グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち
【GOOD WILL HUNTING】1997年
節目になると、ふとこの映画を思い出すよう。
そして、いつも題名より、映像が目に浮かぶ。
DVDを見なおし始めて、おやっ、と思う。
このコラムで取り上げたことがあるような。
やっぱりあった。ちょうど3年前。
『 グッド・ウィル・ハンティング/天才であること 』
この時はベン・アフレック演じる友人チャッキーの言葉がいいな、と思った。
50年後の俺たち、俺は今と同じ(このクソッタレな)環境にいてもいい、
でもお前は違う、お前には違う舞台がある、と。
他のことは知らない、でも、それだけは知っている、と。
『50年後』の時間の感覚はマット・デイモン演じるウィルの口からも出てくる。
ある日仲間とハーバード大学が多く集まるバーに飲みに行く。
チャッキーが女子学生に声をかけると、
横からいわゆるインテリ男子学生が、労働者連中にはない知識だろうとタカをくくり、
チャッキーに論争をふっかける。
教科書丸暗記の知識を、ウィルがこれまた見事な丸暗記ぶりでまくし立て抑えこむ。
そして言う。
あたかも自分の考察のように ひけらかすのが趣味?
女にモテたくていた俺の友達をコケに?
50年後 お前のような男は やっと自分の頭で考えて こう悟る
“人の文章を盗むな”
盗みたきゃ 15万もの授業料を払わず 図書館で盗める
すると男子学生は言う
だが学位はもらえる
僕は出世、君はレストランのウェイター
ハハハっっ、ウィルは笑って答える。
だが(俺は)自分でものを考えている
Year, maybe, but at least I won’t be unoriginal.
そして
文句があるなら表へ出よう
と労働ゆえ鍛えられた労働者の得意分野で脅し、話をしめる。
ブラボー、文武両道、ぐうの音も出せない。
not be unoriginal = be original
本を読んだり映画を見たりして、こうやって人の言葉を拾っていると
コピペ人生だなぁ、と気がつきつつある最近の自分には、なかなか刺さる言葉。
そしてふと思う。
やっぱりウィルも50年後を見据えるの?
大学生と同じ歳ぐらいなら若くても18歳、50年後なら68歳。
労働者のひとくくり、変わらない、抜け出せない一生が50年という単位なのかしら
と、
だからチャッキーもウィルに50年後のお前、と言ったのかしら
と。
ちなみに男子学生のセリフは『俺は出世、お前はウェイター』のセリフは
原文だと、お前の将来なんて、俺の家族のスキー旅行に立ち寄ったドライブスルーで、
俺の子供達にフライドポテトを売ってるのがせいぜいだ、になっている。
You’ll be serving my kids fries at a drive through on our way to skking trip.
出世、なんて一言も言ってないが、家族もいてスキー旅行にも行けるステイタス
=成功者→出世、という訳。
これまた授業料が高くて学問を学校で学べない労働者階級の現実が
そのままセリフとなって浮き彫りになっている。
知識、というものに対しての辿り着き方には決して気持ちに違いがないものの
学校、というものの役目が大きい。
ウィルが言うように図書館の書物から知識を得ることはできる。
でも広がり切らない限界があり、学校にはそれがあり、
グッド・ウィル・ハンティングはそういう話。
最近見たインド映画の『 きっと、うまくいく 』にも同じテーマがあった。
『 きっと、うまくいく 』を見たから、ウィルを思い出したのかもしれない。
好きこそ物の上手なれ、
好きという純粋な欲が、才能によって得る二次産物の名声とか財産とか、の欲に勝れば
才能は得手としてうまくいく。
副産物として恩恵を受けるのなら、それは次の誰かの才能の為に渡してしまえば良く
そうやって(もうだいぶすぎちゃったけど)50年をすごすのは素敵だなぁ。