 フンは回収(して公園の水洗トイレで処理?)  ←ヲイヲイ

まさに真逆。

ちなみに、フンについては、朝晩の食後は必ず室内で大小をさせるようにしています。
外でしか排泄できない犬になられては、天候の悪い日や、将来犬の体調が悪くなった時に心配だからです。
また、基本は人間の生活に犬が合わせるべきであり、犬の生活に人間が合わせるのは問題だと思います。
それは、犬には『和』『平等』『民主的』といった(たいていの西側)人類共通の概念がないからです。
基本、一直線の上下関係と下剋上しかないのです。
そのような存在を、人類共通の概念がある相手と同じように接しても混乱が起こるだけです。

たとえば中国のような非民主的一党独裁国家に対して、自由民主主義国の国民相手のような
ぬるい対応では、すぐに足元をすくわれてしまうのに似ています。
彼らは国防動員法の元、号令一下、全員が合法的に国のスパイと化します。
また、普段でも誰が民間で誰が公務員で誰がスパイか、わかりません。
スパイなど怖いのでさっさと処刑してしまいたいところですが、スパイ防止法のような自縄自縛的な法律が多すぎます。
平和的に解決なんて、他国あまつさえ非自由民主国に対して通用すると思うところは、自由民主側の思い上がりだと思います。

先日、患者様で数十年間地方議員をやっていた方がいみじくもおしゃっていました。
「日本では、裕福な階層や逃げ切った団塊層ほど朝日的論調のような左翼的な思想に同調する傾向があり、これは自分だけは安全なところで理想論を言って気分よくなりたいからという無責任主義のなせる業だ」とのことです。
なるほどと思いました。
確かに左翼的な発言は、現場労働者やニート・フリーター・非正規などの『現場の人』ではなく、大企業内の正規社員組合員や自治労官公労日教組のような労働貴族と呼ばれるような人、あるいは逃げ切った団塊のような人生勝ち組のような、いわば『現代の特権階級』から主に出てきますね。
むしろ労働者や自営業などのような、自分で働かなければいけないような現場の人ほど、自民党支持だそうです。
彼らはきれいごとは通用しないので、そうならざるを得ない。
経団連が自民党を支持するのはよく理解できるのですが、『現場の人』の支持が自民に流れ、左翼=『現代の特権階級』となってしまっているのは、これは自民側でなく左翼側の堕落だと思います。
だから民進党の議席も伸びない訳です。
戦後日本に二大政党は無理で現実的な選択肢として55年体制しかないって、もうみんな分かっています。
きれいごとって、日本人からは一番嫌われます。

少なくとも、犬にきれいごとは通用しません。
人類共通の概念とか『霊長類的な感覚』を期待してはいけません。

それでも、犬にとっては、きれいごと抜きで『外』は気持ちよいようですね。
ちょっとしかたまってないはずのおしっこや、ちょっとしか残っていないはずのウンチを道すがら一生懸命ひねりだそうとする姿には閉口します。
その分は大目に見ることにしていますが、室内の排泄は必ずさせて室外依存にならないように気をつけてはいます。

また、わざと散歩に行かない日や、夜中に行く日、朝に行く日、昼に行く日、
1日2回行く日などを極力ばらつくように工夫しています。

これは犬に何かを「期待させない」ためです。
藤井聡(内閣官房参与ではない方の)先生など、「ウチの犬は一頭も散歩に行かない」とすら豪語しています。

犬に定時のご飯や散歩を「期待させる」と「習慣化する」。
この、犬に習慣化させてパブロフの犬にしてしまうのがダメなようです。
こうなると、もともと体内時計が正確な犬は、時間がずれたり期待外れだった時に非常にストレスを感じるようになります。
そこで、逆に要求吠えなどをして、結果として飼い主をコントロール、いわば「飼い主をしつける」状態になりやすいとのことです。
もちろん犬は人間よりも上位に行ってしまいますので、問題行動は悪化します。

最初からいつ良いイベントがあるかわからないのが当たり前にしておくほうが逆にストレスが少ないとのことです。

また余談ですが、いつ良いイベントがあるかわからない状態の方が、必ずイベントが起こる状態のときよりも明らかに依存度が高まるようですね。

で、実際に散歩をやってみると、本当にやりにくい。
現実問題として犬は足が速いです。
(公園の芝生で全速力で追いかけたら大体同じくらいだったが、人間の側のスタミナが続かない)
犬はのろまな人間を置いてでもサクサク行きたがる動物です。

気の毒ですが、それでは散歩は成立しない。

<1>ショック法

最初は引っ張って止めていました。
固定具をハーネスから首輪に戻して(ハーネスはかじられて壊されてしまうこともある)
自分より前に出たら、軽くカクンと引っ張る。

そうすると数秒に1回引っ張る感じになって、
犬の首と私の左手の負担がかなり大きい感じになってしまいます。
散歩の前半は犬も先に行きたいのでガツンガツン引っ張られていていますが、最後の方は根負けしたり疲労してゆっくり歩きになるような感じになります。
それでは犬も気の毒なような気がして、当初は良い気分がしなかったですね。

<2>ローリングソバット法

次は、偶然のプロレス技が奏功した例です。
(おススメはできません)

初代タイガーマスク(佐山悟)の「ローリングソバット」という後ろ回し蹴りがあるのをご存知ですか?
それを意識したわけではないんですが、あまりにテオがガツンガツン引っ張るので、業を煮やして驚かすつもりで、寸止めで体の左側で左足の裏を後ろに向けてパッと蹴る振りをして
みました。
そしたら、不意を突かれた犬は、あたかもジャイアント馬場のゆったりとした十六問キックの足に飛んでいく夏の虫、もとい負け役の雑魚のように、自らぐじゃっと足の裏の土踏まずあたりに
鼻から突っ込み、驚いたように止まってしまいました。

気の毒なことをしてしまったものです。
それ以来、時折フェイント気味に「ローリングソバット」の振りを急にすると、犬もびくっと止まって、後ろを歩くようになります。
ただ、数分するとまた前に出ようとして少しづつガツンガツンが始まることもあります。

<3>伸びたら止まる法

リードが伸びたら止まる、もやってみました。
これが今の所一番やりやすい。

 前を歩くとリードが伸びる。
 伸びたら止まる。犬は迷って止まる。
  ↓
 犬が止まったら歩く。
 リードはゆるむ。
  ↓
 犬もセコセコ歩く。
 前に出てまたリードが伸びる。

の無限ループの形になります。
これは犬に、リードがゆるむと歩けて、張ると歩けないことを自ら学習させて理解させる方法のようです。

正直、やり始めでは、止まってばかりで一向に距離が伸びないのは想像通りです。
辛抱強くやるのが重要なんでしょうが、出勤前とか昼休みのスキマ時間に散歩している場合は、時間の余裕がないんです。

そんなときは、始終止まってばっかりいながらも、時折ショック法やローリングソバット(未遂)法を交えて、距離を稼ぐようにしてはいます。

これを毎回やっていると、リードが常に緩んだ状態で散歩ができる時間が増えていきます。

なかなかマニュアル通りに、これが正解というものがないですね。
それでも、何とか工夫しながらやっているのが現状です。

散歩をしていると、他の犬にもよく出会います。
見ると、やはり犬に引きずられてリードが伸びている飼い主が多いように見えます。
しかし、しばしばリードがゆるんでいて、人主犬従な状態の犬もいます。
(そうとう苦労されたり勉強されているんだな)
そのような犬を見ると、飼い主も犬も少し尊敬する根本です。

◆ 歯についての見解

私は犬に関してはずぶの素人ですが、歯に関してはプロの端くれです。
そんな私が問診などで意識していることがあります。

『患者の言うことを、信用しない』

えっ逆だろう、と思われた方が多いと思いますが、むしろ振り回されないように気をつけています。
まず必要以上に答えた内容に期待しません。
こちらからはたくさん質問していくわけですが、向こうがあれこれ枝葉のように
べらべらしゃべりだした部分については、基本的に聞かない。
(この人はべらべらしゃべりだすタイプの人だ)
(直球で答えが返ってこないのは、何か心の中に引っかかりでもあるのだろうか)

