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2011/05/08

 

英国王室のロイヤルウェディング。

中継を見た方も多いのでは?

わたしは 不覚にも…

 

日本では ゴールデンウィークの終盤を迎えている頃でしょうか。

皆さん,いかがお過ごしになられましたか?

遠くに 見たことのないものを探しにいくのもよいし

身近なもの,場所に 目を向けなおすのも良いですね。

 

4月の後半から5月の頭にかけては イギリスでもホリデーシーズン。

銀行などがお休みになる祝日のことを,イギリスでは‘バンク(Bank) ホリデー’

と呼びますが,このような祝日がこの時期にまとまってあるのです。

 

4月第4金曜日のグッドフライデーから始まり,日曜日のイースターサンデー,月曜日のイースターマンデーまでは,4日間の‘イースターホリデー’です。

夏の休暇ほど長くありませんが,この長い週末を中心に学校もお休みになります。春休み,と言うところでしょうか。

ところが今年に限っては,皆さんもご存知の通り29日金曜にウィリアム王子とキャサリン姫のロイヤルウェディングがあり,この日もバンクホリデーになりました。

これと5月2日月曜のメイデー(バンクホリデー)がつながって,

結果4連休が2回続くという ゴールデンウィーク並みのホリデーだったのです。

もちろん皆喜んで,旅行に行ったりバーベキューをしたりするわけなのですが

 

わたしはこの2週間弱 いわゆる‘スランプ’状態に陥っていて,全く思うように線が描けず 悶々と机の前にすわってほとんどの時間を過ごしてしまいました…。

 

連休と言っても わたしの職業柄,動かぬ‘締め切り’があるので,あまり恩恵にあずかることはありません。

期日までにノルマを描ききることが大前提ですので,

2週間描けない

というのは大問題です。

雑誌のお仕事を初めて以来の不調期。

今はなんとか復活しましたが 非常に不安でした。

 

スランプ。

どんな職業の方にも それぞれの周期で 不調がやってくるものと思います。

わたしの場合 1−2年に一度くらい回ってきます。

 

アイデアが出ない,

好きな線が描けない,

いい色が出ない など

とにかく ‘描けない,描くのがつらい’状態になってしまいます。

 

理由は精神的なものだったり 体調だったり はっきりしなかったり

期間も 長くて一ヶ月,短くて数日 など いろいろです。

もちろん「描けないから 描かない」 などとは言っていられないので

とりあえず 絞り出すように作品をつくりはするのですが,

いつもの倍の時間がかかり,気持がどんどん沈んでしまいます。

本当に,乾いたレモンを搾るような感覚。

 

皆さんはどんな方法で対応しているのかしら。

 

学生の時や 定期的な雑誌のお仕事を始める前には,

沈むところまで落込んで,ある日ひらめくのをおとなしく待つ

でもよかったのですが

もはやそれでは許されない状況。

なんとか早く いつものコンディションに戻さなくては 生活に関わる…

一方で こう焦ると逆に緊張してよくないようです。

 

ただ 定期的に起こることではあるので,自分なりの対処法もいくつか。

カメラを持って,好きなエリアにぶらぶら散歩に行き

おもしろいものを見つけたら写真に撮って

催し物の確認をせずに ふらふら美術館に足を運び

公園のベンチにすわって アイデアブックに思ったことを書いてみたり

 

とりあえず かたくなった頭をほぐす作業をします。

スランプのとき あまり絵は描きません。

写真か,文章で記録。

 

日本語の本を読んだり,日本語の歌を聴いたりするのもよいようです。

普段 英語の文章に挿絵を付けているので,言語を替えると脳の他の部分を使えるよう。

 

どれも特効薬ではないので,すぐに結果が出るわけではないのですが

何か試している,取り組んでいるという事実が安心感を与えて

描けないプレッシャーや緊張を取り除く 助けになる気がします。

 

お仕事として 毎日 毎時間 絵を描いている。

普段なら,好きなことをしている幸せな時間としての描く作業のはずが

一転して苦痛になってしまう,スランプ期。

恐ろしいものです。

他にできることもあまりないのですから,非常に惨めな気持になります。

 

ただ,こういった時期があろうと 結局 描くことに戻ってくるので

やっぱり好きなんですね。

 

不調とうまくつきあうこと,大事な能力。

まだまだ,たりない。もっと磨かねばなりません!

