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2013/07/02

こんにちは。根本齒科室の根本です。

前回の続きです。

◇ Part1 治療費のカラクリ

この辺からは、各論に入っていきますので、だんだん毒は薄まっていきます。
ただ、前項でも申しましたが、歯科医療は、保険の部分は公定価格が決まっていますが、我々は民間です。公務員ではありません。
民業として診療所を経営する以上、当然「固定費」「変動費」などにも十分目配りが必要です。慈善事業ではないのですから、下手な原価率を設定したら、即生活の危機に直結します。
保険診療も同じです。前回のコラムでも書いた「広く薄くの負担と給付」の意味もありますが、慈善事業ではないのですから、下手な回転率を設定したら、即生活の危機に直結します。

こちらを見ても分かる通り、原価率3割を下回ったら、仕事になりません。格安インプラントのほうは、かなり極端な例だと思いますが、原価率1割ですね(私がこんな治療をしようとは絶対に思いませんが)。

気になるのは、「不信感で市場縮小」という、小さいグラフのタイトルです。
『不信感』・・・ここ、ちょっとやっつけ仕事の単語のにおいがするような。

まず3つのことに目が行きます。

[ 2008年 ]
ひとつは2008年から急激に減少していることです。何と言ってもこの年は前年にインプラントの死亡事故という、きわめて稀ながら残念な事故がありました。これは雑誌にもありますし、NHKについてコメントした回にも書きましたが、『オールオン4』という、特殊で難易度の高い方法です。
そして、『あの』リーマンショックの年でもあります。内定取り消し・リストラ・減給など世の中が一気に不況に見舞われ、民主党の跳梁跋扈を許してしまいました。せっかく麻生さんが財政出動頑張ったのに、白川が思い切りお札を刷り負けた(対FRB&ECB)せいで、先進国の中で日本だけマイナス成長が続いてしまいました。

[ 2012年 ]
くわえて、2012年が何か変な落ち方をしています。矢印の部分です。これは私も過去に書きましたが、国民生活センターの警告~NHKクローズアップ現代の報道に至る一連のバッシングが年頭にあった年です。
残念なことに、その年だけで「TVで見て怖かったからインプラントをやめる」とおっしゃった方が、2~3人ではすみませんでした。つい先日も「先生の言うことはわかるけど、TVで怖いと言っていたから」という方がまだいらして、つくづく地上波の悪弊?!を思い知らされています。

[ 先進国では ]
不信感も当然あると思います。しかし、昨今の欧米先進国では、どこも埋入本数が減少傾向にあります。

 ①おもに中高年などの、欠損のある人には、ほぼインプラント治療が完了してしまっており
 ②これからの若い世代は予防歯科に熱心なので、そもそも歯が欠損しない

という2つの理由から、先進国では今後は需要が減少することが予測されています。

逆に今後市場として伸びそうなのが、人口の多い新興国です。ブラジルやインドネシアなどは展望のあるマーケットだといわれています。ただ最近は、アベノミクスやQE3など日米が好調な反面、インドやブラジル、中国などの不調が目立ちますので、確たることは言えません。

中国の場合は、どうでしょう?理財商品、シャドーバンキング、金融引き締め、裸官。。
バブル崩壊も時間の問題のような気もします。ハイパーインフレが先か、デフレが先か。。
人民も経済格差が大きすぎて、普及という面ではどうなんでしょう??そもそもあそこはPばっかでCがないお国柄だから、その(マーケティング的な)意味でもインプラント向きではないかも・・

いっぽう、マスコミ大好き「たった2カ国だけなのに特定アジア諸国」のもうひとつ韓国ですが、逆に日本よりもそのような先進医療には積極的なお国柄のせいか、すでにあらかた「治療完了」状態だそうです。顎の骨を含む整形手術やレーシックも非常に盛んなのはご案内のとおりです。

インプラントそのものの減少があるとすれば、目先の不信感よりも、バックにあるこのような潮流が主な原因と考えます。

ところで、歯科が民業であり、個人事業主主体であること、必然的に一部の大きくはみ出した感じの歯医者が目立ち、業界全体に対する不信感がつのりやすいことも先ほど書きました。