こちらが拾い上げるのは基本的にそんなキャラクター情報だけです。

問診は、参考にするだけ。
視診、触診、打診その他画像検査等を組み合わせて、総合的にでないと、正しい診断にはたどり着けません。

もちろん問診を右から左に聞き流す、というわけではありません。
お聞きした内容は所見として細かく記録します。
しますが、通常それが正解ではないので、記録した上で
他の検査を組み合わせて総合的に判断する形になります。

そのときに、問診内容と他の検査の内容を比較することがひとつの判断材料になります。

申し訳ありませんが、初対面では歯主患従、歯尊患卑。
まずは他覚的所見が優先します。
歯がすでにかなりその人となりを物語っているものです。
歯のプロの私に対しては、歯は雄弁に何かを物語ります。

日々歯をしっかり管理して「しつけ」てきたか?
歯を「放し飼い」にして、問題行動を放棄してきたか?

いや、歯どころか、顔面や骨格・体格・しぐさを見るだけでもかなりの情報が得られます。
矯正の先生なんか、会話した声を聴いただけで歯並びが悪いとか分かるようで、これはすごいと思います。

 歯の尖端が摩耗している
 歯の側面がえぐれている
 骨が盛り上がっている
 舌の位置の置きグセが悪い
 唇や頬の位置の置きグセが悪い
 歯肉が赤い位置とそうでない位置がある
 歯の側面がざらざらしている
 歯の表面に細かいヒビが目立つ
 ところどころグラグラしている
 etc

おそらく犬のトレーナーがテオや私を見れば、私が分からない多くのことが瞬時にたくさん分かるのと同じように。

それに対して、初診の問診の返答は想像以上にあやふやで不確かなものです。
だから基本的に、その「歯の状況」と「発言や人となり」がどのくらい一致しているか、という点に注意して聞いているのが実態です。

その落差が少ない人ほど、救いようがある。

 落差が大きい
 歯のせいにばかりして自分のせいにしない
 謝ってごまかして、肝心の生活改善をしようとせずに逃げ回る
 ちょっと痛いといいつつも全体的にボロボロ

こんな面々では、救いようが減少するのはいうまでもありません。
そのような意味で、当初は歯主患従、歯尊患卑でいいと思っています。

また犬の話に戻ります。

 犬のしつけは飼い主の責任
 ↓
 犬の問題行動は飼い主の責任

と、ここ「飼い主の~」で止まってはいけないと前回書きましたが、でもまあよくこのように言われます。
歯はどうでしょうか?

 歯のしつけは患者の責任
 ↓
 歯の問題行動は患者の責任

「歯のしつけ」「飼う」という言い方は語弊があると思いますが、実態としては、ただそこに存在する歯を認識して使用しっぱなしなだけではダメで、日々衛生管理をしたり、悪習癖の改善をしたりするなどの、適切な管理が必要です。
歯を「管理する」と考えれば、犬の躾けとの共通点も見えきます。
まぁ、手間隙はかかります。
犬も歯も、メンテナンスフリーはまだまだ遠い未来の課題です。

「適切な管理」は、歯でも犬でも、バックグラウンドに存在する人間の知識や行動、心構えがしっかりしていないと、だめですね。

でも、歯の「適切な管理」の普及については、国がきちんと制度面からバックアップすべきですね。
ここはドイツやスイスの犬に対する行政の扱いと同様なのは前回書いたとおりです。

【今回のまとめ】

犬も歯も、バックグラウンドの人間の知識や行動、心構えの方がより重要

11:53 | nemoto | 犬「の散歩」と予防歯科 はコメントを受け付けていません
2016/04/20

こんにちは。根本齒科室の根本です。
今日は飼い犬のことを少し話してみようと思います。

 今回の内容は、飼い犬への接し方については
 個人的な主観が多々混じっておりますので、
 あまり参考にしないでください。
 また飼育法や躾には多種多様の理論が存在し
 各人が自由に選択しているのが実際です。

テオ(トイプードル♂ 2015年7月生)を飼ってみて半年になります。
振り返ってみると、おみちょりと違って、すごく手がかかります。
恥ずかしながら、その分いらいらしたり、腹が立ったりすることが結構多かったですね。
(こんなに面倒くさい奴だとは)
(こんなはずではなかったのに)
と思うことが本当にしょっちゅうでした。

私たちはたいてい、ペットショップで子犬を見て、かわいさだけを基準に買ってしまいます。
飼育未経験者で、犬の長所短所、飼育方法のポイントなど確たるところを理解したうえで購入、という方はほぼ皆無でしょう。

犬を飼った経験のない人だとたぶんご存じないかと思いますが、じつは購入して店を出た瞬間からやるべきことがあるんです。

それは何かというと


トイレトレーニングです。

◇知らなかったこと~トイレトレーニング

犬のトイレトレーニングは、とてつもないほど大変です。
しかも最初数日が肝心ときてます・・・

まず買って帰るときに、子犬が入った箱の中を見張っている必要があるのです。
で、中でおしっこをした場合はその時間が何時何分か記録します。
しなかった場合は店を出た時間を記録します。

そして、諸説ありますが、まず家にお迎えしたら

 ①記録した時間を0分として
 ②そこから3時間後の時間になるまで
 ③あらかじめ自宅に用意したクレートに犬を入れておきます。

腹部を地面に着けた姿勢では犬は排尿しないからです。
3時間たったら、犬をトイレ専用サークルの中(ないしはトイレトレーの上)に置き、おしっこをするのを待ちます。したら大げさにほめます。

・・・だそうです(いっしょにハッピー トイ・プードル(西川文二監修 新星出版社))。

排泄をするときは、『床を嗅ぎまわったり』『クルクル回る』のが兆候のようですが、個体差も大きく、ほとんど兆候を示さない個体もいるので、そんな犬だと難易度は格段に上がります。
飼い主様はお気の毒な限りです。
また大のときは「カエルの逆立ち」のような姿勢で数秒踏ん張るので少しだけ時間の猶予があります。
その体勢を確認した後でもぱっと移動させればぎりぎり間に合うことも多いですが、小のときにはその数秒がないので、後ろ足が屈んだ瞬間にもうアウトです。

そんなことを知らなかった私は、段ボール箱から出して、自分のベッドの上に乗せたとたんに大小を一撃づつ食らうはめになりました。

・・・
今、笑った人も多いかもしれません。
でもこれは笑っては済まされないんです。
じつは最初の1回を失敗してしまうと、その瞬間に犬に

ージの外はどこでもトイレ」

という間違った先入観が刷り込まれてしまい、今後トイレのしつけに大変苦労する羽目になるんです([『ケ』に点々なし。『ゲ』ージ(=目盛り)ではないので間違えないように)。
現にウチも半年かかって、まだ完璧とは言えません。
最初にうまくトイレトレーの上でさせることができると、今後が非常にスムーズで、早ければ数日でトイレが完璧になるのもいるようです。

そこで、最初の3日は一日中犬を見張っていないとだめなようです。

「そのために有給くらいとるべきだ」

Yahoo知恵袋などの愛犬家の方はいいます。
私とはまったく価値観が違うようで、そのような方の意見はなかなか素直に入ってきません。

その3日間は、おしっこやうんこをしそうになったらトイレトレーの上に移動させて、排泄させてほめる、というのをひたすらやりつづけなければならないそうです。

その際大事なのは、犬が排泄するときに必ずコマンド(掛け声)をかけ続けることです。

小のときは(例)「シッコ、シッコ・・・」
大のときは(例)「ワンツー、ワンツー・・・」

なかには、小と大を同じ掛け声でやるという流派もあります。

いずれにしても、排泄中は声をかけ続けて条件反射を強化することが必要です。
そして、排泄が終わったら犬をたくさんほめなければならない。

「ほめる?ふざけるな!」

おもわず天を仰ぎます。単に排泄しただけなのに?ほめる?
「ネコを見習えネコを、バカ!」と怒鳴りつけたくなるというものです。

しかしこれを繰り返すと、行き着く先は、人間がおもむろに「シッコ、シッコ・・・」
と声をかけ続けると犬がその場で排尿を行い、「ワンツー、ワンツー・・・」
と声をかけ続けると、犬がその場で脱糞をはじめるようになるんだそうな。