 

 

12:43 | chihiro | スランプとのお付き合い はコメントを受け付けていません
2011/04/16

ロンドンにも夏が来た。

テムズ川のほとりの広場 ピクニック日和。

皆さんこんにちは。

長い冬が終わり,ようやく初夏を迎えたロンドン。

日中は17−20度くらいあって,日が出ているときには汗ばむほどです。

でも朝晩の最低気温は7度くらいまで下がるので,油断をして外出すると凍えます。にわか雨(シャワーと呼ぶ)も頻繁。

半袖を着て厚手のジャケットをカバンに入れ,ショールを巻いて,折り畳み傘も忘れずに,というのがこの時期のロンドン散歩の必勝法でしょうか。

荷物が増えてかなり悩ましいですね!

 

そんな気まぐれな天気の中,太陽大好きなロンドナーたちは

広場という広場で日光浴をしています。

週末ともなれば,青空の下 ワインや食べ物やギターなんかも持ち出して

貴重な夏の一日を満喫。水着の人もいます。

なにせ 二週間くらいしか‘夏らしい夏’がないのです…もはや 必死。

 

この時期になると,屋外の音楽イベントやパフォーマンス,

“チョコレートフェスティバル”“コーヒーフェスティバル”などの物産展みたいなものも増えます。

活動的なハウスメイトたちは毎週いろいろお出かけしていて うらやましい限りなのですが,

わたしは今月急な仕事が多くて自宅兼仕事場にこもりっきり。

今週でようやく今月号分のイラストが全部終わり,この週末はようやく一息…です。

 

外はいい天気。

いつも修羅場の編集室。

(セールスさんの外見は変えてあります)

 

わたしの働いている編集社の雑誌は,

編集スペースの論文(教授などに依頼して書いてもらう)の他に

売り物スペースの論文(企業の宣伝論文など)で構成されています。

売り物スペースの企業論文は短くて,見開き一ページくらい。

このタイプのものは,締め切りぎりぎりにセールスさんが契約を取ってきてくれる事があり,

その場合 編集チームは嬉しいのと悲しいので非常に複雑な心境におちいります。

今月は この手の急な契約がたくさんあり…

いずれもイラストレーションが必要で,即日から翌日締め切り。

 

セールスさんが電話で

「明日までに挿絵いりで編集したものを確認用にメールします!」と

クライアントさんと話しているのが聞こえ,

血の気が引いていくのを感じ,

電話をおく音,椅子の回る音,

「チー,(チヒロは言いにくいので,皆こう呼ぶ)そんなわけだから…もちろんできるよね」

 

イエス以外に答えはありえないのですから,

正念場と言いましょうか。根性の見せ所です。

 

でも社員一同力を合わせて,契約成立から24時間以内で確認ファイルを完成させ,

送信完了したときには 何とも言えぬ達成感があります。

そしてクライアントさんからの”FANTASTIC(とてもいいです!)”のお返事が来ると,皆でバンザイ。

激動,修羅場の出版業ですが,

なかなか スリリングで癖になってしまう職場です。

 

そして手元には 来月号用の18ページの論文。

だ,誰か代わりに読んでくれないかしら…

 


11:27 | chihiro | 夏のロンドン/編集室の一コマ はコメントを受け付けていません
2011/03/22

鳥を抱く少女

大切なもの。全て抱いていたいけれど。

 

忙しいというか慌ただしいというか

ここ最近 身の回りで起こる出来事は,計画倒れか 計画にない突然の事件かの二つに一つであるような気がします。

よくも悪くも極端で,刺激的でもあり疲れもし…

安定した 落ち着いた 平和な生活をしたいなどと思いつつ,

そんな当たり前の望みが,どんなに得難いものなのか 尊いものなのかを

想い知らされるような事ばかりが 続いていく。

 

生き物も何もかも,動きだす 春。

冬の静寂から抜け出して動へと転ずるのは 喜ばしい事のように思われるけれど,そのなかで望まない変化が 同時に起こる。

変わらないものはないのだと 想い知らされるよう。

大切なものを全部 強く抱きしめて 離さぬようにしたい

それをするには あまりにたくさんのものが 大切すぎる。

 

 

 

この3週間ほどの間 ずいぶんいろいろなことが起こりました。

まず先月末に 突然引っ越し。

勤めている出版社の事務所が移動することになり,同じ建物の3階に越すことになったのです。

物件が見つかってから実際に移動するまで 僅か2週間。

以前住んでいた所が職場から遠かったこともあり 近場に越すことを考えてはいたのですが,まさか同じ物件の上階に住むことになるとは思ってもみませんでした。そもそも 生活全体が2週間でガラリと変わる事になるなんて,想像しがたい…。

