ハンコック
【HANCOCK】2008年
ずっと“アメコミ”原作と思っていたら完全オリジナルと見終わってから気がつく。
だからなのか、割と好きなX-menやバッドマン(特にダークナイト)とはまた違う、
深みはあるけれど、意味深で哀愁を引きずりすぎない、スーパーヒーローのドラマがあるな、
と思う。
この映画、短絡的に言うと
アルコール好きでパワフルすぎな“クズ【asshole】”扱いのスーパーヒーローが、
皆に愛される真のスーパーヒーローになる為努力する、というハナシ。
もちろん、そこにいろんなドラマが絡むわけだけれど、本筋はそこ。
一見すると、『改心』して、と言いたくなるけれど、
実際はPRマンのレイ【Ray】に出会い、助けられ、
立ち居振る舞い【attitude 】に気を付けただけにすぎない。
つまり、ハンコックの本質は変わっていなくて、そこがこの映画の要と思う。
ストーリー前半、ハンコックがレイの家を訪ねる途中、
近所の悪がきミッシェル【Michel】に絡まれる。
+++
ハンコック: 名前は?
ミッシェル: ミッシェル
ハンコック: 俺は?
ミッシェル: パパは“クズ”だって
ハンコック: 人をそう呼ぶのは よくない
ミッシェル: “クズ”?
ハンコック: 言われて怒る奴もいるし- 気分を傷つける
Hancock: What’s your name, boy?
Michel: Michel.
Hancock: You know who I am?
Michel: My papa says you are an asshole.
Hancock: Well, that’s not really a nice word to call a person, is it?
Michel: Asshole?
Hancock: Yeah. Because that could make someone very angry…
…and, you know, maybe hurt their feelings..
+++
ハンコックは“心が痛むコト”をちゃんと知っている。
そんなハンコックをレイがPRマンとして分析する。
+++
話を掘り下げよう
君が問題を起こすのは 寂しいからなんだ
人々の理解を欲しがってる
人を助けても非難されるので背を向けてる
I think that deep down you behave badly because you’re lonely.
I think deep down you want people’s acceptance.
Come on, now. You save people’s lives…
…and they reject you, and so you reject them back.
+++
どうやら先にハンコックと溝を作ったのは人間で、
だから彼は人間と垣根を作ることにしたらしい。
そんなハンコックに、態度を改める、と大衆に向かって読ませた表明文の1節。
+++
地球上で僕のような人間は1人 とても生きにくい
Life here can be difficult for me. After all, I’m the only one of my kind.
+++
レイが作り、読まされている文面かもしれないけれど、これがハンコックの本音だろう。
『only one of my kind』
見かけは“人間”と同じ見えるかもしれないけれど、全く異なる人間ではない種であること。
態度が、どれだけ“大勢”で構成される社会に受け入れられるために大切か、なんてコトは
無難で優等生的な行動を推奨しているにすぎないと思うけれど
大勢に受け入れられる、ということは、
やっぱり本質的にそれなりの価値を持っているからと言っていい。
優等生という言葉に語弊があるだけで、事実優等生万歳!なのだ。
そしてハンコックが人間を理解できるのは、自分と同じように人間が“心が痛む”から。
その痛むことを包むために鎧として使っていた彼だけの特別な力を、レイが開放する。
そうなると後半の展開が面白くなる。
力が余裕を与え、余裕がハンコックを愛されるヒトに変える。
でも、ハンコックの本質は変わっていない。
“クズ【asshole】”扱いのスーパーヒーローは、元から優しいヒーローで、
ただ人々がそれに気がついたにずぎない、というワケだ。