最初は(それは面白い!)と思って、おみちょりに一生懸命教えたものです。
「おみちょり、
『テオ、ワンツーワンツーワンツーワンツーワンツーワンツーワンツーワンツー…』
『テオ、ワンツーワンツーワンツーワンツーワンツーワンツーワンツーワンツー…』
『テオ、ワンツーワンツーワンツーワンツーワンツーワンツーワンツーワンツー…』」

ついに覚えませんでした、はい。
(『テオいい子』 『犬…コラ!』は覚えたのに)

もちろん室内フリーのお留守番なんて、夢もまた夢です。
人がいないときはケージ([『ケ』に点々なし。『ゲ』ージ(=目盛り)ではないので間違えないように)の中なのは仕方ないです。

で、さらに恐ろしいのにほとんど知られていないのが、あろうことか

『犬はウンコを食べる』

という性質です。

通常食糞は、飼い主に隠れて行うことが一般的です。
たとえば午前中出勤して、昼休みに戻って覗いて見ると、トイレトレーのメッシュに少しウンチをこすり付けたような痕があるので判明します。
しかし最初はそれが何なのか理解できてませんでした。

最初はまったく気がつきませんでした。
権勢本能とか何も知らなかったので、私は毎日テオを腿の上に乗せて顔を舐めさせて癒されていました。
(やっぱり子犬ってかわいいなあ!幸せ幸せ)

しかしあるとき私は決して悟ってはいけないことを悟ってしまったわけです。。
全身の力が抜け、腰から砕け落ち、生活する気力が萎えてしまいました。。
(・・・やりやがったな、テオめ!)

それ以降ただちに中止したのはいうまでもありません。
こいつがそんなクソ野郎だったなんて、まったく知らなんだ。

食糞はなかなか治りません。たまに糞がトレーの上に置きっぱなしになっていることもあるのですが、放置しておくとたいていは食べてしまいます。
ひどいときには隣の部屋で10分くらい調べ物をしている間に、なんてこともありました。

これをごらんいただきたい。(クリック)
効かないことで有名な食糞防止シロップ(画像検索)です。
犬の食糞には本当に多くの人が悩んでいるようです。成犬になると落ち着くこともあるようですが、続いてしまうことも決して少なくありません。

私が非常に大きな問題だと思うのは、犬を飼わない人達の間に、このような恐ろしいことが一切伝わっていないことです。

私は大学院のときに実験動物のマウスを一括で管理していた経験があり、またハムスターを同時期に飼っていた経験から、齧歯(げっし)目の動物が食物繊維の補充のために食糞をすることは知っていました。
ちなみにマウスやハムスターは、尿は臭いけど糞は無臭です。
しかし尿はケージ内のきまった隅の一箇所でしてくれます(糞はどこでもしてしまいますが)。
とはいっても米粒くらいのザラザラした顆粒のような糞で、管理はインコ以上に楽ですが。

ところが犬ときたら、自分のだけでなく、散歩中に他犬の糞も食べたがるから気が抜けません。
私の自宅でも、数回現行犯で見つけて、まるで剣道の試合開始直後のような気合で怒鳴りつけた(私は剣道部出身です)ことがあります。
テオの奴ったら、フセの態勢のままでこそこそガニ股でクレートに逃げ込んだものです。

で、ネットで引いたら、出るわ出るわ、全国各地の食糞犬どもorz
対策は、どうも、犬が糞をするところを見逃さないようにして、糞をしたら「ほめて」即座に糞を片付ける、などという、ひたすら回りくどいもののようです。

この、いちいち「ほめる」のが納得いかない。
「ほめる?ふざけるな!」

おもわず天を仰ぎます。単に排泄しただけなのに?ほめる?

「ネコを見習えネコを、バカ!」と怒鳴りつけたくなるというものです。

だいたい人間が人前で立ちションや野グソをしてほめられるか?
ありえない。絶対にありえない。
犬尊人卑もここにきわまれり。
それを「失敗」「粗相」などという中性的かつ抽象的な言葉で美化しようとする風潮がまたいただけない。
単なるお漏らしに過ぎない。
あまり犬に甘いと、自分の倫理観も犬に近づきそうで・・・

だいたい犬にイラついているときなど、こんな妄想が頭の中を駆け巡ってしまいます。
まだまだ飼い主初心者な根本です。

◇知らなかったこと~ワクチン待ちと「社会化期」「恐怖期」

今まで書いてきたように、まず子犬というだけで飼育の負担が大変です。
しつけの入った成犬から飼うのが理屈上は一番楽なんだろうと思いますが、やっぱり子犬のかわいい顔を見たいというのが人情なんでしょうね。
(トイレのことは気がつかないかもしれないけど)

あと、子犬から買ったほうが懐きやすいと思うのかもしれませんが。。
ところがその件で失敗しやすい点ですが、3回のワクチン終了待ちの間に、貴重な『社会化期』を無駄に逃してしまうミスを犯しやすいのです。

子犬は法律で生後4ヶ月までに3回ワクチンを打つことが決められています。
その間は散『』をさせてはいけないと獣医さんは言います。
(そのほかに狂犬病の予防接種もあるが今回は省略)

通常ペットショップ(イオンペットなど)に行くと、陳列されているのは2ヶ月前後の子犬で、とてもかわいらしいですね。
しかし、だっこさせてもらおうとすると、手に消毒スプレーを吹き付けてからということになります。
これは上記の理由により感染予防のためです。

そして悩ましことに、この生後2ヵ月~遅くとも3ヵ月の時期は『社会化期』とよばれる大事な時期で、この時期に親しんだ対象に対しては終生親愛の情を失わない、とされる時期です。
ぜひ飼い主さんはこの時期に自分自身も含めて犬にさまざまなものに触れさせたいのはやまやまです。

また、親兄弟と遊ぶことによって他者との距離感や手加減を知ったり、環境になじんだりする時期でもあります。

いっぽう4ヶ月を過ぎると今度は『恐怖期』というデリケートな時期に入るんだそうです。
この時期には逆に、他の犬にほえられたり、人間に叩かれたりすると、今後ずっと先入観として恐怖心が残り、散歩を嫌がったり人間をおびえるようになってしまう、ある意味逆説的に大事な時期です。

この時期はなるべく当たらず触らず、犬に八つ当たりとかもせず、不必要な刺激は避けて、穏やかに日々をすごしたいところです。

しかし私も後になって知って後悔したわけですが、3回のワクチン終了待ちを待っている間に、『社会化期』が過ぎてしまい、『恐怖期』に入ってしまうジレンマは、失敗したと思いました。

正解は、この間については

 △他の犬と触れさせる
 △地面に触れさせる

ことをしなければ、屋外に出しても良いので

 ○抱っこして散歩
 ○自転車のかごなどに乗せて散策

などはまったく問題なく、積極的に外に出すということだったんですね。

(早く散歩に連れて行きたい!)
毎日忸怩たる思いでじれながら、私はずっと犬を屋内に置きっぱなしにしてしまいました。
せっかく自転車があったのに、大変もったいないことをしたものです。

もっと言うと、その後の6~7ヵ月以降は『反抗期』といって、急に命令に従わなくなったりトイレの失敗が増えたりするようになるようです。
これは、群れの中で自分がどのくらいまで許されるかを測る意味もあるようなので、ダメなものはダメなラインは堅持しますが、あまりこちらも意固地にならないことが重要なようです。

犬は大脳新皮質は貧弱ですが、旧皮質の感情をつかさどる部分は発達しているので、感情的な喜怒哀楽はすぐに把握されてしまいます。
ここでかっとなって虐待や折檻などしてしまうと、今後長い年月にわたって、臆病の裏返しとしての攻撃性の高い犬や噛みグセのある犬などになってしまうようです。

◇知らなかったこと~犬の権勢本能

子犬、とりわけトイプードルの子犬はかわいいですよ。
あのテディベアになりきらない”子犬カット”。誰だって思わず抱きしめたくなります。
しかし、犬に対していきなり抱きしめるのはご法度なのをご存知ですか?