 

毎日3時間以上を交通に費やしていたので,それがゼロになるというのは非常にありがたい事。

加えて,大量の画材を毎日持ち運ばなくてもよくなるのも歓迎すべき変化。

でも一方で 今まででさえ曖昧だった仕事と私生活の境が さらに曖昧になるのではないかという 大きな気がかりもありました。

(結局いつも何か描いているのですが,雑誌の仕事以外の個人的なものを描く時間を取らなくてはいけない)

実際動いてみれば,まさにすべてが大当たり。

浮いた三時間より長い時間を 一階のオフィスで過ごして

寝る為に部屋に戻ってくるような生活…休日も結局仕事…をしばらく続け,

仕事は好きだしはかどるが,これは流石にまずいぞと 時間管理についてまじめに考えはじめました。

うまく配分さえすれば,有意義に時間を使えるはずの環境なのです。

なんとかしなくては。

 

実はロンドンに来てからの約5年間で,これが7件目の引っ越し。

ロンドンの住宅はとても高くて,学生から社会人まで‘フラットシェア’という間借り形式が一般的になっています。

一つの物件,または大きなマンションの1部屋を個室ごとに貸し出して,キッチンやトイレはシェア,というやり方です。

いろいろな国の人が一つ屋根の下に住む事が多いので,よくも悪くも刺激的。

それでも一部屋 月8〜10万円ほどなので どれだけ住居費が高いことか。

こういった事情もあり,契約は半年からできる事が多いので,ロンドンに来て数年は半年ごと引っ越しをしていたのです。

ただ,今回越す前に住んでいた所は非常に環境が良くて,二年近く住んでいました。本当はもう 本帰国まで引っ越さない予定だったのですが…予想しない事は起こるものです。

実際 大学を卒業してからの生活は,予期せぬ事の連続で,何か大きな流れに飲まれているような感覚さえあります。

今は 身を任せてみるしかないかと思いはじめています。

突然始まった新しい生活。

もうすでにいろいろな問題も浮上していますが,それ以上の喜びもあるのが救いです。なんとかうまくやっていけるとよいのですが。

 

 

こちらで引っ越しの騒ぎが起こっているさなかに,母国で起きた大きな災害。

どんなに異国の生活が辛かろうと 不安定だろうと 寂しかろうと

自分の国と家族は いつもそこにあって,その事実が自分を支えてくれた事が幾度となくありました。

その安心が一挙に揺るいだ 今回のできごと。

近くにいない不安を こんなに大きく感じたのは 渡英してから初めての事でした。

インターネットでしか集まらない情報に歯がゆさを覚えながら

こちらに住んでいる日本人同士,募金活動の連絡をし合ったり,家族の安否を確かめ合ったり。

あまりにも痛ましい情報の数々に,無力感と不安ばかりが大きくなります。

ただ 時折日本やこちらのメディアで報道される,大災害での日本の人々の対応の冷静さ,前向きさに対する情報,賞賛は,遠くで応援する事しかできないわたしたちにとっての 救いになっています。

みんな 大変な思いをしながら頑張っている。心配ばかりしていられない。

日本の人たちが懸命に行動する姿を,こちらでもたくさんの人に伝えないと。

そんな思いで 自分の周りでの事ではありますが 対応や復旧の様子を細々と周囲に伝えています。

 

家族 国 自然

個人的生活の振幅に比べれば 安定しているように見えるこういった大きな観念も,変化がないわけではない。むしろ,変化が起こるときには それは個人的なものよりも もっともっと大きい。

 

変化は予期せず起こってしまう。

全てを抱きかかえて守るには わたしたちは小さすぎるから

代わり映えのない 当たり前の日常を愛して

手の届くものを守って 過していくしかないのかな。

イラストレーターとして わたしができる事,守れるもの,伝えられるものは何だろうと

考えている今日この頃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

04:26 | chihiro | 大切なもの。全て抱いていたいけれど。 はコメントを受け付けていません
2011/03/14

11日の朝は なぜかアラームよりも早く起きて

目覚ましを解除しようと ベッドに入ったまま 携帯電話に手をのばすと

メールが一通 届いているのに気がつきました。

BBCのニュース速報

06:46

Huge earthquake hits Japan

Waves crash into northern Japan causing extensive damage after a massive 8.8 magnitude earthquake strikes off the coast ……

