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2012/05/20

JunkStageをご覧のみなさま、こんにちは。
長いような短いような連休も終わってしまい、なんとなく気が抜けている桃生です。
が、世の中には連休なんてとんでもない!というお仕事についていらっしゃる方も多数。
その最たる職種が生命に関係する仕事ではないでしょうか。
今回ご紹介するこのライターさんも、命の現場で、日々奮闘なさっているのです。

■vol.10 獣医師・シゲノブさん

――獣医師としての定年はありません。何年でも何歳まででも働けます。
 世間が許してくれるなら僕は75歳くらいまで働きたいです。
 働かないとだめなのですね、性格的に。いつも、走っていたい。(シゲノブ)


北海道生まれ、北海道育ちの獣医師。農業団体で牛や馬を中心に仕事をする傍ら、アニマルセラピーと救助犬活動を行う「北海道ボランディアドッグの会」でも活動。
http://www.junkstage.com/shigenobu/

*  * *

シゲノブさんはキャリア20年以上(!)のベテラン獣医師。
現在は農業団体に勤務し、家畜(豚、牛、馬など)の体調管理などのほか、NPO北海道ボランティアドッグの会でアニマルセラピーのボランティア活動にも積極的に活動の場を広げていらっしゃいます。
シゲノブさんはセラピー犬の適性検査から老人介護施設等への慰問まで実際にかかわっていらっしゃいますが、そこから伝わってくるのは仕事に対する研究熱心さと人への温かな視線。
アニマルセラピーという注目されやすく、期待を集める分野に携わっているだけに、問題点についても誠実に検討するという姿勢がしっかりと伝わってきます。
前者については言わずもがなですが、シゲノブさんのコラムに登場する沢山の動物の病についてのコメントからもご納得を頂けるのではないでしょうか。
乳熱子宮脱乳腺腫瘍犬インフルエンザ猫の免疫不全、果てはペットの認知症まで、動物の病を一手に引き受ける万能感もさることながら、勉強熱心な獣医さんだからこそ最近の臨床事例や研究などの引用も豊富。
こうした専門的な内容のコラムを参加当初からほぼ毎週1回以上更新し続けるということからも、いかにシゲノブさんが稀有な存在であるかお分かりいただけることと思います。

*  * *

そんなシゲノブさんが本領を発揮されたのは、2010年に宮崎県を中心に大きな被害をもたらした口蹄疫被害への派遣でした。
2010年6月に宮崎に赴き、同年7月の更新はすべてそこで見聞きし、体験されたことをコラムにまとめていらっしゃいます。
200頭以上もの牛に麻酔を施し、自身も怪我を負いながらチームワークで乗り切ったというシゲノブさんですが、その場にいて辛い仕事をしなければならなかった悲しみは本当に大きなものだったでしょう。
それを端的に伝えるエピソードがあります。

「先生、母子の場合はどちらかが先になるのでなく、同時に処分してください」

…これは、シゲノブさんが実際に農家の方に言われたことだそうですが、子牛と母牛を一緒に殺すというのは病の流行を食い止めるためとはいえ、本当にむごいことだったと思います。そして、シゲノブさんはそのエピソードに続けて、こんなことをおっしゃっています。

「家畜は人間に食べられて命を繋ぐものです。命を繋ぐことができないで、ただ殺される動物のことに思いを寄せざるを得ません。飼い主の人たちも一定程度金銭的な補償はされますが、つらい思いの補償はされませんし、できません。」

安易な共感を寄せ付けない、シンプルで、強い言葉です。
それでも、シゲノブさんは獣医師でいて一番良かったことはこの口蹄疫の作業に従事することができたことだとおっしゃっています。この言葉からは、獣医師としてプロの仕事を全うされたという強い信念がうかがえるのです。

*  * *

しかし、シゲノブさんは真面目でお堅いお医者様というわけではありません。
学生時代は「女装&うどんくい競争」なる不思議イベントに参加していたり、たまにちらっと好物を主張してみたり、もしかしたらシゲノブさんの言う動物のなかには人間もしっかり含まれているのではないかと思えるほど、ご自身に対する好奇心も旺盛。
そのアンテナの広さが、獣医師という幅広い職域としっかりマッチしているのです!
専門的な内容なのに読んでいてちっとも小難しくはなく、しかもユーモラス。
それが、シゲノブさんの凄いところの一つでもあります。
たとえば「ちょっけん」こと直腸検査の模様(でもよくよく読むと相当凄い絵になるような…!)、野良の子猫の捕獲に一喜一憂したりしている姿は真摯な動物愛護の精神だけでなく、シゲノブさんの温かい人柄が伝わってきます。

プロの仕事、の素晴らしさを、私はシゲノブさんのコラムからいつも感じます。
獣医師を目指す方だけではなく、動物好きな方、そして何より人が好きな方に、ぜひ読んでいただきたい。
シゲノブさんは、いつも走り続ける、JunkStageのトップランナーなのです。

2012/05/20 10:55 | sp | No Comments