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ミミック
【Mimic】1997年
基本的にホラーは見ない。
楽しいことや悲しいことを擬似体験をして、人生の肥やしとしたとしても
恐怖は一体何になるのだろうか、と。
あと、ただただグロテスクな事も多く、それが苦手、というのもある。
そもそもこの映画はビデオ屋で間違えて手にとったことから始まる。
本来見ようと思っていたのはアウトブレイク。
パッケージが似ていた、のだと記憶している。
ちょっと宇宙っぽい空間に伝染病を調べてるような雰囲気と色合いで。
ところが始まってみたら、思うようなシーンがなかなか出てこない。
アウトブレイクの細かいところだって忘れていて、
確か面白かったな、ぐらいの気持ちで借りたので
そのうち知ったシーンが出てきて思い出すんじゃないかと悠長に見続ける。
人間ぐらいの大きさに進化した昆虫が出てきて、人をバッサバッサと襲い始め
おや、これは違うぞ、と思った時にはすでにどう終わるか気になりやめられず
その後はひたすら枕を抱え、ひぃー、と思いながら見終えた。
スプーンで足音を真似る少年が出てくる理由が不明だったり、
主人公の女友達が奇抜さを出しながら後半なんの意味を持たないところや
他にも荒削りさ満載でしたが、そこが逆に潔く、意外に話は面白い。
伝染病の運び屋となるゴキブリを駆除するために
カマキリとアリを合わせ遺伝子操作した昆虫を天敵としてばらまくことに。
新種の昆虫“ユダ”は、“design to be died”、“死ぬように設計されている”、
つまり、繁殖機能を持たず120〜180日で死滅するよう作られている。
その3年後、昆虫ユダの発案者の博士スーザン【Susan】は
いるはずのないユダの幼虫を発見する。
友人ウォルターに意見を求めるスーザン。
進化し、生き残ったのだろう、と言うウォルター。
Evolution has a way of keeping things alive.
(英語表現では“進化”は“種”を生き続けさせる方法を持つ、
つまり、進化とは生き残る術に対して生じるということである、と言う)
実験では死滅したと反論するスーザン。
But they all died in the lab.
けれど教授は更に畳み掛ける。
だが君はユダを世界に解き放った
世界は実験室より大きい
Yes, Susan. But you let them out… into the world.
The world is a much bigger lab.
英語のセリフでは、世界が実験室“より”大きいという日本訳とはちょっと異なり
世界はもっと大きい実験室、と言っている。
実験室と外の世界がともすれば別次元と感じさせる日本語訳、
世界はサイズの違う“実験室”と言い切る原文。
実験室では起こらなかったことが外の世界で起こりえる、という点は同じものの
微妙な視点の違いを見る。
そして、もはや進化の過程においては、実験と実戦の線引きは難しい。
だからそれ=ユダの開発が善かったのか悪かったのか、というレベルは過ぎ
進化した“ソレ”に捕食されると言うのなら、戦うだけ。シンプル。
中途半端に、昆虫が人間っぽい“意思”を持たず、
“擬態”に徹底した進化した昆虫だったのもこの映画の良かったところと思う。
人間と同じ大きさに進化し、暗がりで顔のように見える殻を持つ。
グロさもやや控えめで、ややサスペンス風のホラーですが
この、ひっそりと“捕食者”が隣にいるんじゃないか感が怖い。
記憶に残っている、という点もあり、
私が一番怖い映画は?と聞かれて答える映画のひとつです。