血の気が引いていく。

跳ね起きて パソコンを開いて NHKやBBCで流れる映像にひどく怯えながら 家族や友人の安否を確認しました。

今までで一番,日本との距離を感じ,何もできないことに歯痒さを覚えた日。

職場のデスクにつきつつも 暇をみてはNHKの災害情報を更新し続けて

母国で何がおこっているのか,確かめずに入られませんでした。

被害の大きさがだんだんと明らかになるにつれ,仕事にも集中できなくなり

わたしの様子がおかしい事に 職場の仲間が気づいて駆け寄ってきた時には すっかり涙目になっていました。

傷ついた故郷の様子と あまりにも遠くにいる自分

無力感…

本当に 心から, 大地と海の静まる事を ひたすらお祈りします。

そして犠牲になった 尊い命の…安まらん事を…。

海外から見ていたなかで 一つ日本の方々にお伝えしたい事は,

今回の災害での 日本と,日本国民の対応を,海外では非常に尊敬しているということです。

帰宅できなくなった人々のために,公私問わず多くの場所が解放されたこと交通機関が動かない中で

暴動も起こさず 我慢強く待つ人々の姿

自動販売機の解放  携帯電話の充電サービス

最大級の揺れに耐えた 備えのある建物,災害時のマニュアルの普及 等々…

日本でなかったら,日本人でなかったら,こうはいかなかっただろう

そういった声を いくつも,いくつも聞きました。

協力し 結束して困難に立ち向かう日本の力,誇りに思います。

日本でがんばっている方々,その努力を誇りに思って…

すばらしい事 本当に。

すぐにでも帰りたい。

一刻も早い復旧を 心から祈っています。

04:30 | chihiro | 故郷にあてて はコメントを受け付けていません
2011/02/22

こんにちは!

前回から また少し日にちがあいてしまいました…

雑誌の新刊が出る前には不安定になりがちです。だめですね!

実は今月号のThe European Financial Reviewの表紙,非常に厄介だったのです。

いつもカバーは大変なのですが,いつもにも増して手間取りました。

普段 意外と筆の早い方で,大きな絵でも2−3日でできるのですが

今回は異例の 約二週間という長丁場。

気持的にも だいぶん参ってしまいました…。

仕事として絵を描くということ

好きを仕事にする その楽しさと苦しさのジレンマ…。

あたりまえで それでも避けられないもの。

そんなものを 改めて感じさせられた今回の作品制作でした。

完成版の表紙

そもそもの始まりは 今月号の特集が,非常に話題になっている経済学者の記事だったこと。

当然,カバー絵のテーマもその記事に合わせたものになります。

「資本主義の 語られざる事実」 という感じでしょうか

‘What they don’t tell you about Capitalism’ という原題の Ha-Joon Chang

のインタビュー記事です。

カバーのデザインも 編集の数人で決めることに。

わたしは出てきた意見からスケッチをおこし,それまた見せ,アイデアを練り直し…というプロセスを繰り返して とりあえずデザインが決まるまでに数日。

そんなわけで 今回の絵はわたしのデザインではなかったのですが,完成させる段階は イラストレーターの役目。

方々の意見をききながら,描き慣れないテーマに悪戦苦闘しつつ さらに数日かけて 締め切り前日にようやく絵が完成。

よくできたね と 喜んでいたのもつかの間, 帰宅後 夜の9時くらいに編集から電話があり,あの表紙は使わないことになった,と…

デザインが政治的すぎて,各国の読者の中には反感を持つ人もいるかも,という理由でした。

それならもっと前に…

わたしのデザインではないのに…

決まった通りに描いたのに…

でも それでも これはわたしの仕事。

いろいろな感情が渦巻きつつも とりえず締め切り当日中になんとかデザインを変えて完成させなければなりません。

あまりのプレッシャーに頭が真っ白になりながら ひたすら考え編集した結果,

なんとか皆のOKがでて 印刷にまわすことになりました。

「誰かの手になる」 ということ。

それが職業イラストレーターの 一つの現実かもしれません。

制作のプロセスで判断してもらえる学生時代とは違って 完成品が全て,ということもあります。

もちろん いつもこんな風に作品を作るわけではないし,自分のアイデアからデザインを起こすことがほとんどですが

お仕事として描く以上 自分だけの絵ではないという事実を,いつも心に留めておかなくてはならない。

作画という非常に個人的で 精神的な作業とは 相対するような現実ですが,

ここをやりくりするのが

「仕事」

なのかな,と思います。

なかなか。

論理的にはわかっていても 気持ちとしては難しいものです。

技術もさることながら 精神的にも 学ぶべきことは尽きない仕事の世界。

表紙が終わった次の瞬間から 次号の挿絵を始めていますが

一枚一枚から得られるものを大切に…と 描いている まいにちです。

09:10 | chihiro | 誰かの手になる ということ はコメントを受け付けていません
2011/02/10

皆さんこんにちは!お変わりないですか?

