こんにちは。根本歯科室の根本です。
接客の仕事をしていると、いろいろ本音と建前が分かれてくるものです。
とくに、情報のない初診新患(新規顧客)の場合はそうです。
(この方はどんな人と成りだろう)
ざっくりとでも把握したいものです。
そんな時に、問診で特に気をつけてみている部分の話をします。
それはとりあえず
◆ 医院の認知
~当院をどのような形で知りましたか
◆ 最近の受診
~歯科は何年ぶりですか?近所の先生ですかor遠くの先生ですか?
◆ 局所か全体
~今回はとりあえずここだけにしかすかor全体的にも診ますか?
の3点です。
◆ 医院の認知
大きく「紹介」「ネット」「通りがかり」の3つに分けて考えています。
私の場合はまずここが一番気になる所です。
◇ 紹介
これは正直、「紹介元のヒトに依る」ところが7~8割wあります。
当院的に「良い人」の紹介であればまず安心できます。
当院的に良い人というのはたとえば、こちらの話に素直に耳を傾けてくれる、とか、定期検診にマメに来る、とか、予防に熱心だ、とか、今まで紹介してくださった方も同じように意識が高い、などが当てはまります。
これがいちばん安心できます。.
逆に、微妙な人の紹介は微妙です。
こちらの話に素直に耳を傾けない、とか、定期検診を嫌がる、とか、予防に無頓着で歯は他人任せ、のような方(仮にAさんとします)の紹介の方(仮にBさんとします)ですと、むしろ(何でAさんはBさんをうちを紹介してきたんだろう?)と悩んでしまいます。
こちらの方針と反対の考えの人に気に入られるというのも、微妙なものです。
先入観なのかもしれませんが、このような紹介元のAさんには、大抵の場合、定期検診の案内を出していません。
ですから、紹介先のBさんに定期検診の案内を出したくなった時にも、Aさんの顔がちらついて出しにくくなってしまう所もあります。
そんなときに「歯の汚れが気になる」「歯石も見てほしい」など、Bさん側から言いだしてくれればすごく助かります。
それを理由にして定期検診の案内を出せるからです。
やはり、AさんとBさんの扱いを大きく変えにくいのです。
後でこんな会話がなされた場合
Bさん「あそこは親切だなあ、ていねいに歯の掃除もしてもらったよ。検診もすすめられたから予約してきた」
Aさん「」
この「」の中は通常「何でお前には言って俺には言わないんだ?」であり、「そうなんだ、じゃあ俺も頼んでみようかな」にはまずならないのが世の習わしです。
そりゃあ、言いたくなかったからだったりする訳ですが、こんなことがあるので、Bさんには申し訳ないのですがAさんとBさんの扱いを大きく変えにくいのです。
正直、処遇には何パターンかありますが、先方の出方によって差をつけざるを得ないのが現実です。
◇ ネット
ネットの最大の特徴は、ある程度当院を調べてから来ていただけることです。
ですからあれこれ説明する手間が省けたりとか、「あとでHPの○○に目を通しておいてください」で済んだりして、「ムンテラ(説明)要らず」なのが最大の強みです。
検索に対する敷居が低いのも特徴で、口コミ一辺倒派の方とは立ち位置が若干違います。ですから最近の傾向とか他院のこともある程度把握していて、情報に対する感度が高いのも特徴です。
「現代は治療より予防の方が大事」などというようなレベルの情報はすでに入っていて、こちらも話が進めやすいです。
しかし、なかには神経質系な方もおられ、一概に安心できない。
「おたくのPMTCはどのようなことをなさるんですか?」
「今日はフッ素は塗ってくれないんですか?」
など、細かいことを質問することで意識が高いことをアピールなさろうとするのかもしれません。
しかし「石北会系」もほどほどでお願いしたいところです。
うちは大衆食堂なんだから、鴨肉に番号なんてついてないよ…
食べたきゃ佐貫じゃなくて永田町に行けばいいのに…
たまに思います。
あとときどき困るのが、全くの初診の方で、1日で歯周検査から歯石まで全部取ってほしい、とおっしゃる方です。
お値段も保険で4000円以上逝ってしまいますし、時間も1時間以上かかってしまいます。
基本的に保険診療は 「『広く薄い負担』 に対する 『広くて薄い給付』」 という形が最も不公平が少ないものです。ですからひとりで1時間も取ってしまうような内容は、自由診療であれば別ですが、原則的にはお受けできません。
再初診で定期検診で、という場合は別ですが、まったくの初診で歯の掃除まで1日で全てというのは、そのような理由で現在お断りしています。
◇ 通りがかり
じつは開業当初は「通りがかり」にはかなり警戒していました。実際Psychosomatic problemを抱えた方や、あちこちで断られた系の方などが集中してしまうからです。
当時はかなりもめたこともあります。
しかし最近はだいぶ違います。黙っていますが、実際は「紹介」「ネット」であることも少なくありません。後になって
「じつは友人の○○さんも通っていてね」
「おたくのHPのワンちゃん、かわいいね」
なんて話になることもあります。
もちろんそういう方は、○○さんからかなり事前教育を受けていますし、HPの動物だけでなく、むし歯や歯周病のページにも目を通していることが多いものです。
通していなくても「HPに『歯周病』というコーナーがありますので目を通しておいてください」といえば済むので、説明も楽です。
ひとまずは(半分ガチ/半分△△かも)と半分疑って見ておきます。
その上でその方の雰囲気で判断していきます。