こんな時に、一般人の考え付きやすい手っ取り早い解決法は『権威のお墨付き』です。NHKのときは『大学』、週刊ダイヤモンドの場合は『学会』でした。
これらの『大学』『学会』のことは、自分なりに存じておりますが、基本的に、認定医取得のためには専攻生や医員で長く大学に残って症例を重ねる必要があります。また開業医向けに資格取得のための100時間コースなどの民間講習などもあるようですが、聞くところでは費用7ケタが普通のようです。。。
くわえて、大学では信頼できるベテランや麻酔科や病棟、医科歯科大学の場合は何かあれば医学部もついていますので、その意味ではやる方もやられる方も非常に安心です。しかし同じことを診療所で出来るかといえば、私から見れば非常に度胸がいるように思います。

簡単なケースややや発展的なケースくらいなら、問題なくこなすと思いますが、術式が大掛かりになったり、難易度が上がったりすればするほど、万一の時の対処が大変です。

「やっていた」と「やれる」の間には、初期投資や万一の連携体制なども含めて、大きな差があります。

私から見て、これなら安心できるかな、と思われるのは、当該ケースに似たケースをたくさん扱った経験があり、それをレントゲンや写真などで説明してくれるところかな、と思います。こう言っては身も蓋もないですが、たぶん自分が患者の立場だったら、腕自慢や設備自慢よりも、そうされたときに一番安心できるかな、と思うからです。

◇ Part2 インプラントにだまされない

なんだか、半分くらい、上に書いてしまいました。
ここのコーナーは、題名からして「さて、屠ってやるから首を洗って待ってろ!」みたいな感じなのでちょっと警戒して読みましたが、意外や意外、私見でも、結構公正な記述だと思います。

冒頭、気になったところを記します。

[ 引用 ]急にひどい頭痛に襲われるようになったのだ。そのうちに、インプラントの歯がぐらつき始めて、ついに抜けてしまった。あわてて歯医者に駆け込むが、歯医者は「治療は成功している。脱落したのは、別の理由だ」と取り合ってくれない。他の歯医者に行ってわかったのは、丸山さん(仮名。根本註)はひどい歯周病にかかっており、インプラント治療を受けるべき状態ではなかったということ。また頭痛も、かみ合わせが適合していなかったのが原因と判明した。

歯周病とインプラントには密接な関係があります。咬合ももちろんそうです。
(ちなみにむし歯には関係ありませんが)

驚いたのは、歯医者Aの「治療は成功している」のひとことです。
いくら準委任契約だから瑕疵担保責任は問われないとはいえ、最善の努力義務は当然の必要条件です。
デメリット面の事前説明も当然あるべきですが、インプラントの費用は、何十年も長く機能する率が非常に高いからこそのプレミアム価格なのであり、健康への長期投資ともいえるのです。

「取れたのは別の原因」というのは、何でしょう?後で取れそうな感じといえば、症例選択が不適切であったとか、まさかの骨火傷とか、プランがずさんだったとかインテグレーションが甘かったとか、荷重が早過ぎたとか、側方の干渉がトラウマチックに働いたとか、そもそもかみ合わせが高すぎたとか、メンテナンスの時に咬合確認してなかったとか、etc

いずれにしても、私見ですが、この手のトラブルは、たいてい歯科医師の見立てにほぼ全部の問題が集約されるものです。

しかし、再治療を担当した歯医者Bとしても、複雑な心境だと思います。

こういう脱落などのトラブル時に一番大事なことは、いかにリカバリーできるか、ということです。
「ご心配をおかけしますが、大丈夫です。○○が原因だったと思われるので、□□の方法で改めてやり直すことができます。お時間がその分少しかかってしまいますが、費用の心配はいりませんよ。」
最低でもこのくらいはしないと、高額な料金を払った患者様はことさら不安に思うことでしょう。

私も、上顎前歯で、まれにそのような経験をしたことがあります。しかし、恥ずかしいことを言いますが、万一取れてしまったことがあっても、責任を持って原因究明とリカバリーできて、その後それを長期に保存させることができれば、一応の誠意は果たせているのではと思います。

[ 引用 ]この神経まひ、上顎洞炎などは、気が付いた時点ですぐに対処すれば重大な後遺症を残さないで済む可能性が高い。ほとんどのケースでは神経まひや炎症の原因であるインプラントを撤去することになるが、それを残念がってはいけない。撤去が早いほど回復も早いので、異常を感じたら歯医者に相談すべきだ。

ここは、良いことを言ってくれたと思います。NHKクローズアップ現代の冒頭に出てきた衝撃的なシーン(下唇の慢性的しびれ)に恐怖感を抱く方が本当に多いものですから、ほとんどの状況では迅速な対応で十分にリカバリー(症状消退・再治療)可能であることは事実として知ってはおいていただきたい点です。