犬には、人間と違って、民主的とか平等とか和という概念が皆無です。
自分が所属する「群れ」の中での上下関係しかないんです。
そして常に下克上、隙あらばリーダーの座を狙っています。

犬には弱いとやさしいの区別がつかない。
犬には強いと悪いと凶暴の区別がつかない。

まるでどこかの国の人のようです。

ちょっとしたことでも、たとえば「おすわり」「ふせ」「まて」などをさせて、あくまでも指示の励行に対する報酬として抱き上げるような体裁が大事なようです。
そうしないと、お犬様が人間のことを自分の家来だと思ってしまうようです。
何もしないで抱き上げたりすると、飼い主がお犬様にご機嫌伺いしたり魅力に負けたりしてだっこしたとか思うんですね。

なんと面倒なんでしょう。

基本的に、犬に対して、人間が人間に対するようなほめ方、かわいがり方、気遣いとかをすると、たいていの場合、人間が犬に対してご機嫌伺いをしているように見えたり、人間が下位であり自分が上位だと思ってしまうようです。

それは、他のことでもそうなのですが、犬は旧皮質の感情が豊かな割には、大脳新皮質が非常に貧弱だからだそうです。
大脳新皮質は、人間が論理的に思考したり、筋立てて考えたりするところです。
しかる、ほめる、かわいがる、などの人間的な行為は、大脳新皮質の働きです。
犬にはこれが貧弱なので、これらのことを理解できないんだそうです。
「民主的」とか「平等」とか「和」など、さらに無理な話です。

だから犬の本能の中に残っている、感情の起伏の利用と、リーダーっぽい「受け入れる」的な接し方で接するしかない、と、確か森田誠さんが動画で言っていたと思います。

うまく言えないのですが、中高の体育会系の先輩後輩を軽くした感じかな?とか、AUのCMではありませんが、桃太郎が連れているキジやサルなどの子分的な感覚とかで接するといいのかな???

 いきなり抱き上げる、
 胸より上でだきしめる、
 ソファやベッドで一緒に横になる

この辺全部だめです。
これらをしてかわいがりたいから飼った、もとい買ったのに、接し方やかわいがり方に大きな制約があり、守らないと問題行動犬になってしまう。。

思い切り抱きしめ倒すことが夢だったのに・・・大きなストレスだ。

 トイレを決められたところでしない
 室内 マーキング 放尿が増える
 他人に対して吠え掛かる、とびかかる
 指示を聞かない
 指示に対して歯を見せて唸ったり、あまつさえ噛み付く

リビングの壁紙のあちこちに向かって犬が足を上げて放尿・・・
想像しただけで卒倒しそうです。

そんな犬にキレて体罰を、などということになると、先ほど述べたように犬は「叱る」という概念を理解できる脳を持っていないので、ただただ恐怖なんだそうです。
でさらに犬が臆病になり、防衛本能が悪い方向に出て、人に対して逆に唸ったり噛み付いたりする犬になってしまう。

また犬にとっての放尿には謝罪の意味をもつこともあり、恐れるあまり嬉ションならぬビビリション、謝罪ションなどというものもあります。
これらは犬にとっては誠意のつもりなんだそうですが、想像するだけで阿鼻叫喚です。

なんと人間にとって都合の悪い論理体系なのでしょう

でも犬は抱っこしたい。

最近は、妥協案として、犬をソファに仰向けに押さえつけて、その上にのしかかって頬ずりしたりとか、
ホールドスチールをさらに進めて、正座した股間に犬を収めて伏せさせて、上からお辞儀して頬ずりとかするように気を使っています。
これなら犬よりも下に見られることはないと思いますが。。

 でもお行儀の悪い日は

  犬4の字
  犬三角
  犬ひしぎ逆十字
  ワンコワルスキー
  ワンコブラツイスト
  etc
  (最近は控えています)

 などで犬がキャインというまでお仕置き?!

そうそう、食事がまたやっかいなんです!

必ず人間が先に食べないといけません。
犬のえさやりはその後です。
これは犬の群れの中でリーダーより早く食事を食べる犬はいないという本能の行動規範からです。
でないと犬が人間のことを家来扱いするんだそうです。

これが本当に大変なんですよ。

こっちも夜はあまり食欲がないので、食べない日も多いんです。
夜にちょっとお菓子をつまむ程度の日も多いです。
でも、犬がいる以上、何か食べているふりをしないといけない。
仕方がないので、少しもおなかがすいていないのに、小粒のあられやビスケットを少量、さも勿体つけて食べているようなしぐさで見せつけたくもないのに犬に見せつけ、それからようやく犬のエサやりです。

はぁ~(‘a ) aaマンドクセ

これは散歩でもそうです。散歩にも

犬に先を歩かせない
犬は左につかせる
コースは人間が決める
コースは固定化せずランダムに変える
拾い食いや電柱のにおい嗅ぎはさせない

などなど、犬に下位と思われないようなさまざまな細かい注意点があったのはご存知ですか?

また、行動全般の改善効果を持つしつけ方のなかに、
散歩の練習のような「リーダーウォーク」という面倒なトレーニング法があります。
YouTubeの動画を見ていると、いちいちこんなことまでしないといけないのか、と思い、ひたすら萎えてきます。

◆なんでも丸投げ、日本の悪習癖

これらはたいていの場合、飼って初めて(こんなに大変なんだ)と気づくことが多い。
ペットショップやホームセンターでかわいい子犬を見ている中で購入に踏み切った10人中9人がほぼなにも考えていないでしょう。

いっぽうスイスやドイツなどのヨーロッパでは、飼い主の講習受講義務もしっかりしていて、1匹17万近い高額な

『犬税』

と並んで、購入の必要条件となっている国も少なくありません。

犬とはこのようなものだ、
このように飼え、
このようにしつけろ、
このようにトイレをしつけろ
etc

社会的に犬(というより飼い主)の(標準的な)教育と積極的な管理を行うことで、犬に対する共通認識(一定の理解と秩序)が生まれます。

その前提があるからこそ、鉄道や食堂を含め公的な場所で犬が許容されやすい。
犬好き、犬嫌いであるなどにかかわらず、飼い主でない人が社会的に犬とはこういうものだという共通認識がしっかりあるんでしょう。

もちろんに犬に対する不理解からの殺処分はゼロかまたきわめて少数です。
「ティアハイム」と呼ばれる保護センターもあって、初心者はそこで犬を探すことも多いようです。

もちろんこれらは行政がしっかり予算をつけて行うべき仕事なのはいうまでもありません。
とうぜん国を挙げてなので、地方自治体というより国家事業として厚労省か文科省か分かりませんが、腰をすえて行ってほしいと考えています。

いっぽう日本では、かわいいかわいいのキュートレスポンスだけで購入させようとするので、ペットショップの展示販売におけるストレス蓄積や社会化期の逸失、犬を犬とも思わない悪質なパピーミルの問題などが絶えません。