2月になって 少し日照時間が長くなり,気温も上がってきました。

真冬の灰色の空も 個人的には雰囲気があって好きなのですが

青空に色とりどりの花が映える春は やっぱり素敵なもの。

暖かくなるのが待ち遠しいです。

 

さて今回は,先月末に発行されたThe European Business Reviewの1月/2月号表紙の制作過程を紹介したいと思います!

 

表紙のイラストレーションは,収録された論文の中からメインタイトルを一つ選び,それをテーマに制作していきます。

この号のテーマは,“新時代のリーダーシップ”。

いろいろな役割を,場面によって果たせる超柔軟なリーダー(Super-flexible leader,社員や他の会社とのコラボレーションが効果的に図れるリーダー,社員のすでに持っている“未発掘の適正”を発見し有効利用できるリーダーなど いろいろなリーダーシップを取り上げています。

 このテーマに加えて,今回は編集長から

‘今までのものと雰囲気を変えて,重めの色使いで劇的な感じにして’というお言葉があり,それにそって行うことに。

(しばらくは パステルカラー系でおだやかな感じのイラストだったのです。)

 

まずはスケッチブックを広げてブレインストーミング。

Brain storming…おもしろい言い回しです。アイデアを考えること。

学校や職場では頻繁に使う語彙。)

キーワードを羅列したり,使いたい色や線の雰囲気を試してみます。

js_coversketch03.jpg

①思いつくまま 気の向くままに,イメージを膨らませる段階。

こんなページが何枚か続きます。

 

 

js_coversketch02.jpgjs_coversketch01.jpg

②大まかな雰囲気が決まると,今度は具体的な設定や構図のアイデアを考えていきます。

 

10個前後のアイデアスケッチを作り,前段階のムードボードと一緒に

編集の方にプレゼンテーション。

相談しながら,どのアイデアにするか決めます。

 

今回はインタビュー風景をつかった構図に決まりました。

新時代のリーダーに,皆が言葉を求めて殺到する,というイメージです。

 

 js_coversketch04.jpg

③アイデアに沿って色や線の実験をしていきます。

キャラクターや物体(今回はカメラなど),構図の研究もこの段階で。

 

 

js_coversketch05.jpg

④ 3の段階でつくった背景や機材のスケッチをバラバラに切り抜いてスキャンし,

コラージュをつくるように張り合わせて大まかな構図に組み立てます。

一枚の紙に描くこともありますが,今回のように要素が多いイメージの場合は,この方法をよく使います。

 

 js_coversketch06.jpg

イメージが掴めたら,いよいよ本描き。

途中の段階。

 

↓こちらが完成版↓

js_coversketch07.jpg

 スキャンして 少々のフォトショップをしてから,タイトルを配置し完成。

 勢いのある,劇的なイメージ,ということで 

鉛筆をメインに使って人物を描き,ラフな感じを残して制作。

制作日数は約4日でした。

 

本当に,表紙のデザインは毎回大仕事。

今まさに 次の号の表紙をつくっているのですが,これがなかなか問題児で手こずっています。

無事に完成したら,また紹介させていただこうと思います!

 

 

 

 

 

 

 

09:14 | chihiro | The European Business Review 1-2月号表紙 はコメントを受け付けていません
2011/01/31

みなさんこんにちは!

日本は冬本番ですね。体調を崩している方も多いのでは。。

当地も しばらく暖かかったものの,ここ数日真冬日が戻ってきて

またマイナスの世界に逆戻り。

春が来るのは まだまだ先のようです。

 

そんな中 最近ちょっと健康管理に隙が出てきている自分。

イラストレーターという仕事の性格上,家にタスクを持って帰る事も多いのですが,夜中まで描いていると いざ寝ようと思ったときに頭が回転しすぎて眠れなくなってしまうんです。

目を閉じても アイデアやら画像やらの断片がグルグルとまわって眠りにつく事ができず,中途半端な眠りを経て,朝は非常に早く起きてしまう

というような あまりよろしくないサイクル。

なんとかこの状況を脱しなければ,と いろいろ対策を考えているところです。

 

以前小説を書いている友人も,寝る前に日記をつける事を断念せざるをえなくなった という話をしていました。

日記を書きはじめると 小説と同じように,ついつい熱が入って,結果 頭が覚醒しすぎて眠れなくなってしまうのだそうです。

物づくりをする仕事に共通の悩みなのでしょうかみなさんはいかがですか?