もうひとつ、非常にいいことが書いてありますので、ぜひ紹介させていただきたいと思います。

[ 引用 ]加えて、抜歯するときに重要なのは、「その理由を把握して、きちんと対策すること」(武田孝之 東京医科大学インプラント科臨床教授)だ。歯の喪失には虫歯、歯周病、歯のかみ過ぎという3大要因がある。原因を絶たないと、どんな治療をしても再び喪失することになりかねない。


これはインプラント治療に限らず、すべての歯科疾患に言える、本当に大事なことです。
歯はその人とナリを残酷なまでに顕わします。「フタをすればいい」「つなげておけばいい」という部品のようなわけにはいきません。
言い方を変えれば、歯の治療はじつは治療ではなく、「どうしてこうなった?」の治療こそが真の治療です。
「どうしてこうなった?」こそ最も大事な出発点です。

◇ Part3 歯を守る技術最新事情

ここが、一番患者・国民側の視点に立てるはずのコーナーだったのですが、ちょっと残念な仕上がりです。
後でもういちど書きます。


◇ Part4 いい歯医者悪い歯医者

・・・「インプラント対応医療機関一覧」  (ノA`)ア0ャー

「典型的なステマ、じゃなくて『マ(ーケティング)』」
20ページも、こんな一覧に紙面を費やして・・・フォント半分で5ページ位に収まるからw
しかもたとえば栃木県や群馬県で5件、足立区や新宿区で2人しか載ってないというのは、むしろこの資格が全然普及していないことを物語ってるような気もします。
私の知ってる達人クラス(本を書けるレベル)も全然出てこないし、この収載方法にはに強い偏りを感じます。これだけを信用するのは、どうでしょうか。。

こりゃ、面白がって見るのは、同業者メインだと思うのですがw
あ、龍ヶ崎市のところで、大澤先生のところが載っていました。フムフム・・

◇ Part5 歯医者・歯科大の末路

・・・ここは、結論が難しいですよね。
「患者が減少」「自由診療が減少」「技工業界の苦悩」「歯学部定員割れ」
じゃぁ、どうする?という話です。

この特集の一番最後は、このような文で締めくくられています。

[ 引用 ]こうした問題を抱えながらも、歯学部は年間約2400人の学生を入学させ続け、歯医者の需給ギャップは埋まらない。歯科を取り巻く府のスパイラルを断ち切る鍵のひとつが、歯医者の蛇口である歯学部の淘汰・再編にあることは分かりきっている。

たしかに、歯学部にセイの法則が通じないのは明らかです。
まず「供給が需要を生む」という発想自体、消費者にとって、上から目線で大変失礼な考えです。これを多くの経済学者が常識と考えているということを知ったときは、大変驚きました。。
貯蓄や在庫、歯科的な情報や知識が広がってきた成熟市場では、イノベーション(この言葉自体、あまり好きではないのですが)や、価値の転換による潜在需要の掘り起こしが先だと、自然に思います。

それで、歯学部を減らしてどうするのでしょうか?減らせばすべて解決でしょうか?

私は早い段階から、歯学部→医学部への転部を軸にニーズのマッチングを図るべき、と主張してきました。
上にも書きましたが、OECD基準で見るとほぼ平均的な数で、別に歯科医師過剰でも何でもありません。

ただ日本独自の現行制度を維持しようとすると、必然的に歯科医師一人当たりの患者回転率を、他国に比べて非常に高いレベルで求められます。
とうぜん歯科医師数に割り当て(過剰)が生じてしまいます。また、経営を考えても、この診療報酬で歯科のワークシェアリングを考えても、単なる縮小再配分になってしまいます。

日本歯科医師会の大久保満男会長がP84のコラムで次のように語っています。

[ 引用 ]虫歯を減らすためにわれわれ歯医者は予防活動に力を注いできた。それが自分たちの首を絞めることになるとわかっていてもだ。今や幼稚園では虫歯を持つ子供を見つけるほうが難しい。医科に比べて歯科の予防技術は完璧なものになっている。むし歯をどうすれば減らせるかと言う技術もツールもそろっている。予防を徹底して高齢になっても自分の歯が保てれば、介護を必要としない健康寿命は長くなり、認知症の危険度も低いことがわかってきた。しかし、予防への努力を続けても報酬はつかない。

国の公的医療のあり方が、疾病保険である以上、これは仕方がないことかもしれません。
歯医者側は、やはり、分かっています。
そして、開業医を代表する立場としては、診療報酬や公的保険制度を守る立ち位置からしか語ることができないのもまた事実です。