で、後々「こんなだとは知らなかった」「だまされた」と飼い主が嘆くトラブルが多い。
最近の安易な室内犬ブームも、深く考えると疑問も多いです。

室内犬の世話といえば、正直そのうち9割がウンチおしっこの世話(食糞含む)で、のこりがイタズラ対策です。
ウチのテオも、とにかくティッシュを食べたがります。
先輩のおみちょりが遺した中の数少ない悪い教訓のひとつです。

で、甘噛み、飛びつき、マーキング、トイレ失敗などなど問題行動の頻発を招き、結果として割合安易に保健所に、となる。

この辺のトラブル解決のキーは制度設計、しかも自治体ではなくて国家単位の制度にあると考えます。
世の中、安易に民間に投げてはいけないものもあります。
このトラブルを誰が責任を取るのかが不明確になるからです。

現状のような状態での安易な「殺処分ゼロの取り組み」は、ともすれば飼い主が気の毒な面もある。
飼い主の自己責任を問う前に、保護犬制度とか事前の飼い主講習とか行政がやるべきことがあるように思うのです。

私がもっとも違和感を感じるのは

「問題のある犬はいない。
 問題のある飼い主がいるだけだ」

という一見俗耳に入り易いレトリックです。まったく納得がいかない。

このようなレトリック、というかウソにころっとだまされるのが戦後日本人の悪い点です。
だから「戦争中にアジアの国々に迷惑をかけたから謝罪し続けなければいけない」
などという嘘八百にもころっとだまされてしまう。
なんでも自分がウケに回ってしまえば、とりあえず波風は立たないだろう、と。
そのような態度は、ひとつうは裏を返せば自分の万能感から出ているものなので、むしろ傲慢です。

もうひとつは戦後占領政策におけるWGIP(War Guilt Information Program)の中での日本弱体化教育の一環でそのような思考が自然と身についてしまっている面もあるかもしれません。

「問題のある犬もいない、
 問題のある飼い主もいない、
 問題のある制度があるだけだ」

まあ、私はそう素直に思うのですが、どうでしょう。

行政がしっかり犬と飼い主に対する積極的なコミットを負うようになって初めて、社会が(犬を飼っていない人も含めて)犬を信用するようになり、犬がレストランや鉄道など公共の場から締め出されることが激減し、ドッグランも増えて、悪質なパピーミルもなくなる方向に動くのではないでしょうか。

◆予防歯科も丸投げ、日本の悪習癖

こういうことがつい気になってしまうのは、私が歯科医師だからというのも大きいかもしれないですね。

普通の人は、でもやっぱり
「問題のある犬はいない、
 問題のある飼い主がいるだけだ」
で止まるんでしょうね。

私は「なぜ飼い主がそんな問題を抱え込むのか」にまず目が行きます。
仕事柄ですかね?
日常「なぜこの患者様がそんな問題を抱え込むのか」ばかり考えているんです。

 なぜ歯を磨けないのか
 なぜ甘党が収まらないのか
 なぜ無断キャンセルばかりなのか

歯のことよりも、そんな患者様のバックグラウンドにばかり意識が集中します。
表面の歯ばっかり見ていても、埒が明かないのが歯科医療です。
食習慣や生活習慣などがばっちり出るのが歯です。

こう考えていくと、国を挙げて予防中心などに振ってもらえれば、多くの人のむし歯や歯周病も未然に防げるのに。
いつも思います。

でもそれには、予防面での予算拡充と引き換えに、治療面での予算を圧縮する必要があります。
もちろん税金の無駄遣いを防ぐという面もあります。
しかし一番重要なのは、「事前的モラルハザード」の問題です。
保健の治療面の予算を拡充して、あれもこれも保険が利くようにしておくと、国民がそれに甘えてしまうんです。

予防努力を怠るようになってしまい、定期検診には行かないとか歯医者は痛くなってから慌てて駆け込むとか、犬ではありませんが問題行動が制度設計のせいで顕在化してしまうんです。

移行期間などの十分な配慮は当然必要ですが、将来の国民の口腔健康を考えたら、思い切って予防中心に移行していくことで国民の行動の方向を変えていくべきだと思います。
それでやっと歯科の有病率の上昇が大きく抑止されるのではないでしょうか。

現在も、厚労省は保険治療利権があるので、予防歯科が大事だという姿勢を取れません。
だから予防歯科は全部民間に丸投げです。
幸いなことに、理解のある保護者の方も多く、最近はカリエスフリーの子も増えてきましたが、幼児検診などをしていると、むし歯が「ある子に集中してある」んです。

まあ、第一義的には親の管理不行き届きでしょうね
で、そこで止まるのが一般の方とか増すゴミの視点です。
「なぜその親が管理不行き届きになるのか?」
その親の管理が甘くならないような行動に誘導するのが政治だと思います。

今のような保険治療万歳の制度の下では、予防が大事だといっても、耳に入りません。

「治療のほうが安上がりなんだから、いいじゃん」
「日本は自由で民主主義の国だから、へんな強制されたくない」

制度が悪いと、こんな感じで愚行権を拡大解釈されて「危険な安全地帯」に逃げられてしまいます。
こんな逆境の中で、予防の大切さのような、患者様が予見していないような事柄をしっかり耳に入れるのは、至難の業です。

私は、福祉の基本単位は国民国家だと考えています。
ですから、行き過ぎた自由も、時には問題だと思います。

犬でも予防歯科でも、欧州は日本とは違います。
社会全体で小さいころから(メンテナンス)定期健診に通い、口腔衛生レベルを下げない努力がなされている。
行政が積極的にコミットしているので、結果メンテは安く、治療は高いことになっています。
必然的にみんな治療サイドに落ちないように一生懸命です。
だから子供のころからプロによるコーチングが行き届いていて、エラーが少ない。

アメリカはまた特殊で、企業~政府~国民という3つ巴の分裂社会になってしまっているのがヨーロッパと違うところです。
企業が規制を嫌いますので、どうしてもオバマケアなどのボトムアップ的な国民福祉がおろそかになりやすい。

犬もそうで、やっぱり売らんかなのところがあるようです。
そのあとに訓練士などの商売で儲けるのがさかんなのがお国柄でしょうか、シーザーミランの顔などを見ていると、そんな気がします。
また都市部で、ドッグウォーカーという散歩代行業があるのには驚きました。

さて、テオですが、この間本当に久しぶりに粗相(小)をしました。
しかも1日2度も。
ちょうど五七日に当たる日です。。

おみちょりがいなくなったとたんに、突然おりこうさんになって、
(これはおみちょりの霊訓にちがいない)
などとひとりごちていたのですが、室内に出しっぱなしのままあまり構わなすぎもよくないみたいですね。

私にこんなことを言う資格は全くないのですが、それでも、五七日にもなったのですが、玄関にたどり着いただけで聞こえてくる「お迎えのさえずり」が聞こえてこないのは、やっぱりさみしいです。

【今回のまとめ】

制度設計を事前予防型にすることで、犬も予防歯科も良い結果が出る

09:38 | nemoto | 犬と予防歯科 はコメントを受け付けていません
2016/03/10

このところ、コラムの更新が滞っており、ご迷惑をおかけしております。
卑近で恐縮ですが、ペット関連でトラブルが続き、結果として大変残念なことになりました。
現在はいまだ悲しみに取り紛れ、心が落ち着きません。
もうしばらくしたらこちらも再開したいと考えておりますので、今しばらくお待ちいただきますようお願い申し上げます。

根本

08:14 | nemoto | おわび はコメントを受け付けていません
2016/01/22

こんにちは。根本齒科室の根本です。
遅くなりましたが、本年もよろしくお願いいたします。

さて、今年から国民の皆様に朗報があります。
待ちに待たれて10年以上、やっとですが、

「ファイバーコア」

が保険適用になりました。
これはいったい何でしょうか?

◆ 「コア」って何?