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「画材のこと② カラーインクの使い方あれこれ」

さて,いつも前置きが長くなってしまいますが,

今日のメインは『画材のこと』の第2回です!

 前回 ドクターマーチンカラーインクの紹介を(軽く,ではありますが)しましたが, 今回は わたしが愛用している使い方をいくつかご紹介したいと思います。 

 

魅力は鮮やかな発色だけじゃない?! ベースを変えてちょっと落ち着いた雰囲気に

 coach_topimage_final.jpg brandpromises02.jpg

目が覚めるような発色がよく強調される,ドクターマーチンシリーズ。

でもその透明度を活かしつつ,アンティークで落ち着いた感じも表現できます。

秘密は ベースに使う紅茶。

まず強めに出した紅茶を大きな筆で画面全体に塗り,乾かして,影の強さに応じて部分ごとに塗り重ねます。

完全に乾かしてから,いつもと同じようにインクで着色していきます。

この紅茶液を残しておいて,水の代わりに使っても,自然な陰影が出ておもしろい効果が出ます。(紅茶でインクを溶いて使う,ということ)

 

注意するべき事は,水張りした紙か厚手の水彩紙をつかうこと。紅茶液を全体に塗ってから着色するので,どうしても紙が弱まります。 

そして 当たり前ではありますが筆のお手入れをしっかりすること。

紅茶を使った後は傷みやすいようです。古い筆を使うのが安全。

紅茶の代わりに違う液体を使ってもおもしろいですね。

 

アクリル絵の具と一緒に。透明度の差がおもしろい。

castle2.jpg

drawer.jpg 

油絵,水彩画,ペン画 など,技法や画材で作品を分類する事があります。

アカデミックな分け方ではありますが,必ずしもこれに倣う必要はありません。

むしろ

05:15 | chihiro | 画材のこと その2ー カラーインクの使い方あれこれ はコメントを受け付けていません
2011/01/20

日本は大寒波に覆われて とても寒いと聞いています。

みなさん 体調を崩したりしていませんか。

 

先週末は あまりのハードスケジュールにより更新することができませんでした こんなにずれ込んでしまうとは

ともかく 一つ締め切りが明けて ほっとしています。

 

このところ ロンドンは奇妙なほど生あたたかい。

日中は10度を超えることもしばしばです。

冬のスタートが猛烈だっただけに あれれどうしたの,という感じ。

温暖化,というより,不安定になってきているな,という感覚があります。

 

季節が戻ったり 早く進んだり 洪水 地震 火山噴火

人の手では調節できない事柄が より強い力を持って 

頻繁に起こるようになっているような。  

科学も物理もできないけれど 

そんなことを不思議に思ったり 心配してみたり。

 

そういうもののうちの一つなのかどうか, Swine flu(いわゆる豚インフルエンザ)がイギリスで流行っています。

BBCの報道によると,昨年の十月以来,豚インフルを含めたインフルエンザで112人の方が亡くなっているそうです。

BBCウェブサイト http://www.bbc.co.uk/news/health-12184395

日本と違って 街でマスクをつけるという観念が無いこの国。

何度かマスクをつけて外出をしたことがあるのですが あまりに視線が痛いので,むしろ危険を感じて断念しました。

そんなわけで みなさん地下鉄でもバスでもスーパーでも くしゃみをしたり 咳をしたり やりたい放題

食べる前に手を洗わない人も多いし,果物や野菜も洗わないで食べる場合が多々(特にケバブなどのファストフード)

これは 広まるよなあ

 

日本では,電車の車内で物を食べる人 あまり見ませんが

(旅行中の駅弁はともかく。。。)

ロンドンでは かなりの頻度で食べています。

各種サンドイッチを筆頭に,パイ,ケバブ,ハンバーガー,フライドチキン,ポテト,ナッツ,など など など

最近日本食のお店が増えてきたので,お寿司の箱を広げて食べている人も。

そして ほぼ100パーセント 除菌シート/おしぼり的な物は使いません。

 

こうして車内で飲食している人々を しげしげ眺めていたら,

連続模様のようにイラストレーションにしてみたら おもしろいかもしれない

と ふと思い立って   

今までのスケッチや記憶から ラフスケッチだけおこしてみました。

こうした 日常生活に目を向けたテーマ。個人的には非常に好きです。

ちゃんとした作品にしてみたい。

eating_tube02.jpg

 ロンドンの地下鉄で 食べる人たち。

 