もちろんストライクゾーンの外側の場合は余裕を持って見送ります。
最初から予防やメンテナンスの話など、深入りせず、まずは相手の要望に応えながら、こちらの話は雰囲気を見つつ小出しに出していきます。
昔は最初に当院の方針をきっちり説明して、ふるいにかけていくのが、地域に対する教育、就中、地域貢献だと思っていたのですが、軋轢も多いですし、いわば「予防真理教」みたいなカルト教団みたいな患者層になってしまうのも自分が嫌です…
ですから現在は初診時などは意図的にハードルを下げて、相手中心で話を聞きながら、(こちら側の人だな)と思われる人を拾っていく形にしています。
これらをまとめると
紹介(良)>ネット(良)≒通りがかり(良)>ネット(△)>紹介(△)≒通りがかり(△)
でしょうか…
◆ 最近の受診
受診の間隔が2年以上開いている場合は、おそらく歯科に対する関心が低下している可能性が高いので、その辺は注意しながら見ています。
ただ一概に受診間隔が短ければ歯科に関する意識が高いというものではなく、「数か月前に他院で診てもらっていたが良くならない」などということもあります。
また、受診医院が分かればその患者様の雰囲気がおおよそつかめることもあります。
その医院の先生の方針やスタイルが、すなわちその患者様の歯科に対する意識そのものだからです。
少し前に、某医院が閉めたことがありました。
そこの方がかなり当院にも流れてきたのですが、そこの方はとにかく、定期検診の話をすると怪訝な顔をするのが特徴でした。HPに書いてあるような医科と歯科の違い、事前対処と事後対処の話などをそれこそ理詰めでていねいにするのですが、「通りがかり」の方の場合は「なるほどね、分かりました」ということも多いのに、そこから流れてきた方はおしなべて「…あー、そうなんですか…」のような感じです。
多分金儲けだとでも思われていたのでしょう。
逆なんですけどね。
都内などの遠くの医院の場合は別ですが、最近まで通っていたところの先生のことが近場だったりして(できれば名前も)分かると、ある程度その辺が読めます。
すると、当院よりも上手な医院・評判の良い医院に通っていた方の場合ももちろんあります。
「○○歯科に通っていたんだけど、坂を上るのが辛くてね、こちらに新しく医院ができたのでお世話になることにしました」
このセリフは、初診時にかなり聞きました。
で、やっぱり見ると仕上がりはお上手ですし、患者様の意識も高く、さすがと思います。
いっぽう
「△△歯科に通っていたんだけど」
という方の場合は、
(あー。やっぱり…orz)
みたいなこともあります。。
◆ 局所か全体
もし問診票の「全体的に」に印がついている場合は、とくに成人はスクリーニングの意味を兼ねて、まず全体的な「パノラマX線写真」
を撮ることが一般的です。
しかし、「今回はここだけ」にチェックが入っている場合は、たとえば親知らずや顎関節症などのように、その「ここだけ」の診断にどうしても全体的なパノラマX線写真が必要である場合以外は、それは撮影せず、局所だけの「デンタルX線写真」
の撮影にとどめます。
開業当初は全員といっていいほど、パノラマを撮っていたと思います。
全体的な骨格や治療履歴、(ある場合は)骨の膿瘍や腫瘍が一目で分かるので、大変重宝するからです。
しかし、ある時から注意するようになりました。
あまりない(数百人~1000人に1人程度)のですが、ごくまれに「この写真は必要あるのですか?」などと尋ねられることがあります。
また、「不要な被曝はしたくない」とおっしゃる方もいます。震災後に顕著になりましたが、これは小学生くらいの患者様の保護者の方がおっしゃいます。
こういう場合は、あまり深入りできません。
残念ですが、自分の中で「注意リスト」みたいなカテゴリにチェックが入ってしまいます。
ただ思うのが、(自分だったらどうだろう)ということです。
今は私は歯科医師なので、自分の治療は先輩の所に行くのが安心ですが、もし歯科医師でない自分が歯に主訴があって受診する場合は、「今回はここだけ」にチェックをすると思います。
だいいち歯医者は面倒だし、痛そうで怖いし。。
プロでない私だったら、まずそう思うと思います。
プロの私がそう思うのですから、一般の方の歯科に対する敷居は高くて当然だと思います。
ですから、「今回はここだけ」の方でも、必ず主訴だけを診てすぐ追い返すのではなく、いわゆる相手中心で話を聞きながら、(こちら側の人だな)と思われる人は当然拾っていき、予防メニューなどに振っていくアンテナは常に張っています。
◆ おわりに
医療系でも、歯科とか整体・整骨など、リピートオーダーになりやすい所は、お互いの感覚が近くないとどうしても中断になりがちです。
我々も、正直、そのほうがストレスを感じずに仕事ができます。
そうでない場合に、あたら衝突をしてしまうのは愚の骨頂なのは言うまでもありません。
ですので、(コイツ俺と真逆じゃねぇか)と思っても、まずはハイハイ言うことを聞いてしまいます。
その上で、相手が聞く耳を持ってきたかな、と思う頃に少しづつお話をするようにしています。それでもしついてきていただければ、それは歯科医師冥利に尽きるというものです。
(持たないな、という場合は、当然深入りせずお引き取り願う方向で行きます)
我々も人間ですから、魔法のように布教はできません。
今回も、かなりぼかしながらですが、言いにくいことを言ってしまいました。
【今回のまとめ】
初診時の印象や属性が、その後の診療に影響する。損にならないように。