簡単に言うと、「コア」というのは、歯の土台を作るための芯材です。
コアは「コア部」という頭と、「ポスト(又はダウエル)部」という足部分でできています。

むし歯で頭が朽ちてしまったりすると、土台を立ててかぶせなければなりません。
昔は、かかしのように芯棒のついた人工修復物を差し込んでいました。なので現在でも人口修復物一般を「差し歯」と表現します。

しかし、一体型は安定性が悪いので、例外的に上下の隙間が少ない前歯などを除いては、現在ではほとんど用いられなくなりました。現在は「コア」を土台にはめて、その上から「かぶせ物」の型を取ることが一般的です。

「コア」にはさまざまな素材が用いられてきましたが、最近は、保険外診療だとこの「ファイバーコア」と、保険の範囲内では、銀合金で鋳造した「メタルコア」、口の中で光で固まるプラスチックペーストと「ネジ」で作る「レジンコア」がありました。

◆ 神経を取ると歯は変質する

神経を取った歯は、長期的に乾燥して、もろくひびがはいりやすくなります。
また、メタルコアは、歯の象牙質よりも硬く、また弾性係数(≒バネ定数)も高い(=曲がりにくい)のです。

これらより、強い力がかかると、メタルコアのポスト先端からひびが入って、歯を縦に割ってしまうことが多かったのです。割れるときは、あるときバキッと逝くこともありますが、無症状のまま推移して、どうも最近膿が出やすくなったとか歯が揺れるような気がするといってレントゲンを撮って判明することも少なくありません。

ちなみに、歯が縦に割れてしまうと、保存不能です。
ですからメタルコアのトラブルは、歯にとって致命的です。
それでも昔は「歯の寿命」みたいに捉えられていました。

だから私はメタルコアが嫌いでした。

◆ 変質した歯に優しいファイバーコア

これらにかわる「ファイバーコア」のしくみはというと、簡単に言えば、

◇ファイバーポスト
◇被覆材

の2種類からできています。
「ファイバーポスト」というグラスファーバー製の芯材を、特殊なプラスチック(繊維成分の多いプラスチック)の被覆材で接着性に覆って作成します。

「ファイバーポスト」は、さらに簡単に言うと、釣竿の先端と同じようなものです(釣具屋で釣竿の先端だけ買ってきて、コレを自作していた奴の話を、以前ときどき聞いたことがあります。一応歯科の材料は薬事を通ったものでないといけないという規制があります・・・)。

そして、ファイバーコア専用の被覆材の中には、グラスファイバーの細かい繊維がたくさん混入しています。ポスト部はほぼこのハイブリッド素材になります。

ファイバーコアは、以下に述べるように、大きく2つの利点があります。

◇根にやさしく、根が割れにくい
◇半透明なので審美的である

根に対して優しい理由は、弾性係数が象牙質のそれとほぼ同じなので、歯を割りにくい点です。
また万一想定外の強大な外力がかかったときに、自らが壊れて歯の根に被害が及ばないようにする性質もあります。
金属だとこうはいきません。ひたすら歯の根を壊す方向に働いてしまいます。歯よりも曲がらないので、ポストの先端から縦に歯を割ってしまうのです。

ファイバーコアのこのような歯質保護の性質は、我々にとっての大きな魅力でもあり、(保険が利けばいいのに)、といつも思っていました。銀合金の「メタルコア」は歯に対する負担が大きく、残り少ない歯やかむ力の強い人の歯ではしばしばトラブルの元でした。

でも当時は保険が利いていなかったので、自由診療でやるしかありませんでした。

そこで、何とかご理解を得ようと、ファイバーコアのチラシを作って院内で配っていたこともあります。
文章を、以前のチラシの原稿から抜粋してみます。

************

当歯科室にも、差し歯が取れたといって来院される方がいらっしゃいます。
よく見ますと、残った歯の根が切り株状に腐っており、歯にヒビが入って割れてしまっているものも少なくありません。残念ですがそうなると基本的には抜歯になってしまいます。どうやら、金属の土台によって長年にわたり歯にヒビが入った状態になり、そのすきまから長期的にバイキンが浸入、ついには割れ目まで虫歯になってしまっているようです。
神経を取った歯は、補強するために「コア」という土台をいれ、その上から冠をかぶせる方法が一般的です。しかしやはり、神経を取ると歯は枯れ木のようにもろくなりますので、どのような形と材質にすると歯が割れにくいか、ということが長年研究されてきました。
ごく最近になってようやく厚生省に認可されたこの特殊なグラスファイバーは、たわみ具合(弾性率)が天然歯と同程度で、非常にしなやかで丈夫、金属と違い、歯が割れません。万一のときも自分が壊れて歯の根を守るクラッシャブルゾーンとしての役割もあります。

色調が半透明のアイボリーなので、光の透過性が非常に歯と似ており、金属を用いないオールセラミックスと併用することで従来の差し歯では考えられないような審美性と自然な感じを獲得することができます。
欠点は、保険のルール上、ファイバーコアを装着すると、その上のかぶせ物だけ保険で、ということができないことです。

************

今から見ると、何かカッコつけたイケすかない文面ではありますが、まあそういうことです(個人事業主になって全部背負ってしまうと、この程度の衒(てら)いなどどうでもよくなってしまう)。

また、保険の歯ではあまり用がないことですが、ファイバーコアは半透明の色調です。金属を裏打ちに使わないオールセラミックなどでは、歯の色味の深みなどをうまく表現できます。金属裏打ちタイプの場合は、まずその裏打ちの金属の色が透けて暗くならないように「オペーク」という不透過性の強い色を塗ります。このせいで、歯の色味の深みがうまく表現できず、不透明感の強い色調になってしまうのが欠点でした。

こんなところも、ファイバーコアの得意技です。

ただ、特殊な例ですが、根が斜めになってしまっているので、何とか歯を作るために、歯の頭のむきだけまっすぐにしたい場合があります。このようなときは、鋳造で作らないと傾斜させることができないので、芯材の直線的なファイバーポストが使えません。まあきわめてまれな例です。

当院では、ファイバーコアは以前から(もちろんCn治療以前から)私が自ら作成しています。(この人にはファイバーコアを入れたいのに)とおもいつつも、保険が利かないので泣く泣くメタルコアを入れていたこともありましたが、これでそのような思いも一掃できそうです。

【今回のまとめ】

ファイバーコアが保険適用になり、国民の差し歯の寿命が延びそうである。

12:12 | nemoto | 2016新年の朗報~ファイバーコア はコメントを受け付けていません
2015/12/13

こんにちは。根本齒科室の根本です。
AEDの話が1回入ったので、前々回の続きです。

<営業系の苦心>

前々回(Vol.1)でご案内のように、保険外治療の話をしたり勧めたりすることで、私は今までさんざん気まずい思いをしてきたり、苦心してきました。
その理由は、おそらく

「潜在意識には主語がない」

からだと思います。
どこかの本で読んだ言葉で、誰かは忘れましたが、なるほどと思ったので良く覚えています。
その本では、こういうことを言っていました。

<1>

たとえば
「お前はバカ」「○○はバカ」と言ったりすると、顕在意識の中ではバカなのは「お前」だったり「○○」だったりして自分とは関係ないことになっています。
しかし全意識の大部分を占める潜在意識では主語を判別しないので、「バカ」という単語を使った瞬間から「お前」や「○○」だけでなく、「私(話した人自身)」をも等しくバカにしたのと同じ意味を持つんだそうです。
このように、汚い言葉やマイナスの言葉を多様していると自分自身のメンタルを大幅に傷つけてしまうという警鐘を読んだことを非常に印象的に覚えています。

「思っても言わない」「喉まで出かかって」
けだし大事なことなんでしょうね。

<2>

私が経験してきた「営業系の苦心」は、少々違う観点かもしれません。
「傾聴」という言葉があります。あるセミナーで聞いた言葉です。
「自分の価値観を差し挟まずに相手の話しを聞く」という意味だそうです。