 

黙々とスナック菓子を口に運び続ける 乳母車の女の子。

ピクニック気分の母と息子。

周りなんて もうみえない

動くダイニング

日常化された 異常

… …

 

車内でのお化粧もそうですが,
個人的なスペースと公共のスペースの境目というものが だんだん あいまいになってきている気がします。

というよりも 精神的な個人のスペースが強固になって,物理的な距離をあまり必要としなくなってきたかのような。

これだけ人口が増えて 一人当たりのスペースが狭くなった現代都市の生活では,こういった感覚の変化は不可欠なのかもしれません。

他人の存在は,感じたくないときには,そうしてしまえる。

人混みの中で自分の世界を保つ術なのでしょうか。

ただ, それと公共マナーは別問題な気がしますが……

 

 

気象 病気 食べ物 パーソナルスペース

今回はずいぶん 思考をあちこち泳がせてしまいました。

編集無しで できるだけ生の思考回路で書いてみようと言う試みでもあったのですが,

読者さんを引きずり回す結果になっていないといいな。

 

来週までには雑誌の新刊ができる予定なので,次回ご紹介できると思います。

それでは皆さん,

手を洗って,うがいをして 風邪に気をつけてお過しくださいね。

08:34 | chihiro | 手に負えないものー風邪ー生活習慣ーパーソナルスペース 思考の連鎖 はコメントを受け付けていません
2011/01/08

こんにちは。

お正月気分は過ぎて,2011年も通常稼働になっております。

皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

ロンドンのお正月は 本当に一日だけで

「三が日」という感覚は全く感じられません。

特に「おせち」的なものもなく

新年のありがたみも 日本と比べると ううん,いまいち

単にクリスマスの延長と言ったところ。

 

そんな中でも一応努力をして,それなりにお正月気分を味わうべく

豆を煮たり(大豆 干し椎茸 昆布 にんじん)

筑前煮的なものを煮たり(鶏肉 干し椎茸 にんじん こんにゃく  のみ)

出し巻き卵をつくったり

チャイナタウンで買ってきた餅粉でお団子を作り お雑煮にしたり

と いろいろ あがいてはみました。

 

鏡餅もかまぼこも初詣も無いけれど

そんな有り合わせで 友人と過ごすお正月も けっこう楽しいものだったりします。

  

     〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜***〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『画材のこと その1−カラーインク』

今週は 少し(熱く)画材のお話をしてみようと思います。

この「画材のこと」は,よく使っているインクや紙の種類,ロンドンの画材屋さんの紹介など,テーマを変えながら不定期シリーズとして書いていく予定です!

 

さて,第1回目は わたしが最も愛用しているカラーインク。

いろいろな種類のもの(水彩や油彩,アクリルと比べると狭いマーケットですが)が出ていますが,わたしは主に「ドクターマーチン」シリーズを使っています。

‘Dr.Ph.Martin’s Concentrated Water Color’ というのが正式名称。

ドクターマーチンのカラーインクは主に三種類のシリーズがあって,わたしのよく使う「ラディアント(Radiant)」,フィルムや写真の着色に適した「シンクロマチックトランスパレント(Synchromatic Transparent)」,耐水性の「ピグメント(Pigment)」がでています。

チューブになっている絵の具をよく見かけますが,カラーインクは液体です。

蓋がスポイトのようになっていて,一滴ずつ出して使います。

筆や付けペン,カートリッジ式のペンなどの他,粒子が細かいので(色によって違いますが),エアブラシとしても使うことができます。

紙に向いているのはラディアントとピグメントですが,わたしは殆どラディアント。乾くと耐水性になるので,たまにピグメントのブラウンなどをカラー作品の主線に使うこともあります。

 

ラディアントは染料インクで,その名の通り鮮やかな発色が最大の特徴。

特にイエロー系やピンク系は,他の画材ではありえないような 弾けんばかりの鮮やかさが出ます。

初めて使った時は 思わず おおっ!! と言ってしまったのを覚えている。。

 

colourink_sample00.jpg

お気に入りの6色です。実は これだけでも十分描けたりします。

それくらい,混色と濃度差でバリエーションがきいてしまうエライ画材。

colourink_sample001.jpg

ドクターマーチン以外では,ウィンザー&ニュートンのインク(手前)も使います。

箱とラベルのデザインがかわいくて,つい集めたくなる危険なシリーズです。

ゴールドやブロンドなどのメタリックな色がきれいに出て,たまに使っています。

 

