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プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂
【Prince of Persia: The sands of time】2010年
CG技術の向上やら、テーマの深みや意外性やらを求めると
内容が過激に暴力的になる昨今、ディズニー映画ほど
そこをコントロールしている映画はない、とつくづく思う。
子供タチが見る映画に入れてはいけないシーン10か条、とか
使ってはいけないセリフ100、とかありそうである。
バシッとそう思ったのが『パイレーツ・オブ・カリビアン (2003)』あたりから。
それまではディズニー=アニメ、で、実写はミュージカル調のいかにもお子様、
というのは語弊があるものの、大人が映画館に足を運ぶには
やや、やや、味気ないもの、という印象だった。
で、調べてみたら、なんと!
『三銃士 (1993)』とか『アルマゲドン (1998)』『ナショナル・トレジャー (2004)』
とかはそれっぽいものの、ちょっと激しいけどストーリーが深い『ザ・ロック (1996)』
や『フェイス/オフ (1997)』、『ネゴシエイター (1997)』、『デジャヴ (2006)』も、
ディズニー実写映画!
更にえぇ、と思ったのは
『スターシップ・トゥルーパーズ(1997)』と『コン・エアー (1997)』
スターシップ・トゥルーパーズは宇宙虫と戦う戦士タチ、というテーマだけで
グロくなりそうなのに、意外にスッキリしていたし、
コン・エアーは極悪人と爆発と精神異常者を全部入れして混ぜ合わせた感じなのに
危ういギリギリな線上であったけれど、アメコミ風のヒーロー感をキープし続けたのは、
ディズニーレギュレーションかぁ、と勝手に納得。
で、パイレーツの次に再び “コントロールされているなぁ” と思ったのが
このプリンス・オブ・ペルシャ。
これまた調べてみたら、なんと!
監督でも脚本家でもなく、映画プロデューサーが同じで、
両方ともジェリー・ブラッカイマー【Jerry Bruckheimer】。
正直この肩書き“映画プロデューサー”が、結果映画の良し悪しに
どう影響を与えているのかがイマイチピンとこないが、
彼が手がけた作品リストを見ると、これまた前述した映画が複数被る。
ザ・ロック、コン・エアー、アルマゲドン、パイレーツ・オブ・カリビアン、
ナショナル・トレジャー、デジャヴ、プリンス・オブ・ペルシャ
そしてディズニー映画以外だが
フラッシュダンス (1983)、ビバリーヒルズ・コップ (1984)、トップガン (1986)、
バッドボーイズ (1995)、コヨーテ・アグリー (2000)、パール・ハーバー (2001)
と、誰もが、あぁ、と思うような作品を手掛ける。
人気のTVシリーズ『CSI』もこの人。
なるほどね、私、すっかり王道×王道にノセられているよう。
でもね、過激な描写だけがヒトの内面をえぐり、真の何かを気づかせる訳ではない。
安心してみれる、それでもテーマの深さが理解でき、コトバが刺さる
そういう映画は貴重。
『プリンス・オブ・ペルシャ』からだいぶそれたので、字幕の話に戻る。
今回気になったセリフは、なんともない呼びかけの一言。
両親のいない貧民街の少年ダスタンが、王の騎馬兵の前にうっかり飛び出した
友人ビスを助けようと、兵士たちをあの手この手で翻弄させる。
その勇気と技量に感銘した王がダスタンを王族に迎えるべく、弟の二ザムに言う。
===
馬に乗せろ
Brother, take him up!
===
この “Brother” のセリフ、王と王の弟である二ザムの関係性が
すごく味濃く出ていて、ぜひ字幕にも入れて欲しいなあ、と。
でも『弟よ、馬に乗せろ』じゃあまりにも命令的で、
Brother の言葉に含まれる血族ゆえの親しみと信頼感が出ないしなぁ、と。
で、もしかして!と思い吹き替え音声を確認。
二ザム、乗せてやれ
おぉ、これだ!もうちょい!
日本語には兄さん、姉さん、兄者、兄様、姉様、があっても
それに該当する弟、妹的な言葉がないから難しい。
もちろん英語のBrotherにも上か下かの区別はない。
それならば『兄弟、馬に乗せろ』、と思ったが、なんかしっくりこない。
現実の世界だと兄弟同士でこういう親しみを表すならあだ名、
例えば妹、弟に家族ゆえの親しみをもって私が呼びかけるとしたら
⚪︎⚪︎ーちゃん、⚪︎⚪︎くん、みたいな。
『ニーくん、乗せてやれ』
。。。いやいや、王様の言葉ではないね。
結局『二ザム、馬に乗せろ』か
意訳だけれど気持ち的に『二ザム、連れて行くぞ』かなぁ。
何気ない呼びかけ言葉だけど、その気持ちも字幕に込められたらいいのに、と思う。