これは非常に難しく、かなりトレーニングがいるようです。
私も傾聴の真似事をしてみて、(こりゃムズカシイ)と凹んだことがあります。

相手が選択して発した単語に対しては、その単語に対する「自分なりの解釈」で意味づけ、色づけしながら相手の意図を理解していくほかありません。それが人間です。
「自分なりの解釈」ですので、多分エラーが多い。

 相手の気持ち⇒相手の単語⇒自分の単語⇒自分の気持ち

このように、会話というのはじつは効率が悪いですね。
その不確実性を補足する意味で、ボディーランゲージや表情で色づけしながらじっさいの会話が行なわれるわけです。
しかし、ボディーランゲージや表情で伝わる補足的なニュアンスも、お互いの最大公約数的な理解の範囲内のものしか伝わりません。

それは、突きつめて言えば、この世は物質・形態の世界であり、

 音声(気体分子中をエネルギーが波動を形成して音波として伝達)
 文字(音や意味を表す記号=図形・画像認識、その羅列~意味づけの付与)
 表情(表情筋の動き=図形・画像認識)

のような、実際の情報や概念とは関係ないものを数多く媒介させないと、情報や概念が伝わらないものです。

 相手の気持ち⇒自分の気持ち

のように言語を介さずにダイレクトに考えや気持ちを理解しあえたら、それは素晴らしいことですが、それではあの世での魂同士のコミュニケーションになってしまう。。
ある意味羨ましいし、ある意味オソロシイ。

だから、相手の気持ちを理解したつもりになっていても、厳密に言えばそれは、自分の過去の経験や思考体験という引き出しから、似たものを引っ張り出してきてそれを自分の中で追認しているだけ、というのが実態でしょう。

そう思うと、コミュニケーションをとっているつもりになっていても、その多くは自分自身の一人相撲でしかないのかもしれませんね。

で、私自身はどうか。

<自分が営業嫌い>

◆ 他人に営業されるのが嫌い
◆ 他人に提案されるのが嫌い

近年とみにそうなんですが、ちょっとしたいろいろなところでとにかく「売り込み」されるのがすごくうっとおしく、きわめて不快な感情を覚えます。

この間も、DoCoMoのスマホの液晶を割ってしまったことがありました。修理に出したのですが、待っている間に店員がやってきて、「お待ちの間にお時間を少々いただいて」とか何とか言って「何とか光プラン」の押し売りがしつこい。これがウザくて仕方がありませんでした。

歯科医院でも、材料屋の御用聞きの営業さんが、たまに「お時間少しいただけますか」みたいな話をして、大したことの無い宣伝をしていくことがあります。それが8番の埋伏の(えきすと)Ext中だったり上顎の7番のMB2を開けているときだったりすると、軽く(てめぇーこのやろう)みたいな感じになります。

以前1回モデルハウスにひやかしで行ったときも、営業マンの売り込みとか、事後の電話営業とかがうっとおしくて非常に辟易しました。
あんなことをしてたら、誰ももうそこのモデルハウスには行きたがらないと思うのですが、何であんなにしつこいんでしょうか・・・

何で彼らは、相手の意に反して無理やり「売り込み」するんだろう?
いや、何で「売り込み」できるんだろう。
中には仕事だからと我慢してやってる人もいるのかもしれないけど、素でノリノリで営業トークかましてるやつとかも少なくない。

自分だったら、こんなことされたらイヤだから、他人にもできないのに・・・

ここまで考えて、はっと思った。
コイツらは、

①もともと他人に売り込みされても嫌な気持ちにならない性格←鈍感
②自分はイヤだが、自分がイヤでも他人がやられるのは無問題←傲慢

このどっちかだ。
うわー、どっちとも付き合えねぇ、とくに②は無理。

・・・

私と来た日には、「こんなしつこい営業までしないと名目GDPが伸びないんだったら、共産主義のほうがまだ資本主義よりはマシだ(でも日本共産党は無理ですけど)」とすら思うくらいの売り込み嫌いです。

そのくらい極端な自分自身を思えば、他の人に売り込みをするのが気がひけるのは当然だと思います。

(客がああ言ったらこう言い返す)
(客がこうなったらクロージング)

なんて少しでも考えるだけで虫唾が走る思いです。

(イヤだけど我慢して頑張らなければ)と思いながら仕事をしていた日々の辛かったこと辛かったことw

<自分が貧乏>

もうひとつ大きな点だが、残念なことに私は貧乏です。

まだまだ多額の借金を抱え、毎月●十万の返済に追われ、安い賃貸住まいを余儀なくされている日々です。

必然的に日常生活は質素にならざるを得ず、酒も外に飲みに行くと高いので宅飲みオンリーだしついにまた禁酒しました。服もその辺のGUとかしまむらなどの安い店でささっとみつくろってしまいます。

スーパーに行っても(他人に食べさせるわけではないし、自分だけならいいだろう)と、産地非表示で悪名高いトップバリュとかベストプライスでもついつい手を伸ばしてしまうことも少なくありません。どうしても買うたびに岡田克也氏の「基本苦々しいながらも地元の地方議員が当選したりしてニヤけたような顔」が思い出されて、微妙に思いながらもしぶしぶ買うのもストレスの元です(最近はさすがにナショナルブランドか、ショップブランドはセブン&アイのものにするようにしている)。

そのような日常生活を送っているものですから、もし自分が歯の知識がない状態で歯の治療となったときに「ではインプラントでお願いします」とは、まあ多分言わないでしょうね。
歯の知識がなければとにかく安く上げようとするだろう。
それどころか、歯の知識がなければ検診すらサボるだろう。

<少し楽になって>

 自分とは、本質的に、そんな手抜きでだらしない人間なんだ・・・

その辺を受け入れてしまったので、楽になれたんだと思います。
逆に自分がそんな状態なのに、自分のことを棚にあげて
「歯と健康の価値観を長期的に」
「インプラントでかむ喜びを」
などと言っても、言葉に力が入るわけがありません。
私は元来そういう演技はできないほうです。

だいたいが「健康の価値観を長期的に」などと思ったら、こそこそトップバリュなどに手を出そうとしたりしないはずですよね。

だから、そんな自分が「売り込み」を口にすればするほど苦しくなるし、患者様の普通のお断りの返事も、とても気まずく受け取ってしまったりすることになってしまいます。

結局言葉なんて自分の感覚でしかしゃべることができないし、患者様もそれと感覚の近い方が中心になってきます。

少し前までは、(自費率が低い医院は意識が低い医院だ)、みたいな変なプレッシャーみたいなものも自分の中にありました。

それを捨ててしまったらどうなったか。

不思議なことに、自費の額はあまり変わっていないんです。やっぱり税理士さんには怒られそうな数字かもしれませんだ。最近はめっきり勧めていないんですけどね(全く勧めないわけではない)。

保険の方の点数は、やはり1.5~2倍くらいになりました。
保険はとにかく時短の工夫が奏功して、レセプトの件数やアポ帳の人数については大幅に増加傾向にあります。

何か、肩の力が抜けた分、普通のごくありふれた歯医者というか臨床家に若干近づいた気がするんです。

2006年の開業当初は、今とはだいぶ違いましたね。
ついこの間のような気がしないわけでもありませんが、考えてみればあのころは小泉内閣だったわけです。そう思うと時代を感じます。

ちなみに、開業当初は昼休みが2時間で、午前診療開始が10時でした。
世の中なめてますね。

まだまだリーマンショック前だったので、そこそこ景気のいい話もありました。歯科のほうでも高品質=高級化みたいなノリが強くあり、良い臨床=良い治療=自費、的な雰囲気も今よりは強かったと思います。