いくつか色を混ぜてもそれなりに鮮やかさをキープするので,混色にも耐えます。むしろ 普通に原色を使うと鮮やかすぎてしまうほど

非常に濃度が高いので,ほんの少しでも広範囲を塗ることができます。

また,加える水の量によって同じインクでも全く違う色が表現できるのも奥深いところ。特にブラウン系のゴールデンブラウンなどは,原液だと黒に近く,薄めるとイエローやゴールドのようになり,とてもおもしろい。

 

girl_bird_small.jpg

たくさん水で薄めて,軽い着色だとこんな淡い感じにも。

 

 

こんな魅力的なカラーインクですが,欠点もあります。

それは非常に光に弱いこと。

作品の長期保存はできません。ブルーやイエローが飛んで行ってしまいます

そしてビンのままでも,油断していると変色します。これは,起こってしまうと泣きたくなる大事件です。

そんなわけで,完成後すぐにスキャンして使う出版物のイラストレーションなどに主に使われている画材,ということになります。

 

カラー系の他で使っているのは,有名なのかわかりませんが,ドクターマーチンシリーズの「ペンホワイト(Pen White)」。カバー力が強くて愛用しています。

 

colourink_sample_white.jpg

Pen White

写真はこちらからお借りしました→http://www.docmartins.com/index2.asp

 

作品の最終修正やハイライトのために白いインクを使うのですが,これがなかなか厄介で,ものによっては下の色がにじんでしまったり透けたりして,きれいに塗ることができません。いろいろ試してみるしかない。

わたしが自分で試した中では,このペンホワイトと,ウィンザー&ニュートン(Winsor&Newton)のデザイナーズガッシュ(Designer’s Gouache)シリーズのパーマネントホワイト(Permanent white) が優等生でした。メインで使う画材によって使い分けています。

 

 

今回はカラーインクについてのベーシックなお話だったのですが,気がついたらずいぶん熱くなってしまっていたようです

次回の「画材のこと」では,カラーインクを使った着色についてもっと掘り下げてみようかなと思っています。

 

それでは,また来週お会いしましょう!

 

08:58 | chihiro | お正月のロンドン/画材のこと その1−カラーインク はコメントを受け付けていません
2011/01/01

happynewyear20111.jpg

どちらにせよ,油断は大敵。

走り続けろ,2011年!

 

みなさま,明けましておめでとうございます!!

 

先週はクリスマス,今週はお正月

年末年始はごあいさつがもりだくさんですね。

 

年末年始は日本で過ごすのが一番,というのが個人的な信条だったので

できるだけ一時帰国するようにしていたのですが

去年も今年も帰れずじまい。

しょんぼり。

でも。

クリスマスからの風邪もまだ治りたてだし

(結局一週間近く寝込んでしまいました

今年の年末は一人でおとなしくしているか

と そばをすすりながら思っていた矢先。

旧友からのメール。

 

「ロンドンにいるの?花火行こう!」

 

花火というのは,ロンドンのテムズ川,ウェストミンスター周辺で毎年催される,年明けカウントダウン花火大会(?)のこと。

毎年BBC(イギリスのNHK的なもの)の中継は見ているのですが,生で見たことは無かったのでした。

いい機会だし,急だけど,行ってみるか,と いそいそ着込んで外出。

 

久しぶりの大イベント会場,人が とにかくたくさん。

4firework02.jpg 

こんなとき,日本人の平均身長の低さを恨みます。

でも お友達はすらっと背が高くて うらやましい限り。。うーん いいなあ

 

早めについたので,待つこと約一時間。

カウントダウンが始まり,

盛り上がりは最高

そして スターマイン。

 

上って花開き かすみ 消え去る 真冬の夜の華

 

卒展 卒業式 就職活動 職場 あたらしいなかま

 

いろんな想いが上って消えて, たくさんのことが思い出されて

すべての玉が弾けたあとで

 

新しい一年また走っていこう,

 

そのおもいが ほんのり立ちこめた煙の中に浮かびました。

4firework01.jpg 

 

来年の今頃は,またどこにいるかわからないけれど

どんな場所でも しっかり絵筆を握りしめて

感じ,つくり続けていたい。

そんなことを考えた,年越しの数時間でした。

 

あたらしい年が,すべてのひとにとって 

喜びのつまったものになりますように。

今年もどうぞよろしくお願い致します!

 

 

12:39 | chihiro | Happy New Year!  はコメントを受け付けていません

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