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vJunkStageをご覧の皆様、こんばんは。
ところで皆様はトスカーナ地方と聞いてどんな風景を想像するでしょうか?
フィレンツェなど歴史的な場所を連想する方もいるでしょうし、ワインの名産地として記憶されている方もいるでしょう。核となるアイコンを豊富に有する地域だけに、イメージはあるけれど具体的にどんな場所なのかよく分からない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
年始最初の今回は、そのトスカーナ地方で暮らす日本人一家のお話をさせていただこうかなと思います。
■vol.39 南トスカーナ在住一家・四方恵美子さん
――「食べる」とは、ただ単にお腹を膨らます欲求を満たすだけではないのですね。
自分の命を続けさせる行為なので、命を頂くのだと思っています。(四方恵美子)
マクロビオティックをきっかけにイタリア・南トスカーナへ。夫の働く山の上の小さなレストランを手伝い、現在はボンコンヴェントにて一家4人で暮らしている。
http://www.junkstage.com/emiko/
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四方さんは現在、イタリア料理人のご主人と二人のお嬢様とともに、南トスカーナ地方で暮らしています。
今回ご紹介するコラムは、その四方さんとご家族が暮らす人口3000人にも満たない小さな村でのエピソードを丁寧に綴ったもの。観光地・イタリアでは見えてこない、地に足をつけた暮らしぶりを感じさせる記事の数々はガイドブックに決して乗らない生活の息遣いを感じます。
出身地の大阪とも違う、多くの人が思い描くミラノやフィレンツェのような大都会でもないこの村に、四方さんはご主人に呼ばれる形で移り住んできました。
南トスカーナ地方のこの村には様々な美しい風習があります。
たとえばクリスマスシーズンの最後、1月6日に現れるベファーナという魔女。町中が紙ふぶきで覆われる2月の謝肉祭。情報交換の場でもある毎週土曜日のマーケット、4月のクラシックカー・レース、夏には子供たちの絵画教室が開かれ、初秋のブドウの収穫、10月のカッシア街道のお祭り……。
どれも日本では馴染みの薄い習慣ではありますが、地域の歴史に根差した四季折々の行事を追体験できるのも四方さんのコラムの魅力の一つです。
そして、ご主人がシェフというだけあって四方さんのコラムには美味しそうな料理が続々!
頂き物も多いという四方さんですが、その新鮮な材料を活かした数々のパスタ、サラミ、フリット、サラダ、チーズ、ジャム……いっそ目に毒なほどの品は是非お写真でどうぞ。
他にも、ワイン好きなら垂涎のブルネッロの試飲会などのエピソードで味を想像するのも一興ですし、お手伝いされているというワイナリーのナチュラルワインのコラムなどはつやつやの葡萄がそのままでも十分おいしそう。
食べることは生きること、という言葉もありますが、それを実感できる豊かな生活が四方さんの周りには溢れているのだろうと羨ましく想像できる瞬間です。
今回、この原稿を書くにあたり四方さんのコラムを読み返していて感じたこと。
それは、「善く生きる」という言葉でした。
四方さんのスタンスは、一貫して“かあちゃん”です。
一人称もそうですし、コラムの大半にお嬢様たちとの毎日が綴られていることから分かるように母親としての目線がぶれたことはありません。母である四方さんが、子供を通して毎日を楽しんでいる。
もちろん、四方さんはどこに住んでいたって人生を楽しむ方だと思いますが、その類まれなほどの楽しむ才能がボンコンヴェントの地で開花しているように感じられるのは前述のような風習や食事のエピソードの語り口のせいでしょう。
海外に住む、だけではなく暮らすという点において、四方さんは超一流なのだろうと思います。
ボンコンヴェントは2013年に水害に見舞われました。数十年に一度という大きな災害であり、ご無事だったとはいえ異郷の地でさぞご不安だったことと思います。
それでも、水が引けばワインを仕込み、子供たちを学校へ行かせ、ワイナリーに働きに行く。このたくましさはまさにかあちゃんの面目躍如で、それが出来るのが四方さんの素晴らしさなのです。
当たり前に生きていくこと。
食べ、笑い、感動して、明日を迎えること。
そんな大切なメッセージを、四方さんのコラムは教えてくれているように思うのです。
*マクロビオティック…玄米を主食、野菜や漬物や乾物などを副食とすることを基本とし、独自の陰陽論を元に食材や調理法のバランスを考える食事法のこと。