 リーマンショック
 政権交代でデフレ悪化
 東日本大震災

これらを経て、社会的にも、意味もなく水増しされた費用や、正体の怪しい付加価値などは、世の中からほぼ一掃されたのではないかと思います。
さらには(このデフレ脱却しなければいけないご時世に)TPP大筋合意で、米が5分の1くらいになって、牛丼100円か、なんて話も眉唾ながら聞かれるような有様です(なるべく趣旨を対中関税包囲網に絞って、肝心の中身はなるべくお互い様でグダグダなぬるい感じでやってほしいものです)。

現在はすでに、私の中では
 高品質=高級化
 良い臨床=良い治療=自費
では全くないです。

 *等価でも背反でもなくて、それぞれが独立事象であるという意味

機能の維持、歯の延命がすべてに優先する観点から考えていきますので、その部分と大きな関係がなさそうな部分については、あまり保険とか自費とかこだわらない感じです。
大きな関係がありそうなら、ムチャクチャこだわりますが。

【今回のまとめ】

自分の人となりを無視して生きようとしても、魂に力が入らない

10:27 | nemoto | 心境の変化を見つめなおしてみるVol.2 はコメントを受け付けていません
2015/11/28

こんにちは、根本齒科室の根本です。

「AED」と聞くと、ご案内の方も多いと思います。心臓につけて救命する機械ですが、
駅やコンビニ、学校などにおいてある、赤い奴です。私もよく目にします。

でも、使いかたはちゃんとは分かりませんでした。
ついつい「こういうのは他のエライ人が使うものだ」みたいに、スルーしてしまいます。

もう1月前になりますが、歯科医師会内でAEDの講習を主宰していたので行ってきました。
(最近筆が遅くて恐縮です)

じつは私は普段から地元の歯科医師会内では極力存在感が出ないようにしていたのですが、たまたま今回は存在をかぎつけられてしまい、あまつさえ取りまとめを仰せつかってしまって、元々は行くのは面倒だったのですが仕事柄仕方なくの「初参加」でした。

ただ、
なかなかAEDの話しを聞く機会もないので、仕事半分興味半分で行ってきました。

今回は会場と指導で地元消防署の協力を仰いで、メンバーは県南歯科医師会の先生方やスタッフから募る形になりました。一応1私を含めて12名の方の参加となり、そこそこ講習やってる感が出るくらいにはなりました。人集めというのは本当に面倒なものです。

講習内容は、もっとも簡単な「普通救命講習Ⅰ」というもので、実習中心で午前中3時間で行なわれました。

内容についての詳細は、成書やウェブサイトに譲りますが、私が又聞きしていた内容と若干変わっていたのは、人工呼吸の重要度が相対的に若干低下していて、心臓マッサージとAEDが救命の2本柱のような概念になっていたことです。

AEDは、以前どこかで1回だけ遊びで使い方を習ったような記憶がありましたが、完全に忘れていました。
きちんと習ったのは今回が初めてです。

お話しを聞いていて、印象的だったのは、AEDを使うタイミングです。

非常にざっくりとした話になりますが、まずは街中などで倒れている人を見つけるわけですが

 ①「反応なし(呼びかけに対して)」

 ②「呼吸なし」

の2段階をへて、

 ③人を呼ぶ(できれば2人)
  ◆119番通報
  ◆AED持参

の流れになると教えていました。

ですから、「反応がなくても呼吸はある」とか「反応があっても呼吸がない」などの場合は悩ましいことになります(そんな場合があるかは別ですが)。。

そして、まずはひたすら心肺蘇生、なかんづく心臓マッサージは極力切れ目なく行うわけですが、通報から平均

◆救急車は8分

で到着するというデータがあると説明がありました。
もちろん救急車が来たら、救命措置は彼らに交代するわけですが、「ひたすら」とはいいつつも(だいたい8分くらいだろう)と思いながら頑張ります。

でも

◆自分が何分心肺蘇生すればいいか

が分からないと、さすがにしり込みしてしまいます。ただでさえ社会参加に消極的な国民性も相まって、講習の十分な効果が発揮されにくい、ということになってしまいます。

いっぽう、「8分程度」と分かっていれば、市民の救命参加へのハードルが大きく下がると思われます。
何気にコレは大きなポイントのような気がします。

◆善きサマリア人の法

あとは市民参加のハードルで言えば「善きサマリア人の法(免責法)」の制定が一刻も待たれるところです。Wikipediaによると、立法化不要論を唱えるのが現場と無関係な法律家であるのに対し、立法化必要論は主に蘇生教育者・救命活動者などの現場の人間である、とあります。

こういうのを傍から見ると、情けなくなります。
それでいて、機内でドクターコールに応じたり、すがるように頼まれて救命活動に参加した医師に対して訴えたりする痛い例も後を絶たない、などのような国民意識なのは、行政の啓蒙不足が大きいとは思います。このような社会的にハイリスクな状況ではドクターコールに応じる医師もなかなか現れないのも仕方ありません。私は現状はいち早く立法化すべきだと思います。

◆ AEDの守備範囲と限界>

AEDの話を聞くと思い出すケースがあります。

<ケース1>
朝お茶を飲んでいて、これから出かけるというときに起こりました。
お茶をおいた後、急に胸が苦しくなり、倒れました。
心筋梗塞でした。
救急車を呼びつつ、一応心臓マッサージを行ないましたが、まもなく心肺停止状態に陥ってしまいました。

<ケース2>
夜ご飯を食べ終わり、家族の方が気がついたら、部屋で大いびきをかいて寝ていたそうです。
でも呼んでも起きないので、救急車を呼びました。
隊員の方が見えて開口一番「・・・覚悟して下さい」
脳内出血でした。ただちにICUに搬送されましたが、翌日未明に死亡確定しました。

じつはこのケースは、私にとって有る程度近しい人や身内の話なので詳細は省きますが、いずれも50代独身の男性です。

これらでいうと、<ケース1>のほうは、AEDが手元にあれば救命できた可能性が高いと思われます。
つまり心臓が原因の疾患なので、AEDが効果を発揮するわけです。

いっぽう、<ケース2>では、脳血管が原因なので、できることといえば、普段の食生活をしっかりして血管をもろくしないようにしておく以外にありません。
しかも「いびき」をしているので、「反応がなくても呼吸はある」という微妙な場合に該当してしまいます。
これは残念ながらAEDでは対応できません。

AEDの有効性と限界を表す端的なケースだと思われます。

それでも、三大死因のひとつの虚血性心疾患に著効を示すというのはきわめて大きなことです。

偉そうに聞こえるかもしれませんが、講習も、ちょっと話しを聞いてみれば、一番簡単な「普通救命講習Ⅰ」ならそれほど大したこともなさそうです。
また、AEDは機械から使い方がアナウンスされるので、とりあえず操作方法を知らなくても大丈夫のようです。

ただ、これも今後まったくこのままだと、また使い方などさっぱり忘れてしまいそうですので、時間があれば3年おきくらいには冷やかし半分でも受講した方がいいのかな、と思いました。

またAEDは、有志の社会人ばかりではなく、文科省と話をつけたうえで、たとえば一例ですが、中学と高校でそれぞれ全員に1度づつ義務的に講習させる(大学教養課程の学生も含む)、などして、もう少し強力に社会的普及を推し進めた方がいいと思います。
コンビニなどで機械を見ても、ついつい「こういうのは他のエライ人が使うものだ」みたいにスルーしてしまいがちな原因は、つぶせるだけつぶしていきたいものです。

講習の最後に、消防署の方からお話があったのですが、龍ヶ崎市は、全国に先駆けてすべての小中学校のAEDを建物の「外」に設置した、と強調されてました。なんでも、箱から出した段階で消防署に通報が行くようなので、盗難の心配も大丈夫だとのことです。

消防署だけに負担をかけてしまうのは、そろそろ日本も卒業してもいい時期だと思いました。

【今回のまとめ】

AEDは有効性と限界を理解した上で、社会的普及をもっと強く推し進めたい。

08:34 | nemoto | AEDといえば、思い出す・・・ はコメントを受け付けていません

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