しかし、歯医者側や制度をこのままにしておくと、どうしても国民がそちらに誘導されてしまい、従前の削って詰める、抜いて入れ歯、の方向に流されっぱなしになってしまいます。

大久保会長は、予防=知識の提供で、時間がかかるので、評価が難しいと語っておられます。
それは一面の真理ですが、だからこそ(個別具体的な各論は置いておき)総論的な部分は、政府やメディアが率先して啓蒙して欲しい、いや、してくれないで個人の努力任せにしていると、伝わるものもなかなか伝わらないと思います。

そして、知識の啓蒙だけでなく、海外の事例も参考にしながら、診療報酬として評価する枠組みを同時に導入しないと、「分かっちゃいるけど」で終わってしまいます。

私は、歯科の場合は未病者に対するケアが一番大切だと思っていますが、予算の総額をあまり拡大させずに、中長期的な結果を出していくには、国民に対する啓蒙・教育と『同時に』制度改革を進める必要があります。
その改革の方向性としては、現在からではなく、理想とする未来像から逆算してロードマップを引いてくる必要があります。その未来像とロードマップがないうちは、たぶん何をやってもうまくいかないと思います。

 『同時』といえば、最近のアベノミクスにまつわる議論をきいていて、
 おかしいと思うことがあります。とくに3月以降です。
 もともとは、迅速なデフレ脱却がすべての根本であり、それには第一の矢(金融緩和)
 第二の矢(財政出動)を同時にふかすことが学問的にも理にかなっていることは
 ノーベル経済学賞のクルーグマン、スティグリッツ両氏の弁を待つまでもありません。
 しかし、第三の矢(成長戦略)は、生産性を上げる改革なので、需要と供給でいうと、
 供給を増やして需要を動かさないので、かえってデフレ(供給>需要)を促進して
 しまいます。
 もともとは、

  第一の矢「白川日銀には何もできなかった。インフレ期待の喚起が重要」
  第二の矢「回復を待っているいとまはありませんから」
  第三の矢「いつまでも借金を続けるわけには行かないので~」

 と選挙演説でも言っていたのに、「政権を取ったら一~『三』を同時にやるのが大事」、
 とか「一番大事なのは第『三』の矢」などと、主張の根本が変わってしまっています。
 とくに甘利大臣と産業競争力会議がひどい!

 そして増税ですが、「デフレを脱却した後」と安倍さんも麻生さんも繰り返し
 言ってきて、3党合意でも附則18条にその旨を書き足したのに、今は「民主党時代は
 マイナスだったのが、自民党になったらプラス3.5パーセントになった」などと
 盛んに宣伝しています。
 このプラスは「実質GDP」です。肝心の「名目GDP」はプラス1.5パーセント程度
 なので、まだ名実逆転はなおっておらず、つまりデフレは継続しています。

 第『三』の矢は、本質的にデフレ促進策なので、じつはデフレ脱却後名目成長が
 安定するまで、実施を待たなければいけないのです。

 今忘れてはいけないのは

  コアコアCPI(物価指数)がプラス2%
  GDPデフレーターが名実逆転解消

 という必要条件と

  「名目」GDP (百歩譲って「名目」GNIでも可)

 という単語です。
 なぜ盛んに成長を宣伝しながら名目と実質をわざとはぐらかしているかといえば
 財務省の事務次官がリフレ派の真砂靖氏から増税派の木下康司氏に変わることに
 なった影響が大きいからだと思います(と倉山満先生が言っていました)。

 勝栄二郎や木下次官は、デフレ脱却しなくても税収が結果的に減ってもとにかく増税
 という、かなり危ない思想の持ち主といわれています。
 まさに国益より省益、アベノミクスの意義を踏まえ猛省を促したいところです。

まずは、予防歯科で大きな戦力になる歯科衛生士の充実が急務と考えます。
具体的には教育機関(専門学校)の拡充、再復職支援、そして規制(歯科医の監督)緩和です。
レントゲンのボタン、浸潤麻酔、歯型、かみ合わせetc。
規制している法規の根拠自体が不明かつ古色蒼然としている部分もたくさんあります。

以前、新藤総務大臣がうまいことを言いました。規制緩和は、総論反対各論賛成なのです。

また、一部の私大歯学部では、定員の半分程度を歯学部⇒医学部に転部・変更することも
社会のニーズに非常にマッチすると思われます。
「むし歯や歯周病にならない日本」一刻も早く実現したいものです。

◇ Part3 歯を守る技術最新事情 Vol.2

本当は、今上に書いたようなことをもう少し掘り下げて論じていただければとても良かったのですが、残念ながらここの章は、小手先の技術論やメニュー紹介に終始してしまい、せっかくの挽回のチャンスを逸してしまった感が否めません。

また、技術論にしても、特定の歯科医師個人の発言のみを頼りに記述している部分がこのパートに限らず全体的に目立ち、気になります。

「縦に割れた歯の根を、口の外で接着剤で着けてから戻す方法」の部分が典型的です。

これは日本では眞坂信夫先生という、歯医者なら知らないものはないくらいの大家がおられたのですが、その大家をもってしても必ずしも成功率の高い方法ではありません。
まず歯が縦に割れるということは、割れるなりの原因(圧力が強すぎ、芯棒の形が悪いetc)があるから割れるのです。
その原因に目をつぶって、単に接着剤でつけて戻しただけでは、たとえ生着しても次はもっと早く割れてきます。

レーザーのむし歯判定機「ダイアグノデント」のところも乱暴です。基本的にコレは、穴になる前のむし歯になりかけの歯を判定するために作られたものですが、記述では

う蝕検知液の場合は、染まった部分だけを削り取る。ダイアグノデントは、ペン型の短針部分を歯に接触させてレーザー光で虫歯の状態を計測する。数値は最大99まで示され、30以上ならば処置の対象となる。う蝕検知液で染まった部分を切削し、ダイアグノデントで計測すれして確認すれば、より確実にということになる。

となっています。これは二重の意味で変です。

まずは、この記述だと、むし歯のエナメル質と象牙質を削って、う蝕検知液で染まらなくなった象牙質(エナメル質にはもともと検知液の意味が無い)の部分を、更に削り足りないか見るためにダイアグノデントで確認する、と理解できますが、寡聞にして、基本的にダイアグノデントでそういう使い方をすると聞いたことがありません。

また、「30以上は処置の対象になる」などと乱暴に言い切ってしまっていますが、そんなことをしたらどこもかしこもピーピー反応しまくりで処置(削って詰める)だらけになってしまい、オーバートリートメントの片棒を担ぐことになってしまいます。
マニュアルにも「*上記数値はあくまでも目安ですので、測定値だけでなく患者さんのカリエスリスクを考慮して診断してください」といしっかり書いてあります。

それどころか、私も購入時に、マニュアル写真の右下の「ご使用いただいている先生方の測定値の目安」と、右上の「ダイアグノデント 測定値の目安」があまりにも違い過ぎるのに、非常に驚きました。
(ダメじゃんKAVO(カルテンバッハ)。ご使用いただいている先生方の言うこと聞かないとwwwwww)

私は、微妙なシミなどについて30ちょい超え以上の値が出た場合に、患者様との2人3脚で進行しないように予防を頑張りましょう、という意味で使用するのが、ダイアグノデントの一番本質的な使い方だと思います。バンバン削るためにダイアグノデントを使うのは、根本がちがうのではないかと思います。

電動歯ブラシ『頂上決戦』なんてのも、どこかのラーメン屋さんみたいで、何だかなぁ・・

正直、スクラビング法の基本を抑えていれば、ほとんどの人は数千円の安い奴で良いです。
あと、あまり大きな声で言うと怒られますが、歯みがき粉も、とりあえず好きなので良いです。
あってもなくても。。

<終わりに>

読んでみて一番感じたのは、これだけネットが普及したのに、ニュアンスとして正しい方向性が、まだまだ全然一般に伝わってないな、と感じました。
これはネット上でもそうです。
歯科の場合は、個人差や各論が複雑すぎて一概にものを言いにくいのですが、総論的な部分だけでも、全然認識されていない感想を持っています。
たとえば、某アフィリエイトサイト「安心ちゃんねる」のような、医療系の話題を扱った掲示板などでも、治療を受ける側の認識としては相変わらず「歯医者は高い/回数がかかって金儲け/痛くないのに行きたくない/保険と自費は材料以外は同じだ」のような感じです。
また、「歯」と入れてGoogleニュース検索をかけて引っかかってくるサイトも、おしなべて皮相的な方法論に終わっている物がほとんどです。

まだまだ時間がかかると思います。私もあせらず頑張っていきたいと思っています。

【今回のまとめ】

ネットでもリアルでも、歯科イメージの中心は治療メインで完結しており予防部分が手薄

2013/07/02 09:27 | nemoto | No Comments